説明

フィルム状製品の製造方法、フィルム状製品の製造装置、及び、マスク

【課題】最終的に希望する1パターン以上の露光面積分のマスクと、光源と、場所が必要になり、フィルム状製品の製造装置が大きくなる。
【解決手段】フィルム状製品の製造方法は、長尺状のフィルム90を長手方向に搬送する搬送ステップと、予め定められた露光領域80を露光する露光装置を用いて、前記フィルム90を露光する露光ステップとを備え、前記搬送ステップおよび前記露光ステップにおいて、前記露光装置の前記露光領域における前記長手方向の長さよりも長く、切れ目なく前記フィルム90を露光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状製品の製造方法、フィルム状製品の製造装置、及び、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
1パターン全体をフィルムに露光して、露光と露光との間に1パターンの長さフィルムを搬送するフィルム状製品の製造方法が知られている(例えば、特許文献1)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開平4−97155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の方法では、最終的に希望する1パターンのマスクと、光源と、場所が必要になり、フィルム状製品の製造装置が大きくなるといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、長尺状のフィルムを長手方向に搬送する搬送ステップと、予め定められた露光領域を露光する露光装置を用いて、前記フィルムを露光する露光ステップとを備え、前記搬送ステップおよび前記露光ステップにおいて、前記露光装置の前記露光領域における前記長手方向の長さよりも長く、切れ目なく前記フィルムを露光するフィルム状製品の製造方法を提供する。
【0005】
本発明の第2の態様においては、長尺状のフィルムを長手方向に搬送する搬送部と、予め定められた露光領域で前記フィルムを露光する露光部とを備え、前記露光領域における前記長手方向の長さよりも長く、切れ目なく前記フィルムを露光するフィルム状製品の製造装置を提供する。
【0006】
本発明の第3の態様においては、長尺状のフィルムを長手方向に搬送しつつ、偏光出力部からの第1偏光及び第2偏光により前記フィルムを露光するためのマスクであって、第1偏光を透過する第1透過領域と、前記第1偏光と偏光方向が交差する第2偏光を透過する第2透過領域とを備え、前記第1透過領域、及び、前記第2透過領域は、少なくとも一部が前記長手方向と交差する幅方向において、異なる位置に配置されているマスクを提供する。
【0007】
本発明の第4の態様においては、長尺状のフィルムを長手方向に搬送しつつ、偏光出力部からの偏光により前記フィルムを露光するためのマスクであって、前記長手方向と交差する幅方向に延び、前記偏光出力部と前記フィルムとの間に配置され、前記偏光を透過する透過領域を有するマスクを提供する。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態による位相差板の全体平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った縦断面図である。
【図3】本実施形態による位相差板製造装置の全体構成図である。
【図4】露光部の全体斜視図である。
【図5】マスクの底面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った縦断面図である。
【図7】上流側張力ロール及び下流側張力ロールの斜視図である。
【図8】別の実施形態による一対の張力ロールの斜視図である。
【図9】図8の上流側張力ロールの側面図である。
【図10】別の実施形態によるマスクの底面図である。
【図11】別の実施形態によるマスクの底面図である。
【図12】別の実施形態によるマスクの底面図である。
【図13】別の実施形態によるマスクの底面図である。
【図14】別の実施形態によるマスクの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、本実施形態による位相差板の全体平面図である。位相差板100は、本実施形態によるフィルム状製品の製造方法によって露光されたフィルムの一例である。位相差板100は、立体画像表示装置の液晶画像生成部の画像の出力側に設けられ、右目用画像及び左目用画像を出力する。
【0012】
位相差板100は、一辺が数cm〜数mの長方形状に形成されている。図1に示すように、位相差板100は、切断フィルム102と、偏光変調部104と、偏光変調部106とを有する。
【0013】
切断フィルム102は、樹脂製の長尺状のフィルム90が一定の長さに切断されて形成される。切断フィルム102は、偏光変調部104及び偏光変調部106を支持する。切断フィルム102は、シクロオレフィン系のフィルムによって構成することができる。シクロオレフィン系フィルムとして、シクロオレフィンポリマー(=COP)、より好ましくは、シクロオレフィンポリマーの共重合体であるシクロオレフィンコポリマー(=COC)を使用することができる。COPフィルムとして、日本ゼオン社製のゼオノアフィルムZF14を挙げることができる。また、切断フィルム102は、トリアセチルセルロース(=TAC)を含む材料によって構成してもよい。TACフィルムは、富士写真フィルム社製のフジタックT80SZを挙げることができる。尚、シクロオレフィン系フィルムを使用する場合は、脆弱性の観点から高靭性タイプのフィルムを使用することが好ましい。
【0014】
偏光変調部104及び偏光変調部106は、平面視において、同じ形状に形成されている。偏光変調部104及び偏光変調部106は、切断フィルム102の長手方向に沿って延びる長方形状である。偏光変調部104と偏光変調部106は、互いに一辺を接触させた状態で、交互に配置されている。
【0015】
偏光変調部104及び偏光変調部106は、透過する偏光の偏光状態を変調させる。偏光変調部104及び偏光変調部106の一例は、1/4波長板である。偏光変調部104は、例えば、図1の偏光変調部104の右端に記載の矢印110と平行な光学軸を有する。これにより、偏光変調部104は、例えば、矢印110から45°回転した偏光方向を有する直線偏光が入射すると、その偏光を隣の矢印112に示す左回りの偏光方向を有する円偏光に変調して出力する。偏光変調部106は、例えば、図1の偏光変調部106の右端に記載の矢印114と平行な光学軸であって、偏光変調部106の光学軸と直交する光学軸を有する。これにより、偏光変調部106は、例えば、矢印110から45°回転した偏光方向を有する直線偏光が入射すると、その偏光を隣の矢印116に示す右回りの偏光方向を有する円偏光に変調して出力する。
【0016】
この結果、同じ偏光方向を有する直線偏光が、偏光変調部104及び偏光変調部106に入射しても、偏光変調部106が出力する偏光の偏光方向と、偏光変調部104が出力する偏光の偏光方向とは、異なる。例えば、偏光変調部106が出力する偏光の偏光方向は、偏光変調部104が出力する偏光の偏光方向の逆回りである。ユーザは、これらの偏光を右目または左目で見ることにより、立体画像を視認することができる。
【0017】
図2は、図1のII−II線に沿った縦断面図である。図2に示すように、各偏光変調部104及び偏光変調部106は、配向膜120と、液晶膜122とを有する。
【0018】
配向膜120は、切断フィルム102の面上であって、偏光変調部104及び偏光変調部106が形成される領域に形成されている。配向膜120は、公知の光配向性化合物を適用できる。光配向性化合物の例として、光分解型、光二量子型、光異性型等の化合物をあげることができる。配向膜120のうち、偏光変調部104が形成される領域に形成されている配向膜120は、偏光変調部104の光学軸に対応して配向している。配向膜120のうち、偏光変調部106が形成される領域に形成されている配向膜120は、偏光変調部106の光学軸に対応して配向している。
【0019】
液晶膜122は、紫外線または加熱等によって硬化可能な液晶ポリマーによって構成することができる。液晶膜122の分子は、配向膜120の配向に沿って、配向される。従って、偏光変調部104が形成される領域の液晶膜122の分子は、偏光変調部104の光学軸に対応して配向される。また、偏光変調部106が形成される領域の液晶膜122の分子は、偏光変調部106の光学軸に対応して配向される。
【0020】
図3は、本実施形態による位相差板製造装置の全体構成図である。図3に矢印で示す上下を位相差板製造装置の上下方向とする。また、上流及び下流は、搬送方向における上流及び下流とする。尚、搬送方向は、フィルム90の長手方向と同方向である。
【0021】
位相差板製造装置10は、フィルム状製品の製造装置の一例である。図3に示すように、位相差板製造装置10は、送り出しロール12と、配向膜塗布部14と、配向膜乾燥部16と、露光部18と、液晶膜塗布部20と、液晶膜配向部22と、液晶膜硬化部24と、セパレートフィルム供給部26と、巻き取りロール28とを備える。
【0022】
送り出しロール12は、フィルム90の搬送経路の最も上流側に配置されている。送り出しロール12の外周には、供給用のフィルム90が巻かれている。送り出しロール12は、回転可能に支持されている。これにより、送り出しロール12は、フィルム90を送り出し可能に保持できる。送り出しロール12は、モータ等の駆動機構によって回転可能に構成してもよく、巻き取りロール28の回転に伴って、従動可能に構成してもよい。あるいは、搬送経路の途中にフィルム90を駆動させる機構を設けてもよい。
【0023】
配向膜塗布部14は、塗布部の一例である。配向膜塗布部14は、送り出しロール12の下流側であって、露光部18の上流側に配置されている。配向膜塗布部14は、搬送されるフィルム90の搬送経路の上方に配置されている。配向膜塗布部14は、フィルム90の上面に、露光材料の一例である液状の配向膜120を供給して塗布する。
【0024】
配向膜乾燥部16は、配向膜塗布部14の下流側に配置されている。配向膜乾燥部16は、加熱、光照射、または送風等によって、内部を通過するフィルム90上に塗布された配向膜120を乾燥させる。
【0025】
露光部18は、配向膜乾燥部16の下流側に配置されている。露光部18は、上流側エア吐出部32と、偏光光源34と、マスク38と、マスク保持部40と、下流側エア吐出部42と、一対の上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46とを有する。露光部18は、偏光光源34から出力された偏光を、マスク38を介して、フィルム90上に塗布された配向膜120に照射することにより、配向膜120を配向させる。これにより、露光部18は、フィルム90の配向膜120にパターンを露光する。偏光光源34から出力される偏光の一例は、紫外線である。偏光光源34の下方が、フィルム90が露光される予め定められた露光領域80の一例である。
【0026】
液晶膜塗布部20は、露光部18の下流側に配置されている。液晶膜塗布部20は、フィルム90の搬送経路の上方に配置されている。液晶膜塗布部20は、フィルム90に形成された配向膜120上に液晶膜122を供給して、塗布する。
【0027】
液晶膜配向部22は、液晶膜塗布部20の下流側に配置されている。液晶膜配向部22は、加熱、光照射、または、送風等によって、内部を通過する配向膜120上に形成された液晶膜122を、配向膜120の配向方向に沿って配向させつつ、乾燥させる。
【0028】
液晶膜硬化部24は、液晶膜配向部22の下流側に配置されている。液晶膜硬化部24は、紫外線を照射することにより、液晶膜122を硬化させる。これにより、配向膜120の配向に沿って配向された液晶膜122の分子の配向が、固定される。
【0029】
セパレートフィルム供給部26は、液晶膜硬化部24と巻き取りロール28との間に配置されている。セパレートフィルム供給部26は、フィルム90の液晶膜122上にセパレートフィルム92を供給して、貼り合わせる。尚、セパレートフィルム供給部26は、省略してもよい。
【0030】
巻き取りロール28は、液晶膜硬化部24の下流側であって、搬送経路の最も下流側に配置されている。巻き取りロール28は、回転駆動可能に支持されている。巻き取りロール28は、配向膜120及び液晶膜122が形成されてパターニングされたフィルム90を巻き取る。
【0031】
図4は、露光部の全体斜視図である。露光部18は、露光装置の一例である。図4に示すように、上流側エア吐出部32は、配向膜乾燥部16の下流側であって、上流側張力ロール44の上流側に配置されている。上流側エア吐出部32は、フィルム90の搬送経路の上方に配置されている。上流側エア吐出部32は、下方を搬送されるフィルム90へエアを吐出する。これにより、搬送中のフィルム90は、下方へと押圧される。
【0032】
偏光光源34は、フィルム90の搬送経路の上方に配置されている。偏光光源34は、上流側偏光出力部50と、下流側偏光出力部52とを有する。上流側偏光出力部50の底面は、第1偏光を出力する上流側偏光出力面51として機能する。下流側偏光出力部52の底面は、第2偏光を出力する下流側偏光出力面53として機能する。上流側偏光出力面51及び下流側偏光出力面53は、上流側張力ロール44と下流側張力ロール46との間に配置されている。
【0033】
上流側偏光出力部50は、第1偏光出力部の一例であって、第1偏光を下方へと出力する。下流側偏光出力部52は、フィルム90の長手方向において、上流側偏光出力部50と異なる位置である、上流側偏光出力部50の下流側に配置されている。
【0034】
下流側偏光出力部52は、第2偏光出力部の一例である。下流側偏光出力部52は、上流側偏光出力部50が出力する第1偏光の偏光方向と異なる偏光方向を有する第2偏光を下方へと出力する。下流側偏光出力部52が出力する第2偏光の偏光方向と、上流側偏光出力部50が出力する第1偏光の偏光方向は、直交する。尚、下流側偏光出力部52が出力する第2偏光の偏光方向と、上流側偏光出力部50が出力する第1偏光の偏光方向は、任意の角度で交差させてもよい。上流側偏光出力部50と下流側偏光出力部52とが一体の光源である場合は互いの偏光を遮光する遮光壁が設けられていてもよい。
【0035】
マスク38は、偏光光源34から出力された偏光の一部を透過して、残りを遮光する。これにより、フィルム90が、所定のパターンに露光される。マスク38は、偏光光源34とフィルム90との間に配置される。一例として、マスク38は、フィルム90の数百μm上方に配置される。マスク38は、マスク基材56と、遮光層58とを有する。遮光層58には、上流側透過領域62として機能する開口と、下流側透過領域66として機能する開口とが形成されている。
【0036】
マスク保持部40は、フィルム90に対して、幅方向に相対移動可能に保持されている。マスク保持部40は、マスク38を保持する。これにより、マスク38は、モータまたはアクチュエータ等によってマスク保持部40とともに移動できる。
【0037】
下流側エア吐出部42は、下流側張力ロール46の下流側に配置されている。下流側エア吐出部42は、フィルム90の搬送経路の上方に配置されている。下流側エア吐出部42は、下方を搬送されているフィルム90へエアを吐出する。これにより、搬送中のフィルム90は、下方へと押圧される。
【0038】
上流側張力ロール44は、偏光光源34及びマスク38の上流側であって、上流側エア吐出部32の下流側に配置されている。下流側張力ロール46は、偏光光源34及びマスク38の下流側であって、下流側エア吐出部42の上流側に配置されている。上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46は、回転可能に支持されている。上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46は、駆動モータ等によって自転可能に構成してもよく、巻き取りロール28等の駆動力によって従動可能に構成してもよい。
【0039】
上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46は、搬送経路の下に配置されている。これにより、上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46は、フィルム90の面のうち、フィルム90の配向膜120が形成されていない面である下面と接触して押圧する。上述したように、フィルム90は、上流側エア吐出部32及び下流側エア吐出部42によって下方へ押圧されている。従って、上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46は、下方に押圧されているフィルム90に長手方向の張力を付与することになる。フィルム90に付与される張力は、一例として350mm幅のときは約50Nが好ましい。
【0040】
上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46は、露光領域80を挟んで配置されている。上流側張力ロール44は、上流側透過領域62の上流側端部よりも上流側に配置され、下流側張力ロール46は、下流側透過領域66の下流側端部よりも下流側に配置されている。これにより、上流側偏光出力部50及び下流側偏光出力部52から出力された第1偏光及び第2偏光が、フィルム90を透過した後、上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46によって反射されてフィルム90を露光することを、低減する。上流側張力ロール44と下流側張力ロール46との間の距離は、一般的な液晶表示装置に設けられる数cm以上の位相差板100の長手方向の長さよりも短くすることができる。これにより、上流側張力ロール44と下流側張力ロール46との間のフィルム90に長手方向の張力を十分に付与することができる。
【0041】
図5は、マスクの底面図である。図6は、図5のVI−VI線に沿った縦断面図である。図5の透過領域内に示す矢印は、透過領域を透過する偏光の偏光方向の一例である。図5及び図6に示すように、マスク38のマスク基材56は、矩形の板状に形成されている。マスク基材56は、石英ガラス等の材料からなる。フィルム90の長手方向における、マスク基材56の長さの一例は、約300mmである。遮光層58は、マスク基材56の下面に形成されている。遮光層58は、クロム等の光を遮蔽可能な材料からなる。上述したように遮光層58には、上流側透過領域62及び下流側透過領域66として機能する開口が形成されている。
【0042】
上流側透過領域62及び下流側透過領域66の長手方向の長さの一例は、約30mmである。即ち、上流側透過領域62及び下流側透過領域66の長手方向の長さは、一般的な液晶表示装置に設けられる数cm以上の位相差板100の長手方向の長さに比べて短くすることができる。上流側透過領域62及び下流側透過領域66の幅方向の長さの一例は、約100μmである。
【0043】
上流側透過領域62は、幅方向に沿って配列されている。上流側透過領域62は、第1偏光を含む光を透過する。上流側透過領域62は、上流側偏光出力部50とフィルム90との間に配置されている。これにより、上流側偏光出力部50から出力された第1偏光が、上流側透過領域62を透過して、フィルム90を露光する。
【0044】
下流側透過領域66は、幅方向に沿って配列されている。下流側透過領域66は、上流側透過領域62よりも下流側に配置されている。下流側透過領域66は、第2偏光を含む光を透過する。下流側透過領域66は、下流側偏光出力部52とフィルム90との間に配置されている。これにより、下流側偏光出力部52から出力された第2偏光が、下流側透過領域66を透過して、フィルム90を露光する。
【0045】
上流側透過領域62及び下流側透過領域66は、長手方向において、互いが重ならない異なる位置に配置されている。下流側透過領域66は、幅方向において、上流側透過領域62と異なる位置に形成されている。
【0046】
上流側透過領域62及び下流側透過領域66は、長手方向と交差する幅方向において、互いの位置が重ならない、異なる位置に配置されている。これにより、上流側透過領域62によって露光される領域と、下流側透過領域66によって露光される領域とが、重ならず異なる位置でフィルム90に形成される。換言すれば、長手方向に平行な上流側透過領域62の辺の延長線上に、長手方向に平行な下流側透過領域66の何れかの辺が位置する。これにより、上流側透過領域62によって露光される領域と、下流側透過領域66によって露光される領域との間に間隙が無い状態でフィルム90が露光される。
【0047】
上流側偏光出力部50から出力される第1偏光によって露光可能な領域が、第1露光領域81である。下流側偏光出力部52から出力される第2偏光によって露光可能な領域が、第2露光領域82である。尚、上流側透過領域62が、第1偏光のみを透過可能な偏光板によって構成してもよい。また、下流側透過領域66が、第2偏光のみを透過可能な偏光板によって構成してもよい。これにより、下流側透過領域66を透過する第1偏光を抑制するとともに、上流側透過領域62を透過する第2偏光を抑制することができる。
【0048】
図7は、上流側張力ロール及び下流側張力ロールの斜視図である。上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46は、円柱形状に形成されている。尚、上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46の真円度は、高い方が好ましい。また、上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46を円筒形状に形成する場合、円筒度は高い方が好ましい。更に、上流側張力ロール44の回転軸及び下流側張力ロール46の回転軸は、互いに精度よく平行にすることが必要である。これらにより、回転時の上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46のぶれを低減できるとともに、搬送中のフィルム90のばたつきを低減できる。
【0049】
次に、フィルム状製品の製造方法の一例である位相差板100の製造方法について説明する。まず、送り出しロール12に巻かれた長尺状のフィルム90を準備する。ここで、フィルム90の全長の一例は、約1000mである。フィルム90の幅の一例は、約1mである。この後、フィルム90の一端を巻き取りロール28に固定する。この状態で、フィルム90は、上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46の上面を通して配置されている。
【0050】
次に、巻き取りロール28の回転駆動が開始する。この結果、フィルム90が送り出しロール12から送り出されて、フィルム90が、長手方向に搬送される。フィルム90の搬送速度の一例は、2m/分〜10m/分である。
【0051】
送り出されたフィルム90は、配向膜塗布部14の下方を通過する。これにより、フィルム90の上面には、配向膜塗布部14によって、両端部を除く、幅方向の略全域にわたって配向膜120が塗布される。配向膜120の塗布は、フィルム90の搬送中、連続して実行される。従って、フィルム90の上面には、両端の一部を除いて、長さ方向における全長にわたって連続して配向膜120が塗布される。
【0052】
配向膜120が塗布されたフィルム90は、搬送されて、配向膜乾燥部16の内部を通過する。これにより、フィルム90の上面に塗布された配向膜120が、乾燥される。この後、フィルム90は、上流側エア吐出部32の下方、及び、上流側張力ロール44の上面を通過する。
【0053】
配向膜120が塗布された領域のフィルム90が上流側透過領域62の下方を通過する。これにより、上流側透過領域62の下方を通過する領域に形成されたフィルム90の配向膜120が、上流側偏光出力部50から出力されてマスク38の上流側透過領域62を透過した第1偏光によって、露光される。ここで、フィルム90は、巻き取りロール28によって連続して一定の速度で搬送が継続されつつ、露光される。従って、上流側透過領域62の下方を通過する配向膜120は、長手方向に沿って、連続して、上流側偏光出力部50から出力される第1偏光によって露光される。これにより、上流側透過領域62の下方を通過した領域の配向膜120は、長手方向に延びる帯状に露光される。これにより、露光部18の偏光光源34の露光領域80における長手方向の長さよりも長く、切れ目なくフィルム90が露光されることになる。また、当該領域の配向膜120は、上流側偏光出力部50から出力される第1偏光によって露光されるので、当該領域の配向膜120は、露光される第1偏光に対応して配向される。
【0054】
この後、配向膜120が塗布された領域のフィルム90は搬送されて、下流側透過領域66の下方を通過する。これにより、下流側透過領域66の下方を通過する領域に形成されたフィルム90の配向膜120が、下流側偏光出力部52から出力されてマスク38の下流側透過領域66を透過した第2偏光により露光される。尚、フィルム90の搬送は継続されているので、当該領域の配向膜120も帯状に露光される。当該領域の配向膜120は、下流側偏光出力部52から出力される第2偏光によって露光されるので、当該領域の配向膜120は、露光される偏光に対応して配向される。ここで、下流側偏光出力部52から出力される第2偏光の偏光方向は、上流側偏光出力部50から出力される第1偏光の偏光方向と直交する。これにより、下流側透過領域66の下方を通過する領域の配向膜120と、上流側透過領域62の下方を通過する領域の配向膜120は、互いに直交する方向に配向される。
【0055】
また、上流側透過領域62と下流側透過領域66は、幅方向において、異なる位置に形成されている。これにより、上流側透過領域62によって露光される配向膜120の領域と、下流側透過領域66によって露光される配向膜120の領域は、幅方向において異なる位置となる。従って、偏光変調部104及び偏光変調部106に対応する異なる配向を含む2つの領域を有するパターンが配向膜120に形成される。
【0056】
ここで、フィルム90には、上流側エア吐出部32及び下流側エア吐出部42によってエアが吐出されているので、フィルム90は下方へと押圧されている。これにより、フィルム90には、上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46の間で、長手方向の張力が付与される。また、上流側張力ロール44は、円柱状に形成されているので、フィルム90の幅方向の移動が小さい。
【0057】
この後、配向膜120が露光されたフィルム90は、下流側エア吐出部42の下方を通過して、液晶膜塗布部20の下方へと達する。これにより、液晶膜122が、配向膜120の上面に塗布される。液晶膜122は搬送中のフィルム90の配向膜120の上面に連続して塗布されるので、液晶膜122はフィルム90の長手方向の全長にわたって、塗布されることになる。この後、液晶膜122が塗布されたフィルム90は、搬送されて、液晶膜配向部22を通過する。これにより、液晶膜122が液晶膜配向部22により加熱されて、液晶膜122の分子が、下面に形成された配向膜120の配向に沿って配向されつつ、乾燥される。次に、塗布された液晶膜122が配向されたフィルム90は、液晶膜硬化部24を通過する。これにより、紫外線が液晶膜122に照射されて、液晶膜122が配向された状態で硬化する。この結果、上流側透過領域62の下方を通過した領域の配向膜120、及び、下流側透過領域66の下方を通過した領域の配向膜120のそれぞれに対応して、液晶膜122の分子が配向される。図1及び図2に示すように、配向膜120及び液晶膜122によって形成される偏光変調部104及び偏光変調部106が、フィルム90の幅方向に交互に形成される。次に、液晶膜122の上面にセパレートフィルム92が上面に供給されて貼りあわされる。そして、セパレートフィルム92が上面に貼られたフィルム90が、巻き取りロール28によって巻き取られる。
【0058】
この後、送り出しロール12に巻かれたフィルム90の供給が終了するまで、巻き取りロール28によってフィルム90が搬送されつつ、フィルム90の露光が継続される。そして、送り出しロール12に巻かれたフィルム90が全て供給されると、終了する。尚、終了したフィルム90の後端に、次の新たなフィルム90の前端を繋いで、連続してフィルム90を露光してもよい。最後に、フィルム90は、規定の長さに切断されて、図1及び図2に示す位相差板100となって完成する。
【0059】
上述したように、本実施形態による位相差板製造方法及び位相差板製造装置10では、フィルム90を露光領域80の長手方向の長さよりも長く、切れ目なくフィルム90を露光する。これにより、本実施形態では、一般的な液晶表示装置に設けられる数cm以上の位相差板100よりも長手方向に短い露光領域80で露光して、露光領域80よりも長い位相差板100を製造できる。この結果、偏光光源34、マスク38、露光領域80を長手方向に小さくすることができるので、位相差板製造装置10を小型化することができる。
【0060】
本実施形態では、フィルム90を露光領域80の長手方向の長さよりも長く、切れ目なくフィルム90を露光するので、パターンが露光されていないフィルム90の領域を低減できる。特に、フィルム90の露光が開始された後は、フィルム90の供給が終了するまで、フィルム90の露光が継続される。従って、フィルム90の露光が開始されると、フィルム90には切り目なくパターンが形成される。これにより、フィルム90にパターンが形成されていない領域を更に低減できる。この結果、フィルム90から製造できる位相差板100の枚数を増加させて、歩留りを向上させることができる。また、連続してパターンを形成することにより、間欠露光の場合のように、隣接するパターンの間隔調整の制御も削除できる。
【0061】
本実施形態では、フィルム90を搬送しつつ、連続して露光している。換言すれば、本実施形態では、フィルム90の搬送及び露光を同時にすることによって、搬送時間または露光時間の一方を省略していることになる。これにより、フィルム90が搬送されていない時間及び露光されていない時間を低減することができるので、フィルム90の製造時間を低減できる。また、フィルム90の搬送が停止している時間を削減することによって、フィルム90の加速及び減速に必要な時間を低減できる。更に、フィルム90の搬送を一定の速度で維持すればよいので、フィルム90の搬送の制御を簡略化することができる。
【0062】
本実施形態では、一般的な液晶表示装置に設けられる数cm以上の位相差板100と比較して、長手方向に極めて短い上流側透過領域62及び下流側透過領域66を有するマスク38によってフィルム90を露光している。これにより、上流側偏光出力部50及び下流側偏光出力部52から出力される光を小さい領域に集中させて露光することになるので、短い時間でフィルム90を露光することができる。これにより、本実施形態は、更に、製造時間を低減できる。また、上流側偏光出力部50及び下流側偏光出力部52の出力を小さくすることができるので、設備コストを低減できる。
【0063】
本実施形態では、フィルム90の長手方向に連続してパターンを露光している。これにより、マスク38の上流側透過領域62または下流側透過領域66の一部に異物が付着しても、幅方向の同じ位置であって、長手方向の位置が異なる異物が付着していない領域の上流側透過領域62または下流側透過領域66を透過した偏光によって、フィルム90の当該領域が露光される。これにより、異物が付着した領域であっても、異物の下方を通過するフィルム90の領域が露光されるので、異物の影響を低減して、歩留りを向上できる。例えば、長手方向の長さが30mmの上流側透過領域62に、長手方向の長さが1mmの異物が付着した場合、フィルム90を停止して露光した場合に比べて、異物の影響を1/30に抑えることができる。
【0064】
本実施形態では、第1露光領域81、第2露光領域82、並びに、マスク38を長手方向に短くすることができるので、上流側張力ロール44と下流側張力ロール46との間の距離を短くできる。これにより、上流側張力ロール44と下流側張力ロール46との間のフィルム90に長手方向の張力を十分に付与して、当該個所のフィルム90の弛みを低減できる。この結果、上流側張力ロール44と下流側張力ロール46との間のフィルム90を支持するためのステージを省略することができる。また、上流側張力ロール44は、上流側透過領域62よりも上流側に配置され、下流側張力ロール46は、下流側透過領域66よりも下流側に配置されている。これにより、偏光光源34から出力されて、フィルム90を透過した偏光が、ステージ、または、上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46に反射されることを低減できる。このため、反射光によるフィルム90の不要な露光を低減でき、位相差板100の品質を向上させることができる。
【0065】
本実施形態では、フィルム90の長手方向に連続してパターンが露光されるので、フィルム90の切断個所を変更することにより、完成品の位相差板100の長手方向の長さを自由に変更することができる。この結果、本実施形態は、位相差板100の長手方向の自由度を向上させることができる。
【0066】
本実施形態では、上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46が、フィルム90の上下面のうち、配向膜120が塗布されていない下面と接触している。これにより、フィルム90に塗布された配向膜120のロール接触による配向不良を回避できる。更に、上流側エア吐出部32及び下流側エア吐出部42から吐出されるエアによって、配向膜120が形成されたフィルム90の上面を押圧して、フィルム90に張力を付与している。即ち、本実施形態は、配向膜120が形成されたフィルム90の上面に直接接触することなく、フィルム90に張力を付与することができる。
【0067】
次に、上述した位相差板100の製造時間の短縮について、具体的に説明する。まず、本実施形態及び比較形態の共通条件について説明する。フィルム90を露光するために必要な単位面積当たりのエネルギーは、20mJ/cmである。フィルム90を露光するために使用した偏光光源34から出力される紫外線照射の単位面積当たりの強度は、120mW/cmである。フィルム90の搬送速度は、10m/分である。尚、ここでいう搬送速度は、フィルム90が一定速度になった状態での搬送速度である。完成品の1枚の位相差板100の長手方向の長さは、1.1mである。
【0068】
上述の条件によって、本実施形態を実施した場合、1枚の位相差板100を露光するために必要な時間は、
(1枚の位相差板の長さ[m])/(搬送速度[m/分])=1.1/10=0.11[分]
となる。尚、本実施形態では、露光と搬送を同時に実行するので、位相差板100の1枚の搬送に要する時間のみを考慮すればよいので、本実施形態が1枚の位相差板100を露光するために必要な時間は、0.11分、即ち、6.6秒となる。
【0069】
一方、比較形態は、露光と搬送とを別々に実行する間欠露光方法である。従って、搬送に必要な時間と、露光に必要な時間とを別々に考慮する必要がある。まず、搬送に必要な時間は、加速及び減速に必要な時間がそれぞれ1.0秒、位相差板100の1枚分を搬送するための時間が、
(定速部分における位相差板の長さ[m])/(搬送速度[m/分])=0.934/10=0.0934[分]=5.6[秒]
である。従って、比較形態において、定速部分において必要な時間は5.6秒、更に、加速及び減速に必要な時間をそれぞれ1秒加えることとなる。この結果、搬送に必要な時間は、7.6秒となる。
【0070】
次に、比較形態における露光に必要な時間は、以下の通りである。まず、上下方向におけるマスクとフィルムとの間隔調整を含む露光ギャップの調整に必要な時間が、2.0秒である。次に、第1偏光による露光には、シャッタを開ける時間の0.5秒、第1偏光による露光時間の0.2秒、シャッタを閉じる時間の0.5秒の和である1.2秒が必要となる。第1偏光用のマスクと第2偏光用のマスクを移動するために必要な時間が、2.0秒である。第2偏光による露光には、第1偏光による露光と同様の1.2秒が必要となる。これらの合計から6.4秒の時間が露光に必要な時間となる。従って、比較形態では、1枚の位相差板100を露光するために必要な時間は、14秒となる。
【0071】
以上より、本実施形態では、1枚の位相差板100を露光するために必要な時間は6.6秒であり、比較形態では、1枚の位相差板100を露光するために必要な時間は14秒である。これらから明らかなように、比較形態によって1枚の位相差板100を製造する時間で、本実施形態は2.1枚の位相差板100を製造することができる。
【0072】
図8は、別の実施形態による一対の張力ロールの斜視図である。図9は、上流側張力ロールの側面図である。図8及び図9に示すように、上流側張力ロール144は、幅方向の中央部に凹部が形成されたコンケーブロールである。例えば、上流側張力ロール144の端部の半径は、上流側張力ロール144の中央部の半径より約100μm程度大きい。このような上流側張力ロール144として、端部の直径が120.2mm、中央部の直径が120mmを例としてあげることができる。これにより、上流側張力ロール144の両端部の近傍の周速度は、上流側張力ロール144の中央部の近傍の周速度よりも速い。従って、幅方向において、フィルム90の両端部は、上流側張力ロール144の両端部によって、外側に引っ張られる。この結果、フィルム90は、幅方向における弛みが低減された状態で、偏光光源34及びマスク38の下方を通過するので、露光されたパターンの歪み等を低減できる。
【0073】
また、上流側張力ロール144に円柱状のロールを適用して、下流側張力ロール46にコンケーブロールを適用してもよい。更に、上流側張力ロール144及び下流側張力ロール46にコンケーブロールを適用してもよい。尚、上流側張力ロール144及び下流側張力ロール46のいずれか一方にコンケーブロールを適用する場合、上流側張力ロール144にコンケーブロールを適用することが好ましい。これは、幅方向の弛みを低減した状態で、フィルム90をマスク38の下方へ搬送できるためである。
【0074】
図10は、別の実施形態によるマスクの底面図である。図10の透過領域内に示す矢印は、各透過領域を透過する偏光の偏光方向の一例である。図10に示すように、本実施形態では、マスク138は、光を透過するマスク基材156と、マスク基材156に形成された遮光層158と有する。遮光層158には、第1偏光を透過する第1透過領域162及び第1偏光と交差する偏光方向を有する第2偏光を透過する第2透過領域166として機能する開口が形成されている。第1透過領域162と第2透過領域166とが長手方向及び搬送方向の同じ位置に配置されている。換言すれば、第1透過領域162と第2透過領域166とが、幅方向に沿って、一列に配列されている。
【0075】
本実施形態では、偏光光源134は、第1偏光を出力する第1偏光出力部152と、第2偏光を出力する第2偏光出力部154とを有する。第1偏光出力部152は第1偏光を出力する偏光光源を有するとともに、第2偏光出力部154は第2偏光を出力する偏光光源を有する。尚、偏光でない光を出力する共通の光源を設けて、第1偏光出力部152及び第2偏光出力部154のそれぞれの出力面に第1偏光の偏光方向に平行な透過軸を有する偏光板及び第2偏光の偏光方向に平行な透過軸を有する偏光板を設けてもよい。第1偏光出力部152と第2偏光出力部154は、長手方向及び搬送方向の同じ位置に配置されている。換言すれば、第1偏光出力部152と第2偏光出力部154は、幅方向に沿って、一列に配列されている。第1偏光出力部152と第2偏光出力部154は、それぞれ第1透過領域162と第2透過領域166の上方に配置されている。
【0076】
図11は、別の実施形態によるマスクの底面図である。図11の透過領域内に示す矢印は、各透過領域を透過する偏光の偏光方向の一例である。図11に示すように、本実施形態のマスク238は、マスク基材256と、マスク基材256の下面に形成された遮光層258とを有する。遮光層258には、上流側透過領域262及び下流側透過領域266として機能する開口部が形成されている。マスク238では、幅方向において、上流側透過領域262と下流側透過領域266との間には、間隔Aが開けられている。
【0077】
マスク238によって露光された位相差板は、マスク238の間隔Aに形成された遮光層258によって、ランダム配向部が形成されている。ランダム配向部は、配向膜120及び液晶膜122が、露光されなかったために配向されていない領域である。ランダム配向部は、マスク238の間隙Aに対応して、図1における偏光変調部104及び偏光変調部106との間に形成されている。
【0078】
図12は、別の実施形態によるマスクの底面図である。図12に示すように、本実施形態のマスク338は、マスク基材356と、マスク基材356の下面に形成された遮光層358とを有する。遮光層358には、上流側透過領域362及び下流側透過領域366として機能する開口部が形成されている。マスク338では、幅方向において、上流側透過領域362と下流側透過領域366とが重複する重複領域Bが形成されている。これにより、上流側透過領域362を透過する第1偏光と、下流側透過領域366を透過する第2偏光との両方によって、フィルム90の一部が露光される。この結果、マスク基材356の重複領域Bに対応して、図1における偏光変調部104及び偏光変調部106との間に異なる配向を有する領域が形成された位相差板が製造される。
【0079】
図13は、別の実施形態によるマスクの底面図である。図13に示すように、本実施形態のマスク438では、マスク基材が、上流側マスク基材456と、上流側マスク基材456とは別部材の下流側マスク基材556とを有する。上流側マスク基材456の下面には、上流側遮光層458が形成されている。上流側遮光層458には、上流側透過領域462として機能する複数の開口が形成されている。下流側マスク基材556の下面には、下流側遮光層558が形成されている。下流側遮光層558には、下流側透過領域566として機能する複数の開口が形成されている。
【0080】
図14は、別の実施形態によるマスクの底面図である。図14に示すように、本実施形態のマスク638は、マスク基材656と、マスク基材656の下面に形成された遮光層658とを有する。遮光層658には、透過領域662として機能する開口部が形成されている。透過領域662は、フィルム90の長手方向と交差する幅方向に延びる矩形状に形成されている。本実施形態では、偏光を出力する偏光出力部634を備える。マスク638の透過領域662は、偏光出力部634とフィルム90との間に配置され、偏光出力部634から出力される偏光を透過する透過領域を有する。これにより、フィルム90を搬送しつつ、マスク638を介して、フィルム90を露光することにより、全面が同一方向の光学軸を有し、一方向の偏光を透過する偏光板または位相差板等を製造することができる。尚、全面が同一方向の光学軸を有し、一方向の偏光を透過する偏光板または位相差板を露光する場合、マスクを設けずに露光してもよい。
【0081】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0082】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【0083】
上述した実施形態の一部を変更した実施形態について説明する。上述した実施形態では、フィルム状製品の製造方法により製造されたフィルムの一例として位相差板100を例にあげたが、位相差板以外のフィルム状製品の製造方法に本発明を適用してもよい。例えば、ネガ型及びポジ型のフォトレジストを用いて製造されるフィルム状製品及びその製造方法について本発明を適用してもよい。
【0084】
上述した実施形態の各構成の配置、形状、個数は適宜してよい。例えば、上述の実施形態では、配向膜塗布部14、配向膜乾燥部16、液晶膜塗布部20、液晶膜配向部22、液晶膜硬化部24の配置は適宜変更してよい。一例として、配向膜塗布部14及び液晶膜塗布部20の何れかまたは全てをフィルム90の下方に配置してもよい。従って、配向膜120及び液晶膜122が、フィルム90の下面に塗布するように構成してもよい。
【0085】
上述した実施形態では、第1偏光及び第2偏光の偏光方向を互いに直交させたが、第1偏光の偏光方向と第2偏光の偏光方向の関係は、製造する位相差板100の設計によって、任意の角度に交差させることができる。これに伴って、第1偏光及び第2偏光によっては移行される配向膜120及び液晶膜122の各領域の配向方向も交差していればよく、必ずしも直交させる必要はない。
【0086】
上述した実施形態では、フィルム90を搬送しつつ、露光したが、フィルム90を搬送する搬送ステップと、フィルム90を露光する露光ステップとを交互に実行してもよい。ここで、1回の搬送ステップでは、露光領域の長手方向の長さ以下、フィルム90を搬送する。
【0087】
上述した実施形態では、フィルム90に張力を付与するために、上流側張力ロール44と下流側張力ロール46との両側に上流側エア吐出部32及び下流側エア吐出部42を設けたが、上流側エア吐出部32及び下流側エア吐出部42の代わりにロールを設けてもよい。
【0088】
上述した実施形態では、フィルム90を挟み、上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46とは反対側に偏光光源34及びマスク38を配置したが、上流側張力ロール44、下流側張力ロール46、偏光光源34、及び、マスク38をフィルム90の同じ側に配置してもよい。即ち、上流側張力ロール44、下流側張力ロール46、偏光光源34、及び、マスク38をフィルム90の下側または上側に配置してもよい。これにより、偏光光源34から出力されてフィルム90を透過した偏光が、上流側張力ロール44及び下流側張力ロール46によって反射されてフィルム90を露光することを、更に、低減できる。
【符号の説明】
【0089】
10 位相差板製造装置
12 送り出しロール
14 配向膜塗布部
16 配向膜乾燥部
18 露光部
20 液晶膜塗布部
22 液晶膜配向部
24 液晶膜硬化部
26 セパレートフィルム供給部
28 巻き取りロール
32 上流側エア吐出部
34 偏光光源
38 マスク
40 マスク保持部
42 下流側エア吐出部
44 上流側張力ロール
46 下流側張力ロール
50 上流側偏光出力部
51 上流側偏光出力面
52 下流側偏光出力部
53 下流側偏光出力面
56 マスク基材
58 遮光層
62 上流側透過領域
66 下流側透過領域
80 露光領域
81 第1露光領域
82 第2露光領域
90 フィルム
92 セパレートフィルム
100 位相差板
102 切断フィルム
104 偏光変調部
106 偏光変調部
110 矢印
112 矢印
114 矢印
116 矢印
120 配向膜
122 液晶膜
134 偏光光源
138 マスク
144 上流側張力ロール
152 第1偏光出力部
154 第2偏光出力部
156 マスク基材
158 遮光層
162 第1透過領域
166 第2透過領域
238 マスク
256 マスク基材
258 遮光層
262 上流側透過領域
266 下流側透過領域
338 マスク
356 マスク基材
358 遮光層
362 上流側透過領域
366 下流側透過領域
438 マスク
456 上流側マスク基材
458 上流側遮光層
462 上流側透過領域
556 下流側マスク基材
558 下流側遮光層
566 下流側透過領域
634 偏光出力部
638 マスク
656 マスク基材
658 遮光層
662 透過領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のフィルムを長手方向に搬送する搬送ステップと、
予め定められた露光領域を露光する露光装置を用いて、前記フィルムを露光する露光ステップと
を備え、
前記搬送ステップおよび前記露光ステップにおいて、前記露光装置の前記露光領域における前記長手方向の長さよりも長く、切れ目なく前記フィルムを露光するフィルム状製品の製造方法。
【請求項2】
前記露光領域は、第1偏光によって露光される第1露光領域と、前記第1偏光と偏光方向の異なる第2偏光によって露光される第2露光領域とを含み、
前記第1露光領域、及び、前記第2露光領域は、長手方向において、異なる位置に配置されている
請求項1に記載のフィルム状製品の製造方法。
【請求項3】
前記露光ステップでは、
第1偏光出力部から出力されてマスクを透過した前記第1偏光、及び、前記第1偏光出力部と長手方向において異なる位置に配置された第2偏光出力部から出力されて前記マスクを透過した前記第2偏光によって、前記フィルムを露光するステップを含み、
前記マスクは、
前記第1偏光出力部と前記フィルムとの間に配置され、前記第1偏光を透過する第1透過領域と、
前記第2偏光出力部と前記フィルムとの間に配置され、前記第2偏光を透過する第2透過領域と
を有し、
前記第1透過領域、及び、前記第2透過領域は、少なくとも一部が前記長手方向と交差する幅方向において、異なる位置に配置されている
請求項2に記載のフィルム状製品の製造方法。
【請求項4】
前記露光ステップでは、
偏光出力部から出力されてマスクを透過した偏光によって、前記フィルムを露光するステップを含み、
前記マスクは、前記長手方向と交差する幅方向に延び、前記偏光出力部と前記フィルムとの間に配置され、前記偏光を透過する透過領域を有する
請求項1に記載のフィルム状製品の製造方法。
【請求項5】
前記露光ステップでは、前記フィルムが、前記露光領域を挟んで配置された一対の張力ロールにより与えられる張力によって支持される
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフィルム状製品の製造方法。
【請求項6】
前記一対の張力ロールの少なくとも一方は、長手方向と交差する幅方向の中央部に凹部が形成されたコンケーブロールである
請求項5に記載のフィルム状製品の製造方法。
【請求項7】
前記一対の張力ロールのうち、搬送方向の上流側の張力ロールが前記コンケーブロールである
請求項6に記載のフィルム状製品の製造方法。
【請求項8】
前記露光ステップでは、前記搬送ステップによる前記フィルムの搬送が実行されつつ、前記フィルムが露光される
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のフィルム状製品の製造方法。
【請求項9】
前記露光ステップと前記搬送ステップとが交互に実行され、
前記搬送ステップでは、前記露光領域の長手方向の長さ以下、前記フィルムを搬送する
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のフィルム状製品の製造方法。
【請求項10】
長尺状のフィルムを長手方向に搬送する搬送部と、
予め定められた露光領域で前記フィルムを露光する露光部と
を備え、
前記露光領域における前記長手方向の長さよりも長く、切れ目なく前記フィルムを露光するフィルム状製品の製造装置。
【請求項11】
前記露光部は、第1偏光を出力する第1偏光出力部と、前記第1偏光の偏光方向と異なる偏光方向を有する第2偏光を出力する第2偏光出力部とを有し、
前記第1偏光出力部及び前記第2偏光出力部は、長手方向において、異なる位置に配置されている
請求項10に記載のフィルム状製品の製造装置。
【請求項12】
前記露光部は、マスクを有し、
前記マスクは、
前記第1偏光出力部と前記フィルムとの間に配置され、前記第1偏光を透過する第1透過領域と、
前記第2偏光出力部と前記フィルムとの間に配置され、前記第2偏光を透過する第2透過領域と
を有し、
前記第1透過領域、及び、前記第2透過領域は、少なくとも一部が前記長手方向と交差する幅方向において、異なる位置に配置されている
請求項11に記載のフィルム状製品の製造装置。
【請求項13】
前記露光部は、偏光を出力する偏光出力部と、前記偏光を透過するマスクを有し、
前記マスクは、前記長手方向と交差する幅方向に延び、前記偏光出力部と前記フィルムとの間に配置され、前記偏光を透過する透過領域を有する
請求項10に記載のフィルム状製品の製造装置。
【請求項14】
前記露光部は、前記露光領域を挟んで配置され、前記フィルムに張力を付与する一対の張力ロールを有する
請求項10〜13のいずれか1項に記載のフィルム状製品の製造装置。
【請求項15】
前記一対の張力ロールのうち、上流側の張力ロールは、前記長手方向と交差する幅方向の中央部に凹部が形成されたコンケーブロールである
請求項14に記載のフィルム状製品の製造装置。
【請求項16】
前記露光部よりも搬送方向の上流側に配置され、前記フィルムに露光材料を塗布する塗布部を更に備え、
前記一対の張力ロールは、前記フィルムの面のうち、前記露光材料が塗布されていない面を押圧する
請求項14または15に記載のフィルム状製品の製造装置。
【請求項17】
前記搬送部による前記フィルムの搬送が継続されつつ、前記露光部によって前記フィルムが露光される
請求項10〜請求項16のいずれか1項に記載のフィルム状製品の製造装置。
【請求項18】
長尺状のフィルムを長手方向に搬送しつつ、偏光出力部からの第1偏光及び第2偏光により前記フィルムを露光するためのマスクであって、
第1偏光を透過する第1透過領域と、
前記第1偏光と偏光方向が交差する第2偏光を透過する第2透過領域と
を備え、
前記第1透過領域、及び、前記第2透過領域は、少なくとも一部が前記長手方向と交差する幅方向において、異なる位置に配置されている
マスク。
【請求項19】
前記第1透過領域、及び、前記第2透過領域は、前記フィルムの長手方向において、異なる位置に配置されている
請求項18に記載のマスク。
【請求項20】
長尺状のフィルムを長手方向に搬送しつつ、偏光出力部からの偏光により前記フィルムを露光するためのマスクであって、
前記長手方向と交差する幅方向に延び、前記偏光出力部と前記フィルムとの間に配置され、前記偏光を透過する透過領域を有する
マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−159713(P2012−159713A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19633(P2011−19633)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】