説明

フッ素化されたフルオレン誘導体およびその製造方法

【課題】有機エレクトロニクス材料、高分子機能材料、医薬、及び農薬といった広い分野で利用が期待されるフッ素化されたフルオレン誘導体を提供し、さらに、フッ素化されたフルオレン誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明により、フルオレン構造を有するフルオレン誘導体の有機化合物において、前記フルオレン環の1, 3, 4, 5, 6, 8位がフッ素で置換された構成単位を有する前記有機化合物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】
本発明は、有機エレクトロニクス材料、高分子機能材料、医薬、及び農薬といった広い分野で利用が期待されるフッ素化されたフルオレン誘導体、及びフッ素化されたフルオレン誘導体の製造法に関する。
【背景技術】
【0003】
これまでにフッ素化されたフルオレン化合物では、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタフルオロフルオレノンおよび1,2,3,4,5,6,7,8-オクタフルオロフルオレン(非特許文献1)、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタフルオロ-9-(ペンタフルオロフェニル)-9H-フルオレン(非特許文献2)、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタフルオロ-9-(2,4-トリフルオロメチルフェニル)-9H-フルオレン(特許文献1、非特許文献3)などが報告されている。
【0004】
しかし、前述の従来知られているフッ素化されたフルオレン化合物は、フルオレン骨格の9位に置換基を有するものであり、2,7-位置換フッ素化フルオレン誘導体、および2, 7’ - 位置換フッ素化フルオレン誘導体を構成単位に有する有機化合物の合成は困難である。
【特許文献1】EP1013675
【非特許文献1】J. Org. Chem., 1980, 45, 1290-1295
【非特許文献2】J. Fluorine. Chem., 1977, 9, 321-325
【非特許文献3】J. Organomet. Chem., 2005, 690, 4886-4898
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、フッ素化されたフルオレン誘導体を提供し、さらに、フッ素化されたフルオレン誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の要旨は以下の(I)〜(IV)に存する。
(I)フルオレン環構造を有するフルオレン誘導体の有機化合物において、前記フルオレン環の1, 3, 4, 5, 6, 8位がフッ素で置換された一般式(1)で表される構成単位を含有するものであることを特徴とするフルオレン誘導体の有機化合物:
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、R、R、RおよびRは、水素原子、置換または無置換のC1−20アルキル基、置換または無置換のC1−20フルオロアルキル基(当該フルオロアルキル基は、1またはそれ以上のフッ素原子を含んでいてもよい)、置換または無置換のC3−20シクロアルキル基、置換または無置換のトリ(C1−20アルキル)シリル基、置換または無置換のC1−20アルコキシ基、置換または無置換のC1−20アルキルチオ基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のアリールチオ基、置換または無置換のアリールC1−20アルキル基、置換または無置換のアリールC1−20アルコキシ基、置換または無置換のアリールC1−20アルキルチオ基、置換または無置換のC2−20アルケニル基、置換または無置換のC3−20シクロアルケニル基、置換または無置換のC2−20アルキニル基、置換または無置換のC7−20アラルキル基、置換または無置換のアミノ基、置換または無置換のN−C1−20アルキルアミド基、置換または無置換のC1−20アルカンカルボキサミド基、置換または無置換のアゾ基、置換または無置換のカルボキシル基、置換または無置換のアシル基、置換または無置換のC1−20アルコキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、置換または無置換のボリル基、置換または無置換のホスフィノ基、置換または無置換のアリールスルホニルオキシ基、置換または無置換のC1−20アルキルスルホニルオキシ基、ハロゲン原子、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のオリゴアリール基、1価の置換または無置換の複素環基、または1価の置換または無置換のオリゴ複素環基であり、R、R、RおよびRは同一であっても異なっていてもよく、nは1以上の整数である]。
【0009】
(II)フルオレン環構造を有するフルオレン誘導体の有機化合物において、前記フルオレン環の1, 3, 4, 5, 6, 8位がフッ素で置換された一般式(2)で表される構成単位を含有するものであることを特徴とするフルオレン誘導体の有機化合物:
【0010】
【化2】

【0011】
[式中、Aは、置換または無置換の縮合芳香環基、置換または無置換のオリゴ縮合芳香環基、置換または無置換の縮合複素環基、および置換または無置換のオリゴ縮合複素環基から選択される2、3または4価の基;直接結合;または炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、珪素、ホウ素、リン原子からなる非芳香環構造単位からなる2、3または4価の基であり、
1、R2およびR3は、水素原子、置換または無置換のC1−20アルキル基、置換または無置換のC1−20フルオロアルキル基(当該フルオロアルキル基は、1またはそれ以上のフッ素原子を含んでいてもよい)、置換または無置換のC3−20シクロアルキル基、置換または無置換のトリ(C1−20アルキル)シリル基、置換または無置換のC1−20アルコキシ基、置換または無置換のC1−20アルキルチオ基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のアリールチオ基、置換または無置換のアリールC1−20アルキル基、置換または無置換のアリールC1−20アルコキシ基、置換または無置換のアリールC1−20アルキルチオ基、置換または無置換のC2−20アルケニル基、置換または無置換のC3−20シクロアルケニル基、置換または無置換のC2−20アルキニル基、置換または無置換のC7−20アラルキル基、置換または無置換のアミノ基、置換または無置換のN−C1−20アルキルアミド基、置換または無置換のC1−20アルカンカルボキサミド基、置換または無置換のアゾ基、置換または無置換のカルボキシル基、置換または無置換のアシル基、置換または無置換のC1−20アルコキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、置換または無置換のボリル基、置換または無置換のホスフィノ基、置換または無置換のアリールスルホニルオキシ基、置換または無置換のC1−20アルキルスルホニルオキシ基、ハロゲン原子、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のオリゴアリール基、1価の置換または無置換の複素環基、または1価の置換または無置換のオリゴ複素環基であり、R、R、およびRは同一であっても異なっていてもよく、nは1〜10の整数であり、mは2、3または4である]。
【0012】
(III)フルオレン環構造を有するフルオレン誘導体の有機化合物において、前記フルオレン環の1, 3, 4, 5, 6, 7, 8位がフッ素で置換された一般式(3)で表される構成単位を含有するものであることを特徴とするフルオレン誘導体の有機化合物:
【0013】
【化3】

【0014】
[式中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、またはヒドラジノ基である]。
(IV)フルオレン環構造を有するフルオレン誘導体の有機化合物において、前記フルオレン環の1, 3, 4, 5, 6, 7, 8位がフッ素で置換された一般式(4)で表される構成単位を含有するものであることを特徴とするフルオレン誘導体の有機化合物:
【0015】
【化4】

【0016】
[式中、X1およびX2は、水素原子、ハロゲン原子、またはヒドラジノ基であり、X1とX2は同一であっても異なっていてもよい]。
【発明の実施の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明のフッ素化フルオレン誘導体について説明する。
本発明のフッ素化フルオレン誘導体は、上記一般式(1)で示される。具体的には、以下に例示する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
【化5】

【0019】
次に、本発明のフッ素化フルオレン誘導体は、上記一般式(2)で示される。具体的には、以下に例示する化合物が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0020】
【化6】

【0021】
【化7】

【0022】
本発明のフッ素化フルオレン誘導体は、上記一般式(3)および(4)で示される。具体的には、以下に例示する化合物が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0023】
【化8】

【0024】
上記一般式(1)および(2)のフルオレン誘導体では、フルオレン環の1, 3, 4, 5, 6, 7, 8位を強い電子吸引基であるフッ素原子で置換されており、高い電子受容能を持つ。また、最高占有分子軌道(HOMO)、最低非占有分子軌道(LUMO)が深い位置になると推測される。さらに、C(炭素)−F(フッ素)は強い結合力であり、化学的安定性の向上が期待される。一方、上記一般式(1)および(2)のフルオレン誘導体において、n=2以上のものは、1, 3, 4, 5, 6, 7, 8位がフッ素で置換されたフルオレン環が立体的等の非直線的に配列する構造、すなわちアモルファスな構造になることが期待される。さらに、9位にトリフルオロメチル基や長鎖アルキル基等を導入することで溶媒への溶解度を向上することができる。
【0025】
また、上記一般式(3)および(4)のフルオレン誘導体は、9位のみならず、2, 7位に様々な置換基を導入することが可能であり、様々な機能性材料の原料または中間体としても有用な化合物である。
【0026】
一般式(1)および(2)における置換基R〜Rの具体的な例を次に示す。
置換または無置換のC1−20アルキル基としては、炭素数1〜20のであって、直鎖でもよいし分岐を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等が挙げられる。これらのアルキル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0027】
置換または無置換のC1−20フルオロアルキル基は、1またはそれ以上のフッ素原子を含んでいてもよく、炭素数1〜20の置換または無置換のアルキル基の全部または一部の水素がフッ素に置換されたフルオロアルキル基であってもよく、直鎖でもよいし分岐を有していてもよい。当該フルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロドデシル基、末端の水素のみをフッ素で置換したアルキル基等が挙げられる。これらのフルオロアルキル基はいずれも、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0028】
置換または無置換のC3−20シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、アダマンタニル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。これらのシクロアルキル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0029】
置換または無置換のトリ(C1−20アルキル)シリル基としては、3つのアルキル基がすべて同じであってもよいし、すべて異なっていてもよいし、1つだけ異なっていてもよく、例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリ(tert-ブチル)シリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。また、アルキル基として、前出の炭素数1〜20の置換または無置換C1−20アルキル基を使用してもよい。
【0030】
置換または無置換のC1−20アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、フェノキシ基、4−ブチルフェノキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。これらのアルコキシ基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0031】
置換または無置換のC1−20アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオエチル基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基等が挙げられる。これらのアルキルチオ基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0032】
置換または無置換のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、エチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、iso−プロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基等が挙げられる。これらのアリールC1−20アルキル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0033】
置換または無置換のアリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、1−アントリルチオ基、2−アントリルチオ基、9−アントリルチオ基、1−フェナントリルチオ基、9−フェナントリルチオ基、10−フェナントリルチオ基等が挙げられる。これらのアリールチオ基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0034】
置換または無置換のアリールC1−20アルキル基としては、例えば、ベンジル基、(4−メチルフェニル)メチル基、(ペンタフルオロフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n−プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n−ブチルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基などが挙げられる。これらのアリールアルキル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0035】
置換または無置換のアリールC1−20アルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、(4−メチルフェニル)メトキシ基、(ペンタフルオロフェニル)メトキシ基、(エチルフェニル)メトキシ基、(n−プロピルフェニル)メトキシ基、(iso−プロピルフェニル)メトキシ基、(n−ブチルフェニル)メトキシ基、ナフチルメトキシ基、アントラセニルメトキシ基等が挙げられる。これらのアリールアルキル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0036】
置換または無置換のアリールC1−20アルキルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ基、1−フェニルエチルチオ基、2−フェニルエチルチオ基等が挙げられる。これらのアリールアルキルチオ基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0037】
置換または無置換のC2−20アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、iso-プロペニル基、2−ブテニル基等が挙げられる。これらのアルケニル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0038】
置換または無置換のC2−20シクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロオクテニル基等が挙げられる。これらのシクロアルケニル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0039】
置換または無置換のC2−20アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−ヘキシニル基等が挙げられる。これらのアルキニル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0040】
置換または無置換のC7−20アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−メチル−ナフチル基、2−メチル−ナフチル基、1−エチルナフチル基、2−エチルナフチル基等が挙げられる。これらのアラルキル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0041】
置換または無置換のアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ベンジルアミノ基、メチルベンジルアミノ基、アニリノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。これらのアミノ基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0042】
置換または無置換のC7−20アルカンカルボキサミド基としては、例えば、メチルカルボキサミド基、エチルカルボキサミド基、プロピルカルボキサミド基、ブチルカルボキサミド基等が挙げられ、これらのアルカンカルボキサミド基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0043】
置換または無置換のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、アントライル基、トルオイル基等が挙げられる。これらのアシル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0044】
置換または無置換のエステル基としては、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、イソプロピルエステル基、フェニルエステル基、フェニルエチル等が挙げられる。これらのエステル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0045】
置換または無置換のカルバモイル基としては、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、イソプロピルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、フェニルエチルカルバモイル基等が挙げられる。これらのカルバモイル基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0046】
置換または無置換のC1−20アルキルスルホニルオキシ基としては、例えば、メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基、プロパンスルホニルオキシ基等が挙げられ、これらのアルキルスルホニルオキシ基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0047】
置換または無置換のアリールスルホニルオキシ基としては、例えば、ベンゼンスルホニルオキシ基、4−メチルフェニルスルホニルオキシ基、プロパンスルホニルオキシ基等が挙げられ、これらのアルキルスルホニルオキシ基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0048】
置換または無置換のアリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−オクチルフェニル基、3−クロロフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、9−フェナントリル基、10−フェナントリル基等が挙げられる。これらのアリール基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0049】
置換または無置換のアゾ基としては、−N=N−H、−N=N−(C1−20アルキル)、−N=N−(アリール)などが挙げられる。
縮合多環芳香族基としては、置換基を有していてもよく、例えば、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラニル基、ピレニル基等が挙げられる。これらの縮合多環芳香族基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0050】
縮合複素環基、またはオリゴ縮合複素環基としては、置換基を有していてもよく、例えば、ピリジル基、ビピリジル基、メチルピリジル基、チエニル基、ターチエニル基、プロピルチエニル基、フリル基、キノリル基、カルバゾリル基、N−メチルカルバゾリル基等が挙げられる。これらの縮合複素環基はいずれも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアリールC1−20アルキルオキシ基などで一部が置換されていてもよい。
【0051】
以下、一般式(3)の化合物の製造方法を説明する。
1,2,3,4,5,6,7,8-オクタフルオロフルオレンを原料として、新規な2-ハロゲノ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロフルオレン(式(3))を製造する方法としては、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタフルオロフルオレンをヒドラジンでヒドラジノ化した後、ハロゲン化銅と反応させる方法が挙げられる。
【0052】
例えば、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタフルオロフルオレンとヒドラジンを反応させ、2-ヒドラジノ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロフルオレンを得た後、臭化銅と反応することによりに前記化合物[12](2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロフルオレン)を得る(スキーム1)。
【0053】
【化9】

【0054】
使用するヒドラジンの使用量は、好ましくは原料に対して0.8〜2倍モル当量である。ヒドラジンの使用量が0.8倍モル当量より少ない場合、未反応の原料が多く生成物の収率が低下する。逆にその使用量が2倍モル当量より多い場合、副生成物の生成量が多くなる。
【0055】
ヒドラジンを作用させる場合、反応温度としては、室温から100℃が好ましい。反応温度が室温より低い場合には反応速度が遅くなり、逆に100℃より高くなると、反応中間体の分解や副生成物の生成が起きる。
【0056】
この反応の溶媒としては、エタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒を使用することができる。その使用量は、原料1グラムに対して1〜100mlである。1mlより少ない場合には撹拌と温度の制御が難しく、100mlより多い場合には反応時間が遅くなる。反応時間は、好ましくは3〜24時間である。反応時間が3時間より短ければ反応の転化率が低く、逆に24時間より長いと副生成物の生成量が増える恐れがある。
【0057】
臭化銅の使用量は、好ましくは原料の1,2,3,4,5,6,7,8-オクタフルオロフルオレンに対して3〜10倍モルである。3倍モル当量より少ない場合、生成物の収率が低下する。逆にその使用量が10倍モル当量より多い場合、副生成物の生成量が多くなり、生成物との分離が困難である。この反応の溶媒としては、臭化水素水を使用することができる。その使用量は、原料1グラムに対して1〜100mlである。1mlより少ない場合には撹拌と温度の制御が難しく、100mlより多い場合には反応時間が遅くなる。
【0058】
反応温度は50℃〜200℃の範囲であることが好ましい。反応温度が50℃より低いと反応速度が遅くなり、逆に200℃を超えると反応が激しすぎる恐れがあり、反応制御上好ましくない。反応時間は、好ましくは3〜24時間である。3時間より短い場合、反応の転化率が低く、24時間より長く反応を行なっても特に効果は無く、副生成物の生成量が多くなる恐れがある。
【0059】
反応終了後、通常の後処理、精製を行なうことにより、新規な2-ブロモ-1 ,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロフルオレン(化合物[12])を得ることができる。
次に、フッ素化フルオレン誘導体の9位に置換基を導入する方法として、前記式(3)または(4)のフルオレン誘導体と少なくとも2モルのR-X とを、相間移動触媒の存在または無存在下、アルカリ金属塩の存在下において反応させることにより製造できることができる。この方法の1つの形態は反応式1で示される。
【0060】
【化10】

【0061】
上記式中、Rは上記のRおよびRと同様に定義され、Mはアルカリ金属塩であり、PTCは相間移動触媒である。
R−Y、およびアルカリ金属塩の使用量は好ましくはフッ素化フルオロフルオレン誘導体に対して2〜10倍モルである。2倍モル当量より少ない場合、生成物の収率が低下する。逆にその使用量が10倍モル当量より多い場合、副生成物の生成量が多くなり、生成物との分離が困難である。この反応の溶媒としては、ジエチルエーテル、THFなどのエーテル系溶媒、DMF、等を使用することができる。その使用量は、原料1グラムに対して1〜100mlである。1mlより少ない場合には撹拌と温度の制御が難しく、100mlより多い場合には反応時間が遅くなる。
【0062】
本反応に用いるアルカリ金属塩としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化ナトリウム等のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、セシウム塩等が挙げられる。
【0063】
本反応は、相間移動触媒の存在または無存在下で行なうことができる。相間移動触媒としては、4級アンモニウム塩、4級ホスホニム塩、ポリエチレングリコールおよびクラウンエーテル等が挙げられる。相間移動触媒の使用量は、原料のフッ素化フルオロフルオレンに対して0.0001〜0.5倍モルである。0.0001倍モル当量より少ない場合、生成物の収率が低下する。逆にその使用量が0.5倍モル当量より多い場合、副生成物の生成量が多くなる恐れがあり、生成物との分離が困難である。
【0064】
次に一般式(4)の化合物の製造方法を説明する。
2-ハロゲノ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロフルオレン(式(3))を原料として、新規な2,7-ジハロゲノ-1,3,4,5,6,8-ヘキサフルオロフルオレン(式(4))を製造する方法としては、2-ハロゲノ-1,3,4,5,6,8-ヘキサヘキサフルオロフルオレン(式(3))をヒドラジンでヒドラジノ化した後、ハロゲン化銅と反応させる方法が挙げられる。
【0065】
例えば、2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロフルオレンとヒドラジンを反応させ、2-ブロモ-7-ヒドラジノ-1,3,4,5,6,8-ヘキサフルオロフルオレンを得た後、臭化銅と反応することによりに2,7-ジブロモ-1,3,4,5,6,8-ヘキサフルオロフルオレンを得る(スキーム2)。
【0066】
【化11】

【0067】
使用するヒドラジンの使用量は、好ましくは原料に対して0.8〜2倍モル当量である。ヒドラジンの使用量が0.8倍モル当量より少ない場合、未反応の原料が多く生成物の収率が低下する。逆にその使用量が2倍モル当量より多い場合、副生成物の生成量が多くなる。
【0068】
ヒドラジンを作用させる場合、反応温度としては、室温から100℃が好ましい。反応温度が室温より低い場合には反応速度が遅くなり、逆に100℃より高くなると、反応中間体の分解や副生成物の生成が起きる。
【0069】
この反応の溶媒としては、エタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒を使用することができる。その使用量は、原料1グラムに対して1〜100mlである。1mlより少ない場合には撹拌と温度の制御が難しく、100mlより多い場合には反応時間が遅くなる。反応時間は、好ましくは3〜24時間である。反応時間が3時間より短ければ反応の転化率が低く、逆に24時間より長いと副生成物の生成量が増える恐れがある。
【0070】
臭化銅の使用量は、好ましくは原料に対して3〜10倍モルである。3倍モル当量より少ない場合、生成物の収率が低下する。逆にその使用量が10倍モル当量より多い場合、副生成物の生成量が多くなり、生成物との分離が困難である。この反応の溶媒としては、臭化水素水を使用することができる。その使用量は、原料1グラムに対して1〜100mlである。1mlより少ない場合には撹拌と温度の制御が難しく、100mlより多い場合には反応時間が遅くなる。
【0071】
反応温度は50℃〜200℃の範囲であることが好ましい。反応温度が50℃より低いと反応速度が遅くなり、逆に200℃を超えると反応が激しすぎる恐れがあり、反応制御上好ましくない。反応時間は、好ましくは3〜24時間である。3時間より短い場合、反応の転化率が低く、24時間より長く反応を行なっても特に効果は無く、副生成物の生成量が多くなる恐れがある。
【0072】
反応終了後、通常の後処理、精製を行なうことにより、新規な化合物[13](2,7-ジブロモ-1 ,3,4,5,6,8-ヘキサフルオロフルオレン)を得ることができる。
次に一般式(1)の化合物の製造方法を説明する。
【0073】
まず、式(5)のフルオレン誘導体を式(6)のフルオレン誘導体を金属銅、各種銅塩、パラジウム触媒、またはそれらの組み合わせの存在化で反応させることにより、前記式(1)の化合物を得る(反応式2)。
【0074】
【化12】

【0075】
例えば、2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレンと2,7-ジブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘキサフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレンを反応させ、化合物[3]を得る(スキーム3)。
【0076】
【化13】

【0077】
まず、2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレンのグリニャール試薬を調製し、臭化銅と反応させて化合物[12]を得た後、2,7-ジブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘキサフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレンと反応させ、化合物[3]を収率52%で得た。
【0078】
2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレンのグリニャール試薬を調製では、2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレンと金属マグネシウムを直接反応する、あるいは2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレンと別途調製したグリニャール試薬と反応し、金属−ハロゲン交換反応により行なうことができる。使用するグリニャール試薬としては、メチルマグネシウムハライド、エチルマグネシウムハライド、プロピルマグネシウムハライド、フェニルマグネシウムハライド等が挙げられる。金属マグネシウムまたグリニャール試薬の使用量は、好ましくは2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレンに対して0.8〜1倍モル当量である。金属マグネシウムまたグリニャール試薬の使用量が0.8倍モル当量より少ない場合、未反応の原料が多く生成物の収率が低下する。逆にその使用量が1倍モル当量より多い場合、副生成物の生成量が多くなる。
【0079】
グリニャール試薬を調製する場合、反応温度としては、−100℃から60℃が好ましい。反応温度が−100℃より低い場合には反応速度が遅くなり、逆に60℃より高くなると、反応中間体の分解が起きる。
【0080】
この反応の溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒を使用することができる。その使用量は、原料1グラムに対して1〜100mlである。1mlより少ない場合には撹拌と温度の制御が難しく、100mlより多い場合には反応時間が遅くなる。反応時間は、好ましくは0.5〜10時間である。反応時間が0.5時間より短ければ反応の転化率が低く、逆に10時間より長いと副生成物の生成量が増える。
【0081】
次に、臭化銅の使用量は、原料に対して1倍モル当量〜20倍モル当量が好ましい。使用量が1倍モル当量より少ない場合、生成物の収率が低下する。逆にその使用量が20倍モル当量より多い場合、反応の経済性及び操作性を考慮すると好ましくない。反応温度は0℃〜100℃の範囲とすることが好ましい。反応温度が0℃より低い場合、反応の転化率が低く、逆に100℃を超えると副生成物の生成量が多くなる恐れがあり、好ましくない。反応時間は、好ましくは0.5〜10時間である。反応時間が0.5時間より短ければ反応の転化率が低く、逆に10時間より長いと副生成物の生成量が増える。
【0082】
このように2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレンから調製された化合物[19]と2,7-ジブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘキサフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレンと反応させることにより、新規な化合物[3]を製造することができる。
【0083】
2,7-ジブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘキサフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレンの使用量は、好ましくは原料の2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレンに対して0.4〜0.5倍モルである。0.4倍モル当量より少ない場合、生成物の収率が低下する。逆にその使用量が0.5倍モル当量より多い場合、副生成物の生成量が多くなり、生成物との分離が困難である。
【0084】
反応温度は0℃〜200℃の範囲であることが好ましい。反応温度が0℃より低いと反応速度が遅くなり、逆に200℃を超えると反応が激しすぎる恐れがあり、また、副生成物の生成量が多くなり、生成物の収率が低下する。反応時間は、好ましくは3〜100時間である。3時間より短い場合、反応の転化率が低く、100時間長いと、副生成物の生成量が多くなる恐れがある。
【0085】
この反応溶媒としては、ジエチルエーテル、THF等のエーテル系溶媒、ヘキサン、トルエン、キシレン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等を使用することができる。その使用量は、原料1グラムに対して1〜100mlである。1mlより少ない場合には撹拌と温度の制御が難しく、100mlより多い場合には反応時間が遅くなる。
【0086】
反応終了後、通常の後処理、精製を行うことにより、化合物[3]を得ることができる。本反応は水分を嫌う反応であるため、反応容器内はアルゴン等の乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。
【0087】
次に一般式(2)の化合物の製造方法を説明する。
式(7)のフルオレン誘導体と式(8)の化合物を金属銅、各種銅塩、パラジウム触媒、またはそれらの組み合わせの存在化で反応させることにより、前記式(2)の化合物を得る(反応式3)。
【0088】
【化14】

【0089】
ただし、式中R、R、R、XおよびAは上記の定義と同じであり、mは2,3または4であり、nは1以上の整数である。
フルオレン構造を有するフルオレン誘導体の有機化合物において、前記フルオレン環の1,3,4,5,6,8位がフッ素で置換された一般式(2)で表される構成単位を含有するものであることを特徴とするフルオレン誘導体の有機化合物の合成法としては、例えばパラジウム触媒を用いた鈴木カップリング法(例えば Chem. Rev. 1995, 95, 2457-2483)、ニッケル触媒を用いた山本法(例えば Macromolecules. 1992, 25, 1241)、アリールスズ化合物を用いたStille カップリング法(例えばAngew. Chem. Int. Ed., 2003, 42, 3900)、アリール銅化合物を用いた Ullmann カップリング法(例えば Org. Syn. Vol. VI, 875)等が挙げられる。
【0090】
なお、反応溶媒、反応温度、反応時間などの反応条件は、使用する反応基質や試薬等に応じて適宜設定すればよい。
例えば、Pd(PPh3)4存在下に2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレンと5,5’-ビス(トリ-n-ブチルスタニル)-2,2’-ジチオフェンとのカップリング反応によって、化合物[23]が得られる(スキーム4)。
【0091】
【化15】

【実施例】
【0092】
以下に示す実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明が実施例によって限定されるものではない。
<実施例1>化合物[12](2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロフルオレン)の製造
コンデンサーを付した三口フラスコに1,2,3,4,5,6,7,8-オクタフルオロフルオレン(1.00 g, 3.22 mmol)、ヒドラジン一水和物(360 mg, 7.19 mmol)およびエタノール 10ml を仕込んだ後、24時間加熱還流した。反応液を室温に戻した後、減圧下で溶媒を留去した。析出した固体をろ過し、ヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥した。
【0093】
上記反応より得た2-ヒドラジノ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロフルオレンの粗生成物、CuBr2 (3.60 g, 16.1 mmol)および48%臭化水素水10 mlの混合液を3時間加熱還流した。水を添加した後、析出した固体をろ別した。得られた固体をカラムクロマトグラフィーおよび昇華精製を行ない、目的物を得た(560 mg, 47%)。
【0094】
融点:136-137℃
19F−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサフルオロベンゼン)
δ 47.87 (d, J = 18.8 Hz, 1F), 35.37 (d, J = 18.8 Hz, 1F), 27.12 (dtd, J = 70.6 and 18.8 and 4.7 Hz, 1F), 25.86 (dt, J = 70.6 and 18.8 Hz, 1F), 20.44 ( t, J = 18.8 Hz, 1F), 8.22 ( t, J = 18.8 Hz, 1F), 7.13 ( t, J = 18.8 Hz, 1F);
H−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:テトラメチルシラン)
δ 4.09 (s, 2H)
質量分析 MS (EI) m/z = 370 [M+].
元素分析 計算値(C13H2BrF7): C, 42.08; H, 0.54.;実測値: C, 42.07; H, 0.69.
<実施例2>化合物[18](2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレン)の製造
滴下ロートを付した三口フラスコに、アルゴン雰囲気下、55% NaH (150 mg, 3.38 mmol)および DMF 5 ml を仕込んだ後、氷冷下、2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロフルオレン (500 mg, 1.35 mmol)と15-crown-5 (750 mg, 3.38 mmol)を含む DMF 溶液5 mlを滴下した後、1時間撹拌した。反応液を−40℃に冷却した後、5-(トリフルオロメチル)ジベンゾチオフェニウム テトラフルオロボレート (1.20 g, 3.38 mmol)の DMF 溶液 15 ml を加えた。反応液を4時間かけて室温まで昇温した後、エーテルと水を加えて反応を停止した。有機相を分離した後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行ない2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレン を(364 mg, 53%)得た。
【0095】
19F−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサフルオロベンゼン)
δ 96.52 (t, J = 23.5 Hz, 6F), 59.65-59.89 (m, 1F), 44.36 (dd, J = 18.8 and 3.3 Hz, 1F), 30.74-31.26 (m, 2F), 29.52 (dt, J = 98.8 and 18.8 Hz, 1F), 14.86 (td, J = 18.8 and 9.4 Hz, 1F), 13.29 (t, J =18.8 Hz, 1F)
質量分析MS (EI) m/z = 506 [M+]
高分解能質量分析 計算値(C15BrF13): 505.8976;実測値: 505.8970.
<実施例3>化合物[2](PF-2F)の製造
アンプルに2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレン (1.10 g, 2.17 mmol) および金属銅 (830 mg, 13.0 mmol ) を仕込み、アルゴン置換した後、封管した。200 ℃で3日間加熱した後、ジクロロメタンで抽出した。金属銅等の不溶物をろ別した後、減圧下で溶媒を留去した。得られた固体をカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、目的のPF-2F (2.88 g, 72%) 2.88 g を得た(収率 72 %)。
【0096】
生成物の構造は核磁気共鳴分析及び質量分析等で確認した。融点[Buchi社製 B-540]、核磁気共鳴分析[JEOL社製 JNM-LA 500]、質量分析[島津製作所製、GCMS-QP5050A]、および元素分析[ヤナコ分析工業製 CHN corder MT-6]の結果は以下の通りである。
【0097】
融点: 143-145 ℃
19F−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサフルオロベンゼン)
δ 96.58 (t, J = 23.5 Hz, 12F), 53.98-54.22 (m, 2F), 38.51-38.59 (m, 2F), 31.66 (dm, J = 98.8 Hz, 2F), 30.96-31.26 (m, 2F), 28.45 (dt, J = 98.8 and 18.8 Hz, 2F), 15.13 (td, J = 18.8 and 9.4 Hz, 2F), 14.21 (t, J= 18.8 Hz, 2F)
質量分析MS (EI) m/z = 854 [M+].
元素分析 計算値(C30F26): C, 42.18;実測値: C, 41.68.
高分解能質量分析 計算値(C30F26): 853.9585;実測値: C, 853.9597.
<実施例4>化合物[14](2,7-ジブロモ-1,3,4,5,6,8-ヘキサフルオロフルオレン)の製造
コンデンサーを付した三口フラスコに2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロフルオレン (900 mg, 2.43 mmol)、ヒドラジン一水和物(240 mg, 4.85 mmol)およびジオキサン 20ml を仕込んだ後、24時間加熱還流した。反応液を室温に戻した後、減圧下で溶媒を留去した。析出した固体をろ過し、ヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥した。
【0098】
上記反応より得た2-ブロモ-7-ヒドラジノ-1,3,4,5,6,8-ヘキサフルオロフルオレンの粗生成物、(2.71 g, 112 mmol)および48%臭化水素水20 mlの混合液を3時間加熱還流した。水を添加した後、析出した固体をろ別した。得られた固体をカラムクロマトグラフィーおよび昇華精製を行ない、目的物を得た(400 mg, 38%)。
【0099】
融点:203-204℃
19F−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサフルオロベンゼン)
δ47.99 (t, J = 9.4 Hz, 2F), 35.61 (t, J= 9.4 Hz, 2F), 26.19-26.27 (m, 2F)
H−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:テトラメチルシラン)
δ 4.08 (s, 2H)
質量分析 MS (EI) m/z =430 [M+].
元素分析 計算値(C13H2Br2F6): C, 36.15; H, 0.47;実測値: 36.04; H, 0.56.
<実施例5>化合物[20](2,7-ジブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘキサフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレン)の製造
上記実施例2の方法と同様に、2,7-ジブロモ-1,3,4,5,6,8-ヘキサフルオロフルオレン (1.00 g, 2.32 mmol)、15-crown-5 (1.28 g, 5.79 mmol)、 55% NaH(230 mg, 5.33 mmol),、5-(トリフルオロメチル)ジベンゾチオフェニウム テトラフルオロボレート (1.97 g, 5.79 mmol)、および DMF (50 mL)を用いて反応を行ない、2,7-ジブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘキサフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレンを得た(670 mg, 50%)。
【0100】
融点 99-102℃
19F NMR (CDCl3)
δ 96.75 (t, J = 23.5 Hz, 6F), 60.08-60.27 (m, 2F), 44.37-44.43 (m, 2F), 29.83-29.91 (m, 1F)
質量分析MS (EI) m/z = 566 [M+].
高分解能質量分析 計算値(C15Br2F12): 565.8175.;実測値: 565.8171.
<実施例6>化合物[3](PF-3F) の製造
コンデンサーを付した三口フラスコに、2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレン (3.00 g, 5.90 mmol) およびTHF 30 ml を仕込んだ後、氷冷下、1.0 M エチルマグネシウムブロミド のTHF溶液 (5.9 mL, 5.9 mmol) を滴下した。1時間撹拌した後、2当量の CuBr (1.69 g, 11.8 mmol) を添加し、室温で1時間撹拌した。引き続き、室温でジオキサン (7.5 mL) を加え1時間撹拌した後、2,7-ジブロモ-1,3,4,5,6,8-ヘキサフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレン (840 mg, 1.47 mmol)のトルエン溶液 (30 mL) を加え、90℃で4日間撹拌した。反応後、不溶物をろ過した後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をジクロロメタンに溶解し、塩酸および食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィーおよび昇華により精製を行ない、フッ素化フルオレン3量体(980 mg, 52%) を得た。
【0101】
生成物の構造は核磁気共鳴分析及び質量分析等で確認した。融点[Buchi社製 B-540]、核磁気共鳴分析[JEOL社製 JNM-LA 500]、質量分析[島津製作所製、GCMS-QP5050A]、および元素分析[ヤナコ分析工業製 CHN corder MT-6]の結果は以下の通りである。
融点: 280℃
19F−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサフルオロベンゼン)
δ 96.83 (t, J = 23.5 Hz, 6F), 96.63 (t, J = 23.5 Hz, 12F), 54.60-54.76 (m, 2F), 54.13-54.26 (m, 2F), 38.71-38.84 (m, 4F), 31.75 (dm, J = 98.8 Hz, 2F), 31.02-31.32 (m, 2F), 29.37-29.45 ( m, 2F), 28.58 (dt, J = 98.8 and 18.8 Hz, 2F), 15.23 (td, J = 18.8 and 9.4 Hz, 2F), 14.33(t, J = 18.8 Hz, 2F)
質量分析MS (EI) m/z = 1262 [M+].
元素分析 計算値(C45F38): C, 42.81.;実測値: C, 42.47.
<実施例7>化合物[14](2-ブロモ-1,3,4,5,6,8-ヘキサフルオロフルオレン)の製造
コンデンサーを付した三口フラスコに、2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロフルオレン (3.00 g, 8.09 mmol)、ジオキサン 30 ml、およびヒドラジン一水和物(810 mg, 16.2 mmol)を添加した後、24時間加熱還流した。反応液を室温に戻した後、析出した固体をろ過し、エタノールで洗浄した後、減圧下で乾燥した。
【0102】
上記反応より得た2-ブロモ-7-ヒドラジノ-1,3,4,5,6,8-ヘキサフルオロフルオレンおよびCuSO4 (4.26 g, 17.1 mmol)の水溶液(120 mL)を3時間加熱還流した。水を添加した後、析出した固体をろ別した。得られた固体をカラムクロマトグラフィーにより精製を行ない、収率46% で目的物を1.34g得た。
【0103】
生成物の構造は核磁気共鳴分析及び質量分析等で確認した。融点[Buchi社製 B-540]、核磁気共鳴分析[JEOL社製 JNM-LA 500]、質量分析[島津製作所製、GCMS-QP5050A]、および元素分析[ヤナコ分析工業製 CHN corder MT-6]の結果は以下の通りである。
【0104】
融点: 132-133 ℃
19F−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサフルオロベンゼン)
δ 45.75 (d, J = 18.8 Hz, 1F), 43.00 (dd, J = 18.8 and 8.0 Hz, 1F), 35.07 (d, J = 18.8 Hz, 1F), 28.23 (dd, J = 18.8 and 10.0 Hz, 1F), 26.06 (dtd, J =70.6 and 18.8 and 18.8 Hz, 1F), 22.53 (dtd, J = 70.6 and 18.8 and 5.0 Hz, 1F)
H−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:テトラメチルシラン)
δ 7.03 (ddd, J = 10.0 and 8.0 and 5.0 Hz, 1H), 4.03 (s, 2H)
質量分析MS (EI) m/z = 352 [M+].
元素分析 計算値(C13H3BrF6): C, 44.22; H, 0.86.;実測値: C, 44.40; H, 1.04.
<実施例8> 2-ブロモ-1,3,4,5,6,8-ヘキサフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレンの製造
上記実施例2の方法と同様に、2-ブロモ-1,3,4,5,6,8-ヘキサフルオロフルオレン (700 mg, 1.98 mmol)、15-crown-5 (1.10 g, 4.96 mmol)、55% NaH (220 mg, 4.96 mmol)、 5-(トリフルオロメチル)ジベンゾチオフェニウム テトラフルオロボレート (1.69 g, 4.96 mmol)、およびDMF (40 mL) を用いて反応を行ない、2-ブロモ-1,3,4,5,6,8-ヘキサフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレン を得た (440 mg, 45%)。
【0105】
生成物の構造は核磁気共鳴分析及び質量分析等で確認した。融点[Buchi社製 B-540]、核磁気共鳴分析[JEOL社製 JNM-LA 500]、質量分析[島津製作所製、GCMS-QP5050A]、および元素分析[ヤナコ分析工業製 CHN corder MT-6]の結果は以下の通りである。
【0106】
19F−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサフルオロベンゼン)
δ 96.59 (t, J = 23.5 Hz, 6F), 59.72-59.97 (m, 1F), 54.09-54.37 (m, 1F), 43.97 (dd, J = 18.8 and 5.0 Hz, 1F), 36.05 (td, J = 18.8 and 9.4 Hz, 1F), 29.75 (ddd, J = 98.8 and 18.8 and 18.8 Hz, 1F), 26.76 (dtd, J = 98.8 and 18.8 and 5.0 Hz,1F)
H−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:テトラメチルシラン)
δ 7.16 (td, J = 9.5 and 5.0 Hz, 1H)
質量分析MS (EI) m/z = 488 [M+].
高分解能質量分析 計算値(C15HBrF12): 487.9070.;実測値: 487.9081.
<実施例9> 1,3,4,5,6,8,1’,3’,4’,5’,6’,8’-ドデカフルオロ-9,9,9’,9’-テトラ(トリフルオロメチル)-[2,2’]ビフルオレン の製造
アンプルに2-ブロモ-1,3,4,5,6,8-ヘキサフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレン (1.36 g, 2.80 mmol) および金属銅 (1.10 g, 17.3 mmol)を仕込み、アルゴン置換した後、封管した。200 ℃で5日間加熱した後、ジクロロメタンで抽出した。金属銅等の不溶物をろ別した後、減圧下で溶媒を留去した。得られた固体をカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、目的物を得た(800 mg, 70%)。
【0107】
生成物の構造は核磁気共鳴分析及び質量分析等で確認した。融点[Buchi社製 B-540]、核磁気共鳴分析[JEOL社製 JNM-LA 500]、質量分析[島津製作所製、GCMS-QP5050A]、および元素分析[ヤナコ分析工業製 CHN corder MT-6]の結果は以下の通りである。
【0108】
融点: 143-145℃
19F−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサフルオロベンゼン)
96.53 (t, J = 23.5 Hz, 12F), 53.96-54.43 (m, 4F), 38.01-38.09 (m, 2F), 36.16 (dt, J = 18.8 and 9.4 Hz, 2F), 28.48 (dt, J = 98.8 and 18.8 Hz, 2F), 27.25 (dtd, J = 98.8 and 18.8 and 5.0 Hz, 2F)
H−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:テトラメチルシラン)
7.21 (td, J =10.0 and 5.0 Hz, 2H)
質量分析MS (EI) m/z = 818 [M+].
高分解能質量分析 計算値(C30H2F24): 817.9773;実測値: 817.9758.
<実施例10> 7,7’-ジロモジブロモ-1,3,4,5,6,8,1’,3’,4’,5’,6’,8’-ドデカフルオロ-9,9,9’,9’-テトラ(トリフルオロメチル)-[2,2’]ビフルオレン の製造
コンデンサーを付した三口フラスコに臭素(3.20 g, 20.0 mmol)、臭化アルミニウム(80 mg, 0.60 mmol)および60%発煙硫酸(0.7 mL)を順次仕込み、1,3,4,5,6,8,1’,3’,4’,5’,6’,8’-ドデカフルオロ-9,9,9’,9’-テトラ(トリフルオロメチル)-[2,2’]ビフルオレン (800 mg, 0.978 mmol)を添加した後、60℃で三日間撹拌した。反応液を水に注ぎ、反応を停止した後、析出した固体をろ過した後、炭酸ナトリウム水溶液、亜硫酸水素ナトリウム水溶液で順次洗浄した。ジクロロメタンに溶解した後、カラムクロマトグラフィーおよび昇華精製を行ない、目的物を得た(870 mg, 90%)。
【0109】
融点 191-193 ℃
19F−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサフルオロベンゼン)
δ 96.74 (t, J = 23.5 Hz, 12F), 60.20-60.44 (m, 2F), 54.26-54.60 (m, 2F), 44.55-44.64 (m, 2F), 38.52-38.57 (m, 2F), 30.40 (dt, J = 98.8 and 18.8 Hz, 2F), 28.73 (dt, J = 98.8 and 18.8 Hz, 2F)
質量分析MS (EI) m/z = 974 [M+].
高分解能質量分析 計算値(C30Br2F24): 973.7983.;実測値: 973.7994.
<実施例10>化合物[4](PF-4F)の製造
上記実施例6の方法と同様に、2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレン (2.20 g, 4.40 mmol)、THF (20 mL)、 1.0 M エチルマグネシウムブロミドのTHF溶液 (4.4 mL, 4.4 mmol)、 臭化銅(I) (1.27 g, 8.85 mmol、ジオキサン (5.5 mL)、7,7’-ジブロモ-1,3,4,5,6,8,1’,3’,4’,5’,6’,8’-ドデカフルオロ-9,9,9’,9’-テトラ(トリフルオロメチル)-[2,2’]ビフルオレン (1.09 g, 1.10 mmol)、およびトルエン (35 mL).を用いて反応を行ない、目的物を得た (860 mg, 46%)。
【0110】
生成物の構造は核磁気共鳴分析及び質量分析等で確認した。融点[Buchi社製 B-540]、核磁気共鳴分析[JEOL社製 JNM-LA 500]、質量分析[島津製作所製、GCMS-QP5050A]、および元素分析[ヤナコ分析工業製 CHN corder MT-6]の結果は以下の通りである。
【0111】
19F−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサフルオロベンゼン)
96.85 (t, J = 23.5 Hz, 12F), 96.64 (t, J = 23.5 Hz, 12F), 54.65-54.86 (m, 4F), 54.14-54.32 (m, 2F), 38.86-38.98 (m, 2F), 38.66-38.75 (m, 4F), 31.76 (dm, J = 98.8 Hz, 2F), 31.04-31.32 (m, 2F), 29.41-29.51 (m, 4F), 28.58 (dm, J = 98.8 Hz, 2F), 15.22 (td, J= 18.8 and 9.4 Hz, 2F), 14.33 (t, J = 18.8 Hz, 2F)
質量分析MS (EI) m/z =1670 [M+].
元素分析 計算値(C60F50): C, 43.14.;実測値: C, 42.68.
<実施例11>化合物[7](5,5’-ビス(1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-2-フルオロ-2-フルオレニル)-2,2’-ジチオフェン)の製造
コンデンサーを付した三口フラスコに2-ブロモ-1,3,4,5,6,7,8-ヘプタフルオロ-9,9-ビス(トリフルオロメチル)フルオレン (3.00 g, 5.90 mmol)、5,5’-ビス(トリ-n-ブチルスタニル)-2,2’-ジチオフェン (80 mg, 0.60 mmol)、Pd(PPh3)4 (10 mg, 0.6mmol) およびトルエン(0.7 mL)を順次仕込み、三日間加熱還流した。反応液を冷却した後、析出した固体をろ過した後、ヘキサンおよびエーテルで数回洗浄した。得られた粗生成物を昇華精製することにより、目的物を得た(870 mg, 90%)。
融点 333 ℃
19F−NMR(溶媒:CDCl3、標準物質:ヘキサフルオロベンゼン)
δ 96.74 (t, J = 23.5 Hz, 12F), 60.20-60.44 (m, 2F), 54.26-54.60 (m, 2F), 44.55-44.64 (m, 2F), 38.52-38.57 (m, 2F), 30.40 (dt, J = 98.8 and 18.8 Hz, 2F), 28.73 (dt, J = 98.8 and 18.8 Hz, 2F)
質量分析MS (EI) m/z =1019 [M+].
高分解能質量分析 計算値(C38H4F26S2): 1017.9339.;実測値: 1017.9335.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオレン環構造を有するフルオレン誘導体の有機化合物において、前記フルオレン環の1, 3, 4, 5, 6, 8位がフッ素で置換された一般式(1)で表される構成単位を含有するものであることを特徴とするフルオレン誘導体の有機化合物:
【化1】

[式中、R、R、RおよびRは、水素原子、置換または無置換のC1−20アルキル基、置換または無置換のC1−20フルオロアルキル基(当該フルオロアルキル基は、1またはそれ以上のフッ素原子を含んでいてもよい)、置換または無置換のC3−20シクロアルキル基、置換または無置換のトリ(C1−20アルキル)シリル基、置換または無置換のC1−20アルコキシ基、置換または無置換のC1−20アルキルチオ基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のアリールチオ基、置換または無置換のアリールC1−20アルキル基、置換または無置換のアリールC1−20アルコキシ基、置換または無置換のアリールC1−20アルキルチオ基、置換または無置換のC2−20アルケニル基、置換または無置換のC3−20シクロアルケニル基、置換または無置換のC2−20アルキニル基、置換または無置換のC7−20アラルキル基、置換または無置換のアミノ基、置換または無置換のN−C1−20アルキルアミド基、置換または無置換のC1−20アルカンカルボキサミド基、置換または無置換のアゾ基、置換または無置換のカルボキシル基、置換または無置換のアシル基、置換または無置換のC1−20アルコキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、置換または無置換のボリル基、置換または無置換のホスフィノ基、置換または無置換のアリールスルホニルオキシ基、置換または無置換のC1−20アルキルスルホニルオキシ基、ハロゲン原子、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のオリゴアリール基、1価の置換または無置換の複素環基、または1価の置換または無置換のオリゴ複素環基であり、R、R、RおよびRは同一であっても異なっていてもよく、nは1以上の整数である]。
【請求項2】
フルオレン環構造を有するフルオレン誘導体の有機化合物において、前記フルオレン環の1, 3, 4, 5, 6, 8位がフッ素で置換された一般式(2)で表される構成単位を含有するものであることを特徴とするフルオレン誘導体の有機化合物:
【化2】

[式中、Aは、置換または無置換の縮合芳香環基、置換または無置換のオリゴ縮合芳香環基、置換または無置換の縮合複素環基、および置換または無置換のオリゴ縮合複素環基から選択される2、3または4価の基;直接結合;または炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、珪素、ホウ素、リン原子からなる非芳香環構造単位からなる2、3または4価の基であり、
1、R2およびR3は、水素原子、置換または無置換のC1−20アルキル基、置換または無置換のC1−20フルオロアルキル基(当該フルオロアルキル基は、1またはそれ以上のフッ素原子を含んでいてもよい)、置換または無置換のC3−20シクロアルキル基、置換または無置換のトリ(C1−20アルキル)シリル基、置換または無置換のC1−20アルコキシ基、置換または無置換のC1−20アルキルチオ基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のアリールチオ基、置換または無置換のアリールC1−20アルキル基、置換または無置換のアリールC1−20アルコキシ基、置換または無置換のアリールC1−20アルキルチオ基、置換または無置換のC2−20アルケニル基、置換または無置換のC3−20シクロアルケニル基、置換または無置換のC2−20アルキニル基、置換または無置換のC7−20アラルキル基、置換または無置換のアミノ基、置換または無置換のN−C1−20アルキルアミド基、置換または無置換のC1−20アルカンカルボキサミド基、置換または無置換のアゾ基、置換または無置換のカルボキシル基、置換または無置換のアシル基、置換または無置換のC1−20アルコキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、ホルミル基、ニトロ基、シアノ基、置換または無置換のボリル基、置換または無置換のホスフィノ基、置換または無置換のアリールスルホニルオキシ基、置換または無置換のC1−20アルキルスルホニルオキシ基、ハロゲン原子、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のオリゴアリール基、1価の置換または無置換の複素環基、または1価の置換または無置換のオリゴ複素環基であり、R、R、およびRは同一であっても異なっていてもよく、nは1〜10の整数であり、mは2、3または4である]。
【請求項3】
フルオレン環構造を有するフルオレン誘導体の有機化合物において、前記フルオレン環の1, 3, 4, 5, 6, 7, 8位がフッ素で置換された一般式(3)で表される構成単位を含有するものであることを特徴とするフルオレン誘導体の有機化合物:
【化3】

[式中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、またはヒドラジノ基である]。
【請求項4】
フルオレン環構造を有するフルオレン誘導体の有機化合物において、前記フルオレン環の1, 3, 4, 5, 6, 7, 8位がフッ素で置換された一般式(4)で表される構成単位を含有するものであることを特徴とするフルオレン誘導体の有機化合物:
【化4】

[式中、X1およびX2は、水素原子、ハロゲン原子、またはヒドラジノ基であり、X1とX2は同一であっても異なっていてもよい]。

【公開番号】特開2009−249355(P2009−249355A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100668(P2008−100668)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000157119)関東電化工業株式会社 (68)
【Fターム(参考)】