説明

フェノール性安定化剤を含む混合物

アモルフォスフェノール性安定化剤と1種以上の還元剤を含む混合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルフォスフェノール性安定化剤、及び/又は1種以上の還元剤、好ましくは1種以上の3価のリンの有機リン化合物、特に好ましくは亜リン酸塩/エステル(ホスファイト)、及び/又はホスホン酸塩/エステル(ホスホナイト)(phosphonite)、を含む混合物に関し、さらに、エステル及び/又はアミドの製造方法、特に安定化剤の製造方法、例えば縮合、例えばエステル化、トランスエステル化、トランスアミド化、及び/又はアミド化によって、好ましくは1種以上のフェノール性カルボン酸及び/又はそれらの誘導体を、1種以上のアルコール及び/又はアミンを使用して行う方法にも関する。本発明はさらに、本発明の混合物を含むプラスチックまたは潤滑油にも関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック、例えばポリウレタン、ポリオレフィン、ポリアセタール、スチレンポリマー、スチレンコポリマー、ポリアミド、及びポリカーボネートは、酸化的分解による製品の変色と機械的特性の劣化を最小にするために、熱安定化剤で安定化される。工業的によく使用される抗酸化剤の例には、フェノール性安定化剤があり、これらは種々の商標で供給されている。これらのフェノール性安定化剤は、文献的にも広範に記載されている。市販のフェノール性安定化剤の例は、「プラスチック添加剤ハンドブック(Plasitc Additibes Handbook)」、第五版、H.Zweifel等、Hanser Publisher、Munich、2001年([1])、98〜107頁および116〜121頁に記載されている。
【0003】
上述したプラスチックの多くは、透明で、半透明で、または着色して使用され、プラスチックの本来の色は決定的な役割を果たす。例えば消費者は、プラスチックの地に過剰の黄変がわずかでもあれば製品を拒否するだろう。
【0004】
それらの構造のために、フェノール性安定化剤は、それらを発色特性を有する製品へと転化する種々の化学反応を受け得る。この文脈において、発色性(chromophoric)とは、その物質が可視領域の光を吸収し、そのために安定化剤の本来の(内在的な)色に影響することを意味する。プラスチックの変色が避けられるべき場合には、発色特性を有するあらゆる添加剤を排除する必要がある。フェノール性安定化剤は、発色特性を有する物質を含み、そしてこの理由によって排除される。
【0005】
フェノール性安定化剤において、これらの発色団は、安定化剤の合成が完成する前においても生じている。特に、合成後の安定化剤の精製、例えば蒸留または再結晶が行われない場合に、または安定化剤の構造が精製を妨げる場合に、合成中に形成されるこれらの発色団は、明確に品質を低下させ、それにより安定化剤の有用性を低下させる。
【0006】
【非特許文献1】「プラスチック添加剤ハンドブック(Plasitc Additibes Handbook)」、第五版、H.Zweifel等、Hanser Publisher、Munich、2001年([1])、98〜107頁および116〜121頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、内在的な(intrinsic)色(内在色)を最小限に有する、すなわち安定化剤中での発色性混入物の割合を最小限に減少させた、安定化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等はこの目的が、上述した安定化剤によって達成されることを見いだした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の別な目的は、本発明のフェノール性安定化剤を製造する方法を提供すること、特にエステル及び/又はアミドを製造する方法、例えば縮合、例えばエステル化、トランスエステル化、トランスアミド化、及び/又はアミド化によって、好ましくは1種以上のフェノール性カルボン酸及び/又はそれらの誘導体を、1種以上のアルコール及び/又はアミンを使用して、フェノール性エステル及び/又はフェノール性アミドへと、特に最小限の内在色を有する本発明のフェノール性安定化剤混合物へと、すなわち製品混合物中で、特に安定化剤混合物中で発色混入物の割合を最小限にされた混合物へと導く方法を提供することにある。この合成方法は、色値(color value)で定義される製品の品質を実現可能でなければならない。
【0010】
本発明者等は、この目的が、エステル化、トランスエステル化、トランスアミド化、及び/又はアミド化を、1種以上の還元剤の存在下、好ましくは1種以上の3価の有機リン化合物、特に好ましくは亜リン酸塩/エステル(ホスファイト)、及び/又はホスホン酸塩/エステル(ホスホナイト)の存在下で、行うことにより達成されることを見いだした。フェノール性安定化剤を製造するために使用される反応混合物への還元剤の添加のために、還元剤の非存在下で製造されたフェノール性安定化剤と比較して、反応生成物の内在色の顕著な減少を達成可能であった。特に好ましいリン化合物を還元剤として使用することは、発色を減少させるだけではなく、特に好ましいリン化合物はそれ自体が安定化剤として作用し、フェノール性安定化剤と還元剤を含む本発明の製品混合物中に適切に残存する。本発明の混合物中の内在色のより低レベルであることの利点は、通常の精製工程、例えば結晶化が、発色団の除去のために使用できない場合のためのアモルフォス安定化剤の場合に特に関連性があり、なぜならこれらの本発明の安定化剤は、結晶化しないからである。フェノール性安定化剤は一般に、通常は他の状況で通常である他の精製方法、例えば蒸留においても使用され得ず、なぜならモル質量が非常に高く、そのためにこれらの化合物の蒸気圧が非常に低く、そして必要になる高い温度では発色団の形成傾向が特に増大するからである。
【0011】
本発明の製造方法は、フェノール性活性成分基(IA)、好ましくフェノール性カルボン酸及び/又はそれらの誘導体の反応に基づいており、アンカー基(IB)、例えば1個以上の水酸基及び/又は1個以上のアミノ基を使用する。本発明によれば、活性成分基(IA)及びアンカー基(IB)は、アミド基及び/又はエステル基を介して、結合している。このエステル基及び/又はアミド基を形成するためには、適切な酸を直接に、または適切な酸誘導体、例えば酸ハロゲン化物、無水物、及びその他の適切な酸誘導体、及びこの酸のその他のエステル及び/又はアミド、特に揮発性のアルコールまたはアミンとのものが、使用される。酸または酸誘導体は、還元剤の存在下で、他の点では通常の条件下で、好ましくは1000〜10mbarの圧力で、通常は高温で、好ましくは70〜300℃で、好適には110〜200℃で、アンカー基(IB)のアミン及び/又はアルコールを使用して、反応させて、所望のエステル及び/又はアミドを得る。
【0012】
例えば、活性成分基(IA)のメチルエステル、例えば好ましくはフェノール性カルボン酸によるメチルエステル、特にメチル 3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートは、アンカー基(IB)、例えばOH基と7〜9個の炭素原子を有するアルキルアルコールを使用して、及び/又は200g/モルの数平均モル質量を有するポリエチレングリコールを使用して、反応させることができる。
【0013】
好適には、この反応は通常の触媒の存在下で行うことができる。反応を促進するために、公知の触媒、例えばスルホン酸、例えばトルエンスルホン酸、または塩基性触媒、例えばリチウムヒドロキシド、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、カリウムヒドロキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムヒドロキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、及び/又はナトリウムtert−ブトキシド、好ましくはカリウムメトキシド、及び/又はカリウムtert−ブトキシドを使用することができる。塩基性触媒が好適である。反応混合物へ触媒を一度に添加せずに徐々に加えたほうが好適であることがわかっており、これはこの方法が反応時間を短縮できるからである。驚くべきことに上述の触媒の使用により、、通常の金属トランスエステル化触媒、例えばスズ化合物、例えばジブチルスズジラウレート、及び/又はジメチルスズジラウレート、またはチタン化合物、例えばチタンテトラブチレート等よりも、製品中の色が顕著に減少することがわかった。このために金属触媒を使用しないことが好ましい。
【0014】
トランスエステル化処理に塩基性触媒が使用される場合には、典型的な処理手順の例は、アンカー基(IB)、例えば200g/モルの数平均モル質量を有するポリエーテルオールを最初に充填することにある。活性成分基(IA)、例えばメチル 3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、次に好ましくは反応装置に添加し、混合物を例えば100℃に加熱する。好適な不活性化の後に、還元剤、好ましくはホスファイトを、塩基性触媒、例えばカリウムメトキシドと共に計量導入し、使用される通常の濃度は、混合物の全量に対して、500〜5000ppm、特に好ましくは1000〜2000ppmである。次に反応温度を、好ましくは120〜200℃、特に好ましくは130〜170℃、特に140〜150℃に上昇させ、得られたメタノールを蒸留除去する。適当なところでさらにカリウムメトキシドを続けて供給して反応の間の転化を増大させる。
【0015】
反応がいったん終了すると、次にカリウム触媒は本発明の安定化剤から、ポリエーテルオールからカリウム触媒を除去する公知の方法により、例えばイオン交換体を使用して、あるいはリン酸または塩酸を使用して、好ましくはリン酸を使用して、分離除去することができる。
【0016】
この目的のための方法の一例において、85%の化学量論量のリン酸(但し、化学量論量の用語は、使用されるカリウムメトキシドの量に対するものである)は変化させることができ、反応混合物へ供給して、30分間撹拌した。ホスフェート(リン酸塩/エステル)のろ過の後に、安定化剤はさらに複雑な精製工程なしで使用可能であり、これは内在色がごくわずかであるためである。ある種の環境下で、添加した還元剤は除去されることが望まれる場合がある。このための方法の例としては、還元剤の選択が、モル質量がフェノール性安定化剤のそれよりも顕著に低くなるように行われる場合には、蒸留がある。
【0017】
使用される活性成分基(IA)としては、公知のカルボン酸及び/又はそれらの誘導体、例えば酸ハロゲン化物、例えば酸塩化物、無水物、エステル、及び/又はアミドであってフェノール基を有するものが挙げられる。次式:
【0018】
【化1】

【0019】
(但し、R−は、−OHであり、
X及びYは、互いに独立に、水素、直鎖、分岐鎖、及び/又は環状の1〜12の炭素原子を有するアルキル基、好ましくは−C(CH33であり、
Zは、1〜12の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルキレン基、好ましくはCH2−CH2−である)
のフェノール性カルボン酸またはこれらの誘導体、例えば酸ハロゲン化物、好ましくは酸塩化物、無水物、アミド、及び/又はエステルを、好適に使用することができる。
【0020】
また従って、使用する活性成分基(IA)として、次式:
【0021】
【化2】

【0022】
(但し、X及びYは、互いに独立に、水素、直鎖、分岐鎖、及び/又は環状の1〜12の炭素原子を有するアルキル基、好ましくは−C(CH33である)
のカルボン酸またはこれらの上述した適切な誘導体が好ましい。
【0023】
使用される活性成分基(IA)は、特に好ましくは次式:
【0024】
【化3】

のカルボン酸またはこれらの上述した適切な誘導体である。
【0025】
フェノール性活性成分基(IA)の合成は、公知の方法を使用できる。メチル 3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートの合成の例による明細は、US3644482、4頁、28行以下に見ることができる。工程の一例は、以下:
メチル 3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを製造するために、例えば、2,6−ジーtert−ブチルフェノール、及び2,6−ジ−tert−ブチルフェノールに対して0.1〜10モル%の塩基性触媒、例えばリチウムヒドロキシド、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、カリウムヒドロキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムヒドロキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、及び/又はナトリウムtert−ブトキシド、好ましくはカリウムメトキシド、及び/又はカリウムtert−ブトキシドを、反応器に充填する。対応するアルコール、例えばカリウムメトキシドが使用される場合にはメタノール、カリウムヒドロキシドが使用される場合には水、を蒸留により除去した後に、120〜200℃、例えば好ましくは130〜160℃へ、窒素フラッシュ及び/又は真空吸引しつつ、加熱し、次に反応混合物を90〜160℃、好ましくは100〜130℃へと温度制御して、好ましくは反応温度におけるメチルアクリレートの蒸気圧よりも高い圧力で、メチルアクリレートを緩やかに計量導入する。これが、反応溶液からメチルアクリレートが除去されないことを確実にする。操作が大気圧下で行われる場合には、蒸発するメチルアクリレートは、好ましくは環流を通じて反応溶液へと戻される。2,6−ジーtert−ブチルフェノールへと計量導入されるメチルアクリレートの量は、好ましくは2,6−ジーtert−ブチルフェノールに対して90〜120モル%、特に95〜110モル%である。60〜180分の反応時間の後に、反応は通常停止される。反応生成物は次にアルカリ触媒の中性化による公知の方法により精製され、その後に再結晶化または精留される。本発明のフェノール性安定化剤のその後の製造工程の間に塩基性触媒を使用する意図の場合には、メチルアクリレートは反応生成物から好適に除去され、例えば好ましくは50〜80℃、特に60℃で、好ましくは真空中でまたは窒素フラッシングし、次にアンカー基(IB)がフェノール性活性成分基(IA)を含む混合物へと添加される。不活性化と還元剤の計量導入の後に、トランスエステル化反応が上述したように続けられる。反応器中で行うことができるこの方法の利点は、反応器の効率的な利用と精製段階の省略にある。
【0026】
安定化剤が、立体干渉されたフェノールから化学反応によって、例えばアルコールまたはアミンを使用したトランスエステル化またはトランスアミド化によって製造される場合には、立体干渉された(立体障壁を受けた)フェノールはインサイチュー(原位置)で製造可能である。その代わりに、反応の最初の段階で製造し、単離し、次にアルコールまたはアミンを使用して反応させてもよい。しかし、いずれの場合でも、立体干渉されたフェノールが完成する前においても、立体干渉されたフェノールが続けて最終的な安定化剤を生じる反応の間に、発色団を導く混入物の製造が起こりうる。これらの発色団の濃度は、この処理中に広い範囲で変化可能である。この結果、安定化剤の個々のバッチは、異なった色値を有し、一貫した品質を供給することができない。本発明の還元剤使用は、発色団濃度が変化する場合ですら一貫した製品色を達成可能である。
【0027】
アンカー基(IB)は、アンカー基のモル質量それ自体によっても、活性成分基(IA)が結合可能な水酸基及び/又はアミノ基の数によっても、安定化剤のモル質量を調整することに特に役立つ。アンカー基(IB)は好ましくは1〜20個の水酸基及び/又は0〜20個のアミノ基を有している。アンカー基(IB)は、特に好ましくは1〜6個、特に1〜4個の水酸基を有している。アンカー基は、その水酸基及び/又はアミノ基がフェノール性活性成分基(IA)のカルボキシル基へ、エステル基またはアミド基を介して結合可能な化合物である。アンカー基(IB)の水酸基は、アミノ基だけでなく水酸基が存在する程度で、好ましくは第1級の水酸基である。使用されるアンカー基の例としては、1〜30個の炭素原子と、1〜20個の水酸基、好ましくは1〜6個の水酸基、特に1〜4個の水酸基を有する、直鎖、分岐、または環状のアルキル基が挙げられ、対応する化合物の例としては、メタノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、ドデカノール、3−メチルブタノール、3−エチルヘキサノール、エタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレンジアミン、及びペンタエリスリトールが挙げられる。使用できる他のアンカー基は、エーテルに対応し、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、及び/又は120〜3000g/モルの数平均モル質量を有するポリテトラヒドロフラン、200g/モルの数平均モル質量を有するポリエチレングリコール、または250g/モルの数平均分子量を有するポリテトラヒドロフランである。異なったアンカー基(IB)の混合物を使用することもできる。
【0028】
フェノール性安定化剤を製造するためにはフェノール性活性基と反応するその他の公知のアンカー基を使用することもできる。使用される好ましいアンカー基(IB)は、すなわちアルコールは、1種以上のポリエーテルアルコールに対応し、特に好ましくはポリアルキレンエーテルジオール、特にポリエチレングリコール及び/又はポリテトラフラン、好ましくは120〜3000g/モル、特に好ましくは120〜600g/モルのモル質量を有するものである。7〜18個の炭素原子を有する単官能性、直鎖状または分岐状のアルキルアルコール、特に7〜9個の炭素原子を有する単官能性アルキルアルコールを含む混合物、アルキルアルコールあたり平均8個の炭素原子を有する混合物も、好適に使用される。18個の炭素原子を有する直鎖アルキルアルコールの使用も好適である。13〜15個の炭素原子を有する単官能性直鎖状または分岐状のアルキルアルコールの使用も好ましい。
【0029】
使用される還元剤は、公知の還元剤でもよく、好ましくはリン化合物及び/又は亜ジチオン酸ナトリウム、特に好ましくは3価のリンの有機リン化合物、特にホスファイト及びホスホナイトである。好適なリン化合物の例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ジフェニレンジホスホナイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールアルキル(C12〜15)ホスファイト(CAS No:96152−48−6)、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールホスファイト、テトラフェニルジイソプロピレングリコールホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0030】
リン化合物の他の例は、「プラスチック添加剤ハンドブック(Plasitc Additibes Handbook)」、第五版、H.Zweifel等、Hanser Publisher、Munich、2001年([1])、109〜112頁に見ることができる。トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールアルキル(C12〜15)ホスファイト(CAS No:96152−48−6)、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、及び/又はテトラフェニルジプロピレングリコールホスファイトを、好適に使用できる。ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールアルキル(C12〜15)ホスファイト(Weston 439(登録商標))(CAS No:96152−48−6)、テトラフェニルジプロピレングリコールホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリス(4−n−ノニルフェニル)ホスファイト、特にポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、及び/又は4,4’−イソプロピリデンジフェノールアルキル(C12〜15)ホスファイト(CAS No:96152−48−6)を、特に好適に使用できる。ホスファイトの混合物も使用可能である。
【0031】
フェノール性安定化剤の製造のための反応混合物中の還元剤含有量は、混合物の全質量に対して好ましくは0.01〜10質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%、特に0.1〜1質量%である。
【0032】
本発明の方法によって製造されるフェノール性エステル及び/又はアミドは、還元剤との混合物の形態で製造方法の生成物(製品)中に存在する。この混合物は特にパール色という利点を有する。還元剤は混合物中に存在し、特にホスファイトは、有機化合物、例えばプラスチック(樹脂)または潤滑油の安定化の用途に悪影響を持たず、これはホスファイトも安定化作用を有するためである。
【0033】
そのために安定化剤混合物として直接に使用可能な本発明の混合物は、好ましくは5未満の、特に好ましくは0〜5の、特に0〜3の、特に好適には0〜1のDIN6162に従って測定されたヨウ素色価(iodine color number)を有する。前記ヨウ素価が1未満である場合には、ハーゼン(DIN53409)の色の定義を使用することが推奨される。従って、特に好ましい安定化剤は、ハーゼン数が70未満、特にハーゼン数が0〜70の範囲、特に好適には50以下である。通常使用される処理工程は、このような低いレベルの色を達成できず、これは混合物中の還元剤の使用に帰することができる。
【0034】
本発明の混合物、及びこの混合物の好ましい実施の態様は、冒頭に上述した好ましい出発材料の使用の結果である。
【0035】
従って、混合物中のフェノール性安定化剤が次式:
【0036】
【化4】

【0037】
(但し、R−は、−OHであり、
X及びYは、互いに独立に、水素、直鎖、分岐鎖、及び/又は環状の1〜12個、好ましくは3〜5個の炭素原子を有するアルキル基、特に好ましくは−C(CH33であり、
Zは、1〜12の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルキレン基、好ましくはCH2−CH2−である)
の構造単位を有する混合物が好適である。
【0038】
混合物中のフェノール性安定化剤が、1種以上のフェノール性活性成分基(IA)を有し、1種以上のアンカー基(IB)を有し、但し(IA)及び(IB)が、エステル基を介した結合及び/又はアミド基を介した結合を有し、(IB)として120〜3000g/モルのモル質量を有する1種以上のポリエーテル、好ましくはポリエチレングリコール、及び/又はポリテトラヒドロフランが存在している、混合物も好適である。
【0039】
次式:
【0040】
【化5】

【0041】
(但し、nは、1,2,3,4,5,6,7,8,9または10、好ましくは2,3,4,5または6、特に好ましくは3または4である)
のフェノール性安定化剤を含む混合物が特に好適である。nの選択は、特に安定化剤の数平均モル質量が700〜800g/モルであるように行う。nの選択は、特に好ましくは、結合システム、すなわち個々の安定化剤分子を含む安定化剤混合物中において、安定化剤混合物の質量平均モル質量が、安定化剤混合物の数平均モル質量よりも大きくなるように行う。
【0042】
従って、次式:
【0043】
【化6】

【0044】
(但し、mは、1,2,3,4,5,6,7,8,9または10、好ましくは2,3,4,5または6、特に好ましくは3または4である)
のフェノール性安定化剤を含む混合物が特に好適である。mの選択は、特に安定化剤の数平均モル質量が700〜800g/モルであるように行う。mの選択は、特に好ましくは、結合システム、すなわち個々の安定化剤分子を含む安定化剤混合物中において、安定化剤混合物の質量平均モル質量が、安定化剤混合物の数平均モル質量よりも大きくなるように行う。
【0045】
次式:
【0046】
【化7】

【0047】
(但し、R1は、オクタデシル基、または直鎖状または分岐状のアルキル基で7〜15個、好ましくは13〜15個または7〜9個の炭素原子を有するものである)
のフェノール性安定化剤を含む混合物もまた特に好適である。
【0048】
本発明の混合物において、フェノール性安定化剤:還元剤の質量比は、好ましくは10000:1〜10:1、特に好ましくは1000:1〜20:1、特に1000:1〜100:1である。
【0049】
還元剤、特にホスファイトとの混合物中の本発明のフェノール性エステル及び/又はアミドは、通常、酸化的分解を受ける有機材料の安定化剤として有用である。これらの材料の例は以下である:合成有機高分子材料、例えばビニルハロゲン化物の重合の間に形成されたビニルレジンであって不飽和重合可能化合物とのもの、例えばビニルエステルとのもの、α,β−不飽和アルデヒドとのもの、または不飽和炭化水素とのもの、例えばブタジエンまたはスチレン、ポリ−α−オレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリブチレン、ポリイソプレン、及びその種のもの、これにはポリ−α−オレフィンのコポリマーが含まれ、ポリウレタン、例えばポリオールから及び有機ポリイソシアネートから製造されるもの、ポリアミド、例えばポリヘキサメチレンアジピン酸アミド及びポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド、及びコポリマー、例えば高衝撃強度ポリスチレン、これにはブタジエンとスチレンのコポリマー、アセトニトリル、ブタジエン、及び/又はスチレンの共重合により形成されたコポリマーが含まれる。本発明の化合物を使用して安定化される材料の例は以下である:脂肪族エステルタイプの潤滑油、例えばジ(2−エチルヘキシル)アゼラート、ペンタエリスリトールテトラカプロエート、及びその種のもの、動物油及び植物油、例えば亜麻仁油、脂肪、獣脂、ラード、落花生油、タラ肝油、ヒマシ油、パーム油、トウモロコシ油、綿実油、及びその種のもの、炭化水素材料、例えばガソリン、鉱物油、燃料油、乾性油、切削液、ワックス、レジン、及びゴム、脂肪酸、石けん、及びその種のものである。
【0050】
本発明の安定化剤は、公知のあらゆる熱可塑性樹脂において、例えばアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ASA、SAN、ポリエチレン、ポリプロピレン、EPM、EPDM、PVC、アクリレートゴム、ポリエステル、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、PC(ポリカーボネート)、及び/又は熱可塑性ポリウレタン(本明細書ではTPUとも呼ぶ)において、例えばUV照射に関する安定化のために、好適に使用される。熱可塑性ポリウレタン中での安定化剤の使用が好適である。
【0051】
熱可塑性樹脂、特にTPUは、好ましくは各熱可塑性樹脂の質量に対して0.01〜5質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%、特に0.3〜1.5質量%のフェノール性安定化剤を含む。本発明の安定化剤に加えて、その他の公知の安定化剤を熱可塑性樹脂中で使用することができ、例としては他のホスファイト、及びチオ相乗剤、HALS化合物、UV吸収剤、消光剤もある。
【0052】
本発明の安定化剤は、特にフェノール性エステル及び/又はアミドを含む混合物は、TPUの製造に先立ってまたは製造中に、イソシアネートに対して反応性である化合物(b)へ添加してもよく、最終的なTPUへ、例えば溶融したまたは軟化したTPUへ添加してもよい。熱可塑性ポリウレタンは、本発明の安定化剤の作用を減損することなく、熱可塑性処理を受けられる。TPUを製造する方法は公知である。例えば、熱可塑性ポリウレタンは、(a)イソシアネートと(b)イソシアネートに反応性であって500〜10000の分子量を有する化合物とを反応させることにより製造可能であり、好適には、(c)50〜499の分子量を有する連鎖伸長剤と、好適には(d)触媒の存在下で、及び/又は(e)通常の助剤及び/又は添加剤の存在下で、反応は本発明の阻害剤の存在下で行われる。TPUの製造において通常使用される成分(a)及び(b)の例は、さらに好適には(c)、(e)及び/又は(f)の例は、以下である:
a) 使用される有機イソシアネート(a)は、公知の脂肪族、環状脂肪族、アリール脂肪族、及び/又は芳香族イソシアネート、例えばトリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−、及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン、1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、ブチレン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキサン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート、及び/又はジシクロヘキシルメタン4,4’−、2,4’−、及び2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’−、2,4’−、及び/又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート、及び/又はフェニレンジイソシアネートである。
【0053】
b) イソシアネートに反応性があり使用される化合物(b)は、イソシアネートと反応性がある公知の化合物、例えばポリエステルオール、ポリエーテルオール、及び/又はポリカーボネートジオール(これらは通常「ポリオール」の用語で総称される)であって、500〜8000、好ましくは600〜6000、特に800〜4000の分子量を有し、好ましくは1.8〜2.3、さらに好ましくは1.9〜2.2、特に2個の平均官能基数を、有している。ポリエーテルポリオール、特に好ましくはポリオキシテトラメチレングリコールに基づくそれらのポリエーテルオールを使用することが好ましい。ポリエーテルオールは、加水分解に対する抵抗性の点でポリエステルオールよりも優れているという利点がある。
【0054】
c) 使用される連鎖伸長剤(c)は、公知の脂肪族、アリール脂肪族、芳香族、及び/又は環状脂肪族化合物であって、50〜499のモル質量を有し、好ましくは二官能性化合物であり、例えばジアミン及び/又はアルカンジオールであって、2〜10個の炭素原子をアルキレン基に有するもの、特に1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及び/又はジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−、オクタ−、ノナ−、及び/又はデカアルキレングリコールであって、3〜8個の炭素原子を有するもの、及び好ましくはオリゴ−及び/又はポリプロピレングリコールに対応するものである。連鎖伸長剤の混合物を使用することもできる。
【0055】
d) ジイソシアネート(a)のNCO基及び構造成分(b)及び(c)の水酸基との間の反応を特に促進する適した触媒は、先行技術において公知である通常の第三級アミン、例えばトリエチルアミン、トリメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びこの種のもの、及びさらに特に有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物、例えば鉄アセチルアセトネート、スズ化合物、例えばスズ(II)ジアセテート、スズ(II)ジオクトエート、スズ(II)ジラウレート、またはジアルキルスズ塩であって脂肪族カルボン酸とのもの、例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、またはこの種のものである。触媒が通常使用される量は、ポリヒドロキシ化合物(b)の100質量部に対して0.0001〜0.1質量部である。
【0056】
e) 触媒(d)に加えて、通常の助剤(e)も、構造成分(a)〜(c)へと添加できる。例としては、表面活性物質、フィラー、難燃剤、核形成剤、抗酸化剤、潤滑剤、離型剤、染料、顔料、及び好適な場合には本発明の安定化剤に加えて例えば加水分解、光、熱、または退色(変色)に対する安定化剤、無機及び/又は有機フィラー、強化剤、及び可塑剤を挙げることができる。
【0057】
上述した助剤及び添加剤のさらに詳細は、技術文献で見ることができる。本願明細書で言及した全てのモル質量は、[g/モル]の単位を有する。TPUの硬度を調整するために、構造成分(b)及び(c)のモル比は、相対的に広範に変化させることができる。友好であることが認められた、使用されるべき成分(b)と連鎖伸長剤(c)の全量の間のモル比は、10:1〜1:10、特に1:1〜1:4であり、成分(c)の増大につれてTPUの硬度は増大する。この反応は通常の指数で起こり、好ましくは60〜120、特に好ましくは80〜110の指数である。この指数は、成分(a)での反応の間に使用されるイソシアネート基の全数と、成分(b)と(c)でのイソシアネートに反応性である基、すなわち活性水素原子との比(イソシアネートに反応性である基:イソシアネートに反応性である基)を介して定義される。指数が100である場合には、成分(a)中の各イソシアネート基に、1個の活性水素原子、すなわちイソシアネートに反応性である1個の官能基が、成分(b)及び(c)に存在する。上述の指数が100以上である場合には、OH基よりも多いイソシアネート基が存在する。TPUは、公知の製造方法によって連続的に製造することができ、例えば反応成形押出装置、またはワンショット法またはプレポリマー法によるベルト処理、または公知のプレポリマー処理法によるバッチワイズで、製造することができる。これらの処理工程において、成分(a)、(b)及び、好適には、(c)、(d)、及び/又は(e)を、連続的にまたは同時に互いに混合して、その後にすぐに反応を開始する。押出成形工程において、構造成分(a)、(b)、及びさらに、好適には、(c)、(d)、及び/又は(e)を、個別にまたは混合物として、押出成型装置に導入して、例えば100〜280℃で、好ましくは140〜250℃の温度で反応させ、得られたTPUを押出成形して、冷却し、ペレット化する。通常の処理工程、例えば射出成形または押出成形は、本発明の安定化剤を含む本発明のTPUの処理に使用でき、これらは通常はペレットまたは粉末の形態で使用され、所望のフィルム、成形体、ローラー、ファイバー、自動車の被覆材、管材、ケーブルプラグ、折り畳みベロー、薬品ケーブル、ケーブル被覆、ガスケット、ドライブベルト、または減衰部材を得ることができる。本発明の製造方法により得られる熱可塑性ポリウレタンは、好ましくはフィルム、成形体、靴底、ローラー、ファイバー、自動車の被覆材、ワイパーブレード、管材、ケーブルプラグ、折り畳みベロー、薬品ケーブル、ケーブル被覆、ガスケット、ドライブベルト、または減衰部材は、冒頭に記載した利点を有し、すなわち色が薄く、安定化剤の使用のために特にパール色(pale color)である。
【実施例】
【0058】
以下の実施例によって本発明の優位性を詳細する。
【0059】
[実施例1〜22]
25gのポリエチレングリコール(OH価で557mgKOH/g)を、四つ叉フラスコ中で計量し、71.13gのメチル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(実施例1〜10:ベジンファクトリー(Bejing Factory)No.3、バッチNo.2001−10−16;実施例11〜14:ベジンファクトリーNo.3、バッチNo.2001−10−18;実施例15〜22:ラシヒ(Raschig))、及び表1に記載の量の還元剤とともに、145℃に加熱した。加熱段階とトランスエステル化反応の間に、窒素流を溶液中に連続的に通過させた。145℃の温度に達した後に、0.177g=2000ppmのカリウムメトキシドを、トランスエステル化主反応を開始するために添加した。得られたメタノールを、下流の冷却トラップ(液体窒素)で凍結して単離した。6時間の反応時間の後に、生成物を80℃に冷却した。次に0.246gの85%濃度リン酸をフラスコに添加して生成物を中性化した。生成物を次にさらに半時間80℃で撹拌し、次にT750型フィルター(4〜10μmの保持率(retention rating))を使用してザイツシェンク(SeitzSchenk)圧力フィルターを通過させた。トランスエステル化での転化は、ゲルろ過クロマトグラフィーを使用して決定し、全試料で95%を超えた。カリウム含有量は、原子吸光度計によって決定し、全ての実験において20ppm未満であった。
【0060】
【表1】

TIOP = トリイソオクチルホスファイト
TLP = トリラウリルホスファイト
TNPP = トリス(4−n−ノニルフェニル)ホスファイト
DHOP = ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト
TDP = トリイソデシルホスファイト
THOP = テトラフェニルジイソプロピレングリコールホスファイト
Weston(登録商標)439は、ゼネラルエレクトリックスペシャリティケミカルズ(General Electric Speciality Chemicals)より市販。
【0061】
[実施例23〜25]
2.7モル(557.1g)の2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを、2Lの四つ叉丸底フラスコへ、2モル%(3.79g)のカリウムメトキシドと共に入れて計量した。この混合物を、165℃で30分間N2フラッシュして乾燥した。得られたメタノールを、冷却トラップで凍結して単離下。次に装置に乾留凝縮器を取り付けて、2.97モル(255.7g)のメチルアクリレート(=10%モル過剰量)を添加した。添加の間、フラスコの温度が130℃より低くならないように注意した。混合物の撹拌を2時間140℃で続けた。
【0062】
次に乾留凝縮器を、蒸留ブリッジで置き換えて、次に過剰のMAを30分間の連続窒素導入によって追い出した。次に268.1gのポリエチレングリコール(565mgKOH/gのOH価、すなわち平均モル質量198.58g/モル)を、表2に記載した還元剤で、反応混合物に添加した。生成物は7時間140℃で撹拌した。窒素の導入を継続した。この時間の後に、最終的なフェノール性安定化剤を80℃に冷却した。85%濃度のH3PO4を添加し、その量(5.3g)は触媒の相当量である。80℃での30分間の撹拌の後に、沈殿した塩を、ザイツシェンク(SeitzSchenk)製の加熱圧力フィルター(フィルター:T750型)によって90℃で生成物から除去した。
【0063】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルフォスフェノール性安定化剤及び1種以上の還元剤を含む混合物。
【請求項2】
還元剤として、3価のリンからなる1種以上の有機リン化合物を含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
色値がDIN53409によるハーゼン数で100未満である、請求項1に記載の混合物。
【請求項4】
前記フェノール性安定化剤が、以下の構造単位:
【化1】

(但し、R−は、−OHであり、
X及びYは、互いに独立に、水素であるか、または1〜12の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、及び/又は環状のアルキル基であり、
Zは、1〜12の炭素原子を有するアルキレン基である)
を有する、請求項1に記載の混合物。
【請求項5】
前記フェノール性安定化剤が、1種以上のフェノール性活性成分基(IA)を有し、且つ1種以上のアンカー基(IB)を有し、但し、(IA)と(IB)は、エステル基及び/又はアミド基による結合を有し、(IB)には、120〜3000g/モルの範囲のモル質量で1種以上のポリエーテル、好ましくはポリエチレングリコール及び/又はポリテトラヒドロフランが存在している、請求項1に記載の混合物。
【請求項6】
以下の化合物:
【化2】

(但し、nは、1,2,3,4,5,6,7,8,9または10である)
をフェノール性安定化剤として含む請求項1に記載の混合物。
【請求項7】
以下の化合物:
【化3】

(但し、mは、1,2,3,4,5,6,7,8,9または10である)
をフェノール性安定化剤として含む請求項1に記載の混合物。
【請求項8】
以下の化合物:
【化4】

(但し、R1は、オクタデシル基または7〜15個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基である)
をフェノール性安定化剤として含む請求項1に記載の混合物。
【請求項9】
フェノール性安定化剤:還元剤の質量比が、10000:1〜10:1の範囲にある、請求項1に記載の混合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の混合物を含む、プラスチックまたは潤滑用オイル、または植物または動物油。
【請求項11】
1種以上の還元剤の存在下で、エステル化、トランスエステル化、トランスアミド化、及び/又はアミド化を行う工程を含む、エステル及び/又はアミドの製造方法。
【請求項12】
以下のフェノール性カルボン酸:
【化5】

(但し、R−は、−OHであり、
X及びYは、互いに独立に、水素であるか、または1〜12の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、及び/又は環状のアルキル基であり、
Zは、1〜12の炭素原子を有するアルキレン基である)
またはこのカルボン酸の誘導体が使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記使用されるアルコールが、120〜3000g/モルのモル質量の1種以上のポリエーテルを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
エステル及び/又はアミドを製造するための、好ましくはフェノール性安定化剤を製造するための反応混合物中の還元剤の含有量が、混合物の全質量に対して、0.01〜10質量%である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法によって得られる、フェノール性エステルまたはフェノール性アミドを含む、混合物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルフォスフェノール性安定化剤と1種以上の還元剤を含む混合物であって、
DIN53409による100未満のハーゼン数で示される色値を有し、且つフェノール性安定化剤として次式:
【化1】

(但し、nは、個々の安定化剤分子を含む安定化剤混合物中で、安定化剤混合物の質量平均分子量が安定化剤混合物の数平均分子量よりも大きくなるように選択される)
の化合物を含む混合物。
【請求項2】
アモルフォスフェノール性安定化剤と1種以上の還元剤を含む混合物であって、
DIN53409による100未満のハーゼン数で示される色値を有し、且つフェノール性安定化剤として次式:
【化2】

(但し、nは、1,2,3,4,5,6,7,8,9または10である)
の化合物を含む混合物。
【請求項3】
還元剤として、3価のリンからなる1種以上の有機リン化合物を含む、請求項1または請求項2に記載の混合物。
【請求項4】
フェノール性安定化剤:還元剤の質量比が、10000:1〜10:1の範囲にある、請求項1または請求項2に記載の混合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の混合物を含む、プラスチックまたは潤滑用オイル、または植物または動物油。
【請求項6】
エステル化、トランスエステル化、トランスアミド化、及び/又はアミド化によってフェノール性安定化剤を製造する方法であって、
エステル化、トランスエステル化、トランスアミド化、及び/又はアミド化を、1種以上の還元剤の存在下で行う工程を含む方法。
【請求項7】
以下のフェノール性カルボン酸:
【化3】

(但し、R−は、−OHであり、
X及びYは、互いに独立に、水素であるか、または1〜12の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、及び/又は環状のアルキル基であり、
Zは、1〜12の炭素原子を有するアルキレン基である)
またはこのカルボン酸の誘導体が使用される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記使用されるアルコールが、120〜3000g/モルのモル質量の1種以上のポリエーテルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
エステル及び/又はアミドを製造するための、好ましくはフェノール性安定化剤を製造するための反応混合物中の還元剤の含有量が、混合物の全質量に対して、0.01〜10質量%である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法によって得られる、フェノール性エステルまたはフェノール性アミドを含む、混合物。

【公表番号】特表2006−504818(P2006−504818A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547575(P2004−547575)
【出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011932
【国際公開番号】WO2004/039878
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【Fターム(参考)】