説明

フェノール樹脂組成物とフェノール樹脂成形材料並びにフェノール樹脂成形品

【課題】成形性に優れ、強度、高温下及び高湿下における寸法安定性に優れたフェノール樹脂組成物とフェノール樹脂成形材料並びにフェノール樹脂成形品を提供する。
【解決手段】フェノール樹脂とともに硬化剤、又は硬化剤と硬化助剤とを含有するフェノール樹脂組成物であって、フェノール樹脂がその全量100質量%の内訳として、アルキルベンゼン変性ノボラック型フェノール樹脂30〜60質量%、ノボラック型フェノール樹脂10〜30質量%、ポリ酢酸ビニル変性ノボラック型フェノール樹脂10〜50質量%、レゾール型フェノール樹脂10〜30質量%の範囲内で選択されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂組成物とフェノール樹脂成形材料並びにフェノール樹脂成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車部品や精密部品に使用されている金属やセラミックスの代替え材料としてフェノール樹脂成形材料が使用されているが、フェノール樹脂成形材料を成形してなるフェノール樹脂成形品は、金属やセラミックスと比較して強度、耐熱性、寸法安定性の点では未だその領域に近づけていないというのが現状である。
【0003】
近年では、このフェノール樹脂成形品がさらに高温下及び高湿下の環境で使用されるようになっており、従来と比べて高い寸法安定性が要求されるようになってきている。
【0004】
寸法安定性については無機充填材の含有量を増やすことで向上させることができるが、成形性と強度のバランスを保つ必要があるので無機充填材の含有量には限界がある。
【0005】
そこで、これまでにフェノール樹脂成形品の欠点である高温下及び高湿下における吸湿による寸法変化を改善するために、親水性の水酸基の数が少ないアルキルベンゼン変性フェノール樹脂を用いるものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2653593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように親水基が少ないアルキルベンゼン変性フェノール樹脂を用いることにより、高湿下での寸法安定性の改善は提案されているものの、高温下における熱収縮に対しては対策がされていなかったため、成形性、強度、高温下及び高湿下における寸法安定性の全てを同時に満足できるものではなかった。
【0008】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、成形性に優れ、強度、高温下及び高湿下における寸法安定性に優れたフェノール樹脂組成物とフェノール樹脂成形材料並びにフェノール樹脂成形品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0010】
即ち、本発明のフェノール樹脂組成物は、フェノール樹脂とともに硬化剤、又は硬化剤と硬化助剤とを含有するフェノール樹脂組成物であって、フェノール樹脂がその全量100質量%の内訳として、アルキルベンゼン変性ノボラック型フェノール樹脂30〜60質量%、ノボラック型フェノール樹脂10〜30質量%、ポリ酢酸ビニル変性ノボラック型フェノール樹脂10〜50質量%、レゾール型フェノール樹脂10〜30質量%の範囲内で選択されていることを特徴とする。
【0011】
また、このフェノール樹脂組成物においては、アルキルベンゼン変性ノボラック型フェノール樹脂のアルキルベンゼン変性比率が30〜60モル%で、重量平均分子量が2000〜5000であることが好ましい。
【0012】
また、このフェノール樹脂組成物においては、ノボラック型フェノール樹脂のオルソ/パラ結合比が1.0〜6.0であることが好ましい。
【0013】
また、このフェノール樹脂組成物においては、硬化助剤を、フェノール樹脂100質量部に対して0.5〜3.0質量部含有することが好ましい。
【0014】
さらに、本発明のフェノール樹脂成形材料は、前記のフェノール樹脂組成物と、補強材としてガラス繊維を40〜65質量%含有することを特徴とする。
【0015】
さらにまた、本発明のフェノール樹脂成形品は、前記のフェノール樹脂組成物又はフェノール樹脂成形材料を成形してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフェノール樹脂組成物とフェノール樹脂成形材料並びにフェノール樹脂成形品によれば、成形性、強度、高温下及び高湿下における寸法安定性に優れたフェノール樹脂組成物とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
本発明のフェノール樹脂組成物は、必須のフェノール樹脂成分として、アルキルベンゼン変性ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリ酢酸ビニル変性ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂を含有するものである。
【0019】
そして、さらにこのフェノール樹脂組成物に補強材を添加してフェノール樹脂成形材料とするものである。
【0020】
本発明のフェノール樹脂組成物に用いられるアルキルベンゼン変性ノボラック型フェノール樹脂の含有量は、フェノール樹脂全量に対して30〜60質量%、好ましくは35〜55質量%の範囲である。この範囲とすることにより、優れた耐湿寸法安定性を得ることができる。
【0021】
30質量%より少ないと、十分な耐湿性が得られない場合があり、60質量%を超えると、硬化性が低下する場合がある。
【0022】
また、アルキルベンゼン変性ノボラック型フェノール樹脂のアルキルベンゼン変性比率は30〜60モル%が好ましい。30モル%より少ないと耐水性が低下する場合があり、60モル%を超えると硬化性が低下する場合がある。
【0023】
重量平均分子量は、ポリスチレン換算で2000〜5000が好ましい。2000より小さいと低分子成分が多く、取扱い性が悪くなる場合があり、5000より大きいと流動性が低下する場合がある。
【0024】
本発明のフェノール樹脂組成物に用いられるノボラック型フェノール樹脂の含有量は、フェノール樹脂全量に対して10〜30質量%、好ましくは12〜20質量%の範囲である。この範囲とすることにより、成形品の曲げ強さを高めることが可能となる。10質量%より少ないと、生産性向上の効果が小さくなるとともに曲げ強さが低下するおそれがあり、30質量%より多いと、成形性が悪くなる場合がある。
【0025】
ノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、ポリスチレン換算で、重量平均分子量が2000〜6000のものが好ましい。ポリスチレン換算で重量平均分子量が2000より小さいと低分子成分が多く、取扱い性が悪くなる場合があり、6000より大きいと流動性が低下する場合がある。
【0026】
また硬化性の点からオルソ/パラ結合比(O/P比)は1.0〜6.0のものが好ましい。
【0027】
ここで、O/P比は次のように定義される。すなわちノボラック型フェノール樹脂は、フェノール系化合物に由来する芳香環が、メチレン結合により架橋した構造のものであるが、メチレン結合の架橋の仕方が、それぞれの芳香環の水酸基に対してオルソ位同士で架橋している場合と、オルソ位とパラ位とで架橋している場合と、パラ位同士で架橋している場合の3通りがある。
【0028】
このように芳香環の水酸基に対してパラ位同士で架橋しているメチレン結合数と、オルソ位とパラ位とで架橋しているメチレン結合数の1/2との和に対する、オルソ位同士で架橋しているメチレン結合数とオルソ位とパラ位とで架橋しているメチレン結合数の1/2との和との比がO/P比である。つまり、O/P比を式で表すと次のようになる。
【0029】
O/P比={(オルソ位同士で架橋しているメチレン結合数)+(オルソ位とパラ位とで架橋しているメチレン結合数の1/2)}/{(パラ位同士で架橋しているメチレン結合数+オルソ位とパラ位とで架橋しているメチレン結合数の1/2)}
【0030】
またノボラック型フェノール樹脂のメチレン結合数及びその結合形式は、例えば赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトル、ゲルパーミッションクロマトグラフィー等の方法でメチレン結合数及びその結合形式が同定された標準物質により、あらかじめそれぞれの吸収位置と吸収強度を確認の上、その吸収位置と吸収強度から求めることができる。
【0031】
O/P比が1.0〜6.0の範囲であるノボラック型フェノール樹脂を用いることによって、成形品製造時の硬化性を良好にすることができる。O/P比が1.0より少ないと、硬化性が不十分となる場合があり、6.0より大きいと、成形性に問題を生じる場合がある。
【0032】
本発明のフェノール樹脂組成物に用いられるポリ酢酸ビニル変性ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、ホルマリン(約50%水溶液)、蓚酸を1000℃で90分間反応させ、さらに120分間かけて乳化させた後、この乳化物にポリ酢酸ビニル樹脂(重量平均分子量10000〜20000)を添加して、520mmHg(69.3kPa)の雰囲気下で160℃の温度で処理したものを冷却・固化し、この固化物を粉砕することによって得ることができる。
【0033】
このようなポリ酢酸ビニル変性ノボラック型フェノール樹脂の含有量は、フェノール樹脂全量に対して10〜50質量%、好ましくは20〜30質量%の範囲である。この範囲とすることにより、高温雰囲気下での成形品の寸法安定性を向上させることができる。
【0034】
含有量が10質量%より少ないと、熱による収縮を低減する効果を十分に得ることができない場合があり、50質量%を超えると、成形品製造時の成形サイクルが悪化する恐れがある。これは、ポリ酢酸ビニルがフェノール樹脂の硬化を阻害することによるものと考えられる。
【0035】
本発明のフェノール樹脂組成物に用いられるレゾール型フェノール樹脂としては特に限定されるものではないが、例えばメチロール型やジメチレンエーテル型等を用いることができる。レゾール型フェノール樹脂の含有量は、フェノール樹脂全量に対して10〜30質量%、好ましくは15〜25質量%の範囲である。この範囲とすることにより、優れた硬化性を得ることができる。
【0036】
10質量%より少ないと十分な硬化速度を得ることができなくなる可能性があり、30質量%を超えると硬化速度が速くなりすぎるために製造性や成形性が著しく低下する場合がある。
【0037】
本発明のフェノール樹脂組成物を構成するフェノール樹脂については、本発明の効果を阻害しない範囲において、これら必須のフェノール樹脂の他、従来より使用されている各種のものを併用することもできる。これらのものとしては、フェノール、アルキルフェノール類等とホルマリン(ホルムアルデヒド)との反応生成物、それらの各種変性樹脂、例えばメラミン変性、桐油変性、エポキシ変性等の各種のものを用いることができ、これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0038】
前記併用するフェノール樹脂の含有量はフェノール樹脂組成物又はフェノール樹脂成形材料全量に対して25〜35質量%含有するのが好ましく、28〜32質量%含有するのがより好ましい。
【0039】
含有量が25質量%より少ないと混練性が著しく悪化し、また成形性が低下する場合がある。含有量が35質量%より多いと成形収縮率や線膨張係数が大きくなるとともに、耐湿処理後の寸法変化が大きくなるため、良好な寸法安定性を得ることができなくなる場合がある。
【0040】
本発明のフェノール樹脂組成物では、硬化性を改良するために硬化剤とともに硬化助剤を用いることができる。これらのものとしては、例えば金属酸化物、金属水酸化物、ホウ酸、アミン化合物が挙げられる。
【0041】
金属酸化物としては、例えば酸化マグネシウムを好適に用いることができる。
【0042】
アミン化合物としては、例えばエチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、4,4−ジアミノジフェニルメタン(DDM)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルフォン(DDS)、ベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン(DBU)、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等を挙げることができ、なかでも、2−メチルイミダゾールを好適に用いることができる。
【0043】
これらの硬化助剤は、フェノール樹脂100質量部に対して0.5〜3.0質量部含有することができる。0.5質量部より少ないと十分な硬化促進効果を得ることができない場合があり、3.0質量部より多いと硬化速度が速くなりすぎるために製造性や成形性が著しく低下する場合がある。
【0044】
また、硬化剤として、ヘキサメチレンテトラミンをノボラック型フェノール樹脂全量(例えば、アルキルベンゼン変性ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂及び、ポリ酢酸ビニル変性ノボラック型フェノール樹脂の合計量)100質量部に対して10〜25質量部、好ましくは16〜22質量部含有することができる。10質量部より少ないと十分な硬化を得ることができない場合があり、25質量部より多いと架橋密度が高くなりすぎる場合がある。
【0045】
本発明のフェノール樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲において、これらの含有成分の他に、離型剤、着色剤、カップリング剤等を適宜含有することができる。
【0046】
本発明では、さらに各種の補強材を含有させて、フェノール樹脂成形材料とすることができる。本発明のフェノール樹脂成形材料に用いられる補強材としては、無機材料として、例えば、ウォラスナイト、炭酸カルシウム、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスビーズ、アルミナ等、無機繊維として、ガラス繊維等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0047】
本発明においては、特にガラス繊維を好適に用いることができる。ガラス繊維はフェノール樹脂成形材料全量に対して、40〜65質量%含有することが好ましい。
【0048】
40質量%より少ないと十分な補強効果を得ることができなくなる場合があり、65質量%より多いと製造性や成形性が著しく低下する場合がある。
【0049】
そして、本発明のフェノール樹脂組成物又はフェノール樹脂成形材料は、以下のようにして製造することができる。
【0050】
まず、各フェノール樹脂成分、硬化剤、硬化助剤、又は補強材を混合するとともに必要に応じて離型剤、着色剤、カップリング剤等を混合し、2軸ロール等の2軸混練機にて、この混合物を100〜110℃の温度で2〜5分間混練する。
【0051】
次に、この混練物を冷却、固化して、さらにこの固化物を粉砕した後、造粒することによってフェノール樹脂組成物又はフェノール樹脂成形材料を得ることができる。
【0052】
このようにして得られたフェノール樹脂組成物又はフェノール樹脂成形材料を用いて、加熱プレス、射出成形、トランスファー成形、圧縮成形等により成形を行うことにより、高温下及び高湿下における寸法安定性に優れ、強度が良好なフェノール樹脂成形品を成形することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
表1に示す各成分を所定量配合し1分間混合した。次にこの混合物を2軸混練機により100〜110℃で3分間混練した。その後、混練物を冷却、固化し、さらにこの固化物を粉砕した後、造粒して実施例1〜6及び比較例1〜7のフェノール樹脂成形材料を得た。
【0055】
配合成分として、以下のものを使用した。
<フェノール樹脂>
アルキルベンゼン変性ノボラック型フェノール樹脂:フドー株式会社製「GP−212」
ノボラック型フェノール樹脂:パナソニック電工株式会社製「PAR」(重量平均分子量3000、O/P比=1.0)
ノボラック型フェノール樹脂:パナソニック電工株式会社製「PXR」(重量平均分子量3000、O/P比=5.0)
レゾール型フェノール樹脂:パナソニック電工株式会社製「AX−10」(重量平均分子量3000、ジメチレンエーテル型)
ポリ酢酸ビニル変性ノボラック型フェノール樹脂:パナソニック電工株式会社製「TNR」(重量平均分子量約3000)
<補強材>
ガラス繊維:日東紡績株式会社製「CS3E−479S」
<硬化助剤>
酸化マグネシウム:協和化学工業株式会社製「キョウワマグ30」
2−メチルイミダゾール:日本合成化学工業株式会社製
<硬化剤>
ヘキサメチレンテトラミン:三菱ガス化学株式会社製
<離型剤>
ステアリン酸亜鉛:境化学工業株式会社製「SZ−P」
<顔料>
カーボンブラック
<カップリング剤>
3−アミノプロピルトリエトキシシラン:信越化学工業株式会社製「KBE903」
【0056】
表1に示す実施例1〜6及び比較例1〜7のフェノール樹脂成形材料を用いて以下の試験を行った。
【0057】
<曲げ強さ>
射出成形(成形温度165℃、硬化時間90秒)により、JIS K6911に準じて曲げ強さ測定用テストピースを作製した。JIS K6911に準拠して曲げ強さの測定を行った。なお、試験片は180℃×8時間のアフターベーキングを行った。
【0058】
<硬化性>
フェノール樹脂成形材料の硬化性を、実施例1〜6及び比較例1〜7の各フェノール樹脂成形材料10gを165℃×30秒で直圧成形した成形品の硬化状態で判定した。
硬化状態の判定は、膨れ及び剛性について以下の基準で行った。
○:膨れ無し/剛性有り
△:膨れ無し/剛性無し
×:膨れ有り/剛性無し
【0059】
<耐湿寸法変化率>
JIS成形収縮率測定用テストピース(90mmφ)を用いて、85℃/85%×250時間後の寸法変化率を測定した。試験片は180℃×8時間のアフターベーキングを行った。
【0060】
<耐熱寸法変化率>
JIS成形収縮率測定用テストピース(90mmφ)を用いて、150℃×250時間後の寸法変化率を測定した。試験片は180℃×8時間のアフターベーキングを行った。
試験結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1より、本発明のフェノール樹脂成形材料の各成分が配合範囲内とした実施例1〜6では、全ての試験結果において良好な結果であることが確認された。
【0063】
これに対して、ノボラック型フェノール樹脂を本発明の配合範囲より少なくした比較例2、5では、曲げ強さの低減が確認された。
【0064】
また、アルキルベンゼン変性ノボラック型フェノール樹脂を本発明の配合範囲より多くした比較例2及び、レゾール型フェノール樹脂を範囲より少なくした比較例5、7では硬化性に問題があることが確認された。
【0065】
さらに、アルキルベンゼン変性ノボラック型フェノール樹脂を本発明の配合範囲より少なくし、ノボラック型フェノール樹脂の配合範囲を多くした比較例1、3では耐湿寸法変化率が大きくなり、ポリ酢酸ビニル変性ノボラック型フェノール樹脂を本発明の配合範囲より少なくした比較例4、6では耐熱寸法変化率が大きくなることが確認された。
【0066】
これらの結果から、本発明フェノール樹脂成形材料の成分を限定し、配合範囲内とすることにより、曲げ強度、硬化性、及び高温下、高湿下における寸法安定性に優れたフェノール樹脂成形品が得られることが確認された。
【0067】
このような、耐熱性、強度、寸法安定性に優れ、特に熱や湿度による寸法変化に優れたフェノール樹脂成形品は、高温下で水、アルコール、グリコール、ガソリン、エンジンオイル等に接する環境下において高い寸法安定性が要求される自動車部品、ポンプ部品等の精密部品に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂とともに硬化剤、又は硬化剤と硬化助剤とを含有するフェノール樹脂組成物であって、フェノール樹脂がその全量100質量%の内訳として、アルキルベンゼン変性ノボラック型フェノール樹脂30〜60質量%、ノボラック型フェノール樹脂10〜30質量%、ポリ酢酸ビニル変性ノボラック型フェノール樹脂10〜50質量%、レゾール型フェノール樹脂10〜30質量%の範囲内で選択されていることを特徴とするフェノール樹脂組成物。
【請求項2】
アルキルベンゼン変性ノボラック型フェノール樹脂のアルキルベンゼン変性比率が30〜60モル%で、重量平均分子量が2000〜5000であることを特徴とする請求項1に記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項3】
ノボラック型フェノール樹脂のオルソ/パラ結合比が1.0〜6.0であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項4】
硬化助剤を、フェノール樹脂100質量部に対して0.5〜3.0質量部含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフェノール樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のフェノール樹脂組成物と、補強材としてガラス繊維を40〜65質量%含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載のフェノール樹脂組成物、又は請求項5に記載のフェノール樹脂成形材料を成形してなることを特徴とする成形品。

【公開番号】特開2012−149128(P2012−149128A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7257(P2011−7257)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】