説明

フェンダープロテクタ構造

【課題】フェンダーパネルのホイールアーチ部の周方向中間部に側外方から作用した外力に対する剛性をより高めることが可能なフェンダープロテクタ構造を得る。
【解決手段】フェンダープロテクタ20に、車幅方向内側の車体側への固定部22,22Aからフェンダーパネル1のホイールアーチ部1Wの周方向中間部1Wmに対向する車幅方向外側の端縁部20Sに至る補強ビーム部24,25を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフェンダープロテクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車で、フェンダーパネルのタイヤハウスに対応する部分にホイールアーチ部が形成されるとともに、当該ホイールアーチ部と車体内板との間で車輪の外側を覆うようにフェンダープロテクタを設けたものが知られている(特許文献1)。
【0003】
かかる構造では、フェンダーパネルに関して、ホイールアーチ部の周方向両端部については車体側への止め点を設定しやすいが、周方向中間部については車体側への止め点を設定し難くなっているため、当該ホイールアーチ部の周方向中間部で側外方からの荷重に対する剛性が不足する場合がある。
【0004】
そこで、特許文献1では、フェンダープロテクタの車幅方向外側の端部にリブを設け、このリブをフェンダーパネルの内面に当接させることで、ホイールアーチ部の周方向中間部で剛性の向上を図っている。
【特許文献1】特開平11−208514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示される構造では、リブがフェンダープロテクタの車幅方向外側の端部に短く設定されているだけであるため、当該フェンダープロテクタのリブを設けていない部分(例えば当該リブより車幅方向内側の部分等)の剛性が不足し、結果的に、ホイールアーチ部の周方向中間部に側外方から作用する外力に対して、剛性が不足する場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、フェンダーパネルのホイールアーチ部の周方向中間部に側外方から作用した外力に対する剛性をより高めることが可能なフェンダープロテクタ構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にあっては、フェンダープロテクタに、車幅方向内側の車体側への固定部からフェンダーパネルのホイールアーチ部の上部に対向する車幅方向外側の端部に至る補強ビーム部を設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フェンダーパネルのホイールアーチ部の周方向中間部に側外方から入力された外力を、上記補強ビーム部を介して車体側に伝達することができるため、当該荷重に対する支持剛性が向上されて、フェンダーパネルの撓みを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1〜図7は、本発明の一実施形態にかかるフェンダープロテクタ構造を示している。図1は、フェンダープロテクタ構造を含む車体前部左舷側の分解斜視図、図2は、フェンダープロテクタ構造の下面図、図3は、フェンダープロテクタの上面図、図4は、フェンダープロテクタを下方から見た斜視図、図5は、フェンダープロテクタを外方前側から見た斜視図、図6は、フェンダープロテクタを外方後側から見た斜視図、図7は、図3中VII−VII断面図である。なお、各図中、FRは車両前方、UPは車両上方、WOは車幅方向外方を示している。
【0010】
図1に示すように、本実施形態では、サイドシル2の前端部からフロントピラー3が上方に向けて立設されている。そして、左右のフロントピラー3間(図1では左側のみ図示)に、フロントコンパートメントFCと車室Rとを隔成するダッシュパネル4を接合してある。また、フロントピラー3の前方にはフードリッジレインフォース5を介してフードリッジメンバ6を突設するとともに、当該フードリッジレインフォース5の上側にダッシュサイドメンバ7を結合してある。
【0011】
また、フロントコンパートメントFCの車幅方向両側の下部には、フロントサイドメンバ8が車両前後方向に沿って延在しており、そのフロントサイドメンバ8の前端に結合したブラケット9に図示省略したサブフレームを取り付け、さらに、そのサブフレームに図示省略したフロントサスペンションのアームを取り付けるようになっている。
【0012】
そして、フロントサイドメンバ8の車幅方向外側にストラットタワー10を立設し、そのストラットタワー10の上端部をフードリッジレインフォース5の内側に結合してある。
【0013】
本実施形態にかかるフェンダープロテクタ構造は、上記車体骨格構造に取り付けられるもので、図1に示すように、車体前部側面に配置されるフロントフェンダーパネル(以下、単にフェンダーパネルと称する)1と、フェンダープロテクタ20とを備えている。
【0014】
車体外板の一部をなすフェンダーパネル1は、フロントタイヤハウスTHの車幅方向外側を覆うように、複数点で上記車体骨格構造に取り付けられている。本実施形態では、上端取付部1aをダッシュサイドメンバ7の上面7aに、前端取付部1bをフードリッジレインフォース5の前端部側面5aに、下端取付部1cをフロントピラー3の下端部側面3aに、下部後端取付部1dをフロントピラー3の下端部後面3bに、上部後端取付部1eをフロントピラー3の中間部後面3cに、また、後部上側取付部1fをフロントピラー3の中間部側面3dに、それぞれ図示しないボルトを用いて締結するようになっている。なお、図1中フェンダーパネル1の周囲に示す矢印はボルトの締め付け方向を示す。
【0015】
このフェンダーパネル1の下端部には円弧状に湾曲したホイールアーチ部1Wを形成してある。図1から、このホイールアーチ部1Wの周方向中間部(請求項1に記載の上部に相当)1Wmには、車体側への取付点が設定されていないことが理解できよう。
【0016】
一方、フェンダープロテクタ20は、合成樹脂等によって略半円弧形状のパネル状に成形されており、フェンダーパネル1の車幅方向内側で、図示省略した車輪の外周を所定の間隔をあけて覆っている。このフェンダープロテクタ20によって、車輪が跳ね上げた泥や雨水などが受け止められる。
【0017】
フェンダープロテクタ20には、これを車体側に固定する固定部22,22A,22B,22C,20f,20rを、車両前後方向に沿って複数設けてある。これら固定部22,22A,22B,22C,20f,20rは、図7に示すように、それぞれ車体側の一部(図7ではフランジ部5F)と上下に重ね合わせ、クリップCによって車体と止着してある。
【0018】
ここで、フェンダープロテクタ20の上側中央部には、ストラットタワー10を嵌合する切欠部21を形成してあり、第1の固定部22は、この切欠部21の車幅方向外側の側縁部21aのほぼ中央位置に隣接して設けてある。そして、第1の固定部22から車両後方に所定間隔Lを隔てて第2の固定部22Aを設けてある。また、固定部20f,20rは、フェンダープロテクタ20の前後端部に設けてある。
【0019】
また、フェンダープロテクタ20の車幅方向外側の端縁部20Sには、これをフェンダーパネル1のホイールアーチ部1Wの周方向中間部1Wmに止着する止着部23,23A,23Bを複数設けてある。本実施形態では、図7に示すように、各止着部23,23A,23Bをフェンダーパネル1の一部(図7ではフランジ部1F)と上下に重ね合わせ、クリップCによってこれら止着部23,23A,23Bとフェンダーパネル1とを止着するようになっている。これら止着部23,23A,23Bは、車両前後方向に沿って複数箇所に所定間隔をあけて設定されている。また、これら止着部23,23A,23Bでは、いずれも端縁部20Sが下方に凹設され、フェンダープロテクタ20の外周壁20aとの間に段差が形成されている。
【0020】
また、本実施形態では、フェンダープロテクタ20に、車幅方向内側の車体側への固定部、すなわち第1および第2の固定部22,22Aからフェンダーパネル1のホイールアーチ部1Wの周方向中間部1Wmに対向する車幅方向外側の端縁部(端部)20Sに至る補強ビーム部24,25を設けてある。
【0021】
第1の固定部22から車幅方向外側に伸びる補強ビーム部24は、当該固定部22から放射状に拡がる複数(本実施形態では5本)の補強ビーム部24A〜24Eを含んでいる。また、第2の固定部22Aから伸びる補強ビーム部25は斜め前方に伸びており、この補強ビーム部25と第1の固定部22から斜め後方に伸びる補強ビーム部24Eとが、止着部23Bに向けて集まる(接近する)形状となっている。
【0022】
また、フェンダープロテクタ20の車幅方向外側の端縁部20Sに設けられる止着部23,23A,23Bが、相互に隣接する二つの補強ビーム部(24A〜24E,25のうちいずれか二つ)によって車両前後方向に挟まれるように配置されている。すなわち、止着部23は補強ビーム部24A,24Bの車幅方向端部間に配置され、止着部23Aは補強ビーム部24C,24Dの車幅方向端部間に配置され、止着部23Bは補強ビーム部24E,25の車幅方向端部間に配置されている。
【0023】
そして、図5および図6に示すように、相互に隣接する二つの補強ビーム部(24A〜24E,25のうちいずれか二つ)によって車両前後方向に挟まれる端縁部20Sのうち、止着部23,23A,23Bが配置されない部分には、外周壁20aの一般面と止着部23,23A,23Bの表面形成位置との段差の分だけ車幅方向外側端縁に向けて下方に傾斜する傾斜面26,26Aが形成されている。
【0024】
そして、これら補強ビーム部24,25は、いずれも上に凸のビードとして設けられている。すなわち、図4に示すように、フェンダープロテクタ20の裏面(下面)を溝状に凹設させ、その凹設した部分を、図5,図6に示すように、表面(上面)に突出させて形成してある。
【0025】
ここで、フェンダープロテクタ20の断面構造について、図7を参照しながら説明する。本実施形態では、閉断面構造となるフードリッジレインフォース5のインナー側を形成するフードリッジアッパパネル5bを下方に延設し、その延設部5cの下端部を車幅方向外側に断面L字状に折曲してフランジ部5Fを形成してある。そして、このフランジ部5Fと固定部22とを重ね合わせてクリップCによってこれらを止着するようになっている。なお、フードリッジアッパパネル5bの下部をストラットタワー10の上端面を形成するサスペンションスプリングサポート10aに接合してある。
【0026】
一方、フェンダーパネル1のホイールアーチ部1Wの周縁部を車内側に折曲して、フランジ部1Fを形成し、このフランジ部1Fとフェンダープロテクタ20に形成した止着部23,23A,23Bとを重ね合わせてクリップCによってこれらを止着するようになっている。なお、図7では、固定部22、補強ビーム部24C、および止着部23Aを示しているが、他の固定部22A、補強ビーム部24A,24B,24D,24E,25、および止着部23,23Bについてもほぼ同様の断面形状となっている。
【0027】
そして、図7に示すように、本実施形態では、補強ビーム部24,25の車幅方向外側の端部に縦壁部27を設け、この縦壁部27とフェンダーパネル1との間の所定幅Sの間隙に、緩衝体としての発泡樹脂28を介在させている。
【0028】
上記構成のフェンダープロテクタ構造によれば、図7に示すように、フェンダーパネル1に側外方から車幅方向内側への外力Fが入力されると、その外力Fによって当該フェンダーパネル1は車幅方向内側に撓もうとする。
【0029】
このとき、本実施形態では、フェンダープロテクタ20に、車幅方向内側の車体側への固定部22,22Aからフェンダーパネル1のホイールアーチ部1Wの周方向中間部1Wmに対向する車幅方向外側の端部に至る補強ビーム部24,25を設けた。このため、当該外力F(荷重)をこれら補強ビーム部24,25を介して車体側に伝達することができるため、当該外力Fに対する剛性を高めて、フェンダーパネル1のホイールアーチ部1Wの周方向中間部1Wmの撓みを低減することができる。
【0030】
また、本実施形態では、固定部22から車幅方向外側に向けて放射状に拡がる複数の補強ビーム部24A〜24Eを設けた。このため、補強ビーム部24A〜24Eの車幅方向外側の端部が周方向中間部1Wmの比較的広い範囲にわたって配置されることになり、補強ビーム部24によってフェンダープロテクタ20の剛性が高まってホイールアーチ部1Wの撓み変形が抑制される領域を、拡大することができる。
【0031】
また、本実施形態では、各止着部23,23A,23Bを挟むように複数の補強ビーム部(24A〜24E,25のうちいずれか二つ)を配置した。このため、止着部23,23A,23Bが剛性の高い補強ビーム部(24A〜24E,25のうちいずれか二つ)によって挟まれる分、当該止着部23,23A,23Bの剛性を高めて、フェンダープロテクタ20とフェンダーパネル1との取付剛性を高めることができる。
【0032】
また、本実施形態では、車幅方向内側で車両前後方向に離間した複数の固定部22,22Aからホイールアーチ部1Wの周方向中間部1Wmに対向する位置としての止着部23Bに向けて集まる(接近する)ように伸びる複数の補強ビーム部24E,25を設けた。このため、外力Fをこれら二つの補強ビーム部24E,25を介して複数の固定部22,22Aに分散することができ、フェンダープロテクタ20の剛性をより一層高めることができる。
【0033】
また、本実施形態では、複数の補強ビーム部(24A〜24E,25のうちいずれか二つ)の車幅方向外側の端部間に、フェンダープロテクタ20の車幅方向外側の端縁部20Sの傾斜面26,26Aを形成した。すなわち、屈曲形状となる分、当該端縁部20Sの剛性を高めることができる。
【0034】
また、本実施形態では、補強ビーム部24,25の車幅方向外側の端部としての縦壁部27とフェンダーパネル1との間に緩衝体としての発泡樹脂28を介在させた。このため、この発泡樹脂28によって外力Fを吸収することができる。また、フェンダープロテクタ20とフェンダーパネル1とを直接当接させただけの構成では、振動入力等に伴って摩擦音等が生じる場合があるが、本実施形態によれば発泡樹脂28を挟持することで、こうした不具合を抑制することができる。なお、緩衝体としては、発泡樹脂28以外にも、例えば、発泡ウレタンや不織布等、緩衝機能を有する他の材料を用いることができる。
【0035】
また、本実施形態では、補強ビーム部24,25を、上に凸のビード形状とした。このため、補強ビーム部24,25を比較的容易に形成することができる。また、補強ビーム部24,25内の溝状空間部に下方から手指を差し込んで、フェンダーパネル1とフェンダープロテクタ20とを結合する作業をより容易に行うことができるようになる。特に、本実施形態では、下方から見ると、止着部23,23A,23Bを挟んで二つの補強ビーム部(24A〜24E,25のうちいずれか二つ)の凹溝が形成されている状態となるため、これら補強ビーム部(24A〜24E,25のうちいずれか二つ)に例えば親指と人差し指を差し込んでフェンダープロテクタ20を掴持することができ、止着部23,23A,23Bとフェンダーパネル1とをクリップCで止着する作業を、より円滑にかつより確実に行えるという利点がある。
【0036】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、リヤフェンダーパネルに配置するフェンダープロテクタに対しても、本発明を同様に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態にかかるフェンダープロテクタ構造を含む車体前部左舷側の分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるフェンダープロテクタ構造の下面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるフェンダープロテクタの上面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるフェンダープロテクタを下方から見た斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるフェンダープロテクタを外方前側から見た斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかるフェンダープロテクタを外方後側から見た斜視図である。
【図7】図3のVII−VII断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 フェンダーパネル
1W ホイールアーチ部
1Wm 周方向中間部
20 フェンダープロテクタ
20S 端縁部(端部)
22,22A 固定部
23,23A,23B 止着部
24,24A〜24E,25 補強ビーム部
26,26A 傾斜面
27 縦壁部(補強ビーム部の車幅方向外側の端部)
28 発泡樹脂(緩衝体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェンダーパネルの車幅方向内側に、車輪の外周を間隔をあけて覆うパネル状のフェンダープロテクタを備え、
前記フェンダープロテクタに、車幅方向内側の車体側への固定部からフェンダーパネルのホイールアーチ部の上部に対向する車幅方向外側の端部に至る補強ビーム部を設けたことを特徴とするフェンダープロテクタ構造。
【請求項2】
前記固定部から車幅方向外側に向けて放射状に拡がる複数の前記補強ビーム部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のフェンダープロテクタ構造。
【請求項3】
前記フェンダープロテクタの車幅方向外側にフェンダーパネルとの止着部を設け、
前記止着部を挟むように複数の前記補強ビーム部を配置したことを特徴とする請求項1または2に記載のフェンダープロテクタ構造。
【請求項4】
車幅方向内側で車両前後方向に離間した複数の固定部から前記ホイールアーチ部の周方向中間部に対向する位置に向けて集まるように複数の前記補強ビーム部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一つに記載のフェンダープロテクタ構造。
【請求項5】
前記フェンダープロテクタの車幅方向外側の端縁部の、相互に隣接する二つの前記補強ビーム部間に、傾斜面を形成したことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一つに記載のフェンダープロテクタ構造。
【請求項6】
前記補強ビーム部の車幅方向外側の端部とフェンダーパネルとの間に緩衝体を介在させたことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一つに記載のフェンダープロテクタ構造。
【請求項7】
前記補強ビーム部として上に凸のビードを設けたことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一つに記載のフェンダープロテクタ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−143469(P2009−143469A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324479(P2007−324479)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】