説明

フォトマスクの製造方法およびプラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】フォトマスクの製造で、基板のそり事前に測定し、そり量に応じたパターンを作成し、高精度なパターン作成を実現する。
【解決手段】上記目的のため、本発明のフォトマスクの製造方法は、ガラスを基板の主材料としたフォトマスクの製造方法において、前記基板のそり量を測定した後に、前記そり量に応じたフォトマスクのパターンを選択して形成することを特徴とする。ここで、基板のそり量が基準値に対して100μm以上変化する毎に、パターンの幅を1μm〜5μm細く変更することが望ましい。また、本発明のPDPの製造方法はこれらのフォトマスクを用いた製造法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィ工程に用いるフォトマスクの製造方法および当該フォトマスクを用いたプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPとする)として代表的な交流面放電型パネルは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。前面板は、ガラス製の前面基板と、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対と、それらを覆う誘電体層および保護層を有する。背面板は、ガラス製の背面基板と、データ電極と、それを覆う誘電体層と、隔壁と、蛍光体層とを有する。そして、表示電極対とデータ電極とが立体交差するように前面板と背面板とが対向配置されて密封され、内部の放電空間には放電ガスが封入されている。ここで表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成される。このように構成されたPDPの各放電セル内でガス放電を発生させ、赤、緑、青各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0003】
走査電極および維持電極のそれぞれは、例えば幅の広いストライプ状の透明電極の上に幅の狭いストライプ状のバス電極を積層して形成されている。透明電極は、例えばスパッタ法等を用いて前面基板上に形成されたITO薄膜を、フォトリソグラフ法等によりストライプ状にパターニングして形成する。またバス電極は、透明電極上に銀ペーストをストライプ状に印刷し焼成して形成する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−156168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォトマスクの製造プロセスにおいて、マスク検査時にそり測定を行い、そり量が規格値を越える場合、マスクを再度作成することが必要であった。また、そり量を細かく限定すると、フォトマスク用材料が高価になり製造費用が増加するという課題があった。また、そり量によって、パターン幅のばらつきが生じ、精度向上の課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために本発明は、ガラスを基板の主材料としたフォトマスクの製造方法において、基板のそり量を測定した後に、そり量に応じたフォトマスクのパターンを選択して形成することを特徴とする。ここで、基板のそり量が基準値に対して100μm以上変化する毎に、パターンの幅を1μm〜5μm細く変更することが望ましい。また、本発明のPDPの製造方法はこれらのフォトマスクを用いた製造法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フォトマスクの製造ロスを抑え、かつフォトマスク描画パターンを精度良く製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態のフォトマスクの製造プロセスの説明図
【図2】フォトマスクそり量の発生頻度分布を示す図
【図3】本発明の実施形態におけるPDPの分解斜視図
【図4】本発明の実施形態における前面板構成図
【図5】本発明の実施形態における背面板構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態におけるフォトマスクの製造方法について、図面を用いて説明する。図1は本発明の実施形態におけるフォトマスク製造プロセスのフローチャートを示した図である。このように、材料加工、表面研磨、遮光膜形成、レジスト膜形成、レジストレーザー描画、現像、検査・出荷の順で行われる。
【0010】
従来技術では、出荷時に描画パターンの検査を行っているが、本発明の実施形態では、表面研磨の後にそり量を測定し、描画するパターンの選択を行う工程を有していることを特徴としている。
【0011】
従来技術では、出荷前において、そり量の測定を行っているため、そり量が大きい場合、再度パターン描画を修正する製造ロスが発生していた。これに対して、本発明の実施形態では、事前にそり量を測定し、その測定結果に応じたフォトマスクのパターンを選択して作成する。
【0012】
図2はガラスを主材料とした基板のそり量とその発生頻度の関係を示した図である。このように、そり量の分布については、大きなばらつきをもって分布している。また本発明の実施形態において、そり量の測定は基板を直立させてレーザー変位形によって、測定することとする。これにより、基板の変位方向に対して自重による作用を無視できるようになり、精度良くそり量を測定することが可能である。
【0013】
また、本発明の実施形態では、基準値に対してそり量が200μm、望ましくは100μm以上変化する毎に応じて、フォトマスクのパターン幅を材料毎に変更することとしている。
【0014】
例えば、PDP前面板の電極パターンでは、そり量100μmに対して、電極線幅が1μm変化する。そのため、パターン設計線幅を100μm以上のそり量が計測されるに従い、上記電極幅に相当する描画を1μm細く設計する。これにより、PDP製造時には電極幅が一定になる。ただし、この変化量は材料によって、異なるため、一意的に決まるわけではなく最適値が存在する。
【0015】
以下、本発明の実施形態でのフォトマスクを使用したプラズマディスプレイパネルの製造方法を説明する。
【0016】
図3は、本発明の実施形態1におけるPDPの構造を示す分解斜視図である。PDP10は、前面板20と背面板30とを対向配置し、周辺部を封着部材(図示せず)を用いて封着することにより構成されており、内部に多数の放電セルが形成されている。
【0017】
前面板20は、ガラス製の前面基板21と、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24と、ブラックストライプ25と、誘電体層26と、保護層27とを有する。前面基板21上には1対の走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が互いに平行に複数形成されている。そして隣り合う表示電極対24の間にはブラックストライプ25が形成されている。図3には表示電極対24とブラックストライプ25とが、走査電極22、維持電極23、ブラックストライプ25、走査電極22、維持電極23、ブラックストライプ25、・・・となるように形成されている図を示した。しかし表示電極対24とブラックストライプ25とが、走査電極22、維持電極23、ブラックストライプ25、維持電極23、走査電極22、ブラックストライプ25、走査電極22、維持電極23、ブラックストライプ25、維持電極23、走査電極22、ブラックストライプ25、・・・となるように形成されていてもよい。
【0018】
そしてそれら表示電極対24およびブラックストライプ25を覆うように誘電体層26が形成され、誘電体層26上に保護層27が形成されている。
【0019】
背面板30は、ガラス製の背面基板31と、データ電極32と、誘電体層33と、隔壁34と、蛍光体層35とを有する。背面基板31上には、複数のデータ電極32が互いに平行に形成されている。そしてデータ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成され、誘電体層33の表面と隔壁34の側面とに赤、緑、青各色の蛍光体層35が形成されている。
【0020】
そして、表示電極対24とデータ電極32とが立体交差するように前面板20と背面板30とが対向配置され、表示電極対24とデータ電極32とが対向する部分に放電セルが形成される。放電セルが形成された画像表示領域の外側の位置で、低融点ガラスを用いて前面板20と背面板30とが封着され、内部の放電空間には放電ガスが封入されている。
【0021】
次にPDP10の製造方法について説明する。図4は、本発明の実施形態におけるPDP10の前面板20の製造方法を説明するための図である。
【0022】
前面板20を製造するには、まず透明電極(図示せず)が形成されたガラス製の前面基板21をアルカリ洗浄する。その後、酸化ルテニウムや黒色顔料を主成分とする黒色層用ペーストを用いて、黒色層22c、23cの前駆体22cx、23cx、およびブラックストライプ25の前駆体25xを前面基板21上に形成する。これら前駆体22cx、23cx、25xはスクリーン印刷法によって全面塗布したペースト層を、上記本発明の実施形態におけるフォトマスクを用い、フォトリソグラフィ工程にて形成する。その後、同様の手法により、銀を含む導電層用ペーストを用いて前駆体22cx、23cxの上に導電層22d、23dの前駆体22dx、23dxを形成する(図4(a))。
【0023】
次に、前駆体22cx、23cx、25x、22dx、23dxが形成された前面基板21を焼成して、バス電極22a、23a、ブラックストライプ25を形成する。このときの焼成のピーク温度は550〜600℃が望ましく、本実施形態においては580℃である。またバス電極22a、23aの厚みは、1μm〜6μmが望ましく、本実施形態においては4μmである(図4(b))。
【0024】
次に、走査電極22、維持電極23およびブラックストライプ25が形成された前面基板21上に、印刷法等の公知技術により、誘電体層の前駆体を形成する。そして誘電体層の前駆体を焼成して、厚み20μm〜50μmの誘電体層26を形成する。
【0025】
本実施形態においては、酸化硼素35wt%、酸化硅素1.4wt%、酸化亜鉛27.6wt%、酸化物バリウム3.3wt%、酸化ビスマス25wt%、酸化アルミニウム1.1wt%、酸化モリブデン4.0wt%、酸化タングステン3.0wt%を含んだ誘電体ガラスを含む誘電体ペーストを作成した。このようにして作成された誘電体ガラスの軟化点は約570℃である。次に走査電極22、維持電極23およびブラックストライプ25が生成された前面基板21上にダイコート法により誘電体ペーストを塗布して誘電体層の前駆体を形成した。そして誘電体層の前駆体を約590℃で焼成して誘電体層26を形成した。このときの誘電体層26の厚みは約40μmである。
【0026】
なお、誘電体ペーストとしては、上記以外にも、例えば、酸化硼素、酸化硅素、酸化亜鉛、アルカリ土類酸化物、アルカリ金属酸化物、酸化ビスマス、酸化アルミニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化セリウム等の中からいくつかを含んだ軟化点520℃〜590℃の誘電体ガラスを含む誘電体ペーストを用いることができる。
【0027】
そして誘電体層26の上に、酸化マグネシウムを主成分とする保護層27を、真空蒸着法等の公知技術により形成する(図4(c))。
【0028】
次に背面板30の製造方法について説明する。まず、スクリーン印刷法と本発明の実施形態によるフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程により、背面基板31上に、銀を主成分とする導電層用ペーストを一定間隔でストライプ状に塗布し、データ電極32の前駆体32xを形成する(図5(a))。
【0029】
次に、前駆体32xが形成された背面基板31を焼成して、データ電極32を形成する。データ電極32の厚みは、例えば2〜10μmである(図5(b))。
【0030】
続いて、データ電極32を形成した背面基板31上に誘電体ペーストを塗布し、この後焼成して誘電体層33を形成する。誘電体層33の厚みは、例えば約5〜15μmである(図5(c))。
【0031】
続いて、誘電体層33を形成した背面基板31上に感光性の誘電体ペーストを塗布した後、焼成して隔壁34の前駆体を形成する。その後、本発明の実施形態によるフォトマスクを用いて感光し、エッチングして隔壁34を形成する。隔壁34の高さは、例えば100〜150μmである(図5(d))。
【0032】
そして、隔壁34の壁面および誘電体層33の表面に、赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体のいずれかを含む蛍光体インクを塗布する。そののち乾燥、焼成して蛍光体層35を形成する(図5(e))。
【0033】
そして上述した前面板20と背面板30とを、表示電極対24とデータ電極32とが立体交差するように対向配置し、放電セルが形成された画像表示領域の外側の位置で低融点ガラスを用いて封着する。その後、内部の放電空間にキセノンを含む放電ガスを封入して、PDP10が完成する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、フォトマスクの製造ロスを抑え、かつフォトマスク描画パターンを精度良く製造することが可能となる点で、産業上有用である。
【符号の説明】
【0035】
10 PDP
20 前面板
21 前面基板
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
25 ブラックストライプ
26 誘電体層
27 保護層
30 背面板
31 背面基板
32 データ電極
33 誘電体層
34 隔壁
35 蛍光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスを基板の主材料としたフォトマスクの製造方法において、前記基板のそり量を測定した後に、前記そり量に応じたフォトマスクのパターンを選択して形成することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項2】
前記基板のそり量が基準値に対して100μm以上変化する毎に、前記パターンの幅を1μm〜5μm細く変更することを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項3】
請求項1から2のいずれかに記載のフォトマスクを用いてフォトリソグラフィ工程を行うことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−81183(P2011−81183A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233298(P2009−233298)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】