説明

フッ素樹脂基板の製造方法

【課題】従来の高周波回路基板に比べて、さらに伝送遅延および伝送損失が充分に小さいフッ素樹脂基板の製造方法を提供する。
【解決手段】表面が粗面化処理およびプライマー処理されていない配線用の金属導体とフッ素樹脂を積層して積層体を作製する積層体作製工程と、積層体に100ppm以下の酸素濃度および前記フッ素樹脂の融点以上で前記フッ素樹脂の融点+30℃未満の温度の雰囲気下、電離性放射線を50〜500kGyの照射量で照射する電離性放射線照射工程と有している高周波回路基板の製造方法。金属導体およびフッ素樹脂を交互に積層して多層化した状態で電離性放射線を照射する高周波回路基板の製造方法。金属導体の表面粗さRzが、2.0μm以下である。フッ素樹脂が、PTFE、PFA、FEP、ETFEの1種または2種以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波通信装置に使用されるフッ素樹脂基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信量は増大する一方であり、これに応えるため、例えばICカード、携帯電話等の機器においてはマイクロ波、ミリ波といったより周波数が高い領域での通信が盛んになってきている。このため、高周波領域での使用が可能で伝送遅延および伝送損失がより小さい高周波回路基板が求められている。
【0003】
伝送遅延に関係する伝送速度Vと伝送損失αdとは、基板材料の比誘電率εrおよび誘電正接tanδを用いて、下記(式1)、(式2)のように示すことができる。
V∝1/√εr・・・・・・・・・・(式1)
αd∝f×√εr×tanδ・・・・(式2)
ただし、f:周波数
【0004】
(式1)より伝送遅延を小さく(伝送速度Vを大きくする)ためには、比誘電率εrが小さい(低比誘電率)材料が用いられることが好ましいことが分かる。また、(式2)より伝送損失αdを小さくするためには、比誘電率εrおよび誘電正接tanδが小さいことが好ましいことが分かる。
【0005】
このような低比誘電率、低誘電正接の材料として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂があり、金属基材(導体)上にフッ素樹脂からなる誘電体層を形成させて高周波回路基板(フッ素樹脂基板)を製造する技術が開発されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−7466号公報
【特許文献2】特許第4296250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法により製造されたフッ素樹脂基板は、周波数1GHzにおいて、合成比誘電率が2.6、合成誘電正接が0.0007、周波数1GHzにおける伝送損失が−4dB/m程度に留まっており、前記した近年の要請に対して、伝送遅延および伝送損失が充分に低減されているとは言えなかった。
【0008】
そこで、本発明は、従来のフッ素樹脂基板に比べて、さらに伝送遅延および伝送損失が充分に小さいフッ素樹脂基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するに当って、まず、従来のフッ素樹脂基板の製造方法における問題点につき検討を行った。
【0010】
前記したように、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂は、低比誘電率、低誘電正接の材料であり、高周波回路基板の誘電体層として好ましい。
【0011】
しかし、このフッ素樹脂は、表面エネルギーが著しく低く、非粘着性であるため、金属導体(金属基材)との密着を充分に確保することができず、充分な剥離強度(ピール強度)を得ることができない。
【0012】
剥離強度が不足していると、金属基材をエッチングして回路を形成する際に、金属基材と誘電体層とが剥離してその隙間にエッチング液が入る恐れがある。また、特に、FPC(フレキシブル回路基板)の場合には、使用中に剥がれてしまうことがある。この結果、伝送遅延および伝送損失が充分に小さいフッ素樹脂基板を製造することができなかったと考えられる。
【0013】
そこで、剥離強度を高める手段として、プライマーや接着剤を介して金属導体(金属基材)と誘電体層とを接着する方法が考えられる。フッ素樹脂を金属基材に接着させるためのプライマーとしては、PES、PEEK、PAIおよびこれらの樹脂にフッ素樹脂を混合したものが使用される。しかし、プライマーや接着剤は、一般に、誘電体層に比べて比誘電率が高いため伝送速度が小さくなり、伝送遅延および伝送損失を充分に低減することができない恐れがある。
【0014】
また、別の手段として、金属基材の表面をエッチング等により予め粗面化しておき、この粗面におけるアンカー効果を利用して剥離強度を高めることが考えられる。
【0015】
しかしながら、金属基材は高い周波数では表皮効果により電流が導体の表面部分を流れるため、粗面化した場合伝播距離が長くなり伝送遅延が生じる。また、抵抗減衰や漏洩減衰も大きくなるため伝送損失が大きくなる恐れがある。
【0016】
そこで、本発明者は、種々の実験と検討を行った結果、金属導体(金属基材)を粗面化処理およびプライマー処理することなくフッ素樹脂を直接塗布し、100ppm以下の酸素濃度および前記フッ素樹脂の融点以上で前記フッ素樹脂の融点+30℃未満の温度の雰囲気下、電離性放射線を50〜500kGyの照射量で照射することによりフッ素樹脂を架橋した場合、フッ素樹脂の炭素原子と金属基材の金属原子との間に化学的な結合を形成して金属基材とフッ素樹脂とを強固に密着させることができ、伝送遅延および伝送損失が充分に低減されたフッ素樹脂基板を得ることができることが分かった。
【0017】
請求項1に記載の発明は、上記の知見に基づく発明であり、
表面が粗面化処理およびプライマー処理されていない配線用の金属導体とフッ素樹脂を積層して積層体を作製する積層体作製工程と、
前記積層体に、100ppm以下の酸素濃度および前記フッ素樹脂の融点以上で前記フッ素樹脂の融点+30℃未満の温度の雰囲気下、電離性放射線を50〜500kGyの照射量で照射する電離性放射線照射工程と
を有していることを特徴とするフッ素樹脂基板の製造方法である。
【0018】
本請求項の発明においては、プライマーや接着剤を用いることなく、粗面化処理されていない平滑な表面を有する金属導体(金属基材)とフッ素樹脂を積層して積層体を作製し、この積層体に電離性放射線を照射することにより、フッ素樹脂を架橋させて誘電体層を形成させると共に、金属導体(金属基材)とフッ素樹脂とを強固に密着させている。このため、高い剥離強度で、伝送遅延および伝送損失が充分に低減されたフッ素樹脂基板とすることができる。また、抵抗減衰や漏洩減衰が小さいため、伝送損失を低減することができる。
【0019】
本請求項の発明における「電離放射線」としては、X線、γ線、電子線、高エネルギーイオン束などを挙げることができる。また、電離性放射線の照射線量としては、フッ素樹脂の炭素原子と金属基材の金属原子との間に化学的な結合を形成させることを考慮して、電離性放射線が金属基板に到達することができる照射線量、具体的には、50〜500kGyが好ましい。
【0020】
請求項2に記載の発明は、
前記金属導体の表面粗さRz(JIS B 0601−1994)が、2.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂基板の製造方法である。
【0021】
本請求項の発明においては、表面粗さRzが2.0μm以下の金属導体(金属基材)上にフッ素樹脂を積層し電離性放射線を照射して、フッ素樹脂基板を製造しているため、得られた高周波回路基板はGHz帯以上の周波数に対して伝送遅延および伝送損失が充分に小さいフッ素樹脂基板となる。
【0022】
即ち、表皮の深さは、周波数が高くなるに従い浅くなる。例えば、銅の場合の表皮の深さdは、d=6.60×10−2/√fとなり、周波数の平方根に比例する。GHz帯以上の周波数に対しては、表面粗さRz(十点平均粗さ:JIS B 0601−1994)を2.0μm以下に制御することにより、伝送遅延や伝送損失を充分に小さくすることができる。
【0023】
請求項3に記載の発明は、
前記金属導体と前記フッ素樹脂とがJIS K 5400(1998年度版)に準拠した碁盤目試験において100回繰り返し引き剥がしを行った後も剥離しない剥離強度となるように、前記電離性放射線を照射することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフッ素樹脂基板の製造方法である。
【0024】
碁盤目試験において100回繰り返し引き剥がしを行った後も剥離しない剥離強度となるように電離性放射線を照射することにより、金属基材とフッ素樹脂とが強固に密着され、伝送遅延および伝送損失が充分に低減されたフッ素樹脂基板を製造することができる。
【0025】
なお、ここでいう「剥離しない」とは、上記碁盤目試験における評点が98点(100個の碁盤目数に対して剥離しなかった数が98個)以上であることを指す。
【0026】
請求項4に記載の発明は、
前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)の1種または2種以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のフッ素樹脂基板の製造方法である。
【0027】
これらのフッ素樹脂は、低比誘電率、低誘電正接の材料であると共に、耐熱性が優れている。そして、透湿度が小さいため回路基板のインピーダンスが湿度の影響を受けにくく安定している。
【0028】
本請求項の発明においては、このようなフッ素樹脂を平滑な表面を有する金属導体(金属基材)上に積層し、電離性放射線を照射して誘電体層を形成させているため、低比誘電率、低誘電正接のフッ素樹脂基板を製造することができる。
【0029】
これらのフッ素樹脂の内でも、PTFEは比誘電率、誘電正接の双方が最も低いため最も好ましく、PFA、FEPの順に好ましい。
【0030】
請求項5に記載の発明は、
前記金属導体および前記フッ素樹脂を交互に積層して多層化した状態で電離性放射線を照射することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のフッ素樹脂基板の製造方法である。
【0031】
多層化した状態で電離性放射線を照射することにより、効率よくフッ素樹脂基板を製造することができる。
【0032】
請求項6に記載の発明は、
前記フッ素樹脂の厚さが0.5〜50μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のフッ素樹脂基板の製造方法である。
【0033】
フッ素樹脂(誘電体層)の厚さが薄すぎる場合、誘電体としての機能を充分に発揮させることができない。一方、厚すぎる場合には、特性インピーダンスが大きくなる。フッ素樹脂の好ましい厚さは0.5〜50μmであり、5〜30μmであるとより好ましい。
【0034】
請求項7に記載の発明は、
前記金属導体が、厚さ1μm〜2mmの銅または銅合金であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のフッ素樹脂基板の製造方法である。
【0035】
金属導体(金属基材)としては、銅、アルミニウム、鉄、ニッケルや、SUS鋼、アルミニウム合金等の合金やこれらの複合体を用いることができるが、これらの内でも、銅や銅合金は導電率が特に高いため、伝送損失がより小さいフッ素樹脂基板の金属基材として好ましい。
【0036】
銅板や銅合金板の厚さが薄すぎる場合、基材としての強度を確保することができない。一方、表皮効果を利用できればよいため、必要以上に厚くする必要はない。銅板や銅合金板の好ましい厚さは1μm〜2mmであり、5〜500μmの銅箔や銅合金箔であるとより好ましい。
【0037】
請求項8に記載の発明は、
周波数1GHz以上において伝送損失が−3dB/m以下のフッ素樹脂基板を製造することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のフッ素樹脂基板の製造方法である。
【0038】
前記したフッ素樹脂基板の製造方法を用いることにより、合成比誘電率が2.6以下、合成誘電正接が0.0007以下のフッ素樹脂基板を得ることができ、周波数1GHzにおける伝送損失が−3dB/m以下に制御されて、伝送遅延および伝送損失が充分に低減されたフッ素樹脂基板を製造することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、従来のフッ素樹脂基板に比べて、さらに伝送遅延および伝送損失が充分に小さいフッ素樹脂基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態における誘電体層の形成方法を説明する図である。
【図2】本発明の一実施の形態により製造される3層タイプのフッ素樹脂基板の断面構造を模式的に示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態により製造される多層タイプのフッ素樹脂基板の断面構造を模式的に示す図である。
【図4】電気的特性の評価を行うための試験体の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。
【0042】
1.フッ素樹脂基板の製造方法
始めに、本実施の形態に係るフッ素樹脂基板の製造方法につき図1を用いて説明する。図1において、1は金属基板(金属導体)、2はフッ素樹脂である。
【0043】
(1)金属基板の準備
最初に、金属基板(金属導体)1を準備する。金属基板1としては、前記したように1μm〜2mm厚さの銅を用いることが好ましい。
【0044】
(2)フッ素樹脂塗膜の形成
次に、準備した金属基板1上にフッ素樹脂の塗膜を形成する。フッ素樹脂2はディスパージョンとして供給され、先ず、金属基板1上にフッ素樹脂2を滴下する(図1(a))。その後、スピンコート法やキャスティング法などを用いて金属基板1上に均一に塗布し、乾燥させる。その後、さらに、360℃で焼成して(酸化防止のため、好ましくは窒素ガス雰囲気下で行う)、フッ素樹脂2の塗膜を形成させる(図1(b))。フッ素樹脂2としては、前記したように0.5〜50μm厚さのPTFEを用いることが好ましい。
【0045】
(3)電離放射線の照射
次に、電離放射線を照射して、フッ素樹脂2を架橋させて誘電体層を形成させると共に、フッ素樹脂2の炭素原子と金属基板1の金属原子との間に化学的な結合を形成させて金属基板1とフッ素樹脂2とを強固に密着させる(図1(c))。電離放射線としては、前記の通り、X線、γ線、電子線、高エネルギーイオン束などを挙げることができる。
【0046】
2.フッ素樹脂基板の構成
次に、上記の製造方法を用いて製造されたフッ素樹脂基板の構成について説明する。
【0047】
図2は、上記の製造方法により製造された3層タイプのフッ素樹脂基板の断面構造を模式的に示す図である。図2において、11はフッ素樹脂基板であり、12は誘電体層(PTFE)であり、14はCuである。また、33はグランド(導体)(Cu)である。
【0048】
3.多層タイプのフッ素樹脂基板の作製
上記の3層タイプフッ素樹脂基板の製造方法に替えて、金属基板のエッチングや切削あるいは印刷等の手法により形成された導体と誘電体(フッ素樹脂)層とを交互に積層した後、全体を電子線照射することにより多層タイプのフッ素樹脂基板を製造することもできる。この製造方法の場合、表面に導体が形成された誘電体層を所定数積層し、全体を一度に電子線照射することによりフッ素樹脂基板を製造する製造方法であるため、効率良い製造が可能となる。
【0049】
図3は、この実施の形態より製造された多層タイプのフッ素樹脂基板の断面構造を模式的に示す図であり、21はフッ素樹脂基板、22は誘電体層であり、23は金属基板をエッチングすることにより形成された導体である。また、33はグランド(導体)(Cu)である。
【0050】
上記各タイプのフッ素樹脂基板において、導体23の厚さt1は、好ましくは1〜2000μmに設定され、より好ましくは10〜300μmに設定される。これにより、前記したように、基材としての強度が確保できると共に、適切な厚さで表皮効果を利用することができる。
【0051】
また、誘電体層12および22の厚さt2は、好ましくは0.5〜200μmに設定され、より好ましくは0.5〜50μmに設定される。これにより、前記したように、誘電体としての機能が充分に発揮できると共に、適切な特性インピーダンスに抑えることができる。
【0052】
(実施例1)
以下の実施例は、接着力の評価を行った実施例である。
【0053】
1.試験体の作製
福田金属箔粉工業社製電解銅箔CF−LB9(厚み:20μm、表面粗度:Rz=1.0μm)を希硫酸に浸漬して、酸化防止のためのコーティングが除去された銅箔を得た。
【0054】
次に、銅箔上に、ダイキン工業社製PTFEディスパージョン(EK−3700)をキャスティングにより塗布、乾燥した。その後、窒素雰囲気(酸化防止のため)下、360℃で焼成し、15μmのPTFE膜を銅箔上に作製した。
【0055】
次に、PTFE膜が作製された銅箔を、日新電機社製電子線照射装置(加速電圧:1.13MeV)を用いて、照射時温度340℃、酸素濃度5PPMの雰囲気下で、300kGyの電子線照射を行い、PTFEを架橋させると同時に、銅箔とPTFEを接着させて、実施例1の試験体を得た。
【0056】
また、比較例1として、電子線照射を行わない他は、実施例1と同様にして、比較例1の試験体を得た。
【0057】
なお、本実施例においては、表面粗度Rz=1.0μmの銅箔を使用したが、電子線照射でPTFEと銅箔を接着させる技術を用いることにより、任意の表面粗度の銅箔をPTFEと接着させることができる。
【0058】
2.接着力の評価
実施例1および比較例1の各試験体を用いて、JIS K 5400(1998年版)に準拠する碁盤目試験を実施した(テープ剥離回数100回)。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示すように、電子線照射を施さない比較例1の試験体では1回目のテープ剥離で全て簡単に剥離したが、電子線照射を施した実施例1の試験体では100回の碁盤目試験でも全く剥離することがなく、電子線照射により充分な剥離強度が得られることが分かる。
【0061】
(実施例2)
以下の実施例は、電気的特性の評価を行った実施例である。
【0062】
試験体として、表2に示す表面粗度Rzの銅箔(厚さ35μm)および誘電体層により、図4に示すストリップライン構成の3層プリント配線板を作製した(長さ:1m、インピーダンス:50Ω)。なお、比較例2は一般に用いられる誘電体であるエポキシを用いた例であり、比較例3はPTFE層との接着性維持のために従来一般的に用いられていた粗い表面粗度Rzの銅箔にPTFE層の誘電体層を形成した例である。
【0063】
各試験体における比誘電率εrおよび誘電正接tanδを求め、さらに周波数1GHzおよび10GHzにおける伝送損失(減衰定数)を評価した。結果を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
表2に示すように、PTFEを用いて誘電体層を形成することにより、伝送損失を低減できることが分かる。また、同じPTFEを用いた場合、表面粗度Rzが小さい、平滑な基材の方が伝送損失を低減できることが分かる。
【0066】
そして、実施例2において表皮の深さは、周波数1GHzにおいて4μm、10GHzにおいて0.7μmであり、充分浅いことが計算された。
【0067】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 金属基材(金属導体)
23 導体
2 フッ素樹脂
11 3層タイプのフッ素樹脂基板
12、22、32 誘電体層
14 Cu
21 多層タイプのフッ素樹脂基板
31 銅箔
33 グランド(導体)
t1 導体の厚さ
t2 誘電体層の厚さ
W 線路幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が粗面化処理およびプライマー処理されていない配線用の金属導体とフッ素樹脂を積層して積層体を作製する積層体作製工程と、
前記積層体に、100ppm以下の酸素濃度および前記フッ素樹脂の融点以上で前記フッ素樹脂の融点+30℃未満の温度の雰囲気下、電離性放射線を50〜500kGyの照射量で照射する電離性放射線照射工程と
を有していることを特徴とするフッ素樹脂基板の製造方法。
【請求項2】
前記金属導体の表面粗さRz(JIS B 0601−1994)が、2.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂基板の製造方法。
【請求項3】
前記金属導体と前記フッ素樹脂とがJIS K 5400(1998年度版)に準拠した碁盤目試験において100回繰り返し引き剥がしを行った後も剥離しない剥離強度となるように、前記電離性放射線を照射することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフッ素樹脂基板の製造方法。
【請求項4】
前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)の1種または2種以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のフッ素樹脂基板の製造方法。
【請求項5】
前記金属導体および前記フッ素樹脂を交互に積層して多層化した状態で電離性放射線を照射することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のフッ素樹脂基板の製造方法。
【請求項6】
前記フッ素樹脂の厚さが0.5〜50μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のフッ素樹脂基板の製造方法。
【請求項7】
前記金属導体が、厚さ1μm〜2mmの銅または銅合金であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のフッ素樹脂基板の製造方法。
【請求項8】
周波数1GHz以上において伝送損失が−3dB/m以下のフッ素樹脂基板を製造することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のフッ素樹脂基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−244056(P2012−244056A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114879(P2011−114879)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】