説明

フォトマスク及び露光装置

【課題】露光機内のマスクステージにマスクを装着した状態でフォトマスク上の異物の有無を検査することができるフォトマスク及び露光装置を提供する。
【解決手段】フォトマスク1のマスク基板10の表面に、マスク基板10の表面上を伝搬する弾性表面波を発生させる弾性表面波素子20Aと、弾性表面波を受信する弾性表面波素子20Bとを設け、当該弾性表面波によって半導体回路パターン41の異物の有無を検出する。このとき、フォトマスク1を露光機100のマスクステージ103に載置した状態で異物検査を行う。また、弾性表面波素子20A,20Bをマスク基板10上に複数組設ければ、半導体回路パターン41の異物の位置を特定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク及び露光装置に関し、特にペリクル膜を備えるフォトマスク及び当該フォトマスクに形成された電子回路パターンを基板に転写するための露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体向けやLCD(Liquid Crystal Display:液晶表示装置)向けのフォトマスクにおいて、マスク表面に形成された電子回路パターン上に微小な粒子等の異物や汚れが付着していると、リソグラフィ法と呼ばれる露光転写において回路の断線などの問題が発生する。この問題に対して、光学的な結像焦点の原理を利用したペリクルと呼ばれる保護手段が用いられ、広く採用されている。
ペリクル付きフォトマスクとしては、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、ペリクル膜を保持し、該ペリクル膜とフォトマスク基板との間を封じるペリクルフレームの上端面及び下端面のうち少なくとも一つの端面の全周に、連続して凹状の溝を設けるものである。これにより、ペリクル膜と膜接着剤との接着力を向上させ、ペリクル膜内の局所的なシワやパーティクルの発生を防止する。
【0003】
ところで、ペリクル付きフォトマスクは、その構造上、ペリクルフレームの高さによってマスク表面からの距離が物理的に生じる。そのため、ペリクル付きフォトマスクのマスク表面の検査は、非接触手段に制限される。また、非接触とする光学的手段の場合でも焦点距離またはワークディスタンスによりマスク表面への接近が制限される。したがって、一旦ペリクルを撤去し、検査後に再度ペリクルを貼り直すなどの作業を要し、ペリクル付きフォトマスクにおける検査には制約があった。
【0004】
そこで、露光機の一部に検査機を併設し、ペリクル付きフォトマスクのマスク表面の異物を検査するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。上記検査機は、マスクの面上に一側から検査用のレーザー光を照射し、レーザー光がマスク表面上の異物に照射されて生じた散乱光を受光することで異物の有無および位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4358683号明細書
【特許文献2】特開2001−159613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載の従来技術にあっては、搬送アームによってマスクを収納部からマスクステージへ搬送する途中で検査機に移送し、異物検査を行った後にマスクをマスクステージに搭載する構成であり、マスクステージにマスクを搭載した状態で異物を検査することはできない。このように、異物検査のための移送工程が必要であり、効率的ではない。
そこで、本発明は、露光機内のマスクステージにマスクを装着した状態でペリクル付きフォトマスクの異物検査を行うことができるフォトマスク及び露光装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係るフォトマスクは、転写用パターンが形成されたマスク基板と、前記マスク基板の表面と所定間隔をおいて張設されたペリクル膜と、前記ペリクル膜を保持し、当該ペリクル膜と前記マスク基板との間を封じるペリクルフレームと、を備えるフォトマスクであって、前記マスク基板の表面に、弾性表面波を励起し当該マスク基板の表面上を伝搬させる第1櫛歯電極と、前記第1櫛歯電極によって励起された弾性表面波を受信し該弾性表面波に応じた信号を出力する第2櫛歯電極とを対向配置した弾性表面波素子を備えることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に係るフォトマスクは、請求項1に係る発明において、前記弾性表面波素子は、前記マスク基板の表面における前記ペリクルフレームで区画された領域内に設置されていることを特徴としている。
さらに、請求項3に係るフォトマスクは、請求項1又は2に係る発明において、前記マスク基板の表面における前記ペリクルフレームで区画された領域外に、前記弾性表面波素子の入出力端子を設置することを特徴としている。
また、請求項4に係るフォトマスクは、請求項1〜3の何れかに係る発明において、前記弾性表面波素子を、前記マスク基板の表面に複数備えることを特徴としている。
【0009】
さらにまた、請求項5に係る露光装置は、露光光を照射する露光光源と、前記露光光源からの露光光を受ける位置に配置され、前記請求項1〜4の何れか係るフォトマスクを載置するためのフォトマスク台と、前記フォトマスクを前記フォトマスク台に載置した状態で、前記弾性表面波素子を駆動する駆動手段と、前記駆動手段で前記弾性表面波素子を駆動したときに前記弾性表面波素子が出力する信号に基づいて、前記マスク基板の表面上の異物検査を行う異物検査手段と、を備えることを特徴としている。
また、請求項6に係る露光装置は、請求項5に係る発明において、前記フォトマスク台は、真空環境に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明よれば、マスク表面上を伝搬する弾性表面波によって、マスク表面上の異物の有無を検査することができる。このように、マスク表面の異物検査に、マスク表面に設けた弾性表面波素子を用いるので、異物検査環境の制限がない。したがって、例えば、露光装置のマスクステージ上にマスクを装着した状態などでも、異物検査が可能となる。
【0011】
また、請求項2に係る発明によれば、弾性表面波素子をペリクルフレームで区画された領域内に設けるので、ペリクル装着状態で異物検査を行うことができる。そのため、一旦ペリクルを撤去し、検査後に再度ペリクルを張り直すなどの作業が不要となる。また、非接触の光学的手段を用いて異物検査を行う場合のように、焦点距離やワークディスタンスなどの制約がない。
さらに、請求項3に係る発明によれば、弾性表面波素子の入出力端子をペリクルフレームで区画された領域外に設けるので、ペリクル装着状態で容易に弾性表面波素子を駆動させることができる。
【0012】
また、請求項4に係る発明によれば、弾性表面波素子をマスク表面上に複数設けるので、マスク表面上の異物の位置を特定することができる。
さらにまた、請求項5に係る発明によれば、マスクステージにマスクを装着した状態で異物検査を行うので、従来のように異物検査機にマスクを移送する行程を別途設ける必要がなく、効率が良い。
また、請求項6に係る発明によれば、マスクステージを真空環境に設けるので、異物の侵入を抑制した環境で異物検査及び露光転写を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態におけるフォトマスク1の構造を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態におけるフォトマスク1の構造を示す平面図である。
【図3】第2の実施形態のフォトマスク1及び異物検査部の構造を示す図である。
【図4】CPU81で実行するマップ作成処理手順を示すフローチャートである。
【図5】CPU81で実行する異物検査処理手順を示すフローチャートである。
【図6】異物発生位置の特定方法を説明するための図である。
【図7】第3の実施形態の露光機100及び異物検査ユニット200を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明に係るフォトマスクは、半導体やLCD等の露光工程で使用されるフォトマスクであり、レチクルなどを含むものとする。
(第1の実施形態)
(構成)
図1は、本発明におけるフォトマスクの構造を示す断面図である。また、図2は、本発明におけるフォトマスクの構造を示す平面図である。
図中、符号1はフォトマスクである。フォトマスク1は、マスク基板(石英基板)10とペリクル50とを備える。ペリクル50は、ペリクル膜51と、ペリクルフレーム52と、絶縁性粘着剤53とで構成する。
【0015】
マスク母材であるマスク基板10上には、露光時に転写される半導体回路パターン(転写用パターン)41が形成されている。マスク基板10の半導体回路パターン41が形成された面(パターン面)には、ペリクルフレーム52を絶縁性粘着剤53によって接合する。また、ペリクルフレーム52のパターン面とは反対側には、ペリクル膜51を設ける。
すなわち、ペリクル膜51は、マスク基板10のパターン面とペリクルフレーム52の高さに相当する間隔をおいて張設されている。また、ペリクルフレーム52は、ペリクル膜51を保持すると共に、ペリクル膜51とマスク基板10との間を封じる構成となっている。
【0016】
また、マスク基板10上には、弾性表面波素子20A及び20Bを備える。弾性表面波素子20Aは、マスク基板10の表面上を伝搬する弾性表面波を発生させる送信側の素子である。弾性表面波素子20Bは、弾性表面波素子20Aからマスク基板10の表面上を伝搬した弾性表面波を受信する受信側の素子である。これら弾性表面波素子20A及び20Bを1組として扱う。なお、弾性表面波素子20Aと弾性表面波素子20Bとは同一構造を有する。
【0017】
弾性表面波素子20A及び20Bは、それぞれ圧電基板21と、櫛歯電極22とを含む。圧電基板21は、タンタリウム酸リチウム単結晶やニオブ酸リチウム単結晶などで形成する。櫛歯電極22は、アルミニウムなどの電気導電性金属で形成した公知のIDT(Inter Degital Transducer)電極構造を有する。 弾性表面波素子20Aの櫛歯電極(第1櫛歯電極)22には電極23(電極23A及び電極23B)が接続されており、弾性表面波素子20Bの櫛歯電極22(第2櫛歯電極)には電極24(電極24A及び電極24B)が接続されている。弾性表面波素子20A,20Bにおける櫛歯電極22は、それぞれ櫛歯電極22Aと櫛歯電極22Bとで構成されており、圧電基板20上に櫛歯電極22A,22Bが互いの電極が噛み合うように対向して配置されている。
【0018】
そして、弾性表面波素子20Aにおける櫛歯電極22Aに電極23Aを接続し、櫛歯電極22Bに電極23Bを接続する。同様に、弾性表面波素子20Bにおける櫛歯電極22Aに電極24Aを接続し、櫛歯電極22Bに電極24Bを接続する。
この電極23から弾性表面波素子20Aへの電気信号供給を行い、電極24から弾性表面波素子20Bの電気信号出力を得るようになっている。つまり、電極23及び24は、弾性表面波素子20A及び20Bの入出力端子として機能する。電極23には、電源60から信号線61を介して電気信号が印加される。
【0019】
ペリクル50は、弾性表面波素子20Aと電極23との境界と、弾性表面波素子20Bと電極24との境界とに、ペリクルフレーム52が位置するように配置する。すなわち、マスク基板10表面において、ペリクルフレーム52によって区画された領域内に弾性表面波素子20A及び20Bを配置し、ペリクルフレーム52によって区画された領域外に弾性表面波素子20A及び20Bの入出力端子である電極23及び24を配置する。
【0020】
また、半導体回路パターン41は、弾性表面波素子20Aと弾性表面波素子20Bとの間に配置する。すなわち、弾性表面波素子20Aの櫛歯電極22と弾性表面波素子20Bの櫛歯電極22とを、弾性表面波が伝搬する伝搬領域を挟んで対向配置し、その伝搬領域内に半導体回路パターン41が配置されるようにする。
このような構成により、電極23から弾性表面波素子20Aの櫛歯電極22に高周波電力を印加すると、弾性表面波素子20Aの櫛歯電極22A,22B間に電界が発生し、弾性表面波が励起する。この弾性表面波は弾性表面波素子20Aからマスク基板10の表面上を伝搬して弾性表面波素子20Bに到達する。すると、弾性表面波素子20Bの櫛歯電極22により、この弾性表面波が電気信号に変換される。このようにして得られた電気信号出力に基づいて、半導体回路パターン41上に存在する異物Dを検知可能となっている。
【0021】
なお、図2では、半導体回路パターン41をマスク基板10の一領域に図示しているが、マスクは一般的に金属や金属化合物やその酸化物の薄膜を単層もしくは多層を必要とされる光学特性に応じて一様にスパッタリング法などで遮光層40を堆積成膜し、これを加工して半導体回路パターン41を形成する。弾性表面波素子20A,20Bや電極23,24は周囲との絶縁性を必要とすることから、これらを設ける部分は絶縁領域42とする。(動作)
【0022】
次に、第1の実施形態の動作について説明する。
先ず、電源60から信号線61を介して電極23A、23Bへ電極周期長に相当する周波数を有する電気信号(電力)を印加する。すると、圧電効果により、弾性表面波素子20Aの櫛歯電極22A、22B間に互いに逆位相の歪が生じ、弾性表面波が励起される。この弾性表面波は、図1及び図2の矢印で示す方向に、マスク基板10及び半導体パターン41の表面上を伝搬する。
【0023】
マスク基板10を伝搬する弾性表面波のうち、受信側素子である弾性表面波素子20Bの櫛歯電極22の示す電極周期長に等しい波長の弾性表面波のみが、弾性表面波素子20Bの櫛歯電極22A、22Bに歪をきたし、当該歪によって励起された電荷が電極24A、24Bを介して電気信号として取り出される。
このとき、弾性表面波のマスク基板10表面上の矢印で示す伝搬経路上に異物Dが存在すると、その振幅の減衰や異物の物質密度に伴う位相変化が生じる。つまり、受信側素子からは、結果として異物Dが存在しない場合とは異なる電気信号が得られる。したがって、得られた電気信号により異物Dの有無が検知できる。
【0024】
一般に、ペリクルは、マスク表面に異物などの汚れが無い状態を確認した後でマスク表面に装着される。ペリクル付きフォトマスクへの異物検査は、その構造上、ペリクルフレームの高さによってマスク表面からの距離が物理的に生じるため、非接触手段に制限される。非接触とする光学的手段の場合でも、焦点距離またはワークディスタンスによりマスク表面への接近が制限される。そのため、一旦ペリクルを撤去し、検査後に再度ペリクルを貼り直すなど、ペリクル付きフォトマスクにおける検査には制約があった。
これに対して、本実施形態では、マスク表面の異物検査を、マスク表面に設けた弾性表面波素子を用いて行うので、ペリクル付きフォトマスクの異物検査を適切に行うことができる。
【0025】
(効果)
このように、第1の実施形態では、マスク基板の表面に、マスク基板の表面上を伝搬する弾性表面波を発生させると共にこれを受信可能な弾性表面波素子を備えるので、当該弾性表面波によってマスク表面上の異物の有無を検査することができる。
また、弾性表面波素子をマスク基板の表面のペリクルフレームで区画された領域内に設けるので、ペリクルをマスク基板に装着した状態で異物検査を行うことができる。したがって、一旦ペリクルを撤去し、異物検査後に再度ペリクルを貼り直すなどの作業が不要となる。
さらに、弾性表面波素子の入出力端子をマスク基板の表面のペリクルフレームで区画された領域外に設けるので、ペリクルをマスク基板に装着した状態で確実に弾性表面波素子を駆動させることができる。
【0026】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態は、前述した第1の実施形態において、マスク基板上に弾性表面波素子を1組のみ設置しているのに対し、マスク基板上に複数組の弾性表面波素子を設置し、半導体回路パターン上に発生した異物の位置を特定可能とするようにしたものである。
【0027】
(構成)
図3は、第2の実施形態のフォトマスク1及びフォトマスク1の異物検査部の構造を示す図である。この図3では、平面視におけるフォトマスク1を示している。
図3に示すように、複数組の弾性表面波素子20A,20Bを、X,Y方向にそれぞれ設置する。ここでは、X,Y方向にそれぞれn組の弾性表面波素子20A,20Bを設置した場合について説明する。なお、弾性表面波素子20A,20Bの組数は、X方向とY方向とで異なる数としてもよい。
【0028】
Y方向に並設した電極23にはスイッチアレイ63を接続し、Y方向に並設した電極24にはスイッチアレイ64を接続する。スイッチアレイ63はn個のスイッチYi1〜Yinで構成され、スイッチアレイ64はn個のスイッチYo1〜Yonで構成されている。各スイッチはCPU81によって個別にオン/オフ制御される。スイッチアレイ63のスイッチをオン/オフすることで電極23と電源60との間の信号線を導通/切断し、スイッチアレイ64のスイッチをオン/オフすることで電極24と後述するY増幅器68との間の信号線を導通/切断する。
【0029】
同様に、X方向に並設した電極23にはスイッチアレイ65を接続し、X方向に並設した電極24にはスイッチアレイ66を接続する。スイッチアレイ65はn個のスイッチXi1〜Xinで構成され、スイッチアレイ66はn個のスイッチXo1〜Xonで構成されている。各スイッチはCPU81によって個別にオン/オフ制御される。スイッチアレイ65のスイッチをオン/オフすることで電極23と電源60との間の信号線を導通/切断し、スイッチアレイ66のスイッチをオン/オフすることで電極24と後述するX増幅器67との間の信号線を導通/切断する。
【0030】
CPU81は、スイッチアレイ63〜66のオン/オフ制御指令に加えて、電源60への電力供給指令、X増幅器67及びY増幅器68への電流増幅指令を出力する。また、このCPU81には、半導体回路パターン41上の異物検査を行った結果(異物付着の有無)等を表示する表示器82と、上記異物検査における処理結果等を記憶するメモリ83A,83Bが接続されている。
【0031】
スイッチアレイ63〜66、電源60、X増幅器67、Y増幅器68、X検波器69、Y検波器70、CPU81、表示器82、メモリ83A及びメモリ83Bでフォトマスク1の異物検査部を構成している。
図4は、CPU81で実行するマップ作成処理手順を示すフローチャートである。
この異物検査処理では、先ずステップS1で、CPU81は、カウント値Nを初期値=1にセットし、ステップS2に移行する。
【0032】
ステップS2では、CPU81は、カウント値Nに応じて、スイッチアレイ65のスイッチXiNとスイッチアレイ66のスイッチXoNとをオン状態とし、ステップS3に移行する。
ステップS3では、CPU81は、電源60に対して電力供給指令を出力しステップS4に移行する。これにより、電源60から供給された電気信号(電力)が前記ステップS2でオン状態としたスイッチXiNを介して当該スイッチXiNに接続された電極23に印加される。
【0033】
ステップS4では、CPU81は、X増幅器67に対して電流増幅指令を出力する。これにより、前記ステップS2でオン状態としたスイッチXoNを介して当該スイッチXoNに接続された電極24に発生した電流を増幅する。増幅した電流はX検波器69で受信し、その後A/Dコンバータ91で信号レベルを階調化した数値に変換する。このとき、CPU81は、A/Dコンバータ91から出力する数値データを取得する。
【0034】
次に、ステップS5では、CPU81は、前記ステップS4で取得したA/Dコンバータ91からの出力データをメモリ83Aに蓄積する。また、このとき、CPU81は、カウント値Nに応じて、スイッチアレイ65のスイッチXiNとスイッチアレイ66のスイッチXoNとをオフ状態とする。
次に、ステップS6では、CPU81は、カウント値NをインクリメントしてからステップS7に移行し、このステップS7でカウント値Nがスイッチアレイ65に設けたスイッチXiの数nを超えたか否かを判定する。そして、N≦nである場合には前記ステップS2に移行し、N>nである場合にはステップS8に移行する。
【0035】
ステップS8では、CPU81は、カウント値Nを初期値=1にセットし、ステップS9に移行する。
ステップS9では、CPU81は、カウント値Nに応じて、スイッチアレイ63のスイッチYiNとスイッチアレイ64のスイッチYoNとをオン状態とし、ステップS10に移行する。
【0036】
ステップS10では、CPU81は、電源60に対して電力供給指令を出力しステップS11に移行する。これにより、電源60から供給された電気信号(電力)が前記ステップS9でオン状態としたスイッチYiNを介して当該スイッチYiNに接続された電極23に印加される。
ステップS11では、CPU81は、Y増幅器68に対して電流増幅指令を出力する。これにより、前記ステップS9でオン状態としたスイッチYoNを介して当該スイッチYoNに接続された電極24に発生した電流を増幅する。増幅した電流はY検波器70で受信し、その後A/Dコンバータ92で信号レベルを階調化した数値に変換する。このとき、CPU81は、A/Dコンバータ92から出力する数値データを取得する。
【0037】
次に、ステップS12では、CPU81は、前記ステップS11で取得したA/Dコンバータ92からの出力データをメモリ83Aに蓄積する。また、このとき、CPU81は、カウント値Nに応じて、スイッチアレイ63のスイッチYiNとスイッチアレイ64のスイッチYoNとをオフ状態とする。
次に、ステップS13では、CPU81は、カウント値NをインクリメントしてからステップS14に移行し、このステップS14でカウント値Nがスイッチアレイ63に設けたスイッチYiの数nを超えたか否かを判定する。そして、N≦nである場合には前記ステップS9に移行し、N>nである場合にはステップS15に移行する。
【0038】
ステップS15では、CPU81は、メモリ83Aに蓄積されたA/Dコンバータ91及び92で階調化した信号レベルを、X,Yマップに展開し、これをメモリ83Aに格納してからマップ作成処理を終了する。
CPU81は、図4に示すマップ作成処理を、ある一定期間を経てマスク検査を所望する時期に再度実行する。このとき、前記ステップS5及びS12では、データをメモリ83Bに蓄積する。また、前記ステップS15では、メモリ83Bに蓄積されたA/Dコンバータ91及び92で階調化した信号レベルを、X,Yマップに展開し、これをメモリ83Bに格納する。
【0039】
上述したマップ作成処理を実行することでメモリ83A及び83BにX,Yマップが格納されると、CPU81は図5に示す異物検査処理を実行する。
この異物検査処理では、ステップS21で、CPU81は、メモリ83Aに格納された図6(a)に示すX,Yマップを読み出し、ステップS22に移行する。
ステップS22では、CPU81は、メモリ83Bに格納された図6(b)に示すX,Yマップを読み出し、ステップS23に移行する。
【0040】
ステップS23では、CPU81は、前記ステップS21で取得したメモリ83AのX,Yマップと、前記ステップS22で取得したメモリ83BのX,Yマップとの差分を計算し、図6(c)に示す差分マップCを作成する。
そして、ステップS24に移行して、CPU81は、前記ステップS23で作成した差分マップCをもとに異物の有無判断を行って異物検査処理を終了する。ここでは、差分マップCにおいてゼロ以外を示す座標が存在するか否かを確認し、ゼロ以外を示した座標から半導体回路パターン41上で欠陥が発生した位置を特定する。
【0041】
(動作)
次に、第2の実施形態の動作について説明する。
先ず、CPU81は、信号線72を介してオン/オフ制御指令を出力することで、スイッチアレイ65の1組目のスイッチXi1及びスイッチアレイ66の1組目のスイッチXo1をオン状態とする(図4のステップS2)。続いてCPU81は、電源60に対して電力供給指令を出力する(ステップS3)。このとき、スイッチXi1に接続された1組目の弾性表面波素子20Aが発振し、弾性表面波が対向する1組目の弾性表面波素子20Bに到達して、電荷が発生する。
【0042】
すると、CPU81は、信号線71を介してX増幅器67へ電流増幅指令を出力し、スイッチアレイ66の1組目のスイッチXo1に接続された弾性表面波素子20Bの電極24に発生した電流を増幅する(ステップS4)。増幅した電流はX検波器69で受信される。その受信した信号は、A/Dコンバータ91で信号レベルを階調化した数値に変換される。CPU81は、これをメモリ83Aに蓄積する(ステップS5)。また、CPU81は、信号線72を介してオン/オフ制御指令を出力することで、スイッチアレイ65の1組目のスイッチXi1及びスイッチアレイ66の1組目のスイッチXo1をオフ状態とする。
【0043】
次に、CPU81は、信号線72を介してオン/オフ制御指令を出力することで、スイッチアレイ65の2組目のスイッチXi1及びスイッチアレイ66の2組目のスイッチXo1をオン状態とする(ステップS2)。そして、上記1組目の動作と同様に、電源60から電力を供給することで2組目の弾性表面波素子20Aを発振させ、弾性表面波を対向する2組目の弾性表面波素子20Bに伝搬させる(ステップS3)。このとき発生した電流をX増幅器67、X検波器69及びA/Dコンバータ91で信号処理し(ステップS4)、その結果をメモリ83Aに蓄積する(ステップS5)。
【0044】
以上の動作をn組目のスイッチXinに至るまで繰り返し実行する。また、Y方向に関しても同様に、Yi1からYinに至るまで上記の動作を繰り返し実行する(ステップS9〜S12)。そして、CPU81は、メモリ83Aに蓄積されたデータをもとに図6(a)に示すX,Yマップを作成し、これをメモリ83Aに格納する(ステップS15)。
その後、ある一定期間を経たとき、CPU81は図4のマップ作成処理を再度実行する。その際にも、先ずX方向について1組目からn組目まで順次弾性表面波素子20Aを発振し、励起された弾性表面波を対向する1組目からn組目までの弾性表面波素子20Bへ順次伝搬する。そして、そのときA/Dコンバータ91から得られた信号レベルをメモリ83Bに蓄積していく。
【0045】
次に、Y方向についても同様に、1組目からn組目まで順次弾性表面波素子20Aを発振し、励起された弾性表面波を対向する1組目からn組目までの弾性表面波素子20Bへ順次伝搬する。そして、そのときA/Dコンバータ92から得られた信号レベルをメモリ83Bに蓄積していく。そして、メモリ83Bに蓄積された上記データをもとに図6(b)に示すX,Yマップを作成し、これをメモリ83Bに格納する。
【0046】
すると、CPU81は、メモリ83Aとメモリ83Bとにそれぞれ格納されたX,Yマップを読み出し(図5のステップS21,S22)、各X,Yマップの差分を計算して差分マップCを作成する(ステップS23)。このとき、例えば、半導体回路パターン41上に異物等の欠陥が発生していない場合には、メモリ83Aに格納されたX,Yマップと、メモリ83Bに格納されたX,Yマップとは同一であり、差分マップCはすべての座標においてゼロとなる。
一方、半導体回路パターン41上に異物等の欠陥が発生している場合、差分マップCでゼロ以外を示す座標が確認される。したがって、その座標から欠陥が発生した位置を特定できる(ステップS24)。
【0047】
(効果)
このように、第2の実施形態では、弾性表面波素子をマスク基板上に複数組設置する。このとき、弾性表面波の伝搬方向が互いに直交する2方向となるように、弾性表面波素子をX方向とY方向とに並設するので、半導体回路パターン上に異物等の欠陥が発生している場合には、その位置を確実に特定することができる。
【0048】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
この第3の実施形態は、フォトマスク1の異物検査ユニットを露光機に搭載し、露光機のマスクステージにフォトマスク1を載置した状態で異物検査を行えるようにしたものである。
【0049】
(構成)
図7は、第3の実施形態の露光機100及び異物検査ユニット200を示す構成図である。
この図7に示すように、露光機100は、光源101と、集光光学系102と、マスクステージ103と、投影光学系104と、ウェハステージ105と、を含んで構成される。
光源101は、露光光を集光光学系102に対して照射する。この光源101としては、例えば波長257nmのKrFレーザー、193nmのArFレーザー、157nmのF2レーザー,13.5nmのEUV放射光源などを用いることができる。
【0050】
集光光学系102は、光源101の下方に配置され、光源101から照射された露光光が入射するようになっている。この集光光学系102は、光源101から照射された露光光を集光し、マスクステージ103が把持したフォトマスク1に照射する。
マスクステージ103の下方には投影光学系104を配置し、投影光学系104の下方にはウェハステージ105を配置する。ウェハステージ105には、ウェハが載置される。フォトマスク1を経た光は、投影光学系104によりウェハに、例えば4分の1で縮小投影される。
マスクステージ103の一部には前述したスイッチアレイ63〜66を形成する。これらスイッチアレイ63〜66は、フォトマスク1をマスクステージ103に載置した際に、フォトマスク1上のX,Y方向にそれぞれ配置された弾性表面波素子20A及び20Bの電極23及び24に、それぞれ接続可能となっている。
【0051】
異物検査ユニット200は、露光機100外部に設けられており、電源供給線及び信号線によって露光機100と接続されている。この異物検査ユニット200は、電源60、X増幅器67、Y増幅器68、X検波器69、Y検波器70、CPU81、表示器82、メモリ83A,83Bを備え、これらの構成は前述した第2の実施形態における異物検査部の各手段の構成と同一である。
なお、光源101が露光光源に対応し、マスクステージ103がフォトマスク台に対応し、スイッチアレイ63〜66が駆動手段に対応し、図4及び図5の処理が異物検査手段に対応している。
【0052】
(動作)
次に、第3の実施形態について説明する。
先ず、露光機100のマスクステージ103にフォトマスク1を載置する。次に、ウェハステージ105にウェハを載置し、露光を開始する。ここでは、光源101から露光光を照射することで、フォトマスク1に形成された半導体回路パターン41をウェハに転写する。
【0053】
このとき、フォトマスク1をマスクステージ103に載置した状態で、CPU81は、図4に示すマップ作成処理および図5に示す異物検査処理を実行する。これにより、上述した差分マップCを得て、異物付着の有無を判断すると共に異物が付着している場合にはその位置を特定し、その結果を表示器82に表示する。
なお、弾性表面波は大気中のみならず、真空中でもマスク基板10表面上を伝搬する。したがって、フォトマスク1が真空環境に保持される波長13.5nmを用いたEUV露光機中でも使用が可能である。
【0054】
ところで、本来、マスク表面には、異物などの欠陥が無いことを確認してからペリクルを装着するので、露光転写の際に半導体などにはマスク表面上の異物に起因する欠陥が発生しない。しかしながら、ペリクルの装着前にペリクルフレーム内側に付着していた異物がスキャンないしステップ露光時のマスクステージ運動に伴う加速度によって脱離することで欠陥が発生したり、近年では“くもり”ないし“ヘイズ(Haze)”と呼ばれる成長性欠陥が新たにマスク面に発生したりする現象が認められている。
【0055】
このようなマスク使用時において発生した異物等は、シリコンウエハに露光転写された半導体回路の断線で発見される場合が多い。
本実施形態では、露光機100のマスクステージ103にフォトマスク1を装着した状態でペリクルフレーム52内部の半導体回路パターン41上に発生した異物を検査することができるので、上記のように半導体回路の断線が発生する前に異物が有ることを検知し、適切に対処することができる。
【0056】
(効果)
このように、第3の実施形態では、露光機のマスクステージにフォトマスクを載置した状態で異物検査を行うことが可能である。そのため、一連の露光転写動作において異物検査を行うことができる。そのため、従来のように、フォトマスクをマスクステージとは異なる検査スペースに移送し、異物検査を行ってからフォトマスクをマスクステージに載置して露光転写を行う必要がなく、効率化が図れる。
また、真空環境にマスクステージを設置した露光機においても、マスクステージにフォトマスクを載置した状態で異物検査を行うことができるので、異物の侵入を抑制した状態で異物検査及び露光転写を行うことができる。
【0057】
(変形例)
なお、上記第3の実施形態においては、異物検査ユニット200を露光機100の外部に設ける場合について説明したが、露光機100の内部にその一機能として包含することもできる。
また、上記第3の実施形態においては、露光機100は、フォトマスク1を透過する屈折光学系とした構造とする場合について説明したが、反射系の構造とすることもできる。
【符号の説明】
【0058】
1…フォトマスク、10…マスク基板、20A,20B…弾性表面波素子、21…圧電基板、22(22A,22B)…櫛歯電極、23(23A,23B)…電極(入力側)、24(24A,24B)…電極(出力側)、40…遮光層、41…半導体回路パターン、42…絶縁領域、50…ペリクル、51…ペリクル膜、52…ペリクルフレーム、53…絶縁性粘着剤、60…電源、61…信号線、63〜66…スイッチアレイ、67…X増幅器、68…Y増幅器、69…X検波器、70…Y検波器、71,72…信号線、81…CPU、82…表示器、91…A/D変換器、92…A/D変換器、100…露光機、101…光源、102…集光光学系、103…マスクステージ、104…投影光学系、105…ウェハ、200…異物検査ユニット、D…異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写用パターンが形成されたマスク基板と、前記マスク基板の表面と所定間隔をおいて張設されたペリクル膜と、前記ペリクル膜を保持し、当該ペリクル膜と前記マスク基板との間を封じるペリクルフレームと、を備えるフォトマスクであって、
前記マスク基板の表面に、弾性表面波を励起し当該マスク基板の表面上を伝搬させる第1櫛歯電極と、前記第1櫛歯電極によって励起された弾性表面波を受信し該弾性表面波に応じた信号を出力する第2櫛歯電極とを対向配置した弾性表面波素子を備えることを特徴とするフォトマスク。
【請求項2】
前記弾性表面波素子は、前記マスク基板の表面における前記ペリクルフレームで区画された領域内に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスク。
【請求項3】
前記マスク基板の表面における前記ペリクルフレームで区画された領域外に、前記弾性表面波素子の入出力端子を設置することを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトマスク。
【請求項4】
前記弾性表面波素子を、前記マスク基板の表面に複数備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のフォトマスク。
【請求項5】
露光光を照射する露光光源と、
前記露光光源からの露光光を受ける位置に配置され、前記請求項1〜4の何れか1項に記載のフォトマスクを載置するためのフォトマスク台と、
前記フォトマスクを前記フォトマスク台に載置した状態で、前記弾性表面波素子を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段で前記弾性表面波素子を駆動したときに前記弾性表面波素子が出力する信号に基づいて、前記マスク基板の表面上の異物検査を行う異物検査手段と、を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項6】
前記フォトマスク台は、真空環境に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−197288(P2011−197288A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62957(P2010−62957)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】