説明

フィルム除去方法およびフィルム除去装置

【課題】基板上のフィルムを除去するためのフィルム除去方法およびフィルム除去装置を提供する。
【解決手段】まず、プラズマ生成器および吸気装置を基板の上方に設け、次に、プラズマ生成器がプラズマビームをフィルムに対して斜めに射出し、吸気装置をプラズマ生成器から射出されたプラズマに対応する反射ルート上に位置させることにより、フィルムがプラズマ反応を経た後、反応が不完全なために生じた副生成物を吸い取ることで、基板表面をクリーンに維持することができるとともに、大気圧状態下で表面の除去処理をプラズマにより行うことによって副生成物の堆積が生じる欠点を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム除去方法およびフィルム除去装置に係り、より詳しくは、フィルムを大気圧状態においてプラズマにより除去する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液晶パネル(薄膜トランジスタ駆動液晶ディスプレー、TFT−LCD)の製造工程では、ドライプロセスとウェットプロセスとを繰り返さなければならなかったが、最近では、製造工程を短縮するために、パネルメーカーは、TFT−LCDの各製造工程を極力ドライ環境下で行っている。ただし、フォトレジストの除去についてはパネルをフォトレジスト除去液に浸漬させる必要がある。
【0003】
フォトレジストを浸漬により除去させたのち、パネルを再び乾燥させる必要があるため、製造コストと製造工程にかかる時間とが増大する欠点がある。大型液晶パネルに対する需要を背景として、上記欠点の影響が、パネルサイズの増大に伴って拡大している。パネルの製造にかかる時間を短縮するために、フォトレジストをプラズマにより除去する方法(プラズマ洗浄)を採用するメーカーも出てきている。プラズマ洗浄はドライプロセスに属するため、パネルの製造工程を全てドライ環境下で完了させることができる。生産量向上の面で言えば、従来の浸漬方式によりフォトレジストを除去する工程では1時間につき75枚のパネルを生産できるに過ぎないのに対し、プラズマ洗浄によりフォトレジストを除去する工程では1時間につき100〜120枚のパネルを生産できるようになる。
【0004】
ただし、プラズマによるフォトレジストの除去工程は、真空環境下で行わなければならず、しかも、プラズマを生成するためにガスを持続的に導入するとともに触媒の添加を行う必要がある。このように、生産能力が向上する反面、製造コストが増大していた。
【0005】
プラズマ生成のコストを低減するために、大気圧状態下でプラズマを生成することにより表面の除去を行う技術が大日本スクリーン製造株式会社(Dainippon Screen Mfg)より開発されている。図1Aに示すように、電極板1a、1bの間には電界バイアスが形成され、その間に反応ガスAを導入することによりプラズマを生成し、基材10を2つの電極板の間を通過させることにより表面の除去を行うことができる。基材10は、染色しようとする生地または表面接着しようとする材料であってもよく、基材10は、また、液晶パネルであってもよく、プラズマの作用により表面のフォトレジストが除去される。
【0006】
しかしながら、液晶パネルを電界に直接通過させると、しばしばパネル上の電子素子が電界によって破壊されることがあったため、大日本スクリーン製造株式会社は、再び、大気圧プラズマにより表面を除去を行う方法に、以下のごとく改良を加えた。図1Bに示すように、図1Aと異なる点は、基材10を直接電極板1a、1bの間を通過させるのではなく、電極板1a、1bを基材10に直交させ、プラズマを基材10に対して垂直に出射させるように導くとともに、基材10を移動させることにより基材10を完全にプラズマと作用させている。さらに、プラズマを生成するための関連装置を例えばプラズマノズルである装置としてモジュール化させることができる。
【0007】
基材10が表面にフォトレジストを有する液晶パネルである場合、パネルに垂直に出射されるプラズマによって、フォトレジストをほとんど除去することができるが、フォトレジストの一部とプラズマとの反応が不完全なために微粒状の副生成物が形成され、この副生成物が飛散してしまうため、重力によってパネルの表面に散布され、パネルの歩留まりに影響を与えることとなる。
【0008】
プラズマ反応によって生じる副生成物の問題を解決するために、パネルをプラズマ生成器の上方に設け、プラズマを上方に向けてパネルに垂直に出射させ、飛散した副生成物が重力により自然に落ちるようにする方法が提案されている。ただし、液晶パネルの表面は、平らであるように見えて、実際には多くの微細構造を有しているため、パネルの表面に対して垂直に出射されるプラズマは、微細構造の上面、すなわちパネル表面を直上から見て正面にあるフォトレジストを除去することはできるが、微細構造の側面にあるフォトレジストを完全に除去することが困難である。また、大型液晶パネルに対する需要がますます増大しており、製造工程において大型液晶パネルを裏返すことは非常に不都合があるため、特殊な懸架器具を設計してパネルを固定しなければならず、結果的にコストの増加を招き、更には、懸架されているため、大型液晶パネルにたわみが生じやすかった。また、プラズマ反応によって生じる副生成物の問題を解決するために、基板をローラーに設ける方法が特許文献1に開示されているが、上記と同様の欠点が存在している。
【0009】
従って、上記の種々の欠点を解決することは、極めて重要な課題となっている。
【特許文献1】米国特許第6659110号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、以上のとおりの事情に鑑み、本発明は、プラズマ反応による副生成物を除去することができるフィルム除去方法を提供することを課題とする。
【0011】
また、本発明は、液晶パネルの歩留まりを向上させるためのフィルム除去方法を提供することを課題とする。
【0012】
また、本発明は、液晶パネルの製造コストを抑えることができるフィルム除去方法を提供することを課題とする。
【0013】
また、本発明は、液晶パネルの表面のフォトレジストを完全に除去することができるフィルム除去方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明に係るフィルム除去方法は、基板上のフィルムを除去するための方法であり、プラズマ生成器および吸気装置を準備し、前記プラズマ生成器および前記吸気装置を基板の上方に設ける工程と、前記プラズマ生成器を調整し、そこから射出されたプラズマビームがフィルムに対して斜めに射出されるようにし、前記吸気装置をプラズマビームに対応する反射ルート上に設け、それによって、フィルムがプラズマ反応を経た後、反応が不完全なために生じた副生成物を吸い取ることで、基板表面をクリーンに維持する工程と、を備えている。
【0015】
上記の課題を達成するために、本発明に係るフィルム除去装置は、基板表面上のフィルムを除去するためのフィルム除去装置であり、プラズマがフィルムに対して斜めに射出され、フィルムが基板上から除去されるためのプラズマ生成器と、プラズマ生成器から射出されたプラズマに対応する反射ルートに位置し、プラズマ反応の後フィルムの反応が不完全なために生じた副生成物を吸い取ることにより、基板表面をクリーンに維持するための吸気装置と、を備えている。
【0016】
基板は液晶パネルからなり、フィルムはフォトレジストからなり、プラズマ生成器によって液晶パネル上のフォトレジストが完全に除去されるようにするために、プラズマ生成器および吸気装置を回転軸に対向させて回転させ且つ基板に対して平行に移動させるようにしてもよい。更に、プラズマ生成器および吸気装置を被覆して、且つそれらを一体に回転させるためのケースを備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
従来の技術ではプラズマを基板に対して垂直に射出することによりプラズマ反応の副生成物が基板表面に堆積する現象があったのに比較して、本発明に係るフィルム除去方法では、プラズマをフィルムに対して斜めに射出させ、プラズマの反射ルートにおいて副生成物を吸い取ることにより、プラズマ反応による副生成物のほとんどを除去することができる。
【0018】
また、プラズマを基板に対して垂直に射出する従来の技術では、液晶パネル表面の微細構造側面のフォトレジストを除去することが容易でなかったのに比較して、本発明に係るフィルム除去方法によれば、プラズマを基板に対して斜めに射出させることにより、液晶パネル表面の微細構造側面のフォトレジストを容易に除去することができる。
【0019】
さらに、従来の技術では、プラズマを上へ射出させ液晶パネル上のフォトレジストを除去することにより、反応の副生成物が自然に落ちるようにする方法があるが、製造工程において液晶パネルを裏返すことによってコストが増大していた。それに対して、本発明に係るフィルム除去装置によれば、液晶パネルを生産ラインにおいて同一方向に維持させて工程を進めることができるため、コストを低減することが可能である。
【0020】
上記のように、本発明に係るフィルム除去方法およびフィルム除去装置は、プラズマ反応による副生成物を除去することができるとともに、液晶パネルの歩留まりを向上させ、且つコストを低減できるため、極めて高い産業上の利用価値を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳しく説明するが、この技術領域における通常の知識を有する者は、本明細書に記載の内容により本発明の技術的特徴および効果を容易に理解することが可能である。
【0022】
図2A〜図2Cは、本発明に係るフィルム除去方法を示す。
【0023】
図2Aに示すように、本発明に係るフィルム除去方法は、基板3上のフィルム30を除去するためのものであり、基板3は液晶パネルであってよく、フィルム30は液晶パネル表面のフォトレジストであってよい。
【0024】
図2Bに示すように、まず、プラズマ生成器21および吸気装置22を用意し基板3の上方に設ける。プラズマ生成器21は、例えば乾燥空気(Clean dry air)または窒素ガス(N)といった気体を利用しており、大気圧状態下でプラズマを生成する。
【0025】
次に、プラズマ生成器21を調整し、そこから射出されたプラズマビーム210がフィルム30に対して斜めに射出されるようにし、また、吸気装置22をプラズマビーム210に対応する反射ルートに設け、フィルム30がプラズマビーム210による反応を経た後、反応が不完全なために生じた副生成物30’を吸い取ることにより、基板3の表面をクリーンに維持する。
【0026】
プラズマ生成器21によって液晶パネル上のフォトレジストが完全に除去されるようにするために、プラズマ生成器21および吸気装置22を回転軸に対向させて回転させ且つ基板3に対して平行に移動させるようにしてもよい。更に、プラズマ生成器21および吸気装置22を被覆して、且つそれらをモータの駆動により一体に回転させるようにケース20を備えてよい。
【0027】
基板3が液晶パネルである場合、多くの微細構造31を有しており、フォトレジスト(フィルム30)は、微細構造31の上面、すなわちフィルム30を直上から見た正面と、微細構造31の側面とに設けられているが、本発明に係るフィルム除去方法によれば、プラズマビーム210を基板3に対して斜めに射出させているため、微細構造31の上面及び側面上のフォトレジストを完全に除去することができる。
【0028】
図2Cに示すように、フィルム20が完全に除去されているかを検知できるようにするために、さらにプラズマ生成器21と吸気装置22との間に検知器23を設けてもよい。検知器23は、副生成物30’がなお生成されているか、または基板3の材質を検知しある領域において副生成物30’が生成されていないこと、または基板3の材質が検知された場合に当該領域のフォトレジストが完全に反応を完了してプラズマ反応による副生成物30’も除去されていることを示し、検知信号がフィードバックされた後、プラズマ生成器21および吸気装置22を他の場所へ移動させて引続きフォトレジストの除去を行うことができる。
【0029】
図3は、本発明に係るフィルム除去装置2を示す。フィルム除去装置2は、基板3のフィルム30を除去するために用いられ、プラズマビーム210がフィルム30に対して斜めに射出され、フィルム30が基板3上から除去されるためのプラズマ生成器21と、プラズマ生成器21から射出されたプラズマビーム210に対応する反射ルートに位置し、プラズマ反応の後フィルム30の反応が不完全なために生じた副生成物30’を吸い取ることにより基板3の表面をクリーンに維持するための吸気装置と、備えている。さらに、フィルム30が完全に除去されているかを検知するために、プラズマ生成器21と吸気装置22との間に設けられた検知器23を備えてもよい。
【0030】
図4に示すように、角度の異なるプラズマビーム210を射出するために、プラズマ生成器21の末端に角度の異なるジェットノズル211が複数設けられてもよく、また、吸気装置22は、プラズマビーム210の射出角度の違いに合わせて傾斜角度を調整し、且つ副生成物30’を完全に吸い取ることができるように、その末端を広口型として設計してもよい。
【0031】
従来の技術ではプラズマを基板に対して垂直に射出することによりプラズマ反応の副生成物が基板表面に堆積する現象があったのに比較して、本発明に係るフィルム除去方法では、プラズマをフィルムに対して斜めに射出させ、プラズマの反射ルートにおいて副生成物を吸い取ることにより、プラズマ反応による副生成物のほとんどを除去することができる。
【0032】
また、プラズマを基板に対して垂直に射出する従来の技術では、液晶パネル表面の微細構造側面のフォトレジストを除去することが容易でなかったのに比較して、本発明に係るフィルム除去方法によれば、プラズマを基板に対して斜めに射出させることにより、液晶パネル表面の微細構造側面のフォトレジストを容易に除去することができる。
【0033】
さらに、従来の技術では、プラズマを上へ射出させ液晶パネル上のフォトレジストを除去することにより、反応の副生成物が自然に落ちるようにする方法があるが、製造工程において液晶パネルを裏返すことによってコストが増大していた。それに対して、本発明に係るフィルム除去装置によれば、液晶パネルを生産ラインにおいて同一方向に維持させて工程を進めることができるため、コストを低減することが可能である。
【0034】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明したが、本発明の実施できる範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせに、さらにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の特許請求範囲内にあることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
上記のように、本発明に係るフィルム除去方法およびフィルム除去装置は、プラズマ反応による副生成物を除去することで、液晶パネルの歩留まりを向上させることができるとともに、コストも低減できるため、極めて高い産業上の利用価値を有している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1A】表面の除去処理に大気圧プラズマを使用する従来技術を模式的に示した図である。
【図1B】表面の除去処理に大気圧プラズマを使用する従来技術を模式的に示した図である。
【図2A】本発明に係るフィルム除去方法を示す。
【図2B】本発明に係るフィルム除去方法を示す。
【図2C】本発明に係るフィルム除去方法を示す。
【図3】本発明に係るフィルム除去装置の1つの実施形態を示す。
【図4】本発明に係るフィルム除去装置の他の実施形態を示す。
【符号の説明】
【0037】
1a、1b 電極板
10 基材
2 フィルム除去装置
20 ケース
21 プラズマ生成器
211 ジェットノズル
210 プラズマビーム
22 吸気装置
23 検知器
3 基板
30 フィルム
30’ 副生成物
31 微細構造
A ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上のフィルムを除去するためのフィルム除去方法であって、
プラズマ生成器および吸気装置を用意し、前記基板の上方に設ける工程と、
前記プラズマ生成器を調整し、そこから射出されたプラズマビームが前記フィルムに対して斜めに射出されるようにし、前記吸気装置を前記プラズマビームに対応する反射ルート上に設け、それによって、前記フィルムがプラズマ反応を経た後、反応が不完全なために生じた副生成物を吸い取ることで、前記基板の表面をクリーンに維持する工程と、
を備えていることを特徴とするフィルム除去方法。
【請求項2】
前記プラズマ生成器および前記吸気装置を回転軸に対向させて回転させ且つ前記基板に対して平行に移動させるようにする工程をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のフィルム除去方法。
【請求項3】
前記基板は、液晶パネルからなり、前記フィルムは、フォトレジストからなることを特徴とする請求項1に記載のフィルム除去方法。
【請求項4】
フィルムが完全に除去されているかを検知するために、前記プラズマ生成器と前記吸気装置との間に検知器が設けられ、副生成物が生成されていないこと、または基板の材質が検知されることのいずれか1つが起きた場合は、反応がすでに完了していることを示すことを特徴とする請求項1に記載のフィルム除去方法。
【請求項5】
基板上のフィルムを除去するためのフィルム除去装置において、
プラズマが前記フィルムに対して斜めに射出され、前記フィルムが前記基板上から除去されるためのプラズマ生成器と、
前記プラズマ生成器から射出されたプラズマに対応する反射ルート上に位置し、プラズマ反応の後、前記フィルムの反応が不完全なために生じた副生成物を吸い取ることにより、前記基板の表面をクリーンに維持するための吸気装置と、
を備えていることを特徴とするフィルム除去装置。
【請求項6】
前記プラズマ生成器および前記吸気装置は、ケースにより被覆され、モータの駆動により一体に回転されることを特徴とする請求項5に記載のフィルム除去装置。
【請求項7】
前記基板は、液晶パネルからなり、前記フィルムは、フォトレジストからなることを特徴とする請求項5に記載のフィルム除去装置。
【請求項8】
前記プラズマ生成器と前記吸気装置との間に、プラズマ反応による副生成物および前記基板特性のいずれかを検知するための検知器が設けられていることを特徴とする請求項5に記載のフィルム除去装置。
【請求項9】
前記プラズマ生成器の末端に角度の異なるプラズマを射出するためのジェットノズルが複数設けられ、前記吸気装置は、異なるジェットノズルから射出されたプラズマに応じて傾斜角度が調整されることを特徴とする請求項5に記載のフィルム除去装置。
【請求項10】
前記プラズマ生成器および前記吸気装置は、前記基板に対して平行に移動されることを特徴とする請求項5に記載のフィルム除去装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−311757(P2007−311757A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30739(P2007−30739)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】