説明

フィルム状セッケン

【課題】セッケン素地又はセッケン成分を多く含み、水溶解性、耐乾燥性及び耐ブロッキング性のいずれにも優れるフィルム状セッケンを提供すること。
【解決手段】ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシエチルメチルセルロースからなる群より選ばれた少なくとも一種(a)と、エーテル化ハイアミロースデンプン、エステル化ハイアミロースデンプン、及び架橋デンプンからなる群より選ばれた少なくとも一種(b)とを混合してフィルム形成材(A)とし、これに可塑剤(B)と、セッケン素地(C)とを混合して、シート状又はフィルム状に成形することにより、セッケン素地又はセッケン成分を多く含み、かつ、ダマを生じることのない水溶解性、耐乾燥性及び耐ブロッキング性のいずれにも優れるシート状又はフィルム状セッケンを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セッケン(石鹸)素地又は、セッケン(石鹸)成分を多く含み、ダマを生じることのない水溶解性、耐乾燥性及び耐ブロッキング性のいずれにも優れるシート状又はフィルム状セッケン(石鹸)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙セッケン(石鹸)と呼ばれるシート状のセッケンが製造販売されている。初期のものは、固形セッケンを薄くスライスしたもので、携帯性に優れるといった特長だけではなく、いわゆる「遊び」感覚を追求したものであった。しかし、固形セッケンをスライスしたものであるため、物性的には割れやすく、シートの厚さを薄くすることには限界があり、ブームにはならなかった。最近、フィルム状のセッケンが上市され、新しい分野を築いている。このものは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を基材とする水溶性フィルムにセッケン成分を含有させたもので、厚さも数十ミクロンのもので、さらに弾力性があり、割れにくい特性を有している。
【0003】
一方、近年、水溶性フィルムは、食品、ビタミン、医薬品等の包装材又は担体として、又化粧品等として、使用されるようになってきている。例えば、香料等を保持させたフレーバーフィルム等として気分転換、口臭予防等を目的として使用されている。また、保湿剤等を保持させた化粧品用フィルムを、パックとして使用したり、水に溶解して乳液として使用したりされている。更に、抗炎症剤等を保持させて湿布薬として使用したりすることも検討されている。
【0004】
水溶性フィルムは、一般に、皮膜形成剤、ゲル化剤、可塑剤などを水に溶解し、膜状に広げ、乾燥後、適当な大きさにカット後容器に入れて製品化されている。水溶性フィルムには、いわゆる「ダマ」を生じることなく水に溶解すること;乾燥によって割れ等を起こし難いこと、即ち耐乾燥性に優れること;空気中の水分を吸湿したり熱により溶融したりして、フィルム同士が付着するというブロッキング現象を起こし難いこと、即ち耐ブロッキング性に優れることが要求される。
【0005】
また、天然デンプンを主成分とするフィルム状化粧品が開示されている(特許文献1)。しかし、このフィルムは、吸湿し易いために、ブロッキングを起こしやすい。また、プルランとカラギーナンを使用した耐乾燥性に優れるフィルムが開示されている(特許文献2)。しかし、このフィルムは、耐湿性が低く、高湿度下では、ブロッキングが起こる。更に、アルギン酸ナトリウムとマルトデキストリンを含有するフィルムが開示されている(特許文献3)。しかし、このフィルムは、水に対する溶解性を改良するために低分子量のマルトデキストリンを添加しているが、その添加濃度を上げると、耐湿性が低下してブロッキングを起こしやすくなり、又耐乾燥性も不十分である。
【0006】
また、フィルム状又はシート状セッケンについては、セッケン素地を含有させたフィルムが開示されている(特許文献4)。しかし、このフィルムは、大量の可塑剤に起因して、耐ブロッキング性が低下している。上記のように、最近、上市されているフィルム状のセッケンは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を基材とする水溶性フィルムにセッケン成分を含有させたものであるが、このようにヒドロキシプロピルメチルセルロース等の高分子を単独でフィルム基材として用いた場合には、出来たフィルムは、弾力性を持ち、強いものであるが、その溶解性に問題があり、その利用に際して満足のいくものではない。
【0007】
一方で、水溶性フィルムとして、架橋、アセチル化又は有機エステル化、ヒドロキシエチル化又はヒドロキシプロピル化等の化学修飾がされたデンプン、酸化、酵素転換、酸加水分解等により変性されたデンプン等の加工デンプンを主成分としたフィルムが開示されている(特許文献5)。しかし、このフィルムは、加工デンプンのいずれかを実質的に単独使用するものであり、耐ブロッキング性が不十分で、シート状又はフィルム状セッケンのフィルム形成材として満足のいくものではない。
【0008】
【特許文献1】特開2002−212027号公報。
【特許文献2】特開平5−236885号公報。
【特許文献3】米国特許第6656493号公報。
【特許文献4】特開平2−279800号公報。
【特許文献5】特開2003−213038号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、セッケン(石鹸)素地又はセッケン成分を多く含み、かつ、ダマを生じることのない水溶解性、耐乾燥性及び耐ブロッキング性のいずれにも優れるフィルム状セッケン(石鹸)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究する中で、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCと略す)、メチルセルロース(以下、MCと略す)、ヒドロキシプロピルセルロース(以下、HPCと略す)、ヒドロキシエチルセルロース(以下、HECと略す)、及びヒドロキシエチルメチルセルロース(以下、HEMCと略す)からなる群より選ばれた少なくとも一種(a)と、エーテル化ハイアミロースデンプン、エステル化ハイアミロースデンプン、及び架橋デンプンからなる群より選ばれた少なくとも一種(b)とを混合してフィルム形成材(A)とし、これに可塑剤(B)と、セッケン素地(C)とを混合して、シート状又はフィルム状に成形することにより、セッケン(石鹸)素地又はセッケン成分を多く含み、かつ、ダマを生じることのない水溶解性、耐乾燥性及び耐ブロッキング性のいずれにも優れるシート状又はフィルム状セッケン(石鹸)を製造することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明において、フィルム形成材(A)における(a)成分としては、HPMC及び/又はMCを、特に、好ましい成分として挙げることができ、(a)成分は、(a)成分の単独又は2種以上の混合物の2重量%(乾物換算)水溶液の粘度が、20℃、B型回転粘度計で測定した場合に、2〜30000mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは、(a)成分の単独又は2種以上の混合物の2重量%(乾物換算)水溶液の粘度が、20℃、B型回転粘度計で測定した場合に、5〜10000mPa・sであることが、好ましい。なお、以下、本発明におけるフィルム形成材(A)における(a)成分及び(b)成分、或いはその他の配合成分等についての「重量%」、「重量部」は、「乾物換算」で表示する。
【0012】
本発明において、フィルム形成材(A)における(b)成分としては、(b)成分のエーテル化ハイアミロースデンプンが、ヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプン、(b)成分のエステル化ハイアミロースデンプンが、アセチル化ハイアミローストウモロコシデンプン、又は(b)成分の架橋デンプンが、リン酸架橋タピオカデンプンである場合を、特に好ましい成分として挙げることができる。また、フィルム形成材(A)における(b)成分の架橋デンプンが、天然デンプン又は加工デンプンを原料デンプンとする架橋デンプンであること、フィルム形成材(A)における(b)成分の架橋デンプンが、架橋デンプンの加熱膨潤度が15以下であることを、本発明の好ましい構成として挙げることができる。
【0013】
本発明においては、可塑剤(B)の配合割合が、フィルム100重量部に対して、1〜25重量部含有することを本発明の好ましい構成として挙げることができ、更に、セッケン素地(C)の含有率が、フィルム重量に対して、乾物換算で30〜80重量%であることを、本発明の好ましい構成として挙げることができる。本発明において、本発明のシート状又はフィルム状セッケンのフィルムの厚さは、20μm〜200μmであることが好ましい。
【0014】
本発明において、水溶解性、耐乾燥性及び耐ブロッキング性に優れたシート状又はフィルム状セッケンを製造するには、本発明のフィルム形成材(A)における成分(a)と、成分(b)とを、水に分散・溶解させ、これに可塑剤(B)及びセッケン素地(C)を混合溶解させて、フィルム形成用原液を調製する工程、該フィルム形成用原液の固形分濃度を調整した後、フィルム状に成形する工程、及び、該フィルムを乾燥した後、熟成してフィルムの水分含量を安定化する工程により、製造することができる。
【0015】
すなわち具体的には本発明は、〔1〕ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシエチルメチルセルロースからなる群より選ばれた少なくとも一種(a)と、エーテル化ハイアミロースデンプン、エステル化ハイアミロースデンプン、及び架橋デンプンからなる群より選ばれた少なくとも一種(b)とを混合したフィルム形成材(A)と、可塑剤(B)と、セッケン素地(C)とを構成成分として形成してなる水溶解性、耐乾燥性及び耐ブロッキング性に優れたシート状又はフィルム状セッケンや、〔2〕フィルム形成材(A)における(a)成分が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はメチルセルロースであることを特徴とする上記〔1〕に記載のシート状又はフィルム状セッケンや、〔3〕フィルム形成材(A)における(a)成分が、(a)成分の単独又は2種以上の混合物の2重量%(乾物換算)水溶液の粘度が、20℃、B型回転粘度計で測定した場合に、2〜30000mPa・sであることを特徴とする上記〔1〕に記載のシート状又はフィルム状セッケンや、〔4〕フィルム形成材(A)における(a)成分が、(a)成分の単独又は2種以上の混合物の2重量%(乾物換算)水溶液の粘度が、20℃、B型回転粘度計で測定した場合に、5〜10000mPa・sであることを特徴とする上記〔3〕に記載のシート状又はフィルム状セッケンからなる。
【0016】
また本発明は、〔5〕フィルム形成材(A)における(b)成分のエーテル化ハイアミロースデンプンが、ヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプンであることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載のシート状又はフィルム状セッケンや、〔6〕フィルム形成材(A)における(b)成分のエステル化ハイアミロースデンプンが、アセチル化ハイアミローストウモロコシデンプンであることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載のシート状又はフィルム状セッケンや、〔7〕フィルム形成材(A)における(b)成分の架橋デンプンが、天然デンプン又は加工デンプンを原料デンプンとする架橋デンプンであることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載のシート状又はフィルム状セッケンや、〔8〕フィルム形成材(A)における(b)成分の架橋デンプンが、架橋デンプンの加熱膨潤度が15以下であることを特徴とする上記〔7〕に記載のシート状又はフィルム状セッケンや、〔9〕フィルム形成材(A)における(a)成分と(b)成分との混合割合が、(a)成分と(b)成分との合計に対して、(a)成分が50〜98重量%(乾物換算)で、(b)成分が50〜2重量%(乾物換算)であることを特徴とする上記〔1〕〜〔8〕のいずれか記載のシート状又はフィルム状セッケンや、〔10〕フィルム形成材(A)における(a)成分と(b)成分との混合割合が、(a)成分と(b)成分との合計に対して、(a)成分が60〜95重量%(乾物換算)で、(b)成分が40〜5重量%(乾物換算)であることを特徴とする上記〔9〕に記載のシート状又はフィルム状セッケンからなる。
【0017】
さらに本発明は、〔11〕可塑剤(B)の配合割合が、フィルム100重量部(乾物換算)に対して、1〜25重量部(乾物換算)であることを特徴とする上記〔1〕〜〔10〕のいずれか記載のシート状又はフィルム状セッケンや、〔12〕セッケン素地(C)の含有率が、フィルム重量(乾物換算)に対して、乾物換算で30〜80重量%であることを特徴とする上記〔1〕〜〔11〕のいずれか記載のシート状又はフィルム状セッケンや、〔13〕フィルムの厚さが、20μm〜200μmであることを特徴とする上記〔1〕〜〔12〕のいずれか記載のシート状又はフィルム状セッケンや、〔14〕ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシエチルメチルセルロースからなる群より選ばれた少なくとも一種(a)と、エーテル化ハイアミロースデンプン、エステル化ハイアミロースデンプン、及び架橋デンプンからなる群より選ばれた少なくとも一種(b)とを、水に分散・溶解させ、これに可塑剤(B)及びセッケン素地(C)を混合溶解させて、フィルム形成用原液を調製する工程、該フィルム形成用原液の固形分濃度を調整した後、フィルム状に成形する工程、及び、該フィルムを乾燥した後、熟成してフィルムの水分含量を安定化する工程からなることを特徴とする水溶解性、耐乾燥性及び耐ブロッキング性に優れたシート状又はフィルム状セッケンの製造方法からなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、セッケン(石鹸)素地又はセッケン成分を多く含み、かつ、ダマを生じることのない水溶解性、耐乾燥性及び耐ブロッキング性のいずれにも優れるシート状又はフィルム状セッケン(石鹸)を提供することができる。
すなわち、本発明により以下の様な顕著な効果を得ることができる:
(1)本発明のシート状又はフィルム状セッケンは、いわゆる「ダマ」を生じることのない水溶解性を有している。本発明においては、フィルム形成材(A)における(a)成分と(b)成分との混合比に基づいて、水に対する溶解速度を、フィルムの使用目的に応じて、種々調整することができるが、最終的には「ダマ」を生じることなく水に溶解させることができ、セッケン機能を速やかに発揮することができる。
【0019】
(2)本発明のシート状又はフィルム状セッケンは、乾燥による割れ等を起こし難い。したがって、耐乾燥性に優れる。(3)本発明のシート状又はフィルム状セッケンは、空気中の水分を吸湿したり熱により溶融したりして、フィルム同士が付着するというブロッキング現象を起こし難い。すなわち、耐湿性、耐熱性に優れ、特に、夏場の高湿度下、高温度下においても、ブロッキング現象を起こし難い。したがって、耐ブロッキング性に著しく優れる。(4)本発明のシート状又はフィルム状セッケンは、耐乾燥性及び耐ブロッキング性に優れることによって、外部環境への対応が容易である。したがって、例えば、フィルムの保存時、携帯時等における容器として、高度の密閉性は要求されない。
【0020】
(5)本発明のシート状又はフィルム状セッケンは、手軽に必要なだけ使用できるため、無駄なく使える。また、本発明のシート状又はフィルム状セッケンは、個別包装も可能であるため、衛生面にも優れている。(6)本発明のシート状又はフィルム状セッケンは、コンパクトなプラスチック容器等に入れて、容易に携帯することができる。(7)本発明のシート状又はフィルム状セッケンは、場合によりエンボス加工を施し模様を入れたり、多層フィルムにし、異なる成分を各々に入れたりすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のシート状又はフィルム状セッケン(石鹸)は、HPMC、MC、HPC、HEC、及びHEMCからなる群より選ばれた少なくとも一種(a)と、エーテル化ハイアミロースデンプン、エステル化ハイアミロースデンプン、及び架橋デンプンからなる群より選ばれた少なくとも一種(b)とを混合したフィルム形成材(A)と、可塑剤(B)と、セッケン素地(C)とを構成成分として形成してなる、ダマを生じることのない水溶解性、耐乾燥性及び耐ブロッキング性に優れたシート状又はフィルム状セッケン(石鹸)からなるものである。
【0022】
[フィルム形成材(A)]
本発明におけるフィルム形成材(A)は、HPMC、MC、HPC、HEC、HEMCからなる群より選ばれた少なくとも一種(a)と、エーテル化ハイアミロースデンプン及びエステル化ハイアミロースデンプン、及び架橋デンプンからなる群より選ばれた少なくとも一種(b)とを混合したフィルム形成材からなる。ここで、本発明における、HPMC、MC、HPC、HEC、HEMCは、セルロースの水酸基にヒドロキシプロピル基、ヒドロキシエチル基、又は、メチル基をエーテル結合して調製された高分子で、分子量が概ね1万〜200万位である。また、(a)成分の単独又は2種以上の混合物の2重量%水溶液の粘度は、B型回転粘度計で20℃で測定した場合、5〜10000mPa・sであるのが好ましい。5mPa・s以下では、フィルム形成が悪くなり、10000mPa・s以上では、水に対する溶解性が悪くなる傾向になる。
【0023】
フィルム形成材(A)を構成する(b)成分であるエーテル化ハイアミロースデンプン及び/又はエステル化ハイアミロースデンプン及び/又は架橋デンプンは、(a)成分のみでは不十分な水溶解性及び耐ブロッキング性を大幅に改善し、本発明のフィルム状石鹸の使用感を向上させる。また、本発明において、ハイアミロースデンプンとは、30重量%以上のアミロースを含有するデンプンを意味し、好ましくは40〜80重量%のアミロースを含むデンプンを意味する。該ハイアミロースデンプンとしては、例えば、ハイアミローストウモロコシデンプン、緑豆デンプン、イエローピーデンプン等を挙げることができる。
【0024】
本発明において、フィルム形成材(A)を構成する(b)成分であるエーテル化ハイアミロースデンプン又はエステル化ハイアミロースデンプンは、セルロースと同様の直鎖構造を有し単独でもフィルム形成性に優れるが、老化が早いというハイアミロースデンプンを、エーテル化又はエステル化することにより、フィルム形成性を維持しつつ、その老化を抑制し、安定な糊液を形成するようにしたものである。エーテル化ハイアミロースデンプンとしては、例えば、ヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプン等が好ましい。また、エステル化ハイアミロースデンプンとしては、例えば、アセチル化ハイアミローストウモロコシデンプン等が好ましい。
【0025】
ヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプンは、例えば、ハイアミロースデンプンにプロピレンオキサイドを反応させて製造することができる。また、アセチル化ハイアミローストウモロコシデンプンは、例えば、ハイアミローストウモロコシデンプンに、希アルカリ条件下無水酢酸を反応させて製造することができる。ヒドロキシプロピル化ハイアミロースデンプン及びアセチル化ハイアミロースデンプンのDS(Degree of Substitution:置換度)は、通常、0.02〜0.4程度であるのが好ましい。該置換度は、デンプン又はその分解物中のグルコース単位当たり(1モル当たり)の置換された水酸基のモル当量を表す。ヒドロキシプロピル置換度は、Johnsonの方法(Analytical Chemistry Vol.41, No.6, 859-860, 1969)に準じて測定することができる。また、アセチル置換度は、Smithの方法(Starch: Chemistry and Technology Vol.2, 610-612, 1967, Academic Press)に準じて測定することができる。
【0026】
本発明において、(b)成分であるヒドロキシプロピル化ハイアミロースデンプン及びアセチル化ハイアミロースデンプンの20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)は、30,000〜400,000mPa・s程度の範囲であるのが好ましい。この範囲よりも粘度が低くなると耐乾燥性が低下する傾向にあり、一方この範囲より粘度が高くなるとフィルム調製時の粘度が高くなり過ぎて作業性が低下する傾向にあるので好ましくない。(b)成分の上記粘度は、50,000〜300,000mPa・s程度の範囲であるのがより好ましい。
【0027】
本発明において、(b)成分である架橋デンプンとしては、例えば、リン酸架橋デンプン、アジピン酸架橋デンプン、エピクロロヒドリン処理架橋デンプン等が好ましい。その原料のデンプンとしては、例えば、タピオカデンプン、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、ワキシートウモロコシデンプン、ワキシー馬鈴薯デンプン等の天然デンプン;これらの天然デンプンのエーテル化デンプン、エステル化デンプン等の加工デンプンが好ましい。該架橋デンプンは、原料デンプン分子の2カ所以上の水酸基間に多官能性化合物を反応させて架橋させることにより調製することができる。多官能性化合物としては、例えば、オキシ塩化リン、トリメタリン酸等のリン化合物;アクロレイン、エピクロルヒドリン、アジピン酸等の多官能性化合物を挙げることができる。架橋した加工デンプンを調製する場合には、架橋処理と加工処理とを同時に行ってもよいし、架橋処理後加工処理を行ってもよいし、加工処理後架橋処理を行ってもよい。
【0028】
本発明において、(b)成分である架橋デンプンの架橋の程度は、加熱膨潤度により測定される。加熱膨潤度は、以下の条件で測定される。すなわち、乾燥物換算で試料1.0gを水100mlに分散し、90℃で30分加熱後、30℃に冷却する。次いで、遠心分離(1,680Gで10分間)して、ゲル層と上澄層に分ける。次いで、ゲル層の重量を測定し、これをCとする。次に、重量測定したゲル層を乾固(105℃、恒量)して重量を測定し、これをDとし、C/Dで加熱膨潤度を表す。架橋の度合いが高いほうが、加熱膨潤度は低くなる。加熱膨潤度は、15程度以下が好ましく、13程度以下、1以上がより好ましい。一方、15を越えると得られたフィルムを水で溶解するとき、ダマができ易くなる傾向にある。
【0029】
フィルム形成材(A)における(a)成分と(b)成分との混合割合は、両者の合計に基づいて、通常、(a)成分が50〜98重量%程度で、(b)成分が50〜2重量%程度であるのが好ましい。(a)成分がこの範囲より少なくなるとフィルム形成が劣る傾向にあり、一方(a)成分がこの範囲より多くなると耐ブロッキング性が劣り、また、水溶解性が低下してダマを生じ易くなる傾向にあるので好ましくない。(a)成分と(b)成分との混合割合は、(a)成分が60〜95重量%程度で、(b)成分が40〜5重量%程度であるのがより好ましく、(a)成分が65〜90重量%程度で、(b)成分が35〜10重量%程度であるのが最も好ましい。
【0030】
[可塑剤(B)]
本発明のシート状又はフィルム状セッケンの構成成分である可塑剤(B)は、フィルムを軟化させる機能を有するもので、例えば、グリセリン、糖アルコール、単糖類、オリゴ糖類などの一種又は二種以上を、使用することができる。可塑剤(B)の配合割合は、フィルム100重量部に対して、通常、1〜25重量部であるのが好ましい。可塑剤がこの範囲より少なくなると耐乾燥性が低下する傾向にあり、一方この範囲より多くなると耐ブロッキング性が低下する傾向にあるので、好ましくない。可塑剤の配合割合は、2〜25重量部程度であるのがより好ましい。
【0031】
[セッケン素地]
本発明フィルムにおけるセッケン素地とは、植物性及び動物性の油脂例えば、ヤシ油、牛脂を水酸化ナトリウム又は、水酸化カリウム、エタノールアミン等によりケン化したもので、場合により、EDTA、グリセリンやアルキルベタイン等の洗顔セッケン、ボディーセッケン等に一般に使用される原料を含んでいても良い。用いるセッケン素地は、含水のものが一般的であるが、水分は、基本的には、問題にならない。フィルムにおけるセッケン素地の含有率は、乾物換算で30〜80重量%が好ましい。30重量%以下の場合は、特にフィルムの物性を損なうことはないが、セッケン成分による洗浄能の低下及び水溶解性がやや低下する傾向がある。また、80重量%以上では、フィルムが弱くなる傾向がある。
【0032】
[任意成分]
本発明のシート状又はフィルム状セッケンの構成成分は、必須成分であるフィルム形成材(A)、及び可塑剤(B)、セッケン素地、以外に、フィルムの用途に応じて、ゲル化剤、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、カラギーナン、ゼラチン、ジェランガム、プルラン、寒天、アルギン酸塩などの一種又は二種以上を、添加、使用することができる。アルギン酸塩としては、例えばアルギン酸ナトリウム等のアルギン酸アルカリ金属塩;アルギン酸カルシウム等のアルギン酸アルカリ土類金属塩等を挙げることができる。また、各種植物エキス、各種動物エキス、ハーブ成分、ビタミン類、ミネラル類、深層水、深層水成分、保湿剤、抗菌剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、紫外線吸収剤、香料、染料、顔料、乳化剤、芳香剤、消臭剤、着色剤、油脂等の任意成分を、適宜配合することができる。また、蛋白加水分解物、ポリグルタミン酸、ヒアルロン酸、又はその塩等を添加することにより、フィルム状セッケンを使用したときの気泡性が向上する。
【0033】
[シート状又はフィルム状セッケンの調製]
本発明のシート状又はフィルム状セッケンは、フィルム形成材(A)、可塑剤(B)及びセッケン素地(C)に、必要に応じて、その他の任意成分を含有してなり、常法により、フィルム形状に成形して、調製することができる。該シート状又はフィルム状セッケンは、例えば、(1)原液の調整、(2)塗工、(3)乾燥、(4)熟成、(5)カットの工程により、容易に調製することができる。以下に、これらの工程について、説明する。
【0034】
(1)原液の調整:フィルム形成材(A)の(a)及び(b)成分を1.5〜5倍量程度の水に必要ならば加熱し、分散・溶解させる。可塑剤(B)を加え、溶解混合する。さらに、セッケン素地(C)を添加溶解し、必要に応じて、上記任意成分を溶解又は分散して、原液を得る。このとき必要ならば、加熱処理も合わせて行う。
(2)塗工:上記原液の温度を50〜65℃に保ちつつ、粘度が2,000〜5,000mPa・s程度になるように固形分濃度を調整してから(通常20〜30重量%程度)、アプリケーターを使って、合成樹脂シート上に、膜厚を調整して塗工する。合成樹脂シートとしては、例えば、ポリエステル樹脂系シート等を使用することができる。
(3)乾燥:80〜110℃程度の熱風で乾燥し、乾燥フィルムを得る。乾燥したフィルムの厚さは、通常、20μm〜200μm程度とするのが、耐乾燥性、触感、水溶解性等の点から適当である。また、フィルムの水分含量は、通常、5〜20重量%程度とするのが、触感、保存性等の点から適当である。
(4)熟成:得られたフィルムを、温度25℃、相対湿度45%の調湿した部屋に、24時間静置して、フィルムの水分含量等を安定化する。
(5)カット:熟成したフィルムを、合成樹脂シートから剥離し、適宜、カットして、製品化する。
【0035】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
[試験方法及び評価]
以下に、実施例により、本発明をより一層具体的に説明する。各例におけるフィルムは、前記調製方法に従って、縦3.3cm、横2.3cm、厚さ45〜60μmのフィルムを調製した。また、得られたフィルムのフィルム形成性、水溶解性、耐乾燥性及び耐ブロッキング性の各性能試験は、次の方法により行った。
【0037】
(フィルム形成性):塗工工程で形成されたカット前のフィルム表面の凹凸等のムラと、カット後のフィルムの表面状態及び厚さの均一性とを観察し、次の基準で評価した。基準−○:カット前のフィルム表面にムラが無く、カット後の表面がなめらかで厚さも均一である、△:カット前のフィルム表面の一部にムラが有り、カット後の表面の一部に凹凸が見られ、厚さもやや不均一である、×:カット前のフィルム表面の全面にムラが有り、カット後の表面の全面に凹凸が見られ、厚さも不均一である。
【0038】
(水溶解性):次の基準で評価した。基準−○:手のひらにフィルム1枚を取り、それに水を加え、手のひらで泡立てたときダマを生ずることなく溶解する、△:手のひらにフィルム1枚を取り、それに水を加え、手のひらで泡立てたとき最初はダマを生ずるが、最終的には溶解する、×:手のひらにフィルム1枚を取り、それに水を加え、手のひらで泡立てたときにダマを生じ、完全には溶解しない。
【0039】
(耐乾燥性):「相対湿度(RH)20%、25℃」に調節したデシケーター中で1週間保存し、「割れ」を、次の基準で評価した。基準−○:フィルムを折り曲げても、ひねっても割れない、△:フィルムを折り曲げても割れないが、ひねると割れる、×:フィルムに荷重をかけただけで割れる。
【0040】
(耐ブロッキング性):フィルムを、「RH45%、温度50℃」(高温条件)に調節したデシケーター中で24時間、又は「RH81%、25℃」(高湿条件)に調節したデシケーター中で1週間、保存し、次の基準で評価した。基準−○:ブロッキングを起こさず、状態の変化なし、△:僅かにブロッキングを起こすが、一枚ずつはがすことができる、×:ブロッキングが発生し、一枚ずつはがすことができない。
【0041】
[実施例1]
HPMC(2重量%水溶液の粘度(20℃、B型回転粘度計30rpm)20mPa・s;水分3%)とヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプン(DS0.12、アミロース含有量65重量%、20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)248,000mPa・s;水分10%)、グリセリン及びセッケン素地(ヤシ油Kケン化物とヤシ油Naケン化物を2対1で混合したもの:水分10%)を、下記表1の配合組成で用いて、最終水分含量11〜13重量%、厚さ50μmの8種類のフィルム状セッケンを調製し、性能試験に供した。配合組成及び性能試験結果を、表1に示す。表中の数値は、重量部を示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示される通り、No.2〜7の本発明フィルムは各試験結果が概ね良好であった。更にNo.3〜6の本発明フィルムは各試験結果が良好であった。No.8のようにHPMCを単独使用するとブロッキングを起こし易く、また、ダマを生じ易く溶けにくい傾向にある。
【0044】
[実施例2]
MC(2重量%水溶液の粘度(20℃、B型回転粘度計30rpm)40mPa・s;水分3%)とアセチル化ハイアミローストウモロコシデンプン(DS0.12、アミロース含有量65重量%、20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)248,000mPa・s;水分10%)、グリセリン及びセッケン素地(ヤシ油Kケン化物とヤシ油Naケン化物を2対1で混合したもの;水分:10%)を、下記表2の配合組成で用いて、最終水分含量11〜13重量%、厚さ50μmの8種類のフィルム状セッケンを調製し、性能試験に供した。配合組成及び性能試験結果を、表2に示す。表中の数値は、重量部を示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2に示される通り、No.2〜7の本発明フィルムは各試験結果が概ね良好であった。更にNo.3〜6の本発明フィルムは各試験結果が良好であった。No.8のようにMCを単独使用するとブロッキングを起こし易く、また、ダマを生じ易く溶けにくい傾向にある。
【0047】
[実施例3]
HPMC(2重量%水溶液の粘度(20℃、B型回転粘度計30rpm)20mPa・s;水分3%)とリン酸架橋タピオカデンプン(加熱膨潤度8.0;水分10%)、グリセリン及びセッケン素地(ヤシ油Kケン化物とヤシ油Naケン化物を2対1で混合したもの;水分:10%)を、下記表3の配合組成で用いて、最終水分含量11〜13重量%、厚さ50μmの8種類のフィルム状セッケンを調製し、性能試験に供した。配合組成及び性能試験結果を、表3に示す。表中の数値は、重量部を示す。
【0048】
【表3】

【0049】
表3に示される通り、No.2〜7の本発明フィルムは各試験結果が概ね良好であった。更にNo.3〜6の本発明フィルムは各試験結果が良好であった。No.8のようにHPMCを単独使用するとブロッキングを起こし易く、また、ダマを生じ易く溶けにくい傾向にある。
【0050】
[実施例4]
HPMC(2重量%水溶液の粘度(20℃、B型回転粘度計30rpm)20mPa・s)45部と下記表4に記載の加熱膨潤度をもつリン酸架橋タピオカ澱粉25部グリセリン25部及びセッケン素地(ヤシ油Kケン化物とヤシ油Naケン化物を2対1で混合したもの;水分:10%)100部を用いて、最終水分含量11〜13重量%、厚さ50μmの5種類のフィルム状セッケンを調製し、性能試験に供した。性能試験結果を、表4に示す。表中の数値は、重量部を示す。
【0051】
【表4】

【0052】
表4に示される通り、No.3〜5の本発明フィルムは各試験結果が良好であった。No.1、No.2のように加熱膨潤度が高くなるとフィルムの溶解性が低下し、耐ブロッキング性も低下する傾向にある。
【0053】
[実施例5]
HPMC(2重量%水溶液の粘度(20℃、B型回転粘度計30pm)20mPa・s)45部とヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプン(DS0.12、アミロース含有量65重量%、20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)248,000mPa・s)25部、下記表5に記載のグリセリン量及びセッケン素地(ヤシ油Kケン化物とヤシ油Naケン化物を2対1で混合したもの;水分:10%)100部を用いて、最終水分含量11〜13重量%、厚さ50μmの6種類のフィルム状セッケンを調製し、性能試験に供した。配合組成及び性能試験結果を、表5に示す。表中の数値は、重量部を示す。
【0054】
【表5】

【0055】
表5に示される通り、No.2〜5の本発明フィルムは各試験結果が良好であった。No.1のようにグリセリンが少ないと乾燥に対し弱く、割れやすく、グリセリンが多くなりすぎると、高温高湿条件でブロッキングを起こしやすくなる。
【0056】
[実施例6]
下記表6に示す配合組成のMC(2重量%水溶液の粘度(20℃、B型粘度計30rpm)400mPa・s)と下記表6に示す配合組成のヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプン(DS0.12、アミロース含有量65重量%、20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)248,000mPa・s)に、グリセリン5部に、セッケン素地(ヤシ油Kケン化物とヤシ油Naケンカ物を2対1で混合したもの;水分:10%)を、下記表6の配合組成で用いて、最終水分含量11〜13重量%、厚さ50μmの6種類のフィルム状セッケンを調製し、性能試験に供した。配合組成及び性能試験結果を、表6に示す。表中の数値は、重量部を示す。
【0057】
【表6】

【0058】
表6に示される通り、セッケン素地が多くなると、フィルム形成性が低下し、フィルムの割れも発生しやすくなる。セッケンとして使用した場合、セッケン素地の添加量を減らすと泡立ち性、洗浄能力が低下する。No.2〜5のフィルムが、セッケンとして良好に感じられる。
【0059】
[実施例7]
MC(2重量%水溶液の粘度(20℃、B型粘度計30rpm)40mPa・s)16部とヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプン(DS0.12、アミロース含有量65重量%、20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)248,000mPa・s)7部に、グリセリン9部に、セッケン素地(ヤシ油Kケン化物とヤシ油Naケン化物を2対1で混合したもの;水分:10%)100部にγ‐ポリグルタミン酸Na(味丹企業股▲分▼有限公司製:分子量約200万)とコラーゲン加水分解物(新田ゼラチン製)を、下記表7の配合組成で用いて、最終水分含量11〜13重量%、厚さ50μmの4種類のフィルム状セッケンを調製し、性能試験に供した。配合組成及び性能試験結果を、表7に示す。表中の数値は、重量部を示す。
【0060】
【表7】

【0061】
表7に示される通り、γ−ポリグルタミン酸Naまたは、コラーゲン加水分解物を添加すると気泡性または、セッケン使用後のしっとりさを補うことができる。
【0062】
[実施例8]
下記表8に記載の2重量%水溶液の粘度(20℃、B型粘度計)をもつMC45部とヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプン(DS0.12、アミロース含有量65重量%、20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)248,000mPa・s)25部グリセリン20部及びセッケン素地(ヤシ油Kケン化物とヤシ油Naケン化物を2対1で混合したもの)100部を用いて、最終水分含量11〜13重量%、厚さ50μmの7種類のフィルム状セッケンを調製し、性能試験に供した。性能試験結果を、表8に示す。表中の数値は、重量部を示す。
【0063】
【表8】

【0064】
表8に示される通り、粘度が低すぎると、フィルム形成性が低下し、フィルムの割れも発生しやすくなる。また、粘度が高すぎると、作業性が悪くなるとともに水溶解性が劣る。
【0065】
[実施例9]
HPMC(2重量%水溶液の粘度(20℃、B型回転粘度計30pm)20mPa・s)55部とヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプン(DS0.12、アミロース含有量65重量%、20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)248,000mPa・s)5部、グリセリン25部及びセッケン素地(ヤシ油Kケン化物とヤシ油Naケン化物を2対1で混合したもの;水分:10%)100部を用いて、表9の洗顔セッケンを作った。最終水分含量11であった。表中の数値は、重量部を示す。
【0066】
【表9】

【0067】
出来た洗顔用セッケンは、泡立ち、水溶解性が良好で、使用感も良かった。
【0068】
[実施例10]
HPMC(2重量%水溶液の粘度(20℃、B型回転粘度計30pm)20mPa・s)55部とヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプン(DS0.12、アミロース含有量65重量%、20重量%水溶液の粘度(50℃、B型粘度計10rpm)248,000mPa・s)5部、グリセリン25部及びセッケン素地(ヤシ油Kケン化物とヤシ油Naケン化物を2対1で混合したもの;水分:10%)100部を用いて、表10の手洗い用セッケンを作った。最終水分含量11%であった。表中の数値は、重量部を示す。
【0069】
【表10】

【0070】
出来た手洗いセッケンは、泡立ち、水溶解性が良好で、使用感も良かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシエチルメチルセルロースからなる群より選ばれた少なくとも一種(a)と、エーテル化ハイアミロースデンプン、エステル化ハイアミロースデンプン、及び架橋デンプンからなる群より選ばれた少なくとも一種(b)とを混合したフィルム形成材(A)と、可塑剤(B)と、セッケン素地(C)とを構成成分として形成してなる水溶解性、耐乾燥性及び耐ブロッキング性に優れたシート状又はフィルム状セッケン。
【請求項2】
フィルム形成材(A)における(a)成分が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はメチルセルロースであることを特徴とする請求項1に記載のシート状又はフィルム状セッケン。
【請求項3】
フィルム形成材(A)における(a)成分が、(a)成分の単独又は2種以上の混合物の2重量%(乾物換算)水溶液の粘度が、20℃、B型回転粘度計で測定した場合に、2〜30000mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載のシート状又はフィルム状セッケン。
【請求項4】
フィルム形成材(A)における(a)成分が、(a)成分の単独又は2種以上の混合物の2重量%(乾物換算)水溶液の粘度が、20℃、B型回転粘度計で測定した場合に、5〜10000mPa・sであることを特徴とする請求項3に記載のシート状又はフィルム状セッケン。
【請求項5】
フィルム形成材(A)における(b)成分のエーテル化ハイアミロースデンプンが、ヒドロキシプロピル化ハイアミローストウモロコシデンプンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状又はフィルム状セッケン。
【請求項6】
フィルム形成材(A)における(b)成分のエステル化ハイアミロースデンプンが、アセチル化ハイアミローストウモロコシデンプンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状又はフィルム状セッケン。
【請求項7】
フィルム形成材(A)における(b)成分の架橋デンプンが、天然デンプン又は加工デンプンを原料デンプンとする架橋デンプンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状又はフィルム状セッケン。
【請求項8】
フィルム形成材(A)における(b)成分の架橋デンプンが、架橋デンプンの加熱膨潤度が15以下であることを特徴とする請求項7に記載のシート状又はフィルム状セッケン。
【請求項9】
フィルム形成材(A)における(a)成分と(b)成分との混合割合が、(a)成分と(b)成分との合計に対して、(a)成分が50〜98重量%(乾物換算)で、(b)成分が50〜2重量%(乾物換算)であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載のシート状又はフィルム状セッケン。
【請求項10】
フィルム形成材(A)における(a)成分と(b)成分との混合割合が、(a)成分と(b)成分との合計に対して、(a)成分が60〜95重量%(乾物換算)で、(b)成分が40〜5重量%(乾物換算)であることを特徴とする請求項9に記載のシート状又はフィルム状セッケン。
【請求項11】
可塑剤(B)の配合割合が、フィルム100重量部(乾物換算)に対して、1〜25重量部(乾物換算)であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載のシート状又はフィルム状セッケン。
【請求項12】
セッケン素地(C)の含有率が、フィルム重量(乾物換算)に対して、乾物換算で30〜80重量%であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載のシート状又はフィルム状セッケン。
【請求項13】
フィルムの厚さが、20μm〜200μmであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載のシート状又はフィルム状セッケン。
【請求項14】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシエチルメチルセルロースからなる群より選ばれた少なくとも一種(a)と、エーテル化ハイアミロースデンプン、エステル化ハイアミロースデンプン、及び架橋デンプンからなる群より選ばれた少なくとも一種(b)とを、水に分散・溶解させ、これに可塑剤(B)及びセッケン素地(C)を混合溶解させて、フィルム形成用原液を調製する工程、該フィルム形成用原液の固形分濃度を調整した後、フィルム状に成形する工程、及び、該フィルムを乾燥した後、熟成してフィルムの水分含量を安定化する工程からなることを特徴とする水溶解性、耐乾燥性及び耐ブロッキング性に優れたシート状又はフィルム状セッケンの製造方法。

【公開番号】特開2007−326918(P2007−326918A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157854(P2006−157854)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【Fターム(参考)】