説明

フラックス再利用装置

【課題】スパイラル鋼管のサブマージアーク溶接に使用したフラックスを循環利用でき、高品質のスパイラル鋼管を製造可能なフラックス再利用装置を提供する。
【解決手段】スパイラル鋼管11をサブマージアーク溶接して造管するに際し、余剰のフラックスを回収して循環利用するためのフラックス再利用装置10であり、サブマージアーク溶接が終了した箇所から吸引回収される湿潤状態の使用済みフラックス中の磁性体を除去する磁力選別機19と、この下流側に配置され、磁性体が除去された使用済みフラックスから、スラグ及びダストを除去して湿潤状態のフラックスを回収する粒径選別機22と、この下流側に配置され、湿潤状態のフラックスをサブマージアーク溶接に再利用可能な状態まで乾燥処理する乾燥機23と、乾燥処理したフラックスを溶接箇所16へ供給する搬送手段25とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパイラル鋼管をサブマージアーク溶接して造管する際に発生する余剰のフラックスを循環利用するためのフラックス再利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スパイラル鋼管(以下、単に鋼管ともいう)の造管は、鋼管の内面と外面をサブマージアーク溶接することで行っている。このサブマージアーク溶接を行うに際しては、シールド用の多量のフラックス(粉体)を使用するため、溶接部にフラックスを供給しながら、溶接が終了した箇所から余剰分のフラックスを回収して再利用するのが一般的である。
例えば、特許文献1には、溶接後のフラックスを、ブロアを作動させて吸引回収し、そのまま使う方法が記載されている。
また、特許文献2には、フラックス回収ホースで回収したフラックスを、フラックス供給ホッパーへ搬送した後、そのまま使う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−332571号公報
【特許文献2】特開平6−647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スパイラル鋼管の造管に使用したフラックスを、特許文献1、2の方法を使用して、未処理のまま再度スパイラル鋼管のサブマージアーク溶接に使用する場合、製造したスパイラル鋼管にブローホール等の品質欠陥が生じ、品質低下を招く恐れがある。これは、回収したフラックスに、水分、金属屑や酸化鉄を含む磁性体、発生するスラグ(溶接時に固まった塊状物)、及びダスト(フラックス同士の摩擦等により発生する微粒子)が混在することに起因する。なお、金属屑には、スパイラル鋼管の製造に使用する素材の開先加工時に発生するつる巻状のものがあり、酸化鉄には、素材の表面を覆うスケールがある。
特に、サイズが大きな異物(特に、磁性体)を含むフラックスを用いる場合には、上記した問題が顕著になる。
従って、回収したフラックスを、未処理の状態でスパイラル鋼管の造管に使用することができない。
【0005】
このため、サブマージアーク溶接を行う溶接設備とは別に設けられた処理設備で、磁性体、スラグ、及びダストの除去を行って使用することもできるが、この場合、回収したフラックスを連続的に循環使用することができず非効率的である。また、循環使用できないことで、より多くのフラックスを準備(ストック)しておく必要があり、不経済であると共に、フラックスの貯蔵場所も確保する必要がある。
更に、磁性体、スラグ、及びダストの除去を行う処理設備がなければ、例えば、処理を専門業者に依頼するか、回収したフラックスを廃棄するしかない。なお、専門業者に依頼する場合は、例えば、回収物をトラック等で運搬する必要があり、時間的に非効率的であり、廃棄する場合は、資源の有効利用が図れない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、スパイラル鋼管のサブマージアーク溶接に使用したフラックスを循環利用でき、高品質のスパイラル鋼管を製造可能なフラックス再利用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係るフラックス再利用装置は、スパイラル鋼管をサブマージアーク溶接して造管するに際し、余剰のフラックスを回収して循環利用するためのフラックス再利用装置であって、
サブマージアーク溶接が終了した箇所から吸引回収される湿潤状態の使用済みフラックス中の磁性体を除去する磁力選別機と、
前記磁力選別機の下流側に配置され、前記磁性体が除去された前記使用済みフラックスから、スラグ及びダストを除去して湿潤状態のフラックスを回収する粒径選別機と、
前記粒径選別機の下流側に配置され、前記湿潤状態のフラックスをサブマージアーク溶接に再利用可能な状態まで乾燥処理する乾燥機と、
前記乾燥機で乾燥処理したフラックスを溶接箇所へ供給する搬送手段とを有する。
【0008】
本発明に係るフラックス再利用装置において、サブマージアーク溶接を行う溶接設備に一体的に設けるのが好ましい。
【0009】
本発明に係るフラックス再利用装置において、更に、未使用のフラックスが貯留された補助タンクが設けられ、循環利用の際に減少するフラックスを前記未使用のフラックスで補給することが好ましい。
【0010】
本発明に係るフラックス再利用装置において、前記粒径選別機は二段の篩を備えた篩選別機であり、上流側に配置された第1の篩で前記スラグを除去した後、下流側に配置された第2の篩で前記ダストを除去するのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るフラックス再利用装置は、一部が粒状化している湿潤状態の使用済みフラックスから磁性体を除去する磁力選別機を有するので、スパイラル鋼管のサブマージアーク溶接に使用可能な品質を有する程度まで、磁性体の低減が図れる。なお、磁力選別機に直接接触する磁性体のみならず、湿潤状態で粒状化したフラックスに包まれた磁性体も、磁力選別機に付着して除去されるものと考えられる。特に、磁性体中につる巻状の金属屑が含まれる場合は、磁力選別機に付着しても落下し易いものと考えられ、湿潤状態のフラックスと共に除去することが効果的である。
また、粒径選別機を磁力選別機の下流側に配置するので、簡単な構成で、磁性体が除去された使用済みフラックスからスラグ及びダストを除去して、湿潤状態のフラックスを回収できる。
そして、乾燥機を有し、これを粒径選別機の下流側に配置するので、湿潤状態のフラックスを、サブマージアーク溶接に再利用可能な状態まで乾燥処理できる。なお、乾燥機を磁力選別機の上流側に配置した場合、乾燥処理された使用済みフラックスを磁力選別機にかけることになるため、磁性体を湿潤状態のフラックスと共に除去する効果がなくなり、また使用済みフラックスの層厚によっては、層の下部の磁性体を除去できない恐れがある。
【0012】
以上の構成により、湿潤状態の使用済みフラックスから、スパイラル鋼管のサブマージアーク溶接に使用可能な品質、即ち、成分、粒度、及び水分量を満たすフラックスを得ることができる。
従って、上記処理がなされたフラックスを、搬送手段により溶接箇所へ供給することで、スパイラル鋼管のサブマージアーク溶接に循環利用でき、高品質のスパイラル鋼管を製造できる。更に、使用済みフラックス中のフラックスを廃棄することなく再利用できるため、資源の有効活用ができると共に経済的である。
【0013】
また、フラックス再利用装置を、サブマージアーク溶接を行う溶接設備に一体的に設けた場合、使用済みフラックスを、例えば、トラック等の運搬機器で処理設備まで搬送することなく、連続的に循環利用できるので、作業性が良好であると共に、再生処理の時間短縮も図れて効率的である。また、より多くのフラックスを準備しておく必要もなく、経済的であると共に、フラックスの貯蔵場所も不要となる。
【0014】
そして、フラックス再利用装置に、更に未使用のフラックスが貯留された補助タンクを設けた場合、循環利用の際に減少するフラックスを未使用のフラックスで補給できるので、フラックスを溶接箇所へ常時供給可能な状態を維持できる。これにより、サブマージアーク溶接を行っている最中に、循環利用する使用済みフラックス中のフラックスがなくなっても、溶接作業を中断することなく連続的に実施できる。
【0015】
更に、粒径選別機が二段の篩を備えた篩選別機である場合、簡単な構成で、しかも短時間に効率よく、磁性体が除去された使用済みフラックスから再利用可能なフラックスのみを回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフラックス再利用装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るフラックス再利用装置10は、スパイラル鋼管(以下、単に鋼管ともいう)11をサブマージアーク溶接して造管するに際し、余剰のフラックスを回収して、サブマージアーク溶接に使用したフラックスのうちの75質量%(好ましくは80質量%)以上を循環利用するための装置である。このフラックス再利用装置10は、サブマージアーク溶接を行う溶接設備12に、一体的に設けられている。以下、詳しく説明する。
【0018】
フラックス再利用装置10は、高所に立設配置された使用済みフラックスの回収ホッパー13を有している。
回収ホッパー13は、下方へ向けて縮径するテーパ状の容器であり、その上部側方には、サブマージアーク溶接が終了した箇所から湿潤状態の使用済みフラックスを回収する吸引用配管14の下流側端部が接続されている。なお、吸引用配管14の上流側端部の開口部15は、溶接箇所16の下流側に配置されている。
この吸引用配管14の途中位置には、エジェクター17が設けられ、使用済みフラックスを回収ホッパー13へ吸引できる構成となっている。なお、吸引の際に回収ホッパー13内へ流れ込む空気は、回収ホッパー13の上端部に接続された排気管18を介して、ブロワー(図示しない)により外部へ排出される。
【0019】
また、回収ホッパー13の内部には、貯留される使用済みフラックス量を検知するレベル計(図示しない)が設けられ、また下側には、排出管(図示しない)が接続されている。これにより、回収ホッパー13内に回収された使用済みフラックス量が多くなり過ぎて、レベル計が回収ホッパー13の容量の上限値を検知した場合には、回収ホッパー13内の使用済みフラックスの一部を、排出管を介して外部へ取出すことができる。なお、排出管は、フラックスの種類を変更する場合や、フラックス再利用装置10の停止(例えば、故障やメンテナンス)時にも使用できる。
【0020】
この回収ホッパー13の下方(下流側)には、ドラム回転式の磁力選別機19が配置されている。
この磁力選別機19は、永久磁石の周囲を回転するドラム20に、湿潤状態の使用済みフラックスを接触させ、ドラム20に直接付着した磁性体のみならず、磁性体を含む粒状化したフラックス等も除去するものである。ここで、磁性体には、鋼管11の製造に使用する素材の開先加工時に発生するつる巻状の金属屑や、素材の表面を覆う酸化鉄等が含まれる。
なお、磁力選別機19への使用済みフラックスの供給量は、回収ホッパー13と磁力選別機19の間に配置されたドラムフィーダ21により調整される。
【0021】
磁力選別機19の下方(下流側)には、篩選別機(粒径選別機の一例)22が配置されている。
篩選別機22は、高さ方向に間隔を有して配置される二段の篩を備えた選別機であり、上流側に配置された第1の篩の目の大きさは、下流側に配置された第2の篩の目の大きさよりも大きくなっている。これにより、第1の篩でスラグを除去した後、第2の篩でダストを除去できる。このスラグとは、サブマージアーク溶接時に粉状のフラックスが溶融凝固してできた塊状物であり、ダストとは、粉状のフラックス同士の摩擦等により発生する微粒子である。従って、回収するフラックスは、スラグとダストの間の粒径を備えている。
【0022】
ここで、未使用のフラックスの粒径の一例を、表1に示す。なお、表1に記載の寸法は、平面視して長方形となった篩目の大きさ、即ち長方形の長辺と短辺の大きさであり、表1には、各篩目を通過できなかった量(篩上の量)を記載している。
【0023】
【表1】

【0024】
表1から明らかなように、フラックスのサイズの大部分は、0.300〜1.40mmの範囲内にある。このため、第1の篩の目の大きさを、スラグとフラックスを分離できる大きさ(ここでは、1.40mm)とし、第2の篩の目の大きさを、フラックスとダストを分離できる大きさ(ここでは、安全率を見込んで0.355mm)とすることで、第1の篩で篩上のスラグを除去した後、第2の篩で篩下のダストを除去して、再利用可能なフラックスを回収できる。
なお、第1、第2の各篩の目の大きさは、上記した値に限定されるものではなく、回収するフラックスの品質等を考慮して設定する。このフラックスの化学成分の一例を、表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
篩選別機22の下方(下流側)には、乾燥機23が配置されている。
乾燥機23は、スラグとダストが除去された湿潤状態のフラックスをサブマージアーク溶接に再利用可能な状態(含水率:1質量%以下程度)まで乾燥処理する電気ヒータである。なお、乾燥機は、湿潤状態のフラックスを乾燥処理できれば、例えば、バーナー等を用いたものを使用することもできる。また、乾燥機は、湿潤状態のフラックスを、バッチ式で乾燥処理するものであるが、トンネル内を連続的に通過させて乾燥処理できるものでもよい。
この乾燥機23は、ロードセル24上に載置され、乾燥機23内に装入されるフラックス量を調整している。
【0027】
乾燥機23の下方(下流側)には、搬送手段25が配置されている。
搬送手段25は、スクリューコンベア26、チューブラコンベア27、スクリューコンベア28、及びフラックス供給タンク29を有し、これらが、搬送手段25の上流側から下流側へかけて順次配置されている。なお、搬送手段の構成は、乾燥機23で乾燥処理されたフラックスを、フラックス供給タンク29まで搬送できれば、これに限定されるものではなく、例えば、コンベアの種類や設置台数を変更できる。
これにより、乾燥機23の下方(下流側)に設けられたロータリーバルブ30により、フラックスを、予め設定した量ずつスクリューコンベア26上に切り出すことができる。そして、このフラックスを、スクリューコンベア26で搬送し、チューブラコンベア27のフレキシブルシュート31へ投入した後、スクリューコンベア28へ搬送して、フラックス供給タンク29へ投入する。
【0028】
フラックス供給タンク29の下端部には、フラックスの供給用配管32が取り付けられ、フラックス供給タンク29内のフラックスを、例えば、ドラムフィーダ等(図示しない)により、予め設定した供給量で、溶接箇所16に供給できる構成となっている。
ここで、供給用配管32の下流側端部の開口部33は、溶接箇所16の上流側に配置されている。これにより、溶接されたスパイラル鋼管11を、図1に示す部分拡大平面図の太矢印の方向へ搬送することで、溶接箇所16に予め散布された粉粒状のフラックスの中に電極ワイヤを送り込み、アークを発生させて、サブマージアーク溶接を行うことができる。
【0029】
また、フラックス供給タンク29の内部には、貯留されるフラックス量の上限と下限を検知するレベル計(図示しない)が設けられている。これにより、レベル計がフラックス供給タンク29の容量の上限値を検知した場合には、搬送手段25を構成する各コンベアを、必要に応じて停止する。一方、レベル計がフラックス供給タンク29の容量の下限値を検知した場合には、循環利用するフラックス量が減少したことを示すため、未使用(新品)のフラックスを、フラックス供給タンク29へ供給する必要がある。
【0030】
そこで、未使用のフラックスが貯留された補助タンク34を設ける。
補助タンク34は、下方へ向けて縮径するテーパ状の容器であり、その下端部には、ロータリーバルブ35が設けられたフラックスの供給用補助配管36が接続されている。なお、供給用補助配管36の下流側端部は、補助タンク34内のフラックスを、チューブラコンベア27のフレキシブルシュート31へ投入可能な位置に配置されている。これにより、フラックス供給タンク29内のレベル計が、その容量の下限値を検知した場合には、この信号が制御部(図示しない)へ送られ、更に制御部からロータリーバルブ35へ信号が送られて、補助タンク34内のフラックスがフレキシブルシュート31へ供給される。
【0031】
また、補助タンク34の内部には、貯留されるフラックス量の下限を検知するレベル計(図示しない)が設けられている。これにより、レベル計が補助タンク34の容量の下限値を検知した場合には、補助タンク34の上部に設けられたホッパー37を介して、補助タンク34内に未使用のフラックスを供給できる。
以上のように、フラックス再利用装置10は、回収ホッパー13、磁力選別機19、篩選別機22、乾燥機23、搬送手段25、及び補助タンク34を有し、これらが一体的に、溶接設備12に設けられている。
【0032】
次に、本発明の一実施の形態に係るフラックス再利用装置10の使用方法について、図1を参照しながら説明する。
まず、溶接設備12に、スパイラル鋼管11の製造に使用する素材を送り込み、スパイラル鋼管11の内面と外面をサブマージアーク溶接する。このとき、フラックス供給タンク29内のフラックスを、供給用配管32を介して溶接箇所16の上流側に供給する。なお、サブマージアーク溶接が終了したスパイラル鋼管11は、図1の部分拡大平面図内に示した太矢印の方向に搬送されるため、溶接箇所16に予め散布された粉粒状のフラックスの中に電極ワイヤが送り込まれ、サブマージアーク溶接が行われる。
【0033】
サブマージアーク溶接が終了した箇所の使用済みフラックスは、エジェクター17により、吸引用配管14を介して回収ホッパー13内へ吸引回収される。なお、サブマージアーク溶接後の溶接部には、水がかけられるため、使用済みフラックスは湿潤状態となっており、この状態で、回収ホッパー13内へ吸引回収される。
回収ホッパー13内の湿潤状態の使用済みフラックスは、ドラムフィーダ21により少量ずつ切り出され、ドラム回転式の磁力選別機19へ送られる。これにより、磁力選別機19のドラム20に直接接触する磁性体のみならず、湿潤状態の磁性体、更にはフラックス等に囲まれた磁性体も、この水分により、そのままの状態で、またフラックス等に包まれた状態で、ドラム20に付着して除去される。
【0034】
そして、磁力選別機19で磁性体が除去された湿潤状態の使用済みフラックスは、篩選別機22へ送られ、第1の篩で、粒径が大きなスラグを除去し、第2の篩で、粒径の小さなダストを除去して、再利用可能なフラックスのみが回収される。
篩選別機22でスラグ及びダストが除去された湿潤状態のフラックスは、乾燥機23へ送られ、サブマージアーク溶接に再利用可能な状態まで乾燥処理される。この乾燥は、フラックスが、例えば、70℃以上(更には80℃以上)になるまで、乾燥機23内の温度と貯留時間を調整して行う。
【0035】
乾燥機23で乾燥処理したフラックスは、ロータリーバルブ30によりスクリューコンベア26へ所定量ずつ供給され、チューブラコンベア27とスクリューコンベア28を介して、フラックス供給タンク29へ供給される。そして、フラックス供給タンク29内のフラックスは、供給用配管32を介して、溶接箇所16へ所定量ずつ供給される。
なお、循環利用するフラックスが減少し、フラックス供給タンク29内のフラックス量が大幅に減少した(レベル計が下限を検知した)場合は、補助タンク34内のフラックスを、供給用補助配管36を介してフレキシブルシュート31へ投入し、フラックス供給タンク29へ供給する。
【0036】
これにより、サブマージアーク溶接に使用したフラックスのうちの75質量%以上を循環利用できる。なお、循環利用するフラックスの上限については、サブマージアーク溶接の溶接条件により変動するため規定していないが、例えば、90質量%程度である。
従って、スパイラル鋼管のサブマージアーク溶接に使用したフラックスを循環利用でき、高品質のスパイラル鋼管を製造できる。
このように、本発明のフラックス再利用装置10は、サブマージアーク溶接に使用したフラックスの大部分を再利用できる装置であるため、この装置を、サブマージアーク溶接に使用した75質量%以上(例えば、90質量%以下)の使用済みフラックスと、これに対応する25質量%以下(例えば、10質量%以上)の未使用(新品)のフラックスとを混合したフラックスを、溶接箇所へ供給するフラックス供給装置とすることもできる。
【0037】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明のフラックス再利用装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、フラックス再利用装置を、サブマージアーク溶接を行う溶接設備に一体的に設けた場合について説明したが、フラックス再利用装置を、溶接設備から離れた場所に配置してもよい。この場合、溶接設備で発生した使用済みフラックスを、例えば、コンベア等の搬送手段によってフラックス再利用装置まで搬送して処理した後、処理後のフラックスを、再度搬送手段によって溶接設備まで搬送して、フラックスを連続的又は間欠的に使用する。
【0038】
そして、前記実施の形態においては、磁力選別機にドラム回転式の磁力選別機を使用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、従来公知の他の磁力選別機を使用することもできる。また、粒径選別機についても、二段の篩を備えた篩選別機を使用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、篩目の異なる2つの篩選別機を使用することも、また、従来公知の他の粒径選別機(例えば、風力選別機等)を使用することもできる。
更に、前記実施の形態においては、未使用のフラックスが貯留された補助タンクを設けた場合について説明したが、フラックス供給タンク内のフラックス量が減少したときには、フラックス供給タンク内に、未使用のフラックスを直接供給してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10:フラックス再利用装置、11:スパイラル鋼管、12:溶接設備、13:回収ホッパー、14:吸引用配管、15:開口部、16:溶接箇所、17:エジェクター、18:排気管、19:磁力選別機、20:ドラム、21:ドラムフィーダ、22:篩選別機(粒径選別機)、23:乾燥機、24:ロードセル、25:搬送手段、26:スクリューコンベア、27:チューブラコンベア、28:スクリューコンベア、29:フラックス供給タンク、30:ロータリーバルブ、31:フレキシブルシュート、32:供給用配管、33:開口部、34:補助タンク、35:ロータリーバルブ、36:供給用補助配管、37:ホッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラル鋼管をサブマージアーク溶接して造管するに際し、余剰のフラックスを回収して循環利用するためのフラックス再利用装置であって、
サブマージアーク溶接が終了した箇所から吸引回収される湿潤状態の使用済みフラックス中の磁性体を除去する磁力選別機と、
前記磁力選別機の下流側に配置され、前記磁性体が除去された前記使用済みフラックスから、スラグ及びダストを除去して湿潤状態のフラックスを回収する粒径選別機と、
前記粒径選別機の下流側に配置され、前記湿潤状態のフラックスをサブマージアーク溶接に再利用可能な状態まで乾燥処理する乾燥機と、
前記乾燥機で乾燥処理したフラックスを溶接箇所へ供給する搬送手段とを有することを特徴とするフラックス再利用装置。
【請求項2】
請求項1記載のフラックス再利用装置において、サブマージアーク溶接を行う溶接設備に一体的に設けたことを特徴とするフラックス再利用装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のフラックス再利用装置において、更に、未使用のフラックスが貯留された補助タンクが設けられ、循環利用の際に減少するフラックスを前記未使用のフラックスで補給することを特徴とするフラックス再利用装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフラックス再利用装置において、前記粒径選別機は二段の篩を備えた篩選別機であり、上流側に配置された第1の篩で前記スラグを除去した後、下流側に配置された第2の篩で前記ダストを除去することを特徴とするフラックス再利用装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−140027(P2011−140027A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−668(P2010−668)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000178011)山九株式会社 (48)
【Fターム(参考)】