説明

フォトクロミック組成物および光透過性物品

ペンダントオリゴマーを有さないフォトクロミック化合物を含有する対応する組成物と比較すると、フォトクロミックポリマー組成物のかなり変化した退色速度を提供するためのフォトクロミック部分および少なくとも1つのペンダントオリゴマー基を含有する付加物であるポリマーマトリックスおよびフォトクロミック化合物を含有するフォトクロミックポリマー組成物。本発明は、フォトクロミック部分および少なくとも1つのペンダントオリゴマー基を含有する付加物であるフォトクロミック化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一種の官能性化フォトクロミック染料、上記官能性化染料を含有する組成物、並びにフォトクロミック応答を示すポリマー組成物および光透過性ポリマー物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミズムは、長年、光透過性物品の製造に用いられてきた特性である。光の照射時には色が変化し、照射を止めると元の色に戻る場合、化合物はフォトクロミックであると言われる。フォトクロミック物質をメガネレンズを製造するのに使用すると、照射にフィルターをかける効率を照射強度に伴って変化させることができて有用である。フォトクロミック物質は、製品中の他のポリマー組成物の領域、または窓、自動車両のフロントガラス、自動車両および航空機のトランスペアレンシー、ポリマーフィルムコーティング組成物、光学スイッチ並びにデータ記憶装置などの用途に用いる可能性を有する。フォトクロミック物質は、インクにも用いることができ、例えば、UV光下でのセキュリティチェックを行うことによって、またはコピー時の露光を知らせることによって、文書や通貨のセキュリティを向上する。
【0003】
フォトクロミック化合物をレンズ等の用途に使用しているにもかかわらず、この技術の融通性および可能性を低下させる多くの問題があった。
【0004】
フォトクロミックポリマー組成物が照射時に着色し、照射を止めた時に退色する速度を制御することは有用なことである。多くの場合、迅速に着色および退色することは、特にレンズおよびメガネには重要である。しかしながら、いくつかのポリマーでは、着色と退色との速度を増大するために、上記物質の成分および特性の間で妥協することが必要となるため、着色と退色との速度が小さくなる。例えば、多くのフォトクロミック物質は軟質材料中で迅速に着色および退色し、それにもかかわらず、メガネまたは構造パネルなどの用途に対して、耐摩耗性および硬度が重要である。変換速度と硬度との間のこのようなトレードオフは、製造者に強靭性とフォトクロミック効率との間でジレンマを生じさせる。ポリマーレンズにおいては、多くのフォトクロミック物質は、所望のものより小さい退色速度を示す。マトリックスの硬度に関係なく、迅速に退色するフォトクロミック染料を有することが望ましい。
【0005】
以前に行われた1つのアプローチとして、ホストマトリックスとの一体部分であるフォトクロミック物質を生成する方法がある。これは、上記フォトクロミック物質を、上記ポリマーマトリックスと重合される不飽和基で官能基化することによって行われる。従って、上記フォトクロミック物質は、上記ホストポリマーマトリックスに共有結合することになる。しかしながら、もし上記マトリックスが比較的軟質でないならば、退色速度は悪影響を受ける。非特許文献1には、フォトクロミック物質の結合によって、染料濃度が増加しても、脱色速度がほとんど一定のままであることも報告されている。更に、このフォトクロミック物質が15重量%より低い濃度で結合される場合、観察される退色がかなり遅い。
【0006】
退色の制御することが望ましい場合の他の例には、フォトクロミック化合物の混合物を用いる。ブラウンやグレーなどの所望の色を得るのに、フォトクロミック化合物の混合物を用いることが必要な場合がある。しかしながら、これらの色を得るために組み合わせて用いる異なるフォトクロミック染料は、多くの場合、僅かに退色速度が異なり、上記混合物が退色時に美しくない色の変化を被る。他の場合には、着色または退色が緩やかに行われ、かつ制御されるように退色速度を低減することが望ましいかもしれない。例えば、光スイッチでは、フォトクロミック物品は特定の熱刺激または電磁刺激下での迅速なスイッチングを被るか、さもなければ温度および光の周囲条件下で退色しないことが望ましいかもしれない。
【0007】
フォトクロミック化合物に関する他の問題は、その寿命である。多くのフォトクロミック化合物は、化学的劣化のために、疲労するまでに比較的短い寿命を有し、可逆的な色の変化はなくなるか、または効率が悪くなる。これは、例えば、硫黄含有ポリマーまたは紙を含む高屈折率レンズ等のより過酷な化学的環境においては、問題である。
【非特許文献1】フー(Hu)等のPure Appln.Chem.、AA(6)第803〜810頁(1996年)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
ポリマー支持体におけるフォトクロミック染料の光互変性は、フォトクロミック部分が官能基化されて1以上のペンダントオリゴマー基を含有するフォトクロミック化合物を用いることによって制御することができることを見出した。理論に拘束されるつもりはないが、ある種のオリゴマー基はナノ環境を提供して、退色速度にかなりの変化を生じる。上記1以上のペンダントオリゴマー基は、ポリマーマトリックス中のフォトクロミック部分の退色速度を変化させる。
【0009】
1つの態様では、本発明は、ポリマーマトリックス、並びにペンダントオリゴマーを有さないフォトクロミック化合物を含有する対応する組成物と比較すると、フォトクロミックポリマー組成物のかなり変化した退色速度を提供するためのフォトクロミック部分および少なくとも1つのペンダントオリゴマー基を含有する付加物であるフォトクロミック化合物を含有するフォトクロミックポリマー組成物を提供する。
【0010】
上記オリゴマーは、上記マトリックスポリマーに共有結合しないように、好ましくはホストマトリックスと反応性を有さない。
【0011】
更なる態様では、本発明は、フォトクロミック部分および少なくとも1つのペンダントオリゴマー基を含有する付加物であるフォトクロミック化合物を提供する。
【0012】
本発明の好ましい態様では、上記オリゴマーは、退色半減期および/または吸光度において3/4減少に到達するまでの時間が少なくとも50%だけ減少するように退色速度をかなり増大させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
高ガラス転移温度(Tg)を有する硬質ポリマー材料においては、軟質材料と比較して、多くのフォトクロミック化合物の光互変作用をかなり低下させる。理論に拘束されるつもりはないが、ポリマー支持体の光互変性能の低下は、上記染料に有効な体積の制限の結果として生じて、開環および/または極性相互作用の影響によって変換する。
【0014】
本発明の多くの化合物に対して観察される、より迅速な転移の1つの可能な説明は、上記オリゴマー鎖がフォトクロミック基の回りに巻き付いて、開環および閉環形の間のより迅速な変換を促進するナノカプセル化を提供することである。上記オリゴマー鎖は低Tgナノ環境を提供するか、さもなければ、局所環境を好適に変化させる。従って、本発明のフォトクロミック化合物に結合した上記オリゴマーは、比較的低いTgを有することが好ましい。例えば、上記Tgは好ましくは25℃未満である。より好ましくは、本発明の化合物は、室温で液体である。
【0015】
上記オリゴマー鎖のホストマトリックスとの相溶性もまた、退色速度に影響を与える。
【0016】
フォトクロミック発色団の退色速度は、フォトクロミック部分(スピロオキサジン基)のそれぞれ反対側の第1オリゴマー鎖および第2オリゴマー鎖を含む多数のオリゴマー置換基を用いることによって、低下する。上記オリゴマーのTgが上昇するか、またはそれらが上記ホストオリゴマーとの相溶性が向上するので、この傾向は、特にそのような場合である。例えば、スピロインドレンアリーレンオキサジン化合物の場合、1つのオリゴマーがインドレン部分の縮合ベンゼン環およびオキサジンで縮合したアリール部分に結合した1つのオリゴマー鎖に結合してもよい。上記オリゴマー鎖がそれぞれ上記ホストマトリックスと相溶性を有する場合、それらは、上記マトリックス中に含まれ、上記スピロオキサジンの反対端を制限することによってフォトクロミック部分の運動を制限する。退色速度はまた、比較的高いTgを有する単一オリゴマーによって、小さくなるかもしれない。
【0017】
オリゴマーのポリマーマトリックスとの相溶性における上記傾向は、多くの場合、極性と一致する。従って、上記第1ポリマーマトリックスと同様の極性を有するオリゴマーポリマーは、相溶性を有するとみなされる。例えば、それぞれ、ポリアルキレングリコールオリゴマー基は、アクリレートおよびポリアルキレンなどの極性ポリマーホストと相溶性を有し、ポリ(アリールアルキレン)オリゴマーは、ポリオレフィンおよびスチレンポリマー(例えば、ポリスチレン、SBR等)等の非極性樹脂と相溶性を有する。
【0018】
1以上のオリゴマー鎖の存在によって提供されるナノ環境によって、本発明の化合物のフォトクロミック寿命は、非置換フォトクロミック化合物と比較して、かなり改善される。
【0019】
本発明は、フォトクロミック部分および少なくとも1つのペンダントオリゴマー基を含有するフォトクロミック化合物に関する。上記少なくとも1つのオリゴマー基は、ポリエーテルオリゴマー、ポリアルキレンオリゴマー、ポリフルオロアルキレンオリゴマー、ポリフルオロアルキルエーテルオリゴマー、ポリジ(C〜C10ヒドロカルビル)シリルオキシオリゴマー、ポリ珪酸オリゴマー(シリケート)またはその誘導体、ポリ(ZSi(OH))オリゴマーおよびその誘導体、ポリ(ZSiCl)オリゴマーおよびその誘導体、ポリ(ZSi(OMe))オリゴマーおよびその誘導体、並びにそれらの混合物(ここで、Zは有機基である)から成る群から選択されてもよい。Zは、好ましくは、水素、アルキル、任意に置換されたアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、任意に置換されたシクロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、任意に置換されたアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、アリール、任意に置換されたアリール、カルボン酸およびそれらの誘導体から成る群から選択される。これらの後者オリゴマーの特に好ましいサブセットは、俗称、多面体オリゴシルセスキオキサン(polyhedral oligomeric silsesquioxane、POSS)として知られている。フォトクロミック部分およびPOSSオリゴマーを含有する化合物は、結晶状態光互変性を示すことができる。
【0020】
オリゴマー中のモノマーユニットの総数は、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも7、最も好ましくは少なくとも10である。上記オリゴマーおよび上記オリゴマーを発色団に結合する基は、主鎖中に、好ましくは少なくとも12原子、より好ましくは少なくとも15原子、最も好ましくは少なくとも17原子の最長鎖長を共に提供する。
【0021】
本発明の変性フォトクロミック物質は概して、式I:
(PC)‐(L(R))
(式中、PCはフォトクロミック部分であり;
Lは結合または結合基であり;
Rはオリゴマー鎖であり;
nは1〜3の整数であり;
mは1〜3の整数である)
を有し;かつ
上記オリゴマーR中のモノマーユニット総数が少なくとも5、好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも10である。上記結合基(存在する場合)およびオリゴマー(即ち、基(L(R)))が、主鎖中に、好ましくは少なくとも12原子、より好ましくは少なくとも15原子、最も好ましくは17〜40原子の最長鎖長を共に提供する。
【0022】
好適なオリゴマー基Rの例には、式I(a):
−(X)p(R)q−R I(a)
(式中、Xは酸素、硫黄、アミノ、例えばC〜CアルキルアミノおよびC〜Cアルキレン(好ましくはメチレン)から選択され;
pは0または1であり;
qは前記オリゴマー中のモノマーユニットRの数であり、好ましくは少なくとも5であり;
は、同一であっても異なってもよく、
〜Cアルキレン、例えばエチレン、プロピレンおよびブチレン;
ハロ(C〜Cアルキレン)、例えばパーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレンおよびパーフルオロブチレン;
〜Cアルキレンオキシ;
〜Cハロアルキレンオキシ;
ジ(C〜C10ヒドロカルビル)シリルオキシ(ここで、上記ヒドロカルビルはアルキル、アリール、アルキル置換アリールまたはアリール置換アルキルであってもよく、特にジ(C〜Cアルキル)シリルオキシ、例えばジメチルシリルオキシであってもよい);から成る群から選択され;かつ
は、水素、C〜CアルキルおよびC〜Cハロアルキル、ヒドロキシ、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたアリールカルボン酸およびそれらの誘導体から選択され、好ましくは、Rは水素、C〜Cアルキル、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたアリール並びにカルボキシルのアルキルおよびアリールエステルから成る群から選択される)
を有する基が挙げられる。
【0023】
好適なオリゴマー基Rの例には、また、式IBまたはIC:
【化1】

(式中、Zは有機基であり、好ましくは、Zは、水素、アルキル、任意に置換されたアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、任意に置換されたシクロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、任意に置換されたアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、アリール、任意に置換されたアリール、カルボン酸およびそれらの誘導体から成る群から選択される有機基である)
を有する基が挙げられる。Zは、イソブチル、イソオクチル、シクロペンテニル、シクロヘキシルおよびフェニルから成る群から選択されることが特に好ましい。
【0024】
上記オリゴマー基は好ましくは、ラジカル反応または縮合反応する基を含有しない。従って、上記オリゴマーは概して末端不飽和基または末端活性化水素、例えばアミノヒドロキシまたはカルボキシルを有さない。
【0025】
好ましくは、Lは、式IIa、IIb、IIc、IId、IIe、IIf、IIg、IIh、IIi、IIjおよびIIk:
【化2】

【化3】

(式IIa〜IIk中、
Xは、同一であっても異なってもよく、前記と同様であり;
は、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノおよび置換されたアミノ、例えばアルキルアミノから成る群から選択され;
nは1〜3の整数であり;
wは1〜4の整数であり;
qは0〜15の整数であり;
pは、1つより多く存在する場合、同一であっても異なってもよく、0または1であり;および
(R)は、オリゴマーRの結合用の基を示す))
を有する基から選択される結合またはポリラジカルから成る群から選択される。
【0026】
上記結合基の目的は、上記オリゴマーをフォトクロミック部分に結合することである。上記オリゴマーが染料に直接結合するのに用いることができない官能基を有する場合、結合基が必要であってもよい。例えば、コハク酸無水物との反応によって、PEGオリゴマーの末端ヒドロキシを酸に変換することができる。従って、これはフォトクロミック部分、例えば9’‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3’‐93H]ナフサ[2,1‐b][1,4]オキサジン]のヒドロキシ基に容易に結合することができる。他の例は、発色団のカルボン酸がエチレングリコールでエステル化されて、ポリ(ジメチルシロキサン)モノカルボキシデシルクロリドの酸基(酸塩化物による)と反応することができるヒドロキシ基を提供する実施例16である。
【0027】
いくつかの場合、上記結合基を、上記オリゴマーの一部として用いることができる。例えば、上記実施例において、ポリ(ジメチルシロキサン)モノカルボキシデシルクロリドの使用が説明されている。上記ウンデシルカルボキシ基は、市販のオリゴマーMCR‐B11の一部であり、染料とオリゴマーの間の結合基としてはたらく。
【0028】
結合基Lの特定例には、
【化4】

【化5】

が挙げられる。
【0029】
本発明の化合物は、モノマーユニットの総数が少なくとも5、好ましくは少なくとも7、最も好ましくは少なくとも10であるオリゴマー基を含有する。上記オリゴマー鎖および結合基は好ましくは、最長鎖長少なくとも12原子、より好ましくは少なくとも15原子、最も好ましくは17〜40原子を提供する。本明細書中で鎖長とは、ポリマー主鎖中に連続して結合した原子の数を表す。
【0030】
上記オリゴマーは直鎖状、分岐鎖、ブロックコポリマーまたはランダムコポリマーを含むコポリマーの形であってもよいが、各オリゴマーが、少なくとも5、より好ましくは少なくとも7の同じタイプのモノマーユニットを含有することが特に好ましい。
【0031】
好ましくは、上記モノマーユニットは、パーフルオロアルキレン、アルキレン、アリールアルキレン、アルキレンオキシ、ハロアルキレンオキシ、およびジ(C〜C10ヒドロカルビル)シリルオキシから成る群から選択される。より好ましいモノマーユニットは、アルキレンオキシ、およびジアルキルシリルオキシであり、より好ましくはエチレンオキシ、プロピレンオキシ並びにそれらのランダムおよびブロックコポリマーである。
【0032】
式Iの本発明のフォトクロミック化合物には、それぞれが1、2または3のオリゴマー基を含有してもよい3つ以下の基を含む。
【0033】
好ましいオリゴマー基の例には、
【化6】

【化7】

(式中、XおよびRおよびpは前述と同様であり、x、vおよびyは繰り返しユニットの数であり、アルキルはC〜C20アルキル、好ましくはC〜C10アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシルである)
が挙げられる。好ましくは、本発明の化合物は、モノマーユニットの数(上記例におけるxまたはy+v)が少なくとも7、最も好ましくは少なくとも10であるオリゴマー基を少なくとも1つ含有する。
【0034】
更に好ましいオリゴマー基は、式:
【化8】

(式中、Zは有機基、好ましくは、水素、アルキル、任意に置換されたアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、任意に置換されたシクロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、任意に置換されたアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、アリール、任意に置換されたアリール、カルボン酸およびそれらの誘導体から成る群から選択される有機基である)
の基である。Zは、イソブチル、イソオクチル、シクロペンテニル、シクロヘキシルおよびフェニルから成る群から選択されることが特に好ましい。
【0035】
最も好ましいオリゴマー基は、少なくとも10のモノマーユニットを含有する。上記モノマーユニットは、長さで30ユニット以上であってもよいが、10〜30ユニットが特に好適であることを見出した。
【0036】
上記基Xの存在および性質が上記結合基に依存することは、当業者に認められている。上記結合基が結合であり、上記オリゴマーがヘテロ原子、例えば窒素に結合している場合、pは好ましくは0である。
【0037】
しかしながら、上記基L‐(R)がフォトクロミック部分のカーボンラジカル、または式IIa〜IIkの結合基に結合している場合、オリゴマー基R中で整数pは0または1である。
【0038】
上記フォトクロミック部分は、当業者に公知の広範囲のフォトクロミック部分から選択されてもよい。本発明の化合物に用いるのに最も適当なフォトクロミック部分は、分子異性、例えばシス‐トランス異性、または周辺環状反応、例えば6π,‐6原子、6π,‐5原子プロセスおよび[2+2]、[4+4]または[4+2]付加環化をうけるフォトクロミック物質である。本発明の組成物(および特にオリゴマー鎖)は、フォトクロミック物質の発色する発色団と無色状態の間のより迅速な転位を導く所望の環境を提供するためのナノ環境を提供すると考えられている。
【0039】
本発明のフォトクロミックオリゴマー付加物は、クロメン、例えばナフトピラン、ベンゾピラン、インデノナフトピランおよびフェナントロピランから成る群から選択されるもの;
スピロピラン、例えばスピロ(ベンズインドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)ベンゾピラン、スピロ(インドリン)ナフトピラン、スピロキノピラン、およびスピロ(インドリン)ピラン並びにスピロジヒドロインドリジンから成る群から選択されるもの;
スピロオキサジン、例えばスピロ(インドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンズオキサジン、スピロ(ベンズインドリン)ピリドベンズオキサジン、スピロ(ベンズインドリン)ナフトオキサジンおよびスピロ(インドリン)ベンズオキサジンから成る群から選択されるもの;
フルギド、フルギミド;
アニル;
ペルイミジンスピロシクロヘキサジエノン;
スチルベン;
チオインジゴイド;
アゾ染料;並びに
ジアリールエテンから成る群から選択されるフォトクロミック部分を含有してもよい。
【0040】
フォトクロミック部分の例は、フルギドフォトクロミック化合物、クロメンフォトクロミック化合物およびスピロオキサジンフォトクロミック化合物から成る群から選択されてもよい。前述の各種類の広範囲のフォトクロミック化合物が先行技術に記載されており、当業者が広範囲のフォトクロミックオリゴマー付加物を調製するのに困難性を有さないとの示唆を本明細書中では考慮する。クロメンフォトクロミック化合物、フルギドフォトクロミック化合物およびスピロオキサジンフォトクロミック化合物の例が、米国特許第5776376号に記載されている。
【0041】
最も好ましいフォトクロミック化合物はクロメンおよびスピロオキサジン、特にスピロインドレンアロキサジン(spiroindolene aroxazine)である。
【0042】
後述のスピロオキサジン、例えばスピロインドリンナフトオキサジンはクリアであるが、光の存在下で開環して、以下の式:
【化9】

に示すような着色した形を提供する。
【0043】
本発明の更なる態様は、以下の式:
(PC)‐(X)L(R)
(式中、PCはフォトクロミック部分、特に式IIIのスピロオキサジン、式XXのクロメン、式XXXのフルギド/フルギミドまたは式XLのアゾ染料であり、L、R、X、nおよびpは前述と同様である)
のフォトクロミック化合物である。式III、XX、XXXおよびXLを、例示を用いて以下に説明する。
【0044】
以下の一般式III:
【化10】

の好ましいスピロオキサジンを好適に用いることができる。上記一般式IIIにおいて、R、RおよびRは同一または異なっていてもよく、それぞれアルキル基、シクロアルキル基、シクロアリールアルキル基、アルコキシ基、アルキレンオキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アルコキシカルボニルアルキル基、アシル基、アシルオキシ基またはアミノ基であり、RおよびRは共に環を形成してもよく、R、RおよびRはそれぞれ任意に置換基を有してもよい。上記置換基には、前述の基に加えて、ハロゲン原子、ニトロ基、複素環式基等を含んでもよい。部分IIIa:
【化11】

によって表される基は、置換または非置換2価芳香族炭化水素基または置換または非置換2価不飽和複素環式基である。部分IIIb:
【化12】

によって表される基は、置換または非置換2価芳香族炭化水素基または置換または非置換2価不飽和複素環式基である。上記2価芳香族炭化水素基の特定例は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等から誘導される炭素原子6〜14個を有する基である。上記2価不飽和複素環式基の特定例は、フラン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピロール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環等から誘導される炭素原子4〜9個を有する基である。
【0045】
上記置換基は、R、RおよびRに関して、前述のものと同様の基であってもよい。特に、以下の式:
‐NR
(式中、RおよびRはそれぞれアルキル基、アルコキシ基、アリル基等であり、それぞれが置換されていてもよく;RおよびRは結合し互いに環化して窒素含有複素環式環を形成してもよい)によって表される基が、初期光互換性能における高密度発色の観点から好ましい。
【0046】
特に好ましい態様では、本発明のフォトクロミック化合物は、以下の式IV:
【化13】

(式中、R、R、R、R、R、R10およびR11は独立して、水素、アルキル、ハロ、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアリールアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキレンオキシアルキル、アルコキシカルボニル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルキレンチオアルキル、アシル、アシルオキシ、アミノ、NR、シアノおよび基L(R)から成る群から選択され、ここでR、RおよびRの少なくとも1つが式L(R)のオリゴマー基であり、L、Rおよびnは前述と同様であり、基R、R、RおよびR中に1より多いL(R)基が存在し、1以上のR基は任意に共に結合して1以上のブリッジオリゴマーを形成する)
を有する。記号mは整数であり、0、1または2であってもよく、mが2の時、上記基は独立して選択されてもよい。
【0047】
式IVの化合物では、オリゴマー置換基(R)中のモノマーユニットの総数は、少なくとも7、好ましくは12である。
【0048】
より好ましくは、上記置換基Rは、アルキル、シクロアルキル、シクロアリールアルキル、アルキレンオキシアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキレンチオアルキルおよび基L(R)から成る群から選択され、より好ましくはRは、アルキル、シクロアルキル、シクロアリールアルキル、アルキレンオキシアルキル、アリール、アリールアルキルおよび基L(R)から成る群から選択され、好ましくはRおよびRは限定されず、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから選択される。
【0049】
およびRは独立して水素およびL(R)から選択され;R10およびR11は独立して、アルキル、シクロアルキル、シクロアリールアルキル、アルコキシ、‐NR、シアノ、アルキレンオキシアルキル、アルコキシカルボニル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルキレンチオアルキル、アシル、アシルオキシおよびアミノから成る群から選択され、最も好ましくは、NRおよび基L(R)から成る群から選択され、R10およびR11は独立して、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、NRおよびシアノから選択され;mは0または1である。
【0050】
式IIIaの好ましい縮合芳香族環基の例には、以下の式IIIa(i):
【化14】

(式中、RおよびR11は前述と同様である)
を含む。
【0051】
式IIIbの好ましい縮合芳香族環基の例には、以下の式IIIb(i)、IIIb(ii)、IIIb(iii)およびIIIb(iv):
【化15】

を含む。
【0052】
式IIIa(i)の基の特定例には、
【化16】

を含む。
【0053】
式IIIbの基の特定例には、
【化17】

【化18】

を含む。
【0054】
式IVの化合物の1つの特に好ましい態様は、以下の式IVa:
【化19】

を有する。
【0055】
式IVaのより好ましい化合物は、RおよびRが好ましくは独立してC〜CアルキルおよびRおよびRが共に結合して炭素原子4〜6個を有するシクロアルキルを形成する基から成る群から選択される化合物である。
【0056】
およびRは、独立して、水素、ハロゲン、シクロアルキル、シクロアリールアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシカルボニル、アリール、アラルキル、アリールオキシ、アルキレン、チオアルキルおよび式L(R)のオリゴマー(式中、L、Rおよびnは前述と同様である)から成る群から選択される。
【0057】
10およびR11は、独立して、水素、ハロゲン、シクロアルキル、シクロアリールアルキル、アルコキシ、シアノ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシカルボニル、アリール、アリールアルキル、アシルオキシおよびアルキレンチオアルキルから成る群から選択される。最も好ましくは、R10およびR11は、水素であり;RおよびRの少なくとも1つは、R中のモノマーユニットの総数が少なくとも10、より好ましくは少なくとも12である基L(R)である。
【0058】
ポリマー(好ましくは高Tgを有するポリマー)物品中のフォトクロミック物質の退色速度を増大するため、ポリマー鎖のサイズは、ある一定サイズより大きくすべきである。最小サイズは、オリゴマー鎖および結合基の性質に依存する。ポリマー鎖の一部がオキシラン環に隣接する配座をポリマー鎖がとる場合、退色はかなり促進されると考えられる。従って、上記オリゴマー鎖を上記分子と交差させる結合基(例えば、上記結合のオルソ位に少なくとも1つのポリマー鎖Rを含有する式VI〜VIIIの基)は、有効モノマーユニットの最小数を、他の結合基と比較して、低減することができる。
【0059】
驚くべき事に、本発明者等は、少なくとも2つのオリゴマー鎖の場合、それぞれオキシラン環の反対側で、ポリマー中のフォトクロミック化合物の退色速度が低減されるのに対して、少なくとも1つのオリゴマー鎖を含有する単一置換基は広範囲のポリマーにおいて退色を促進することを見出した。理論に拘束されようとするつもりはないが、ホストポリマーを有するオキサジン部分の反対側のオリゴマー鎖間の相互作用により、フォトクロミック分子を制限または束縛して、スピロオキサジンの開環および閉環速度を低減する。
【0060】
従って、1つの好ましい態様では、R、RおよびRの内の1つはL(R)(式中、R基は共に少なくとも10モノマーユニットを含む)である。更に、R並びにRおよびRの内の少なくとも1つ(好ましくはR)は、L(R)であり、2以上の基L(R)は少なくとも10モノマーユニットを含有する。
【0061】
本発明の化合物の特定例には、以下の表1に示すものを含む。
表1




【0062】
表中、(EO)は基(CHCHO)であり、PDMS(855)は平均分子量855を有する末端ブチルメチルシラン基を含むポリジメチルシロキサンである。
【0063】
更に好ましい化合物を以下の表2に示す。
表2


【0064】
より好ましい本発明の化合物は、式(Ivb):
【化20】

(式中、置換基は前述と同様であり、より好ましくはRはC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキルおよびL(R)であり;R5aおよびR5bは独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、アリールから選択され;RおよびRは、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシから選択され;R10は水素、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、‐NR(式中、RおよびRは独立して、水素、C〜Cアルキルであり、かつRおよびRは共に炭素原子4〜6個を有する部分的炭化水素鎖を形成してもよい)から成る群から選択される)
を有する。
【0065】
前述のように、極性または非極性ポリマーにおける着色および退色の速度を最大化するため、R、RおよびRの内の1つは、少なくとも10、より好ましくは少なくとも12モノマーユニットを含むL(R)であり、かつR、RおよびRの内の他の2つは、L(R)(式中、L(R)は7モノマーユニットを含有する)以外である。
【0066】
、RおよびRの内の1つ以下が少なくとも7モノマーユニットを含むL(R)である化合物において、着色および退色の速度への影響は、ある程度、上記オリゴマーに、およびポリマーのタイプに依存する。上記ポリマーおよびオリゴマーが相溶性を有する場合、退色速度は低下し、上記オリゴマーおよび樹脂が相溶性が悪い場合、上記効果は低下するか、または退色が増大する。
【0067】
式IVa(好ましくはIVb)の化合物に関して、RおよびRが短鎖またはより小さい置換基である場合、より制限された範囲ではあるが、それらは退色速度を制御するのにも有用である。
【0068】
従って、更なる態様では、本発明は式IVa(好ましくはIVb)(式中、RおよびRはそれぞれ式Iの基および前述のような式L(R)の基およびLR11(式中、R11は低級アルキル、低級ハロアルキル、低級ポリアルキレンオキシアリールおよびアリール(低級アルキル)である)の基から選択される)の化合物を提供する。語「低級(lower)」により、分子鎖中に炭素原子6個以下、好ましくは4個以下であることを意味する。
【0069】
更に他の態様では、本発明の化合物を製造するための中間体を提供し、上記中間体は式IVa、より好ましくは式IVbを有する(式中、RおよびRはXHから選択され、ここでXは前述と同様である)。好ましくは、RおよびRは同一である。
【0070】
本発明の化合物は、中間体VaまたはVbおよびVI:
【化21】

の反応によって製造されてもよい。本発明の化合物の1つの製造方法は、式Vaのメチレンインドリンまたはフィッシャー(Fishers)塩基または式Vbのインドリン塩(式中、Jはハロゲン、特にヨウ化物塩であり、R13はRであり、R14はRである)を式VIのニトロソヒドロキシ化合物と反応させて、式IVの本発明の化合物を提供する工程を含む。
【0071】
または、式Vaのメチレンインドリンまたは式Vbのインドリン塩を式VI(式中、R12およびR13は独立して、水素および‐XHから成る群から選択され、R12およびR13の少なくとも1つは‐XHである)のニトロソヒドロキシ化合物と反応させて、式VII:
【化22】

の中間体を提供してもよい。次いで、式VIII:
JL(R) VIII
(式中、Jは式IVの化合物を生成する残基であり、RおよびRの内の少なくとも1つは基L(R)である)
の化合物を式VIIの化合物と反応させる。
【0072】
または或いは更に、式IVの化合物(式中、RはL(R)である)は、式VaおよびVbの化合物を式VIIIの化合物と反応させて、式VaおよびVbの化合物(式中、R14はL(R)である)を提供することによって、或いは式VIaおよびVIbの化合物を式VIの化合物と反応させて、式IVの化合物(式中、RはL(R)である)を提供することによって製造されてもよい。
【0073】
式VIIIの化合物の特定例には、JL(R)(式中、Jは塩素であり、Lは式IIa〜IIc(ここでpは0である)を有し、Rは前述のR基の例(i)〜(v)の内のいずれか1つである)が挙げられる。
【0074】
式IVの化合物(Lは結合である)は更に、トルエンスルホニル残基を用いることによって、例えば式IX:
【化23】

の化合物と式IVの化合物(式中、RおよびRの内の少なくとも1つはXHであり、および/またはRは水素である)とを反応させて化合物(1以上の基がアルコキシ化されている)を提供することによって製造してもよい。
【0075】
種々の縮合芳香族基Bを有する式X:
【化24】

の化合物を、式Vc:
【化25】

の中間体を用いて製造してもよい。
【0076】
上記縮合芳香族基Bおよびその置換基は、フォトクロミック化合物の使用されていない色提供するように選択してもよい。そのような化合物は、迅速な退色スピロインドリンオキサジンの多角的製造方法を提供する。式VaおよびVbの好適な置換メチレンインドレン化合物の例には、ゲイル(Gale)およびウィルトシア(Wiltshire)のJ.Soc.Dye and Colourants、1974年、第90巻、第97〜100頁に記載の5‐アミノインドレン化合物、ゲイル(Gale)、リン(Lin)およびウィルトシア(Wiltshire)のAust.JU.Chem.、1977年、第30巻、第689〜694頁に記載の5‐アミノメチレン化合物、並びにTetrahedron Lett.、1973年、第12巻、第903〜6頁および米国特許第4062865号に記載の5‐ヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0077】
フォトクロミック物質の好ましいグループの1つは、スピロピランである。スピロピランの例には、式XIXおよびXX:
【化26】

(式中、XIX中の基X、Y、ZおよびQは、それらの1以上が任意にアリールで縮合した炭素環式環を形成する場合を含む置換基であってもよく、置換基R23およびR24はどの環に存在してもよく;
BおよびB’は任意に置換されたアリールおよびヘテロアリールであり;
22、R23およびR24は独立して、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、基L(R)および式COWの基(ここで、WはOR25、NR2627、ピペリジノまたはモルホリノであり、R25はC〜Cアルキル、フェニル、(C〜Cアルキル)フェニル、C〜Cアルコキシフェニル、フェニルC〜Cアルキル、(C〜Cアルコキシ)フェニル、C〜CアルコキシC〜Cアルキルおよび基L(R)から成る群から選択され;R26およびR27はそれぞれ、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、C〜CアルキルおよびC〜Cアルコキシから選択される1または2の基で置換したフェニル並びに基L(R)から成る群から選択され;R22およびR23は、任意に置換されたベンゼンと任意に縮合した5または6員のカルボキシル環から選択されてもよく、該置換基の少なくとも1つはBおよびB’から成る置換基の群から選択され、R22、R23、R24、R25、R26およびR27は基L(R)である)から選択される。
【0078】
22およびR23が炭素環式である場合、好ましい化合物は式XX(d):
【化27】

(式中、R22、R28およびR29は、前述のR22と同様である)
を有する。
【0079】
好ましくはBおよびB’は独立して、任意に1〜3の置換基で置換されたアリールおよび任意に1〜3の置換基で置換されたヘテロアリールから成る群から選択される。存在する場合、上記置換基は、ヒドロキシ、アリール、(C〜C)アルコキシアリール、(C〜C)アルキルアリール、クロロアリール(C〜C)シクロアルキルアリール、(C〜C)シクロアルキル、(C〜C)シクロアルコキシ、(C〜C)シクロアルコキシ、(C〜C)アルキル、アリール(C〜C)アルキル、アリール(C〜C)アルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、アリールオキシ(C〜C)アルコキシ、(C〜C)アルキルアリール、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシアリール、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシアリール、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシアリール、(C〜C)アルコキシ、アミノ、N‐(C〜C)アルキルピペラジノ、N‐アリールピペラジノ、インドリノ、ピペリジノ、アリールピペリシリン(aryl pipersillins)、モルホリノ、チオモルホリノ、テトラヒドロキノリノから成る群から選択される。
【0080】
NR2930(式中、R29およびR30は独立して、(C〜C)アルキル、フェニル、(C〜C)シクロアルキル並びに、R29およびR30がメチレン基を含有し、かつ任意に1以上のヘテロ原子を含有し、かつ任意に(C〜C)アルキルおよび基L(R)によって更に置換された4または5個の結合基を有する結合基を形成する基から成る群から選択される。)
【0081】
22は、水素、(C〜C)アルキル、COW[式中、WはOR25(ここで、R25は(C〜C)アルキルである)および基NR2627(ここで、R26およびR27は独立して、(C〜C)アルキルである)である]および基L(R)から成る群から選択される。
【0082】
特に好ましいナフトピラン化合物は、式XX(a):
【化28】

(式中、R20およびR21は独立して、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノおよびL(R)から成る群から選択され、
22は、基COW(ここで、Wは(C〜C)アルコキシである)または基L(R)であり、
23は、水素およびNR2627(ここで、R26は独立して、(C〜C)アルキルから成る群から選択され、R26およびR27は共に4〜6個の炭素原子を有するアルキレン基を形成してもよい)から成る群から選択され、
24は、水素または基L(R)であり、
22およびR24の内の少なくとも1つは、L(R)である)
を有する。
【0083】
上記式XX(a)のナフトピラン化合物の特定例には、以下の表3に示したものが挙げられる。
表3



【0084】
式XX(式中、R23および/またはR24は、オリゴマー基L(R)を含有する)の化合物は、式XXI(a)の好適に置換されたアセトフェノン、ベンゾフェノンまたはベンズアルデヒドから製造されてもよい。この方法では、式XXI(a)の化合物(または1より多い置換基を必要とするポリヒドロキシ化合物)を、式XXIのオリゴマーエステル化トルエンスルホネートと反応させて、対応する式XXI(b)のオリゴマーエーテルを提供する。上記式XXI(b)の芳香族オリゴマーエーテルを、コハク酸のエステル、例えば式XXI(c)のジアルキルスクシネートと反応させる。シュトッベ(Stobbe)反応により、酸無水物の存在下で脱水環化をうけて式XXIIIのナフタレンオリゴマーエーテルを形成する式XXIIの縮合ハーフエステルを生成する。式XXIIIの化合物は、塩酸などの酸およびメタノールなどの無水アルコールと反応させて、順に式XXVのプロパルギルアルコールと結合して式XX(b)の本発明のオリゴマー置換ナフトピランを形成する、式XXIVに示される対応するナフトールを生成してもよい。
【化29】

【0085】
また、末端のフェニル基の少なくとも1つがオリゴマーによって置換されている式XX(c)の化合物は、式XXI(f)のベンゾフェノンから製造されてもよい。この方法では、適当なヒドロキシル基で置換されたベンゾフェノンを、式XXI(e)のトルエンスルホネートのオリゴマーエステルと反応させて、対応する式XXI(g)のオリゴマー置換ベンゾフェノンを生成する。式XXV(a)の対応するプロパルギルアルコールを、THF等の溶媒中のナトリウムアセチリドとの反応によって、上記ベンゾフェノンから製造する。上記式XXIV(a)のオリゴマーエステルを、式XXIV(b)の適当な置換ナフトールと結合させて、式XX(c)のオリゴマー置換ナフトピランを生成する。
【化30】

【0086】
更に任意に、式XX(d)の本発明のオリゴマー置換ピランを生成するのに、式XXIII(a)の対応するカルボキシル化ナフトールを使用してもよい。そのような方法では、式XXIII(a)の上記ナフトールを式XXI(d)の適当なオリゴマー(特に、結合基Lが酸素を含有する)と反応させて、式XXIV(a)のオリゴマーエステルを提供する。上記式XXIV(a)のオリゴマーナフトールエステルを、式XXVのプロパルギルアルコールと反応させて、上記オリゴマーが5位に存在する式XX(d)のナフトールピランを提供してもよい。
【化31】

【0087】
更に、式XXの別の化合物(式中、R22がオリゴマーL(R)を含有する)を、式XX(e)の化合物を酸塩化物または無水物置換オリゴマーと反応させて式:
【化32】

の化合物を提供することによって、生成してもよい。
【0088】
フルギドおよびフルギミドの例には、式XXX、より好ましくはXXXa:
【化33】

(式中、
Qは、任意に置換された芳香族化合物、任意に置換されたヘテロ芳香族化合物(ここで、該芳香族化合物/ヘテロ芳香族化合物は、単環式または多環式の芳香族化合物/ヘテロ芳香族化合物であってもよい)から成る群から選択され;
30、R32およびR33は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、フェニル、フェノキシ、モノ‐およびジ‐(C〜C)アルキル置換フェニルまたはフェン(C〜C)アルキルから成る群から選択され、かつR32およびR33は、任意に共に、更に置換されてもよい縮合ベンゼンを形成し;
A’は、酸素または=N‐R36から成る群から選択され、R36はC〜Cアルキルまたはフェニルであり;
B’は、酸素または硫黄から成る群から選択され;
34およびR35は、独立して、C〜Cアルキル、フェニルまたはフェン(C〜C)アルキルを表すか、或いはR34およびR35の一方は水素であり、もう一方は前述の基の内の1つであるか、或いはR3435はアダマンチリジン基を表し;
30、R31、R32、R35およびR36の少なくとも1つは、基L(R)である)
の化合物が挙げられる。
【0089】
BがNR30である場合、Aは一般に酸素である。
式XXXの化合物の特定例には、以下の表4に示されるものが挙げられる。
表4


本発明のオリゴマー置換基を含有するフルギドおよびフルギミドは、分子スイッチに特に有用である。
【0090】
上記式XXXのフルギドおよびフルギミドは、米国特許第4,220,708号に記載の方法と同様の方法によって生成してもよい。基A’が酸素である式XXX(a)のフルギドは、シュトッベ(Stobbe)縮合反応によって、式XXXII(式中、R37がアルコールの残基である)のコハク酸のエステルとの反応による式XXXの5員複素環から製造されてもよい。上記反応において生成されたXXXIIIのハーフエステル生成物を加水分解することによって、XXXIII(式中、R37が水素である)の二塩基酸の加熱により、式XXXIII(a)のコハク酸無水物生成物が得られる。上記シュトッベ縮合は、カリウムt‐ブトキシドを含有するt‐ブタノール中で、または無水トルエン中で水素化ナトリウムを用いて還流することによって、行ってもよい。式XXXaの基A’がN‐R36である式XXX(b)の本発明の化合物は、上記無水物および1級アミンR36NHを加熱して、例えば酸塩化物または酸無水物と加熱することによって、順に環化して式XXX(b)のイミドを生成することができる対応するハーフアミドを生成することによって、式XXX(a)の化合物から製造してもよい。また、上記式XXXのハーフエステルシュトッベ縮合生成物を、式R36NHMgBrの化合物との反応によって、式XXX(b)のイミドに変換して、式XXX(b)の化合物を提供するために酸塩化物を用いて脱水してもよい対応するスクシンアミド酸を生成することができる。式XXX(b)の化合物(式中、R36がオリゴマー基を含有する)が特に好ましい。
【化34】

【0091】
式XXXIの化合物(式中、R22がオリゴマーL(R)を含有する)を、ルイス酸触媒(例えば、三塩化錫)の存在下で、オリゴマー酸塩化物、例えば(XXXV)の適当なフロイン(furon)との反応によって、製造してもよい。
【化35】

【0092】
式XXX(式中、A’が式XXXVIの基である)のフルギミドは、遊離求核基、例えば4‐ヒドロキシアニリンを有するアミンを式XXX(A’が酸素である)の対応するフルギドと反応して、遊離求核基、例えばヒドロキシ(即ち、式XXXVII)を有する中間フルギミドを提供することによって、および上記フルギミドの遊離求核基をオリゴマー酸塩化物または無水物(例えば式XXXV)と反応して、オリゴマー置換フルギミド(即ち、式XXXVI)を提供することによって、製造してもよい。
【化36】

【0093】
本発明の化合物は油である傾向を有する。これにより、それらはモノマーおよびポリマーマトリックス中により可溶である。それらが、マトリックス中であまり結晶化しないかもしれないことも意味し、従って、染料のより高充填を可能とし、従来のフォトクロミック染料を用いて生じる結晶化も防止する。
【0094】
ジアルキルシロキサンオリゴマーを含有する本発明のフォトクロミック化合物を、適当なハロ置換フォトクロミック部分のアニオン重合によって製造してもよい。
【0095】
例えば、塩素化フォトクロミック物質は、以下のようにジアリルシロキサンで官能基化してもよい。
【化37】

【0096】
フォトクロミック部分でのオリゴマー生長の別法として、ATRPおよびRAFT法または他のリビングポリマー生長法がある。フォトクロミック部分でのリビング開始位置からオリゴマーを生長させるこの一般的方法によって、広範囲のフォトクロミック部分と共に使用するのに用いてもよい制御された生長方法を提供する。更に、アニオン性、ATRPおよびRAFTを含むリビング重合法の範囲は、製造されるべきオリゴマーのタイプに依存して選択されてもよい。
【0097】
アゾ染料の例には、式XL:
【化38】

(式中、R40およびR41は、独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、‐NR4243(ここで、R42およびR43は、R26およびR27と同様である)、アリール(例えばフェニル)、C〜CアルキルおよびC〜Cアルコキシから選択される1以上の置換基で置換したアリール、置換基がアリールおよびC〜Cアルコキシから選択される置換C〜Cアルキル、置換基がC〜Cアルコキシアリールおよびアリールオキシから選択される置換C〜Cアルコキシから選択される)
の化合物が挙げられる。
【0098】
アゾ染料の特定例には、式XLを有する以下の化合物が挙げられる。
【化39】

【0099】
本発明の化合物は油である傾向を有する。これにより、それらはモノマーおよびポリマーマトリックス中により可溶である。それらが、マトリックス中であまり結晶化しないかもしれないことも意味し、従って、染料のより高充填を可能とし、従来のフォトクロミック染料を用いて生じる結晶化も防止する。
【0100】
本発明の化合物は、上記染料が好適なオリゴマーから分離され得ないため、固有のナノ環境を有する。
【0101】
本発明の化合物は、1以上のフォトクロミック染料を含有してもよい。本発明の化合物は、従来のフォトクロミック物質との混合物に用いてもよい。
【0102】
本発明の化合物を使用することによって、フォトクロミック物質の退色速度を、色の変化なしに変えることができる。従って、異なる色の染料に対して、退色速度の調節が可能となる。これは、退色が起こった時にバラツキのない色を得るのに重要である。従って、特定の速度を有する青色染料が必要である場合、本発明に従って、適当な長さを有するオリゴマーを含むように変性を行うことができる。
【0103】
本発明のフォトクロミック化合物(またはそれを含有する組成物)は、当業者に公知の方法によって、ホスト材料に適用しても、または導入してもよい。そのような方法には、上記化合物を上記ホスト材料中に溶解する方法または分散する方法を含む。上記化合物はホストマトリックスと溶融混合してもよい。
【0104】
含浸、熱転写またはコーティングによって、上記フォトクロミック化合物をホスト材料に吸収させ、上記フォトクロミック層を、上記ホスト材料の隣接層の間の分離層の一部として導入する。「吸収(imbibation)」または「吸収する(imbibe)」の語により、上記フォトクロミック化合物単独の上記ホスト材料への拡散、溶媒補助拡散、上記フォトクロミック化合物の多孔質ポリマーへの吸収、気相輸送、および他のそのような移動(transfer)機構を意味し、かつ包含するつもりである。
【0105】
例えば、
(a)本発明のフォトクロミック化合物(またはそれを含有する組成物)は、硬化により、光学的に透明なポリマーホスト材料を生成する重合性組成物と混合することができ、上記重合性組成物はフィルム、シートまたはレンズとして注型することができ、或いはシートまたはレンズに射出成形または別の方法で成形することができる。
(b)本発明のフォトクロミック化合物は、水、アルコールまたは他の溶媒または溶媒混合物中に溶解または分散することができ、次いで、ホスト材料用に数分から数時間、例えば2〜3分から2〜3時間、そのような溶液または分散液の槽中への浸漬によって、固体ホスト材料中に吸収することができる。上記槽は、従来から高温、通常、50〜95℃である。従って、上記ホスト材料は、上記槽から除去されて、乾燥される。
(c)フォトクロミック化合物(およびそれを含有する組成物)は、ポリマーバインダーの存在下で、フォトクロミック材料の溶液または分散液から、如何なる好適な方法、例えばスプレー、ブラッシング、スピンコーティングまたはディップコーティング、によって、上記ホスト材料の表面に適用されてもよい。その後、例えば、オーブン中で、80〜180℃で1分から数時間、加熱することによって、上記フォトクロミック化合物を上記ホスト材料により吸収する。
(d)上記吸収方法の変形においては、上記フォトクロミック化合物またはそれを含有する組成物を、次いでホスト材料と接触して配置され、例えばオーブン中で加熱される、一時的な支持体、またはファブリック上に付着させることができる。
(e)上記フォトクロミック化合物は、如何なる好適な方法、例えばスプレー、ブラッシング、スピンコーティングまたはディップコーティング、によって、永久接着フィルムまたはコーティングの形で、ホスト表面に適用することができる透明ポリマー材料中に溶解または分散することができる。
(f)上記フォトクロミック化合物は、前述の方法のいずれによっても、透明ポリマー材料に導入または適用することができ、次いで、ホスト材料の隣接層の中間の連続層として上記ホスト材料中に配置することができる。
(g)本発明のフォトクロミック付加物は、キャリアと共にボールミルによって染料組成物中に導入して、バインダーマトリックス中に分散してもよい。そのような組成物は、例えばインクジェット印刷におけるインクとして用いてもよく、文書上のセキュリティーマーキングを、コピーにおけるUV光への露光時に可視となるように、好適な(PC)部分を選択してもよい
(h)上記フォトクロミック化合物は、好適な樹脂を配合してもよく、例えばブロー成形によって上記樹脂を溶融成形してフィルムを形成するか、または例えば、射出成形および/またはブロー構造体によって、より複雑な押出形状を形成する。
【0106】
上記移動方法が、なかでも米国特許第4,286,957号および同4,880,667号に記載されている。この技術において、上記透明ポリマー支持体の表面を、導入されるべきフォトクロミック物質を含有するワニス層で被覆する。このようにして被覆した上記支持体を、次いで、上記フォトクロミック物質を支持体中にマイグレートさせるため、熱処理する。
【0107】
高温でも比較的安定性を有することが、本発明のフォトクロミック付加物のかなり優位な点である。これに対して、不飽和官能基を用いて退色結果を改善しようとする試みにより、高温で重合し、概して時期尚早の重合を回避するように貯蔵されるべき化合物が得られる。
【0108】
本発明は、当業者には多くの変形および修飾が明らかとなる以下の例示において特に記載される。
【0109】
本発明のフォトクロミック化合物と共に用いられてもよいホスト材料の例には、ポリマー、即ち、ポリオール(アリルカーボネート)モノマーのホモポリマーおよびコポリマー、多官能性アクリレートモノマーのホモポリマーおよびコポリマー、ポリアクリレート、ポリ(アルキルアクリレート)、例えばポリ(メチルメタクリレート)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酪酸セルロース、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ(エチレン‐テレフタレート)、ポリスチレン、コポリ(スチレン‐メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン‐アクリロニトリル)、ポリ(ビニルブチラール)、並びにジアシリデンペンタエリトリトールのホモポリマーおよびコポリマー、特にポリオール(アリルカーボネート)モノマー、例えばジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、およびアクリレートモノマーのコポリマーが挙げられる。透明コポリマーおよび透明ポリマーのブレンドも、ホスト材料として好適である。
【0110】
上記ホスト材料は任意に、ポリカーボネート樹脂から製造した透明重合有機材料、例えばビスフェノールAおよび商品名「LEXAN」で市販のホスゲンから誘導されるカーボネート結合樹脂;ポリ(メチルメタクリレート)、例えば商品名「PLEXIGLAS」で市販の材料;ポリ(アリルカーボネート)の重合体、特に商品名「CR‐39」で市販のジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、およびそのコポリマー、例えば酢酸ビニルのコポリマー、例えば約80〜90%のジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)および10〜20%の酢酸ビニル、特に80〜85%の上記ビス(アリルカーボネート)および15〜20%の酢酸ビニル、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、ポリスチレンおよびスチレンとメチルメタクリレート、酢酸ビニルおよびアクリロニトリル、および酢酪酸セルロースとのコポリマーであってもよい。
【0111】
重合して透明ホスト材料を生成するポリオール(アリルカーボネート)モノマーは、直鎖状または分岐状脂肪族グリコールビス(アリルカーボネート)化合物のアリルカーボネート、またはアルキリデンビスフェノールビス(アリルカーボネート)化合物である。これらのモノマーは、ポリオール、例えばグリコールの不飽和カーボネートとして記載される。上記モノマーは、当業者に公知の方法、例えば米国特許第2,370,567号および同2,403,113号によって製造することができる。上記ポリオール(アリルカーボネート)モノマーは以下の式:
【化40】

(式中、Rは不飽和アルコールから誘導される基であり、通常、アリルまたは置換アリル基であり、R’はポリオールから誘導される基であり、nは整数2〜5、好ましくは2である)
によって表すことができる。上記アリル基(R)は、2位においてハロゲン、特に塩素または臭素、或いは炭素原子1〜4個を含有するアルキル基、一般にメチルまたはエチル基で置換されていてもよい。上記Rは、式:
【化41】

(式中、Rは水素、ハロゲン、またはC〜Cアルキルである)
によって表すことができる。Rの特定例には、アリル、2‐クロロアリル、2‐ブロモアリル、2‐フルオロアリル、2‐メチルアリル、2‐エチルアリル、2‐イソプロピルアリル、2‐n‐プロピルアリル、および2‐n‐ブチルアリルが挙げられる。最も一般的には、Rは以下の式:
【化42】

(式中、R’は、ヒドロキシ基2、3、4または5個を含有する脂肪族または芳香族ポリオールであってもよいポリオールから誘導される多価基である)
のアリル基である。通常、上記ポリオールは2つのヒドロキシ基を含有する、即ち、グリコールまたはビスフェノールである。脂肪族ポリオールは、直鎖状または分岐状であってもよく、炭素原子2〜10個を含有する。一般的に、上記脂肪族ポリオールは炭素原子2〜4個を有するアルキレングリコールまたはポリ(C〜C)アルキレングリコール、即ち、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、またはジエチレングリコール、トリエチレングリコール等である。
【0112】
更なる態様では、本発明は、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチレングリコールビスメタクリレート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、エトキシル化フェノールビスメチルアクリレートモノマー、ジイソプロピルベンゼンモノマーおよびエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマーから成る群から選択されるポリマー有機ホスト材料、並びにフォトクロミック量の本発明の化合物を含むフォトクロミック物品を提供する。
【0113】
上記ポリマー有機ホスト材料は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(C〜C12)アルキルメタクリレート、ポリオキシ(アルキレンメタクリレート)、ポリ(アルコキシレートフェノールメタクリレート)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酪酸セルロース、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリ(エチレン‐テレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、コポリ(スチレン‐メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン‐アクリロニトリル)、ポリビニルブチラール、並びに
ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、多官能性アクリレートモノマー、多官能性メチルアクリレートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロピルベンゼンモノマー、アルコキシレート多価アルコールモノマーおよびジアリリデンペンタエリトリトールモノマーから成る群から選択される構成要素のポリマー
から成る群から選択される。
【0114】
上記フォトクロミック物品は、アクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、エチレングリコールビスメタクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、酢酸ビニル、ビニルブチラール、ウレタン、チオウレタン、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、およびエトキシル化トリメチルプロパントリアクリレートから成る群から選択されるモノマーのホモポリマーまたはコポリマーであるポリマー有機材料を含有してもよい。
【0115】
本発明のフォトクロミック組成物は、フォトクロミック部分のタイプおよび予定する用途に依存して広範囲の濃度のフォトクロミック化合物を含有してもよい。例えば、高い色の純度を必要とするインクの場合、30重量%と比較的高濃度のフォトクロミック物質を必要とする。これに対して、非常に低濃度でフォトクロミック物質を使用する光学物品などの場合、照射時に光学的透明度の比較的僅かな変化を提供することが望ましい。例えば、0.01mg/gと低濃度のホスト樹脂を用いてもよい。概して、上記フォトクロミック樹脂は、ホスト樹脂の0.01mg/gからホスト樹脂の30重量%までの量で存在する。より好ましくは、上記フォトクロミック化合物は、ホストマトリックスの0.01〜100mg/g、なお好ましくはホストマトリックスの0.05〜100mg/gの量で存在する。
【0116】
上記フォトクロミック物品は、上記フォトクロミック物質を導入または適用するポリマー有機ホスト材料表面の0.05〜10.0mg/cmのフォトクロミック組成物を含有してもよい。
【0117】
本発明のフォトクロミック化合物は、上記有機フォトクロミック物質が用いられてもよい用途、例えば光学レンズ(例えば、視力矯正メガネおよび平面レンズ)、フェースシールド、ゴーグル、バイザー、カメラレンズ、ウィンドウ、ミラー、自動車両のフロントガラス、装身具(jewellery)、航空機および自動車両のトランスペアレンシー(例えば、Tバールーフ(T‐roof)、サイドライトおよびバックライト)、プラスチックフィルムおよびシート、布地およびコーティング(例えば、コーティング組成物)に使用してもよい。本明細書中で用いられるように、コーティング組成物には、ポリウレタン、エポキシ樹脂および合成ポリマーを製造するのに用いられる他の樹脂等の材料から製造されるポリマーコーティング組成物;塗料、即ち、支持体の装飾、保護および/または同定に用いられる着色した液体またはペースト;およびインク、即ち、支持体上に書くおよび印刷するのに用いられる着色した液体またはペースト;を含み、上記支持体には、紙、ガラス、セラミック、木材、組積造(masonry)、布地、金属およびポリマー有機材料を含む。コーティング組成物は、真正性を認証または照合することが望ましい、セキュリティ文書、例えば銀行通帳、パスポートおよび自動車免許証等の文書における照合マークを作製するのに用いられてもよい。コピー時の露光を表示するためのセキュリティ文書もある。
【0118】
本明細書の記載および特許請求の範囲において、「含有する(comprise)」の語およびその変形、例えば「comprising」および「comprises」は、他の添加剤、成分、整数または工程を排除するものではないことを意味する。
【0119】
文献、作用、材料、装置、物品等の議論は、単に本発明に関する背景を提供する目的で本明細書中に含まれる。本願の各請求項の優先日前のオーストラリアに存在したので、これらの内のいくらかまたはすべてが従来技術のベースの一部を形成するか、または本発明に関する分野で通常、一般的に知られていたということは示唆も記載もない
【実施例】
【0120】
ポリ(エチレングリコール)(PEG)メチルエーテルおよびポリジメチルシロキサンオリゴマー並びに化合物の命名法について
ある平均分子量を有するPEGモノメチルエーテルが市販されている。例えば、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company)から、350、750等の数平均分子量を有するものが市販されており、それらは正確にではないが、ほぼ7PEGユニット、16PEGユニット等に対応する。上記Mnが350のPEGは分子量、即ち、PEGユニットの分布を含んでいる。PDMSオリゴマーについても、同様のことが言える。それらは、ある平均分子量を有するものとして市販されている。ジメチルシロキサンの繰り返しユニット数として付記される如何なる数も、平均値と解釈されるべきである。扱いにくさおよび厳密に言えば不正確な命名を避けるため、上記PEG誘導体は、それらが誘導されるPEGのMnをベースとして、命名する。350PEGからのコハク酸誘導体は、「コハク酸モノ‐PEG(350)エステル」であり、存在する鎖長分布を表示していない、正式な「コハク酸モノ‐(2‐{2‐[2‐(2‐{2‐[2‐(2‐メトキシ‐エトキシ)‐エトキシ]‐エトキシ}‐エトキシ)‐エトキシ]‐エトキシ}‐エチル)エーテル」ではない。
【0121】
コハク酸モノ‐PEG(350)エステル
【化43】

ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(即ち、PEG(350)約7‐PEGユニット、Mn約350g/モル)(20g、57.1ミリモル)を、コハク酸無水物(5.7g、57ミリモル)、メタノール(100mg)およびジメチルアミノピリジン(50mg)と共に、アルゴン雰囲気下、室温で50mLのジクロロメタン中に溶解した。トリエチルアミン(7.9mL、5.7g、57.1ミリモル)を滴下して加えた。上記反応物を室温で一日間攪拌し、次いで1時間還流した。ジクロロメタンで希釈することによって上記反応物を調製し、減圧下で蒸発する前に、2M−HCl、次いでブラインで洗浄して、生成物として透明油を得た(19g、74%)。
H NMR (CDCl) δ 2.55 (s, 4H, C=O−CHCH−C=O), 3.25 (s, 3H, メチル), 3.45 (多重線, 2H), 3.55 (s, 22H, PEGs), 3.60 (多重線, 2H, CHCH−OC=O), 4.15 (多重線, 2H, CH-OC=O)ppm.13C NMR (CDCl) 28.8 & 29.1 (スクシニルメチレン), 58.9 (-OCH), 63.8 & 68.3 (CHCH−OC=O), 70.4 (最大PEGユニット), 71.8 (-CH-O-CH), 172.2 (エステル), 175.0 (酸)ppm
【0122】
コハク酸モノ‐PEG(750)エステル
【化44】

コハク酸モノ‐PEG(750)エステルを、コハク酸モノ‐PEG(350)エステルと同様の方法によって合成した。収率79%。
H NMR (CDCl) δ 2.50 (s, C=O−CHCH−C=O), 3.25 (s, メチル), 3.50 (s, PEGs), 4.10 (多重線, CH−OC=O) ppm. 13C NMR (CDCl) 28.7 および 29.0 (スクシニルメチレン), 58.9 (-OCH), 63.7 および 68.9 (CHCH−OC=O), 70.4 (最大PEGユニット), 71.8 (-CH-O-CH), 172.1 (エステル), 174.4 (酸) ppm
【0123】
コハク酸塩化物モノ‐PEG(350)エステル
【化45】

コハク酸モノ‐PEG(350)エステル(9g、20ミリモル)をアルゴン雰囲気下、室温でジクロロメタン(10mL)中に溶解し、塩化チオニル(3.5mL)を滴下して加え、上記反応物を5日間攪拌し、次いで50〜70℃で2時間加熱した。上記反応物を、60℃で1時間、減圧下で蒸発した。得られた油は、純粋な酸塩化物であった(9.22g、98%)。
H NMR (CDCl) δ 2.55 (t, 2H, CH−C=O−Cl), 3.17 (t, 2H, O−C=O−CH), 3.31 (s, 3H, メチル) 3.50 (多重線, 2H), 3.60 (s, 22H, PEGs), 4.22 (多重線, 2H, CH−OC=O) ppm. 13C NMR (CDCl) 29.3 & 41.7 (スクシニルメチレン), 59.0 (−OCH), 64.2 & 68.9 (CHCH−OC=O), 70.5 (最大PEGユニット), 71.9 (−CH−O−CH), 170.9 (エステル), 172.9 (酸塩化物)ppm
【0124】
コハク酸塩化物モノ‐PEG(750)エステル
【化46】

コハク酸塩化物モノ‐PEG(750)エステルを、コハク酸塩化物モノ‐PEG(350)エステルと同様の方法によって合成した。収率98%。
H NMR (CDCl) δ 2.52 (t, CH−C=O−Cl), 3.03 (t, 2H, O−C=O−CH), 3.16 (s, メチル), 3.34 (小多重線), 3.44 (s, 22H, PEGs), 3.51 (小多重線), 4.06 (多重線, CH−OC=O) ppm
【0125】
スピロオキサジンのナンバリング
【化47】

この部分を、以下、略語「SOX」で表す。
【0126】
実施例を、一部、図面を参照して説明する(実施例8、23および24)。
【0127】
実施例1
9'‐(PEG(350)‐スクシニル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン](PEG(350)‐suc‐SOX)
【化48】

9'‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン](1.95g、5.67ミリモル)およびトリエチルアミン(0.857g、1.18mL、8.5ミリモル)を共にジクロロメタン(30mL)に加え、次いでジクロロメタン中のコハク酸塩化物モノ‐PEG(350)エステル(3.19g、6.8ミリモル)を室温でアルゴン保護下で上記溶液に滴下した。上記反応完了後、ジクロロメタンで希釈し、硫酸マグネシウムで最終乾燥する前に、希釈水酸化ナトリウム、希釈HClおよびブラインで洗浄することによって調製して、暗褐色油(4g)を得、カラムクロマトグラフィによって精製して褐色油を得た。
H NMR (CDCl) δ 1.33 (s,6H,C(CH)), 2.75 (s,3H,N−CH), 2.82 & 2.94 (多重線, 4H, C=O−CHCH−C=O), 3.35 (s,3H,O−CH), 3.53 (多重線, 2H,CH−O−CH), 3.63 (s,PEGユニット), 3.71 (多重線, 2H,CHCHO−C=O), 4.30 (多重線, 2H,CHCHO−C=O), 6.58 (d,J=7.6Hz, 5−H), 6.82−7.27,7.59−7.79, 8.23 (d,H=2.7Hz, 7'−H)ppm.
【0128】
実施例2
9'‐(PEG(750)‐スクシニル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン](PEG(750)‐suc‐SOX)
【化49】

コハク酸塩化物モノ‐PEG(350)エステルの代わりにコハク酸塩化物モノ‐PEG(750)エステルを用いて、9'‐(PEG(350)‐スクシニル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]と同様にして、9'‐(PEG(750)‐スクシニル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]を合成して、76%収率の生成物を得た。H NMRスペクトルは、3.63ppmに上記PEGユニットに対応するより大きな一重線を有することを除いて、9'‐(PEG(350)‐スクシニル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]と同様に見えた。
H NMR (CDCl) δ 1.33 (s,6H,C(CH)), 2.75 (s,3H,N−CH), 2.82 & 2.94 (多重線, 4H, C=O−CHCH−C=O), 3.35 (s,3H,O−CH), 3.53 (多重線, 2H,CH−O−CH), 3.63 (s,PEGユニット), 3.71 (多重線, 2H,CHCHO−C=O), 4.30 (多重線, 2H,CHCHO−C=O), 6.58 (d,J=7.6Hz, 5−H), 6.82−7.27,7.59−7.79, 8.23 (d,H=2.7Hz, 7'−H)ppm.
【0129】
実施例3
パート(a)
5,9'‐ジヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]
【化50】

5‐ジヒドロキシ‐1,2,3,3‐テトラメチルインドリウムヨーダイド(1.65g,5.2ミリモル)をメタノール(10mL)中に溶解し、ブタノール(5mL)およびピペリジンを滴下して加え、上記溶液を静置した。次いで、2,7−ジヒドロキシ−1−ニトロソナフタレン(0.983g)を加え、上記溶液を1時間還流し、次いで室温で一晩攪拌した。上記溶媒を蒸発させ、残渣を色層分析法によって分離して、暗青色の生成物(300mg 17%)を得た。H NMR (DMSO−d) δ 1.20 & 1.27 (s,3H,メチル), 2.57 (s,3H,N−Me), 6.37−6.61 (多重線 芳香族), 6.61-6. 76 (多重線 芳香族), 7.58-7. 98 (多重線 芳香族), 8.80 (ナフチル 芳香族), 9.88 (ナフチル 芳香族) ppm.
【0130】
パート(b)
5,9'‐ジ(PEG (350)‐スクシニル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン](ビスPEG (350)‐suc)‐SOX)
【化51】

2モル当量のコハク酸塩化物モノ‐PEG(350)を用いて、9'‐(PEG(350)‐スクシニル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]と同様にして、5,9'‐ジ(PEG(350)‐スクシニル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]を作製した。上記生成物は褐色油であった(90%
収率)。
H NMR (CDCl) δ 1.00 (s,3H,メチル), 1.13 (s,3H,メチル), 2.38 (s,3H,N−メチル), 2.49 (多重線, 8H,C=O−CHCH−C=O), 3.10 (s,6H,O−CH), 3.40 (s, 約12−14 全PEGユニット + 2×1/2PEGユニット), 4.12 (s, 4H, CHCHO−C=O), 6.18 (d, J=8.2Hz,5−H), 6.73−7.0 (多重線 芳香族), 7.2−7.6 (多重線 芳香族), 8.55 & 8.82 (s, ナフチル 芳香族)ppm.
【0131】
実施例4
ポリ(ジメチルシロキサン)モノカルボン酸デシルクロリド末端
【化52】

ポリ(ジメチルシロキサン)モノカルボン酸デシル(MCR−B11 ABCR Mw ca 1056)(4g,4ミリモル)を10mLのジクロロメタン中に溶解し、塩化チオニル(2mL)を加えて、反応物をアルゴン雰囲気下で一晩加熱した。溶媒および塩化チオニル減圧下での蒸発および緩やかな加熱(40℃)によって反応物を生成して、3.77gの非常にうすい青色の琥珀色の油を得た。
H NMR (CDCl) δ 0.0 (s,Si−Me), 0.45 (m,CH), 0.8 (t, J=約6.6Hz,CH), 1.2 (s,CH), 1.6 (pent,2H,CH−CH−COCl), 2.8 (t, J=7Hz,2H,CH−CH−COCl)
13C NMR (CDCl) δ 0.18,1.05,1.18,1.78,13.8,18.0,18.3,23.2,25.07,25.5,26.4,28.5,29.1,29.4,29.48,33.4,47.1(CH−COCl),173.7(COCl)ppm.
【0132】
実施例5
9’−(PDMS(855)−ウンデシル)−1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−[3H]ナフタ[2,1−b][1,4]オキサジン]
【化53】

9’−ヒドロキシ−1,3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−[3H]ナフタ[2,1−b][1,4]オキサジン](1g,2.9ミリモル)およびトリエチルアミン(0.9mL,655mg,6.5ミリモル)を共にジクロロメタン(20mL)に加え、次いでジクロロメタン中のモノカルボン酸デシルクロリド末端ポリ(ジメチルシロキサン)(3.0g、2.8ミリモル)を室温でアルゴン保護下で上記溶液に滴下して加えた。上記反応をTLC(DCMまたはエーテル:ヘキサン1:1)によって監視し、数時間後完了した。水、ブライン(+エマルジョンを破壊するための少量の希釈HCl)で洗浄し、乾燥(MgSO)することによって上記反応物を生成し、エバポレートすることによって暗色液体を得た。上記油をエーテル:ヘキサン1:3を用いてシリカ上で色層分離して、所望の生成物として、2.1g(52%)の淡褐緑色油を得た。ビニル(末端)基を有し、非常に小さいDMS含量を有する以外は、上記生成物と分光器的に同様の二番目に遅いフラクション(200mg)を得た。
H NMR (アセトン−d) δ=0.09 (d,J=1.8Hz,Si−Me), 0.10 (d,J=1.83Hz,Si−Me), 0.12 (d,J=1.8Hz,Si−Me), 0.13 (s,Si−Me), 0.6 (多重線, 4H,アルキル), 0.90 (多重線, 4H,アルキル), 1.3−1.4 (多重線, 22H,9,10−H,アルキル, CH−CH), 1.50(多重線, 2H,'c−H), 1.80 (pent., J=7.3Hz), 2H,'b’−H), 2.68 (t, J=7.3Hz, 2H,'a'-H), 2.77 (s,3H,8-H), 6.65 (d,J=7.8Hz,7-H), 6.87 (t,J=7.3Hz,5-H), 7.03 (d,J=8.5Hz,5'-H), 7.14 (d,J=7.3Hz,4-H), 7.19 (明瞭なt, 2H,6 & 8'-H), 7.80 (d, J=9.3Hz, 6'-H), 7.82 (s,2'H), 7.86 (d, J=8.6Hz,7'-H), 8.23 (d, J=2.3Hz,10'-H)ppm.
MS (FAB), M+ 1368 (100%) (オリゴマー中の11DMSユニットに相当する), 1145.9 (90%) (オリゴマー中の8DMSユニットに相当する), 1591.4 (85%) (オリゴマー中の14DMSユニットに相当する), 923.6 (オリゴマー中の5DMSユニットに相当する), 1813.5 (オリゴマー中の17DMSユニットに相当する).
4〜19DMSユニットの他のすべてのオノゴマー長さに対するピークも、12DMSユニット付近に中心を有する小さな鐘状曲線分布中に観察される(より小さい他のピークを有する12MDS40%のM+)。

【0133】
実施例6
9'‐((1‐(イソブチル)‐POSS)‐3‐プロピル)‐スクシニル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−[3H]ナフタ[2,1−b][1,4]オキサジン]
【化54】

9‐(モノカルボキシ‐スクシニル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−[3H]ナフタ[2,1−b][1,4]オキサジン](0.62g 1.8ミリモル), ヒドロキシプロピルイソブチル‐POSS(1.58g 1.8ミリモル)、ジメチルアミノピリジン(33mg、0.2ミリモル)をジクロロメタン(15mL)中に溶解し、次いでジクロロメタン中のジシクロヘキシルカルボジイミド(0.4g,1.8ミリモル)を5分間かけて徐々に加えた。TLC分析により出発スピロオキサジンが存在しないことを示すまで、上記溶液をアルゴン雰囲気下で4〜5時間還流した。生成部をTLCにより迅速移動バンドとして同定した(エーテル:ヘキサン1:1 rf約0.8)。ジクンロロメタン(100mLまで)を用いた希釈、冷却および沈澱ジシクロヘキシルウレアを濾過して除去することによって、上記反応物を生成した。上記溶液を水、ブラインを用いて洗浄し、乾燥およびエバポレートして、白色固体を得た。迅速移動明青色バンドが溶離するまで、これをシリカ上で色層分離した(エーテル:ヘキサン1:3)。上記溶媒を回収したバンドからエバポレートして、白色/淡緑色/青色固体(0.86g、37%)を得た。上記カラムをエーテル:ヘキサン(1:1)を用いて溶離して、更に2つのバンドを得た。これらをエバポレートして、べとべとした(smear)非フォトクロミック固体を得た。上記物質を逆相クロマトグラフィによって精製して、結晶状態において光互変性を示す結晶性材料を得た。紫外線光を照射した時に青色に変化した。
MS (IE) 1302 (M+, 100%). δ≠0.65 (14H, dd J 2.19,6.95), 0.75 (2H,t J 8.23), 0.98 (42H, bs), 1.34 (3H,s), 1.36 (3H,s), 1.75−1.97 (9H,m), 2.77 (3H,s), 2.80 (2H,t J 6.40) 3.0 (2H,t J 6.40), 4.12 (2H,t J 6.79), 6.66 (1H, d J 7.68), 6.87 (1H, dd J 0.73,7.32), 7.05 (1H,d J 8.78), 7.15 (1H,d J 7.32), 7.17−7.22 (2H,m), 7.82 (1H, d J 8.78), 7.83 (1H,s), 7.88 (1H, d J 8.78), 8.26 (1H, d J 2.38)ppm.
【0134】
実施例7
フォトクロミック速度を同定するための簡単なスクリーンを以下の通り行った。少量のフォトクロミック化合物をTHF中に溶解して濃度約25ミリモル/mLとした。次いで、この溶液を標準コピー紙(商品名「リフレックス(Reflex)」)上に滴下して、直径約1〜2cmのスポットを提供した。これを乾燥させた。次いで、上記スポットをハンドヘルドのUV光(365nm)を用いて照射し、上記スポットをカラー化し、次いで上記UV光を取り除くと脱色した。出発SOX、比較例1、実施例1および実施例2のスポットを同時に試験すると、従来の染料(出発SOXおよび比較例1)が5分後まだ脱色状態であるのに対して、実施例1および実施例2は15秒未満で明らかに着色した。更に、上記従来の染料は3〜4時間後に疲労しており、約4時間後には着色は観察されなかった。しかしながら、実施例1および実施例2の染料は、疲労することを長期間保護した。通常、光互変性は少なくとも1週間観察された。
【0135】
実施例8
表5における安定状態UV‐可視吸収測定値は、バリアン・ケアリー(Varian Cary)50 UV‐可視分光光度計を用いて得られた。上記装置は試料をインシトゥで励起させることができるが、溶液およびフィルムの吸収における即時の変化の検討はできない。上記キャリー50は、−10〜100℃の操作温度範囲を許容する調温したペルティエ試料ホルダーを装備している。図17は、フォトクロミックポリマー試料の照射および吸収測定用の装置構成である。上記試料を励起させる波長範囲に関して選択するため、多くのフィルターを上記システムに導入することができる。同様に、波長に関して選択するため、単色光分光器を2つのレンズ間に導入することもできる。
【0136】
150Wキセノン・アーク・ランプ(Xenon Arc Lamp)への曝露によって、試料を光励起した。上記励起波長範囲は、2つの光学フィルター、WG320および9863の使用によって、約300〜400nmおよび650nm以上に限定した(図18参照)。上記試料の加熱を低減するのに、水フィルターも用いた。
【0137】
上記フォトクロミック化合物のフィルム(約0.3g/L)を、好適な溶媒中に溶解したポリマーの4w/v%溶液をガラススライド上に注型して、風乾した。フィルムは約100μm厚さであった。
【0138】
フィルム試料を特定の結合構造で分光光度計に装着した(図19参照)。検出器を飽和する散乱励起光を最小限にするため、上記フィルムの面は検出器の方を向いていなかった。他のカットオフ(cut−off)・フィルターを検出器の直前に使用して、更に検出器に到達する散乱UV光を最小限にした。
【0139】
試料は、走査を行う前に各温度で約5分間、熱的に平衡にした。
【0140】
異なるポリマーフィルムにおける数種のフォトクロミック染料の吸光度(A)、退色半減期(t1/2、秒)および退色3/4減期(three quarter life)(t3/4、秒)を表5に示した。t1/2は、UV照射を止めたときから染料の着色した形の初期最大光学濃度から半分だけ光学濃度が減じるのにかかった時間である。t3/4は、UV照射を止めたときから染料の着色した形の初期最大光学濃度から3/4だけ光学濃度が減じるのにかかった時間である。
表5

【化55】

【0141】
オリゴマーおよびマトリックスの選択による上記退色速度の制御の例が、表5に見られる。第3および4行には、それぞれ増加長さを有する極性ポリエチレングリコール(PEG)によって機能性化したスピロオキサジンフォトクロミック染料の退色向上が示されている。実施例2には、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン)およびポリ(カーボネート)の中の第1および2行における参照化合物に対して向上された退色速度が示されている。更に、上記オリゴマー長さが長いほど、3つの全てのポリマーにおいて、実施例2(第4行)が実施例1(第3行)より退色が速くてカプセル化効果が優れる。PEG(350)が約7PEGユニットであるのに対して、PEG(750)は約16PEGユニットを有する。実施例2の場合、退色速度はホストマトリックスとほとんど無関係になっていた。
【0142】
実施例3(表6の第6行)の場合、カプセル化効果がはっきりと見られる。ここで、上記PEG鎖はポリスチレンマトリックスと非相溶性であり、上記フォトクロミック物質に近接して螺旋状に巻くか、または上記フォトクロミック物質をカプセル化するので、ポリ(スチレン)の退色速度はポリ(メチルメタクリレート)よりかなり大きい。上記ポリ(スチレン)の退色速度は、実施例1と同様である。しかしながら、ポリメチルメタクリレートにおいては、実施例3のPEG鎖は上記マトリックスとより相溶性を有し、T1/2退色速度は実施例1のようにかなり低下する。短いアルキル鎖を有するビス‐プロピレート‐SOXもこの効果を示す。ここで、非極性アルキル鎖は極性ポリ(メチルメタクリレート)マトリックスと非相溶性であるが、非極性ポリ(スチレン)とはより良好な相溶性を有し、従って、ポリ(スチレン)においては退色速度が非常に小さい。実施例3およびビス‐プロピル‐SOXの両方は、ポリカーボネート中で非常に小さい退色速度を示す。
【0143】
反応速度曲線
表5のデータを得るのに用いたものとは異なるフィルムを用いて、異なる条件下で、以下の反応速度曲線(図1〜4)を得た。用いた実験構成は、実施例24に記載されている。上記曲線により、フォトクロミック染料に結合した上記PDMSオリゴマーのフォトクロミック染料の退色速度に対する大きな効果を示した。それにより、ポリマーマトリックス中のフォトクロミック染料に対して予め観察されない溶液のような反応速度挙動を提供した。一定最大光学濃度への迅速な着色、次いで照射の中止により迅速な退色を可能とする。同様の効果が、実施例2のPEGオリゴマー(SOX‐suc‐PEG(750))を用いても得られた。上記PEGがいくらか非相溶性を有するマトリックス(即ち、ポリスチレン)中に配置すると、上記PEGは上記フォトクロミック染料を溶媒和するのにより有用であり、迅速な退色が観察される。比較例1(SOX‐プロピレート)は、実施例5(SOX−undec−PDMS(855))および実施例2(SOX−suc−PEG(750))の両方と電子的に同一であり、好適なスイッチング環境を提供するオリゴマーが存在しないため非常に遅い着色および退色速度を示す。
【0144】
以下の曲線(図1〜4)により、それぞれポリ(メチルメタクリレート)およびポリ(スチレン)中の電子的に同一なSOX‐プロピレートおよび出発染料(置換基なし)と比較した、実施例2(SOX−suc−PEG(750))、実施例5(SOX−undec−PDMS(855))の着色および退色性能を示した。それらによって、上記PDMSオリゴマーが上記染料を迅速に着色化し、10秒以内に最大光学濃度を達成することを可能とする。比較例1(SOX‐プロピレート)のような従来の染料(実施例5(SOX‐undec−PDMS(855))とは電子的に同一である)および出発SOX(1,3‐ジヒドロ‐1,3,3‐トリメチル-スピロ[2H‐インドール‐2,3'‐[3H]‐ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン])は、通常、徐々に着色化し、かつ100秒後も着色化し続ける。
【0145】
上記標準化した退色曲線を退色反応速度に統合する。実施例5(SOX‐undec−PDMS(855))は如何なる従来の染料より非常に速く退色し、上記従来の染料が1000秒以上後もまだかなりの吸光度を有するのに対して実際に1分以内に吸光度0.0ではない場合、低くなることは明らかである。
【0146】
上記PDMSは、スイッチング挙動のための移動性の局部的環境を提供している。理論に拘束されようとはしないが、上記マトリックスとの非相溶性により上記染料の近傍または周りに凝集させ、それによりバルクマトリックスの剛性からの保護を提供すると考えられる。これは、すべてのマトリックス中で同一挙動を示す、ポリ(スチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)およびポリ(カーボネート)中で起こる。上記染料の挙動は、溶液中で観察されるものと同一である。それにより、初期の行き過ぎ量を伴う迅速な着色を示し、次いで一定光学濃度に到達し、非減衰反応速度挙動を示し、次いで照射を停止すると迅速な退色を示す。
【0147】
実施例9
5‐(PDMS(855)‐ウンデシル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]
【化56】

9'‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]の代わりの5‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]、カラムクロマトグラフィ(シリカ)、1:20の酢酸エチル:ヘキサン(51%)を用いる9'‐(PDMS(855)-ウンデシル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン](実施例5)の製造方法に従って、5‐(PDMS(855)‐ウンデシル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]を合成した。
H NMR (C2D6O) δ≠0.1 (bs), 0.58 (4H,m), 0.89 (4H,m), 1.21−1.52 (242H,m), 1.72(2H,m), 2.55 (2H,t,J7.31), 2.76 (3H,s), 6.63 (1H,d,J9.14), 6.88 (1H, d, J2.19), 6.92 (1H, d, J2.19), 7.07 (1H,d,J 8.77), 7.42 (1H,dd,J 8.41,1.46), 7.59 (1H,dd, J 8.41,1.46), 7.74−7.88 (3H,m), 8.85 (1H,d,J 8.41)ppm.
13C NMR (C2D6O) δ≠172.8,151.5,146.1,145.6,144.8, 137.8, 131.8, 131.2, 130.4,128.7,127.8,125.0,122.4,121.5,117.5,116.5,107.9,99.8,52.5,34.7,34.2,30.3,30.1,30.0,27.1,26.2,25.7,25.6,24.0,20.9,18.9,18.6,14.2,1.4ppm.
【0148】
実施例10
6'‐シアノ‐5‐(PDMS(855)‐ウンデシル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]
【化57】

9'‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]の代わりの6'‐シアノ‐5‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]、カラムクロマトグラフィ(シリカ)、1:20の酢酸エチル:ヘキサン(68%)を用いる9'‐(PDMS(855)-ウンデシル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン](実施例5)の製造方法に従って、6'‐シアノ‐5‐(PDMS(855)‐ウンデシル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]を合成した。
H NMR (CO) δ=0.11 (bs), 0.60(4H,m), 0.90 (3H,m), 1.24−1.51 (24H,m), 1.72 (2H,m), 2.56 (2H, t, J 7.31), 2.78 (1H,s), 6.65 (1H,d,J 9.5), 6.91(1H,s), 6.94 (1H,s), 7.63−7.83 (3H,m), 8.04 (1H,s), 8.10 (1H,d,J 8.04), 8.71 (1H,d,J 8.04)ppm.
13C NMR (CO) δ=172.8,155.4,145.9,145.8,144.0,137.4,131.5,129.3,127.7,125.5,124.4,123.5,121.7,117.4,116.6,111.8,108.2,100.2,71.7,53.0,34.7,34.3,30.3,30.1,30.1,27.1,26.2,25.7, 25.6, 24.0, 20.9, 18.9, 18.6, 14.2, 1.5 ppm.
【0149】
実施例11
5‐メトキシ‐9'‐(PDMS(855)-ウンデシル)‐
1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]
【化58】

9'‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]の代わりに5‐メトキシ‐9'‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]、カラムクロマトグラフィ(シリカ)、1:20の酢酸エチル:ヘキサン(75%)を用いる9'‐(PDMS(855)-ウンデシル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン](実施例5)の製造方法に従って、5‐メトキシ‐9'‐(PDMS(855)‐ウンデシル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]を合成した。
H NMR (CO) δ=0.10 (bs), 0.59 (4H,m), 0.90 (3H,m), 1.24−1.55 (22h,m), 1.79 (2H,m), 2.69 (3H, s), 2.80 (3H,s), 3.77 (1H,s), 6.57 (1H,d,J 8.77), 6.73 (1H,d,J 2.19), 6.81 (1H,d,J 2.19), 7.04 (1H,d,J 8.77), 7.18 (1H,dd,J 8.77,2.19), 7.77−7.92 (3H,m), 8.22 (1H,d,J 2.19)ppm.
13C NMR (CO) δ=172.5,155.5,151.8,151.0,145.7,142.6,138.2,132.7,130.9,130.2,128.1,123.8,120.5,117.2,113.7,112.7,110.0,108.4,100.1,56.1,52.7,34.8,34.3,30.4,30.2,30.2,27.1,26.3,25.7,24.1,20.9,19.0,18.6,14.2,1.5ppm.
【0150】
実施例12
2‐(9'‐(PDMS(855)‐ウンデシル)オキシ‐エチルエステル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]
【化59】

9'‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]の代わりに、2‐(9'‐オキシエタノール)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン]を用いる9'‐(PDMS(855)-ウンデシル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1‐b][1,4]オキサジン](実施例5)の製造方法に従って、2‐(9'‐(PDMS(855)‐ウンデシル)オキシ‐エチルエステル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]を合成した。
H NMR (CO) δ=0.10 (bs), 0.58 (4H,m), 0.89 (3H,m), 1.24−1.49 (22H,m), 1.78 (2H,m), 2.51 (2H,t,J 7.31), 2.68 (2H,t,J 7.31), 2.77 (3H,s), 6.65 (1H,d,J 7.68), 6.73 (1H,dd,J 1.96), 7.04 (1H,d,J 8.77), 7.10−7.24 (3H,m), 7.75−7.93 (3H,m), 8.23 (1H,d,J 2.56)ppm.
13C NMR (CO) δ=170.3,152.0,151.0,136.7,132.6,130.9,130.2,128.8,128.1,122.3,120.7,120.5,117.2,113.7,108.0,99.7,52.5,34.8,34.2,30.3,30.2,30.1,29.9,29.8,28.7,27.1,26.2,25.8,25.7,24.0,21.0,18.9,18.6,14.8,14.2,1.4ppm.
【0151】
実施例13
5‐メチルカルボキシレート‐6‐(PDMS(855)‐ウンデシル)‐2,2‐ビス(4‐メトキシフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピラン
【化60】

ジクロロメタン(5mL)中のポリ(ジメチルシロキサン)モノカルボキシデシルクロリド(0.78g,7.34×10−4モル)の溶液を、ジクロロメタン(10mL)中の5‐メチルカルボキシレート‐6‐ヒドロキシ‐2,2‐ビス(4‐メトキシフェニル)‐2H‐ナフト[1,2-b]ピラン(0.29g、6.2×10−4モル)およびトリエチルアミン(0.12g、1.22ミリモル)の溶液に徐々に加えた。上記溶液を窒素雰囲気下室温で2時間攪拌した。水(20mL)を加えて、上記溶液を抽出し、ジクロロメタン(3×20mL)、次いで真空下で溶媒を除去し、色層分離して(シリカ、エーテル:ヘキサン/酢酸エチル5:1)、赤色粘性油(0.89g、96%)を得た。
H NMR (CO) δ=0.10 (bs), 0.59 (4H, m), 0.90 (3H, m), 1.34 (24H, m), 1.77 (2H, m), 2.74 (2H, t, J 7.68), 3.75 (6H, s), 3.93 (3H, s), 6.40 (1H, d, J 10.23), 6.95 (1H, d, J 8.77), 7.44 (4H, d, J 8.77), 7.53−7.72 (2H, m) 7.84 (1H, d, J 8.41), 8.41 (1H, d, J 7.68)ppm.
13C NMR (CO) δ=172.2,166.3,160.1,146.7,140.3,137.7,130.2,128.9,128.7,128.5,128.3,127.1,123.5,123.1,121.7,120.9,114.3,83.5,55.5,52.8,34.3,30.4,30.2,30.2,27.1,26.3,25.6,24.1,19.0,18.7,14.3,1.6,1.5ppm.
【0152】
実施例14
5‐メチルカルボキシレート‐6‐(PDMS(855)‐ウンデシル)‐2,2‐(4‐メトキシフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピラン
【化61】

5‐メチルカルボキシレート‐6‐ヒドロキシ‐2,2‐ビス(4‐ジメトキシフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピランの代わりに、5‐メチルカルボキシレート‐6‐ヒドロキシ‐2,2‐(4‐メトキシフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピランを用いる5‐メチルカルボキシレート‐6‐ポリ(ジメチルシロキサン)-ウンデシル‐2,2‐ビス(4‐メトキシフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピラン(実施例13)の製造方法に従って、5‐メチルカルボキシレート‐6‐(PDMS(855)‐ウンデシル)‐2,2‐(4‐メトキシフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピランを合成した。
H NMR (CO) δ=0.09 (bs), 0.58 (4H, m), 0.89 (4H, m), 1.35 (22H, m), 1.77 (2H, m), 2.75 (2H, t, J 7.31), 3.75 (3H, s), 3.93 (3H, s), 6.46 (1H, d, J 10.23), 6.88 (2H, d, J 8.77), 6.99 (1H, d, J 10.23), 7.21−7.42 (3H, m), 7.47 (2H, d, J 8.77), 7.51−7.74 (4H, m), 7.85 (1H, d, J 7.67), 8.45 (1H, d, J 7.67)ppm.
13C NMR (CO) δ=172.2,166.3,160.2,146.7,145.9,140.4,137.4,130.0,129.1,129.0,128.8,128.6,128.4,128.3,127.4,127.1,123.5123.0,121.9,120.9,114.4,114.3,83.6,55.5,52.8,34.3,30.4,30.2,30.2,29.9,27.1,26.2,25.5,24.0,18.9,18.6,14.2,1.5ppm.
【0153】
実施例15
5‐メチルカルボキシレート‐6‐(PDMS(855)‐ウンデシル)‐2,2‐ビス(4‐ジメトキシアミノフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピラン
【化62】

5‐メチルカルボキシレート‐6‐ヒドロキシ‐2,2‐ビス(4‐ジメトキシフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピランの代わりに、5‐メチルカルボキシレート‐6‐ヒドロキシ‐2,2‐ビス(4‐ジメトキシアミノフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピランを用いる5‐メチルカルボキシレート‐6‐ポリ(ジメチルシロキサン)-ウンデシル‐2,2‐ビス(4‐メトキシフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピラン(実施例13)の製造方法に従って、5‐メチルカルボキシレート‐6‐(PDMS(855)‐ウンデシル)‐2,2‐ビス(4‐ジメトキシアミノフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピランを合成した。
H NMR (CO) δ=0.10 (bs), 0.59 (4H, m), 0.89 (3H, m), 1.34 (24H, m), 1.77 (2H, m), 2.73 (2H, t, J 7.31), 2.89 (12H, s), 3.92 (3H, s), 6.33 (1H, d, J 10.05), 6.68 (4H, d, J 8.95), 6.89 (1H, d, J 10.05), 7.32 (4H, d, J 8.95), 7.50−7.69 (2H, m), 8.37 (1H, d, J 8.41) ppm.
13C NMR (CO) δ=172.3,166.5,150.9,147.1,139.9,133.4,130.9,128.5,128.4,128.3,128.2,127.1,123.3,123.1,121.0,120.9,114.3,112.6,84.0,52.8,40.5,34.3,30.4,30.2,30.2,29.9,27.1,26.2,25.5,24.0,18.9,18.6,14.2,1.5ppm.
【0154】
実施例16
5‐(カルボン酸 2‐(PDMS (855)-ウンデシル)‐オキシ‐エチルエステル)‐9‐(ジメチルアミノ)‐2,2‐(4‐ジメチルアミノフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピラン
【化63】

5‐メチルカルボキシレート‐6‐ヒドロキシ‐2,2‐ビス(4‐ジメトキシフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピランの代わりに、5‐(カルボン酸 2‐ヒドロキシ‐エチルエステル)‐9‐(ジメチルアミノ)‐2,2‐(4‐ジメチルアミノフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピランを用いる5‐メチルカルボキシレート‐6‐ポリ(ジメチルシロキサン)-ウンデシル‐2,2‐ビス(4‐メトキシフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピラン(実施例13)の製造方法に従って、5‐(カルボン酸 2‐(PDMS (855)-ウンデシル)‐オキシ‐エチルエステル)‐9‐(ジメチルアミノ)‐2,2‐(4‐ジメチルアミノフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピランを合成した。
H NMR (CO) δ=0.10 (bs), 0.58 (4H, m), 0.88 (3H, m), 1.30 (24H, m), 1.61 (2H, m), 2.36 (2H m), 2.81 (6H, s), 2.87 (6H, s), 4.48 (2H, m), 4.54 (2H, m), 5.73 (1H, s), 6.20 (1H, dd, J 9.87, 2.92), 6.46−6.69 (2H, m), 7.02−7.48 (8H, m), 7.60 (1H, d, J 10.96), 7.74 (1H, d, J 10.23), 8.15 (1H, s)ppm.
【0155】
実施例17
5‐(カルボン酸 2‐(PDMS (855)-ウンデシル)‐オキシ‐エチルエステル)‐9‐(ジメチルアミノ)‐2,2‐ビス(4‐ジメチルアミノフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピラン
【化64】

5‐メチルカルボキシレート‐6‐ヒドロキシ‐2,2‐ビス(4‐ジメトキシフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピランの代わりに、5‐(カルボン酸 2‐ヒドロキシ‐エチルエステル)‐9‐(ジメチルアミノ)‐2,2‐ビス(4‐ジメチルアミノフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピランを用いる5‐メチルカルボキシレート‐6‐ポリ(ジメチルシロキサン)-ウンデシル‐2,2‐ビス(4‐メトキシフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピラン(実施例13)の製造方法に従って、5‐(カルボン酸 2‐(PDMS (855)-ウンデシル)‐オキシ‐エチルエステル)‐9‐(ジメチルアミノ)‐2,2‐(4‐ジメチルアミノフェニル)‐2H‐ナフトール[1,2-b]ピランを合成した。
H NMR (CO) δ(CO)=0.12 (bs), 0.58 (4H, m), 0.91 (3H, m), 1.31 (24H, m), 1.62 (2H, m), 2.35 (2H, m), 2.88 (12H, s), 3.13 (6H, s), 3.92 (3H, s), 4.40−4.59 (4H, m), 6.28 (1H, d, J 10.05), 6.66 (4H, d, J 8.95), 7.23 (1H, dd, J 9.14, 2.56), 7.36 (5H,d, J 10.05), 7.72 (1H, d, J 9.14), 7.90 (1H, s).
13C NMR (CO) δ=173.6,167.4,151.1,150.7,148.1,134.1,130.9,129.9,129.8,128.4,126.1,125.7,122.5,120.2,117.4,116.4,112.6,100.4,82.8,63.2,62.7,41.8,40.5,34.6,34.3,30.4,30.2,27.1,26.2,25.8,24.0,18.9,18.6,14.2,1.4Pppm.
【0156】
実施例18
9'‐(PDMS(1077)プロピル‐エトキシ‐スクシニル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2, 1-b][1,4]オキサジン]
【化65】

実施例6で作製した9'‐(モノカルボキシ‐スクシニル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2, 1-b][1,4]オキサジン(0.6g、1.35ミリモル)をジクロロメタン中に溶解し、次いでモノカルビノール末端ポリジメチルシロキサン(ABCRからのMCR−C12)(1.76g,1.1当量、FW約1180)およびジメチルアミノピリジン(0.135ミリモル、0.1me,16mg)を加えた。次いで、ジクロロメタン中のジシクロヘキシルカルボシイミド(0.306g, 1.1当量, 1.485ミリモル)を滴下して加えた。上記反応物を室温で攪拌した。TLC分析により、1時間後に出発スピロオキサジンとの迅速な反応が観察されないことを示した。上記反応物を濾過およびエバポレートし、次いでヘキサン:エーテル(1:3)を用いてシリカ上で色層分離して、透明な青みの緑色の油を得た。
H NMR (アセトン-d) δ=0.09 (s, Si−Me), 0.5 (多重線, 2H, アルキル) 1.62 (多重線, インドールメチルおよびオリゴマー CH-Si), 1.4-1.8 (多重線, アルキルオリゴマー), 2.77 (s,3H, 8-H), 2.82 (多重線, コハク酸CH), 3.00 (多重線, コハク酸CH), 3.44 (t, J=7.2, 2H,), 3.65 (明白なt, J=ca.5,2H), 4.25 (明白なt, J=ca.5,2H), 6.65 (d, J=7.8,7-H), 6.87 (t,J=7.3,5-H), 7.04 (d, J=8.5,5'-H), 7.14 (d, J=7.3,4-H), 7.22 (明白なt, 2H, 6 & 8'-H), 7.81 (d,J=9.3,6'-H), 7.82 (s, 2'H), 7.88 (d,J=8.6,7'-H), 8.25 (d,J=2.3,10'-H) ppm.


【0157】
実施例19
5,9'‐ジ(PDMS(855)‐ウンデシル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]
【化66】

この化合物を、コハク酸塩化物モノ‐PEG(350)の代わりにポリ(ジメチルシロキサン)モノカルボン酸デシルクロリドを用いる以外は実施例3に記載されているのと同様の方法で製造した。ポリ(ジメチルシロキサン)モノカルボン酸デシルクロリド(実施例4で合成した)を、トリエチルアミンと共に5,9‐ジヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン 2,3‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジンのジクロロメタン溶液に加えた後、上記反応物を約1時間攪拌した。上記反応物を水およびブラインを用いて洗浄することによって調製した。上記ジクロロメタンをエバポレートして、2.5gの粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィ(シリカ、エーテル:ヘキサン 2:1)によって精製して1.4gの褐色油を得た。
H NMR (アセトン-d) δ=0.13 (s, Si−メチル), 0.6(多重線, アルキル), 0.90 (多重線, アルキル), 1.3−1.4 (多重線, ジェム ジメチル基+他の脂肪族化合物) 2.1−2.4 (多重線, アルキル), 2.7 (s, 3H, N−CH), 6.5−7.5 (多重線, 芳香族), 7.5−8.2 (多重線, 芳香族).
相対的にPDMSが多量であるため、フォトクロミック染料のシグナルは非常に小さい。染料のメチル基が、最も明確なシグナルを提供した。
【0158】
実施例20
PDMS(855)‐ウンデシル 2‐(4‐フェニルアゾ‐フェノキシ)エステル
【化67】

4‐フェニルアゾフェノール(0.127g, 0.6ミリモル)を、エーテル(5〜10mL)中に溶解し、トリエチルアミン(0.1mL)を加えた。次いで、ジクロロメタン中に溶解したポリ(ジメチルシロキサン)モノカルボン酸デシルクロリド末端(実施例4で作製した)(0.73g)の溶液を室温で滴下して加えた。上記反応物を室温で2時間攪拌して、TLC(エーテル)によって監視した。上記反応物を、エーテルで希釈し、水、次いでブラインで洗浄することによって調製した。有機層をエバポレートし、エーテルを用いてシリカ上で色層分離して、橙色の油(200mg)を得た。


【0159】
実施例21
9'‐(ステアロイル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]
【化68】

9'‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン](0.405g, 1.2ミリモル)およびトリエチルアミン(0.32mL,234mg, 2.32ミリモル)を共にジクロロメタン(20mL)に加え、ジクロロメタン中の塩化ステアロイル(456mg,1.5ミリモル)を室温でアルゴン保護下で上記溶液に滴下して加えた。上記反応物を1時間攪拌し、TLCによって上記反応が完了したことを示した。水を用いた洗浄、乾燥(MgSO)およびエバポレートによって、上記反応物を調製して、450mgの粗生成物を得た。上記試料を80〜100℃の石油エーテルから再結晶して、300mg(42%)の白色固体を得た。
H NMR (塩化メチレン-d) δ 0.88 (t,3H,'c'-H), 1.28 (s, -CH-), 1.34 (s,メチル), 1.78 (多重線, 2H,'b'), 2.61 (t, J=7.3,'a'), 2.74 (s, 3H, N−メチル), 6.57 (d,J=7.7, 7-H), 6.92 (t,J=7.4,5-H), 7.03 (d,J=8.1,5'-H), 7.09 (d,4-H), 7.10 (dd,J=8.8 & 2.1,8'-H), 7.20 (t of d, J=7.7 & 1.3,6-H), 7.69 (d,J=8.8,6'-H), 7.74 (s,2'-H), 7.77 (d,J=9.0,7'-H), 8.23 (d,J=2.1, 10'-H)ppm.MS(EI):m/z 610.4 (M,60%) 595.4 (15), 329(20), 185(10), 159.1(100), 144.1(15).MS(HR) m/z 610.4134 (C4054 は 610.4134を要する).
【0160】
実施例22
9'‐(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11‐ヘンイコサフルオロ‐1‐ウンデシル‐スクシニル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]
【化69】

【0161】
工程1
5g(9ミリモル)の2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11‐ヘンイコサフルオロ‐1‐ウンデカノール、0.91gのトリエチルアミン、0.90gのコハク酸無水物、50mgのメタノールおよび25mgのDMAPを、60mLのジエチルエーテル/ジクロロメタン(6:1)に加えた。上記反応物を、40℃で一晩攪拌した。次いで、上記生成物を、0.5MのHCl、水および次いでブラインで洗浄し、次いでMgSO4で乾燥した。3.9gのピンク色固体−66%収率であった。
【0162】
工程2
工程1で作製したフッ素化コハク酸4gを70mLのジエチルエーテル/ジクロロメタン溶液(6:1)に加えた。次いで、1.83gの塩化チオニルを滴下して加えた。上記反応物を48時間攪拌し、次いで4時間還流した。最終生成物をロータリーエバポレートして、塩化チオニルを除去して、3.8gの黄色固体を得た。
【0163】
工程3
1.5gの9'‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン](0.405g, 1.2ミリモル)および0.66gのトリエチルアミンを、90mLのジエチルエーテル/ジクロロメタン溶液(5:1)に加えた。次いで、10mLのジエチルエーテル中の3.5gのフッ素化酸塩化物をアルゴン雰囲気下で滴下して加えた。上記反応物を3時間還流した。反応の完了をTLC(3:1 エーテル:ヘキサン)によって確認した。上記反応物を、水、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、ロータリーエバポレートした。最終生成物をカラムクロマトグラフィ(エーテル:ヘキサン 3:1)によって精製して、1.9gの黄色粉体を得た。
H NMR (アセトン-d) δ=1.33 & 1.35 (s, 6H,ジェム ジメチル), 2.77 (s, 3H, N−メチル), 2.85 & 3.05 (多重線,s,4H, コハク酸 水素), 4.90 (t,J=14.3,2H,CHCF), 6.65 (d, J=7.7,1H,7-H), 6.86 (t of d, J=7.4,J=0.7,1H,5-H), 7.04 (d, J=9.0,5'-H), 7.1−7.72 (多重線, 3H, 4-H, 8'-H,6-H), 7.80 (d,J=9.0,6'-H), 7.82 (s,1H,2'-H), 7.88 (d,J=ca 8.7,1H,7'-H), 8.25 (d,J=1.8,10'-H)ppm.
【0164】
比較例 CE1
9'‐プロピオネート‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]
【化70】

ジクロロメタン(50mL)中の9'‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン](91.0g,2.91ミリモル)のマグネットスターラーで攪拌した溶液をトリエチルアミン(0.84mL,0.61g,6.03ミリモル)で処理し、ジクロロメタン(20mL)中の塩化プロピオニル(0.54mL,0.58g,6.27ミリモル)の溶液を滴下して加えた。得られた溶液をN雰囲気下、室温で30分間攪拌した。水(100mL)を加えて、上記溶液をジクロロメタン(3×50mL)で抽出した。真空下での上記溶液の除去、次いでフラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、1:5(酢酸エチル:ヘキサン))によって、緑色固体としての上記表題の化合物(1.11g,95%)を得た。
H NMR (CDCl) δ 1.32 (3H,t,J=7.31), 1.35 (6H,s), 2.57 (2H,q,J=7.31), 2.76 (3H,s), 6.58 (d,J=7.7,1H,7-H), 6.91 (t,J=7.3,1H,5-H), 6.99 (d,J=8.8,5'-H), 7.09 (d,J=7.3,1H,4-H), 7.13 (d of d,J=8.0 & 2.2,1H,8'-H), 7.21 (t of d, J=7.7 & 1.5,1H,6-H), 7.66 (d,J=8.7,6'-H), 7.75 (s,1H,2'-H), 7.73 (d,J=8.7,1H,7'-H), 8.23 (d,J=2.6,10'-H)ppm.
【0165】
比較例 CE2
5‐プロピオネート‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]
【化71】

9'‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン](51%)の代わりに、5‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]を用いる9'‐プロピオネート‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン](比較例CE1)の製造方法に従って、5‐プロピオネート‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]を合成した。
H NMR (CO) δ=1.19 (3H,t,J 7.31), 1.33 (3H,s), 1.38 (3H,s), 2.57 (2H,q,J 7.31), 2.76 (3H,s), 6.64 (1H,d,J 8.77), 6.91 (1H,dd,J 7.31,2.19), 6.93 (1H, s), 7.08 (1H,d,J 8.77), 7.42 (1H,dd,J 8.41,1.46), 7.59 (1H,dd,J 8.41,1.46), 7.75−7.88 (3H,m), 8.57 (1H,d J8.41)ppm.
13C NMR (CO) δ=173.6,151.6,146.1,145.6,144.9,137.8,131.8,131.2,130.4,128.7,127.9,125.0,123.9,122.3,121.5,117.5,116.6,108.0,99.8,52.5,30.0,27.9,25.6,20.8,9.4ppm.
【0166】
比較例 CE3
6'‐シアノ‐5‐プロピオネート‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]
【化72】

9'‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン](51%)の代わりに、6'‐シアノ‐5‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]を用いる9'‐プロピオネート‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン](比較例CE1)の製造方法に従って、6'‐シアノ‐5‐プロピオネート‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]を合成した。
H NMR (CO) δ=1.19 (3H,t,J 7.31), 1.34 (3H,s), 1.39 (3H,s), 2.58 (2H,q,J 7.31), 2.78 (3H, s), 6.66 (1H,d,J 8.95), 6.91 (1H,dd,J 7.31,2.19), 6.95 (1H,s), 7.60-7.82 (3H,m), 8.05 (1H,s), 8.09 (1H,d,J 7.68), 8.70 (1H,d J 7.68) ppm.
13C NMR (CO) δ=173.6,155.5,145.9,144.0,137.5,131.5,129.4,129.3,127.7,127.6,127.6,125.5,124.4,123.4,121.7,117.4,116.6,(1).7,108.2,100.3,53.0,30.0,27.9,25.6,20.8,9.4ppm.
【0167】
比較例 CE4
5‐メトキシ‐9'‐プロピオネート‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]
【化73】

9'‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン](62%)の代わりに、5‐メトキシ‐9'‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]を用いる9'‐プロピオネート‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン](比較例CE1)の製造方法に従って、5‐メトキシ‐9'‐プロピオネート‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]を合成した。
H NMR (CO) δ=1.24 (3H,t,J 7.68), 1.30 (6H,bs), 2.69 (2H,q, J 7.68), 3.80 (3H, s), 6.72−6.93 (3H, m), 7.05 (1H, d, J9.14), 7.19 (1H, dd, J 8.77,2.19), 7.78 (1H,s), 7.79 (1H,d,J 7.68), 8.24 (1H,d,J 2.56) ppm.
13C NMR (CO) δ=173.4,152.2,151.0,146.6,145.7,138.4,136.0,132.7,131.0,130.2,128.1,123.5,121.9,120.5,117.2,115.3,113.7,113.2,100.4,56.4,52.6,32.7,28.1,25.8,20.9,9.4ppm.
【0168】
比較例 CE5
2‐(9'‐プロピオン酸オキシ‐エチルエステル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]
【化74】

9'‐ヒドロキシ‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]の代わりに、2‐(9'‐オキシエタノール)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]を用いる9'‐プロピオネート‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン](比較例CE1)の製造方法に従って、2‐(9'‐プロピオン酸オキシ‐エチルエステル)‐1,3,3‐トリメチルスピロ[インドリン‐2,3'‐[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]を合成した。
H NMR (CO) δ=1.11 (3H, t, J 7.68), 1.33 (3H, s), 1.35 (3H, s), 2.38 (2H, q,J 7.50), 2.77 (3H,s), 4.42 (2H,t,J 4.08), 4.51 (2H,t,J 4.08), 6.65 (1H,d,J 7.68), 6.83−6.93 (2H,m), 7.08 (1H,d,8.97), 7.11−7.23 (2H,m), 7.70 (1H,d,J 8.78), 7.76 (1H,d,J 8.78), 7.80 (1H,s), 7.95 (1H,d,J 1.83) ppm.
【0169】
比較例 CE6
5‐メチルカルボキシレート-6‐プロピオン酸エステル‐2,2‐ビス(4‐メトキシフェニル)‐2H‐ナフト[1,2-b]ピラン
【化75】

ジクロロメタン(10mL)中の5‐メチルカルボキシレート-6‐ヒドロキシ‐2,2‐ビス(4‐ジメトキシフェニル)‐2H‐ナフト[1,2-b]ピラン(0.50g、1.07ミリモル)およびトリエチルアミン(0.24g,2.35ミリモル)の機械的に攪拌した溶液を、ジクロロメタン(10mL)中の塩化プロピオニル(0.19g,2.02ミリモル)の溶液を滴下して処理した。得られた溶液をN雰囲気下室温で30分間攪拌した。水(50mL)を加えて、上記溶液をジクロロメタン(3×50mL)で抽出した。真空下での上記溶媒の除去、次いでカラムクロマトグラフィ(シリカ、溶離液ヘキサン/酢酸エチル 3/1)によって、赤色固体としての上記表題の化合物(0.51g,91%)を得た。
H NMR (CO) δ=1.26 (3H, t, J 7.68), 2.76 (2H, q, J 7.68), 3.72 (6H, s) 3.94 (3H, s), 6.39 (1H, d, J 10.05), 6.88 (2H,d,J 8.77), 6.99 (1H, d, J 10.05, 7.45 (1H, d, J 8.77), 7.51−7.71 (2H,m), 7.88 (1H,d,J 8.41), 8.42 (1H, d, J 7.86) ppm.
13C NMR (CO) δ=173.1,166.4,160.1,146.7,140.4,137.7,130.3,128.9,128.8,128.6,128.3,127.1,123.5,123.0,121.6,120.8,114.4,83.5,55.5,52.9,27.8,9.4ppm.
【0170】
比較例 CE7
5‐メチルカルボキシレート-6‐プロピオン酸エステル‐2,2‐(4‐メトキシフェニル)‐2H‐ナフト[1,2-b]ピラン
【化76】

5‐メチルカルボキシレート-6‐ヒドロキシ‐2,2‐ビス(4‐ジメトキシフェニル)‐2H‐ナフト[1,2-b]ピランの代わりに、5‐メチルカルボキシレート-6‐ヒドロキシ‐2,2‐(4‐ジメトキシフェニル)‐2H‐ナフト[1,2-b]ピランを用いる5‐メチルカルボキシレート-6‐プロピオン酸エステル‐2,2‐ビス(4‐ジメトキシフェニル)‐2H‐ナフト[1,2-b]ピラン(比較例CE6)の製造方法に従って、5‐メチルカルボキシレート-6‐プロピオン酸エステル‐2,2‐(4‐ジメトキシフェニル)‐2H‐ナフト[1,2-b]ピランを合成した。これにより、有機固体(79%)を提供した。
H NMR (CO) δ=1.29 (3H,t,J 7.49), 2.78 (2H, q, J 7.49), 3.68 (3H, s), 3.95 (3H, s), 6.46 (1H,d,J 10.05), 6.88 (2H,d,J 8.77), 7.07 (1H, d, J 10.05), 7.20−7.44(3H,m), 7.51 (2H,d,J 8.77), 7.55−7.71 (4H,m), 7.91 (1H, d, J 8.56), 8.50 (1H, d, J 8.77)ppm.
13C NMR (CO) δ=173.2,166.4,160.2,146.8,146.0,140.6,137.4,130.1,129.2,129.1,129.0,128.7,128.5,128.4,127.5,127.2,123.6,123.1,122.0,120.8,114.5,114.4,83.7,55.6,53.0,27.9,9.6ppm.
【0171】
比較例 CE8
5‐(カルボン酸2‐メチルエステル)‐6‐(ピペリジノ)‐2,2‐(4‐ジメチルアミノフェニル)‐2H‐ナフト[1,2-b]ピラン
【化77】

ジェームスロビンソンミッドナイトグレー(James Robinson Midnight Grey)を供給時のまま使用した。NMRおよび質量スペクトル分析により、上記のような構造が提案された。上記構造が、米国特許第6,387,512号のスペクトルデータおよび情報と最も合致している。
【0172】
比較例 CE9
5‐メチルカルボキシレート-6‐プロピオン酸エステル‐2,2‐ビス(4‐ジメトキシアミノフェニル)‐2H‐ナフト[1,2-b]ピラン
【化78】

5‐メチルカルボキシレート-6‐ヒドロキシ‐2,2‐ビス(4‐ジメトキシフェニル)‐2H‐ナフト[1,2-b]ピランの代わりに、5‐メチルカルボキシレート-6‐ヒドロキシ‐2,2‐(4‐ジメトキシフェニル)‐2H‐ナフト[1,2-b]ピランを用いる5‐メチルカルボキシレート-6‐プロピオン酸エステル‐2,2‐ビス(4‐ジメトキシフェニル)‐2H‐ナフト[1,2-b]ピラン(比較例CE6)の製造方法に従って、5‐メチルカルボキシレート-6‐プロピオン酸エステル‐2,2‐(4‐ジメトキシフェニル)‐2H‐ナフト[1,2-b]ピランを合成した。これにより、淡青色固体(85%)を提供した。
H NMR (CO) δ=1.25 (3H, t, J 7.49), 2.75 (2H, q, J 7.49), 2.88 (12H, s), 3.92 (3H, s),6.33 (1H, d, J 10.05), 6.67 (4H,d,J 6.67), 6.90 (1H, d, J 9.89), 7.33 (4H, d, J 8.95), 7.50−7.68 (2H, m), 7.83 (1H, d, J 7.68), 8.38 (1H, d, J 7.68)ppm.
13C NMR (CO) δ=173.1,166.5,150.9,150.9,147.1,139.9,136.0,133.4,131.0,128.5,128.4,128.2,127.1,123.4,123.1,120.9,114.3,112.6,84.0,52.8,40.5,27.7,9.4
【0173】
比較例 CE10
プロピオン酸4‐フェニルアゾ‐フェニルエステル
【化79】

4‐フェニルアゾフェノール(0.25g,1.26ミリモル)を、エーテル(5〜10mL)中に溶解し、トリエチルアミン(0.26mL)を加えた。次いで、エーテル(1mL)中の塩化プロピル(0.14g 1.5ミリモル)を室温で滴下して加えた。上記混合物を攪拌し、反応を迅速に完了させた。上記反応混合物を水で洗浄し、酸およびブラインで希釈し、硫酸マグネシウムで乾燥した。上記溶媒をエバポレートして、0.23g(72%)の生成物を得た。
H NMR (CDCl) δ=1.16 (3H, t, J=7.7), 2.40 (2H, q J=7.7), 7.25 (2H, m), 7.40−7.58 (3H, m), 7.88−8.0 (4H,m) ppm.
【0174】
実施例23
ナノカプセル化のNMR実験観察
実施例1および実施例5に記載の2つの染料を、NMR分光法により試験して、結合したオリゴマーが、ナノ溶媒和/ナノカプセル化と一致するように、フォトクロミック染料と相互作用しているかどうかを決定した。これは、上記染料を重水素アセトンに溶解し、上記染料をUV光で照射することによって行った。上記染料が着色状態にある間に、ROE(Rotational Overhaysen Enhancement)試験を行った。ROEは、NOE(Nuclear Overhaysen Enhancement)と類似の技術であるが、大きな分子に用いるには改良される。上記技術は、水素の全空間の近接を決定することを可能とする。選択された水素を(放射性周波数で)照射し、他の水素をそれらが強化されたかどうかを見るために観察する。他の水素が十分近接していれば、エネルギーは照射された水素からそこへ輸送される。
【0175】
実施例1のPEGオリゴマーは上記染料の近傍または周りを螺旋状に巻くことがわかった。このことは、第1PEGユニットの第1CH基に照射されたエネルギーが上記分子の反対側のマークした水素に輸送される上記ROE試験(図5の上部スペクトル参照)に示されている。この輸送は、それらの水素によるシグナルの強化によって証明される。これを生じるためには、それらの水素は、照射される水素に近接していなければならない。従って、上記PEGは、溶媒中に失われるよりむしろ、上記染料の近傍または周りを螺旋状に巻いている。明確な形においては、弱い会合が存在する。従って、レンズの環境では上記PEG鎖は同様に染料分子近傍または周りを螺旋状に巻き、好適なスイッチング環境を提供することが予想される。図5の下部の2つのスペクトルは、減法および標準化により得られた溶液中の分子の従来のスペクトルである。
【0176】
同様に、上記PDMSオリゴマーを有する実施例5の染料に関して、上記オリゴマーが上記分子の周りを螺旋状に巻くことが示された(図6および7)。ROE試験では、スピロオキサジンの着色形の中心Hを有するPDMS鎖の中央のメチレンおよび末端基の間でのエネルギー輸送が観察された(図6)。オリゴマーのウンデシル部分の中央メチレンおよびインドールの4位の水素の間でのエネルギー輸送も観察された(図7)。従って、上記PDMS鎖は、上記スピロオキサジンの周りに高い確率で配置されなければならない。明確な形においては、同様に弱い会合が存在する。
【0177】
これらの試験により、上記オリゴマーが上記染料分子の周りに配置されるだけでなく、上記オリゴマーおよび観察された上記染料の遠い方の側の間の相互作用に伴って変化する程度に上記染料の周りを包み、上記PDMSオリゴマーの場合、多数位置の相互作用が存在する。このナノカプセル化は、取り囲むホスト媒体(この場合ホストポリマー)の易動度が非常に小さいポリマーマトリックスの硬質環境ではより大きくなる。
【0178】
実施例24
硬化ポリマーマトリックス中に注型された染料のフォトクロミック挙動
表6には、試験レンズに直接注型された例示染料の退色速度の結果を示した。
【0179】
本発明の多くのフォトクロミック化合物の性能を表するのに用いた標準配合および試験方法を以下に示す。上記試験は、「標準フォトクロミック注型試験」として、本明細書および特許請求の範囲に記載した。
【0180】
モノマーミックスは、ノウリセット(Nouryset)110として知られる16gの2,2’−ビス[4−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、NKエステル9Gとして知られる4gのポリエチレングリコール400ジメタクリレートおよび80mg(0.4%)のAIBNから成る。これを、本明細書中で「モノマーミックスA」と言う。上記染料を上記モノマー中に混合して、小さい成形型中に配置した。上記成形型は、小さいシリコーンまたはバイトンのo−リング(14.5mm内径、幅2.6mm)から成る。これを、顕微鏡のスライドガラスにシアノアクリレート接着剤を用いて接着した。上記モノマーミックスを上記成形型に注入し、別の顕微鏡スライドガラスを上部に載せて、気泡を排除した。上記2つのプレートをクリップで挟んで、試料を75℃で16時間加熱した。上記レンズを再度被覆し、直径14.2mm、厚さ2.6mmおよび重量約0.5gとした。
【0181】
全測定は、実施例8の薄膜観察に関して記載したのと同様に、オーダーメードの光学ベンチ上で行った。上記ベンチは、温度制御用ケアリー・ペルティエ(Cary peltier)付属品を装備したケアリー(Cary)50 Bio UV−可視分光光度計、280Wのサーモオリエル(Thermo−Oriel)キセノンアークランプ、電子シャッター、上記アークランプ用ヒートシンクとして働く水フィルター、スコット(Schott)WG−320カットオフフィルターおよびホヤ(Hoya)U340帯域フィルターから成る。上記溶液試料を石英キュベットに配置し、固体試料をUVランプおよび分光光度計の光路の両方に対して45度の角度に配置した。試料での得られたUV光の電力を、25mW/cm2用のオフル・オプトロニクス・モデル(Ophir Optronics Model)AN/2電力計を用いて測定した。
【0182】
適当な試料を漂白状態に配置し、分光光度計をゼロ吸光度に調節することによって、吸光度変化を測定した。次いで、上記シャッターを開けることによって上記試料を上記キセノンランプからのUV光で照射し、吸光度の変化を測定した。漂白および活性化(着色)状態の両方に関して、吸収スペクトルを記録した。次いで、吸光度極大の波長を記録し、活性および退色の動態を監視するのに用いた。試験レンズ試料を1000秒間UV曝露して活性化した。
【0183】
4:1の2,2’−ビス[4−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパンおよびポリ(エチレングリコール(400)ジメタクリレート)から成るモノマーミックスAの硬化ポリマーマトリックスに注型した染料のフォトクロミック挙動
表6



【0184】
全ての実施例では、ポリジメチルシロキサンオリゴマー、ポリエチレングリコールオリゴマーまたは過フッ素化アルカンオリゴマーの存在により、T1/2またはT3/4によって測定されるような、かなり大きな退色速度が得られることがわかる。T1/2は、UV照射を止めたときから、光学濃度が着色状態の初期最大光学濃度から半分だけ低減するのにかかる時間である。T3/4は、光学濃度が上記染料の着色形の初期最大光学濃度から3/4だけ低減するのにかかる時間である。実施例6(および実施例21)を除くすべての場合、上記オリゴマーを有さない電子的に同一な比較例と比較して、T1/2の低減は40〜95%であり、T3/4の低減は60〜99%である。これらの実施例によって、以下のポイントが説明される。
【0185】
1.比較的大きな置換基、例えばPDMSオリゴマー(1000g mwt)を加えることによって、上記染料を、硬質ポリマーマトリックス中にプロピレート置換基(29g mwt)のみを有する相当する電子的に同一な染料より迅速にスイッチさせることを見出したことは非常に驚くべきことであり、予期せぬことである。[このマトリックスは、フォトクロミック性能を促進するように調整はされていないことに注意。]実施例5は典型的である。比較例1と比べると、実施例5の迅速な着色および行き過ぎ量に注意すべきである(図8および9)。上記染料は、より迅速に退色するだけでなく、同一マトリックス中の比較染料(比較例1)と比べて、それぞれ79%および96%だけ低減されたT1/2およびT3/4を有する大きなマージンによってより迅速に退色する、上記オリゴマーを有する染料(実施例5)と電子的に同一である。
【0186】
2.上記オリゴマーの結合位置によって、染料性能に実質的な差異は生じない。それらはすべて、対応する比較染料より非常に速い。(実施例5、9、13および16並びに対応する比較例の反応速度データを参照)。
【0187】
3.上記オリゴマーおよび染料の間の結合基の性質は、退色速度への明白な影響は与えない。それらはすべて、対応する比較染料より非常に速い。実施例5、12および18並びに対応する比較例の反応速度データを参照。
【0188】
4.上記PDMSオリゴマーおよび結合基は異なるが、比較例1の実施からかなり外れたものを有する実施例5および18に関して、直鎖状PDMSオリゴマーの性質は、退色性能にあまり影響を与えない。
【0189】
5.POSS置換基を有する実施例6は、上記PDMS染料の中でも異なる。上記POSS基は、直鎖状PDMSオリゴマーと比べると、比較的剛直(即ち、高Tg)である。直鎖状PDMSオリゴマーを有する染料が油であるかまたは低融点固体であるのに対して、実施例6は固体である。そのT1/2は比較染料と全く同じであるが、T3/4はかなり速い。これは、大きなPOSS基がその周りに形成する自由体積によるものであると考えられる。実施例6に見られる固体状態の結晶の光互換が生じるこの自由体積のためであると考えられる。
【0190】
6.着色状態への熱的逆反応において退色速度強化を有することをすべて示しているスピロ‐オキサジン(実施例2、5、6、9、10、11、12、18、23)、クロメン(実施例13、14、15、16、17)(図10および11)およびアゾ(実施例20)(図12および13)染料を用いる構造分子再配列を含む如何なるフォトクロミック染料に対しても、スイッチング速度および退色速度を向上する低Tgオリゴマーの概念が特に適用可能である。従って、これが、染料の色を変化させない、退色速度強化用の一般的な「ボルト締め(bolt−on)」溶液である。
【0191】
7.高Tgオリゴマー、例えばステアリル(実施例21)の添加により、より小さな退色速度を得た。このことは、更に高退色速度用低Tgオリゴマーおよび低退色速度用高Tgオリゴマーの必要性についても説明している。
【0192】
8.上記オリゴマーのTgはもしかすると相溶性より重要であるが、相溶性は退色速度に起因する。約16ユニットの長いPEG鎖を有する実施例2は、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレートを含有するモノマーミックスAといくらか相溶性を有することが予想される。しかしながら、実施例5のPDMSほど速くはないが、迅速な退色はなお観察される(図8および9)。
【0193】
9.全体として実施例の反応速度の結果は、染料の電子的性質を変えることなく得ることができるフォトクロミック性能の制御を説明している。このことは、退色速度は大きく変化することができるのに、色の変化が生じないことを意味しているので、非常に重要である。実施例5、比較例1および実施例21の電子的に同一である染料に関して得られた3つの退色速度に注目すべきである。T1/2は3〜32秒(1オーダー)であり、T3/4は7〜441秒(1.5オーダー)である。
【0194】
10.上記染料の電子的性質は、オープン形の観察された色だけでなく、スイッチング速度にも影響を与えることができる。上記オリゴマーは、染料の電子的性質によるものであるスイッチング速度のその部分を変化させることができない。例えば、実施例10は、溶液中でも本質的に低速度スイッチング染料である。上記低Tgオリゴマー(即ち、PDMS)は、できるだけ速くスイッチングすることができる、溶液に似たような(near−solution like)環境を簡単に提供する。実施例9は、実施例10より非常に速くスイッチングする。これは、2つの染料の異なる電子的性質のためである。しかしながら、実施例10は、電子的に同一である比較染料CEより非常に速くスイッチングし、これは上記PDMSオリゴマーの低Tgナノ環境の影響である。
【0195】
オリゴマーの結合の重要性
迅速な退色作用が生じるためには、上記オリゴマーは染料に結合していなければならないことが示された。実施例5および比較例CE1を前述のように別のレンズに注型した。1.1321gのモノマーミックスA中に1.18mgのCE5および1.44mgの10cstPDMSを含有する第3の試験用レンズも作製した。このレンズは、僅かに曇っていた。結合したオリゴマーを有する染料(実施例5)が、迅速な着色および退色を示すことを明らかに示した。これは、低Tgオリゴマーを上記染料に結合する方法論の大きな有効性も説明している。上記染料は、その非常に局在化した低Tg環境から分離することができないため、上記レンズ中ではほとんど存在しないことが必要である。フォトクロミック効果を得るのに、ほんの少量の染料が必要であるので、必然的にほんの少量の染料を上記配合に加える。しかしながら、従来の染料を用いて退色速度を向上するためには、比較的多量の「軟質(soft)」モノマーをバルクホストマトリックスに加えることが必要である。従って、レンズのバルクの力学的特性が低下する。
【0196】
フォトクロミック染料および市販のフォトクロミックレンズの比較
これらの変性フォトクロミック染料の、本技術分野の現状と比較して向上した反応速度性能を図16に示す。実施例9をモノマーミックスA(4:1のノウリセット(Nouryset)110:NKエステル9G)中に注型し、「スペクトラライト・ベロシティ・トランジションズ(Spectralite Velocity Transitionstm)」と比較した。上記フォトクロミック‐PDMS結合の性能が市販のレンズ以上に向上していることは明らかである。実施例9は、点灯消灯サイクルに合致し、サイクル毎にほぼ0.0吸光度に戻る四角形に近い波形性能を示した。上記市販レンズは、鋸歯状応答を示し、それぞれ次の点灯サイクルの前に0.4吸光度(約40%透過率)に戻った。実施例9を含有する上記ホストマトリックスは、上記市販レンズのように、フォトクロミック応答に対しては最適化されていないことに注意すべきである。本発明の化合物は、現存する技術に対して、かなり大きな優位性を示す。
【0197】
実施例25
レンズ試料を実施例1の染料およびパラフィンオイル混合物と130℃で3時間接触させることによって、インビビション試験を行った。次いで、上記レンズを室温まで冷却してから、上記レンズをアセトンで洗浄した。十分な染料が上記レンズ中に分散された時、上記レンズは光互変性を有した。
【0198】
実施例26
(モノマーミックスAおよび適当な染料例から作製した)上記レンズ試料を、加速耐候性条件に曝露し、次いで上記疲労の前後のレンズの色の変化を評価することによって疲労試験を行った。上記耐候性条件は、毎日の生活における上記レンズの実際の着用に等しいものであった。上記レンズ試料の室内での色変化および明暗度変化並びに活性化した色変化および明暗度変化を用いて、上記試料の疲労特性を評価した。実施例13および比較例6から得られた結果を比較することによって、上記PDMS鎖は眼鏡配合物中のフォトクロミック染料の耐疲労性を全く低下させないことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】実施例2、5および比較例1のフォトクロミック染料の吸光度を出発染料と比較するポリメチルメタクリレートマトリックスの薄膜分析である。
【図2】図1の組成の標準化吸光度である。
【図3】ポリスチレンマトリックス中の比較例1、実施例5および実施例2のフォトクロミック染料の時間に対する吸光度を出発染料と比較する薄膜分析のグラフ図である。
【図4】図3の系の標準化吸光度を示す薄膜分析のグラフ図である。
【図5】実施例1に示すROE試験である。
【図6】実施例5の化合物のROE試験である。
【図7】実施例5の化合物のナノ溶媒和/カプセル化の証拠を提供するROE NMR試験である。
【図8】実施例5の化合物の着色および退色速度を示す吸光度のグラフ図である。
【図9】図8に記載した試験の標準化吸光度のグラフ図である。
【図10】実施例16の化合物の着色および退色速度を示す吸光度のグラフ図である。
【図11】図10に記載した試験の標準化吸光度のグラフ図である。
【図12】実施例20の化合物の着色および退色速度を示す吸光度のグラフ図である。
【図13】図12に記載した試験の標準化吸光度のグラフ図である。
【図14】実施例5および比較例3の染料の着色および退色速度を示す吸光度のグラフ図である。
【図15】図14に記載した試験の標準化吸光度のグラフ図である。
【図16】実施例9の染料の着色および退色速度を、製品「Spectralite Velocity Transitions」と比較する吸光度のグラフ図である。
【図17】フォトクロミックポリマー試料の照射および吸収測定用の装置構成である。
【図18】実験用構成に用いたフィルターの透過スペクトルである。
【図19】フィルム用のCary50試料ホルダーおよび実験用構成の上面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス、並びにペンダントオリゴマーを有さないフォトクロミック化合物を含有する対応する組成物と比較すると、フォトクロミックポリマー組成物のかなり変化した退色速度を提供するためのフォトクロミック部分および少なくとも1つのペンダントオリゴマー基を含有する付加物であるフォトクロミック化合物を含有するフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマーマトリックスが、少なくとも50℃のTgを有する請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスが、少なくとも70℃のTgを有する請求項2記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項4】
前記オリゴマーが、少なくとも5つのモノマーユニットを含む請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項5】
前記オリゴマーが、少なくとも7つのモノマーユニットを含む請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項6】
前記フォトクロミック化合物が、式I:
(PC)‐(L(R))
(式中、PCはフォトクロミック部分であり;
Rはオリゴマー鎖であり;
Lは結合または結合基であり;
nは1〜3の整数であり;
mは1〜3の整数である)
を有し;かつ
該オリゴマーR中のモノマーユニット総数が少なくとも5である請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項7】
前記結合基およびオリゴマーが、少なくとも12原子の最長鎖長を共に提供する請求項6記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項8】
前記最長鎖長が、少なくとも15原子である請求項7記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項9】
前記フォトクロミック部分が、
クロメン;
スピロオキサジン;
スピロピラン;
フルギド、フルギミド;
アニル;
ペルイミジンスピロシクロヘキサジエノン;
スチルベン;
チオインジゴイド;
アゾ染料;および
ジアリールエテン;
から成る群から選択される請求項6記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項10】
前記フォトクロミック部分が、ナフトピラン、ベンゾピラン、インデノナフトピラン、フェナントロピラン、スピロ(ベンズインドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)ベンゾピラン、スピロ(インドリン)ナフトピラン、スピロキノピラン、スピロ(インドリン)ピラン、スピロオキサジン、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンズオキサジン、スピロ(ベンズインドリン)ピリドベンズオキサジン、スピロ(ベンズインドリン)ナフトオキサジンおよびスピロ(インドリン)ベンズオキサジンから成る群から選択される請求項9記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項11】
少なくとも1つのペンダントオリゴマー基が、ポリエーテルオリゴマー、ポリアルキレンオリゴマー、ポリフルオロアルキレンオリゴマー、ポリフルオロアルキレニルオキシオリゴマー、ポリジアルキルシリルオキシオリゴマー、ポリ珪酸オリゴマーおよびその誘導体、ポリ(ZSi(OH))オリゴマーおよびその誘導体、ポリ(ZSiCl)オリゴマーおよびその誘導体、ポリ(ZSi(OMe))オリゴマーおよびその混合物(ここで、Zは有機基である)から成る群から選択される請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項12】
Zが、水素、任意に置換されたアルキル、ハロアルキル、任意に置換されたシクロアルキル、ヒドロキシ、任意に置換されたアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、任意に置換されたアリール、カルボキシルおよびそれらの誘導体から成る群から選択される請求項9記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つのオリゴマーが、式Ia:
−(X)p(R)q−R Ia
(式中、Xは酸素、硫黄、アミノ、置換アミノおよびC〜Cアルキレンから選択され;
pは0または1であり;
qはモノマーユニットの数であり;
は、同一であっても異なってもよく、
〜Cアルキレン、例えばエチレン、プロピレンおよびブチレン;
ハロ(C〜Cアルキレン)、例えばパーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレンおよびパーフルオロブチレン;
〜Cアルキレンオキシ;
〜Cハロアルキレンオキシ;
ジ(C〜C10ヒドロカルビル)シリルオキシ;から成る群から選択され;
は、水素、C〜CアルキルおよびC〜Cハロアルキル、ヒドロキシ、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたアリールカルボン酸およびそれらの誘導体から成る群から選択される)
を有する群から選択される請求項4記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項14】
前記オリゴマーが、少なくとも5つのジ(C〜C10ヒドロカルビル)シリルオキシモノマーユニットを含有する請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項15】
前記オリゴマーが、アルキレニルオキシ、パーフルオロアルキレンおよびパーフルオロアルキレニルオキシモノマーユニットから成る群から選択される少なくとも5つのモノマーユニットを含有する請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項16】
前記ポリマーマトリックスが、ポリ(酢酸ビニル);ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート;ポリスチレン;コポリ(スチレン‐メチルメタクリレート);コポリ(スチレン‐アクリロニトライド);ポリ(ビニルブチラール);並びにアルキルカーボネート、多官能性アクリレート、多官能性メタクリレート、アクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ニトロセルロース、酢酪酸セルロース、ビニルアルコール、塩化ビニル、塩化ビニリデンおよびジアシリデンペンタエリスリトールから成る群から選択される1以上のモノマーのポリマー;から成る群から選択される少なくとも1つのポリマーを含有する請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項17】
前記フォトクロミック化合物が、少なくとも部分的に硬化された前記ポリマーマトリックスの表面への適用によって、ポリマーマトリックス中に導入される請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項18】
前記フォトクロミック化合物が、前記ポリマーマトリックスまたは前記ポリマーマトリックスのモノマーおよび/またはプレポリマー前駆体とブレンドされる請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項19】
光学レンズまたはそれらの表面コーティングの形である請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項20】
前記オリゴマーを有さない対応する組成物に比較して、前記退色の半減期が少なくとも20%だけ変化する請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項21】
前記オリゴマーを有さないフォトクロミック化合物を含有する対応する組成物に比較して、前記退色の半減期が少なくとも40%だけ減少する請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項22】
前記フォトクロミック化合物が前記オリゴマーを含有しない対応する組成物に比較して、t3/4が少なくとも40%減少する請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項23】
前記フォトクロミック化合物がフォトクロミック部分および多数のオリゴマーを含有し、該多数のオリゴマーが転位基の各端の少なくとも1つに配置され、それによって該フォトクロミック組成物の退色速度がかなり減少する請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項24】
前記オリゴマーを有さないフォトクロミック化合物を含有する対応する組成物に比較して、少なくとも1つのオリゴマーが、前記フォトクロミック組成物の退色半減期を増加する請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項25】
前記フォトクロミック化合物が、前記ポリマーマトリックスと未反応のままである請求項1記載のフォトクロミックポリマー組成物。
【請求項26】
フォトクロミック部分および少なくとも1つのペンダントオリゴマーを含有する付加物であるフォトクロミック化合物。
【請求項27】
フォトクロミック部分並びにポリエーテルオリゴマー、ポリアルキレンオリゴマー、ポリフルオロアルキレンオリゴマー、ポリ(パーフルオロアルキレングリコール)オリゴマー、ポリジ(C〜C10ヒドロカルビル)シリルオキシオリゴマーおよびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つのペンダントオリゴマー基を含有し、該オリゴマー中のモノマーユニットの総数が少なくとも5であるフォトクロミック化合物。
【請求項28】
式I:
(PC)‐(L(R))
(式中、PCはフォトクロミック部分であり;
Lは結合または結合基であり;
Rはオリゴマー鎖であり;
nは1〜3の整数であり;
mは1〜3の整数である)
を有し;かつ
該オリゴマーR中のモノマーユニット総数が少なくとも5である請求項27記載のフォトクロミック化合物。
【請求項29】
前記結合基LおよびオリゴマーRが、少なくとも12原子の最長鎖長を提供する請求項28記載のフォトクロミック化合物。
【請求項30】
前記最長鎖長が、少なくとも15原子である請求項28記載のフォトクロミック化合物。
【請求項31】
前記フォトクロミック部分(PC)が、クロメン、スピロピラン、スピロオキサジン、フルギド、フルギミド、アニル、ペルイミジンスピロシクロヘキサジエノン、スチルベン、チオインジゴイド、アゾ染料およびジアリールエテンから成る群から選択される請求項26記載のフォトクロミック化合物。
【請求項32】
前記フォトクロミック部分(PC)が、ナフトピラン、ベンゾピラン、インデノナフトピラン、フェナントロピラン、スピロ(ベンズインドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)ベンゾピラン、スピロ(インドリン)ナフトピラン、スピロキノピラン、スピロ(インドリン)ピラン、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンズオキサジン、スピロ(ベンズインドリン)ピリドベンズオキサジン、スピロ(ベンズインドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ベンズオキサジン、フルギドおよびフルギミドから成る群から選択される請求項29記載のフォトクロミック化合物。
【請求項33】
Rが、ポリエーテルオリゴマー、ポリアルキレンオリゴマー、ポリフルオロアルキレンオリゴマー、ポリジアルキルシリルオキシオリゴマー、ポリケイ酸オリゴマー(シリケート)またはその誘導体、ポリ(ZSi(OH))オリゴマーおよびその誘導体、ポリ(ZSiCl)オリゴマーおよびその誘導体、ポリ(ZSi(OMe))オリゴマーおよびその誘導体、並びにそれらの混合物(ここで、Zは有機基である)から成る群から選択されるオリゴマーである請求項26記載のフォトクロミック化合物。
【請求項34】
Zが、水素、任意に置換されたアルキル、ハロアルキル、任意に置換されたシクロアルキル、ヒドロキシ、任意に置換されたアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、任意に置換されたアリール、カルボキシルおよびそれらの誘導体から成る群から選択される請求項33記載のフォトクロミック化合物。
【請求項35】
Rが、ポリエーテルオリゴマー、ポリ(C〜Cフルオロアルキレン)オリゴマーおよびポリ(ジ(C〜C10ヒドロカルビル)シリルオキシ)オリゴマーから成る群から選択されるオリゴマーである請求項26記載のフォトクロミック化合物。
【請求項36】
Rが、式I(a):
−(X)p(R)q−R I(a)
(式中、Xは酸素、硫黄、アミノ、例えばC〜CアルキルアミノおよびC〜Cアルキレン(好ましくはメチレン)から選択され;
pは0または1であり;
qは前記オリゴマー中のモノマーユニットRの数であり、好ましくは少なくとも5であり;
は、同一であっても異なってもよく、
〜Cアルキレン、例えばエチレン、プロピレンおよびブチレン;
ハロ(C〜Cアルキレン)、例えばパーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレンおよびパーフルオロブチレン;
〜Cアルキレンオキシ;
〜Cハロアルキレンオキシ;
ジ(C〜C10ヒドロカルビル)シリルオキシ(ここで、該ヒドロカルビルはアルキル、アリール、アルキル置換アリールまたはアリール置換アルキルであってもよい);から成る群から選択され;かつ
は、水素、C〜CアルキルおよびC〜Cハロアルキル、ヒドロキシ、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたアリールカルボン酸およびそれらの誘導体から成る群から選択される)
を有する基を含有する請求項26記載のフォトクロミック化合物。
【請求項37】
前記オリゴマーRが、以下の式(i)〜(vii):
【化1】


(式中、XおよびRおよびpは前記と同様であり、x、vおよびyは繰り返しユニット数であり、少なくとも1つのオリゴマー基が存在し、モノマーユニット数(上記例示中のxまたはy+v)が少なくとも7である)
から成る群から選択される請求項34記載のフォトクロミック化合物。
【請求項38】
前記オリゴマーRが、IIa〜IIk:
【化2】


【化3】

(式IIa〜IIk中、
Xは、同一であっても異なってもよく、前記と同様であり;
は、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノおよび置換アミノ、例えばアルキルアミノから成る群から選択され;
nは1〜3の整数であり;
wは1〜4の整数であり;
qは0〜15の整数であり;
pは、1つより多く存在する場合、同一であっても異なってもよく、0または1であり;および
(R)は、オリゴマーRの結合用の基を示す)
から選択される式のいずれか1つの結合基によって、フォトクロミック部分(PC)に結合される請求項35記載のフォトクロミック化合物。
【請求項39】
前記フォトクロミック部分(PC)が、クロメン、スピロオキサジン、フルギド、フルギミドおよびアゾ染料から成る群から選択される請求項36記載のフォトクロミック化合物。
【請求項40】
前記フォトクロミック部分(PC)が、
(a)式III:
【化4】

(式中、R、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、それぞれアルキル基、シクロアルキル基、シクロアリールアルキル基、アルコキシ基、アルキレンオキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ、アルコキシカルボニルアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、アルキレンチオアルキル基、アシル基、アシルオキシ基またはアミノ基であり、RおよびRは共に環を形成してもよく、R、RおよびRは、それぞれ任意に置換基を有してもよい)
のスピロオキサジン;
(b)式XX:
【化5】

(式中、BおよびB’は、任意に置換されたフェニルアリールおよびヘテロアリールであり;および
22、R23およびR24は、独立して、水素;ハロゲン;C〜Cアルキル;基L(R);および式COWの基(ここで、WはOR25、NR2627、ピペリジノまたはモルホリノであり、R25はC〜Cアルキル、フェニル、(C〜Cアルキル)フェニル、C〜Cアルコキシフェニル、フェニルC〜Cアルキル、(C〜Cアルコキシ)フェニル、C〜CアルコキシC〜CアルキルおよびL(R)から成る群から選択され;R26およびR27はそれぞれ、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、C〜CアルキルおよびC〜Cアルコキシから選択される1または2の基で置換したフェニル並びに基L(R)から成る群から選択され;R22およびR23は、任意に置換されたベンゼンと任意に縮合した5または6員のカルボキシル環から選択されてもよく、該置換基の少なくとも1つはBおよびB’から成る置換基から選択され、R22、R23、R24、R25、R26およびR27は基L(R)である);から選択される)
のクロメン;
(c)式XXX:
【化6】

(式中、
Qは、任意に置換された芳香族化合物、任意に置換されたヘテロ芳香族化合物(ここで、該芳香族化合物/ヘテロ芳香族化合物は、単環式または多環式の芳香族化合物/ヘテロ芳香族化合物であってもよい)から成る群から選択され;
30は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、フェニル、フェノキシ、モノ‐およびジ(C〜C)アルキル置換フェニルまたはフェン(C〜C)アルキル、から成る群から選択され;
A’は、酸素または=N‐R36から成る群から選択され、R36はC〜Cアルキルまたは任意に置換されたフェニルであり;
34およびR35は、独立して、C〜Cアルキル、フェニルまたはフェン(C〜C)アルキルを表すか、或いはR34およびR35の一方は水素であり、もう一方は前述の基の内の1つであるか、或いはR3435はアダマンチリジン基を表し;
Q、R30、R34、R35およびR36の少なくとも1つは、基L(R)を含有する)
のフルギドおよびフルギミド;
および
(d)式XL:
【化7】

(式中、
40およびR41は、独立して、水素;C〜Cアルキル;C〜Cアルコキシ;‐NR4243(ここで、R42およびR43は、R26およびR27と同様である);アリール(例えばフェニル)、C〜CアルキルおよびC〜Cアルコキシから選択される1以上の置換基で置換したアリール、置換基がアリールおよびC〜Cアルコキシから選択される置換C〜Cアルキル、置換基がC〜Cアルコキシアリールおよびアリールオキシから選択される置換C〜Cアルコキシから選択される)
のアゾ染料;
から成る群から選択される請求項37記載のフォトクロミック化合物。
【請求項41】
標準フォトクロミック注型試験における化合物の退色半減期が、前記オリゴマーを含有しない対応するフォトクロミック化合物に比較して、少なくとも20%異なる請求項26記載のフォトクロミック化合物。
【請求項42】
前記退色半減期が、前記オリゴマーを含有しない対応するフォトクロミック化合物に比較して、少なくとも40%だけ減少する請求項40記載のフォトクロミック化合物。
【請求項43】
前記化合物が、任意に結合基を含有する、フォトクロミック部分の、プリフォームオリゴマーとの反応によって生成される請求項26記載のフォトクロミック化合物。
【請求項44】
前記化合物が、フォトクロミック部分で開始されたリビング重合によるオリゴマー鎖の生長により生成される請求項26記載のフォトクロミック化合物。
【請求項45】
請求項27記載のフォトクロミック化合物を含むフォトクロミック物品。
【請求項46】
光学レンズ、フェースシールド、ゴーグル、バイザー、カメラレンズ、ウィンドウ、自動車両のフロントガラス、航空機および自動車両のトランスペアレンシー、プラスチックフィルムおよびシート、布地およびコーティング、およびインクから選択される請求項45記載のフォトクロミック物品。
【請求項47】
フォトクロミック部分をオリゴマーと反応させて、フォトクロミック部分および少なくとも1つのペンダントオリゴマーを含有する付加物であるフォトクロミック化合物を提供する工程を含むフォトクロミック化合物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公表番号】特表2006−505684(P2006−505684A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502075(P2005−502075)
【出願日】平成15年11月3日(2003.11.3)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001453
【国際公開番号】WO2004/041961
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(505166764)ポリマーズ・オーストラリア・プロプライエタリー・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】POLYMERS AUSTRALIA PTY LIMITED
【Fターム(参考)】