説明

フッ素化ポリイミド外層を有する定着部材

【課題】離型液を添加する必要がなく(オイルフリー)、改良された磨耗および離型特性を示す定着部材を提供する。
【解決手段】定着部材は、基材4、およびその上に、次式の化合物


(式中、Arがフッ素化炭化水素基を表し、Rfがフッ素含有基を表し、Qが末端基であり、nが約20から約1,000までの炭素の数であり、oが0または1である)
を含むフッ素化ポリイミドを含む外層2を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、大まかには、デジタル、イメージオンイメージなどの静電写真方式の装置で使用するための画像装置およびその定着部品に関する。これらの定着部材は、トナー画像を転写基材に固定することを含む多くの目的に対して有用である。より具体的には、本開示は、フッ素化ポリイミドを含む外層を含む定着部品に関する。複数の実施形態において、そのフッ素化ポリイミドは架橋されている。複数の実施形態において、そのフッ素化ポリイミドは、芳香族セグメントおよびフッ素化脂肪族セグメントを含む。複数の実施形態において、そのフッ素化ポリイミドの外層は、ローラ、ベルト、フィルムなどの基材を含む多くの構成をとり得る基材の上に配置されている。複数の実施形態において、その基材と外層の間には、中間層および/または接着層が配置されている。複数の実施形態において、該定着システムは、オイルレスであり、したがって、離型オイル、離型剤、定着オイルなどを必要としない。該定着部材は、例えば、コピー機、プリンター、ファクシミリ、多機能機など、およびカラー機を含む電子写真機において有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
一般的な静電写真方式の複製装置では、コピーされるオリジナルの光画像が感光性部材上に静電潜像の形で記録され、次いでこの潜像は、一般的にトナーと称される、電気感知性の(electroscopic)熱可塑性樹脂粒子の適用によって可視化される。この時点では、この可視化されたトナー画像は、粉末がゆるやかに結合した形であるので、容易に形がくずれ、または破壊される可能性がある。このトナー画像は、通常、支持体上で固定または定着されるが、この支持体は、感光性部材それ自体であっても普通紙等の他の支持シートであってもよい。
【0003】
トナー画像を支持部材上に固定するために熱エネルギーを使用することは周知であり、方法には、さまざまな手段で熱と圧力とを実質的に同時に適用する方法が含まれる。それらの手段としては、例えば、圧力で接触状態に維持されているロールペア、ロールと圧接されているベルト部材、ヒーターと圧接されているベルト部材など、が挙げられる。熱は、ロールの片方または両方、プレート部材、またはベルト部材を加熱することによって加えることができる。ヒーターと圧接されている薄膜を用いる固定装置では電力消費量が小さく、ウォームアップ時間が著しく削減される、または不要である。
【0004】
定着過程においては、正常処理時に、トナー粒子の支持体から定着部材へのオフセットが最小限であるかまたは起こらないことが望まれる。定着部材上にオフセットされたトナー粒子は、その後機械のその他のパーツに移動、またはその後のコピーサイクル中に支持体上に移動し、かくして、背景ノイズ(background)を増やすか、または、そこにコピーされるものの邪魔になることがある。いわゆる「ホットオフセット」は、定着処理中に、トナーの温度がトナー粒子の液状化温度まで上昇し、融解したトナーの分断が起こったときに生じ、その一部が定着部材上に残ってしまう。そのホットオフセット温度またはそのホットオフセット温度の低下は、定着器の離型性の1指標であり、したがって、必要な離型を提供するには、低い表面エネルギーを有する定着表面を備えることが望ましい。定着器の良好な離型性を確保し、維持するために、定着処理時に定着ロールに離型剤を塗布することが慣例となっている。一般的には、これらの離型剤は、トナーのオフセットを防止するために例えばシリコーンオイルの薄膜として塗布される。
【0005】
オフセットを減少させるためのもう1つの方法は、定着器に帯電防止特性および/または電界制御トナー移動特性(field assisted toner transfer properties)を付与することである。しかしながら、離型層の電気伝導性を制御することにより、離型層の適合性(conformability)および低表面エネルギー特性が影響を受けることが多い。
【0006】
オイルレスの定着、エネルギー効率、および早いウォームアップ時間(例えば誘導加熱定着)に焦点を絞ることによって、ベルト定着の構成および信頼性/生産性が、定着ベルトの大きさの増加およびさらなるシステム手法によって現在達成されている。定着、特にオイルレス定着に対する現在の高い需要を満たす材料による解決策がごく少数存在する。2つの主要材料の選択としては、オイルレス定着用のPFA/PTFE、およびハイエンド生産用のオイルシステムと組み合わせて使用するVITON−GF(登録商標)(DuPont)フルオロエラストマーが挙げられる。力学的性質および熱伝導性を改良するために充填剤を添加することが、寿命改善に対する一般的な傾向である。
【0007】
PFAは、現在オイルレス定着用に選択する唯一の材料である一種のフッ素樹脂を表す。しかしながらこの材料を使用するマイナス面として、得られる力学的に剛性の材料がデンティング(denteing)によるか多数の回転により容易に損傷されることが挙げられる。また、PFAは、加工が困難であり、材料変形のための余地も限られている。また、PFAは、既知のコーティング方法が使用される場合、高い硬化温度を必要とする。
【0008】
次にVITON(登録商標)については、この材料は、力学的に柔軟性があり、衝撃エネルギーを吸収する能力があるので、生ずる損傷が少ないために、定着に対しては最もよく知られているフルオロエラストマーの1つである。その材料が必要とする硬化温度は低く、広範な材料変形の自由度を有する。しかしながら、このフルオロエラストマーは、この材料のフッ素含量が低いので、離型のためのオイルを必要とする。
【0009】
上記のポリマー類は、熱および化学安定性ならびに低い表面エネルギーなどの望ましい特性を有してはいるものの、これらの材料を使用する定着部材は、主として表面における磨耗および不十分な離型(オフセット)のために所望されるより短時間では機能しないままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,945,223号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
定着のための新たな材料系は、離型液を添加する必要がなく(オイルフリー)、改良された磨耗および離型特性を示すことが要求される。さらに、より少ないシステム部品で優れた定着性能を可能にするように調節が可能であり、製造に要する時間が短い外層定着材を提供することへの要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
複数の実施形態は、基材、およびその上に、次式I:
【化1】


(式中、Arがフッ素化炭化水素基を表し、Rfがフッ素含有基を表し、Qが末端基を表し、oが0または1であり、nが約20から約1,000までの範囲の整数である)
を含むフッ素化ポリイミドを含む外層を含む定着部材を含む。
【0013】
加えて、複数の実施形態は、静電潜像をその上に受けるための電荷保持性表面と、トナーを該電荷保持性表面に適用して静電潜像を現像し、該電荷保持性表面に現像画像を形成するための現像部品と、その現像画像を該電荷保持性表面からコピー基材に転写するための転写部品と、トナー画像をコピー基材の表面に定着するためのオイルレス定着部材とを有する記録媒体上に画像を形成するための画像形成装置を含み、該オイルレス定着部材が、離型のための定着オイルの存在を必要とせず、そのオイルレス定着部材が、基材、およびその上に、次式I:
【化2】


(式中、Arがフッ素化炭化水素基を表し、Rfがフッ素含有基を表し、Qが末端基であり、nが約20から約1,000までの炭素の数であり、oが0または1である)
を含むフッ素化ポリイミドを含む外層を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】概略の静電写真方式の装置を示す図である。
【図2】本明細書中の一実施形態による定着アセンブリの断面図である。
【図3】3層構造を有する定着ローラの実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
フッ素化ポリイミド類は、化学安定性および熱安定性を提供し、オイルレスの定着を可能にする高性能のポリマーである。相対的に高いフッ素化ポリイミドは、複数の実施形態において化学安定性および熱安定性を提供し、オイルレスの定着を可能にすることができる、高性能のポリマーである。調節可能な力学的、物理的および/または化学的性質は、比較的硬質の芳香族セグメントおよび比較的軟質のフッ素化脂肪族セグメントの成分比を調節することによって達成することができる。反応性部位を、硬化および/または架橋のための場所を調整するために導入することができる。該ポリイミドは、既知の反応、すなわち、芳香族二酸無水物類とジアミン類の間のポリ縮合によって調製することができる。その構造を適切に調整することによって、得られるポリイミドはオイルレスの定着用途に可能性のある望ましい特性を所有することができる。
【0016】
図1に関して、典型的な静電写真方式の複製装置においては、転写されるべきオリジナルの光画像は、感光性部材上に静電潜像の形で記録され、その潜像は、その後、通常トナーと称される電気感知性の熱可塑性樹脂粒子の適用によって可視化される。具体的には、感光体10は、電圧が電源11から供給されている充電器12によりその表面に帯電させる。その感光体は、そのとき、光学系または画像入力装置13、例えばレーザーダイオードおよび発光ダイオードなど、からの光に画像に合わせてさらし、その上に静電潜像を形成する。一般に、その静電潜像は、現像剤ステーション14からの現像剤混合物をそこと接触させることによって現像する。現像は、磁気ブラシ、パウダークラウド、またはその他の既知の現像プロセスの使用によって達成することができる。乾燥現像剤混合物は、通常、摩擦電気的にそこに付着しているトナー粒子を有するキャリア細粒を含む。トナー粒子は、そのキャリア細粒から潜像に引き付けられ、その上にトナー粉末画像を形成する。別法では、その中に分散しているトナー粒子を有する液体キャリアを含む液体の現像剤材料を採用することができる。その液体現像剤材料は、該静電潜像と接触するように前進させ、そのトナー粒子を画像形態でその上に堆積させる。
【0017】
そのトナー粒子が光伝導性表面上に画像形態で堆積された後、それらは、圧力転写または静電転写であり得る転写手段15によってコピーシート16に転写する。別法では、その現像された画像は、中間転写部材に転写し、その後コピーシートに転写することができる。
【0018】
現像された画像の転写が完了した後、コピーシート16は、定着および圧力ロールとして図1に描かれている定着ステーション19に進み、そこでコピーシート16を定着部材5と圧力部材6の間に通すことによって、コピーシート16にその現像された画像を定着させ、それによって恒久的な画像を形成する。感光体10は、転写後クリーニングステーション17に進み、そこで感光体10の上に残ったトナーをすべて、ブレード(図1に示されている)、ブラシ、またはその他のクリーニング器具の使用によって除去する。
【0019】
図2において、定着ローラ5は、任意の適当な金属、例えば、アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、スチール、ニッケル、銅、などから加工された中空のシリンダーまたはコアであり得、そのシリンダーと同一の広がりをもつそれの中空部分に配置されている適当な発熱体8を有する。
【0020】
バックアップまたは圧力ロール6は、定着ロール5と共に作用してニップまたは接点アーク9を形成し、コピー紙またはその他の基材16がそこを通ってその上のトナー画像21が定着ロール5の表面2と接触する。図2に示されているように、バックアップロール6は、その上に表面または層18を備えた硬いスチールのコア7を有している。
【0021】
複数の実施形態において、該定着システムはオイルレスであり、定着のために必要な離型剤は存在しない。定着ローラにオイルは塗布しないのでこのシステムには離型剤送出ローラは存在しない。しかしながら、他の複数の実施形態においては、該システムは、離型剤をもしかすると使用するかもしれない。
【0022】
該定着部品は、少なくとも3つの異なる構成のものを含むことができる。一実施形態において、該定着部品は、図2に示されているような2層構造のものである。発熱体8を有する定着部材5は、基材4を含む。基材4の上に位置しているのは外層2である。
【0023】
図3は、定着ローラ5が、内部に発熱体8と、その上に基材4をもち、かつ、基材4の上に位置する中間層26と、中間層26の上に位置する外層2を有する3層構造を示している。図3は、同じか異なるものであり得、場合によって中間層26、および/または場合によって外層2に分散させることができる随意的な充填剤3および充填剤28を示している。該層(複数可)中には、ゼロの、あるいは、1つまたは2つ以上のタイプの充填剤(複数可)を提供することができる。
【0024】
複数の実施形態において、図3に示されているように、外層2の上に位置する外側の離型層27を存在させることができる。
【0025】
適当な基材材料の例としては、ローラ基材の場合、金属類、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、スチール、ニッケル、などが挙げられる。フィルムタイプの基材の場合(基材が、定着ベルト、フィルム、ドレルト(drelt)(ドラムとベルトの中間物)などである場合)、適当な基材としては、高い作動温度(すなわち、約80℃より高いか、または200℃より高い)を可能にするのに適しており、高い機械的強度を示すことができる高温プラスチック類が挙げられる。
【0026】
該外層は、フッ素化ポリイミドを含む。フッ素化ポリイミド類のより具体的な例としては、次の一般式のものが挙げられ:
【化3】


および
【化4】


式中、Arは、約6から約60までの炭素、または約6から約20までの炭素のフッ素化炭化水素基を表し、Rf、RfおよびRfは、個々にフッ素含有基を表し、Lは、結合基を表し、Iおよびmは、それぞれ個々にその数値範囲が約0.1から約0.99までである繰り返し単位のモル分率を表し、nおよびpは、個々に約20から約1,000まで、または約30から約800まで、または約50から約500までの範囲の整数を表し、Qは、末端基を表し、oは0または1である。複数の実施形態において、Arは、芳香族基を表し、Rf、RfおよびRfは、脂肪族基を表す。
【0027】
複数の実施形態において、Arは、フルオロアルキルまたはフルオロアルキルエーテル置換基、例えば、−CF、−CF(CFCF、−(CFCFO)CFなどを含み、ここで、mは、0から約100まで、または約1から約80までの数であり、Arは、ピロメリット、ナフタル部分などの芳香族基を含む。Arは、約6から約60までの炭素、または約6から約40までの炭素を有するフルオロアルキルを含むことができる。
【0028】
Rf、RfおよびRfは、複数の実施形態において、式Rまたは−R−D−R−またはRのものを有することができ、ただし、Rは、フッ素化脂肪族基、例えば、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)およびそれらの混合物などを含み、Rは、アリール基を含むことができる。Rfは、フッ素化された基に連結した二価の基D、例えば、複数の実施形態において、−C2x−、−C2x−2−、−C2x−4−(xは、約1から約15まで、または約2から約10までの整数である)、−CH−C−または−C−C−、オキシカルボニル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、チオ基(−S−)、オキシ基(−O−)、イソシアノ基(−N=CH−O)、カルボニル基
【化5】


、スルホニル基
【化6】


、それらの組合せなど、あるいは2つ以上の上記の基が組み合わされている二価の基をさらに含有することができる。その二価の基は、置換基、例えばアルキル基、フェニル基、アルコキシ基またはアミノ基などをその側鎖上に有することができる。
【0029】
の典型的な例としては、ペルフルオロエーテルセグメント類、例えば、CH−(CF−CH、−(C2nO)−、−CHCFO(C2nO)CFCH−、−CHCHOCHCFO(C2nO)CFCHOCHCH−など、およびそれらの混合物が挙げられ、ただし、C2nは、線状または分枝ペルフルオロカーボン鎖であり、nは、約1から約6まで、または約1から約5までの数であり、xは、約1から約500まで、または約1から約300まで、または約1から約100までの繰り返し単位の数である。
【0030】
複数の実施形態において、Rは、ポリ(ジフルオロメチレンオキシド)、ポリ(テトラフルオロエチレンオキシド)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)、ポリ(テトラフルオロエチレンオキシド−co−ジフルオロメチレンオキシド)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド−co−ジフルオロメチレンオキシド)、およびポリ(テトラフルオロエチレンオキシド−co−ヘキサフルオロプロピレンオキシド−co−ジフルオロメチレンオキシド)からなる群から選択されるペルフルオロポリエーテル成分を含む。
【0031】
複数の実施形態において、Rは、
【化7】


およびそれらの混合物からなる群から選択されるランダムまたはブロックコポイマーを含み、式中、i、j、およびkは、それぞれ0から約200までの範囲にあって、約1から約100までの数を表し、i+j+kの合計が約3から約500まで、または約5から約250までの範囲である。
【0032】
は、また、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)、およびそれらの混合物からなる群から選択されるモノマーの繰り返し単位を含むこともできる。
【0033】
芳香族Ar基およびR基の例としては、芳香族部分が挙げられ、その芳香族部分は、フッ素原子を含むことができる。例としては、次の部分
【化8】


およびそれらの混合物が挙げられ、ただし、上記芳香族中のRf’およびRfは、上に挙げたもの、例えば、フッ素原子または約1から約100まで、または約2から約50まで、または約3から約25までの炭素のフッ素化アルキル基などのようなフッ素化脂肪族基の結合の点を表しており、Rは、結合基、例えば、ヘキサフルオロメチルイソプロピリデン基
【化9】


、チオ基(−S−)、オキシ基(−O−)、イソシアノ基(−N=CH−O−)、カルボニル基
【化10】


、スルホニル基
【化11】


、2つ以上の上記の基が組み合わさっている二価の基などである。
【0034】
二価の結合Lの例としては、アミド基
【化12】


、エーテル基(−O−)、ウレタン基(−N=CH−O−)、チオ基(−S−)、エステル基
【化13】


、カーボネート基
【化14】


、および2つ以上の上記の基が組み合わされている二価の基が挙げられる。
【0035】
上記フッ素化ポリイミド類は、二酸無水物をジアミンと次のスキーム1で示されているように反応させることによって調製することができ、
【化15】


ただし、スキーム1において、nは、約20から約1,000まで、または約30から約800まで、または約50から約500までの数であり、Rfは、RまたはR−D−Rであることができ、ここでRは、フッ素化脂肪族基、例えば、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)およびそれらの混合物などを含み、Rは、アリール基を含むことができる。Rfは、フッ素化された基に連結した二価の基D、例えば、複数の実施形態において、−C2x−、−C2x−2−、−C2x−4−(xは、約1から約15まで、または約2から約10までの整数である)、−CH−C−または−C−C−、オキシカルボニル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、チオ基(−S−)、オキシ基(−O−)、イソシアノ基(−N=CH−O)、カルボニル基
【化16】


、スルホニル基
【化17】


、それらの組合せなど、あるいは2つ以上の上記の基が組み合わされている二価の基をさらに含有することができる。その二価の基は、置換基、例えばアルキル基、フェニル基、アルコキシ基またはアミノ基などをその側鎖上に有することができる。エレメント「n」は、ポリマー中のセグメントの繰り返し単位の数を表し、nは、約20から約1,000まで、約30から約800まで、または約50から約500までである。
【0036】
Arの具体例としては、二酸無水物類、例えば、
【化18】


が挙げられ、Arは、また、ジアミンであり得、ジアミン類の具体例としては、
【化19】


およびそれらの混合物が挙げられ、ここで上記酸無水物中のRfおよびRf’は、フッ素、フッ素化アルキル基、例えば、−CF、−CF(CFCF、−(CFCFO)CFを表し、ただし、mは、約0から約100まで、または約1から約50まで、または約1から約20までの数であり;Rは、結合基、例えば、ヘキサフルオロメチルイソプロピリデン基
【化20】


、チオ基(−S−)、オキシ基(−O−)、イソシアノ基(−N=CH−O−)、カルボニル基
【化21】


、スルホニル基
【化22】


、ウレタン基、およびそれらの組合せ、または2つ以上の上記の基が組み合わさっている二価の基などであり、Lは、二価の結合基、例えば、オキシカルボニル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、チオ基(−S−)、オキシ基(−O−)、イソシアノ基(−N=CH−O−)、カルボニル基
【化23】


、スルホニル基
【化24】


、ウレタン基、およびそれらの組合せなどであり、Rは、上記と同じである。
【0037】
二価結合基Lの例としては、アミド基
【化25】


、エーテル基(−O−)、ウレタン基(−N=CH−O−)、チオ基(−S−)、エステル基
【化26】


、カーボネート基
【化27】


、2つ以上の上記の基が組み合わされている基が挙げられる。
【0038】
反応性の基は、一般式:
【化28】


(式中、Qは、
【化29】


およびそれらの混合物からなる群から選択される)の中の反応性官能基(Q)を含有するモノアミノまたはモノ酸無水物化合物との末端キャップによるポリイミドのさらなる架橋のために導入することができる。
【0039】
複数の実施形態において、該フッ素化ポリイミドは、次式
【化30】


を有することができ、式中、xは、約1から約100まで、または約2から約50までの数であり、p、n、およびmは、約10から約1,000まで、または約10から約500まで、または約20から約500まで、または約20から約400までの範囲の繰り返し単位の数である。
【0040】
充填剤を該外層中に存在させることができる。その充填剤は、金属、例えば、銅、アルミニウムまたは同種のものあるいはそれらの混合物など;金属酸化物、例えば、酸化マグネシウム、酸化マンガン、アルミナ、酸化銅、チタニア、シリカなど;その他の無機充填剤、例えば窒化ホウ素、シリカカーバイド、雲母、または同種の酸化物あるいはそれらの混合物など;カーボン充填剤、例えば、カーボンブラック、グラファイト、フッ素化カーボンブラック、または同種のものあるいはそれらの混合物など;ポリマー充填剤、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアニリン、または同種のポリマー充填剤あるいはそれらの混合物など;あるいはその他の同種の充填剤またはその混合物であり得る。その充填剤は、外層組成物中に、全固体の約3から約50重量パーセントまで、または約5から約30重量パーセントまで、または約10から約20重量パーセントまでの量で存在する。
【0041】
複数の実施形態において、外側のフッ素化ポリイミド層は、架橋されている。適当な架橋剤の例としては、遊離ラジカル開始剤類、例えば、アゾタイプ(AIBN)、過酸化物類(BPO)など、ビフェノール、例えば、ハイドロキノンなど、ビスフェノール、例えば、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)またはビスフェノールAF(Dupont製のVC50等の市販製剤中の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)など、アミノシラン、例えば、AO700(Gelest製のアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン架橋剤)など、ジアミン、例えば、ヘキサメチレンジアミンなど、およびマスクしたジアミン、例えば、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。「マスクした」ジアミンとは、アミン官能性への官能基の配位を意味する。複数の実施形態において、フルオロポリマーは、溶媒に溶解し、架橋剤は架橋を可能にするその他の成分と共に加える。
【0042】
架橋フッ素化ポリイミドは、二酸無水物モノマーとジアミンモノマーとをNMP等の極性の非プロトン性の有機溶媒中で反応させることによって調製することができる。その重合は、1段階プロセスまたはポリ(アミック酸)(PAA)を経る二段階プロセスで行うことができる。該溶液可溶性ポリイミド類は、イミドの形で処理することができる。しかしながら、不溶性のポリイミド類は、ポリ(アミック酸)の形で処理する必要がある。そのポリ(アミック酸)フィルムは、その溶液から成型することができ、それは加熱によってポリイミドに変換することができる。ラジカル開始剤が存在するときのさらなる加熱は、そのポリイミドフィルムの架橋をもたらす。
【0043】
その外側の材料の組成物は、任意の適当な既知の方法で基材にコートすることができる。該補強剤上に上記材料をコートするための一般的な技法としては、液体フローコーティング、ディップコーティング、巻き線ロッドコーティング、流動床コーティング、粉体コーティング、静電スプレー、音波スプレー、ブレードコーティングなどが挙げられる。一実施形態においては、該フッ素化ポリイミド材料は、該基材にフローコートする。
【0044】
その外層は、約5から約100μmまで、または約20から約40μmまで、または約15から約25μmまでの厚さにコートする。
【0045】
一実施形態において、該外層は、任意の既知の方法、例えば、研磨、艶出し、研削、ブラスチング、コーティング、または同種のものなどによって修正することができる。複数の実施形態において、該外側のフッ素化ポリイミド層は、約0.02から約1.5マイクロメートルまで、または約0.3から約0.8マイクロメートルまでの表面粗さを有する。
【0046】
複数の実施形態において、中間層は、該基材と外層の間に配置することができる。その他の実施形態においては、外側の離型層をその外層の上に配置することができ、またはその定着部材は、オイルレスであり得る−すなわち適切な離型のための離型剤または定着オイルを必要としない。
【0047】
適当な中間層または適当な随意的な外側の離型層の例としては、シリコーンゴム、フルオロポリマー、ウレタン、アクリル、チタマー(titamer)、セラマー(ceramer)、ヒドロフルオロエラストマー、ポリマー類(例えば、ホモポリマー類、コポリマー類、ターポリマー類および同種のものなど)またはそれらの混合物と、充填剤、例えば、カーボンブラックおよび/または酸化アルミニウムなどが挙げられる。複数の実施形態において、該中間層は、シリコーンゴムを含む。
【0048】
その随意的な中間層および/または随意的な外側の離型層は、任意の既知の適当な技法を用いてその外層にコートすることができる。一実施形態において、そのさらなる層は、スプレーコートまたはフローコートすることができる。
【0049】
該中間層は、約2から約10mmまで、または約3から約9mmまで、または約5から約8mmまでの厚さを有することができる。
【0050】
該外側の離型層は、随意的な実施形態において、該外層上に、約1から約50μmまで、または約5から約30μmまでの厚さまでコートすることができる。該外側の離型層は、中間層として用いるための上記のポリマーコーティングのどれかを使用することができる。
【0051】
該定着部品は、任意の適当な形態のものであり得る。適当な形態の例としては、シート、フィルム、ウェブ、ホイル、ストリップ、コイル、シリンダー、ドラム、ローラ、エンドレスストリップ、円板、エンドレスベルトを含めたベルト、エンドレスの継ぎ目付きフレキシブルベルト、エンドレスの継ぎ目無しのフレキシブルベルト、パズルカット継ぎ目を有するエンドレスベルトなどが挙げられる。一実施形態において、該定着部材は、定着ローラである。複数の実施形態において、該定着ローラの基材は、金属、例えば、アルミニウムまたはスチールなどである。複数の実施形態において、該基材は定着ベルトである。
【0052】
場合によっては、任意の既知でかつ使用可能な適当な接着層を、該外層と該基材の間、および/または該外層と該外側の離型層の間に配置することができる。適当な接着剤の例としては、シラン類、例えば、アミノシラン類(例えば、Dow Corning製のHV Primer 10など)、チタン酸塩類、ジルコン酸塩類、アルミン酸塩類など、およびそれらの混合物が挙げられる。一実施形態においては、約0.001から約10パーセントまでの溶液中の接着剤を該基材の上に塗りつけることができる。その接着剤層は、該基材上、または該外層上に、約2から約2,000ナノメートルまで、または約2から約500ナノメートルまでの厚さにコートすることができる。該接着剤は、スプレーコーティングまたはワイピングを含めた任意の既知の適切な技法によってコートすることができる。
【実施例】
【0053】
実施例1:
フッ素化ポリイミド−1:
【化31】


(式中、nおよびmは、各成分のモル分率であり、nは、約0.01から約0.99までの数であり、mは、約0.99から約0.01までの数であり、n+m=1である)の合成。
【0054】
二酸無水物、ジアミンおよびポリ(テトラフルオロエチレンオキシド−co−ジフルオロメチレンオキシド)a,w−ジカルボン酸モノマーを、触媒としての少量のイソキノリンと共にm−クレゾール中、高温(200℃)で重合させる。得られるポリマー溶液をメタノール中で沈殿させる。そのポリマーを、溶解し、沈殿させることによってメタノール中で2回洗浄し、100℃で12時間乾燥させる。
【0055】
実施例2:
フッ素化ポリイミド−2の合成:
【化32】


二酸無水物とジアミンモノマーとを触媒としての少量のイソキノリンと共に比較的高温(200℃)でm−クレゾール中で重合させる。その得られるポリマー溶液をメタノール中で沈殿させる。そのポリマーを、溶解し、沈殿させることによってメタノール中で2回洗浄し、100℃で12時間乾燥させる。
【0056】
実施例3:
定着器部材コーティングの形成:
定着器部材コーティング配合物を、該フッ素化ポリイミド−Iを有機溶媒(例えば、メチルイソブチルケトン)中に溶解して調製する。その得られた溶液を、予めシリコーンゴム層をコートしてある定着ロール上にフローコーティング技術によってコートする。
【符号の説明】
【0057】
1 定着ロールの外層表面、2 外層(表面)、3,28 充填剤、4 基材、5 定着部材(定着ローラ)、6 圧力部材(圧着ローラ,バックアップロール)、7 コア、8 発熱体、9 定着ロールとバックアップロールの接点アーク、10 感光体、11 電源、12 充電器、13 画像入力装置、14 現像剤ステーション、15 転写手段、16 コピーシート、17 クリーニングステーション、18 バックアップロールの表面または層、19 定着ステーション、21 トナー画像、26 中間層、27 定着ロールの外側の離型層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、およびその上に、次式I
【化1】


(式中、Arがフッ素化炭化水素基を表し、Rfがフッ素含有基を表し、Qが末端基であり、nが約20から約1,000までの炭素の数であり、oが0または1である)
を含むフッ素化ポリイミドを含む外層を含むことを特徴とする定着部材。
【請求項2】
請求項1に記載の定着部材であって、Arが約6から約60個までの炭素の芳香族基を含み、Rfがフッ素含有脂肪族基を含むことを特徴とする定着部材。
【請求項3】
請求項1に記載の定着部材であって、Rfが、−R−および−R−D−R−(ただし、RおよびRは、それぞれフッ素化炭化水素基を含み、Dは二価の結合基を表す)からなる群から選択されることを特徴とする定着部材。
【請求項4】
請求項3に記載の定着部材であって、Dが、オキシカルボニル基、アミド基、チオ基、オキシ基、ウレタン基、カルボニル基、およびスルホニル基からなる群から選択される二価の結合基であることを特徴とする定着部材。
【請求項5】
請求項1に記載の定着部材であって、Arが、
【化2】


(式中、Rf’が、フッ素原子および約1から約100個までの炭素のフッ素化アルキル基からなる群から選択され、Rが、ヘキサフルオロメチルイソプロピリデン基、チオ基、オキシ基、ウレタン基、カルボニル基、スルホニル基、およびそれらの組合せからなる群から選択される結合基である)
からなる群から選択されることを特徴とする定着部材。
【請求項6】
請求項1に記載の定着部材であって、Qが、
【化3】


およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする定着部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−92048(P2010−92048A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230143(P2009−230143)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】