説明

フッ素系界面活性剤及びそれを用いた感光性組成物

【課題】 水溶性に優れ、コーティング用組成物、特に薄膜コーティングであるレジスト組成物として用いた際に、優れた塗布性を発現するフッ素系界面活性剤、特には、パーフルオロアルキル基中の炭素数が短いものからなる、前述の性能を有するフッ素系界面活性剤、及びこれを用いた感光性組成物を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)
−[OCFCF(CF)]−OCF・・・・・(1)
(式中、nは1〜10の整数を示す。)
で表されるフッ素化ポリオキシプロピレン鎖を有する化合物(A)からなることを特徴とするフッ素系界面活性剤、及びこれを用いた感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性に優れ、コーティング用組成物、特に感光性組成物として用いた際に、優れた塗布性を発現するフッ素系界面活性剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フッ素系界面活性剤は含フッ素基に由来する表面張力低下能が高いことから、均質塗布性が要求されるコーティング分野において広く使用されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、コーティング組成物を均質に塗工するためには、撥水撥油性の高い含フッ素基をある一定量添加しなければならず、常に使用する樹脂との配合に注意を払わなければならない、もしくは含フッ素基と組み合わせる材料が制約されるなどの問題がこれまでは存在した。そのため、従来の優れた均質塗工性を有しつつも、親水性、親油性のどちらの組成物にも馴染み易いフッ素系界面活性剤を開発することが求められている。特に、近年の環境保護の観点からは、有機溶剤排出量がより少ない、水性材料への開発要求が高く、該材料への応用範囲が広い点から親水性を有するフッ素系界面活性剤の開発への要求はより高いものとなっている。
【0003】
一方、近年、フッ素化された炭素数が7以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物が、細胞間コミュニケーションの阻害を引き起こすため、細胞株を用いた試験管内試験において、発がん性に関与すると考えられている。この阻害は官能基ではなく、フッ素化された炭素数の長さより決まり、長いものほど阻害力が高いことが判明し(非特許文献1参照。)、フッ素化された炭素数が長いものを含むフッ素系界面活性剤の使用が敬遠されるようになってきた。一方、一般的にパーフルオロアルキル基の炭素数が少ない化合物からなるフッ素系界面活性剤は、十分な界面活性効果が得られていない。従って、従来から使用されているフッ素系界面活性剤と同等以上の界面活性効果を有し、パーフルオロアルキル基の炭素数が短いフッ素系界面活性剤が強く求められている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−230154号公報(第4〜22頁)
【非特許文献1】Bewd.Upham,et.al.”Inhibitation of Gap Junctional Intercellular Communication by Perfluorinated Fatty Acids is Dependent on The Chain Length of The Fluorinated Tail”,International Journal of Cancer”(米国)1998,vol.78,p.491−495
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような実情に鑑み、本発明の課題は、親水性に優れ、コーティング用組成物、特に薄膜コーティングである感光性組成物として用いた際に、優れた塗布性を発現するフッ素系界面活性剤、特には、パーフルオロアルキル基中の炭素数が短いものからなる、前述の性能を有するフッ素系界面活性剤、及びこれを用いた感光性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、特定の構造を有する含フッ素化合物が親水性に優れ、且つ該化合物をフッ素系界面活性剤として用いると、塗布性に優れる組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち本発明は、下記一般式(1)
−[OCFCF(CF)]−OCF・・・・・(1)
(式中、nは1〜10の整数を示す。)
で表されるフッ素化ポリオキシプロピレン鎖を有する化合物(A)からなることを特徴とするフッ素系界面活性剤、及びそれを含有する感光性組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、親水性に優れるフッ素系界面活性剤を得ることができる。該活性剤は水性塗料用組成物へも好適に用いることができ、優れた塗布性を発現し、又、得られる塗膜には、フッ素原子由来の撥水撥油性や防汚性等の優れた機能を付与することも可能である。特に薄膜コーティングであるレジスト組成物は親水性を有するフェノールノボラック樹脂を使用しているため、従来のフッ素系界面活性剤よりも優れた塗布性を発現させることが可能である。
【0009】
又、本発明のフッ素系界面活性剤は、エーテル結合で炭素数3のパーフルオロアルキル基が連結された構造を有するものであり、安全性が疑問視されている炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物とは全く異なるものであって、安全性への懸念が低い化合物であることが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のフッ素系界面活性剤は、下記一般式(1)
−[OCFCF(CF)]−OCF・・・・・(1)
(式中、nは1〜10の整数を示す。)
で表されるフッ素化ポリオキシプロピレン鎖を有する化合物(A)からなることを特徴とする。
【0011】
前記一般式(1)で表されるフッ素化ポリオキシプロピレン鎖は、フッ素化された炭素数が3であって、それがエーテル結合を介して連結されていることから、従来の炭素結合によってのみ連結されたパーフルオロアルキル基と比較した場合に、エーテル結合部位が他の組成物との親媒性を高めるため、幅の広い設計が可能となり、より親水性の高い基と組み合わせることによって、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物(A)も高い親水性、ひいては水溶性を有することになる。更に、該鎖の末端も、炭素数1の短いトリフルオロメチル基がエーテル酸素に結合しているため、炭素数の大きいパーフルオロアルキル基が結合しているものと比較すると、得られる化合物の親水性(水溶性)を阻害することがなく、最も好ましい形である。
【0012】
又、前記一般式(1)中の繰り返し単位数であるnとしては、1〜10の整数であるが、得られる化合物の親水性と界面活性能とのバランスに優れる点からは、1〜4であることが好ましい。尚、本発明のフッ素系界面活性剤は、化合物(A)の1分子中に前記一般式(1)で表される鎖を1個以上有するものであれば良く、複数の該鎖を有するものであっても、又、繰り返し単位数の異なる鎖を複数有する化合物からなるものであってもよく、更には、異なる構造を有する前記化合物(A)を2種以上混合して用いても良い。
【0013】
本発明で用いる化合物(A)としては、前記一般式(1)で表される構造を容易に分子内に導入させることが出来、又、得られるフッ素系界面活性剤の用途、目的とする性能のレベル等によって、構造の設計が容易である点、更には原料の工業的入手が容易である点を鑑みると、少なくとも一つの上記一般式(1)で示される鎖と少なくとも一つの重合可能なエチレン性不飽和結合とを有する単量体を用いた重合体であることが好ましく、下記一般式(2)
【0014】
【化1】

〔式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは−O−又は−NR−(但し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。)であり、Yは(r+1)価の連結基であり、pは0〜8の整数であり、qは1〜10の整数であり、rは1〜6の整数である。〕
で表される単量体(a1)と、その他の単量体(a2)との共重合体であることが好ましい。
【0015】
前記一般式(2)で表される単量体(a1)の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸と、1H,1H−2,5−ジ(トリフルオロメチル)−3,6−ジオキサウンデカフルオロノナノール等の、前記一般式(1)で表される鎖を有するアルコール又はアミン化合物とのエステル化やアミド化等により合成する方法が挙げられる。
【0016】
前記一般式(2)で表される単量体(a1)としては、例えば、下記構造式(a1−1)〜(a1−15)で表されるものを挙げることができる。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
これらの中でも、工業的入手が容易な原料からの合成が可能である点、及び得られる共重合体の水溶性に優れる点から、前記構造式(a1−1)、(a1−6)、(a1−7)、(a1−8)で表されるものを用いることが好ましい。又、これらの単量体としては、1種のみで用いても、2種以上を混合して用いても良い。
【0022】
前記その他の単量体(a2)としては、前述の単量体(a1)と共重合可能な単量体であれば良く、特に限定されるものではない。
【0023】
その他の単量体(a2)の具体的な例示は、Polymer Handbook 2nd ed., J. Brandrup, WileyInterscience (1975) Chapter 2, Page 1〜483に記載されている。
【0024】
例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物等が挙げられ、アクリル酸エステル類としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、クロルエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等、メタクリル酸エステル類としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、クロルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等、アクリルアミド類としては、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜3のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルアクリルアミド等、メタクリルアミド類としては、メタクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜3のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルメタクリルアミド等、アリル化合物としては、アリルエステル類(例えば酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリルなど)、アリルオキシエタノール等、ビニルエーテル類としては、アルキルビニルエーテル(例えばヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等、ビニルエステル類:ビニルビチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレート等、イタコン酸ジアルキル類としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等、フマール酸のジアルキルエステル類又はモノアルキルエステル類としては、ジブチルフマレート等、その他、クロトン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル、スチレン等も挙げられる。
【0025】
前記、その他の単量体(a2)としては、得られる共重合体の親水性に優れる点からは、親水性の単量体を用いる事が好ましく、コーティング組成物中のフッ素系界面活性剤として用いた際の、該組成物中のその他の成分との相溶性に優れる点、得られる塗膜表面の撥水撥油性や防汚性等のフッ素原子由来の性能を発現させるために好適な分子形状を取りやすい点等の観点から、特にポリオキシアルキレン鎖含有エチレン性不飽和単量体(x1)を含むことが好ましい。
【0026】
前記ポリオキシアルキレン鎖含有エチレン性不飽和単量体(x1)としては、分子中にエチレン性不飽和基とポリオキシアルキレン鎖とを含む化合物であれば特に制限はない。エチレン性不飽和基としては、原料の入手性、各種コーティング組成物中の配合物に対する相溶性、そのような相溶性を制御することの容易性、或いは重合反応性の観点から(メタ)アクリルエステル基及びその類縁基を含有するものが適している。
【0027】
前記ポリオキシアルキレン鎖は(OR)で表されるものを挙げることができ、Rは2〜4の炭素原子を有するアルキレン鎖であり、−CHCH−、−CHCHCH−、−CH(CH)CH−、−CHCHCHCH−または−CH(CH)CH(CH)−であることが好ましい。xは正の整数であり、好ましくは2〜50の整数であり、さらに好ましくは3〜30の整数である。前記のポリオキシアルキレン鎖中のオキシアルキレン単位はポリ(オキシプロピレン)におけるように同一のオキシアルキレン単位のみで構成されてもよく、また、オキシプロピレン単位とオキシエチレン単位とが連結したもののように、異なる2種以上のオキシアルキレン単位が規則的または不規則に連結したものであっても良い。
【0028】
ポリオキシアルキレン鎖の末端に結合する原子又は基は、水素原子であっても他の任意の基であっても良いが、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、アリル基(好ましくは炭素数1〜20)、アリール基(例えば炭素数6〜10)であることが好ましい。アリール基は、アルキル基(例えば炭素数1〜10)、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。又、ポリオキシアルキレン鎖は1つまたはそれ以上の連鎖結合(例えば−CONH−Ph−NHCO−、−S−など:Phはフェニレン基を表す)で連結されていても良い。更に分岐鎖状のオキシアルキレン単位を供するため、連鎖結合部位に3またはそれ以上の原子価を有することもできる。
【0029】
ポリオキシアルキレン鎖部分の分子量としては、連鎖結合部を含め250〜3000であることが好ましい。
【0030】
前記ポリオキシアルキレン鎖含有エチレン性不飽和単量体(x1)としては、例えば、下記一般式(3)
【0031】
【化6】

〔式中、X’は、酸素原子又は−NR−(Rは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、または置換基を有してもよい炭素数6〜24のアラルキル基である。)であり、Y’は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキレン鎖であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜24のアラルキル基であり、mは2〜100の整数である。〕
で表される単量体を挙げることができる。
【0032】
前記一般式(3)中の各基における置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜12のアルキル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜12のアリール基)、スルホ基、カルボキシル基等が挙げられる。又、前記一般式(3)中のY’としては、炭素数2〜4の直鎖又は分岐状のアルキレン鎖であることが好ましく、mとしては、2〜50であることが好ましく、特に、3〜30の整数であることが好ましい。
【0033】
前記ポリオキシアルキレン鎖含有エチレン性不飽和単量体(x1)の具体例として挙げられる、ポリオキシアルキレンアクリレート、又は、ポリオキシアルキレンメタクリレートは、市販のヒドロキシポリ(オキシアルキレン)材料、例えば商品名”プルロニック”[Pluronic(旭電化工業株式会社製)、アデカポリエーテル(旭電化工業株式会社製)”カルボワックス[Carbowax(グリコ・プロダクス)]、”トリトン”[Toriton(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas製))、P.E.G(第一工業製薬株式会社製)として販売されているものを種々の方法でアクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリドまたは無水アクリル酸等と反応させることによって製造することができ、又、種々の製法で得られるポリオキシアルキレンジアクリレート等を用いることもできる。
【0034】
市販品の単量体としては、例えば、日本油脂株式会社製の水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPE−90、ブレンマーPE−200、ブレンマーPE−350、ブレンマーAE−90、ブレンマーAE−200、ブレンマーAE−400、ブレンマーPP−1000、ブレンマーPP−500、ブレンマーPP−800、ブレンマーAP−150、ブレンマーAP−400、ブレンマーAP−550、ブレンマーAP−800、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー70PEP−350B、ブレンマーAEPシリーズ、ブレンマー55PET−400、ブレンマー30PET−800、ブレンマー55PET−800、ブレンマーAETシリーズ、ブレンマー30PPT−800、ブレンマー50PPT−800、ブレンマー70PPT−800、ブレンマーAPTシリーズ、ブレンマー10PPB−500B、ブレンマー10APB−500Bなどがあげられる。同様に日本油脂株式会社製のアルキル末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPME−100、ブレンマーPME−200、ブレンマーPME−400、ブレンマーPME−1000、ブレンマーPME−4000、ブレンマーAME−400、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマー50AOEP−800B、ブレンマーPLE−200、ブレンマーALE−200、ブレンマーALE−800、ブレンマーPSE−400、ブレンマーPSE−1300、ブレンマーASEPシリーズ、ブレンマーPKEPシリーズ、ブレンマーAKEPシリーズ、ブレンマーANE−300、ブレンマーANE−1300、ブレンマーPNEPシリーズ、ブレンマーPNPEシリーズ、ブレンマー43ANEP−500、ブレンマー70ANEP−550など、また共栄社化学株式会社製ライトエステルMC、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、ライトアクリレートBO−A、ライトアクリレートEC−A、ライトアクリレートMTG−A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートDPM−A、ライトアクリレートP−200A、ライトアクリレートNP−4EA、ライトアクリレートNP−8EAなどがあげられる。これらのポリオキシアルキレン鎖含有エチレン性不飽和単量体(x1)としては、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を併用しても良い。
【0035】
本発明の化合物(A)として好ましいものは、前述の前記一般式(2)で表される単量体(a1)と、その他の単量体(a2)として、ポリオキシアルキレン鎖含有エチレン性不飽和単量体(x1)とそれ以外の単量体の3種以上の単量体を共重合させて得られる共重合体である。特に得られる化合物(A)をフッ素系界面活性剤として用いた時の親水性、水溶性に優れる点からは、ポリオキシアルキレン鎖含有エチレン性不飽和単量体(x1)として、ポリオキシエチレン鎖及び/又はポリオキシプロピレン鎖を含有するものであることが好ましい。
【0036】
前記共重合体を合成する際に、用いる単量体類の使用割合としては、特に限定されるものではないが、得られる化合物(A)の界面活性能と水溶性とのバランスに優れる点から、単量体類100重量部中、前記単量体(a1)が5〜90重量部含まれていることが好ましく、特に10〜60重量部含まれていることが好ましく、10〜40重量部含まれていることが最も好ましい。又、ポリオキシアルキレン鎖含有エチレン性不飽和単量体(x1)が10〜95重量部含まれることが好ましく、特に60〜90重量部含まれていることが好ましい。
【0037】
又、前記共重合体の重量平均分子量としては、3000〜50,000であることが好ましく、3,000〜30,000であることがより好ましく、特に泡立ち性の現象を気にする用途に対しては3,000〜10,000であることが最も好ましい。共重合体としては、ブロック、ランダム、グラフトの何れの共重合体でもよいが、好ましくは、ランダム共重合体である。
【0038】
前記共重合体の製造方法には何ら制限はなく、種々の方法、即ちラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法等の重合機構に基づき、溶液重合法、塊状重合法、更にエマルジョン重合法等により製造できるが、特にラジカル重合法が簡便であり、工業的に好ましい。例えば先にあげた単量体(a1)とその他の単量体(a2)の混合物を有機溶媒中、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。用いる単量体の重合性等に応じ、反応容器に単量体類と開始剤とを滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成の共重合体を得るために有効である。
【0039】
前記重合開始剤としては、種々のものを使用することができ、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ジアシル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ化合物、Mn(acac)等の金属キレート化合物、リビングラジカル重合を引き起こす遷移金属触媒等が挙げられる。更に必要に応じて、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、エチルチオグリコール酸、オクチルチオグリコール酸等の連鎖移動剤や、更にγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のカップリング基含有チオール化合物を連鎖移動剤等の添加剤を使用することができる。
【0040】
また光増感剤や光開始剤の存在下での光重合あるいは放射線や熱をエネルギー源とする重合によっても本発明で用いる化合物(A)のランダムもしくはブロック共重合体を得ることができる。
【0041】
重合は、溶剤の存在下又は非存在下のいずれでも実施できるが、作業性の点から溶剤存在下の場合の方が好ましい。溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシプロピオン酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、エチルセロソルブアセテート等のエーテル類、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類及びそのエステル類、1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、更にパーフルオロオクタン、パーフルオロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナートリキッド類等が挙げられ、単独でも、2種以上を混合して用いても良い。
【0042】
本発明のフッ素系界面活性剤を塗料用組成物、コーティング用組成物等の組成物に添加して使用する場合には、用途に応じて1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。また、組成物中の配合物との相溶性向上等の目的により、種々の炭化水素系、その他のフッ素系、シリコーン系等の界面活性剤を併用することも可能である。
【0043】
本発明のフッ素系界面活性剤を用いれば、高速、高剪断力を伴う塗工方法においても、優れたレベリング性を発現させると共に、水溶性を有するため、水溶性組成物などへのコーティング組成物を提供することが可能である。この様なコーティング組成物としては特に制限は無いが、有用なコーティング組成物として、例えば各種塗料用組成物、感光性組成物等が挙げられる。
【0044】
感光性組成物は光によって反応する組成物であり、例えばUV硬化、電子線硬化、フォトレジスト樹脂などが存在する。中でも、フォトレジスト樹脂は半導体を始めとするIT製品に広く使用されている有用なものである。該用途は非常に薄膜で均質な塗工を必要とするため、表面張力低下能に優れるフッ素系界面活性剤が多く使用されている。
【0045】
例えば、半導体素子フォトリソグラフィーにおいては、レジスト組成物を高剪断力の伴うスピンコーティング等によって、厚さが1〜2μm程度になる様にシリコンウエハーに塗布するのが一般的である。この際、塗布膜厚が振れたり、一般に“ストリエーションと称される縞状の塗布ムラが発生したりすると、パターンの直線性や再現性が低下し、目的とする精度を有するレジストパターンが得られないという問題が生じる。半導体素子の高集積化に伴って、レジストパターンの微細化が進む現在、塗布膜厚の振れやストリエーションの発生を抑えることが重要な課題になっている。
【0046】
また近年、半導体素子の生産性向上等の観点からシリコンウエハーが6インチから8インチヘと大口径化、もしくはそれ以上への大口径化が進んでいるが、この大口径化に伴って、前記塗布膜厚の振れやストリエーションの発生の抑制が、極めて大きな課題となっている。このような問題点に鑑み、高度なレベリング性という観点からは、本発明のフッ素系界面活性剤は各種レジスト組成物、特にフォトレジスト組成物に用いることが有用である。
【0047】
フォトレジスト組成物は、本発明のフッ素系界面活性剤と種々のフォトレジスト剤とから成るものである。前記フォトレジスト剤としては、例えば、キノンジアジド系感光性化合物及びアルカリ可溶性樹脂を有機溶媒に溶解してなるフォトレジスト組成物(1)、光酸発生剤、架橋剤及びアルカリ可溶性樹脂を有機溶媒に溶解してなるフォトレジスト組成物(2)、光酸発生剤、アルカリ可溶性樹脂及び必要に応じて溶解抑止剤を有機溶媒に溶解してなるフォトレジスト組成物(3)、等が挙げられる。
【0048】
フォトレジスト組成物(1)について説明する。アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレンもしくはその誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられ、好ましくはノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン若しくはその誘導体が用いられ、特に好ましくはノボラック樹脂が用いられる。
【0049】
ノボラック樹脂としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、3−エチルフェノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール等のアルキルフェニール類、2−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、4−フェノキシフェノール等のアルコキシまたはアリールオキシフェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール、3−メチル−α−ナフトール等のナフトール類、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−2−メチルベンゼン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,3−トリヒドロキシ−5−メチルベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等のポリヒドロキシベンゼン類等のヒドロキシ芳香族化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド等の脂肪族アルデヒド類、ベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド類、アセトン等のアルキルケトン類等のカルボニル化合物とを、例えば塩酸、硫酸、しゅう酸等を触媒として、混合加熱し重縮合させ製造することができる。中でも、ヒドロキシ芳香族化合物として、アルキルフェノール類の1種以上とカルボニル化合物の重縮合で得られるノボラック樹脂が好ましい。更に好ましく用いられるノボラック樹脂は、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール及び3,5−キシレノールの内の一種以上と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒドのいずれか一種以上とを、塩酸、しゅう酸等を触媒として、混合加熱し重縮合して製造されたものが挙げられる。特に好ましくは、m−クレゾール、p−クレゾール及び2,5−キシレノールと、ホルムアルデヒド単独又はホルムアルデヒド及びアセトアルデヒド若しくはパラアルデヒドとを塩酸、しゅう酸等を触媒として、混合加熱し重縮合して製造されたものが挙げられ、これらとの組み合わせにおいて特に解像力の向上が顕著である。
【0050】
前記ノボラック樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(以下単に分子量という)としては、耐熱性と感度とのバランスの観点から30,000以下が好ましく、特に好ましくは20,000以下であり、一方、2,500以上が好ましく、特に好ましくは3,000以上である。
【0051】
ポリヒドロキシスチレンもしくはその誘導体としては、4−ヒドロキシスチレン、3−メチル−4−ヒドロキシスチレン、3−クロロ−4−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシスチレン誘導体を種々の方法に準じて重合することにより製造することができる。尚、上述のアルカリ可溶性樹脂は、必要に応じ、更に、水素等により還元し、短波長領域の吸光を低くしたものを用いても良い。又、上述のアルカリ可溶性樹脂を製造するための原料芳香族化合物モノマーは本発明に悪影響を与えない限りハロゲン原子、ニトロ基、エステル基等の置換基を有していても良い。
【0052】
キノンジアジド系感光性化合物としては、オルトキノンジアジド基を含む化合物が挙げられる。オルトキノンジアジド基を含む化合物としては、オルトキノンジアジド基をその構造中に含む種々の化合物が挙げられ、具体的には1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホンン酸、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸等のエステルもしくはアミド等が好適である。更に具体的にはグリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキジアルキル化合物;前記アルカリ可溶性樹脂の記載において例示したヒドロキシ芳香族化合物とカルボニル化合物との重縮合物であるノボラック樹脂、ビスフェノールA、没食子酸エステル、ケルセチン、モリン、ポリヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシ芳香族化合物の1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル又はそれらのアミド等が用いられる。尚、ポリヒドロキシベンゾフェノンとしては、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等のトリ〜ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0053】
また、1,2−キノンジアジド基を含む化合物としては、例えば特開平2−269351号合や特開平3−48249号各広報に記載されている様なフェノール性水酸基を持った化合物のナフトキノンジアジドスルホン酸エステルも好ましく用いることができる。
【0054】
これらの1,2−キノンジアジド基を含む化合物は、単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。中でも、分子量が600〜2200程度のノボラック樹脂又はポリヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルが好ましく用いられる。特に好ましく用いられる1,2−キノンジアジド化合物としては、m−クレゾールとホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドのいずれか単独もしくは両方とを重縮合して製造されたノボラック樹脂や2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルが挙げられる。これらの感光剤の水酸基のエステル化による置換率の好適な範囲は、感光剤の種類により様々であるが、上記ノボラック樹脂のエステル化物については25〜70モル%が好ましく、ポリヒドロキシベンゾフェノンのエステル化物については50〜95モル%が好ましい。
【0055】
次に、フォトレジスト組成物(2)について説明すると、アルカリ可溶性樹脂としては、フォトレジスト組成物(1)において例示したと同様のものが挙げられるが、ポリヒドロキシスチレンもしくはその誘導体が好ましく、ポリヒドロキシスチレン誘導体としては、ヒドロキシスチレンと、これ以外の他のモノマー類を共重合成分として含有する共重合ポリマーが挙げられる。
【0056】
共重合成分である他のモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、クロトン酸、クロトン酸エチル、桂皮酸、桂皮酸エチル等のアクリル酸誘導体、スチレン、スチルベン、ビニルシクロヘキサン等のスチレン誘導体、マレイン酸、マレイン酸ジメチル、メチルマレイン酸、メチルマレイン酸ジメチル等のマレイン酸誘導体、メチルビニルケトン等のビニルケトン類、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類が挙げられる。
【0057】
上述のポリヒドロキシスチレン及びその誘導体の分子量としては、通常1,000〜20,000程度、好ましくは2,000〜10,000程度である。また、光酸発生剤としては、ポリハロゲン化炭化水素を含む化合物、具体的にはヘキサクロロエタン、ヘキサクロロアセトン、1,2,3,4,5,6−ヘキサクロロシクロヘキサノン、四臭化炭素、ヨードホルム、1,1,2,2−テトラブロモエタン、1,2,3,4−テトラブロモブタン等のポリハロゲン化炭化水素基を含む炭化水素があげられる。又、これらのポリハロゲン化炭化水素基は、例えば、トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ビス(トリブロモメチル)ベンゼン、トリブロモメチルフェニルスルホン等のように、トリアジン、ベンゼン等の置換基として、あるいはスルホン化合物の構成基として含有されていても良い。また、ジフェニルヨードニウムクロライド等のジアリルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムブロマイド、ニトロベンジルトシレート等のトリアリール、スルホニウム塩等のオニウム塩を、ポリハロゲン化炭化水素基を持つ化合物として用いることも出来る。
【0058】
又、架橋剤としては、例えばヘキサメトキシジメチル化メラミン等のアルコキシジメチル化メラミン、N,N,N’,N’−テトラヒドロキシメチルサクシナミド等のアルコキシメチル化サクシナミド、N,N’−ジメトキシメチル尿素、テトラメトキシメチル尿素等のアルコキシメチル化尿素、2,4,6−トリヒドロキシメチル化フェノール等の、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、又はエトキシエチル基等の架橋性基を一分子中に2個以上有する化合物等が挙げられる。
【0059】
次に、フォトレジスト組成物(3)について説明すると、アルカリ可溶性樹脂としては、フォトレジスト組成物(1)及び(2)において例示したものと同様の物が挙げられ、該アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ可溶性を与える官能基の一部がt−ブトキシカルボニル基、t−アミルオキシカルボニル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−ヘキシル基、アリル基、等の酸に対して不安定な基で置換されていてもよい。
【0060】
光酸発生剤としては、上記フォトレジスト組成物(2)において例示したと同様のものが挙げられる。また、溶解抑止剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビフェノール、カテコール、フロログリシノール、ピロガロール等のフェノール化合物の水酸基をt−ブトキシカルボニル基等で保護したもの等が挙げられる。
【0061】
フォトレジスト組成物を溶解して塗布液を作成するための有機溶媒としては、例えば乳酸メチル、乳酸エチル、グリコール酸エチル等のグリコール酸エステル誘導体類、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル誘導体類、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等のケトンエステル類、3−メトキシ−プロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等のアルコキシカルボン酸エステル類、アセチルアセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等ケトン誘導体類、ジアセトンアルコールメチルエーテル等のケトンエーテル誘導体類、アセトール、ジアセトンアルコール等のケトンアルコール誘導体類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド誘導体類、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル誘導体類等が挙げられる。又、必要に応じてキシレン、酢酸ブチル等を添加した混合溶媒を用いることもできる。中でも、保存安定性、膜の均一性、安全性、取扱いの容易さ等を勘案する3−メトキシプロピオン酸メチル、乳酸メチルもしくは乳酸エチルを主成分として含む混合溶媒が好ましく用いられ、特に好ましくは3−メトキシプロピオン酸メチルもしくは乳酸エチルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートもしくは酢酸ブチルとの混合溶媒が用いられる。更に、レジスト組成物には、基板よりの乱反射光の影響を少なくするために吸光性材料を、又、感度向上のための増感剤等をさらに添加することもできる。
【0062】
また本発明において、本発明のフッ素系界面活性剤の配合割合としては、レジスト組成物を基板に塗布する際の必要膜厚と塗布条件や、使用する溶剤の種類に応じて適宜調整が可能であるが、通常アルカリ可溶性樹脂100重量部に対し0.0001〜5重量部であり、好ましくは0.0005〜1重量部である。
【0063】
フォトレジスト組成物において、フッ素系界面活性剤の存在は極めて重要であり、該フッ素系界面活性剤が欠落すると、優れた塗布性、ストリエーションの発生防止、液中パーティクルの発生防止、泡の抱き込みの低減化、現像時の現像液の塗れ性向上に伴う優れた現像性を発現する上で支障を来すことになる。
【0064】
本発明のレジスト組成物には必要に応じてその他の界面活性剤、種々の保存安定剤、顔料、染料、蛍光剤、発色剤、可塑剤、増粘剤、チクソ剤、樹脂溶解抑制剤、シランカップリング剤等の密着性強化剤等を添加することが可能である。
【0065】
レジスト組成物の塗布方法としては、スピンコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ブレードコーティング、カーテンコーティング、グラビアコーティング等、種々の塗布方法を広く使用することが可能である。
【0066】
この他にもコーティング組成物である塗料用に対しても用いることができる。従来、塗料用組成物には、コーティング時のレベリング性を向上させるため、各種レベリング剤が使用されており、中でも表面張力低下能が低くレベリング効果の高いフッ素系界面活性剤が好適に用いられている。本発明のフッ素系界面活性剤を塗料用組成物に添加する割合の配合量としては、適用される系、目的とする物性、塗工方法、コスト等により異なるが、塗料用組成物100重量部に対して0.0001〜20重量部用いることが好ましく、より好ましくは0.001〜10重量部、更に好ましくは0.01〜7重量部である。
【0067】
適用される塗料用組成物としては、特に制限はなく、天然樹脂を使った塗料、例えば石油樹脂塗料、セラック塗料、ロジン系塗料、セルロース系塗料、ゴム系塗料、漆、カシュー樹脂塗料、油性ピヒクル塗料等、また、合成樹脂を使った塗料、例えばフェノール樹脂塗料、アルキッド樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、アミノ樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0068】
これらの塗料は水系、溶剤系、非水分散系、粉体系等の何れの形態でも適用でき、溶剤若しくは分散媒にも特に制限はない。溶剤、分散媒の具体例としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶剤、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のエーテル類、1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、更にパーフルオロメタン、パーフルオロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナートリキッド類が挙げられる。これらの中でも、本発明のフッ素系界面活性剤は親水性に優れる点から、前記塗料も水性材料であることが好ましく、溶剤としても、親水性有機溶剤であることが好ましい。
【0069】
また、これら塗料中には必要に応じて、顔料、染料、カーボン等の着色剤、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の無機粉末、高級脂肪酸、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリエチレン等の有機微粉末、更に耐光性向上剤、耐候性向上剤、耐熱性向上剤、酸化防止剤、増粘剤、沈降防止剤等の各種充填剤を適宜添加することが可能である。
【0070】
更に、塗工方法についても特に限定されるものではなく、例えばロールコーター、静電塗装、バーコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、ディピング塗布、スプレー塗布等の方法が挙げられ、特に本発明のフッ素系界面活性剤の効果が顕著に現れる点からは、薄膜コーティング用の塗装方法が好ましい。
【0071】
本発明のフッ素系界面活性剤は、さらにはハロゲン化写真感光材料の製造、平版印刷版の製造、カラーフィルター用材料等の液晶関連製品の製造、PS版の製造、その他のフォトファブリケーション製造等に不可欠な単層、あるいは多層コーティング組成物に用いられる各種樹脂レベリング剤として添加することもできる。添加することによりピンホール、ゆず肌、塗りムラ、ハジキ等の無い優れた平滑性を発現する。
【0072】
また更にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の汎用プラスチックからPPS、PBT等のエンジニアリングプラスチック、更には熱可塑性エラストマーの基礎物性を低下させずに得られた成形物の表面にこれまでにない非粘着性、低摩擦性、撥水撥油性、防汚性等の性能を発現させる樹脂改質剤としても使用することが可能である。
【0073】
また、親水性を有するため、製剤化にあたっては水を溶媒として用いることが出来、有機溶剤なしの組成物をも作成することができる。従って、頭髪用化粧料、皮膚化粧料、爪用化粧料等の化粧料に配合できるほか、水性ペイントや金属、ガラス、繊維などの表面処理剤として使用することも可能である。この様に水溶性であって、且つ、乾燥、被膜形成後は疎水性と可塑性の被膜を形成することができる。また、被膜に対し高いレベルの撥水性を長期問に与えることができる。
【実施例】
【0074】
以下本発明を実施例に基づいて更に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0075】
合成例1
攪拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコに単量体(a1−1)19重量部、分子量1100のエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体を側鎖に持つモノアクリレート化合物81重量部、そしてイソプロピルアルコール(以下、IPAと略す)400重量部を仕込み、窒素ガス気流中、還流下で重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略す)0.7重量部と、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン10重量部を添加した後、70℃にて7時間加熱し重合を行った。この共重合体のゲルパーミエーショングラフ(以後GPCと略す)によるポリスチレン換算分子量はMw=6,200であった。この共重合体をフッ素系界面活性剤1とする。
【0076】
合成例2
合成例1で用いた単量体(a1−1)を下記構造式(4)
17CHCHOCOCH=CH・・・・(4)
で示されるフッ素化アルキル基含有アクリレートに置き換えた以外は、合成例1と同様にしてフッ素系界面活性剤2を得た。GPCによるこの共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン換算)はMw=6,800であった。
【0077】
合成例3
攪拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコに単量体(a1−1)21重量部、シリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体(チッソ株式会社製、サイラプレーンTM−0701)12重量部、分子量1100のエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体を側鎖に持つモノアクリレート化合物55重量部、テトラエチレングリコールの両末端がメタクリレート化された化合物(新中村化学工業株式会社製、NKエステル4G)4重量部、メチルメタクリレート8重量部、そしてIPA350重量部を仕込み、窒素ガス気流中、還流下で重合開始剤としてAIBNを1重量部と連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン10重量部を添加した後、70℃にて8時間還流し重合を完成させた。GPCによるこの共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン換算)はMw=6,500であった。
【0078】
合成例4
合成例3で用いた単量体(a1−1)を前記構造式(4)で示されるフッ素化アルキル基含有アクリレートに置き換えた以外は、合成例3と同様にしてフッ素系界面活性剤4を得た。GPCによるこの高分子化合物の重量平均分子量(ポリスチレン換算)はMw=6,500であった。
【0079】
参考例1
合成例1〜4で示した分子量1100のエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体を側鎖に持つモノアクリレート化合物は、次のようにして合成した。トルエン溶液60重量部下、プルロニック化合物(旭電化工業株式会社製、アデカプルロニックL31)100重量部、アクリル酸4.6重量部、硫酸6.4重量部、メトキノン0.2重量部を添加して還流下12時間反応させ、酸を水洗除去によって除いた後、脱溶剤を行って目的物を得た。
【0080】
実施例1及び比較例1
合成例1〜2で得られたフッ素系界面活性剤1及び2を用いて、以下のような評価を実施し、その結果を表1に記載する。
【0081】
<試験方法及び評価基準>
水溶性:水に対して、得られたフッ素系界面活性剤を溶液重量に対して0.1重量%、1.0重量%、5.0重量%、10重量%添加して、析出物の有無を目視により観察することによって、水への溶解性を調べた。
○: 析出物が生じない。
×: 析出物が生じる。
【0082】
【表1】

【0083】
実施例2及び比較例2
<フェノールノボラック樹脂溶液の調製方法と塗膜作成方法>
フェノライトKA−105L(大日本インキ化学工業株式会社製)125重量部をプロピレングリコールモノエチルアセテート375重量部に溶解して樹脂溶液を調製し、これに合成例3及び4で得られたフッ素系界面活性剤を、該樹脂溶液中の固形分に対して0.4重量%の濃度になる様に添加し、1μmのPTFE製フィルターで精密濾過して組成物を調製した。この組成物を縦、横10×10cmのCr基板上に回転数3000rpmでスピンコーティングした後、ホットプレート上にて90秒間加熱して溶媒を除去し、膜厚が1.5μmのレジスト膜を有する塗膜基板を得た。得られた塗膜の外観を目視にて評価した結果を表2に示す。
【0084】
<試験方法及び評価基準>
ストリエーション:ナトリウムランプを使用して、ストリエーションの発生状況を目視にて観察した。
○: ストリエーションの発生が認められないもの。
△: ストリエーションの発生がやや認められるもの。
×: ストリエーションの発生が顕著に認められるもの。
【0085】
モヤムラ:ナトリウムランプを使用して、モヤムラの発生状況を目視にて観察した。
モヤムラとは、塗布した基板表面に現れる波状の塗布ムラのことである。
○: モヤムラの発生が認められないもの。
△: モヤムラの発生がやや認められるもの。
×: モヤムラの発生が顕著に認められるもの。
【0086】
チャック跡:ナトリウムランプを使用して、チャック跡の発生状況を目視にて観察した。
○: チャック跡の発生が認められないもの。
△: チャック跡の発生がやや認められるもの。
×: チャック跡の発生が顕著に認められるもの。
【0087】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
−[OCFCF(CF)]−OCF・・・・・(1)
(式中、nは1〜10の整数を示す。)
で表されるフッ素化ポリオキシプロピレン鎖を有する化合物(A)からなることを特徴とするフッ素系界面活性剤。
【請求項2】
前記化合物(A)が下記一般式(2)
【化1】

〔式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは−O−又は−NR−(但し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。)であり、Yは(r+1)価の連結基であり、pは0〜8の整数であり、qは1〜10の整数であり、rは1〜6の整数である。〕
で表される単量体(a1)と、その他の単量体(a2)との共重合体である請求項1記載のフッ素系界面活性剤
【請求項3】
その他の単量体(a2)がポリオキシアルキレン鎖含有エチレン性不飽和単量体(x1)を含む請求項3記載のフッ素系界面活性剤。
【請求項4】
共重合体の重量平均分子量が3,000〜50,000である請求項2又は3に記載のフッ素系界面活性剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のフッ素系界面活性剤を含有することを特徴とする感光性組成物。



【公開番号】特開2007−269978(P2007−269978A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97455(P2006−97455)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】