説明

フラクションコレクタ、その制御方法及びその洗浄方法

【課題】溶離液を分取した後に、溶離液を滴下するノズルの外部を洗浄することを可能とする。
【解決手段】フラクションコレクタは流路管31等を有している。溶離液を滴下する滴下ノズル11にはこれらの流路管を通じてカラムからの溶離液が流入する。滴下ノズル11の下方には、溶離液を分取するための複数の試験管9を収容する容器14が設けられている。滴下ノズル11が洗浄される際には、滴下ノズル11が洗浄位置(破線)まで移動される。洗浄位置には洗浄ノズル12が設置されており、流路管33を介して供給された溶媒が洗浄ノズル12から滴下ノズル11に吹き付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラクションコレクタ、特に、液体を滴下するノズルを有するフラクションコレクタ、その制御方法及びその洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィにおいては、固定相が充填されたカラムに、複数の成分を有する試料、及び、所定の混合比で混合された複数の溶媒からなる移動相に相当する溶離液が流される。このとき、溶離液とともにカラムに流入した試料は、カラムに充填された固定相に吸着しつつ溶離液の流下に伴って移動し、所定時間後にカラムから排出される。ここで、試料に含まれた各成分が排出されるのに要する時間は、溶離液との親和性やカラムの固定相と各成分との相互作用などに依存し、成分ごとに異なる。つまり、溶離液との親和性が弱いものや、固定相との相互作用が強いものは、カラム内に長く留まる。また、逆に、溶離液との親和性が強いものや、固定相との相互作用が弱いものは、速やかにカラムを通過する。したがって溶離液に含まれる試料は成分ごとに分離されてカラムから流出する。
【0003】
特許文献1のフラクションコレクタは、カラムを通過した溶離液を試験管などの容器に分取する。フラクションコレクタは、カラムからの溶離液を滴下するノズルを有しており、ノズルから滴下される溶離液を受け取るようにノズルの直下で容器を支持している。フラクションコレクタに接続されたパーソナルコンピュータなどの制御装置(または、フラクションコレクタの内部に設置された制御部)は、カラムからの溶離液に含まれる試料の濃度に応じて各容器に溶離液を分取するようにフラクションコレクタを制御する。これによって、各容器には試料に含まれる成分ごとに溶離液が分取される。
【0004】
【特許文献1】特開平7−140127号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなフラクションコレクタにおいて、溶離液が通過する流路やノズルを清浄に保つことは特に重要である。例えば、ある液体クロマトグラフィを行った後に別の液体クロマトグラフィを行う場合に、前の液体クロマトグラフィにおいて使用された溶離液が流路やノズルに残存していると、次の液体クロマトグラフィにおいて分取された溶離液に前の溶離液が混入してしまう。このような問題を解消するため、液体クロマトグラフィを行った後に、試料を含まない溶媒を流路やノズルに流下させ、残存した溶離液を洗い流す制御が行われている。
【0006】
しかし、既存の流路を用いて溶離液を流下させるだけではノズルの内部が洗浄されるのみであり、ノズルの外部に溶離液が残存する場合がある。
【0007】
本発明の目的は、ノズルの外部をも洗浄する制御を施すことができるフラクションコレクタ、その制御方法及びその洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明のフラクションコレクタは、カラムからの液体に含まれる試料の濃度に応じて前記カラムからの液体を分取容器に分取する液体クロマトグラフィ用のフラクションコレクタであって、前記液体クロマトグラフィが行われる場合に前記カラムからの液体を滴下する滴下ノズルと、前記滴下ノズルから滴下された液体を受け取るように前記分取容器を支持する分取容器支持部材と、前記滴下ノズルの外表面に液体を吹き付ける洗浄ノズルとを備えている。
【0009】
本発明のフラクションコレクタによると、滴下ノズルの外表面に液体を吹き付ける洗浄ノズルにより、滴下ノズルの内部のみならず、滴下ノズルの外表面を洗浄するようにフラクションコレクタを制御することが可能である。したがって、液体クロマトグラフィを行う際に、以前の液体クロマトグラフィにおいて用いられた溶離液の成分が今回の液体クロマトグラフィの溶離液に混入するのが抑制される。
【0010】
また、本発明においては、液体が通過する第1〜第3のポートを有しており、前記第1のポートが前記第2のポートに連通した状態と前記第3のポートに連通した状態とを選択的に取る第1の三方弁と、前記液体クロマトグラフィが行われる場合に前記カラムからの液体を前記第1のポートまで導入する導入流路と、前記第2のポートから前記滴下ノズルまでの液体の流路である液体分取流路と、前記液体分取流路とは異なる流路であって、前記第3のポートを通過した液体を排出する液体排出流路とをさらに備えていることが好ましい。この構成によると、分取のための流路とは異なる流路を通じて分取容器に分取する必要のない溶離液を排出するような制御を施すことができるフラクションコレクタが実現する。
【0011】
また、本発明においては、前記液体排出流路が、液体が通過する第4〜第6のポートを有しており、前記第4のポートが前記第5のポートに連通した状態と前記第6のポートに連通した状態とを選択的に取る第2の三方弁と、前記第3のポートから前記第4のポートまでの液体の流路である第1の部分流路と、前記第5のポートを通過した液体を排出する第2の部分流路と、前記第6のポートから前記洗浄ノズルまでの液体の流路である洗浄液流路とを有していることが好ましい。
【0012】
上記の構成によると、第1及び第2の三方弁を制御することによって、(1)滴下ノズルに液体を供給する状態、(2)液体排出流路を通じて液体を排出する状態、及び、(3)洗浄ノズルに液体を供給する状態の3通りの状態を制御することが可能なフラクションコレクタが実現する。つまり、(A)滴下ノズルに液体を供給して液体を分取すること、(B)滴下ノズルに液体を供給して滴下ノズルの内部を洗浄すること、(C)液体排出流路を介して液体を排出しつつ流路を洗浄すること、及び、(D)洗浄ノズルに液体を供給しつつ滴下ノズルの外表面を洗浄することという4つの動作を選択的に制御するのが可能となる。したがって、滴下ノズルの外表面を洗浄するのに液体排出流路を利用するため、洗浄ノズルに液体を供給する流路を別途に用意する場合と比べて装置の構成が簡易なものとなる。
【0013】
また、本発明においては、前記滴下ノズルから滴下された液体を受け取る洗浄用容器と、前記滴下ノズルから滴下された液体を前記分取容器が受け取る分取位置と前記滴下ノズルから滴下された液体を前記洗浄用容器が受け取る洗浄位置との間で前記滴下ノズルを移動するノズル移動手段とを備えており、前記滴下ノズルが前記洗浄位置にある場合に前記滴下ノズルに液体を吹き付けるような位置に、前記洗浄ノズルが配置されていることが好ましい。この構成によると、滴下ノズルを洗浄する際に洗浄用容器が液体を受け取るため、洗浄の際の液体が分取容器に混入することが防止される。
【0014】
また、本発明においては、前記洗浄用容器が、前記滴下ノズルが前記洗浄位置にある場合に平面視において前記滴下ノズルの先端を取り囲む側面を有しており、前記滴下ノズルが前記洗浄位置にある場合に前記洗浄ノズルが液体を吹き付ける方向に沿って前記洗浄ノズルの吹き付け口の延長線上に前記側面が配置されていることが好ましい。この構成によると、洗浄用容器の側面に向けて洗浄ノズルから滴下ノズルへと液体が吹き付けられるので、フラクションコレクタの周囲に液体が飛び散るのが防止される。
【0015】
また、本発明においては、液体を貯留する容器であって貯留された液体の排出口を有する貯留容器と、前記排出口から前記洗浄ノズルまでの液体の流路である洗浄液流路とを備えており、前記液体クロマトグラフィに使用される場合に前記排出口が前記洗浄ノズルより上方に位置するように前記貯留容器が配置されていてもよい。これによると、洗浄ノズルに液体を供給する構成が簡易に実現する。
【0016】
本発明のフラクションコレクタの制御方法は、上記の第1及び第2の三方弁を有するフラクションコレクタにおいて、前記液体クロマトグラフィが行われていない期間内に、前記第1のポートと前記第3のポートとが連通した状態を前記第1の三方弁に取らせると共に、前記第4のポートと前記第6のポートとが連通した状態を前記第2の三方弁に取らせるというものである。これによると、液体クロマトグラフィが終了した後などにおいて、第1及び第2の三方弁を介して洗浄ノズルまでの液体の流路を確保するような制御が行われる。したがって、液体クロマトグラフからの液体を洗浄ノズルまで導入して、滴下ノズルの外表面を洗浄するような制御が可能となる。
【0017】
本発明のフラクションコレクタの制御方法は、上記の第1及び第2の三方弁を有するフラクションコレクタにおいて、前記第1のポートと前記第3のポートとが連通した状態を前記第1の三方弁に取らせると共に、前記第4のポートと前記第5のポートとが連通した状態を前記第2の三方弁に取らせる排出流路選択ステップと、前記排出流路選択ステップが行われた後に、前記第1及び第3〜第5のポートを介して前記液体排出流路から液体を排出させて液体の流路を洗浄する流路洗浄ステップと、前記第1のポートと前記第3のポートとが連通した状態を前記第1の三方弁に取らせると共に、前記第4のポートと前記第6のポートとが連通した状態を前記第2の三方弁に取らせる洗浄流路選択ステップと、前記洗浄流路選択ステップが行われた後に、前記第1、第3、第4及び第6のポート並びに前記洗浄ノズルを介して液体を前記滴下ノズルに吹き付けるノズル洗浄ステップとを備えている。これによると、(C)液体排出流路を介して液体を排出しつつ流路を洗浄すると共に、(D)洗浄ノズルに液体を供給しつつ滴下ノズルの外表面を洗浄することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下は、本発明による好適な実施形態の一例である、第1〜第4の実施形態に係る説明である。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、液体クロマトグラフィにおいて、第1の実施形態に係るフラクションコレクタ10を含む各装置の配置を表す図である。液体クロマトグラフィにおいて用いられる装置は、液体クロマトグラフ100、検出器26、制御装置27及びフラクションコレクタ10である。
【0020】
液体クロマトグラフ100、検出器26及びフラクションコレクタ10は、液体クロマトグラフ100から検出器26を介してフラクションコレクタ10に至る液体の流路が形成されるように、互いにチューブなどによって接続されている。液体クロマトグラフ100、検出器26及びフラクションコレクタ10のそれぞれと制御装置27とは、信号の送受信を行うインタフェースなどによって接続されている。
【0021】
制御装置27は、パーソナルコンピュータなどの汎用の情報処理装置とディスプレイなどの種々の周辺機器とを有している。パーソナルコンピュータにはCPU(Central Processing Unit)、メモリやハードディスクなどの各種の記憶装置、I/O(Input/Output
)インタフェースなどが設けられている。パーソナルコンピュータとフラクションコレクタ10などとはI/Oインタフェースを介して接続されている。そして、記憶装置には、フラクションコレクタ10などを制御する制御装置としてパーソナルコンピュータを動作させるためのプログラムが記憶されている。このようなプログラムに基づいてCPUなどのハードウェアが情報処理を実行することにより、I/Oインタフェースを含むインタフェースを介して液体クロマトグラフ100、検出器26及びフラクションコレクタ10の動作の制御が行われる。なお、制御装置27が汎用の情報処理装置を用いて実現されているのではなく、フラクションコレクタ10などの制御に特化した装置として実現されていてもよい。
【0022】
液体クロマトグラフ100は、ポンプ23、インジェクター24及びカラム25を有している。また、液体クロマトグラフ100には溶媒Lを収容した溶媒容器22が設置されている。インジェクター24には複数の成分を含む試料が収容されている。カラム25には、固定相としてシリカゲルが充填されている。また、液体クロマトグラフ100には、溶媒容器22からカラム25に至る溶媒の流路が形成されている。
【0023】
ポンプ23は、溶媒容器22から溶媒Lを汲み上げる。汲み上げられた溶媒Lはインジェクター24に流入する。インジェクター24に流入した溶媒Lは、インジェクター24に収容された試料と共にインジェクター24から流出する。インジェクター24から流出した溶媒及び試料からなる溶離液はカラム25に流入する。カラム25からは、時間の経過に伴って、試料に含まれる成分ごとに溶離液が流出する。
【0024】
検出器26は、カラム25からの溶離液をフラクションコレクタ10へと流出させつつ、液体クロマトグラフ100からの溶離液に含まれる試料の濃度を検出する。検出器26は、溶離液における吸光度を測定し、溶離液に含まれる試料の濃度と吸光度との既知の関係に基づいて溶離液に含まれる試料の濃度を導出する。そして、導出した試料の濃度を示す検出信号を、時間の経過に伴って順次制御装置27に送信する。検出器26から流出した溶離液はフラクションコレクタ10に流入する。
【0025】
図2は、液体クロマトグラフ100からの溶離液に含まれる試料の濃度の時間変化を示すグラフである。図2のグラフの横軸は時間を示しており、縦軸は濃度を示している。図2の曲線99に示されているように、試料の濃度の時間変化は互いに時間的に離隔した複数のピークC1〜C3を含んでいる。これらのピークC1〜C3は、試料に含まれる各成分の濃度のピークを示している。つまり、液体クロマトグラフ100からの溶離液には、資料に含まれる成分ごとに時間的に分離して試料が含まれることとなる。
【0026】
図3は、フラクションコレクタ10の主要な構成を示す概略構成図である。フラクションコレクタ10は、滴下ノズル11、洗浄ノズル12、溶離液などの液体が通過する流路管31〜35並びに電磁弁41及び42(第1及び第2の三方弁)を有している。流路管31の一端には、液体クロマトグラフ100のカラム25から流出した溶離液が検出器26を介して流入する。流路管31の他端は電磁弁41に接続されている。
【0027】
電磁弁41は、溶離液が通過する3つのポート41a〜41c(第1〜第3のポート)を有しており、流路管31はポート41aに接続されている。。電磁弁41のポート41aは、ポート41b及びポート41cのいずれかと連通している。つまり、電磁弁41には、ポート41a及び41bが互いに連通しておりポート41cが閉鎖されている状態と、ポート41a及び41cが互いに連通しておりポート41bが閉鎖されている状態との、2つの状態を選択的に取ることができる。電磁弁41の状態は、フラクションコレクタ10に接続された制御装置27によって切り替えられる。
【0028】
電磁弁41のポート41bには流路管32の一端が接続されている。流路管32の他端は滴下ノズル11に接続されている。電磁弁41のポート41cには流路管33の一端が接続されている。流路管33の他端は電磁弁42に接続されている。電磁弁42は、電磁弁41と同様に3つのポート42a〜42c(第4〜第6のポート)を有しており、流路管33はポート42aに接続されている。電磁弁42は、ポート42a及び42bが互いに連通しておりポート42cが閉鎖されている状態と、ポート42a及び42cが互いに連通しておりポート42bが閉鎖されている状態との、2つの状態を選択的に取ることができる。電磁弁42の状態は、フラクションコレクタ10に接続された制御装置27によって切り替えられる。
【0029】
電磁弁42のポート42cには、流路管35の一端が接続されている。流路管35の他端は洗浄ノズル12に接続されている。電磁弁42のポート42bには流路管34の一端が接続されている。流路管34の他端からは、図示されていない領域において溶離液などの液体がフラクションコレクタ10の外部へと排出される。なお、外部へと排出されるのではなく、フラクションコレクタ10の内部に設置された排出容器などに液体が貯留されてもよい。
【0030】
フラクションコレクタ10はアーム51(ノズル移動手段)を有している。アーム51は、図示されていない駆動機構によって図3中のD1〜D4の方向(図3中、左方、右方、前方及び後方)に移動する。アーム51の移動は、インタフェースを介してフラクションコレクタ10に接続された制御装置27によって制御される。アーム51の先端の近傍には流路管31が固定されている。アーム51が移動すると、流路管31に接続された電磁弁41、流路管32及び滴下ノズル11が流路管31に連動して移動する。
【0031】
また、フラクションコレクタ10は試験管容器14(容器支持部材)を有している。試験管容器14には複数の試験管9(分取容器)が収容される。試験管容器14は、内部に収容された各試験管9が、図3において前後及び左右方向に関して所定の位置に配列するように構成されている。また、試験管容器14は、アーム51に滴下ノズル11を移動させることによって滴下ノズル11の下方に試験管9が位置することがいずれの試験管9についても可能なように、フラクションコレクタ10に設置されている。つまり、前後及び左右方向に関するアーム51の移動範囲内に各試験管9が収まるように設置されている。
【0032】
さらに、フラクションコレクタ10は、洗浄ノズル12の下方に設置された洗浄用容器15を有している。洗浄用容器15は、概略的に円筒形の形状を有する液体を収容する容器であり、容器の上部が上方へと開口している。洗浄用容器15の側面15aには切り欠き15bが形成されている。切り欠き15bは、洗浄用容器15の上部の開口から下方へ向かって、洗浄用容器15の側面の上方1/3程度に形成されている。洗浄用容器15の側面において底部の近傍には、排出流路16が接続されている。洗浄用容器15に収容された液体は、排出流路16を介してフラクションコレクタ10の外部へと排出される。なお、外部へと排出されるのではなく、フラクションコレクタ10の内部に設置された排出容器などに液体が貯留されてもよい。
【0033】
洗浄用容器15は、前後及び左右方向に関するアーム51の移動範囲内に収まるように設置されている。つまり、アーム51は、試験管容器14に収容された試験管9が下方にあるような分取位置と、洗浄用容器15が下方にあるような洗浄位置との間で、滴下ノズル11を移動させることが可能である。分取位置は、図3の実線によって表された滴下ノズル11の位置に相当し、洗浄位置は、破線によって表された滴下ノズル11の位置に相当する。
【0034】
また、洗浄用容器15は、滴下ノズル11が洗浄位置にある際に、滴下ノズル11の先端に形成された溶離液の滴下口が側面15aによって取り囲まれるように配置されている。つまり、図3の上方から洗浄用容器15を平面視した際に滴下ノズル11の滴下口が側面15aに取り囲まれるように配置されている。一方で、洗浄用容器15の切り欠き15bは、分取位置と洗浄位置との間で滴下ノズル11が移動する際の移動経路の途中に配置されるように形成されている。つまり、分取位置と洗浄位置との移動の際に滴下ノズル11は切り欠き15bを通過する。これによって、滴下ノズル11は、洗浄用容器15の側面15aに引っかかることなく、分取位置と洗浄位置との間を円滑に移動することができる。
【0035】
洗浄ノズル12は、先端に形成された液体の吹き付け口が斜め下方に向かうように設置されている。そして、洗浄ノズル12の吹き付け口は、洗浄ノズル12から吹き付けられた液体が、洗浄位置にある滴下ノズル11の先端の近傍に到達するように調整されていると共に、洗浄ノズル12からの吹き付けの方向(図3の方向A)に沿って洗浄ノズル12の先端の延長線上に側面15aが当たるように調整されている。これによって、洗浄ノズル12から液体が吹き付けられた際に、滴下ノズル11を越えて飛翔した液体の飛沫が洗浄用容器15の外部へと飛び散りにくくなっている。なお、洗浄ノズル12は、洗浄用容器15の外部へと飛び散らないような範囲内でなるべく広く液体を吹き付けるような構成を有していることが好ましい。これによって、滴下ノズル11の広い範囲に液体が吹き付けられる。
【0036】
以上の構成により、フラクションコレクタ10は、液体クロマトグラフィにおいて、液体クロマトグラフ100からの溶離液を以下のように分取する。なお、制御装置27は、液体クロマトグラフィが行われている期間中には常に、ポート42a及び42b同士が連通している状態に電磁弁42を保持している。
【0037】
液体クロマトグラフ100からの溶離液が検出器26を通過すると、溶離液に含まれる試料の濃度(図2参照)を示す検出信号が検出器26から制御装置27へ送信される。制御装置27は、検出器26からの検出信号に基づいて試料の濃度と基準濃度とを比較する。試料の濃度が基準濃度より小さい場合には、制御装置27は、電磁弁41の状態を、ポート41aとポート41cとが連通している状態に保持する。一方で、溶離液に含まれる試料の濃度が基準濃度以上になると、制御装置27は、電磁弁41の状態を、ポート41aとポート41bとが連通している状態に切り替える。そして、溶離液に含まれる試料の濃度が基準濃度以上である期間中には常に上記の状態に保持する。溶離液に含まれる試料の濃度が基準濃度を下回ると、制御装置27は、電磁弁41の状態を、ポート41aとポート41cとが連通している状態に切り替える。
【0038】
つまり、図2において試料の濃度が基準濃度を下回っている時刻t1まで、時刻t2〜t3、時刻t4〜t5、及び、時刻t6からの期間には、ポート41aとポート41cとが連通した状態に電磁弁41が保持される。このとき、液体クロマトグラフ100からの溶離液は、図3において流路管31、ポート41a及び41c、ポート42a及び42b、並びに、流路管34を介して排出される。一方で、試料の濃度が基準濃度以上である時刻t1〜t2、t3〜t4及びt5〜t6の期間中には、ポート41aとポート41bとが連通している状態に電磁弁41が保持される。このとき、液体クロマトグラフ100からの溶離液は、図3において流路管31、ポート41a及び41b、並びに、流路管32を介して、滴下ノズル11に供給される。そして、滴下ノズル11は下方へと溶離液を滴下する。滴下ノズル11から滴下された溶離液は、滴下ノズル11の下方の試験管に受け取られる。
【0039】
また、制御装置27は、以上の制御を繰り返すと共に、図2において試料の濃度のピークC1〜C3が表れるごとにそれぞれ別の試験管9に溶離液を分取するように、アーム51の移動を制御する。つまり、時刻t1〜t2の期間に溶離液をある試験管9に受け取らせてから次に基準濃度以上となる時刻t3に達するまでの時刻t2〜t3の期間内に、制御装置27は、滴下ノズル11の下方に別の試験管9が位置するようにアーム51を移動させる。そして、ピークC2を過ぎてから次に基準濃度以上となるまでの時刻t4〜t5の期間内に、滴下ノズル11の下方にさらに別の試験管9が位置するようにアーム51を移動させる。制御装置27はこのようなアーム51及び電磁弁41の制御を繰り返す。これによって、試験管容器14に収容された複数の試験管には、試料に含まれる成分ごとに溶離液が分取される。
【0040】
ところで、液体クロマトグラフィが行われると、滴下ノズル11や流路管31等には試料を含む溶離液が付着したまま残存する。前の溶離液が残存したまま次の液体クロマトグラフィが行われると、分取された溶離液に前の溶離液が混入してしまう。このような事態を避けるために、次の液体クロマトグラフィが行われるまでにフラクションコレクタ10において以下のような洗浄処理が施される。
【0041】
まず、滴下ノズル11の洗浄処理は以下のとおりである。制御装置27は、滴下ノズル11を洗浄位置(図3の破線の位置)に保持すると共に、ポート41a及び41bが互いに連通した状態に電磁弁41を保持する。そして、インジェクター24に試料が収容されていない状態で、液体クロマトグラフ100からフラクションコレクタ10へと溶媒を流入させる。つまり、洗浄処理を開始する前にあらかじめインジェクター24内に残存した試料を除去した上で、制御装置27に洗浄処理の制御を実行させる必要がある。
【0042】
このとき、流路管31、ポート41a及び41b、並びに、流路管32を介して、滴下ノズル11に溶媒が流入する。そして、滴下ノズル11から下方の洗浄用容器15へと溶媒が滴下される。これによって、流路管31、ポート41a及び41b、並びに、流路管32を介して、滴下ノズル11の内部に残存した溶離液が試料を含まない溶媒によって洗い流される。
【0043】
次に、流路管33等の洗浄処理は以下のとおりである。制御装置27は、ポート41a及び41cが互いに連通した状態に電磁弁41を保持すると共に、ポート42a及び42bが互いに連通した状態に電磁弁42を保持する。そして、インジェクター24に試料が収容されていない状態で、液体クロマトグラフ100からフラクションコレクタ10へと溶媒を流入させる。
【0044】
このとき、流路管31、ポート41a及び41c、流路管33、ポート42a及び42b、並びに、流路管34を介して溶媒が排出される。これによって、流路管31、ポート41a及び41c、流路管33、ポート42a及び42b、並びに、流路管34の内部に残存した溶離液が試料を含まない溶媒によって洗い流される。
【0045】
ところで、上記の滴下ノズル11の洗浄処理のみによっては、滴下ノズル11の内部は洗浄されても、滴下ノズル11の外表面は洗浄されない。以下は、滴下ノズル11の外表面の洗浄処理である。
【0046】
制御装置27は、滴下ノズル11を洗浄位置に保持する。これと同時に、ポート41a及び41cが互いに連通した状態に電磁弁41を保持すると共に、ポート42a及び42cが互いに連通した状態に電磁弁42を保持する。そして、インジェクター24に試料が収容されていない状態で、液体クロマトグラフ100からフラクションコレクタ10へと溶媒を流入させる。
【0047】
このとき、流路管31、ポート41a及び41c、流路管33、ポート42a及び42c、並びに、流路管35、並びに、洗浄ノズル12を介して、滴下ノズル11の外表面に溶媒が吹き付けられる。これによって、滴下ノズル11の外表面に残存した溶離液が試料を含まない溶媒によって洗い流される。
【0048】
なお、上記のような液体クロマトグラフィや洗浄処理におけるフラクションコレクタ10の制御は制御装置27によって行われる。そして、上記の通り、制御装置27は、汎用の情報処理装置と情報処理装置に記憶されたプログラムとが協働して情報処理を行うことによって実現されている。つまり、制御装置27に記憶されているプログラムは、液体クロマトグラフィや洗浄処理に関する上記のような制御を情報処理装置に行わせるようなものである。そして、このプログラムは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)ディスク、フレキシブルディスク(FD)、MO(Magneto Optical)ディスクなどの
リムーバブル型記録媒体や、ハードディスクなどの固定型記録媒体のような記録媒体に記録して配布可能である他、有線又は無線の電気通信手段によってインターネットなどの通信ネットワークを介して配布可能である。また、このプログラムは、汎用の情報処理装置に限らず、フラクションコレクタ10などの制御に特化した制御装置に用いられるように構成されていてもよい。
【0049】
[第2の実施形態]
以下は、第2の実施形態についての説明である。なお、第2の実施形態と第1の実施形態とは多くの共通部分を有しているので、以下においてこれらの共通部分の説明は適宜省略される。図4は、第2の実施形態に係る洗浄ノズル72及び洗浄ノズル72に液体を供給する洗浄液供給ユニット80を示す概略構成図である。
【0050】
第2の実施形態に係る洗浄ノズル72の構造は、第1の実施形態の洗浄ノズル12と同様である。したがって、洗浄ノズル72からの液体の吹き付け方向は洗浄ノズル12と同様に調整されている。
【0051】
洗浄液供給ユニット80は、貯留容器81、電磁弁82及び流路管83を有している。貯留容器81は、洗浄ノズル72に供給する液体を貯留する。貯留容器81に貯留される液体には、液体クロマトグラフィに用いられるのと同様の溶媒Lが用いられる。貯留容器81は洗浄ノズル72の上方に設置されている。貯留容器81の下部には流路管83の一端が接続されている。流路管83の他端は洗浄ノズル72に接続されている。流路管83の途中には電磁弁82が設置されている。電磁弁82は、流路管83において液体が通過する状態と液体の通過が停止した状態とを切り替えるものである。電磁弁82は、フラクションコレクタに接続された制御装置27によって制御される。
【0052】
制御装置27は、液体クロマトグラフィが行われている期間中には電磁弁82を制御して流路管83における溶媒Lの通過を停止させる。液体クロマトグラフィが終了すると、制御装置27は、図4に示されているような洗浄位置に滴下ノズル11を移動すると共に、電磁弁82を開放する。これによって、溶媒Lが流路管83を通過して洗浄ノズル72に供給され、洗浄ノズル72から滴下ノズル11の外表面へと吹き付けられると共に、滴下ノズル11の外表面が洗浄される。
【0053】
なお、貯留容器81に貯留される液体はフラクションコレクタのユーザによって供給されてもよい。あるいは、カラム25からフラクションコレクタに流入する溶媒の一部が貯留容器81に供給されるような構成をフラクションコレクタが有していてもよい。
【0054】
[第3の実施形態]
以下は、第3の実施形態についての説明である。なお、第3の実施形態と第1の実施形態とは多くの共通部分を有しているので、以下においてこれらの共通部分の説明は適宜省略される。図5は、第3の実施形態に係るフラクションコレクタ110の概略構成図である。
【0055】
フラクションコレクタ110は、第1の実施形態の洗浄ノズル12に相当する洗浄ノズル112を有している。洗浄ノズル112は、ノズル固定台161に固定されており、ノズル固定台161は、固定板162を介してアーム51に固定されている。ノズル固定台161の内部には液体の流路が形成されている(不図示)。また、ノズル固定台161の表面にはかかる流路の一端及び他端の開口が形成されている。洗浄ノズル112は、かかる流路の開口の一方に接続されている。さらに、洗浄ノズル112のノズル固定台161への取り付け角度は、洗浄ノズル112から滴下ノズル11へと液体が吹き付けられる方向に沿った洗浄ノズル112の先端の延長線上に滴下ノズル11が存在するように調整されている。また、図5のように滴下ノズル11の下方に試験管が存在する場合に、かかる延長線上に試験管の内表面が存在するように調整されている。
【0056】
また、フラクションコレクタ110は、第1の実施形態と同様に、電磁弁42を有しており、電磁弁42のポート42aには流路管33が、ポート42bには流路管34が接続されている。一方、ポート42cには流路管135の一端が接続されている。流路管135の他端は、ノズル固定台161の表面に形成された上記の流路の開口のうち他方に接続されている。これによって、カラム25から、流路管31、電磁弁41、流路管33、電磁弁42、流路管135、及び、ノズル固定台161の内部の流路を経て洗浄ノズル112に至る、液体の流路が形成されている。
【0057】
また、フラクションコレクタ110は試験管容器114(配列容器)を有している。試験管容器114には、滴下ノズル11から滴下される液体を受け取る試験管9の他に、試験管9より内径が大きい試験管109が収容される。試験管容器114は、大きさの異なるこれらの試験管9及び試験管109のそれぞれが用途に応じて収容され得るように構成されていることが好ましい。
【0058】
例えば、図5に示されているように、試験管容器114の上部には試験管支持台114aが設けられている。試験管支持台114aには、上方から見て円形の複数の孔152が形成されている。孔152は図5のように水平方向に沿って格子状に配列されており、1つの孔152につき1本の試験管が孔152内に支持される。これによって、試験管支持台114aは、複数の試験管を水平方向に沿って配列させつつ支持する。
【0059】
円形の孔152の直径は試験管109がちょうど孔152の内部を通過できるように調整されている。一方で、試験管容器114には、孔152の内部に設置されるアダプタ151が用意されている。アダプタ151は概略的に円筒形の形状を有する筒状の部材である。また、アダプタ151の外形は、孔152の内部にちょうど収まるように調整されており、アダプタ151の内径は、アダプタ151の内部を試験管9が通過できるように調整されている。
【0060】
孔152にアダプタ151が収容されている場合には、試験管9にアダプタ151の内部を通過させることができ、孔152にアダプタ151が収容されていない場合には、試験管109を孔152に通過させることができる。これによって、試験管容器114は、試験管9及び109のそれぞれを用途に応じて収容することができる。
【0061】
以上より、本実施形態のフラクションコレクタ110においては、滴下ノズル11を洗浄位置まで移動させたりすることなく滴下ノズル11の外表面を洗浄することが可能である。
【0062】
また、試験管容器114は、試験管9だけでなく試験管9より内径の大きい試験管109を収容できる構成を有している。したがって、滴下ノズル11から滴下される液体を分取する際には試験管容器114に試験管9を収容すると共に、滴下ノズル11の外表面を洗浄する際には試験管容器114に試験管109を収容することができる。試験管109は試験管9よりも内径が大きいので、試験管109が収容されている場合には、試験管9が収容されている場合と比べて、洗浄ノズル112から滴下ノズル11に吹き付けられる液体が試験管の外へと飛び散ることが少ない。なお、試験管の外へと液体が飛び散るのを防ぐためには、試験管109が試験管9より長いことがより好ましい。これによると、図5に示されているように、試験管容器114に収容された際に試験管の上端の位置が試験管9に比べて高くなる。したがって、試験管の外へと液体が飛び散るのをより効果的に回避することが可能となる。
【0063】
以上のとおり、第3の実施形態は、滴下ノズル11の洗浄の際に滴下ノズル11の下方に配置された試験管で洗浄用の液体を受けるという構成を有している。したがって、第1及び第2の実施形態と異なり、洗浄位置まで滴下ノズル11を移動する手段や洗浄用容器などが不要である。このため、第1及び第2の実施形態より装置の構成が簡易である。
【0064】
[第4の実施形態]
以下は、第4の実施形態についての説明である。なお、第4の実施形態と第3の実施形態とは多くの共通部分を有しているので、以下においてこれらの共通部分の説明は適宜省略される。図6は、第4の実施形態に係るフラクションコレクタ210の概略構成図である。
【0065】
第4の実施形態においては、第3の実施形態と異なり、アーム51が方向Aに沿って往復移動可能であり、方向Bについては固定されている。そして、アーム51の下部には、滴下ノズル移動ユニット52が設置されている。滴下ノズル移動ユニット52にはノズル固定台163が、方向Bに沿って往復移動が可能なように設置されている。そして、滴下ノズル移動ユニット52は、図示されていないフラクションコレクタ210の制御部からの指示に応じて、方向Bに沿ってノズル移動台163を移動する。
【0066】
フラクションコレクタ210は、第3の実施形態と同様、洗浄ノズル112及び電磁弁42を有している。洗浄ノズル112は、ノズル固定台161及び固定板162を介してノズル固定台163に固定されている。電磁弁42と電磁弁41とは流路管33を介して接続されており、電磁弁42とノズル固定台161の開口とは流路管135を介して接続されている。また、電磁弁42には、第3の実施形態と同様に、流路管34の一端が接続されており、流路管34の他端には液体の排出口が設けられている。これによって、カラム25から流路管31、電磁弁41、流路管33、電磁弁42、流路管135及びノズル固定台161を経て洗浄ノズル112までの液体の流路が形成されている。
【0067】
以上のような構成を有する第4の実施形態のフラクションコレクタ210においては、アーム51及び滴下ノズル移動ユニット52が方向A及び方向Bのそれぞれに沿って滴下ノズル11を移動する。これによって、滴下ノズル11は、滴下ノズル11の下方の試験管容器14に収容された各試験管9の上方に移動する。そして、カラム25からの液体を各試験管9に順に滴下していく。
【0068】
一方で、洗浄ノズル112はノズル固定台163に、洗浄ノズル112の先端が滴下ノズル11の先端に向かうように固定されている。したがって、滴下ノズル11がいずれに位置していても、滴下ノズル11の先端付近の外表面に液体を吹き付けることができる。なお、実際に滴下ノズル11の洗浄が行われる際には、第3の実施形態と同様に、滴下ノズル11の下方に試験管9より径や高さが大きい試験管109が用いられることが好ましい。そして、洗浄ノズル112のノズル固定台161への取り付け角は、洗浄ノズル112から滴下ノズル11へと液体が吹き付けられる方向に沿った洗浄ノズル112の先端の延長線上に滴下試験管109の内表面が存在するように調整されていることが好ましい。
【0069】
<変形例>
上述の実施形態以外にも、課題を解決するための手段に記載された構成の範囲内で種々の構成を有するものが本発明に含まれる。例えば、上述の第1及び第2の実施形態において種々の電磁弁が用いられているが、制御装置27によって開閉や切り替えが制御され得る弁であればどのようなものでもよい。
【0070】
また、上述の第1及び第2の実施形態においては、フラクションコレクタ10と制御装置27とが別体であるが、フラクションコレクタ10の内部に制御装置27が収容されていてもよい。つまり、電磁弁41、42及び83、アーム51などを制御する制御手段が制御装置27の内部に構築されていてもよい。
【0071】
また、上述の第1の実施形態においては、フラクションコレクタ10内の流路管を電磁弁で分岐させることで、洗浄ノズル12に溶媒を供給する流路が構築されている。つまり、滴下ノズル11に至る流路と洗浄ノズル12に至る流路とは部分的に流路管を共有している。しかし、滴下ノズル11に至る流路と流路管を共有しない全く別の洗浄ノズル12に至る流路が構築されていてもよい。あるいは、液体クロマトグラフ100のポンプ23と洗浄ノズル12とを直接接続するような流路管をフラクションコレクタ10が有していてもよい。
【0072】
また、上述の第2の実施形態においては、洗浄液供給ユニット80及び洗浄ノズル72がフラクションコレクタに一体に含まれていることが想定されている。しかし、洗浄ノズル及び洗浄ノズルに液体を供給する構成を有する別体の洗浄装置が用いられてもよい。例えば、滴下ノズルを洗浄する際に、溶媒を貯留する貯留容器から溶媒を汲み上げて洗浄ノズルへと流入させるポンプを有する洗浄装置が用いられてもよい。
【0073】
また、上述の第1及び第2の実施形態においては、溶離液に含まれる試料の濃度が所定の基準濃度以上である場合に溶離液が複数の試験管9に分取される液体クロマトグラフィが想定されている。しかし、所定の時間間隔で複数の試験管9に溶離液が順に分取される液体クロマトグラフィに本発明が適用されてもよい。なお、前者の液体クロマトグラフィにおいては、試料の濃度が基準濃度以上の場合にのみ滴下ノズル11から溶離液が滴下されるので、後者の液体クロマトグラフィよりも高濃度の試料を含む溶離液が液体クロマトグラフィ後の滴下ノズル11に残存する。したがって、前者の液体クロマトグラフィを行う場合の方が、後者の液体クロマトグラフィを行う場合よりも、滴下ノズル11の外表面を洗浄する制御が可能な本発明を適用することに特に意義がある。
【0074】
また、上述の第3の実施形態は、第1の実施形態と同様に、電磁弁41及び42、流路管33等を介して洗浄用の液体を洗浄ノズル112まで導入している。しかし、第2の実施形態のように洗浄液供給ユニット80等によって洗浄用の溶液が洗浄ノズル112まで導入されてもよい。
【0075】
また、上述の第3の実施形態において、洗浄ノズル112へと洗浄用の液体を導入する流路管を分岐させる電磁弁42は、他の位置に設置されていてもよい。例えば、図7(a)の電磁弁42’のように、電磁弁41の直近に設置されてもよい。あるいは、図7(b)の電磁弁42’’のように流路管31の途中に設けられており、かかる電磁弁42’’から流路管335が分岐してノズル固定台161の開口に接続されていてもよい。これによって、カラム25から電磁弁42’’及び流路管235、ノズル固定台161を経て洗浄ノズル112に至る流路が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態であるフラクションコレクタを用いた液体クロマトグラフィにおいて使用される各装置の構成を示す概略構成図である。
【図2】図1のカラムから流出する溶離液に含まれる試料の濃度の時間変化を示すグラフである。
【図3】図1に示されているフラクションコレクタの構成を示す概略構成図である。
【図4】図3に示されているフラクションコレクタとは別の実施形態に係るフラクションコレクタの部分的な構成を示す概略構成図である。
【図5】図3及び図4とはさらに別の実施形態に係るフラクションコレクタの構成を示す概略構成図である。
【図6】図3〜5とはさらに別の実施形態に係るフラクションコレクタの構成を示す側面図である。
【図7】本発明の一変形例であるフラクションコレクタの構成を部分的に示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0077】
9,109 試験管
10,110 フラクションコレクタ
11 滴下ノズル
12,72,112 洗浄ノズル
14,114 試験管容器
15 洗浄用容器
15a 側面
16 排出流路
31-35,83,135,235 流路管
41,42,42’,82 電磁弁
41a-41c ポート
42a-42c ポート
51 アーム
80 洗浄液供給ユニット
81 貯留容器
100 液体クロマトグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラムからの液体に含まれる試料の濃度に応じて前記カラムからの液体を分取容器に分取する液体クロマトグラフィ用のフラクションコレクタであって、
前記液体クロマトグラフィが行われる場合に前記カラムからの液体を滴下する滴下ノズルと、
前記滴下ノズルから滴下された液体を受け取るように前記分取容器を支持する分取容器支持部材と、
前記滴下ノズルの外表面に液体を吹き付ける洗浄ノズルとを備えていることを特徴とするフラクションコレクタ。
【請求項2】
液体が通過する第1〜第3のポートを有しており、前記第1のポートが前記第2のポートに連通した状態と前記第1のポートが前記第3のポートに連通した状態とを選択的に取る第1の三方弁と、
前記液体クロマトグラフィが行われる場合に前記カラムからの液体を前記第1のポートまで導入する導入流路と、
前記第2のポートから前記滴下ノズルまでの液体の流路である液体分取流路と、
前記液体分取流路とは異なる流路であって、前記第3のポートを通過した液体を排出する液体排出流路とをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のフラクションコレクタ。
【請求項3】
前記液体排出流路が、
液体が通過する第4〜第6のポートを有しており、前記第4のポートが前記第5のポートに連通した状態と前記第4のポートが前記第6のポートに連通した状態とを選択的に取る第2の三方弁と、
前記第3のポートから前記第4のポートまでの液体の流路である第1の部分流路と、
前記第5のポートを通過した液体を排出する第2の部分流路と、
前記第6のポートから前記洗浄ノズルまでの液体の流路である洗浄液流路とを有していることを特徴とする請求項2に記載のフラクションコレクタ。
【請求項4】
前記滴下ノズルから滴下された液体を受け取る洗浄用容器と、
前記滴下ノズルから滴下された液体を前記分取容器が受け取る分取位置と前記滴下ノズルから滴下された液体を前記洗浄用容器が受け取る洗浄位置との間で前記滴下ノズルを移動するノズル移動手段とを備えており、
前記滴下ノズルが前記洗浄位置にある場合に前記滴下ノズルに液体を吹き付けるような位置に、前記洗浄ノズルが配置されていることを特徴とする請求項3に記載のフラクションコレクタ。
【請求項5】
前記洗浄用容器が、前記滴下ノズルが前記洗浄位置にある場合に平面視において前記滴下ノズルの先端を取り囲む側面を有しており、
前記滴下ノズルが前記洗浄位置にある場合に前記洗浄ノズルが液体を吹き付ける方向に沿って前記洗浄ノズルの吹き付け口の延長線上に前記側面が配置されていることを特徴とする請求項4に記載のフラクションコレクタ。
【請求項6】
液体を貯留する容器であって貯留された液体の排出口を有する貯留容器と、
前記排出口から前記洗浄ノズルまでの液体の流路である洗浄液流路とを備えており、
前記液体クロマトグラフィに使用される場合に前記排出口が前記洗浄ノズルより上方に位置するように前記貯留容器が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフラクションコレクタ。
【請求項7】
前記分取容器支持部材が、複数の前記分取容器が配列される配列容器を有しており、
前記複数の分取容器が前記配列容器に配列された方向に沿って移動する、前記滴下ノズルが固定されたアームと、前記滴下ノズルから滴下される液体を前記複数の分取容器のうち一の前記分取容器に受け取らせる位置から前記滴下ノズルから滴下される液体を別の一の前記分取容器に受け取らせる位置まで前記アームを移動するアーム移動手段とを備えており、
前記洗浄ノズルが液体を吹き付ける方向に沿って前記洗浄ノズルの吹き付け口の延長線上に前記滴下ノズルが位置するように、前記洗浄ノズルが前記アームに固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフラクションコレクタ。
【請求項8】
請求項3〜5のいずれか1項に記載のフラクションコレクタを制御する方法であって、
前記液体クロマトグラフィが行われていない期間内に、前記第1のポートと前記第3のポートとが連通した状態を前記第1の三方弁に取らせると共に、前記第4のポートと前記第6のポートとが連通した状態を前記第2の三方弁に取らせることを特徴とするフラクションコレクタの制御方法。
【請求項9】
請求項3〜5のいずれか1項に記載のフラクションコレクタを洗浄する方法であって、
前記第1のポートと前記第3のポートとが連通した状態を前記第1の三方弁に取らせると共に、前記第4のポートと前記第5のポートとが連通した状態を前記第2の三方弁に取らせる排出流路選択ステップと、
前記排出流路選択ステップが行われた後に、前記第1及び第3〜第5のポートを介して前記液体排出流路から液体を排出させて液体の流路を洗浄する流路洗浄ステップと、
前記第1のポートと前記第3のポートとが連通した状態を前記第1の三方弁に取らせると共に、前記第4のポートと前記第6のポートとが連通した状態を前記第2の三方弁に取らせる洗浄流路選択ステップと、
前記洗浄流路選択ステップが行われた後に、前記第1、第3、第4及び第6のポート並びに前記洗浄ノズルを介して液体を前記滴下ノズルに吹き付けるノズル洗浄ステップとを備えていることを特徴とするフラクションコレクタの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−304078(P2007−304078A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167655(P2006−167655)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(391048533)山善株式会社 (11)
【Fターム(参考)】