説明

フィンアンドチューブ型熱交換器

【課題】業務用冷蔵庫、自動販売機等に備える冷凍装置におけるコンデンサーに用いられるフィンアンドチューブ型熱交換器において、油分等の付着が多い環境に置かれ、油分ミストがだんだんと付着していき固着してしまう場合でも、熱交換器に付着した油分を水のみで簡単に除去できる。
【解決手段】一定間隔をおいて平行に配置する多数のフィン12と、フィン12に直角に挿入された内部を流体が流動するU字状のチューブ13と、U字状のチューブ13同士を接続するリターンベンド14とを備え、フィン12、U字状のチューブ13、リターンベンド14の表面に熱硬化性樹脂を塗装し、熱硬化性樹脂に親水性ポリマー添加剤を混入したことにより、油分等の付着が多い環境に置かれ、油分ミストがだんだんと付着していき固着してしまう場合でも、熱交換器に付着した油分を水のみで簡単に除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に業務用冷蔵庫、自動販売機等に備える冷凍装置におけるコンデンサー等に使用され、多数のフィンとチューブを備えたフィンアンドチューブ型熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に業務用冷蔵庫等は厨房機器の近くに設置されることが多いため、どうしても油分ミスト等が付着しやすい状態になる。一方、自動販売機等は屋外の店頭先等で設置されることが多いため、油分ミスト等が付着しやすく、ひいては油分等によって埃等が付着しやすい状態になる。
【0003】
また一般にフィンアンドチューブ型熱交換器フィンは、アルミニウムが広く利用されている。アルミニウムは軽量かつ加工性、耐食性及び熱伝導性等が優れているため、コンデンサー用の放熱フィン等として使用されている。通常、放熱フィンに使用されるアルミニウムフィンは水分の付着がなく、腐食が起こりにくいため、無処理フィンが用いられる。
【0004】
上記のように、業務用冷蔵庫、自動販売機は設置場所等からコンデンサーの放熱フィンには空気中の油分ミストが付着し、そして油分がだんだんと付着していき固着してしまう。またこの油分の影響で埃が付着しやすくなり、フィン間に埃がだんだんと詰まってくる。そうするとフィン間の通風抵抗が増大してコンデンサーの効率が低下し、これに伴い冷凍サイクルを構成する蒸発器の冷却効率も低下するのである。特に油分ミストが多い使用環境においては定期的な薬品洗浄が必要となる場合が多い。付着固着した油分ミストは水洗浄では除去できなく、アルカリ性の薬品を使う。さらに除去しにくい場合は強アルカリの薬品を使う場合がある。アルカリ性薬品を使う場合はアルカリ性薬品が熱交換器に残らないように水で仕上げ洗浄を十分行う必要があるが、洗浄が不十分であると、どうしても熱交換器のフィンとチューブのすきまにアルカリ性薬品が残り、チューブが腐食、孔食され、ついには冷媒ガスリークに至り、冷えなくなるという致命的な欠陥に繋がるという問題があった。
【0005】
従来、油や水の付着を防止するための技術としては、フィン表面をフッ素系樹脂等のコーティングを施し、撥油撥水化して付着しにくく、また転がり落ちやすくする方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
以下、図面を参照しながら従来の技術を説明する。
【0007】
図3は従来のフィンアンドチューブ型熱交換器の概略構成図、図4は従来のフィンアンドチューブ型熱交換器の要部斜視図である。
【0008】
図3、図4に示すように、従来のフィンアンドチューブ型熱交換器1は、一定間隔をおいて平行に配置する多数のフィン2と、フィン2に直角に挿入された内部を流体が流動するU字状のチューブ3と、U字状のチューブ3同士を接続するリターンベンド4と、を備え、U字状のチューブ3を拡管することにより、U字状のチューブ3とフィン2を密着させ、さらにU字状のチューブ3の先端とリターンベンド4を接続するために溶接し、流体が流動する回路を形成する。この従来のフィンアンドチューブ型熱交換器1を構成するフィン2とU字状のチューブ3、リターンベンド4の表面に撥油撥水効果があるフッ素系樹脂等のコーティングを施した樹脂層5を施した構造を有している。
【特許文献1】特開平7−166123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、フッ素樹脂の塗装は、油滴に対する撥油撥水効果は高いが、空気中の油分ミストは炭化した粘度の高い油(ネバネバした状態)であり、フィンに付着する場合、油滴ではなく、油分ミスト状態で付着していくので、重さがなく、油滴にはなりにくい。よって、転がり落ちやすくする効果は非常に小さくなる。また一旦油分が付着すると撥油撥水効果がさらに小さくなり、付着乾燥を繰り返すことにより油分がとれにくくなるという問題があり、物理的に油分ミストがどうしても付着してしまう。
【0010】
また、フッ素系樹脂は高価であり、塗料による皮膜を形成するためには高温で長時間の焼き付けが必要であり、また近年では焼却等によりフッ素ガスが発生するという環境面の問題も指摘されている。
【0011】
そこで、本発明は上記従来の課題を解決するもので、フィンに付着した油分ミストを薬品を使わずに簡単に水で洗浄除去でき、また安価で環境面にも考慮した油分洗浄効果の優れたフィンアンドチューブ型熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来の課題を解決するために、本発明のフィンアンドチューブ型熱交換器は、フィン及びチューブの表面に塗装する熱硬化性樹脂に親水性ポリマー添加剤を混入したものである。
【0013】
これによって、フィン及びパイプの表面に親水性を付与させることができ、フィン及びパイプの表面に付着した油分ミストを水のみで簡単に除去できる。油分等の付着が多い環境であっても塗膜に親水性を付与しているので水分が油分の下に入り込み、油分を浮き上がらせて洗い流すことが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフィンアンドチューブ型熱交換器は、フィン及びチューブの表面に塗装する熱硬化性樹脂に親水性ポリマー添加剤を混入したことで、油分等の付着が多い環境に置かれ、油分ミストがだんだんと付着していき固着してしまう場合でも、水で洗浄すると水が油分と塗膜の間に入り込み、油分を浮かせて除去することが可能となり、薬品を使わずに油分を除去できる。これによってサービス時間の短縮や薬品が残留した場合によるフィン、パイプの腐食リークを低減できる。すなわち冷凍システムとして長期間運転が維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
請求項1に記載の発明は、一定間隔をおいて平行に配置する多数のフィンと、前記フィンに直角に挿入された内部を流体が流動するチューブとから構成され、前記フィン及び前記チューブの表面に熱硬化性樹脂を塗装した熱交換器において、前記熱硬化性樹脂に親水性ポリマー添加剤を混入したことにより、油分等の付着が多い環境に置かれ、油分ミストがだんだんと付着していき固着してしまう場合でも、水で洗浄すると、塗膜に親水性を付与しているので水が油分と塗膜の間に入り込み、油分を浮かせて除去することが可能となり、薬品を使わずに油分を除去できる。これによってサービス時間の短縮や薬品が残留した場合によるフィン、パイプの腐食リークを低減できる。
【0016】
請求項2に記載の発明は請求項1記載の発明において、前記親水性ポリマー添加剤はシリケート(Si−OH)含んだ添加剤であることにより、熱硬化性樹脂とシリケート(Si−OH)とを架橋させ、塗膜全面に親水性を付与させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は請求項1記載の発明において、前記親水性ポリマー添加剤は熱硬化性樹脂塗膜の固形分重量比で5〜20%にしたことにより、塗膜の親水性を付与させるとともに、併せて塗膜の防食性を維持させることができる。配合比が5%未満であると塗膜の親水性が著しく悪くなり、配合比が20%を超えると塗膜の防食性が低下してくる。
【0018】
請求項4に記載の発明は請求項1記載の発明において、前記熱硬化性樹脂はウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂にしたことにより、塗膜の親水性と防食性のバランスがとりやすく、親水性と防食性の効果を併せて発揮することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は請求項1記載の発明において、前記熱硬化性樹脂の水接触角は50度以下にしたことにより、フィンアンドチューブ型熱交換器に油分ミストが付着し、水のみで洗浄除去させる場合、水が油分と塗膜の間に入り込み、油分を浮かせて除去することが可能となる。
【0020】
以下、本発明によるフィンアンドチューブ型熱交換器の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1のフィンアンドチューブ型熱交換器の概略構成図、図2は、同実施の形態のフィンアンドチューブ型熱交換器の要部斜視図である。
【0022】
図1、図2に示すように、フィンアンドチューブ型熱交換器11は、一定間隔をおいて平行に配置する多数のフィン12と、フィン12に直角に挿入された内部を流体が流動するU字状のチューブ13と、U字状のチューブ13同士を接続するリターンベンド14とを備え、U字状のチューブ13を拡管することにより、U字状のチューブ13とフィン12を密着させ、さらにU字状のチューブ13の先端とリターンベンド14を接続するために溶接し、流体が流動する回路を形成する。このフィンアンドチューブ型熱交換器11を構成するフィン12とU字状のチューブ13、リターンベンド14の表面に熱硬化性樹脂を塗装した樹脂層15を施した構造を有している。
【0023】
塗装はフィンアンドチューブ型熱交換器11を組立て後に熱交換器11全面に熱硬化性樹脂である防錆塗料を浸漬塗装方式またはスプレー塗装方式などの塗装方式で焼付け塗装を行い、樹脂層15を形成する。この熱硬化性樹脂に親水性ポリマー添加剤を混入したものである。
【0024】
以上のように、本実施の形態においては、フィン及びチューブの表面に塗装する熱硬化性樹脂に親水性ポリマー添加剤を混入したことで、油分等の付着が多い環境に置かれ、油分ミストがだんだんと付着していき固着してしまう場合でも、水で洗浄すると、塗膜に親水性を付与しているので水が油分と塗膜の間に入り込み、油分を浮かせて除去することが可能となり、薬品を使わずに油分を除去できる。これによってサービス時間の短縮や薬品が残留した場合によるフィン、パイプの腐食リークを低減できる。すなわち冷凍システムとして長期間運転が維持できる。
【0025】
この熱硬化性樹脂に混入した親水性ポリマー添加剤はシリケート(Si−OH)含んだ添加剤にしたことにより、熱硬化性樹脂とシリケート(Si−OH)とを架橋させ、塗膜全面に親水性を付与させることができる。
【0026】
また、この親水性ポリマー添加剤は熱硬化性樹脂塗膜の固形分重量比で5〜20%にしたことにより、塗膜の親水性を付与させるとともに、併せて塗膜の防食性を維持させることができる。配合比が5%未満であると塗膜の親水性が著しく悪くなり、配合比が20%を超えると塗膜の防食性が低下してくる。
【0027】
さらに、熱硬化性樹脂をウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂にしたことにより、塗膜の親水性と防食性のバランスがとりやすく、親水性と防食性の効果を併せて発揮することができる。コスト的にもエポキシ系樹脂やフッ素樹脂に比べ、安価で環境面(焼却した時にフッ素ガス等の有害ガスが発生しない)にも配慮したものができる。親水性機能や防食性機能をさらに向上させたい場合は熱硬化性樹脂はウレタン系樹脂が好ましい。
【0028】
熱硬化性樹脂に親水性ポリマー添加剤を混入したことで、水接触角は50度以下することができ、フィンアンドチューブ型熱交換器に油分ミストが付着し、水のみで洗浄除去させる場合、水が油分と塗膜の間に入り込み、油分を浮かせて除去することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明のフィンアンドチューブ型熱交換器は、フィン及びチューブの表面に塗装する熱硬化性樹脂に親水性ポリマー添加剤を混入したことで、油分等の付着が多い環境に置かれ、油分ミストがだんだんと付着していき固着してしまう場合でも、水で洗浄すると水が油分と塗膜の間に入り込み、油分を浮かせて除去することが可能となり、冷凍冷蔵庫用、ショーケース等のフィンアンドチューブ型熱交換器として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1のフィンアンドチューブ型熱交換器の概略構成図
【図2】同実施の形態のフィンアンドチューブ型熱交換器の要部斜視図
【図3】従来のフィンアンドチューブ型熱交換器の概略構成図
【図4】従来のフィンアンドチューブ型熱交換器の要部斜視図
【符号の説明】
【0031】
11 フィンアンドチューブ型熱交換器
12 フィン
13 U字状のチューブ
14 リターンベンド
15 樹脂層(塗膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定間隔をおいて平行に配置する多数のフィンと、前記フィンに直角に挿入された内部を流体が流動するチューブとから構成され、前記フィン及び前記チューブの表面に熱硬化性樹脂を塗装した熱交換器において、前記熱硬化性樹脂に親水性ポリマー添加剤を混入したことを特徴とするフィンアンドチューブ型熱交換器。
【請求項2】
前記親水性ポリマー添加剤はシリケート(Si−OH)含んだ添加剤であることを特徴とする請求項1に記載のフィンアンドチューブ型熱交換器。
【請求項3】
前記親水性ポリマー添加剤は熱硬化性樹脂塗膜の固形分重量比で5〜20%にしたことを特徴とする請求項1に記載のフィンアンドチューブ型熱交換器。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂はウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂にしたことを特徴とする請求項1に記載のフィンアンドチューブ型熱交換器。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂の水接触角は50度以下にしたことを特徴とする請求項1に記載のフィンアンドチューブ型熱交換器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−89230(P2008−89230A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270408(P2006−270408)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】