説明

フラックス組成物、電気的接続構造の形成方法、電気的接続構造および半導体装置

【解決手段】アルジトール(A)、および下記式(1)に示す繰り返し構造単位を有する重合体(B)を含有することを特徴とするフラックス組成物。


(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す。Zはヒドロキシル基、オキソ基、カルボキシル基、ホルミル基、アミノ基、ニトロ基、メルカプト基、スルホ基、オキサゾリン基、イミド基、アミド構造を有する基またはこれら基を有する基を示す。)
【効果】フラックス組成物を用いて、ピラーバンプなどのバンプが設けられた基板の電気的接続をリフローにより行うと、バンプがリフロー時にフラックスから露出することがなく、良好な接続構造を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス組成物、電気的接続構造の形成方法、電気的接続構造および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品搭載基板に対する電子部品等の電気的接続においては、フラックス組成物が使用されている。はんだ等の溶融性導電部材は熱溶融(リフロー)時に200℃〜300℃に加熱されるので、フラックス組成物を用いないと、はんだや銅箔などの電子部品の導電部材は容易に酸化され酸化膜を形成し、良好に電気的接続が行えない。フラックス組成物により、はんだや銅箔などの電子部品の導電部材を覆うことで、酸素を遮断して、はんだや銅箔などの電子部品の導電部材の酸化を防止するとともに、既に生じている酸化物を還元し、また、溶融したはんだを良く濡らすようになり、良好に電子部品等の電気的接続が行える。
【0003】
フラックス組成物としては、たとえば、特許文献1には、KAlF4などのMg成分を除去する作用を有する成分と、ポリビニルアルコールなどの水溶性有機樹脂と、増粘剤と、水を含むフラックス組成物が開示されている。特許文献2には、アセチル化EO・POブロックポリマーとポリグリセリンとを含有するフラックス組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−220174号公報
【特許文献2】特開2004−158728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、柱状の溶融性導電部材(ピラーバンプ)を有する電子部品等を電気的接続する場合、その形状のため、リフロー中に導電部材が露出し、また、フラックス組成物が不均一となり、良好に電気的接続構造を形成できないおそれがある。
【0006】
特に、特開2006−332694号公報に記載されているような、2種類の異なる金属種からなるピラーバンプの場合、金属種により濡れ性が異なるため、リフロー中に導電部材が露出し、また、フラックス組成物が不均一となりやすく、良好に電気的接続構造を形成できないおそれがある。
【0007】
本発明は、ピラーバンプなどのバンプが設けられた基板の電気的接続をリフローにより行う場合において、バンプがリフロー時にフラックスから露出することがなく、良好な電気的接続構造を得ることができるフラックス組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成する本発明は以下のとおりである。
[1]アルジトール(A)、および下記式(1)に示す繰り返し構造単位を有する重合体(B)を含有することを特徴とするフラックス組成物。
【0009】
【化1】

(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す。Zはヒドロキシル基、オキソ基、カルボキシル基、ホルミル基、アミノ基、ニトロ基、メルカプト基、スルホ基、オキサゾリン基、イミド基、アミド構造を有する基またはこれら基を有する基を示す。)
[2]前記式(1)におけるZが、アミド構造を有する基である前記[1]のフラックス組成物。
[3]前記アルジトール(A)100質量部に対し、前記重合体(B)の含有量が10〜140質量部である前記[1]または[2]に記載のフラックス組成物。
[4]前記アルジトール(A)および前記重合体(B)が水溶性である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のフラックス組成物。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載のフラックス組成物を用いて溶融性導電部をリフローする電気的接続構造の形成方法。
[6]前記[5]に記載の電気的接続構造の形成方法により形成された電気的接続構造。
[7]前記[6]に記載の電気的接続構造を有する半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフラックス組成物を用いて、ピラーバンプなどのバンプが設けられた基板の電気的接続をリフローにより行うと、バンプがリフロー時にフラックスから露出することがなく、良好な接続構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1で行ったリフローの温度条件を示す図である。
【図2】図2は、ピラーバンプが設けられたシリコンウエハをリフローし、フラックスを純水で洗浄した後のピラーバンプのはんだ部の形状を示す図である。
【図3】図3は、本発明の電気的接続構造の形成方法の一例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.フラックス組成物
フラックス組成物とは、大気圧下、酸素存在下で、電気的接続構造を形成する場合、特に金属部材同士を接合する場合に用いられるはんだや低融点金属などのろう材と共に用いられる融剤である。フラックス組成物は、接合面の酸化物などの異物を除去し、さらに接合部材の界面張力を低減することによりろう材の広がり性を向上させ、接合面の金属の酸化を防止することを目的として用いられるものである。
【0013】
本発明のフラックス組成物は、アルジトール(A)、および下記式(1)に示す繰り返し構造単位を有する重合体(B)を含有することを特徴とする。
【0014】
【化1】

(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す。Zはヒドロキシル基、オキソ基、カルボキシル基、ホルミル基、アミノ基、ニトロ基、メルカプト基、スルホ基、オキサゾリン基、イミド基、アミド構造を有する基またはこれら基を有する基を示す。)
【0015】
1−1.アルジトール(A)
アルジトール(A)は、本発明のフラックス組成物における活性種であり、還元作用を有し、はんだ付けの際にはんだや接合部材が酸化されるのを防止する。
【0016】
アルジトール(A)としては、はんだ等の酸化を防止する作用を有するものならば特に制限はなく、たとえばグリセリン、エリトリトール、トレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトールおよびタリトール等の糖アルコールを挙げることができる。
【0017】
これらのうち、還元力が強く、はんだ等の酸化を効率的に防止できる点で、グリセリンが特に好ましい。
アルジトール(A)は、後述する重合体(B)とともに水溶性であることが好ましい。アルジトール(A)が重合体(B)とともに水溶性であると、本発明のフラックス組成物を水溶性にすることができるので、本発明のフラックス組成物を用いてはんだ付けされた基板からフラックス残渣を有機溶剤洗浄ではなく洗浄水洗浄により除去することができ、その結果、組成物の取り扱い性が容易になるとともに環境適合性が向上する。ここで、水溶性とは、25℃、1barでの水に対する溶解度が0.1S以上であることをいう。アルジトール(A)として上記に例示されたグリセリン等の化合物はすべて水溶性である。
【0018】
1−2.重合体(B)
重合体(B)は、上記式(1)に示す繰り返し構造単位を有する重合体である。
本発明のフラックス組成物においては、活性種であるアルジトール(A)と重合体(B)とを組み合わせて使用することにより、バンプが設けられた基板の電気的接続をリフローにより行ったときに、バンプがリフロー時にフラックスから露出することを防止するという効果が発現される。このような効果が得られるのは、アルジトール(A)と重合体(B)とを組み合わせることで、リフロー時などの高温下におけるフラックス組成物の粘度の低下が抑えられるからであると考えられる。
【0019】
上記式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を示す。Zが示す官能基は、双極子モーメントを有し、水素結合をすることが可能な基である。Zが示す官能基の具体例としては、ヒドロキシル基、オキソ基、カルボキシル基、ホルミル基、アミノ基、ニトロ基、メルカプト基、スルホ基、オキサゾリン基、イミド基、アミド構造を有する基およびこれら基を有する基などが挙げられる。重合体(B)が有する複数のZが示す官能基は、1種類でもよく、2種類以上であってもよい。
【0020】
重合体(B)の具体例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(部分鹸化物を含む)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチルアクリレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチルメタクリレート)、ポリ(グリコシロキシエチルアクリレート)、ポリ(グリコシロキシエチルメタクリレート)、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアセタール(部分アセタール化物を含む)、ポリエチレンイミン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、およびエポクロス(商品名、日本触媒(株)製)などを挙げることができる。
【0021】
Zが示す官能基は、アミド構造を有する基であることが好ましい。Zが示す官能基がアミド構造を有する基であると、本フラックス組成物を用いてバンプが設けられた基板の電気的接続をリフローにより行ったときに、バンプがリフロー時にフラックスから露出することをより確実に阻止することができる。Zが示す官能基がアミド構造を有する基である重合体(B)としては、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。
【0022】
重合体(B)の分子量(Mw)は、通常、1,000〜1,000,000である。前記分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0023】
本発明のフラックス組成物における重合体(B)の含有量は、アルジトール(A)100質量部に対し、10〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜130質量部であり、さらに好ましくは50〜120である。重合体(B)の含有量が前記範囲内であると、本フラックス組成物を用いてバンプが設けられた基板の電気的接続をリフローにより行ったときに、バンプがリフロー時にフラックス組成物から露出することをより確実に阻止することができる。
【0024】
重合体(B)は、前述したアルジトール(A)とともに水溶性であることが好ましい。重合体(B)がアルジトール(A)とともに水溶性であると、本発明のフラックス組成物を水溶性にすることができるので、本発明のフラックス組成物を用いてはんだ付けされた基板からフラックス残渣を有機溶剤洗浄ではなく洗浄水洗浄により除去することができ、その結果、組成物の取り扱い性が容易になるとともに環境適合性が向上する。ここで、水溶性とは、25℃、1barでの水に対する溶解度が0.1S以上であることをいう。重合体(B)の具体例として上記に例示されたポリビニルピロリドン等の重合体はすべて水溶性である。
【0025】
1−3.その他の成分
本発明のフラックス組成物は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含有することができる。その他の成分としては、溶剤、活性剤およびチクソトロピー性付与剤等を挙げることができる。
【0026】
溶剤は、フラックス組成物の粘度を調整し、フラックス組成物の界面張力を制御するために用いられるものである。溶剤としては、特開2010−179360号公報に記載の溶剤を挙げることができる。具体的には、水、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ジグリセリンカプリレート等のジグリセリンの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルおよびポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル等の水溶性の溶剤、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、カルビトール、乳酸エステル、脂肪族カルボン酸エステルおよび芳香族炭化水素等の非水溶性溶剤が挙げられる。
【0027】
これらのなかでも、容易に揮発できる溶剤、より詳しくは、沸点がリフロー温度以下の溶剤、通常は大気圧における沸点が260℃以下の溶剤が好ましい。若しくは、アルジトール(A)や重合体(B)が水溶性の場合、これらとの混和性の点から、水溶性の溶剤が好ましい。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記活性剤は、フラックス組成物の還元性を向上させる目的で用いられるものであり、特開2010−179360号公報に記載の活性剤が挙げられる。
また前記チクソトロピー性付与剤は、フラックス組成物にチクソトロピー性を付与する目的で用いられるものであり、特開2010−179360号公報に記載のチクソトロピー性付与剤が挙げられる。
【0029】
2.電気的接続構造の形成方法
本発明の電気的接続構造の形成方法は、前記本発明のフラックス組成物を用いて溶融性導電部をリフローすることにより電気的接続を行うものである。本発明のフラックス組成物を用いれば、リフロー時に溶融性導電部の酸化を確実に防止でき、その結果、良好な電気的接続構造が得られる。
【0030】
本発明の電気的接続構造の形成方法の一具体例は、たとえば以下の工程を有する。
工程1:電気的接続が可能な溶融性導電部が設けられた基板に本発明のフラックス組成物を塗布して、前記溶融性導電部を本発明のフラックス組成物で被覆する工程
工程2:前記基板と、電気的接続が可能な導電部が設けられた別の基板とを、前記フラックス組成物を挟んで、一方の基板に設けられた溶融性導電部と他方の基板に設けられた溶融性導電部とが対向するように配置する工程
工程3:加熱処理により前記2枚の基板に設けられた溶融性導電部をリフローさせて、前記対向した2つの溶融性導電部を接合することにより、前記基板と前記別の基板とを電気的に接続させる工程
【0031】
2−1.工程1
工程1の模式図を図3(a)に示す。工程1は、電気的接続が可能な溶融性導電部11が設けられた基板12に本発明のフラックス組成物13を塗布して、溶融性導電部11をフラックス組成物13で被覆する工程である。
【0032】
溶融性導電部11は、例えばバンプ等が挙げられる。溶融性導電部11は、はんだ材料のみから形成されていてもよく、また基板12の板部に接続するCu、Ni、Au、Ag、Al、Zn等のはんだ材料以外の材料からなるピラー部と、そのピラー部の先端に形成された、はんだ材料からなるはんだ部とを有するピラーバンプであってもよい。
【0033】
前記はんだ材料としては、例えば、鉛系合金であるSn−Pb系合金、Sn−Pb−Ag系合金、Sn−Pb−Bi系合金、Sn−Pb−In系合金、Sn−Pb−Sb系合金等のみならず、無鉛系合金であるSn−Sb系合金、Sn−Bi系合金、Sn−Ag系合金、Sn−Zn系合金等が挙げられる。これらの合金には、Ag、Cu、Bi、In、Ni、P等が添加されていてもよい。
【0034】
基板12としては、溶融性導電部11と電気的に接続している配線(図示せず)および絶縁層(図示せず)を有している基板などが挙げられる。前記絶縁層としては、例えば、有機成分を主成分として含有する層が挙げられ、具体的には、特許3812654号、特開2007−314695号公報、特開2008−107458号公報、特開2006−189788号公報、国際公開第2009/072492号パンフレット、特開2001−033965号公報などに記載の樹脂層が挙げられる。
【0035】
前記絶縁層としては、その他、半導体ウエハ、ガラス基板、樹脂基板などの基材を挙げることもできる。つまり、前記基板としては、部品搭載基板、チップ搭載基板等の各種基板、電子回路モジュール、フリップチップIC、半導体チップ等の各種電子部品等が挙げられる。
【0036】
基板12にフラックス組成物13を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ナイフコーターによる塗布方法、ロールコータによる塗布方法、ドクターブレードによる塗布方法、カーテンコータによる塗布方法、ダイコータによる塗布方法、ワイヤーコータによる塗布方法、スクリーン印刷装置によるスクリーン印刷法、インクジェット法により塗布する方法が挙げられる。
【0037】
フラックス組成物13を塗布した後、必要に応じて、フラックス組成物13中に含まれる溶剤などを揮発させて粘度を上げることにより別の基板21との仮止め性を向上させる目的で、または、フラックス13の還元性を向上させる目的で、加熱処理を行っても良い。
【0038】
2−2.工程2
工程2の模式図を図3(b)に示す。工程2は、基板12と、電気的接続が可能な導電部22が設けられた別の基板21とを、フラックス組成物13を挟んで、基板12に設けられた溶融性導電部11と基板21に設けられた導電部22とが対向するように配置する工程である。図3(b)に示すとおり、基板12と基板21とは、対向した複数の溶融性導電部11と導電部22とが接触するように配置される。
【0039】
基板21としては、電気的接続が可能な導電部22と電気的に接続している配線(図示せず)と絶縁層(図示せず)とを有している基板などが挙げられる。導電部22は、溶融性導電部11と同じく、溶融性であってもよい。基板21の絶縁層としては基板12の絶縁層と同じく、有機成分を主成分として含有する層、半導体ウエハ、ガラス基板、樹脂基板などが挙げられる。
【0040】
基板12と基板21とを前述のように配置した後、フラックス組成物13の粘度をコントロールすることにより、基板12と基板21とがずれ動かないように、つまり、工程3のリフロー時に基板12と基板21との相互の位置が変化しないようにフラックス組成物を仮止め材として用いてもよい。
【0041】
2−3.工程3
工程3の模式図を図3(c)に示す。工程3は、加熱処理により溶融性導電部11をリフローさせて、対向した溶融性導電部11および導電部22を接合することにより、基板12と基板21とを電気的に接続させる工程である。
【0042】
前記リフローにおける加熱温度は、溶融性導電部11の溶融温度や、本発明のフラックス組成物13の種類により適宜決定され、通常80〜300℃、好ましくは100〜270℃である。
【0043】
前記リフローにより、対向した溶融性導電部11と導電部22とは接合され、導電接続部31が形成される。このように、工程3により、基板12と基板21とは導電接続部31を介して電気的に接続される。
【0044】
リフロー後、フラックス残渣がある場合、溶剤により洗浄しフラックス残渣を除去してもよい。洗浄に用いる溶剤としては、前記「1−3.その他の成分」に記載の溶剤を挙げられる。特に、アルジトール(A)と重合体(B)とがとともに水溶性である場合には、前述のとおりフラックス残渣を水洗浄により除去することができ、組成物の取り扱い性が容易になるとともに環境適合性が向上する。
【0045】
3.電気的接続構造
本発明の電気的接続構造は、上記電気的接続構造の形成方法により形成された電気的接続構造である。本発明の電気的接続構造は、前記フラックス組成物を用いて形成されているので、たとえば図3における溶融性導電部11や導電部22が酸化されることがない。このため、本発明の電気的接続構造は良好な電気的接続構造となる。本発明の電気的接続構造は、各種半導体装置などに使用することができる。
【0046】
4.半導体装置
本発明フラックス組成物を用いれば、上述の電気的接続構造、半導体素子や半導体パッケージ、固体撮像素子および光半導体素子等を有する半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。実施例中の「部」は質量基準である。
【0048】
〔1〕フラックス組成物の準備
[実施例1〜20および比較例1]
下記表1に示す成分を表1に示す比率で混合することにより、実施例1〜20および比較例1のフラックス組成物を作成した。表1に示された数値は質量部を表わす。各成分の詳細は以下のとおりである。「Mw」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。粘度はB型粘度系計、23℃で測定した値である。
A−1:グリセリン
B−1:ポリビニルピロリドン(Mw:6000〜15000、重合度:60〜930)
B−2:ポリビニルアルコール(ケン化度:87〜89mol%、重合度:300〜500)
C−1:ポリエチレングリコール(粘度:0.003〜0.02Pa・s)
C−2:テトラエチレングリコール
C−3:ポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル(0.3〜0.5Pa・s)
C−4:ジグリセリンカプリレート(粘度:0.3〜0.5Pa・s)
C−5:ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル(粘度:0.3〜0.5Pa・s)
【0049】
【表1】

【0050】
〔2〕フラックス組成物の評価
実施例1〜20および比較例1のフラックス組成物について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
実施例1〜15および比較例1のフラックス組成物を、スピンコート法で、複数のピラーバンプが設けられた直径4インチのシリコンウエハ上に、ピラーバンプがフラックス組成物で被覆されるように塗布した。また、実施例16〜20のフラックス組成物を、インクジェット法で、複数のピラーバンプが設けられた直径4インチのシリコンウエハ上に、ピラーバンプがフラックス組成物で被覆されるように塗布した。ピラーバンプは、サイズが縦100μm、横100μm、高さ100μmであり、シリコンウエハ側の下半分は銅からなるピラー部であり、上半分はSn−Ag合金からなるはんだ部であった。図1に示す温度条件ではんだをリフローさせたのち、シリコンウエハを純水で洗浄した。
【0052】
このとき純水による洗浄でフラックス残渣を除去できるかを、洗浄後のシリコンウエハを電子顕微鏡にて観察することにより、「洗浄性」として、下記基準にて評価した。
【0053】
洗浄性
「A」:フラックスの残渣が残っていなかった。
「C」:フラックスの残渣が残っていた。
【0054】
また、リフロー時にピラーバンプがフラックス組成物から露出せず、フラックス組成物によって被覆されているかどうかを、洗浄後のピラーバンプのはんだ部の形状を電子顕微鏡にて観察することにより、「はんだの形状」として、図2(a)〜(c)を用いた下記基準にて評価した。
【0055】
図2(a)〜(c)は、それぞれ実施例1〜20および比較例1で使用したシリコンウエハに設けられたリフロー後のピラーバンプ41の図であり、シリコンウエハに平行な方向であり、かつピラーバンプ41の側面に平行な方向から見たピラーバンプ41の形状を示す。ピラーバンプ41は、ピラー部42とはんだ部43とを有する。リフロー時にピラーバンプ41がフラックス組成物から多く露出しているほど、ピラーバンプ41のはんだ部43は強く酸化され、はんだ部43の形状に大きな変化が生じる。このため、洗浄後のはんだ部43の形状により、リフロー時にピラーバンプがフラックス組成物から露出していた程度を評価することができる。
【0056】
図2(a)に示すはんだ部43の形状は、はんだ部43の酸化がない場合、つまりリフロー時にピラーバンプ41がフラックス組成物から露出していない場合に現れる形状である。図2(b)に示すはんだ部43の形状は、はんだ部43の酸化が弱い場合、つまりリフロー時にピラーバンプ41がフラックス組成物から露出しているが、露出している部分が少ない場合に現れる形状である。図2(c)に示すはんだ部43の形状は、はんだ部43の酸化が強い場合、つまりリフロー時にピラーバンプ41がフラックス組成物から露出し、露出している部分が多い場合に現れる形状である。つまり、はんだ部43は酸化されていないと半球に近い形状になり、酸化の程度が大きくなるほど直方体に近い形状になる。
【0057】
はんだの形状
「A」:はんだ部43の形状が図2(a)に示す形状であった。
「B」:はんだ部43の形状が図2(b)に示す形状であった。
「C」:はんだ部43の形状が図2(c)に示す形状であった。
【符号の説明】
【0058】
11 溶融性導電部
12 基板
13 フラックス組成物
21 基板
22 導電部
31 導電接続部
41 ピラーバンプ
42 ピラー部
43 はんだ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルジトール(A)、および下記式(1)に示す繰り返し構造単位を有する重合体(B)を含有することを特徴とするフラックス組成物。
【化1】

(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す。Zはヒドロキシル基、オキソ基、カルボキシル基、ホルミル基、アミノ基、ニトロ基、メルカプト基、スルホ基、オキサゾリン基、イミド基、アミド構造を有する基またはこれら基を有する基を示す。)
【請求項2】
前記式(1)におけるZが、アミド構造を有する基である請求項1のフラックス組成物。
【請求項3】
前記アルジトール(A)100質量部に対し、前記重合体(B)の含有量が10〜200質量部である請求項1または請求項2に記載のフラックス組成物。
【請求項4】
前記アルジトール(A)および前記重合体(B)が水溶性である請求項1〜請求項3のいずれかに記載のフラックス組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のフラックス組成物を用いて溶融性導電部をリフローする電気的接続構造の形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電気的接続構造の形成方法により形成された電気的接続構造。
【請求項7】
請求項6に記載の電気的接続構造を有する半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−52439(P2013−52439A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−62305(P2012−62305)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】