説明

フィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットの製造方法及びそれを用いたポリアミド樹脂フィルム

【解決手段】溶融重縮合して得られたポリアミド樹脂をストランド状に押し出し、これを冷却・固化後、回転式カッターで切断し、更に含有される微粉を分離して微粉含有量を20重量ppm以下にすることを特徴とするフィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットの製造方法。
【効果】本発明のポリアミド樹脂は、化合物を配合することなく、且つ耐熱性、滑り性、透明性を損なうことなく、フィッシュアイが少なく外観を向上した、より商品価値の高いポリアミド樹脂フィルムを提供することが可能である。さらには、フィルム成形時の押出機シリンダ温度が250℃を超えるような昨今の高流量吐出対応の成形の場合において生産性を高くする効果が期待でき、その工業的価値は極めて高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットの製造方法及びそれを用いたポリアミド樹脂フィルムに係る。詳しくはフィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットの微粉含有量の少ないポリアミド樹脂ペレットの製造方法に関し、フィッアイが少なく、表面外観に優れたポリアミド樹脂フィルムを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂フィルムは、ポリプロピレンフィルムやポリエステルフィルム等に比べ、優れた機械的特性、耐熱性、透明性、ガスバリヤー性などの特徴を有しており、食品、医薬品、雑貨などの包装用フィルムとして広く利用されている。
【0003】
これらの特徴の中でも、外観は商品価値の点から極めて重要であり、それを損なう要素としてフィッシュアイと称される粒状欠陥が挙げられる。
【0004】
ポリアミド樹脂フィルムのフィッシュアイの発生を抑えるため、特許文献1では末端基量の制御、ビスアミド化合物及び無機フィラー粒子の配合を提案している。特許文献2では炭素数12〜30のヒドロキシ脂肪酸のマグネシウム塩の配合を提案している。さらに特許文献3では無機フィラー粒子、3〜6価の脂肪族アルコールと炭素数10〜22の脂肪酸との部分エステル化合物、及び炭素数12〜30のヒドロキシ脂肪酸のマグネシウム塩の配合を提案している。
【0005】
しかしながら、フィルム成形時の押出機シリンダー温度が250℃を超えるような昨今の高流量吐出対応の成形条件では、フィッシュアイの抑制が未だ十分とは言えず、生産性向上の妨げになっているのが現状である。これまでに提案されている化合物配合によるフィッシュアイの抑制方法は、配合量の増大に伴い耐熱性や透明性等が低下するため、化合物配合によらないフィッシュアイの抑制方法が望まれている。
【特許文献1】特開平5−59275号公報
【特許文献2】特開平6−179813号公報
【特許文献3】特開2005−132929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、化合物配合以外の手法を用いて、フィルムとして重要な特性である耐熱性、滑り性、透明性を損なうことなく、フィルムの表面外観を向上したポリアミド樹脂フィルムを与える、フィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行った結果、ポリアミド樹脂ペレットの微粉含有量が20重量ppm以下であるポリアミド樹脂により、耐熱性、滑り性、透明性を損なうことなく、フィルムの表面外観を向上したポリアミド樹脂フィルムが得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、溶融重縮合して得られたポリアミド樹脂をストランド状に押し出し、これを冷却・固化後、回転式カッターで切断し、更に含有される微粉を分離して微粉含有量を20重量ppm以下にすることを特徴とするフィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットの製造方法に存する
【0009】
また、本発明の他の要旨は、溶融重縮合して得られたポリアミド樹脂を直径1.5〜2.8mmのストランドに押し出し、これを冷却・固化後、回転式カッターで長さ2〜3mmに切断し、更に含有される微粉を分離してその含有量を20重量ppm以下にすることを特徴とする前記のフィルム用途向けポリアミド樹脂の製造方法に存する。
【0010】
また、本発明の他の要旨は、前記方法により製造したフィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットをT−ダイ又は環状ダイから溶融状態で押出成形してなるポリアミド樹脂フィルムに存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリアミド樹脂は、化合物を配合することなく、且つ耐熱性、滑り性、透明性を損なうことなく、フィッシュアイが少なく外観を向上した、より商品価値の高いポリアミド樹脂フィルムを提供することが可能である。さらには、フィルム成形時の押出機シリンダ温度が250℃を超えるような昨今の高流量吐出対応の成形の場合において生産性を高くする効果が期待でき、その工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明のポリアミド樹脂ペレットの製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
本発明のポリアミド樹脂とは、3員環以上のラクタム、アミノ酸、ジカルボン酸とジアミンとの重縮合によって得られる分子鎖中にアミド結合を有する高分子であり、具体例としては、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)メタン、キシリレンジアミン等のジアミンとの重縮合で得られる重合体又はこれらの共重合体であり、これらの重合体又は共重合体を任意の割合でブレンドして用いてもよい。中でも、得られるポリアミド樹脂フィルムの熱的・機械的特性の面から、特にポリアミド6、ポリアミド6/66共重合体が好ましい。
【0014】
本発明のポリアミド樹脂の重合方法としては、公知の方法が適用可能であり、例えば、「ポリアミド樹脂ハンドブック」(福本修編、日刊工業社出版、1988年1月30日、初版発行)等に開示されている方法が使用できる。重合法としては加熱重縮合が好ましく、加熱重縮合後、更に固相重合させることによって分子量を上昇させることも可能である。固相重合は、例えば100℃以上融点以下の温度範囲で、真空中、あるいは不活性ガス中で加熱することにより進行させることができるが、固相重合法を採用する場合には本発明の改良効果が特に大きい。重合方式は回分式並びに連続方式の何れも用いることができる。
【0015】
本発明のポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、濃度を0.01g/mlとした98重量%硫酸溶液の25℃における相対粘度が1.5〜8.0であることが好ましく、1.8〜5.0であることが更に好ましい。特に好ましくは3.2〜4.5である。この相対粘度が1.5未満では、実用的強度が不十分であり、8.0を超えると、流動性が低下し、成形加工性が損なわれるので好ましくない。
【0016】
本発明におけるポリアミド樹脂には本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば結晶核剤(タルク、カオリン、シリカ、窒化ホウ素等の無機質微粒子や金属酸化物、高融点ナイロン等)、酸化防止剤や熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N?ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリスチレン等)を、樹脂の重合から成形までの任意の段階で配合することができる。
【0017】
本発明において、次いで、上記の方法で得たポリアミド樹脂をペレット化する。ペレットはチップ、粒状物などと呼ばれることもあるが、それらは実質的に同一物であり、本発明では代表してペレットと記載したものである。通常、ペレット化工程は重縮合工程で得られた溶融状態のポリアミド樹脂を直径1.3〜3mm程度のストランド状に押し出し、これを1槽又は複数槽からなる冷却水槽に導いて冷却固化するが、本発明においては、ストランド直径は1.5〜2.8mmが好ましい。ストランド直径が小さいとペレット化の際にカッティングし難く、大きいとペレット化の際に微粉が発生しやすいので好ましくない。冷却水槽には5〜20℃の水が並流又は向流で導入される。冷却が不充分になるとストランドの温度が高くなり、次の切断工程での切れ味が悪く、一方低いと微粉の発生が起こり易い。ストランドの断面形状は通常円形であるが、楕円形、四角形などでもよい。
【0018】
ストランドを切断する際のストランド表面温度は通常10〜120℃、好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは40〜80℃である。切断時のストランド表面温度が10℃未満の場合は、ストランドが硬くなり微粉量が増加し、120℃を越える場合はストランドが柔らかくなりカッティングし難くなるので好ましくない。さらに切断されたペレットは気力輸送によりサイロ等に送られるが、気力輸送は微粉が発生しにくい高濃度低速気力輸送が好ましい。気力輸送は、低濃度高速気力輸送と高濃度低速気力輸送に大別されるが、前者は分散流のためペレット同士、あるいはペレットと配管との摩擦により微粉が発生しやすいのに対し、後者はプラグ流のためペレット同士、あるいはペレットと配管との摩擦が少なく微粉が発生しにくい。その他、ストランドの切断条件等を制御して微粉の発生を抑えることが好ましい。
【0019】
固化した連続ストランドは回転カッター等で長さ2〜3mmに切断してペレット化される。切断の容易性、微粉の発生防止等を考慮のうえ、切断の条件が設定される。例えば、切断速度(ストランド走行速度)としては通常30〜300m/分程度が選択される。
【0020】
次いで得られたペレットを沸騰水や高温カプロラクタム水溶液で処理して未反応モノマー、及び環状ダイマー等のオリゴマーなどを抽出除去する。抽出液に沸騰水を用いると未反応モノマーの抽出除去効果が高く、抽出液に高温カプロラクタム水溶液を用いると未反応オリゴマーの抽出除去効果が高くなる。従って、高温カプロラクタム水溶液で抽出を行い、その後に沸騰水で抽出を行うと、未反応モノマー、オリゴマーを効率よく抽出することが可能であり好ましい。高温カプロラクタム水溶液の温度は70〜100℃が好ましい。温度が低いと抽出効率が低下するので好ましくない。高温カプロラクタム水溶液の濃度としては、通常2〜20重量%の範囲が用いられる。抽出後は、100〜130℃で減圧下又は通風下に乾燥して水分量を通常0.2重量%以下、好ましくは0.1重量%以下として製品化する。場合によっては、前記したように所定の加熱条件下に更に固相重合を行うこともできる。
【0021】
上記の方法で得られたポリアミド樹脂ペレットは、見かけ上、長さ、直径、形状が同一で殆ど粒度分布、形状分布のないものであるが、ストランドの切断工程、貯蔵・搬送工程などで少量の微粉が発生するので、それが混入されているものである。本発明における微粉は、ポリアミド樹脂の微粉のことであり、ポリアミド樹脂以外の微粉はこれに該当しない。また、本発明における微粉とは、JIS標準篩の20メッシュ篩(目開き0.84mm)を通過するものを指称し、その測定法の詳細は以下に記述する通りである。回転カッターで切断して得られるペレット中の微粉含有量は100〜1000重量ppm程度が通常である。本発明においては、この微粉含有量を20重量ppm以下、好ましくは10重量ppm以下に制御する必要がある。微粉量が多いとフィッシュアイが多くなるので好ましくない。ポリアミド樹脂の微粉含有量を制御する方法には特に制限はないが、発生した微粉の除去法としては、気流分離、静電除去分離又は篩分が好ましい。気流分離は気流を利用してペレットから微粉を除去するものであり、物質の重量により異なる浮遊速度の違いを利用した分離法である。一方、静電除去分離は、コロナ放電等により静電除去して、ペレットに付着している静電気を中和させ、衝撃板等を用いてペレットと微粉を分離する方法である。
【0022】
本発明におけるポリアミド樹脂の微粉含有量の評価方法は、ポリアミド樹脂試料200gを、ステンレス製JIS標準篩(外径200mm、20メッシュ)に入れ上蓋をして、JIS標準篩を100往復(1往復の距離は40cm、1往復する時間は1秒)して、JIS標準篩から落下したポリアミド樹脂量を測定する。微粉含有量は、ポリアミド樹脂試料に対する重量ppmで表示される。
【0023】
本発明におけるポリアミド樹脂中のモノマー量は0.1重量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.08重量%以下である。0.1重量%を超えると、ヘーズが高くなり、透明性が低下するので好ましくない。
【0024】
本発明におけるポリアミド樹脂中の環状ダイマー量は通常0.06重量%以下であり、好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.04重量%以下である。0.06重量%を超えると、ヘーズが高くなり、透明性が低下するので好ましくない。
【0025】
本発明におけるポリアミド樹脂中のモノマー、及び環状ダイマーの分析方法は、粉砕したポリアミド樹脂試料5g、メタノール125mlを500ml丸底フラスコに入れ、この丸底フラスコを65℃の湯バスに2時間浸漬して、未反応モノマー、及び環状ダイマーを抽出する。抽出液中のモノマー、環状ダイマーは、H 2 O/メタノールを溶離液として、210nmUVにて直接液体クロマトグラフ分析(LC)することにより分離、定量する。定量結果から、上記ポリアミド樹脂中のモノマー、及び環状ダイマー量を算出する。
【0026】
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。各種特性の評価方法、各種評価用サンプルの作成等を以下に示す。
【0027】
<評価方法>
[相対粘度(ηr)]
98%硫酸中、0.01g/ml濃度、25℃で、オストワルド式粘度計を用いて測定した。
【0028】
[ポリアミド樹脂の微粉含有量]
ポリアミド樹脂試料200gを、ステンレス製JIS標準篩(外径200mm、20メッシュ)に入れ上蓋をして、JIS標準篩を100往復(1往復の距離は40cm、1往復する時間は1秒)して、JIS標準篩から落下した微粉量をポリアミド樹脂微粉量とした。含有量はポリアミド樹脂試料に対する重量ppmで表示した。
【0029】
[ポリアミド樹脂中のモノマー、及び環状ダイマー]
凍結粉砕器(米国SPEX社製、フリーザーミルNo6750)にて粉砕したポリアミド樹脂試料5g、メタノール125mlを500ml丸底フラスコに入れ、この丸底フラスコを65℃の湯バスに2時間浸漬して、未反応モノマー、及び環状ダイマーを抽出した。抽出液中のモノマー、環状ダイマーは、H 2 O/メタノールを溶離液として、HPLC(島津製作所製、検出器:SPD−10A)を用いて、30℃、210nmUV、直接液体クロマトグラフ分析することにより分離、定量した。得られた定量結果から、上記ポリアミド樹脂中のモノマー、及び環状ダイマー量を算出した。
【0030】
[フィッシュアイ数]
ポリアミド樹脂原料を、押出機シリンダー径が30mmφのT−ダイ式製膜機を用いて40μm厚みのポリアミド樹脂フィルムを製膜する。製膜条件は、押出機のシリンダー設定温度が280℃、ポリアミド樹脂フィルムを巻き取る冷却ロール温度が90℃、吐出量が2kg/時である。製膜開始から15分が経過した直後のポリアミド樹脂フィルムを評価用サンプルとし、面積が900cm2中における、大きさが50μm以上のフィッシュアイの数を数える。
【0031】
[融点(耐熱性)]
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製ロボットDSC)を用い、窒素雰囲気下、試料を約5mg採取し、270℃で完全に融解させて3分間保持した後、20℃/分の降温速度で30℃まで降温し、これに続いて30℃で3分間保持した後、30℃から20℃/分の昇温速度で昇温したときに観測される吸熱ピークの温度を融点とした。
【0032】
[静止摩擦係数(滑り性)]
相対湿度65%、温度23℃の条件下、平行移動式により静止摩擦係数を測定した。
【0033】
[ヘーズ(透明性)]
ヘーズメータ(東京電色社製)を用いてヘーズ値を測定した。
【0034】
[フィルム外観]
フィルム外観を目視して、下記3段階で評価した。
◎:フィッシュアイなど外観異常が認められず、フィルム表面外観レベルが極めて良好
○:フィッシュアイなど外観異常が少なく、フィルム表面外観レベルが良好
△:フィッシュアイなど外観異常が多く、フィルム表面外観レベルが良好ではない
【0035】
<実施例1>
三菱化学社製カプロラクタム25kg、水0.75kg、亜リン酸水素2ナトリウム5水和物1.74gを容器に入れ、窒素置換した後に100℃にて溶解した。この原料水溶液をオートクレーブに移送し、ジャケット温度を280℃に設定して加熱を開始した。内容物を270℃迄昇温した後、オートクレーブの圧力を除々に放圧した後、更に減圧して所定の攪拌動力に到達した時点で重縮合反応を終了した。反応終了後、窒素にて復圧し、内容物を直径2mmのストランド状に冷却水槽へ導入後、回転式カッターで長さ2〜3mmにペレット化した。得られたペレット及び沸騰水(該ペレットの1.5倍量)を容器に入れ、60分間、容器を加熱して沸騰させ続けて後、抽出液のみを抜出して1回目の抽出操作を行なった。2回目の抽出操作は、新たな沸騰水(該ペレットの1.5倍量)を容器に入れて、上記操作を繰り返した。抽出操作は都合5回行なった。未反応物を除去したペレットは120℃、1torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1%以下となる迄乾燥を行い、ポリアミド樹脂を得た。相対粘度は3.69であった。
【0036】
得られたポリアミド樹脂の相対粘度を更に上げるために、相対粘度3.69のポリアミド樹脂6kgを内容積10リットルのエバポレーター型固相重合装置を用い、窒素気流下、170℃で24時間固相重合を行い、相対粘度4.50のポリアミド樹脂を得た。このポリアミド樹脂中の微粉含有量は23重量ppmであった。
【0037】
上記で得られた相対粘度4.50のポリアミド樹脂200gを、ステンレス製JIS標準篩(外径200mm、20メッシュ)に入れ、JIS標準篩を100往復(1往復の距離は40cm、1往復する時間は1秒)することにより、篩下となった微粉の全量を除去した。同様の操作を3回繰り返し、微粉除去ポリアミド樹脂600gを調整した。
【0038】
相対粘度4.50のポリアミド樹脂(微粉含有量は23重量ppm)600gと、微粉除去ポリアミド樹脂600gをドライブレンドしてポリアミド樹脂サンプル(a)を得た。
【0039】
得られたポリアミド樹脂サンプル(a)100重量部に、ゼオライト(水澤化学工業社製、シルトンJC50、平均粒径5.5μm)0.2重量部、エチレンビスステアリン酸アマイド(花王社製、カオーワックスEB?FF)0.1重量部をドライブレンドしたものを原料として、押出機シリンダー径が30mmφのT−ダイ式製膜機を用いて40μm厚みのポリアミドフィルムを製膜した。製膜条件は、押出機のシリンダー設定温度が280℃、ポリアミド樹脂フィルムを巻き取る冷却ロール温度が90℃、吐出量が2kg/時である。製膜開始から15分が経過した後にポリアミド樹脂フィルムサンプル(b)として採取した。
【0040】
ポリアミド樹脂サンプル(a)を用いてポリアミド樹脂微粉量を評価した。ポリアミド樹脂フィルムサンプル(b)を用いて、フィッシュアイ、融点、滑り性、ヘーズ、フィルム表面外観を評価した。評価結果を表1に示す。
【0041】
<実施例2>
上記で得られた相対粘度4.50のポリアミド樹脂(微粉含有量は23重量ppm)400gと相対粘度4.50の微粉除去ポリアミド樹脂800gをドライブレンドして評価用ポリアミド樹脂サンプルとした以外は、実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0042】
<実施例3>
上記で得られた相対粘度4.50のポリアミド樹脂(微粉含有量は23重量ppm)200gと相対粘度4.50の微粉除去ポリアミド樹脂1000gをドライブレンドして評価用ポリアミド樹脂サンプルとした以外は、実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0043】
<実施例4>
上記で得られた相対粘度4.50の微粉除去ポリアミド樹脂1200gをそのまま評価用ポリアミド樹脂サンプルとした以外は、実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0044】
<実施例5>
実施例1における沸騰水による抽出操作を5回行なう前に、100℃の10重量%カプロラクタム水溶液による抽出操作を1回60分間行なった以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂を得た。相対粘度は3.69であった。実施例1と同様に固相重合を行い、相対粘度4.51のポリアミド樹脂を得た。微粉含有量は22重量ppmであった。その後も実施例1と同様にしてポリアミド樹脂サンプル(a)、ポリアミド樹脂フィルムサンプル(b)を得て、実施例1と同様にして各種評価を行なった。評価結果を表1に示す。
【0045】
<比較例1>
相対粘度4.50のポリアミド樹脂(微粉含有量は23重量ppm)約1.2kgを評価用ポリアミド樹脂サンプルとした以外は、実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0046】
<比較例2>
沸騰水による抽出操作を3回行ない、相対粘度4.50のポリアミド樹脂(微粉含有量は22重量ppm)約1.2kgを評価用ポリアミド樹脂サンプルとした以外は、実施例1と同様にして各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0047】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融重縮合して得られたポリアミド樹脂をストランド状に押し出し、これを冷却・固化後、回転式カッターで切断し、更に含有される微粉を分離して微粉含有量を20重量ppm以下にすることを特徴とするフィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットの製造方法。
【請求項2】
ポリアミド樹脂の微粉含有量を10重量ppm以下にすることを特徴とする請求項1に記載のフィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットの製造方法。
【請求項3】
ポリアミド樹脂がポリアミド6であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットの製造方法。
【請求項4】
ポリアミド樹脂中のモノマー含有量が0.1重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットの製造方法。
【請求項5】
ポリアミド樹脂中の環状ダイマー含有量が0.05重量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットの製造方法。
【請求項6】
ポリアミド樹脂が溶融重縮合後、更に固相重合したものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットの製造方法。
【請求項7】
ポリアミド樹脂ペレットの長さが2〜3mmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットの製造方法。
【請求項8】
押し出されるポリアミド樹脂ストランドの直径が1.5〜2.8mmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットの製造方法。
【請求項9】
微粉の分離を気流分離、静電除去分離又は篩分で行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法により得られたフィルム用途向けポリアミド樹脂ペレットをT−ダイ又は環状ダイから溶融状態で押出成形してなるポリアミド樹脂フィルム。
【請求項11】
フィッシュアイの数が100個/900cm2以下であることを特徴とする請求項10に記載のポリアミド樹脂フィルム。
【請求項12】
フィッシュアイの数が50個/900cm2以下であることを特徴とする請求項10に記載のポリアミド樹脂フィルム。

【公開番号】特開2007−185950(P2007−185950A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331403(P2006−331403)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】