説明

フィルム除去方法およびフィルム処理装置

【課題】フィルムが容器に密着した状態を有効に緩和して、フィルム除去不良の低減を図る。
【解決手段】フィルム処理装置5は、搬送路4上を移動する容器2の側面に巻回されたフィルム3を、容器2に対して周方向に相対変位させる。フィルム切断装置6は、フィルム3を切断する。フィルム除去装置7は、フィルム処理装置5およびフィルム切断装置6による前処理が施されたフィルム3を吸引して、容器2から除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム除去方法およびフィルム処理装置に係り、特に、搬送路上を移動する容器に付されたフィルムの除去に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばビール瓶やビール樽といった飲料用容器は、使用後に洗浄等の処理を施した上で再使用される。このようなリターナブル容器の中には、商品名等を表示するラベルといった帯状のフィルムが側面に巻き付けられているものがある。帯状のフィルムとしては、ポリプロピレン等の熱収縮性フィルムが用いられることが多い。リターナブル容器を再使用する際は、その洗浄前に、容器に巻回されたフィルムを切断・除去する必要がある。
【0003】
フィルムを切断する際の補助技術として、例えば特許文献1,2が知られている。特許文献1には、フィルムの切断に先立ち、フィルムの端部に向かってエア(圧縮空気)を噴射し、容器の表面とフィルムの裏面との間に若干の空気層を形成することで、容器とフィルムとの密着性を緩和する点が開示されている。また、特許文献2には、合成樹脂等によって形成された軟質の容器を傷つけることなく、自己伸縮性を有するフィルムを切断する点が開示されている。具体的には、フィルムを切断する際、フィルムの一端を容器から離間、すなわち間をあけて離し、この離間したフィルムの一端と容器との間にガイド体を差し込む。この状態で、ガイド体および容器を容器の軸方向に相対移動させ、フィルムの一端から他端に至るまでの全長にわたってフィルムを切断する。その際、フィルムには弾性収縮による張力が容器の周方向に作用するため、容器に巻回されたフィルムを切断できる。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−164991号公報
【特許文献2】特開平8−112577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1のようにエアを噴射する手法だけを用いる場合、容器の表面にフィルムが密着した状態を有効に緩和できず、その結果、フィルムの除去不良が依然として発生してしまう。また、特許文献2のようにガイド体を差し込む手法を用いる場合、フィルムと容器との隙間が微少であり、かつ、容器毎に隙間の状態が異なるので、ガイド体の位置合わせが容易ではない。そのため、この作業を自動化する際には、ガイド体の位置制御に高い精度が要求され、設備コストの増大を招くといった問題が生じる。本発明者は、容器の表面とフィルムの裏面との間に介在する水分が、あたかも両者を強固に接合する接着剤のように作用する結果、フィルムが剥がれにくいのではないかと考えた。そして、この考え方に基づき鋭意研究を重ねた結果、これを比較的簡易な手法で解決する実用的な解決策を見い出すに至った。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、容器の表面にフィルムが密着した状態を有効に緩和し、フィルム除去不良の低減を図ることである。
【0007】
また、本発明の別の目的は、容器の表面にフィルムが密着した状態を有効に緩和するための新規なフィルム処理装置を提供することである。
【0008】
さらに、本発明の別の目的は、フィルム除去工程の自動化を低コストで実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、変位ステップと、切断ステップと、除去ステップとを有するフィルム除去方法を提供する。変位ステップおよび切断ステップは、除去ステップの前処理として行われるが、これらの前後は問わない。変位ステップでは、搬送路上を移動する容器の側面に巻回された帯状のフィルムを、容器に対して周方向に相対変位させる。切断ステップでは、フィルムを切断する。除去ステップでは、周方向への相対変位と、切断とが施されたフィルムを吸引して容器から除去する。
【0010】
ここで、第1の発明において、上記変位ステップは、容器に対して相対変位する摩擦部材の摩擦面をフィルムに押圧し、摩擦面とフィルムとの間に生じる摩擦力を用いて、フィルムを容器に対して周方向に相対変位させるステップであることが好ましい。また、上記変位ステップは、容器におけるフィルムが巻回されていない側面に当接した可動ベルトの動きによって、容器を自転させるステップをさらに有することが好ましい。また、フィルムを容器に対して周方向に相対変位させる処理を繰り返してもよい。また、上記変位ステップは、容器とフィルムとの隙間にエアを噴射するステップをさらに有していてもよい。
【0011】
第2の発明は、摩擦部材と、付勢部とを有するフィルム処理装置を提供する。摩擦部材は、搬送路上における容器の移動に追従して、容器に対して相対変位する。また、摩擦部材は、容器の側面に巻回された帯状のフィルムに当接する摩擦面を有する。付勢部は、摩擦面をフィルムに押圧することによって、フィルムを容器に対して周方向に相対変位させる。
【0012】
ここで、第2の発明において、容器の移動に追従して相対変位した摩擦部材は、摩擦面がフィルムと離間したことにともない、付勢部の付勢力によって初期状態に復帰することが好ましい。また、摩擦部材は、搬送路に沿って離間して複数配置されていてもよい。また、第2の発明において、ガイド部材と、可動ベルトとをさらに設けてもよい。ガイド部材は、搬送路に沿って延在し、搬送路の幅方向における容器の変位を規制する。可動ベルトは、ガイド部材と対向して延在し、ガイド部材によって変位が規制された容器におけるフィルムが巻回されていない側面に当接して、容器を自転させる。また、容器とフィルムとの隙間にエアを噴射するエア吹出口をさらに設けてもよい。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、フィルムの除去に先立ち、フィルムを周方向に相対変位させることで、容器の表面にフィルムが密着した状態を有効に緩和できる。そして、このような前処理が施された切断後のフィルムを吸引・除去すれば、フィルム除去不良の低減を図ることが可能になる。それとともに、比較的簡易な手法によってフィルムの密着状態を有効に緩和できるので、フィルム除去工程の自動化を低コストで実現できる。
【0014】
また、第2の発明によれば、容器に対して相対変位する摩擦部材の摩擦面をフィルムに押圧する。これによって、摩擦面とフィルムとの間に摩擦力が生じて、容器に対してフィルムが周方向に相対変位する。その結果、容器の表面にフィルムが密着した状態を有効に緩和できる。それとともに、比較的簡易な機構によってフィルムの密着状態を有効に緩和できるので、フィルム除去工程の一部、すなわち、フィルムの前処理の自動化を低コストで実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、フィルム除去工程における自動化処理ラインの構成図である。この自動化処理ライン1は、リターナブルな容器2を処理対象とし、この容器2の側面に巻回されたフィルム3の前処理を行った上で、フィルム3を切断する。本実施形態では、容器2の一例として、使用後に再使用され、略円柱形状を有する金属製のビール樽を想定している。容器2の側面には、その外周に沿って帯状のフィルム3、例えば、表品名等を表示するためのラベルが密着被覆されている。フィルム3の材質としては、例えば、ポリプロピレン等からなる熱収縮性フィルムを用いることができる。容器2の再使用にあたっては、容器2の洗浄に先立ち、本自動化処理ライン1において、容器2の側面に巻回されたフィルム3の除去が行われる。
【0016】
容器2は、搬送路4上に一定の間隔で複数置かれており、搬送路4によって規定される搬送方向に移動する。搬送路4には、その上流から下流に向かって、フィルム処理装置5、フィルム切断装置6、フィルム除去装置7が順に配置されている。フィルム処理装置5は、容器2の表面にフィルム3が密着した状態を緩和するための処理、すなわち「ほぐし処理」を行う。
【0017】
フィルム切断装置6は、容器2に巻回されたフィルム3をその幅方向に切断する。フィルム3の切断は、既存の切断手法のうちの任意のものを用いることができる。例えば、(1)特開2005−324168号公報、特開2002−316115号公報または特開平10−263495号公報に開示された熱風を用いた切断手法、(2)特開2003−252317号公報に開示された水圧を利用した切断手法、(3)特開平2−86882号公報に開示された電磁波の照射を利用した切断手法、(4)特開平9−276816号公報または特開平7−16553号公報に開示されたレーザ光の照射を利用した切断手法、(5)ワイヤブラシを利用した切断手法といった如くである。
【0018】
フィルム除去装置7は、フィルム処理装置5によるほぐし処理と、フィルム切断装置6による切断処理とが施されたフィルム3を容器2の表面から剥離・除去する。具体的には、フィルム3の除去は、フィルム除去装置7が備える吸引口をフィルム3の表面近傍に配置し、或いは、フィルム3の表面に当接させ、吸引口よりバキュームで吸引することによって行われる。
【0019】
なお、フィルム除去の前処理にあたるほぐし処理および切断処理は、どちらが先でも構わない。したがって、図1に示した構成において、フィルム切断装置6をフィルム処理装置5の前段に配置してもよい。
【0020】
フィルム処理装置5は、ガイド部材8と、可動ベルト9と、エア吹出口10と、フィルムストッパ11とを主体に構成されている。ガイド部材8は、搬送路4の側方に固定されており、搬送路4内に迫り出した直線部位と、搬送路4の外側に向かって湾曲した先端部位とを有する。搬送路4上の容器2は、ガイド部材8の先端部位によって、搬送路4の内側に徐々に導かれ、ガイド部材8の直線部位に当接しながら搬送方向に移動する。ガイド部材8の直線部位が延在する搬送範囲内では、この直線部位によって、搬送路4の幅方向における容器2の変位が規制される。一方、可動ベルト9は、互いに離間して配置された3つのローラ12a〜12cに巻き付けられている。この可動ベルト9は、モータ等によって駆動する中央のローラ12bの回転力によって変位する。可動ベルト9の一部、すなわち、搬送路4内に迫り出した直線部位は、ガイド部材8によって変位が規制された容器2の側面に当接する。
【0021】
ガイド部材8および可動ベルト9は共に容器2の側面に当接するが、その際の条件は、図2に示すように、容器2の露出面2a、すなわち容器本体が露出した部位のみに当接し、容器2に巻回されたフィルム3(容器本体が露出していない部位)には当接しないことである。したがって、ガイド部材8および可動ベルト9の高さ・幅は、容器2の外観形状を考慮してた上で、この条件を満たす値に適宜設定される。ガイド部材8および可動ベルト9の双方が容器2の露出面2aに当接する結果、これらによって、容器2が挟み込まれる。また、摩擦係数が小さいガイド部材8自体は変位しないが、これよりも摩擦係数が大きい可動ベルト9は変位する。したがって、容器2には、可動ベルト9の動きに起因した回転力が強制的に付与される。その結果、容器2は、搬送路4上を移動しながら自転、すなわち、自己の周方向に回転する。容器2を自転させるためには、搬送路4に対する可動ベルト9の相対速度が0でないことが条件となるが、その具体的な値は、容器2を自転させる回数や、容器2へのフィルム3の密着の度合い等を考慮した上で適宜設定される。容器2の自転は、後述するフィルムストッパ11によるほぐし処理の効果を高めるべく、補助的に用いられる。なお、ガイド部材8の幅方向の取付位置は、外径の異なる複数種の容器2に対応できるように変更可能である。
【0022】
エア吹出口10は、図2に示したように、容器2の表面とフィルム3の裏面との間に存在する微少な隙間に向かって、エア(圧縮空気)を斜め上方より噴射する。エア吹出口10は、自転する容器2の全周に十分にエアが吹き渡るように、搬送路4の両側方にそれぞれ複数設けられている。エア吹出口10から噴射されたエアによって、容器2の表面とフィルム3の裏面との間に若干の空気層が形成され易くなる。エアの噴射は、容器2の自転と同様に、後述するフィルムストッパ11によるほぐし処理の効果を高めるべく、補助的に用いられる。
【0023】
フィルムストッパ11は、フィルム3のほぐし処理を行う際の中心的な役割を担う。フィルムストッパ11は、搬送路4の側方から搬送路4内に突出して設けられており、搬送路4上を移動する容器2に追従して、容器2に対して相対変位する。
【0024】
図3は、第1の実施形態に係るフィルムストッパ11の構成図である。このフィルムストッパ11は、剛性の高いアルミフレーム11aに取り付けられており、金属製のアーム11bと、金属製の基部11cと、摩擦部材11dと、エアシリンダ11fとを主体に構成されている。アーム11bは、搬送路4の幅方向に直線状に延在しており、その一端がアルミフレーム11aに取り付けられている。また、アーム11bの他端には、回転軸Xを中心として回転可能な状態で、基部11cが取り付けられている。この基部11cは、所定幅を有する帯状の金属材を略ループ状に曲げることによって形成されている。そして、基部11cの外面の少なくとも一部、具体的には、容器2に巻回されたフィルム3に当接する部位には、基部11cの形状に沿って摩擦部材11dが取り付けられている。摩擦部材11dは、その摩擦面11eに当接したフィルム3との間で所望の摩擦力を生じる材質、例えばゴム等の弾性材料によって形成されている。摩擦面11eは、搬送路4における所定の搬送範囲を容器2が移動する間、フィルム3の表面に連続して当接する面形状を有する。このような摩擦部材11dは、アーム11bの延在方向上に位置する初期状態(図7に示したθ=θ0)から、これを基準に略90°折れ曲がった状態(図6に示したθ=θ3)に至るまでの範囲内において、回転軸Xを中心として回転する。また、アルミフレーム11aと、可動式の基部11cとの間には、摩擦部材11dに付勢力を与えるための付勢部として、エアシリンダ11fが取り付けられている。なお、このような付勢部としては、エアシリンダ11fに代えて、スプリングや弾性体等といった周知の付勢手段を用いてもよい。エアシリンダ11fの付勢力は、搬送路4上を移動する容器2のフィルム3に摩擦面11eを押圧するために、および、摩擦部材11dを初期状態(θ=θ0)に復帰させるために用いられる。エアシリンダ11fの空気圧は、フィルム3と摩擦部材11dの相対摩擦係数、容器2の自重、容器2と搬送路4の相対摩擦係数等を考慮した上で適宜設定される。
【0025】
図2に示したフィルムストッパ11では、摩擦面11eが容器2の側面に当接するが、その際の条件は、容器2に巻回されたフィルム3のみに当接し、容器2の露出面2aには当接しないことである。したがって、フィルムストッパ11の高さ・幅は、容器2の外観形状を考慮した上で、この条件を満たす値に適宜設定される。
【0026】
なお、フィルムストッパ11は、搬送路4上に少なくとも1つ配置されていれば足りるが、搬送路4に沿って離間して複数配置してもよい。これにより、一つの容器2に対して、同一のほぐし処理が複数回繰り返されるので、この処理による効果を一層高めることができる。
【0027】
つぎに、図4から図7を参照して、フィルムストッパ11の動作について説明する。まず、搬送路4上を移動してきた容器2は、搬送路4の上方に位置する摩擦部材11dに当接し(θ=θ0)、エアシリンダ11fの付勢力F(θ)に抗して、フィルムストッパ11を押し始める。これによって、摩擦部材11dは、容器2の移動に追従して回転軸Xを中心に徐々に回転し、容器2に対して相対変位していく。なお、エアシリンダ11fの付勢力F(θ)は、回転角θが大きくなるのにともない増大する。
【0028】
図4に示すように、容器2の移動によって、摩擦部材11dが回転角θ1だけ回転した場合、エアシリンダ11fは、この回転角θ1に応じた付勢力F(θ1)で摩擦部材11dを付勢する。この付勢力F(θ1)は、摩擦面11eとフィルム3とが当接する接触点Pに作用し、これによって、摩擦面11eとフィルム3との間に摩擦力f(θ1)が生じる。摩擦力f(θ1)は、接触点Pにおける付勢力F(θ1)の径方向成分に、摩擦面11eとフィルム3との相対摩擦係数を乗じた値に相当し、容器2に対してフィルム3を相対変位させる方向、換言すれば、摩擦面11eに対するフィルム3の相対変位を規制する方向に作用する。しかしながら、この時点における摩擦力f(θ1)は未だ小さいので、多くの場合、容器2に対してフィルム3を周方向に相対変位させるには至らない。その結果、大半の容器2におけるフィルム3は、摩擦面11e上をすべりながら、容器2と一体化されたままとなる(相対変位=0)。
【0029】
図5に示すように、容器2の更なる移動によって、摩擦部材11dが回転角θ2だけ回転した場合、エアシリンダ11fは、この回転角θ2に応じた付勢力F(θ2)で摩擦部材11dを付勢する。これによって、接触点Pには、先の摩擦力f(θ1)よりも大きな摩擦力f(θ2)が作用する。そして、容器2へのフィルム3の密着力よりも摩擦力f(θ2)の方が大きくなった時点で、容器2に対してフィルム3が周方向に相対変位し始める(ずれ始める)。それ以降、回転角θの増加にともない、付勢力F(θ)に起因して接触点Pを押圧する力も増大し、摩擦面11eがフィルム3を押圧し続ける。これによって、フィルム3の周方向の相対変位は、図6に示すような最大角θ3を経た後の状態まで継続する(最大角θ3後は回転角θが小さくなっていく)。当然ながら、フィルム3の密着力は、容器2毎にばらつきがある。したがって、回転角θ2よりも早い段階でフィルム3が相対変位し始める容器2もあれば、これよりも遅い段階にならないと相対変位し始めない容器2もある。なお、可動ベルト9によって容器2を自転させる場合には、これを自転させない場合と比較して、フィルム3の相対変位量が大きくすることができる。
【0030】
そして、図7に示すように、容器2の移動に追従して変位した摩擦部材11dは、摩擦面11eがフィルム3と離間したことにともない、エアシリンダ11fの付勢力によって初期状態(θ=θ0)に自動的に復帰する。
【0031】
このように、本実施形態によれば、フィルム3の除去に先立つ前処理として、フィルム3のほぐし処理を行う。すなわち、搬送路4上の容器2に対して相対変位する摩擦部材11dの摩擦面11eがフィルム3に当接してから、これより離間するまでの範囲内において、エアシリンダ11fの付勢力によって、摩擦面11eがフィルム3を押圧し続ける。そして、摩擦面11eとフィルム3との間に生じる摩擦力f(θ)によって、搬送路4上を移動する容器2に対してフィルム3を周方向に相対変位させる。これにより、容器2の表面にフィルム3が密着した状態を有効に緩和できる。フィルム3が密着する理由は、容器2の表面とフィルム3の裏面との間に存在する微少な隙間に吸い込まれた水分が、あたかも両者を強固に接合する接着剤のように作用することに起因したものと考えられる。隙間への水分の侵入は、ビール樽やビール瓶といったリターナブル容器の実際の使用状況において、しばしば起こり得る。例えば、居酒屋などの店舗において、リターナブル容器からビールが溢れ出してしまったケース、他の液体がリターナブル容器にかかってしまったケース、さらには、店舗から工場へ空のリターナブル容器を搬送する際、その流通過程で何らかの水分(雨水等)がかかってしまったケースといった如くである。
【0032】
また、本実施形態では、フィルムストッパ11によるほぐし処理の実効性を高めるための補助的な手段として、可動ベルト9を追加し、容器2を強制的に自転させている。これにより、フィルム3の相対変位量は、搬送路4上における容器2の移動量のみならず、容器2が自転する回数にも依存することになる。その結果、搬送路4の範囲が短くても十分な相対移動量を確保できるので、フィルム3の密着状態を一層有効に緩和することが可能になる。
【0033】
また、本実施形態では、フィルムストッパ11によるほぐし処理の実効性を高めるための補助的な手段として、エア吹出口10を追加し、容器2とフィルム3との隙間にエアを噴射している。これにより、容器2の表面とフィルム3の裏面との間に若干の空気層が形成され易くなるので、フィルム3の密着状態を一層有効に緩和することが可能になる。
【0034】
さらに、本実施形態によれば、ほぐし処理が施された切断後のフィルム3を吸引・除去することで、フィルム除去不良の低減を図ることが可能になる。それとともに、フィルム除去工程の自動化(ほぐし処理のみの自動化を含む)を低コストで実現できる。
【0035】
なお、本発明において、フィルムストッパは、図3に示した形態に限定されるものではなく、それ以外の形態であってもよいが、以下の条件(1)〜(3)を満たすことが必要である。
【0036】
(フィルムストッパの条件)
(1)搬送路4上の容器2に対して相対変位する摩擦部材11dを有すること
(2)摩擦部材11dは、フィルム3と連続して当接する摩擦面11eを有すること
(3)摩擦面11eがフィルム3を押圧すること
【0037】
また、多数の容器2の連続処理を前提とする場合には、上記条件(1)〜(3)以外に(4)「容器2の通過にともない摩擦部材11dが初期状態に自動的に復帰すること」を加えることが好ましい。以下、このような条件(1)〜(4)を具備するフィルムストッパの他の形態を例示する。
【0038】
図8は、第2の実施形態に係るフィルムストッパ21の構成図である。このフィルムストッパ21は、取付部21aに取り付けられた棒状の摩擦部材21dを主体に構成されている。この摩擦部材21dは、例えばゴムといった弾力性を有する弾性材によって形成されている。摩擦部材21dは、初期的には、搬送路4の上方に位置しており、容器2の移動に追従して変位可能である。また、摩擦部材21dの側面および先端の一部は、摩擦面21eに相当し、容器2側のフィルム3に当接する連続した面形状を有する。さらに、摩擦部材21dは、それ自体が弾力性(付勢力)を有するので、付勢部としても機能する。
【0039】
ほぐし処理時において、容器2に対して相対変位する摩擦部材21d自体が有する弾性力によって、その摩擦面21eがフィルム3に押圧される。摩擦部材21dは、搬送路4における所定の搬送範囲を容器2が移動する間、容器2の移動に追従して、取付部21aを支点に曲げ変形する。この曲げ変形が生じた際も、摩擦面21eとフィルム3とが当接した状態は維持される。そして、摩擦面21eがフィルム3と離間したことにともない、摩擦部材21dは、自己の弾性力によって初期状態、すなわち、真っ直ぐな状態に復帰する。
【0040】
図9は、第3の実施形態に係るフィルムストッパ31の構成図である。このフィルムストッパ31は、基部31cと、摩擦部材31dと、付勢部であるスプリング31fとを主体に構成されている。プレート状の基部31cには、面取りされた凸形状を有するの摩擦部材31dが取り付けられている。この凸形状の表面が摩擦面31eに相当し、搬送路4における所定の搬送範囲を容器2が移動する間、フィルム3に当接し続ける。スプリング31fは、取付部31aと基部31cとの間に設けられており、フィルムストッパ31として動作するのに必要な付勢力を摩擦部材31dに与える。
【0041】
ほぐし処理時において、容器2に対して相対変位する摩擦部材31dの摩擦面31eは、スプリング31fの付勢力によって、フィルム3の表面に押圧される。摩擦部材31dは、搬送路4における所定の搬送範囲を容器2が移動する間、容器2の移動に追従して、スプリング31fの縮み変形によって変位する。この変位が生じた際も、摩擦面31eがフィルム3に当接した状態は維持される。そして、摩擦面31eがフィルム3と離間したことにともない、摩擦部材31dは、スプリング31fの付勢力によって初期状態に復帰する。
【0042】
図10は、第4の実施形態に係るフィルムストッパ41の構成図である。本実施形態に係るフィルムストッパ41は、上述した各実施形態で配置されていた複数の独立した摩擦部材を、ベルト状にすることによって一体化したものである。このフィルムストッパ41は、ベルト状の摩擦部材41dと、複数のローラ41gと、複数のスプリング41fとを主体に構成されている。
【0043】
ベルト状の摩擦部材41dは、互いに離間して配置された複数のローラ(図示せず)に巻き付けられており、モータ等の駆動力によって変位する。摩擦部材41dの一部、すなわち、搬送路4内に迫り出した直線部位は、ガイド部材8によって変位が規制された容器2の側面に当接して、容器2に対して相対変位する。可動ベルト9によって容器2を自転させる場合、摩擦部材41dは、可動ベルト9とは異なる速度に設定される。また、摩擦部材41dの直線部位は、複数のローラ41gによって支持されている。それぞれのローラ41gは、搬送路4の幅方向に変位可能であり、個々に取り付けられたスプリング41fによって、搬送路4の幅方向に突出するように常時付勢されている。摩擦部材41dのベルト面、すなわち摩擦面41eは、容器2側のフィルム3に当接する連続した面形状を有する。
【0044】
ほぐし処理時において、容器2に対して相対変位する摩擦部材41dの摩擦面41eは、スプリング41fの付勢力によって、フィルム3の表面に押圧される。摩擦部材41dは、搬送路4上における容器2の移動に追従して、搬送路4の外側に変位する。この変位が生じた際も、摩擦部材41dであるベルトのテンションが保たれ、摩擦面41eがフィルム3に当接した状態が維持される。そして、摩擦面41eがフィルム3と離間したことにともない、摩擦部材41dは、スプリング41fの付勢力によって初期状態、すなわち、搬送路4の幅方向に突出した状態に復帰する。
【0045】
上述した第1から第3までの実施形態では、摩擦部材11d,21d,31dと、フィルム3との相対変位を生じさせるためには、搬送路4上における容器2の移動が必要となるのに対して、第4の実施形態では、それが必ずしも必要とされない。容器2が静止している状態であっても、摩擦部材41dであるベルト自身の動きによって、上記相対変位が生じるからである。したがって、第4の実施形態では、容器2の移動/停止を繰り返しながら、摩擦部材41dを積極的に駆動させることによって、容器2のほぐし処理を行ってもよい。
【0046】
なお、上述した実施形態では、ビール樽やビール瓶といった飲料用途のリターナブル容器を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ラベル等のフィルムが付された様々な用途の容器(必ずしもリターナブル容器に限定されない)に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】フィルム除去工程における自動化処理ラインの構成図
【図2】フィルム処理装置における各機構の位置的関係を示す斜視図
【図3】第1の実施形態に係るフィルムストッパの上面図
【図4】フィルムストッパの動作説明図
【図5】フィルムストッパの動作説明図
【図6】フィルムストッパの動作説明図
【図7】フィルムストッパの動作説明図
【図8】第2の実施形態に係るフィルムストッパの上面図
【図9】第3の実施形態に係るフィルムストッパの上面図
【図10】第4の実施形態に係るフィルムストッパの斜視図
【符号の説明】
【0048】
1 自動化処理ライン
2 容器
2a 露出面
3 フィルム
4 搬送路
5 フィルム処理装置
6 フィルム切断装置
7 フィルム除去装置
8 ガイド部材
9 可動ベルト
10 エア吹出口
11,21,31,41 フィルムストッパ
11a アルミフレーム
11b アーム
11c,31c 基部
11d,21d,31d,41d 摩擦部材
11e,21e,31e,41e 摩擦面
11f エアシリンダ
12a,12b,12c ローラ
21a,31a 取付部
41g ローラ
31f,41f スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム除去方法において、
搬送路上を移動する容器の側面に巻回された帯状のフィルムの除去に先立ち、前記フィルムを前記容器に対して周方向に相対変位させる変位ステップと、
前記フィルムの除去に先立ち、前記フィルムを切断する切断ステップと、
前記周方向への相対変位と、前記切断とが施された前記フィルムを吸引して、前記容器から除去する除去ステップと
を有することを特徴とするフィルム除去方法。
【請求項2】
前記変位ステップは、
前記容器に対して相対変位する摩擦部材の摩擦面を前記フィルムに押圧し、前記摩擦面と前記フィルムとの間に生じる摩擦力を用いて、前記フィルムを前記容器に対して周方向に相対変位させるステップであることを特徴とする請求項1に記載されたフィルム除去方法。
【請求項3】
前記変位ステップは、
前記フィルムを前記容器に対して周方向に相対変位させる処理を繰り返すステップであることを特徴とする請求項2に記載されたフィルム除去方法。
【請求項4】
前記変位ステップは、
前記容器における前記フィルムが巻回されていない側面に当接した可動ベルトの動きによって、前記容器を自転させるステップをさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載されたフィルム除去方法。
【請求項5】
前記変位ステップは、
前記容器と前記フィルムとの隙間にエアを噴射するステップをさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載されたフィルム除去方法。
【請求項6】
フィルム処理装置において、
搬送路上における容器の移動に追従して、前記容器に対して相対変位するとともに、前記容器の側面に巻回された帯状のフィルムに当接する摩擦面を有する摩擦部材と、
前記摩擦面を前記フィルムに押圧することによって、前記フィルムを前記容器に対して周方向に相対変位させる付勢部と
を有することを特徴とするフィルム処理装置。
【請求項7】
前記容器の移動に追従して相対変位した前記摩擦部材は、前記摩擦面が前記フィルムと離間したことにともない、前記付勢力によって初期状態に復帰することを特徴とする請求項6に記載されたフィルム処理装置。
【請求項8】
前記摩擦部材は、前記搬送路に沿って離間して複数配置されていることを特徴とする請求項6または7に記載されたフィルム処理装置。
【請求項9】
前記搬送路に沿って延在し、前記搬送路の幅方向における前記容器の変位を規制するガイド部材と、
前記ガイド部材と対向して延在し、前記ガイド部材によって変位が規制された前記容器における前記フィルムが巻回されていない側面に当接して、前記容器を自転させる可動ベルトと
をさらに有することを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載されたフィルム処理装置。
【請求項10】
前記容器と前記フィルムとの隙間にエアを噴射するエア吹出口をさらに有することを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載されたフィルム処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−248054(P2009−248054A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102239(P2008−102239)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【出願人】(504159615)株式会社浜田 (1)
【Fターム(参考)】