説明

フォトクロミック成形用樹脂組成物及びそれを用いた成形体

【課題】 従来のフォトクロミック成形用樹脂組成物では成し得なかった耐光性の向上と共に、発色濃度の向上、更には耐水性も付与できるため、製造時の制約が少なく、あらゆる分野に使用できる応用性に優れたフォトクロミック成形用樹脂組成物と、それを用いた成形体を提供する。
【解決手段】 スピロオキサジン誘導体又はスピロピラン誘導体から選ばれるフォトクロミック化合物を、重量平均分子量が200乃至6000のスチレン系オリゴマーに溶解してなるフォトクロミック材料と、成形用樹脂を含むフォトクロミック成形用樹脂組成物、及びそれを用いた成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトクロミック成形用樹脂組成物及びそれを用いた成形体に関する。更に詳細には、含有されるフォトクロミック化合物の耐光堅牢性及び発色濃度を向上させたフォトクロミック成形用樹脂組成物及びそれを用いた成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、耐光堅牢性を向上させたフォトクロミック材料としては、フォトクロミック化合物にN−ニトロソフェニル系化合物を添加したもの(例えば、特許文献1参照)、有機亜リン酸エステル化合物及びヒンダードフェノールを添加したもの(例えば、特許文献2参照)、特定3級アミン化合物を添加したもの(例えば、特許文献3参照)が開示されている。
【特許文献1】特開平5−25472号公報
【特許文献2】特開平7−216350号公報
【特許文献3】特許第2724031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した従来のフォトクロミック化合物について実用性を確認したところ、耐光堅牢性を向上させる効果を有する反面、色濃度が低下するといった不具合を生じ易く、実用性を損なうものであり、成形用樹脂と共に成形して得られる成形体も同様の不具合を有するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は耐光性改良検討を行った結果、特定のスチレン系オリゴマーにフォトクロミック化合物を溶解させたフォトクロミック材料と、成形用樹脂からなるフォトクロミック成形用樹脂組成物は耐光性が向上し、且つ、発色濃度を向上させることを見出し、前記フォトクロミック成形用樹脂組成物により成形された成形体も同様の効果を有することを見出した。
即ち、本発明は、スピロオキサジン誘導体又はスピロピラン誘導体から選ばれるフォトクロミック化合物を、重量平均分子量が200乃至6000のスチレン系オリゴマーに溶解してなるフォトクロミック材料と、成形用樹脂を含むフォトクロミック成形用樹脂組成物を要件とする。
更には、前記フォトクロミック化合物と、スチレン系オリゴマーの重量比が1:1〜1:10000であること、前記スチレン系オリゴマーの重量平均分子量が200乃至4000であること、前記フォトクロミック材料中に、水酸基、エステル基、カルボキシル基から選ばれる少なくとも一以上の官能基を有し、沸点が150℃以上であり、且つ、融点又は軟化点が150℃以下の有機化合物をスチレン系オリゴマー100重量部に対し、50重量部以下の割合で添加してなること、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでなること、前記ヒンダードアミン系光安定剤が下記一般式(1)で示される化合物であること、
【化1】

(式中、R1 は炭素数1乃至30のアルキル基を示し、R2 、R3 、R4 、R5 はそれぞれ炭素数1乃至5のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示し、R6 はn価の有機残基を示す。)
前記フォトクロミック化合物とスチレン系オリゴマーを微小カプセルに内包してなる、或いは、樹脂粒子中に分散してなること、前記成形用樹脂が熱可塑性樹脂であること等を要件とする。
更には、前記フォトクロミック成形用樹脂組成物により成形されてなる成形体を要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、従来のフォトクロミック材料では成し得なかった耐光性の向上と共に、発色濃度の向上、更には耐水性も付与できるため、製造時の制約が少なく、あらゆる分野に使用できる応用性に優れたフォトクロミック成形用樹脂組成物及びそれを用いた成形体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記スピロオキサジン誘導体又はスピロピラン誘導体から選ばれるフォトクロミック化合物は、スチレン系オリゴマーに溶解して用いられる。
前記スチレン系オリゴマーは重量平均分子量が200乃至6000、好ましくは200乃至4000のものが用いられる。
スチレン系オリゴマーの重量平均分子量が200未満の場合、含有モノマーが多くなり、安定性に欠けるため耐光性向上効果を発現し難くなる。
また、重量平均分子量が6000を越えると、光照射により色残りが発生し、且つ、発色濃度が低くなり、変色感度は鈍くなる。
なお、重量平均分子量は、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフ法)により測定する。
【0007】
前記スチレン系オリゴマーとしては、低分子量ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体、α−メチルスチレン重合体、α−メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、d−リモネン重合体等が挙げられる。
低分子量ポリスチレンとしては、三洋化成工業(株)製、商品名:ハイマーSB−75(重量平均分子量2000)、ハイマーST−95(重量平均分子量4000)等が用いられる。
スチレン−α−メチルスチレン系共重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスチックA5(重量平均分子量317)、ピコラスチックA75(重量平均分子量917)等が用いられる。
α−メチルスチレン重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:クリスタレックス3085(重量平均分子量664)、クリスタレックス3100(重量平均分子量1020)、クリスタレックス1120(重量平均分子量2420)等が用いられる。
α−メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコテックスLC(重量平均分子量950)、ピコテックス100(重量平均分子量1740)等が用いられる。
α−ピネン重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコライトA115(重量平均分子量833)が用いられる。
β−ピネン重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコライトS115(重量平均分子量1710)が用いられる。
d−リモネン重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコライトC115(重量平均分子量902)が用いられる。
前記ポリスチレン系オリゴマーは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いることもできる。
【0008】
前記フォトクロミック化合物のうち、スピロオキサジン誘導体を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
インドリノスピロベンゾオキサジン系化合物としては、
1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6′−クロロ−5−フルオロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジメチル−1−エチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5,7−ジフルオロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−シアノ−3,3−ジメチル−1−(メトキシカルボニル)メチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−メチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−メチル−5′−ニトロジスピロ〔シクロペンタン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3,3,5′−テトラメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6′−フルオロ−1′−メチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1−ベンジル−6′−クロロ−3,3−ジメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6′−メトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−クロロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−ブロモ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−ヨード−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−トリフルオロメチル−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジエチル−1−メチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3,3,6′−テトラメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6−クロロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5′−フルオロ−1′−メチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−シアノ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−エトキシカルボニル−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
4′,6′−ジフルオロ−1′−メチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジメチル−1−(メトキシカルボニル)メチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジメチル−1−フェニルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−メトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3,3,5−テトラメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
7′−クロロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3,3,7′−テトラメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
7′−メトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔4,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6′−クロロ−5−フルオロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−クロロ−1,3−ジメチル−3−エチル−5′−メトキシスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジエチル−1−メチル−5−ニトロスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′,6′−ジメチルスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
9″−ブロモ−1′−メトキシカルボニルメチル−5′−トリフルオロメチルジスピロ〔シクロペンタン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′〔1′H〕,3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1−ベンジル−3,3−ジ−nブチル−7′−エチル−5−メトキシスピロ〔2H−インドール−1,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−n−ブチル−6′−ヨードジスピロ〔シクロヘプタン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
3,3−ジメチル−9′−ヨード−1−ナフチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
4′−シアノ−1′−(2−(メトキシカルボニル)エチル)ジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
7−メトキシカルボニル−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
4−ブロモ−3,3−ジエチル−9′−エトキシ−1−(2−フェニル)エチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−メチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
6−フルオロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−エチル−9−フルオロ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−ベンジル−6″−ヨードジスピロ〔シクロペンタン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
5−エトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−メチル−5′−トリクロロメチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H),3″−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1,3−ジエチル−3−メチルスピロ〔2H−インドール−2,3′−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕、
1′−メトキシカルボニルメチルジスピロ〔シクロヘキサン−1,3′−〔3H〕−インドール−2′(1′H)−〔3H〕ピリド〔2,3−f〕〔1,4〕ベンゾオキサジン〕等、インドリノスピロベンゾオキサジンのインドール環及びベンゼン環のハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等の各置換体を例示することができる。
【0009】
インドリノスピロナフトオキサジン系化合物としては、
1,3,3−トリメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−クロロ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−ブロモ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3,5−テトラメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−n−プロピル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−iso−ブチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−メトキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−n−プロポキシ−スピロナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−シアノ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−n−エチル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−n−プロピル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−iso−ブチル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−n−オクチル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−n−オクタデシル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−8′−スルホン酸ナトリウム−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−9′−メトキシスピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5−トリフルオロ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−ベンジル−3,3−ジメチル−スピロナフトオキサジン、
1−(4′−メチルフェニル)−3,3−ジメチル−スピロナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−6′−(2,3−ジヒドロ−1−インドリノ)−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−6′−(1−ピペリジニル)−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−6−トリフルオロメチル−6′−(1−ピペリジニル)−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−ベンジル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(4−メトキシベンジル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(4−クロロベンジル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−エチル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、1−イソプロピル−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(2−フェノキシエチル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3−ジメチル−3−エチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−9′−ヒドロキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3−ジメチル−3−エチル−8′−ヒドロキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、1,3,3,5−テトラメチル−9′−メトキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3,5,6−ペンタメチル−9′−メトキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−4−トリフルオロメチル−5′−メトキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−5′−メトキシ−6′−トリフルオロメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3−トリメチル−4−トリフルオロメチル−9′−メトキシ−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,5,6−テトラメチル−3−エチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1,3,3,5,6−ペンタメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−メチル−3,3−ジフェニル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(4−メトキシベンジル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(3,5−ジメチルベンジル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン、
1−(2−フルオロベンジル)−3,3−ジメチル−スピロインドリンナフトオキサジン等、インドリノスピロナフトオキサジンのインドール環及びベンゼン環のハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等の各置換体を例示することができる。
【0010】
インドリノスピロフェナントロオキサジン系化合物の例としては、1,3,3−トリメチル−スピロインドリンフェナントロオキサジン、1,3,3−トリメチル−5−クロロ−スピロインドリンフェナントロオキサジン等、インドリノスピロフェナントロオキサジンのインドール環及びベンゼン環のハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等の各置換体を例示することができる。
【0011】
インドリノスピロキノリノオキサジン系化合物としては、1,3,3−トリメチル−スピロインドリンキノリノオキサジン等、インドリノスピロキノリノオキサジンのインドール環及びベンゼン環のハロゲン、メチル、エチル、メチレン、エチレン、水酸基等の各置換体を例示することができる。
【0012】
前記フォトクロミック化合物のうち、スピロピラン誘導体を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1,3,3−トリメチルインドリノベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−ブロモベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−8′−メトキシベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−β−ナフトピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−ニトロベンゾピリロスピラン等を例示することができる。
【0013】
前記フォトクロミック化合物とスチレン系オリゴマーの重量比は、1:1〜1:10000であることが好ましく、より好ましくは1:5〜1:500である。
前記重量比を満たすことによって、耐光性向上効果に優れ、且つ、フォトクロミック化合物は十分な発色濃度を示すことができる。
【0014】
前記フォトクロミック化合物とスチレン系オリゴマーからなるフォトクロミック材料中には、水酸基、エステル基、カルボキシル基から選ばれる少なくとも一以上の官能基を有し、沸点が150℃以上であり、且つ、融点又は軟化点が150℃以下の有機化合物をスチレン系オリゴマー100重量部に対し、50重量部以下の割合で添加することにより、耐光堅牢性及び発色濃度を阻害するとなく発消色時の変色時間を調節することができる。
前記有機化合物としては、炭素数8以上の脂肪族一価アルコール、炭素数8以上の脂肪族二価アルコール、炭素数7以上の芳香族アルコール、炭素数7以上の脂肪族エステル、炭素数7以上の芳香族エステル、炭素数6以上の脂肪族カルボン酸、炭素数6以上の芳香族カルボン酸が挙げれる。
前記化合物として具体的には、n−オクチルアルコール、n−デシルアルコール、n−ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、n−ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクタデカン−2−オール、シクロドデカノール、ヘキサン1,6−ジオール、コレステロール、p−クロロベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、エチレングリコール#4000、ポリエチレングリコール#6000、オレイルアルコール、ポリオール(水酸基を有するオリゴマー)、水酸基を有するロジン系樹脂オリゴマー〔荒川化学工業(株)、商品名:パインクリスタルD−6011、同KR−1840〕等のアルコール類。
カプロン酸n−オクチル、カプロン酸ミリスチル、カプリル酸n−ヘプチル、カプリル酸n−ブチル、ラウリン酸n−ブチル、ラウリン酸ラウリル、ミリスチン酸n−ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸n−アミル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸ステアリル、ステアリン酸n−ヘキシル、ステアリン酸n−オクチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸セチル、ベヘン酸n−ブチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸3−メチルブチル、ベヘン酸2−メチルペンチル、ステアリン酸ネオペンチル、ステアリン酸イソブチル、ピバリン酸ステアリル、ベヘン酸ベンジル、パルミチン酸4−メチルベンジル、安息香酸セチル、安息香酸ステアリル、フェノキシ酢酸ステアリル、サリチル酸ミリスチル、2−ナフトエ酸ステアリル、p−メトキシ安息香酸ステアリル、ステアリン酸シクロヘキシル、プロピオン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、オクタメチレンジカルボン酸ジミリスチル、オクタメチレンジカルボン酸ジブチル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジステアリル、セバシン酸ジミリスチル、テレフタル酸ジエチル、レブリン酸ステアリル、ステアリン酸テトラヒドロフルフリル、12−ヒドロキシステアリン酸n−ブチル、ブタン−1,2,3,4−テトラドデシルエステル、リンゴ酸ジラウリル、酒石酸ジ−n−オクチル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、エステル基を有するアクリル樹脂オリゴマー〔荒川化学工業(株)、商品名:パインクリスタルKE−100〕等のエステル類。
カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、2−エチル−ヘキサデカン酸、p−tert−ブチル安息香酸、ベンジル酸、p−アミノ安息香酸、1,16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸、セバシン酸、カルボキシル基を有するロジン系樹脂オリゴマー〔荒川化学工業(株)、商品名:パインクリスタルKE−604、同KR−85〕等のカルボン酸類を例示できる。
【0015】
本発明のフォトクロミック材料には、ヒンダードアミン系光安定剤を添加して耐光性を更に向上させることもできる。
ヒンダードアミン系化合物としては下記一般式(1)で示される化合物が好適であるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【化2】

(式中、R1 は炭素数1乃至30のアルキル基を示し、R2 、R3 、R4 、R5 はそれぞれ炭素数1乃至5のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示し、R6 はn価の有機残基を示す。)
一般式(1)で示される化合物としては、
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、
2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、
テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンとの混合エステル化物、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び1−トリデカノールとの混合エステル化物、
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−メタクリレート、
N,N′,N′′,N′′′−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、
N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペレジニル)ピロリジン−2,5−ジオン等を例示することができる。
【0016】
前記フォトクロミック材料は、微小カプセルに内包させて可逆光変色性微小カプセル顔料を形成したり、熱可塑性又は熱硬化性樹脂中に分散して可逆光変色性樹脂粒子を形成することもできる。
なお、前記微小カプセルは、平均粒子径0.5〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは、1〜30μmの範囲が実用性を満たす。
前記微小カプセルの平均粒子径が100μmを越えると、インキ、塗料、或いは熱可塑性樹脂中へのブレンドに際して、分散安定性や加工適性に欠ける。
一方、平均粒子径が0.5μm未満では、高濃度の発色性を示し難くなる。
前記マイクロカプセル化は、従来より公知のイソシアネート系の界面重合法、メラミン−ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更に微小カプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0017】
本発明においては、前記フォトクロミック材料を成形用樹脂中に分散して用いられる。
前記成形用樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中高密度ポリエチレン、超高密度ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン、ポロイソブチレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、フッ素樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−プロピレン共重合樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−塩化ビニリデン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂−塩化ビニルグラフト共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系可塑性エラストマー、ウレタン系可塑性エラストマー、ポリステル系可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系可塑性エラストマー、塩化ビニル系可塑性エラストマー、石油系炭化水素樹脂、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロース、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリブテン、クマロン−インデン共重合物、フェノキシプラスチック等の熱可塑性樹脂。
エポキシ樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グアナミン樹脂、エポキシアクリレート、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド、ポリ(p−ヒドロキシ安息香酸)、ポリウレタン、尿素樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0018】
前記成形体が適用される分野としては、被服、玩具、造花、文房具、日用品、台所用品、化粧用具、運動用具、屋内装飾品等が挙げられる。
【0019】
本発明のフォトクロミック成形用樹脂組成物は通常ペレットの形態に加工されており、各種成形機によりフイルム、シート、板、棒、パイプ、フィラメント、その他各種形状の造形物の成形に用いられる。成形用樹脂として熱可塑性樹脂を用いた場合は、カレンダロール加工又はインフレーション加工によってフイルムを成形することができる。又、押出成形機により板状体、棒状体、パイプ、フィラメント等を成形することができる。
又、射出成形により種々の形態の造形物を成形することができ、例えば、乗物玩具、人形等の玩具形象の造形物、生活関連用品、運動具、各種屋内装置品等が挙げられ、更に、前記造形物の部品を成形することもできる。
メルトスピニング等により得たフィラメントは、織物や編物に用いられるだけでなく、植毛に用いることもできる。
熱硬化性樹脂を適用する系では、所定形状寸法の金型に充填することにより、種々の成形体を成形することができる。
前記成形体は本発明成形用樹脂組成物と同様のフォトクロミック性を示す。
【実施例】
【0020】
実施例1
フォトクロミック材料の調製
1,3,3−トリメチル−6−トリフルオロメチル−インドリノ−6′−(1−ピペリジニル)−スピロナフトオキサジン1重量部を、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体〔理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスティックA−5、重量平均分子量317〕10重量部中に均一に加温溶解させてフォトクロミック材料を得た。
【0021】
以下の表に実施例1乃至13のフォトクロミック材料の組成を示す。
なお、表中の括弧内の数字は重量部を示す。
【0022】
【表1】

【0023】
以下の表に比較例1乃至12のフォトクロミック材料の組成を示す。
なお、表中の括弧内の数字は重量部を示す。
【0024】
【表2】

【0025】
試験試料の作製
前記のようにして得られた実施例1乃至実施例13、比較例1乃至比較例12のフォトクロミック材料40.0重量部、低密度ポリエチレン樹脂(メルトフローレート1.3)1000.0重量部を混合しタンブラーミキサーで均一に分散した後、押出成形機を用いて成型し、フォトクロミックポリエチレン樹脂ペレットを得た。
前記ペレットを用いて射出成形により板状の成形体を作製し、試験試料とした。
【0026】
初期発色濃度試験
前記各試験試料を光源〔東芝ライテック(株)製、電球形蛍光ランプ、商品名:ネオボール5ブラックライトEFD15BLB〕から10cm離して1分間光照射した後、色差計〔東京電色(株)製、TC−3600)にて、明度値(Y値から換算)を測定した。
なお、明度値は数字が大きい程、色濃度が低く、小さい程、色濃度が高い。
初期消色速度試験
前記初期発色濃度試験と同様に光照射した各試験試料を、直ちに暗所(25℃)で放置し、光照射前の色濃度になる迄の時間を測定した。
なお、測定は1分毎に室内(25℃、照度300lux)で確認した。
耐光性試験
各試験試料を卓上型耐光性試験機(ヘレウス社製、SUNTEST CPS)を用いて照度140000luxにて1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、光照射した後、前記色差計にて、明度値を測定した。
【0027】
以下の表に各試験試料の初期発色濃度試験、初期消色速度試験、及び、耐光性試験結果を示す。
【0028】
【表3】

【0029】
なお、表中の耐光性試験の評価に関する記号は以下のとおりである。
◎:初期と比較して100〜80%の色濃度を保持している。
○:初期と比較して80〜60%の色濃度を保持している。
△:初期と比較して60〜40%の色濃度を保持している。
▲:初期と比較して40〜20%の色濃度を保持している。
×:初期と比較して20〜0%の色濃度を保持している。
【0030】
応用例1
実施例6で得られたフォトクロミック材料12重量部を、SBS系熱可塑性エラストマーコンパウンド〔アロン化成(株)製、商品名:AR130〕100重量部に混合してフォトクロミック成形用樹脂組成物を得た。
前記成形用樹脂組成物を用いて、押出成形にて棒状のフォトクロミック成形体を得た。
前記成形体は太陽光に晒す前は乳白色であったが、太陽光に晒したところ、ピンク色に発色した。その後、室内で暫く放置したところ、ピンク色は消えて元の乳白色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
【0031】
応用例2
実施例4で得られたフォトクロミック材料11重量部、及び、銅フタロシアニン系青色顔料0.01重量部を、高密度ポリエチレン〔日本ポリオレフィン(株)製、商品名:KB145N〕100重量部に混合してフォトクロミック成形用樹脂組成物(ペレット)を得た。
前記成形用樹脂組成物を用いて中空成形にて容器形状のフォトクロミック成形体を得た。
前記成形体は、太陽光に晒す前は青色であったが、太陽光に晒したところ、紫色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、紫色は消えて元の青色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
【0032】
応用例3
実施例2で得られたフォトクロミック材料を均一に溶融し内包液とする。
これとは別に、エチレン−無水マレイン酸共重合体(米国モンサント化学社製、商品名:EMA−31、分子量75000〜90000)の10%水溶液100重量部に、尿素10重量部、レゾルシン1重量部、水55重量部を添加し、水酸化ナトリウムの20%水溶液を添加してpHを3.5に調整した後、前記内包液50重量部を攪拌しながら投入し、油滴の平均粒子径が約3μmになるまで乳化した。
前記溶液に37%ホルムアルデヒド水溶液25重量部を加え、温度を65℃にして2時間放置してカプセル化反応を行なった。
前記溶液を遠心分離して約150重量部の含水マイクロカプセルスラリーを分取した。
前記マイクロカプセルを脱水し、乾燥させ、フォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0033】
前記マイクロカプセル顔料75重量部、中低圧ポリエチレン〔昭和電工(株)製、商品名:ショウレックス6050〕750重量部を混合し、押出成形機を使用して160〜170℃の成形温度で押し出し、ペレタイザーにてペレット化してフォトクロミック成形用樹脂組成物を得た。
前記ペレットを用いて、160〜170℃の温度設定で射出成形機を用いて板状(1mm厚)のフォトクロミック成形体を得た。
前記成形体は、太陽光に晒す前は白色であったが、太陽光に曝露したところ、青色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、青色は消えて元の白色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
【0034】
応用例4
フォトクロミックマイクロカプセル顔料の調製
実施例6で得たフォトクロミック材料60重量部を、膜材として芳香族イソシアネートプレポリマー20重量部、酢酸エチル50重量部からなる混合溶液に混入した後、これを15%ゼラチン水溶液100重量部中に滴下して微小滴になるよう攪拌し、70℃で1時間反応を行なった。
次いで、液温を90℃に保って3時間攪拌を続け、マイクロカプセル分散液を調製した後、遠心分離法によりフォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0035】
前記マイクロカプセル顔料40.0重量部、低密度ポリエチレン樹脂(メルトフローレート1.3)1000.0重量部、ヒンダードアミン系光安定剤10.0重量部、金属石鹸系滑剤0.5重量部を混合しタンブラーミキサーで均一に分散した後、押出成形機を用いて成型し、フォトクロミック成形用樹脂組成物を得た。
前記成形用樹脂組成物を用いて、自動車型の金型を使用しブロー成形により自動車形態のフォトクロミック成形体を得た。
前記成形体は、太陽光に晒す前は白色であったが、太陽光に曝露したところ、ピンク色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、ピンク色は消えて元の白色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
【0036】
応用例5
フォトクロミックマイクロカプセル顔料の調製
実施例3で得たフォトクロミック材料60重量部を、膜材として芳香族イソシアネートプレポリマー30重量部、酢酸エチル70重量部からなる混合溶液に混入した後、これを15%ゼラチン水溶液100重量部中に滴下して微小滴になるよう攪拌し、70℃で1時間反応を行なった。
次いで、液温を90℃に保って3時間攪拌を続け、マイクロカプセル分散液を調製した後、遠心分離法によりフォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0037】
前記マイクロカプセル顔料30.0重量部、ポリエステルエラストマー樹脂(メルトフローレート20.0)1000.0重量部、ヒンダードアミン系光安定剤10.0重量部、金属石鹸系滑剤0.5重量部を混合し、タンブラーミキサーで均一に分散した後、押出成形機を用いてフォトクロミック成形用樹脂組成物(ペレット)を得た。
前記成形用樹脂組成物を用いてサンバイザー型の金型を使用し、射出成形によりサンバイザー型のフォトクロミック成形体を得た。
前記成形体は、太陽光に晒す前は白色であったが、太陽光に曝露したところ、紫色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、紫色は消えて元の白色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
【0038】
応用例6
フォトクロミックマイクロカプセル顔料の調製
実施例2で得たフォトクロミック材料60重量部を、膜材として芳香族イソシアネートプレポリマー30重量部、酢酸エチル70重量部からなる混合溶液に混入した後、これを15%ゼラチン水溶液100重量部中に滴下して微小滴になるよう攪拌し、70℃で1時間反応を行なった。
次いで、液温を90℃に保って3時間攪拌を続け、マイクロカプセル分散液を調製した後、遠心分離法によりフォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0039】
前記マイクロカプセル顔料40.0重量部、蛍光ピンク顔料3.0重量部、ポリプロピレン樹脂1000.0重量部、ヒンダードアミン系光安定剤10.0重量部、金属石鹸系滑剤0.5重量部を混合しヘンシルミキサーで均一に分散した後、押出成形機を用いて、フォトクロミック成形用樹脂組成物(ペレット)を得た。
【0040】
前記成形用樹脂組成物を用いて溶融紡糸を行ない、フィラメント形態のフォトクロミック成形体を得た。
前記成形体を用いて馬形態の玩具の頭と尻尾に植毛を施した。
前記成形体は、太陽光に晒す前はピンク色であったが、太陽光に曝露したところ、紫色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、紫色は消えて元のピンク色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
【0041】
応用例7
フォトクロミックマイクロカプセル顔料の調製
実施例9で得たフォトクロミック材料60重量部を、膜材として芳香族イソシアネートプレポリマー30重量部、酢酸エチル70重量部からなる混合溶液に混入した後、これを15%ゼラチン水溶液100重量部中に滴下して微小滴になるよう攪拌し、70℃で1時間反応を行なった。
次いで、液温を90℃に保って3時間攪拌を続け、マイクロカプセル分散液を調製した後、遠心分離法によりフォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0042】
前記マイクロカプセル顔料50.0重量部、青色顔料0.04重量部、12ナイロン樹脂(融点178℃)1000.0重量部、ヒンダードアミン系光安定剤10.0重量部を混合し、ヘンシルミキサーで均一に分散した後、押出成形機を用いてフォトクロミック成形用樹脂組成物(ペレット)を得た。
【0043】
前記成形用樹脂組成物を用いて溶融紡糸を行ない、フィラメント形態のフォトクロミック成形体を得た。
前記成形体は、太陽光に晒す前は青色であったが、太陽光に曝露したところ、紫色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、紫色は消えて元の青色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
【0044】
応用例8
フォトクロミックマイクロカプセル顔料の調製
実施例12で得たフォトクロミック材料60重量部を、膜材として芳香族イソシアネートプレポリマー30重量部、酢酸エチル70重量部からなる混合溶液に混入した後、これを15%ゼラチン水溶液100重量部中に滴下して微小滴になるよう攪拌し、70℃で1時間反応を行なった。
次いで、液温を90℃に保って3時間攪拌を続け、マイクロカプセル分散液を調製した後、遠心分離法によりフォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0045】
前記マイクロカプセル顔料30.0重量部、スチレン−ブタジエン共重合樹脂(メルトフローレート7.3)1000.0重量部、ヒンダードアミン系光安定剤10.0重量部、金属石鹸系滑剤0.5重量部を混合し、タンブラーミキサーで均一に分散した後、押出成形機を用いてフォトクロミック成形用樹脂組成物(ペレット)を得た。
前記成形用樹脂組成物を用いて、宝石型の金型を使用し射出成形により宝石形態のフォトクロミック成形体を得た。
前記成形体は、太陽光に晒す前は無色であったが、太陽光に曝露したところ、ピンク色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、ピンク色は消えて元の無色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
【0046】
応用例9
フォトクロミックマイクロカプセル顔料の調製
実施例8で得たフォトクロミック材料60重量部を、膜材として芳香族イソシアネートプレポリマー20重量部、酢酸エチル50重量部からなる混合溶液に混入した後、これを15%ゼラチン水溶液100重量部中に滴下して微小滴になるよう攪拌し、70℃で1時間反応を行なった。
次いで、液温を90℃に保って3時間攪拌を続け、マイクロカプセル分散液を調製した後、遠心分離法によりフォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0047】
前記マイクロカプセル顔料30.0重量部、青色顔料5.0重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(メルトフローレート:1.4)1000.0重量部、ヒンダードアミン系光安定剤10.0重量部、金属石鹸系滑剤0.5重量部を混合しタンブラーミキサーで均一に分散した後、押出成形機を用いて成型し、フォトクロミック成形用樹脂組成物(ペレット)を得た。
前記成形用樹脂組成物を用いてぶどうの形態を模した中空のフォトクロミック成形体を得た。
前記成形体は、太陽光に晒す前は青色であったが、太陽光に曝露したところ、紫色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、紫色は消えて元の青色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
【0048】
応用例10
フォトクロミック樹脂粒状体の調製
実施例10で得たフォトクロミック材料60重量部に酢酸エチル50重量部、トルエン10重量部、ポリスチレン樹脂5重量部を加えて溶解した溶液を、15%ゼラチン水溶液100重量部中に滴下して微小滴になるよう攪拌し、70℃で1時間撹拌を行なった。
次いで、液温を90℃に保って3時間攪拌を続け、樹脂粒状体分散液を調製した後、遠心分離法によりフォトクロミック樹脂粒状体を得た。
【0049】
前記フォトクロミック樹脂粒状体30.0重量部、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(メルトフローレート5.0)1000.0重量部、ヒンダードアミン系光安定剤10.0重量部、金属石鹸系滑剤0.5重量部を混合し、タンブラーミキサーで均一に分散した後、押出成形機を用いてフォトクロミック成形用樹脂組成物(ペレット)を得た。
【0050】
前記成形用樹脂組成物を用いてインフレーション成形を行い、フィルム状のフォトクロミック成形体を得た。
前記成形体は、太陽光に晒す前は無色であったが、太陽光に曝露したところ、ピンク色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、ピンク色は消えて元の無色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。
【0051】
応用例11
フォトクロミックマイクロカプセル顔料の調製
実施例6で得たフォトクロミック材料60重量部を、膜材として芳香族イソシアネートプレポリマー20重量部、酢酸エチル50重量部からなる混合溶液に混入した後、これを15%ゼラチン水溶液100重量部中に滴下して微小滴になるよう攪拌し、70℃で1時間反応を行なった。
次いで、液温を90℃に保って3時間攪拌を続け、マイクロカプセル分散液を調製した後、遠心分離法によりフォトクロミックマイクロカプセル顔料を得た。
【0052】
前記マイクロカプセル顔料20.0重量部、青色顔料2.0重量部、付加反応型シリコーンゴム1000.0重量部を混合して均一に分散し、フォトクロミック成形用樹脂組成物を得た。
前記成形用樹脂組成物に硬化剤10.0重量部を加えて分散、混合した後、深さ5mmの星形状の型枠に注入し150℃30分間硬化させた後、室温で1日放置し星形状のフォトクロミック成形体を得た。
前記成形体は、太陽光に晒す前は青色であったが、太陽光に曝露したところ、紫色に変色した。その後、室内で暫く放置したところ、紫色は消えて元の青色となった。
この色変化は繰り返し行うことができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピロオキサジン誘導体又はスピロピラン誘導体から選ばれるフォトクロミック化合物を、重量平均分子量が200乃至6000のスチレン系オリゴマーに溶解してなるフォトクロミック材料と、成形用樹脂を含むフォトクロミック成形用樹脂組成物。
【請求項2】
前記フォトクロミック化合物と、スチレン系オリゴマーの重量比が1:1〜1:10000である請求項1記載のフォトクロミック成形用樹脂組成物。
【請求項3】
前記スチレン系オリゴマーの重量平均分子量が200乃至4000である請求項1又は2記載のフォトクロミック成形用樹脂組成物。
【請求項4】
前記フォトクロミック材料中に、水酸基、エステル基、カルボキシル基から選ばれる少なくとも一以上の官能基を有し、沸点が150℃以上であり、且つ、融点又は軟化点が150℃以下の有機化合物をスチレン系オリゴマー100重量部に対し、50重量部以下の割合で添加してなる請求項1乃至3のいずれかに記載のフォトクロミック成形用樹脂組成物。
【請求項5】
ヒンダードアミン系光安定剤を含んでなる請求項1乃至4いずれかに記載のフォトクロミック成形用樹脂組成物。
【請求項6】
前記ヒンダードアミン系光安定剤が下記一般式(1)で示される化合物である請求項5記載のフォトクロミック成形用樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1 は炭素数1乃至30のアルキル基を示し、R2 、R3 、R4 、R5 はそれぞれ炭素数1乃至5のアルキル基を示し、nは1以上の整数を示し、R6 はn価の有機残基を示す。)
【請求項7】
前記フォトクロミック化合物とスチレン系オリゴマーを微小カプセルに内包してなる、或いは、樹脂粒子中に分散してなる請求項1乃至6のいずれかに記載のフォトクロミック成形用樹脂組成物。
【請求項8】
前記成形用樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1乃至7のいずれかに記載のフォトクロミック成形用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のフォトクロミック成形用樹脂組成物により成形されてなる成形体。

【公開番号】特開2006−22201(P2006−22201A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201405(P2004−201405)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】