フューエルリッドロック装置
【課題】フューエルリッドを開いているにも拘わらず施錠状態に切り替わっても、電動アクチュエータを駆動することなく簡単にフューエルリッドを開閉可能としたフューエルリッドロック装置を提供すること。
【解決手段】フューエルリッドに対し、電動アクチュエータの駆動に伴って移動する施錠ロッド9の先端位置に応じて施錠或いは解錠を行なうフューエルリッドロック装置1は、施錠状態或いは解錠状態に対応する二つの位置の間を直線的に移動される被駆動部材6と、被駆動部材に対して所定範囲をスライド自在に係合されると共に、施錠ロッドの基端が支持されるスライド部材7とを備え、スライド部材は、フューエルリッドが開き、施錠状態にある場合に、フューエルリッドが閉じられる際、施錠ロッドを介してフューエルリッドから受ける力により施錠状態が解除される後退位置まで被駆動部材に対してスライドする。
【解決手段】フューエルリッドに対し、電動アクチュエータの駆動に伴って移動する施錠ロッド9の先端位置に応じて施錠或いは解錠を行なうフューエルリッドロック装置1は、施錠状態或いは解錠状態に対応する二つの位置の間を直線的に移動される被駆動部材6と、被駆動部材に対して所定範囲をスライド自在に係合されると共に、施錠ロッドの基端が支持されるスライド部材7とを備え、スライド部材は、フューエルリッドが開き、施錠状態にある場合に、フューエルリッドが閉じられる際、施錠ロッドを介してフューエルリッドから受ける力により施錠状態が解除される後退位置まで被駆動部材に対してスライドする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フューエルリッドロック装置に関し、より詳細には、車両本体の燃料供給用開口を開閉可能に配設されたフューエルリッドを施錠状態に保持すると共に、施錠状態又は解錠状態に切り替えるフューエルリッドロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフューエルリッドロック装置として、セクタギアによって出力ロッドを進退させることにより、出力ロッドの先端をフューエルリッドの係合孔に係合させ、フューエルリッドを施錠状態に保持する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図25は、特許文献1に開示されたフューエルリッドロック装置の構成を施錠状態で示す図である。フューエルリッドロック装置100は、ロアケース101内にモータ102、セクタギア104及び出力ロッド105が配置されている。ロアケース101には、図示しないアッパケースが被着される。
【0004】
モータ102は、本体102aから延出する回転軸102bにウォーム103が取り付けられている。セクタギア104は、一方にセクタ部104aが形成され、他方にレバー部104bが形成されている。また、セクタギア104は、セクタ部104aとレバー部104bの間に挿通孔104cが形成されている。セクタ部104aは、円弧状に形成された外周にウォーム103と噛み合うギア104dが形成されている。レバー部104bは、出力ロッド105と対向する上面に係合軸104eが出力ロッド105に向けて突設されている。挿通孔104cには、ロアケース101に設けた軸部101aが挿通される。このため、セクタギア104は、軸部101aを中心として回転する。
【0005】
出力ロッド105は、それぞれ角棒からなる摺動軸部105aとセクタ連結軸部105bとを有すると共に、フランジ105cを介して端部に丸棒軸部105dが形成されている。
【0006】
摺動軸部105aは、ロアケース101内を出力ロッド105の長手方向に沿って摺動する部分であり、先端に傾斜面105eが形成されると共に、略中間にダンパ106が取り付けられている。ダンパ106は、ロアケース101の内面に当接することにより、摺動軸部105aの先端がロアケース101の外部へ所定量突出するように出力ロッド105のロアケース101からの突出量を規制する。
【0007】
セクタ連結軸部105bは、摺動軸部105aよりも幅の広い角棒であり、中央に長手方向に沿ってセクタギア104の係合軸104eが係合する長孔105fが形成されている。丸棒軸部105dは、ロアケース101の内壁とフランジ105cとの間に戻しばね107を配置することで、摺動軸部105aの先端がロアケース101の外部へ突出するように出力ロッド105を常時付勢している。
【0008】
フューエルリッドロック装置100は、図25に示すように、セクタギア104が一点鎖線で示す回転位置L1にある場合には、出力ロッド105の摺動軸部105aの先端がロックオン位置(ロック位置)Lonにある。このとき、フューエルリッドが閉じられていると、摺動軸部105aがフューエルリッドに設けたロック片120の係止孔120aに係止されるので、フューエルリッドは施錠され、開くことができない。
【0009】
そして、図25に示す出力ロッド105の摺動軸部105aの先端がロックオン位置(ロック位置)Lonにある状態において、ロアケース101のコネクタ部101bに挿着される電源コネクタからモータ102に電力が供給されると、フューエルリッドロック装置100は、ウォーム103と噛み合ったギア104dにより、セクタギア104が軸部101aを中心として回転する。図26は、回転後を示す図であり、セクタギア104は、一点鎖線で示す回転位置L2へ回転する。これにより、出力ロッド105の摺動軸部105aの先端がロックオフ位置(アンロック位置)Loffへ後退する。この結果、フューエルリッドロック装置100は、摺動軸部105aとロック片120の係止孔120aとの係止が解除された解錠状態に切り替わり、フューエルリッドを開くことができる。このとき、モータ102には、所定時間だけ電力が供給される。
【0010】
フューエルリッドロック装置100が、解錠状態となってモータ102への電力供給が停止すると、出力ロッド105が戻しばね107の付勢力によってセクタギア104及びウォーム103を逆転させながら、図25に示すロックオン位置(ロック位置)Lonへ戻る。この結果、フューエルリッドが開いた状態で、出力ロッド105がロック位置に配置される場合に、フューエルリッドロック装置100は、開いているフューエルリッドを閉じると、フューエルリッドに設けたロック片120が先端の傾斜面105eに当接して出力ロッド105を図25の左方へ移動させる。
【0011】
このため、摺動軸部105aの先端がロック片120の係止孔120aと一致すると、戻しばね107の付勢力によって出力ロッド105が押し出される。この結果、特許文献1のフューエルリッドロック装置は、図25に示すように、出力ロッド105がロックオン位置(ロック位置)Lonへ戻ると共に、摺動軸部105aの先端がロック片120の係止孔120aに係合した施錠状態に切り替わり、フューエルリッドが施錠される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−65215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、フューエルリッドロック装置100は、上記のようにフューエルリッドを開いた状態で出力ロッド105がロック位置に切り替わっても、フューエルリッドを閉じることはできるが、フューエルリッドが施錠されてしまう。このため、フューエルリッドロック装置100は、再度フューエルリッドを開く必要が生じた場合、改めてモータ102へ通電して出力ロッド105をロックオフ位置(アンロック位置)Loffへ移動させる解錠操作をしなければならず、操作が煩雑であるという問題があった。また、特許文献1のフューエルリッドロック装置は、出力ロッド105をロックオフ位置Loffに保持するためには、モータ102への通電を継続しなけらばならず、モータ102の損傷やバッテリの消耗を伴う等の問題があった。
【0014】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、フューエルリッドを開いているにも拘わらず施錠状態に切り替わっても、電動アクチュエータを駆動することなく簡単にフューエルリッドを開閉可能としたフューエルリッドロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のフューエルリッドロック装置は、車両本体に配置された給油口の外側に開閉可能に設けられるフューエルリッドに対し、電動アクチュエータの駆動に伴って移動する施錠ロッドの先端位置に応じて施錠或いは解錠を行ない、前記フューエルリッドの開閉状態によらず施錠状態へと移行可能なフューエルリッドロック装置であって、前記電動アクチュエータによって前記フューエルリッドの施錠状態或いは解錠状態にそれぞれ対応する二つの位置の間を直線的に移動される被駆動部材と、前記被駆動部材の移動方向に沿って前記被駆動部材に対して所定範囲をスライド自在に係合されると共に、前記施錠ロッドの基端が支持されるスライド部材と、を備え、前記スライド部材は、前記フューエルリッドが開いた状態で当該フューエルリッドロック装置が施錠状態にある場合に、前記フューエルリッドが閉じられる際、前記施錠ロッドを介して前記フューエルリッドから受ける力により前記施錠状態が解除される後退位置まで前記被駆動部材に対してスライドすることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のフューエルリッドロック装置は、上記の発明において、前記施錠状態に対応する位置から前記施錠状態が解除される後退位置までの前記施錠ロッドの移動距離は、前記施錠状態に対応する位置から前記解錠状態に対応する位置までの前記施錠ロッドの移動距離よりも小さいことを特徴とする。
【0017】
また、本発明のフューエルリッドロック装置は、上記の発明において、前記スライド部材は、前記所定範囲の両端で前記被駆動部材に対するスライドが停止されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のフューエルリッドロック装置は、上記の発明において、両端が前記被駆動部材及び前記スライド部材にそれぞれ係止され、前記スライド部材の前記被駆動部材に対するスライド途中で付勢力の向きが反転するコイルばねを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スライド部材は、フューエルリッドが開いた状態でフューエルリッドロック装置が施錠状態にある場合に、フューエルリッドが閉じられる際、施錠ロッドを介してフューエルリッドから受ける力により施錠状態が解除される後退位置まで被駆動部材に対してスライドするので、フューエルリッドを開いているにも拘わらず施錠状態に切り替わっても、電動アクチュエータを駆動することなく簡単にフューエルリッドを開閉することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施の形態であるフューエルリッドロック装置を搭載した車両を示す側面図である。
【図2】図2は、図1に示す車両のフューエルリッドが開いた状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、閉じられたフューエルリッドを図2に示すフューエルリッドロック装置のロッドによって施錠した状態を車体の内側から見た状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態であるフューエルリッドロック装置の全体構成を示す正面図である。
【図5】図5は、図4に示すフューエルリッドロック装置の平面図である。
【図6】図6は、図4に示すフューエルリッドロック装置の底面図である。
【図7】図7は、図4に示すフューエルリッドロック装置が有するケースの内部構造を示すロアケースの平面図である。
【図8】図8は、図7のC1−C1線に沿った断面図である。
【図9】図9は、ギア付きスライダの載置部を拡大して示す平面図である。
【図10】図10は、図9のC2−C2線に沿った断面図である。
【図11】図11は、スライダの平面図である。
【図12】図12は、スライダの右側面図である。
【図13】図13は、スライダの底面図である。
【図14】図14は、ギア付きスライダの載置部に載置したスライダの図11のC3−C3線に沿った断面図である。
【図15】図15は、図9に示すギア付きスライダの載置部にスライダを載置した際のC4−C4線に沿った断面図である。
【図16】図16は、解錠状態から施錠状態へ切り替わる途中におけるフューエルリッドロック装置の正面図である。
【図17】図17は、解錠状態から施錠状態へ切り替わる途中におけるフューエルリッドロック装置の平面図である。
【図18】図18は、解錠状態から施錠状態へ切り替わったフューエルリッドロック装置の正面図である。
【図19】図19は、解錠状態から施錠状態へ切り替わったフューエルリッドロック装置の平面図である。
【図20】図20は、スライダがギア付きスライダの載置部上をケース側へ後退する途中であって、コイルばねの付勢力の方向が反転する位置におけるフューエルリッドロック装置の正面図である。
【図21】図21は、スライダがギア付きスライダの載置部上をケース側へ後退する途中であって、コイルばねの付勢力の方向が反転する位置におけるフューエルリッドロック装置の平面図である。
【図22】図22は、スライダがギア付きスライダの載置部上を移動し、後退位置で停止した際のフューエルリッドロック装置の正面図である。
【図23】図23は、スライダがギア付きスライダの載置部上を移動し、後退位置で停止した際のフューエルリッドロック装置の平面図である。
【図24】図24は、施錠ロッドが後退位置にある状態からアンロック位置に切り替える中間の状態を示すフューエルリッドロック装置の平面図である。
【図25】図25は、従来のフューエルリッドロック装置の構成を施錠状態で示す図である。
【図26】図26は、従来のフューエルリッドロック装置の解錠状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明のフューエルリッドロック装置に係る実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態であるフューエルリッドロック装置を搭載した車両を示す側面図である。図2は、図1に示す車両のフューエルリッドが開いた状態を示す斜視図である。図3は、閉じたフューエルリッドを図2に示すフューエルリッドロック装置のロッドによって施錠した状態を車体の内側から見た状態を示す斜視図である。
【0023】
車両VHは、図1に示すように、車両本体BDの側面にフロントサイドドアFDが設けられ、フロントサイドドアFDの後部に後方へ移動させて開閉されるスライドドアSDが設けられると共に、スライドドアSDの後方にフューエルリッドFLが配置されている。
【0024】
フューエルリッドFLは、図2及び図3に示すように、車両本体BDにヒンジHjを介して取り付けられ、フューエルリッドFLが開くとフューエルキャップFCが被着された給油口FOを配置した給油空間SFが開放される。フューエルリッドFLの裏面の外周近傍には、係合部材として係合孔Hを形成したブラケットBKが設けられている。なお、フューエルリッドFLは、フューエルキャップFCと干渉しない位置、例えば、ブラケットBKと車両左右方向に対向する位置に図示しないプッシュリフタが設けられている。
【0025】
図4は、本発明の実施の形態であるフューエルリッドロック装置の全体構成を示す正面図である。図5は、図4に示すフューエルリッドロック装置の平面図である。図6は、図4に示すフューエルリッドロック装置の底面図である。図4〜図6に示すフューエルリッドロック装置1は、施錠ロッド9をアンロック位置に配置した状態を示している。
【0026】
フューエルリッドロック装置1は、図1〜図3に示したフューエルリッドFLを電動或いは手動によって施解錠する。フューエルリッドロック装置1は、図4〜図6に示すように、ケース2と、モータ3と、ギア付きスライダ6と、スライダ7と、施錠ロッド9とを備えており、ケース2の上面にはブラケット15がねじ止めされている。ブラケット15には、車両本体BDのインナパネルに形成した固定孔へ取り付けるためのボルト15aが取り付けられている。フューエルリッドロック装置1は、ドアロック機構の施解錠操作と連動するように、車両VHの制御手段(図示せず)によってモータ3の作動が制御されている。
【0027】
ケース2は、図4〜図6に示すように、ロアケース2aとアッパケース2bとを有している。ケース2の内部には、モータ3とギア部材5並びにギア付きスライダ6の中間部分が配置されている。ロアケース2aとアッパケース2bは、止めねじ2cによって2箇所をねじ止めされる他、外周の適宜箇所がスナップフィットファスナ2dによって係合されている。ケース2は、背面のロアケース2aとアッパケース2bとの境界部分に電力供給用のコネクタを接続するコネクタハウジング2eが設けられている。
【0028】
図7は、図4に示すフューエルリッドロック装置が有するケースの内部構造を示す平面図である。図8は、図7のC1−C1線に沿った断面図である。
【0029】
電動アクチュエータとしてのモータ3は、コネクタハウジング2eに接続される電源コネクタから供給される電力によって作動し、車両VHの制御手段の制御のもと、ドアロック機構の施解錠操作と連動してギア付きスライダ6を駆動し、施錠ロッド9の位置をフューエルリッドFLを施錠するロック位置PlとフューエルリッドFLを解錠するアンロック位置Pulとの間で切り替える。モータ3の本体3aは、図7に示すように、ロアケース2aに形成したモータ凹部2fに保持され、回転軸3bにはウォーム4が取り付けられている。ウォーム4は、ロアケース2aに形成したギア凹部2gに回転自在に保持されている。
【0030】
ギア部材5は、図7及び図8に示すように、下段にウォームホイール5aが配置され、ウォームホイール5aの上段中央にピニオン5bが回転中心を一致させて設けられており、ウォームホイール5aをウォーム4と噛み合わせてロアケース2aに形成したギア凹部2hにギア軸5cを中心として回転自在に保持されている。なお、アッパケース2bにも、モータ凹部2f等の各凹部に対応した凹部(図示せず)が形成され、ロアケース2aとの間にモータ3やウォーム4等を保持している。
【0031】
被駆動部材としてのギア付きスライダ6は、図7に示すように、略中間の湾曲部6aを介して互いに平行な直線軸部6b,6cが形成されており、一方の直線軸部6bの湾曲部6aと隣り合う側面にはピニオン5bと噛み合うラック6dが形成されている。湾曲部6a,直線軸部6c及び直線軸部6bのラック6dが形成された部分は、ケース2の内部に配置される。このため、ギア付きスライダ6は、モータ3の回転により、ケース2に対して予め設定した所定ストロークだけ図7に矢印で示す左右方向へスライドする。直線軸部6bの端部には、下方へ直角に折り曲げた折曲部6eが設けられている。また、他方の直線軸部6cの端部には、載置部6fが設けられている。図9は、ギア付きスライダ6の載置部を拡大して示す平面図である。図10は、図9のC2−C2線に沿った断面図である。載置部6fは、図9及び図10に示すように、略矩形に成形されたプレートの長手方向一方の側に一対のガイドレール6gが幅方向に形成されると共に、一対のガイドレール6gと側壁6h,6iとによって開口6jが形成されている。そして、開口6jを形成する側壁6hには、側壁6iに向かって突出するフランジ6kが形成されている。また、載置部6fは、長手方向他方の側に係止孔6mが設けられている。
【0032】
ここで、側壁6iは、載置部6fに載置されるスライダ7が当接し、スライダ7の移動開始位置を決める開始位置決め部となる。フランジ6kは、一対のガイドレール6gに係合してスライドするスライダ7の後退位置Pbを決める位置決め部となる。折曲部6eは、車室内へ突出しており、手動でフューエルリッドロック装置1を施錠状態から解錠状態に切り替えるエマージェンシ用の手動操作部として使用される。
【0033】
次に、図11〜図14を参照して載置部6fに載置されるスライダ7について説明する。図11は、スライダの平面図である。図12は、スライダの右側面図である。図13は、スライダの底面図である。図14は、ギア付きスライダの載置部に載置したスライダの図11のC3−C3線に沿った断面図である。
【0034】
スライド部材としてのスライダ7は、図11〜図14に示すように、略矩形に成形されたプレートの長手方向一方の側部上面にボス部7aが形成され、ボス部7aの中央にロッド孔7bが形成されている。ボス部7aに対向する下面には、載置部6fのガイドレール6gとそれぞれ係合する一対のガイドレール7cが幅方向に形成されている。ガイドレール7cは、ガイドレール6gと係合する部分にガイドレール6gとの間に一定の間隔を保持する突条が形成されている。また、スライダ7のボス部7aと対向する他方の側部には、スリット7dが長手方向に形成されている。
【0035】
スライダ7は、図4に示すように、載置部6fとの間にコイルばね8が配置される。コイルばね8は、一対のガイドレール6gに沿ってスライダ7が移動する際、移動方向に沿った付勢力の方向が移動途中で反転する。コイルばね8は、一端(上端)8aがスリット7dの奥部に係止されると共に(図5参照)、他端(下端)8bが載置部6fに設けた係止孔6mに係止され(図6参照)、スライダ7と載置部6fとの間に配置されている。
【0036】
施錠ロッド9は、スライダ7に支持され、モータ3の駆動に伴って車両VHの前後方向へ移動する。施錠ロッド9は、図4〜図6に示すように、スライダ7に支持される基部9aと、基部9aに対して直角に折り曲げられた折曲部9bと、折曲部9bから斜め前方へ立ち上がるように折り曲げられた傾斜部9cと、傾斜部9cに連続させて折曲部9bと平行に設けられた延設部9dとを有している。施錠ロッド9は、フューエルリッドロック装置1の解錠状態においては、図4及び図5に示すように、先端がブラケットBKよりも車両後方のアンロック位置Pulに配置される。
【0037】
ここで、図15は、図9に示すギア付きスライダ6の載置部6fにスライダ7を載置した際のC4−C4線に沿った断面図である。施錠ロッド9は、図15に示すように、ロッド孔7bとの間にロッドホルダ10及びワッシャ11,12を介在させて基部9aがスライダ7に支持されている。
【0038】
ロッドホルダ10は、図15に示すように、スライダ7のロッド孔7bに挿通され、下端が基部9aの周囲に係止される挿通部10aと、挿通部10aの上端に形成されたフランジ部10bと、フランジ部10bからロッド孔7bの半径方向外方へ連設され、施錠ロッド9の外周を三方から把持する把持部10cとを有している。ワッシャ11は、ロッド孔7bの上側に配置され、ワッシャ12は、ロッド孔7bの下側に配置される。
【0039】
ここで、施錠ロッド9は、フューエルリッドロック装置1を車両本体BDのインナパネルに取り付ける場合、図2〜図6に示すように、車両本体BDに取り付けたホルダHdによって延設部9dの中間を支持することで、車両VHの前後方向へ移動するように移動方向が規制されると共に、ブラケットBK或いはブラケットBKの係合孔Hに対して位置決めされる。このため、開いているフューエルリッドFLを閉じると、ブラケットBKは、図2に矢印Aで示すように、略水平面内を車両本体BDの左前方から左後方へと移動する。
【0040】
ここで、施錠ロッド9の基部9aの長さは、基部9aの下端がフランジ6kと載置部6fの下面との間に位置する長さに設定される。このような長さに設定すると、施錠ロッド9が載置部6f上をスライダ7と共に一対のガイドレール6gに沿って移動する際、基部9aがフランジ6kに当接するまで移動する。このとき、施錠ロッド9の基部9aとフランジ6kとの当接によってスライダ7のガイドレール6gに沿った移動が規制されると、スライダ7は、ロック位置Plとアンロック位置Pulとの間の後退位置Pbに配置される。
【0041】
フューエルリッドロック装置1は、以上のように構成されており、図4〜図6に示すアンロック位置に施錠ロッド9が配置された場合には、ブラケットBKに設けた係合孔Hと延設部9dの先端との係合が解除されるので、フューエルリッドFLを開くことができる。
【0042】
次に、フューエルリッドロック装置1の解錠状態から施錠状態への切り替えについて図16〜図19に基づいて説明する。図16は、解錠状態から施錠状態へ切り替わる途中におけるフューエルリッドロック装置の正面図である。図17は、解錠状態から施錠状態へ切り替わる途中におけるフューエルリッドロック装置の平面図である。図18は、解錠状態から施錠状態へ切り替わったフューエルリッドロック装置の正面図である。図19は、解錠状態から施錠状態へ切り替わったフューエルリッドロック装置の平面図である。
【0043】
先ず、ドアロック機構を施錠操作してドアをロックすると、このドアロック操作と連動してフューエルリッドロック装置1が作動し、モータ3の駆動によって施錠ロッド9がロック位置Plへ移動され、施錠状態に切り替えられる。即ち、車両VHの制御手段から出力される制御信号によってモータ3が駆動され、図16及び図17に示すように、ギア付きスライダ6がケース2から左方へとスライドする。これにより、施錠ロッド9が車両前方へ前進し、延設部9dの先端がブラケットBKに接近してゆく。
【0044】
ギア付きスライダ6が予め設定した所定ストロークだけスライドすると、モータ3の駆動が停止され、図18及び図19に示すように、延設部9dの先端がロック位置Plに移動してブラケットBKの係合孔Hと係合し、フューエルリッドロック装置1が施錠状態に切り替えられる。このため、フューエルリッドロック装置1は、施錠ロッド9の先端がブラケットBKの係合孔Hと係合することで、フューエルリッドFLが施錠される。従って、フューエルリッドロック装置1が施錠状態に切り替わると、フューエルリッドFLは、開くことができなくなる。なお、フューエルリッドロック装置1は、ドアロック機構を解錠操作してドアをアンロックすれば、上記と逆の作動によって、施錠状態が解錠状態に切り替えられる。
【0045】
ところで、上述のように、フューエルリッドロック装置1は、例えば、車両VHへの給油作業等のために、施錠ロッド9をアンロック位置へ移動させて解錠状態に切り替えた後、フューエルリッドFLを開いた状態で、ドアロック機構を施錠操作してドアをロックした場合、施錠ロッド9がロック位置Plへ移動される。
【0046】
本実施の形態では、このような状況でフューエルリッドFLを閉じると、ブラケットBKが施錠ロッド9を押すことにより、スライダ7が載置部6f上を後退位置Pbへ後退させられる。この結果、再度、フューエルリッドFLを開くことができるようになる。このときのフューエルリッドロック装置1の作用を、図20〜図23を参照して以下に説明する。
【0047】
図20は、スライダ7がギア付きスライダ6の載置部6f上をケース2側へ後退する途中におけるフューエルリッドロック装置の正面図である。図21は、スライダ7がギア付きスライダ6の載置部6f上をケース2側へ後退する途中におけるフューエルリッドロック装置1の平面図である。図22は、スライダ7がギア付きスライダ6の載置部6f上を移動し、後退位置Pbで停止した際のフューエルリッドロック装置1の正面図である。図23は、スライダ7がギア付きスライダ6の載置部6f上を移動し、後退位置Pbで停止した際のフューエルリッドロック装置1の平面図である。なお、図20及び図21は、コイルばね8の付勢力の方向が反転する位置におけるフューエルリッドロック装置1を示している。
【0048】
フューエルリッドFLが開いた状態で施錠ロッド9がロック位置Plに切り替えられた場合、フューエルリッドFLを閉じると、車両本体BDの左前方から円弧を描きながら略水平面内を移動してくるブラケットBKが、図20及び図21に示すように、施錠ロッド9の先端を押圧する。これにより、施錠ロッド9を介して押圧され、スライダ7がギア付きスライダ6の載置部6f上をケース2側へ後退する。このとき、スライダ7は、コイルばね8の付勢力と、ガイドレール6g及びガイドレール7c間の摺動抵抗とに抗しながらギア付きスライダ6の載置部6f上をケース2側へ移動するが、ギア付きスライダ6とモータ3との間の抵抗力の方が大きくなるように設定されているため、載置部6fは移動しない。
【0049】
そして、フューエルリッドFLが全閉されると、ブラケットBKによる施錠ロッド9の先端の押圧が停止され、スライダ7は、図22及び図23に示すように、最もケース2側に接近した後退位置Pbで停止する。このとき、施錠ロッド9は、スライダ7のスライドによって反転したコイルばね8の付勢力を受けるが、図15に示すように、基部9aがフランジ6kの側面に当接することで、スライダ7を停止させている。この場合、スライダ7の後退位置Pbにおける施錠ロッド9の先端の位置が、ロック位置Plとアンロック位置Pulとの間の退避位置Peとなる。そして、フューエルリッドロック装置1は、施錠ロッド9のロック位置Plとアンロック位置Pulとの間の移動距離が、ロック位置Plと退避位置Peとの間の移動距離よりも長くなるように設定されている。
【0050】
この結果、退避位置Peが、アンロック位置Pulよりもロック位置Pl寄りに位置することから、通常のモータ3による施解錠操作時には、施錠ロッド9をアンロック位置Pulとロック位置Plとの間に移動させることで、確実にフューエルリッドFLを施解錠できると共に、フューエルリッドFLが開いた状態で、施錠ロッド9がロック位置Plに切り替えられた場合に、フューエルリッドFLを閉じると、施錠ロッド9の先端とブラケットBKとが確実に非係合となる。
【0051】
このとき、フューエルリッドロック装置1は、施錠ロッド9に何も付勢力が付加されていない。このため、施錠ロッド9は、フューエルリッドFLを閉じることによってブラケットBKから作用する押圧力によってスライダ7を後退させるだけである。そして、施錠ロッド9の先端が退避位置Peへ移動しても、施錠ロッド9は、ブラケットBKの係合孔Hと係合することはない。このため、再度、フューエルリッドFLを開く必要が生じた場合には、フューエルリッドFLを開方向へ操作すれば、施錠ロッド9に邪魔されることなくフューエルリッドFLを開くことができ、この逆にフューエルリッドFLを閉じることもできる。
【0052】
このように、フューエルリッドロック装置1は、フューエルリッドを開いているにも拘わらず施錠状態に切り替わっても、モータ3を駆動することなくフューエルリッドFLを簡単に開閉することができる。
【0053】
また、施錠ロッド9の先端を退避位置Peへ移動してフューエルリッドFLを開閉した場合、給油を終えた乗員がドアロック機構を解除操作してドアをアンロックした後、車両VHに乗り込んだ場合等には、前記制御手段から制御信号を出力し、施錠ロッド9が退避位置Peにあるフューエルリッドロック装置1を解錠状態に切り替える。このとき、フューエルリッドロック装置1は、前記制御手段から入力される制御信号によってモータ3が駆動され、ギア付きスライダ6がケース2に対して図24において右方へと移動を開始すると、スライダ7の右辺がケース2の左辺に当接した後、一対のガイドレール6gに案内されながら載置部6f上をコイルばね8の付勢力に抗して左方へスライドを開始する。
【0054】
しかし、フューエルリッドロック装置1は、施錠ロッド9のロック位置Plとアンロック位置Pulとの間の移動距離が、ロック位置Plと退避位置Peとの間の移動距離よりも長くなるように設定されている。また、スライダ7と載置部6fとの間には、スライダ7が一対のガイドレール6gに沿って移動する際、移動方向に沿った付勢力の方向が移動途中で反転するコイルばね8が配置されている。このため、フューエルリッドロック装置1は、図24に示す位置でコイルばね8からスライダ7に作用する付勢力の方向が右から左に反転する。
【0055】
この結果、施錠ロッド9の位置が退避位置Peからアンロック位置Pulに確実に切り替わることができ、図5に示すように、ブラケットBKと施錠ロッド9の延設部9dの先端との間に隙間が形成される。従って、フューエルリッドロック装置1は、施錠ロッド9の位置が退避位置Peからアンロック位置Pulに切り替わると、ブラケットBKと施錠ロッド9の延設部9dの先端とが接触することなく、フューエルリッドFLを円滑に開閉させることができる。このとき、ドアロック機構がアンロックであると共に、フューエルリッド装置1が解錠状態にある。これにより、ドアロック機構をロックすれば、フューエルリッドロック装置1も施錠状態に切り替わるので、ドアロック機構を通常と同様に使用することができ、ドアロック機構の使い勝手に優れている。
【0056】
尚、施錠ロッドは、モータ3から伝達される駆動力によって軸方向に沿って進退移動するものであれば、実施の形態の施錠ロッド9の形状に限定されるものではない。例えば、施錠ロッド9は、折曲部9bの長さが実施の形態よりも短くてもよいし、傾斜部9cの角度が実施の形態よりも小さくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明のフューエルリッドロック装置は、フューエルリッドを開いた状態で施錠ロッドがロック位置に切り替わった場合、電動アクチュエータを駆動することなく簡単にフューエルリッドを開閉するのに適している。
【符号の説明】
【0058】
1 フューエルリッドロック装置
2 ケース
2a ロアケース
2b アッパケース
3 モータ
4 ウォーム
5 ギア部材
5a ウォームホイール
5b ピニオン
5c ギア軸
6 ギア付きスライダ
6a 湾曲部
6b,6c 直線軸部
6d ラック
6e 折曲部
6f 載置部
6g ガイドレール
6h,6i 側壁
6j 開口
6k フランジ
6m 係止孔
7 スライダ
7a ボス部
7b ロッド孔
7c ガイドレール
7d スリット
8 コイルばね
9 施錠ロッド
9a 基部
9b 折曲部
9c 傾斜部
9d 延設部
10 ロッドホルダ
11,12 ワッシャ
15 ブラケット
BD 車両本体
BK ブラケット
FC フューエルキャップ
FD フロントサイドドア
FL フューエルリッド
FO 給油口
H 係合孔
Hd ホルダ
Hj ヒンジ
Pb 後退位置
Pe 退避位置
Pl ロック位置
Pul アンロック位置
SD スライドドア
SF 給油空間
VH 車両
【技術分野】
【0001】
本発明は、フューエルリッドロック装置に関し、より詳細には、車両本体の燃料供給用開口を開閉可能に配設されたフューエルリッドを施錠状態に保持すると共に、施錠状態又は解錠状態に切り替えるフューエルリッドロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフューエルリッドロック装置として、セクタギアによって出力ロッドを進退させることにより、出力ロッドの先端をフューエルリッドの係合孔に係合させ、フューエルリッドを施錠状態に保持する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図25は、特許文献1に開示されたフューエルリッドロック装置の構成を施錠状態で示す図である。フューエルリッドロック装置100は、ロアケース101内にモータ102、セクタギア104及び出力ロッド105が配置されている。ロアケース101には、図示しないアッパケースが被着される。
【0004】
モータ102は、本体102aから延出する回転軸102bにウォーム103が取り付けられている。セクタギア104は、一方にセクタ部104aが形成され、他方にレバー部104bが形成されている。また、セクタギア104は、セクタ部104aとレバー部104bの間に挿通孔104cが形成されている。セクタ部104aは、円弧状に形成された外周にウォーム103と噛み合うギア104dが形成されている。レバー部104bは、出力ロッド105と対向する上面に係合軸104eが出力ロッド105に向けて突設されている。挿通孔104cには、ロアケース101に設けた軸部101aが挿通される。このため、セクタギア104は、軸部101aを中心として回転する。
【0005】
出力ロッド105は、それぞれ角棒からなる摺動軸部105aとセクタ連結軸部105bとを有すると共に、フランジ105cを介して端部に丸棒軸部105dが形成されている。
【0006】
摺動軸部105aは、ロアケース101内を出力ロッド105の長手方向に沿って摺動する部分であり、先端に傾斜面105eが形成されると共に、略中間にダンパ106が取り付けられている。ダンパ106は、ロアケース101の内面に当接することにより、摺動軸部105aの先端がロアケース101の外部へ所定量突出するように出力ロッド105のロアケース101からの突出量を規制する。
【0007】
セクタ連結軸部105bは、摺動軸部105aよりも幅の広い角棒であり、中央に長手方向に沿ってセクタギア104の係合軸104eが係合する長孔105fが形成されている。丸棒軸部105dは、ロアケース101の内壁とフランジ105cとの間に戻しばね107を配置することで、摺動軸部105aの先端がロアケース101の外部へ突出するように出力ロッド105を常時付勢している。
【0008】
フューエルリッドロック装置100は、図25に示すように、セクタギア104が一点鎖線で示す回転位置L1にある場合には、出力ロッド105の摺動軸部105aの先端がロックオン位置(ロック位置)Lonにある。このとき、フューエルリッドが閉じられていると、摺動軸部105aがフューエルリッドに設けたロック片120の係止孔120aに係止されるので、フューエルリッドは施錠され、開くことができない。
【0009】
そして、図25に示す出力ロッド105の摺動軸部105aの先端がロックオン位置(ロック位置)Lonにある状態において、ロアケース101のコネクタ部101bに挿着される電源コネクタからモータ102に電力が供給されると、フューエルリッドロック装置100は、ウォーム103と噛み合ったギア104dにより、セクタギア104が軸部101aを中心として回転する。図26は、回転後を示す図であり、セクタギア104は、一点鎖線で示す回転位置L2へ回転する。これにより、出力ロッド105の摺動軸部105aの先端がロックオフ位置(アンロック位置)Loffへ後退する。この結果、フューエルリッドロック装置100は、摺動軸部105aとロック片120の係止孔120aとの係止が解除された解錠状態に切り替わり、フューエルリッドを開くことができる。このとき、モータ102には、所定時間だけ電力が供給される。
【0010】
フューエルリッドロック装置100が、解錠状態となってモータ102への電力供給が停止すると、出力ロッド105が戻しばね107の付勢力によってセクタギア104及びウォーム103を逆転させながら、図25に示すロックオン位置(ロック位置)Lonへ戻る。この結果、フューエルリッドが開いた状態で、出力ロッド105がロック位置に配置される場合に、フューエルリッドロック装置100は、開いているフューエルリッドを閉じると、フューエルリッドに設けたロック片120が先端の傾斜面105eに当接して出力ロッド105を図25の左方へ移動させる。
【0011】
このため、摺動軸部105aの先端がロック片120の係止孔120aと一致すると、戻しばね107の付勢力によって出力ロッド105が押し出される。この結果、特許文献1のフューエルリッドロック装置は、図25に示すように、出力ロッド105がロックオン位置(ロック位置)Lonへ戻ると共に、摺動軸部105aの先端がロック片120の係止孔120aに係合した施錠状態に切り替わり、フューエルリッドが施錠される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−65215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、フューエルリッドロック装置100は、上記のようにフューエルリッドを開いた状態で出力ロッド105がロック位置に切り替わっても、フューエルリッドを閉じることはできるが、フューエルリッドが施錠されてしまう。このため、フューエルリッドロック装置100は、再度フューエルリッドを開く必要が生じた場合、改めてモータ102へ通電して出力ロッド105をロックオフ位置(アンロック位置)Loffへ移動させる解錠操作をしなければならず、操作が煩雑であるという問題があった。また、特許文献1のフューエルリッドロック装置は、出力ロッド105をロックオフ位置Loffに保持するためには、モータ102への通電を継続しなけらばならず、モータ102の損傷やバッテリの消耗を伴う等の問題があった。
【0014】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、フューエルリッドを開いているにも拘わらず施錠状態に切り替わっても、電動アクチュエータを駆動することなく簡単にフューエルリッドを開閉可能としたフューエルリッドロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のフューエルリッドロック装置は、車両本体に配置された給油口の外側に開閉可能に設けられるフューエルリッドに対し、電動アクチュエータの駆動に伴って移動する施錠ロッドの先端位置に応じて施錠或いは解錠を行ない、前記フューエルリッドの開閉状態によらず施錠状態へと移行可能なフューエルリッドロック装置であって、前記電動アクチュエータによって前記フューエルリッドの施錠状態或いは解錠状態にそれぞれ対応する二つの位置の間を直線的に移動される被駆動部材と、前記被駆動部材の移動方向に沿って前記被駆動部材に対して所定範囲をスライド自在に係合されると共に、前記施錠ロッドの基端が支持されるスライド部材と、を備え、前記スライド部材は、前記フューエルリッドが開いた状態で当該フューエルリッドロック装置が施錠状態にある場合に、前記フューエルリッドが閉じられる際、前記施錠ロッドを介して前記フューエルリッドから受ける力により前記施錠状態が解除される後退位置まで前記被駆動部材に対してスライドすることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のフューエルリッドロック装置は、上記の発明において、前記施錠状態に対応する位置から前記施錠状態が解除される後退位置までの前記施錠ロッドの移動距離は、前記施錠状態に対応する位置から前記解錠状態に対応する位置までの前記施錠ロッドの移動距離よりも小さいことを特徴とする。
【0017】
また、本発明のフューエルリッドロック装置は、上記の発明において、前記スライド部材は、前記所定範囲の両端で前記被駆動部材に対するスライドが停止されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のフューエルリッドロック装置は、上記の発明において、両端が前記被駆動部材及び前記スライド部材にそれぞれ係止され、前記スライド部材の前記被駆動部材に対するスライド途中で付勢力の向きが反転するコイルばねを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スライド部材は、フューエルリッドが開いた状態でフューエルリッドロック装置が施錠状態にある場合に、フューエルリッドが閉じられる際、施錠ロッドを介してフューエルリッドから受ける力により施錠状態が解除される後退位置まで被駆動部材に対してスライドするので、フューエルリッドを開いているにも拘わらず施錠状態に切り替わっても、電動アクチュエータを駆動することなく簡単にフューエルリッドを開閉することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施の形態であるフューエルリッドロック装置を搭載した車両を示す側面図である。
【図2】図2は、図1に示す車両のフューエルリッドが開いた状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、閉じられたフューエルリッドを図2に示すフューエルリッドロック装置のロッドによって施錠した状態を車体の内側から見た状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態であるフューエルリッドロック装置の全体構成を示す正面図である。
【図5】図5は、図4に示すフューエルリッドロック装置の平面図である。
【図6】図6は、図4に示すフューエルリッドロック装置の底面図である。
【図7】図7は、図4に示すフューエルリッドロック装置が有するケースの内部構造を示すロアケースの平面図である。
【図8】図8は、図7のC1−C1線に沿った断面図である。
【図9】図9は、ギア付きスライダの載置部を拡大して示す平面図である。
【図10】図10は、図9のC2−C2線に沿った断面図である。
【図11】図11は、スライダの平面図である。
【図12】図12は、スライダの右側面図である。
【図13】図13は、スライダの底面図である。
【図14】図14は、ギア付きスライダの載置部に載置したスライダの図11のC3−C3線に沿った断面図である。
【図15】図15は、図9に示すギア付きスライダの載置部にスライダを載置した際のC4−C4線に沿った断面図である。
【図16】図16は、解錠状態から施錠状態へ切り替わる途中におけるフューエルリッドロック装置の正面図である。
【図17】図17は、解錠状態から施錠状態へ切り替わる途中におけるフューエルリッドロック装置の平面図である。
【図18】図18は、解錠状態から施錠状態へ切り替わったフューエルリッドロック装置の正面図である。
【図19】図19は、解錠状態から施錠状態へ切り替わったフューエルリッドロック装置の平面図である。
【図20】図20は、スライダがギア付きスライダの載置部上をケース側へ後退する途中であって、コイルばねの付勢力の方向が反転する位置におけるフューエルリッドロック装置の正面図である。
【図21】図21は、スライダがギア付きスライダの載置部上をケース側へ後退する途中であって、コイルばねの付勢力の方向が反転する位置におけるフューエルリッドロック装置の平面図である。
【図22】図22は、スライダがギア付きスライダの載置部上を移動し、後退位置で停止した際のフューエルリッドロック装置の正面図である。
【図23】図23は、スライダがギア付きスライダの載置部上を移動し、後退位置で停止した際のフューエルリッドロック装置の平面図である。
【図24】図24は、施錠ロッドが後退位置にある状態からアンロック位置に切り替える中間の状態を示すフューエルリッドロック装置の平面図である。
【図25】図25は、従来のフューエルリッドロック装置の構成を施錠状態で示す図である。
【図26】図26は、従来のフューエルリッドロック装置の解錠状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明のフューエルリッドロック装置に係る実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態であるフューエルリッドロック装置を搭載した車両を示す側面図である。図2は、図1に示す車両のフューエルリッドが開いた状態を示す斜視図である。図3は、閉じたフューエルリッドを図2に示すフューエルリッドロック装置のロッドによって施錠した状態を車体の内側から見た状態を示す斜視図である。
【0023】
車両VHは、図1に示すように、車両本体BDの側面にフロントサイドドアFDが設けられ、フロントサイドドアFDの後部に後方へ移動させて開閉されるスライドドアSDが設けられると共に、スライドドアSDの後方にフューエルリッドFLが配置されている。
【0024】
フューエルリッドFLは、図2及び図3に示すように、車両本体BDにヒンジHjを介して取り付けられ、フューエルリッドFLが開くとフューエルキャップFCが被着された給油口FOを配置した給油空間SFが開放される。フューエルリッドFLの裏面の外周近傍には、係合部材として係合孔Hを形成したブラケットBKが設けられている。なお、フューエルリッドFLは、フューエルキャップFCと干渉しない位置、例えば、ブラケットBKと車両左右方向に対向する位置に図示しないプッシュリフタが設けられている。
【0025】
図4は、本発明の実施の形態であるフューエルリッドロック装置の全体構成を示す正面図である。図5は、図4に示すフューエルリッドロック装置の平面図である。図6は、図4に示すフューエルリッドロック装置の底面図である。図4〜図6に示すフューエルリッドロック装置1は、施錠ロッド9をアンロック位置に配置した状態を示している。
【0026】
フューエルリッドロック装置1は、図1〜図3に示したフューエルリッドFLを電動或いは手動によって施解錠する。フューエルリッドロック装置1は、図4〜図6に示すように、ケース2と、モータ3と、ギア付きスライダ6と、スライダ7と、施錠ロッド9とを備えており、ケース2の上面にはブラケット15がねじ止めされている。ブラケット15には、車両本体BDのインナパネルに形成した固定孔へ取り付けるためのボルト15aが取り付けられている。フューエルリッドロック装置1は、ドアロック機構の施解錠操作と連動するように、車両VHの制御手段(図示せず)によってモータ3の作動が制御されている。
【0027】
ケース2は、図4〜図6に示すように、ロアケース2aとアッパケース2bとを有している。ケース2の内部には、モータ3とギア部材5並びにギア付きスライダ6の中間部分が配置されている。ロアケース2aとアッパケース2bは、止めねじ2cによって2箇所をねじ止めされる他、外周の適宜箇所がスナップフィットファスナ2dによって係合されている。ケース2は、背面のロアケース2aとアッパケース2bとの境界部分に電力供給用のコネクタを接続するコネクタハウジング2eが設けられている。
【0028】
図7は、図4に示すフューエルリッドロック装置が有するケースの内部構造を示す平面図である。図8は、図7のC1−C1線に沿った断面図である。
【0029】
電動アクチュエータとしてのモータ3は、コネクタハウジング2eに接続される電源コネクタから供給される電力によって作動し、車両VHの制御手段の制御のもと、ドアロック機構の施解錠操作と連動してギア付きスライダ6を駆動し、施錠ロッド9の位置をフューエルリッドFLを施錠するロック位置PlとフューエルリッドFLを解錠するアンロック位置Pulとの間で切り替える。モータ3の本体3aは、図7に示すように、ロアケース2aに形成したモータ凹部2fに保持され、回転軸3bにはウォーム4が取り付けられている。ウォーム4は、ロアケース2aに形成したギア凹部2gに回転自在に保持されている。
【0030】
ギア部材5は、図7及び図8に示すように、下段にウォームホイール5aが配置され、ウォームホイール5aの上段中央にピニオン5bが回転中心を一致させて設けられており、ウォームホイール5aをウォーム4と噛み合わせてロアケース2aに形成したギア凹部2hにギア軸5cを中心として回転自在に保持されている。なお、アッパケース2bにも、モータ凹部2f等の各凹部に対応した凹部(図示せず)が形成され、ロアケース2aとの間にモータ3やウォーム4等を保持している。
【0031】
被駆動部材としてのギア付きスライダ6は、図7に示すように、略中間の湾曲部6aを介して互いに平行な直線軸部6b,6cが形成されており、一方の直線軸部6bの湾曲部6aと隣り合う側面にはピニオン5bと噛み合うラック6dが形成されている。湾曲部6a,直線軸部6c及び直線軸部6bのラック6dが形成された部分は、ケース2の内部に配置される。このため、ギア付きスライダ6は、モータ3の回転により、ケース2に対して予め設定した所定ストロークだけ図7に矢印で示す左右方向へスライドする。直線軸部6bの端部には、下方へ直角に折り曲げた折曲部6eが設けられている。また、他方の直線軸部6cの端部には、載置部6fが設けられている。図9は、ギア付きスライダ6の載置部を拡大して示す平面図である。図10は、図9のC2−C2線に沿った断面図である。載置部6fは、図9及び図10に示すように、略矩形に成形されたプレートの長手方向一方の側に一対のガイドレール6gが幅方向に形成されると共に、一対のガイドレール6gと側壁6h,6iとによって開口6jが形成されている。そして、開口6jを形成する側壁6hには、側壁6iに向かって突出するフランジ6kが形成されている。また、載置部6fは、長手方向他方の側に係止孔6mが設けられている。
【0032】
ここで、側壁6iは、載置部6fに載置されるスライダ7が当接し、スライダ7の移動開始位置を決める開始位置決め部となる。フランジ6kは、一対のガイドレール6gに係合してスライドするスライダ7の後退位置Pbを決める位置決め部となる。折曲部6eは、車室内へ突出しており、手動でフューエルリッドロック装置1を施錠状態から解錠状態に切り替えるエマージェンシ用の手動操作部として使用される。
【0033】
次に、図11〜図14を参照して載置部6fに載置されるスライダ7について説明する。図11は、スライダの平面図である。図12は、スライダの右側面図である。図13は、スライダの底面図である。図14は、ギア付きスライダの載置部に載置したスライダの図11のC3−C3線に沿った断面図である。
【0034】
スライド部材としてのスライダ7は、図11〜図14に示すように、略矩形に成形されたプレートの長手方向一方の側部上面にボス部7aが形成され、ボス部7aの中央にロッド孔7bが形成されている。ボス部7aに対向する下面には、載置部6fのガイドレール6gとそれぞれ係合する一対のガイドレール7cが幅方向に形成されている。ガイドレール7cは、ガイドレール6gと係合する部分にガイドレール6gとの間に一定の間隔を保持する突条が形成されている。また、スライダ7のボス部7aと対向する他方の側部には、スリット7dが長手方向に形成されている。
【0035】
スライダ7は、図4に示すように、載置部6fとの間にコイルばね8が配置される。コイルばね8は、一対のガイドレール6gに沿ってスライダ7が移動する際、移動方向に沿った付勢力の方向が移動途中で反転する。コイルばね8は、一端(上端)8aがスリット7dの奥部に係止されると共に(図5参照)、他端(下端)8bが載置部6fに設けた係止孔6mに係止され(図6参照)、スライダ7と載置部6fとの間に配置されている。
【0036】
施錠ロッド9は、スライダ7に支持され、モータ3の駆動に伴って車両VHの前後方向へ移動する。施錠ロッド9は、図4〜図6に示すように、スライダ7に支持される基部9aと、基部9aに対して直角に折り曲げられた折曲部9bと、折曲部9bから斜め前方へ立ち上がるように折り曲げられた傾斜部9cと、傾斜部9cに連続させて折曲部9bと平行に設けられた延設部9dとを有している。施錠ロッド9は、フューエルリッドロック装置1の解錠状態においては、図4及び図5に示すように、先端がブラケットBKよりも車両後方のアンロック位置Pulに配置される。
【0037】
ここで、図15は、図9に示すギア付きスライダ6の載置部6fにスライダ7を載置した際のC4−C4線に沿った断面図である。施錠ロッド9は、図15に示すように、ロッド孔7bとの間にロッドホルダ10及びワッシャ11,12を介在させて基部9aがスライダ7に支持されている。
【0038】
ロッドホルダ10は、図15に示すように、スライダ7のロッド孔7bに挿通され、下端が基部9aの周囲に係止される挿通部10aと、挿通部10aの上端に形成されたフランジ部10bと、フランジ部10bからロッド孔7bの半径方向外方へ連設され、施錠ロッド9の外周を三方から把持する把持部10cとを有している。ワッシャ11は、ロッド孔7bの上側に配置され、ワッシャ12は、ロッド孔7bの下側に配置される。
【0039】
ここで、施錠ロッド9は、フューエルリッドロック装置1を車両本体BDのインナパネルに取り付ける場合、図2〜図6に示すように、車両本体BDに取り付けたホルダHdによって延設部9dの中間を支持することで、車両VHの前後方向へ移動するように移動方向が規制されると共に、ブラケットBK或いはブラケットBKの係合孔Hに対して位置決めされる。このため、開いているフューエルリッドFLを閉じると、ブラケットBKは、図2に矢印Aで示すように、略水平面内を車両本体BDの左前方から左後方へと移動する。
【0040】
ここで、施錠ロッド9の基部9aの長さは、基部9aの下端がフランジ6kと載置部6fの下面との間に位置する長さに設定される。このような長さに設定すると、施錠ロッド9が載置部6f上をスライダ7と共に一対のガイドレール6gに沿って移動する際、基部9aがフランジ6kに当接するまで移動する。このとき、施錠ロッド9の基部9aとフランジ6kとの当接によってスライダ7のガイドレール6gに沿った移動が規制されると、スライダ7は、ロック位置Plとアンロック位置Pulとの間の後退位置Pbに配置される。
【0041】
フューエルリッドロック装置1は、以上のように構成されており、図4〜図6に示すアンロック位置に施錠ロッド9が配置された場合には、ブラケットBKに設けた係合孔Hと延設部9dの先端との係合が解除されるので、フューエルリッドFLを開くことができる。
【0042】
次に、フューエルリッドロック装置1の解錠状態から施錠状態への切り替えについて図16〜図19に基づいて説明する。図16は、解錠状態から施錠状態へ切り替わる途中におけるフューエルリッドロック装置の正面図である。図17は、解錠状態から施錠状態へ切り替わる途中におけるフューエルリッドロック装置の平面図である。図18は、解錠状態から施錠状態へ切り替わったフューエルリッドロック装置の正面図である。図19は、解錠状態から施錠状態へ切り替わったフューエルリッドロック装置の平面図である。
【0043】
先ず、ドアロック機構を施錠操作してドアをロックすると、このドアロック操作と連動してフューエルリッドロック装置1が作動し、モータ3の駆動によって施錠ロッド9がロック位置Plへ移動され、施錠状態に切り替えられる。即ち、車両VHの制御手段から出力される制御信号によってモータ3が駆動され、図16及び図17に示すように、ギア付きスライダ6がケース2から左方へとスライドする。これにより、施錠ロッド9が車両前方へ前進し、延設部9dの先端がブラケットBKに接近してゆく。
【0044】
ギア付きスライダ6が予め設定した所定ストロークだけスライドすると、モータ3の駆動が停止され、図18及び図19に示すように、延設部9dの先端がロック位置Plに移動してブラケットBKの係合孔Hと係合し、フューエルリッドロック装置1が施錠状態に切り替えられる。このため、フューエルリッドロック装置1は、施錠ロッド9の先端がブラケットBKの係合孔Hと係合することで、フューエルリッドFLが施錠される。従って、フューエルリッドロック装置1が施錠状態に切り替わると、フューエルリッドFLは、開くことができなくなる。なお、フューエルリッドロック装置1は、ドアロック機構を解錠操作してドアをアンロックすれば、上記と逆の作動によって、施錠状態が解錠状態に切り替えられる。
【0045】
ところで、上述のように、フューエルリッドロック装置1は、例えば、車両VHへの給油作業等のために、施錠ロッド9をアンロック位置へ移動させて解錠状態に切り替えた後、フューエルリッドFLを開いた状態で、ドアロック機構を施錠操作してドアをロックした場合、施錠ロッド9がロック位置Plへ移動される。
【0046】
本実施の形態では、このような状況でフューエルリッドFLを閉じると、ブラケットBKが施錠ロッド9を押すことにより、スライダ7が載置部6f上を後退位置Pbへ後退させられる。この結果、再度、フューエルリッドFLを開くことができるようになる。このときのフューエルリッドロック装置1の作用を、図20〜図23を参照して以下に説明する。
【0047】
図20は、スライダ7がギア付きスライダ6の載置部6f上をケース2側へ後退する途中におけるフューエルリッドロック装置の正面図である。図21は、スライダ7がギア付きスライダ6の載置部6f上をケース2側へ後退する途中におけるフューエルリッドロック装置1の平面図である。図22は、スライダ7がギア付きスライダ6の載置部6f上を移動し、後退位置Pbで停止した際のフューエルリッドロック装置1の正面図である。図23は、スライダ7がギア付きスライダ6の載置部6f上を移動し、後退位置Pbで停止した際のフューエルリッドロック装置1の平面図である。なお、図20及び図21は、コイルばね8の付勢力の方向が反転する位置におけるフューエルリッドロック装置1を示している。
【0048】
フューエルリッドFLが開いた状態で施錠ロッド9がロック位置Plに切り替えられた場合、フューエルリッドFLを閉じると、車両本体BDの左前方から円弧を描きながら略水平面内を移動してくるブラケットBKが、図20及び図21に示すように、施錠ロッド9の先端を押圧する。これにより、施錠ロッド9を介して押圧され、スライダ7がギア付きスライダ6の載置部6f上をケース2側へ後退する。このとき、スライダ7は、コイルばね8の付勢力と、ガイドレール6g及びガイドレール7c間の摺動抵抗とに抗しながらギア付きスライダ6の載置部6f上をケース2側へ移動するが、ギア付きスライダ6とモータ3との間の抵抗力の方が大きくなるように設定されているため、載置部6fは移動しない。
【0049】
そして、フューエルリッドFLが全閉されると、ブラケットBKによる施錠ロッド9の先端の押圧が停止され、スライダ7は、図22及び図23に示すように、最もケース2側に接近した後退位置Pbで停止する。このとき、施錠ロッド9は、スライダ7のスライドによって反転したコイルばね8の付勢力を受けるが、図15に示すように、基部9aがフランジ6kの側面に当接することで、スライダ7を停止させている。この場合、スライダ7の後退位置Pbにおける施錠ロッド9の先端の位置が、ロック位置Plとアンロック位置Pulとの間の退避位置Peとなる。そして、フューエルリッドロック装置1は、施錠ロッド9のロック位置Plとアンロック位置Pulとの間の移動距離が、ロック位置Plと退避位置Peとの間の移動距離よりも長くなるように設定されている。
【0050】
この結果、退避位置Peが、アンロック位置Pulよりもロック位置Pl寄りに位置することから、通常のモータ3による施解錠操作時には、施錠ロッド9をアンロック位置Pulとロック位置Plとの間に移動させることで、確実にフューエルリッドFLを施解錠できると共に、フューエルリッドFLが開いた状態で、施錠ロッド9がロック位置Plに切り替えられた場合に、フューエルリッドFLを閉じると、施錠ロッド9の先端とブラケットBKとが確実に非係合となる。
【0051】
このとき、フューエルリッドロック装置1は、施錠ロッド9に何も付勢力が付加されていない。このため、施錠ロッド9は、フューエルリッドFLを閉じることによってブラケットBKから作用する押圧力によってスライダ7を後退させるだけである。そして、施錠ロッド9の先端が退避位置Peへ移動しても、施錠ロッド9は、ブラケットBKの係合孔Hと係合することはない。このため、再度、フューエルリッドFLを開く必要が生じた場合には、フューエルリッドFLを開方向へ操作すれば、施錠ロッド9に邪魔されることなくフューエルリッドFLを開くことができ、この逆にフューエルリッドFLを閉じることもできる。
【0052】
このように、フューエルリッドロック装置1は、フューエルリッドを開いているにも拘わらず施錠状態に切り替わっても、モータ3を駆動することなくフューエルリッドFLを簡単に開閉することができる。
【0053】
また、施錠ロッド9の先端を退避位置Peへ移動してフューエルリッドFLを開閉した場合、給油を終えた乗員がドアロック機構を解除操作してドアをアンロックした後、車両VHに乗り込んだ場合等には、前記制御手段から制御信号を出力し、施錠ロッド9が退避位置Peにあるフューエルリッドロック装置1を解錠状態に切り替える。このとき、フューエルリッドロック装置1は、前記制御手段から入力される制御信号によってモータ3が駆動され、ギア付きスライダ6がケース2に対して図24において右方へと移動を開始すると、スライダ7の右辺がケース2の左辺に当接した後、一対のガイドレール6gに案内されながら載置部6f上をコイルばね8の付勢力に抗して左方へスライドを開始する。
【0054】
しかし、フューエルリッドロック装置1は、施錠ロッド9のロック位置Plとアンロック位置Pulとの間の移動距離が、ロック位置Plと退避位置Peとの間の移動距離よりも長くなるように設定されている。また、スライダ7と載置部6fとの間には、スライダ7が一対のガイドレール6gに沿って移動する際、移動方向に沿った付勢力の方向が移動途中で反転するコイルばね8が配置されている。このため、フューエルリッドロック装置1は、図24に示す位置でコイルばね8からスライダ7に作用する付勢力の方向が右から左に反転する。
【0055】
この結果、施錠ロッド9の位置が退避位置Peからアンロック位置Pulに確実に切り替わることができ、図5に示すように、ブラケットBKと施錠ロッド9の延設部9dの先端との間に隙間が形成される。従って、フューエルリッドロック装置1は、施錠ロッド9の位置が退避位置Peからアンロック位置Pulに切り替わると、ブラケットBKと施錠ロッド9の延設部9dの先端とが接触することなく、フューエルリッドFLを円滑に開閉させることができる。このとき、ドアロック機構がアンロックであると共に、フューエルリッド装置1が解錠状態にある。これにより、ドアロック機構をロックすれば、フューエルリッドロック装置1も施錠状態に切り替わるので、ドアロック機構を通常と同様に使用することができ、ドアロック機構の使い勝手に優れている。
【0056】
尚、施錠ロッドは、モータ3から伝達される駆動力によって軸方向に沿って進退移動するものであれば、実施の形態の施錠ロッド9の形状に限定されるものではない。例えば、施錠ロッド9は、折曲部9bの長さが実施の形態よりも短くてもよいし、傾斜部9cの角度が実施の形態よりも小さくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明のフューエルリッドロック装置は、フューエルリッドを開いた状態で施錠ロッドがロック位置に切り替わった場合、電動アクチュエータを駆動することなく簡単にフューエルリッドを開閉するのに適している。
【符号の説明】
【0058】
1 フューエルリッドロック装置
2 ケース
2a ロアケース
2b アッパケース
3 モータ
4 ウォーム
5 ギア部材
5a ウォームホイール
5b ピニオン
5c ギア軸
6 ギア付きスライダ
6a 湾曲部
6b,6c 直線軸部
6d ラック
6e 折曲部
6f 載置部
6g ガイドレール
6h,6i 側壁
6j 開口
6k フランジ
6m 係止孔
7 スライダ
7a ボス部
7b ロッド孔
7c ガイドレール
7d スリット
8 コイルばね
9 施錠ロッド
9a 基部
9b 折曲部
9c 傾斜部
9d 延設部
10 ロッドホルダ
11,12 ワッシャ
15 ブラケット
BD 車両本体
BK ブラケット
FC フューエルキャップ
FD フロントサイドドア
FL フューエルリッド
FO 給油口
H 係合孔
Hd ホルダ
Hj ヒンジ
Pb 後退位置
Pe 退避位置
Pl ロック位置
Pul アンロック位置
SD スライドドア
SF 給油空間
VH 車両
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に配置された給油口の外側に開閉可能に設けられるフューエルリッドに対し、電動アクチュエータの駆動に伴って移動する施錠ロッドの先端位置に応じて施錠或いは解錠を行ない、前記フューエルリッドの開閉状態によらず施錠状態へと移行可能なフューエルリッドロック装置であって、
前記電動アクチュエータによって前記フューエルリッドの施錠状態或いは解錠状態にそれぞれ対応する二つの位置の間を直線的に移動される被駆動部材と、
前記被駆動部材の移動方向に沿って前記被駆動部材に対して所定範囲をスライド自在に係合されると共に、前記施錠ロッドの基端が支持されるスライド部材と、
を備え、
前記スライド部材は、
前記フューエルリッドが開いた状態で当該フューエルリッドロック装置が施錠状態にある場合に、前記フューエルリッドが閉じられる際、前記施錠ロッドを介して前記フューエルリッドから受ける力により前記施錠状態が解除される後退位置まで前記被駆動部材に対してスライドすることを特徴とするフューエルリッドロック装置。
【請求項2】
前記施錠状態に対応する位置から前記施錠状態が解除される後退位置までの前記施錠ロッドの移動距離は、前記施錠状態に対応する位置から前記解錠状態に対応する位置までの前記施錠ロッドの移動距離よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のフューエルリッドロック装置。
【請求項3】
前記スライド部材は、前記所定範囲の両端で前記被駆動部材に対するスライドが停止されることを特徴とする請求項1又は2に記載のフューエルリッドロック装置。
【請求項4】
両端が前記被駆動部材及び前記スライド部材にそれぞれ係止され、前記スライド部材の前記被駆動部材に対するスライド途中で付勢力の向きが反転するコイルばねを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のフューエルリッドロック装置。
【請求項1】
車両本体に配置された給油口の外側に開閉可能に設けられるフューエルリッドに対し、電動アクチュエータの駆動に伴って移動する施錠ロッドの先端位置に応じて施錠或いは解錠を行ない、前記フューエルリッドの開閉状態によらず施錠状態へと移行可能なフューエルリッドロック装置であって、
前記電動アクチュエータによって前記フューエルリッドの施錠状態或いは解錠状態にそれぞれ対応する二つの位置の間を直線的に移動される被駆動部材と、
前記被駆動部材の移動方向に沿って前記被駆動部材に対して所定範囲をスライド自在に係合されると共に、前記施錠ロッドの基端が支持されるスライド部材と、
を備え、
前記スライド部材は、
前記フューエルリッドが開いた状態で当該フューエルリッドロック装置が施錠状態にある場合に、前記フューエルリッドが閉じられる際、前記施錠ロッドを介して前記フューエルリッドから受ける力により前記施錠状態が解除される後退位置まで前記被駆動部材に対してスライドすることを特徴とするフューエルリッドロック装置。
【請求項2】
前記施錠状態に対応する位置から前記施錠状態が解除される後退位置までの前記施錠ロッドの移動距離は、前記施錠状態に対応する位置から前記解錠状態に対応する位置までの前記施錠ロッドの移動距離よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のフューエルリッドロック装置。
【請求項3】
前記スライド部材は、前記所定範囲の両端で前記被駆動部材に対するスライドが停止されることを特徴とする請求項1又は2に記載のフューエルリッドロック装置。
【請求項4】
両端が前記被駆動部材及び前記スライド部材にそれぞれ係止され、前記スライド部材の前記被駆動部材に対するスライド途中で付勢力の向きが反転するコイルばねを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のフューエルリッドロック装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−77507(P2012−77507A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223511(P2010−223511)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000148896)三井金属アクト株式会社 (127)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000148896)三井金属アクト株式会社 (127)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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