説明

フラット回路用コネクタ

【課題】フラット回路体に外力が作用した場合でもコネクタ相互のガタつきを防止し、加えて防水シール性を良好に維持させる。
【解決手段】フラット回路体2の端末部2bに樹脂成型された一方のコネクタ3と、端末部の導体22を接続させる端子27を有する他方のコネクタ4とで成り、一方のコネクタ3が、導体の後側に樹脂製のブロック部7とブロック部よりも大径な鍔部8とを一体に有し、鍔部の上下に突壁14が設けられ、他方のコネクタ4が、ブロック部を嵌合させる主周壁10と、主周壁の後側に一体形成された薄肉の左右の部分周壁11とを有し、左右の部分周壁の間に、突壁14を嵌合させる切欠部16が構成されたフラット回路用コネクタ1を採用する。ブロック部7の外周に弾性のシール部材32が設けられ、シール部材が主周壁10の内面に密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラット回路体の端末に形成した樹脂成型部を相手コネクタ内に嵌合すると同時にフラット回路体と相手コネクタ内の端子とを接続させるフラット回路用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図16は、従来のフラット回路用コネクタの一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
このフラット回路用コネクタ61は、一方のプラグコネクタ62と他方のレセプタクルコネクタ63とで成り、一方のコネクタ62は、フラットハーネス64の端末に樹脂成形された支持補強部材(符号62で代用)を有し、支持部62aの上に端末の導体64aが露出し、補強部62bは端末を取り囲んで導体64aを補強し、補強部62bの側面に係止突起65を有している。
【0004】
他方のコネクタ63は、樹脂製のコネクタハウジング66の内側上部に接続端子67を有し、底部に支持部62aのテーパ面を上向きに支持するテーパ面66aを有し、側壁に係止突起65に対する係合孔を有している。
【0005】
図17は、上記一方のコネクタ62として、補強部62bの周囲にシール部68を形成した例を示すものである。コネクタ嵌合状態で、シール部68が図16の他方のコネクタ63の内面に密着し、支持部62aの下面は他方のコネクタハウジング66の底面66bとの間に隙間を存して位置する。
【0006】
上記以外のフラット回路用コネクタ(図示せず)としては、例えば、特許文献2に、一方及び他方のコネクタ内に各平形ケーブルの端末を収容して樹脂製の各リテーナで押さえて固定し、リテーナの後側に樹脂モールド部を充填して防水したことが記載され、特許文献3には、フラットケーブルの端末の電線に接続端子を接続し、その接続部分を樹脂モールド部で覆って防水したことが記載され、特許文献4には、複数の接続端子を一次モールド樹脂で連結し、フラットケーブルの端末の導体と各接続端子との接続部分を一次モールド樹脂の上から二次モールド樹脂で覆って防水したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−93269号公報(図4,図7)
【特許文献2】特開2008−176977号公報(図2)
【特許文献3】特開平7−106016号公報(図2)
【特許文献4】特開平6−310224号公報(図1,図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の図16のフラット回路用コネクタ61にあっては、例えば他方のコネクタ63に対して一方のコネクタ62の左右の係止突起65の挿入代や上下方向の挿入隙間を設定する関係で、一方のコネクタ62が他方のコネクタ63内で上下左右方向のガタつきを生じやすく、特にフラットハーネス(フラット回路体)64に曲げ方向やこじり方向すなわち上下左右方向の外力が作用した場合や車両の振動等を受けた場合に、フラットハーネス64の導体64aと相手端子67との接点部の電気的接触性が低下し兼ねないという懸念があった。また、上記従来の図17の防水シール構造にあっては、上記同様の外力が作用した場合に、シール部68の密着性が低下し兼ねないという懸念があった。
【0009】
本発明は、上記した点に鑑み、フラット回路体に外力が作用した場合等においてもコネクタ相互のガタつきを防止することができ、それに加えて、フラット回路体に外力が作用した場合等においても防水シール性を良好に維持することのできるフラット回路用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るフラット回路用コネクタは、フラット回路体の端末部に樹脂成型された一方のコネクタと、該端末部の導体を接続させる端子を有する他方のコネクタとで成り、該一方のコネクタが、該導体の後側に樹脂製のブロック部と該ブロック部よりも大径な鍔部とを一体に有し、該鍔部の上下に突壁が設けられ、該他方のコネクタが、該ブロック部を嵌合させる主周壁と、該主周壁の後側に一体形成された薄肉の左右の部分周壁とを有し、該左右の部分周壁の間に、該突壁を嵌合させる切欠部が構成されたことを特徴とする。
【0011】
上記構成により、一方のコネクタのブロック部が他方のコネクタの主周壁内に嵌合し、ブロック部の後側の鍔部が主周壁に続く左右の部分周壁の内側に嵌合し、鍔部の上下の突壁が左右の部分周壁の間の切欠部内に嵌合する。これにより、両コネクタの上下左右方向のガタつきが防止される。上下方向はフラット回路体の厚み方向であり、左右方向はフラット回路体の幅方向である。
【0012】
請求項2に係るフラット回路用コネクタは、請求項1記載のフラット回路用コネクタにおいて、前記鍔部の左右に係止部が設けられ、前記左右の部分周壁に、該係止部を係合させる可撓性の被係止部が形成されたことを特徴とする。
【0013】
上記構成により、鍔部の係止部が部分周壁の被係止部を外向きに撓ませて被係止部に係合すると同時に、鍔部が部分周壁内に隙間なく嵌合する。係止部と被係止部との係合で両コネクタが相互にロックされる。
【0014】
請求項3に係るフラット回路用コネクタは、請求項1又は2記載のフラット回路用コネクタにおいて、前記突壁に直交して突出板部が前向きに設けられ、該突出板部と前記ブロック部との間に溝部が構成され、該溝部に前記主周壁が嵌合することを特徴とする。
【0015】
上記構成により、上下の溝部に主周壁の上下の壁部分が嵌合し、上下の壁部分の外面が突出板部の内面に接触し、上下の壁部分の内面がブロック部の上下の外面に接触して、コネクタ相互の上下方向のガタつきが一層確実に防止される。
【0016】
請求項4に係るフラット回路用コネクタは、請求項1〜3の何れかに記載のフラット回路用コネクタにおいて、前記ブロック部の外周に弾性のシール部材が設けられ、該シール部材が前記主周壁の内面に密着することを特徴とする。
【0017】
上記構成により、シール部材がブロック部の周面と主周壁の内面とを内外方向(シール部材径方向)に弾性的に押圧して、ブロック部と主周壁との間のガタつきを防止する。シール部材はブロック部と主周壁との間を防水してコネクタ内部への水の浸入を防止する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、フラット回路体に外力が作用した場合等においてもコネクタ相互の上下左右方向のガタつきを防止することができ、これにより、フラット回路体の導体と他方のコネクタの端子との摩耗を防いで電気的接触性を良好に確保することができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、被係止部を撓ませて係止部に係合させることで、鍔部を部分周壁内に隙間なく嵌合させることができ、これにより、両コネクタの特に左右方向のガタつきを確実に防止することができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、溝部に主周壁を嵌合させることで、両コネクタの上下方向のガタつきを一層確実に防止することができ、これにより請求項1記載の発明の効果を促進させることができる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3の何れかに記載の構成でコネクタ相互のガタつきを防止することで、シール部材の有害な変形を防いで、コネクタの防水性を良好に維持させることができる。また、シール部材自体の弾性力で両コネクタ間のガタつきを防いで、防水性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るフラット回路用コネクタの第一の実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】フラット回路側の一方のコネクタを示す斜視図である。
【図3】同じく一方のコネクタを示す下方視斜視図である。
【図4】一方のコネクタの変形例を示す斜視図である。
【図5】両コネクタの嵌合状態を示す平面図である。
【図6】同じくコネクタの嵌合状態を示す図5のA−A断面図である。
【図7】図4の変形例のコネクタの嵌合状態を示す平面図である。
【図8】同じく嵌合状態を示す図7のB−B断面図である。
【図9】フラット回路用コネクタの第二の実施形態を示す分解斜視図である。
【図10】フラット回路側の一方のコネクタを示す下方視斜視図である。
【図11】一方のコネクタの変形例を示す斜視図である。
【図12】一方のコネクタを示す図10のC−C断面図である。
【図13】図9の両コネクタの嵌合状態を示す斜視図である。
【図14】同じく嵌合状態を示す図13のD−D断面図である。
【図15】図11の変形例のコネクタの嵌合状態を示す縦断面図である。
【図16】従来のフラット回路用コネクタの一例の嵌合状態を示す縦断面図である。
【図17】従来のフラット回路側の一方のコネクタの変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図8は、本発明に係るフラット回路用コネクタの第一の実施形態を示すものである。
【0024】
図1の如く、このフラット回路用コネクタ1は、FPCやFFCといった可撓性のフラット回路体2の一端末部2bに一体樹脂成型された一方のコネクタ3と、フラット回路体2の端末部2bと共に一方のコネクタ3を収容するコネクタ嵌合室5を有する他方のコネクタ4とで構成され、一方のコネクタ3の絶縁性の樹脂成型部6は後半に前後二段の嵌合部(固定部)9を有し、嵌合部9は前側のブロック部7と後側の一体の鍔部8とで成り、他方のコネクタ4は嵌合部9を収容する前後二段の周壁部12を有している。
【0025】
一方のコネクタ3の樹脂成型部6は、ブロック部7の前側に一体に突出形成された水平板状の絶縁性の接点カバー13を含む。鍔部8は上下に一対の横長の突壁(補強部)14を有し、左右に一対の係止突起(係止部)15を有している。
【0026】
他方のコネクタ4の周壁部12は、前側の略長円形に連続した主周壁10と、主周壁10の先端側(後側)で左右両側に一体に設けられた略円弧状で薄肉の部分周壁11とで成り、部分周壁11の外面は主周壁10の外面と同一面に続き、部分周壁11の内面は主周壁10の先端(後端)面10aに直交し、部分周壁11の内側に先端面10aの一部10bが位置している。
【0027】
左右の部分周壁11の間に一方のコネクタ3の突壁14を嵌合させる矩形状の一対の切欠部16が設けられている。切欠部16は両部分周壁11の上下左右の端面11aの間に形成され、主周壁10の上下の先端面10aと両部分周壁11の左右の端面11aとで三方を囲んで構成されている。各部分周壁11は中央に可撓性の係止枠片(被係止部)17を有し、各係止枠片17は部分周壁11から上下のスリット17aで分離され、中央に一方のコネクタ3の係止突起15を係合させる矩形状の係止孔17bを有している。
【0028】
主周壁10の内側にコネクタ嵌合室5が位置し、コネクタ嵌合室5の垂直な底壁5aに複数の端子収容室18が開口している。コネクタ嵌合室5の後部開口5bの上下に切欠部16が位置し、左右に部分周壁11が位置している。周壁部12の前方に周壁部12よりも小径なハウジング主体部19が一体に続いている。周壁部12とハウジング主体部19とで絶縁樹脂製のコネクタハウジング20が構成される。ハウジング主体部19は車両パネル等へのスライド固定部21を有している。
【0029】
なお、明細書で上下前後左右の方向性は説明の便宜上のものであり、必ずしもコネクタ1の取付方向と一致するとは限らない。他方のコネクタ4の「前後」は一方のコネクタ3の「前後」を基準とする。
【0030】
図2の如く、一方のコネクタ3のブロック部7は図1の他方のコネクタ4のコネクタ嵌合室5(主周壁10の内面)の形状に合わせて略長円形に形成され、左右に半円状の湾曲面7aを有し、上下に真直な平坦面7bを有し、前端に垂直な平面7cを有している。前端面7cの高さ方向中央に接点カバー13が一体に突出形成され、接点カバー13は水平な幅広の上板部13aと左右の幅狭な側板部13bとで成る。
【0031】
後端の鍔部8はブロック部7を一回り大きくした形状でブロック部7よりも前後方向に薄く形成され、ブロック部7の外周面7a,7bに直交する垂直な前端面8aを有し、前端面8aは上下の突壁14の前端面14aと同一面に続いている。突壁14は他方のコネクタ4の部分周壁11と同じ厚みで形成され、左右に幅狭で垂直な側端面14bを有している。
【0032】
鍔部8の左右両端は他方のコネクタ4の係止枠片17の内面を接触させる幅狭で平坦な垂直な側端面8bを有し、側端面8bの前後方向中央に係止突起15を有し、係止突起15は前側の傾斜ガイド面15aと後側の略垂直な係止面15bを有している。
【0033】
図3の如く、一方のコネクタ3の接点カバー13の内面(裏面)にフラット回路体2の複数(本例で三つ)の並列な導体22が露出している。導体22はフラット回路体2の上下の水平な絶縁シート(皮膜)2aで覆われた不図示の内部導体に続いている。
【0034】
導体22は内部導体と同一のものでもよく、別体の導体22を内部導体に接続させてもよい。例えばフラット回路体2の露出導体22が平板状や圧着端子等で剛性を有する場合は接点カバー13を省略することも可能である。フラット回路体2は、FPC(フレキシブル・プリント・サーキット)やFFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)といった既存のものの総称である。
【0035】
図4は、図2の補強部である突壁14に代えて、前方に向けて略L字(フック)状に屈曲した上下の突出壁23を鍔部8の上下に補強部として一体に設けた例を示すものである。突出壁23は図2の突壁14と同じ突出高さ及び形状の垂直な短い立ち上げ壁部(突壁)24と、立ち上げ壁部24から前方に向けて水平に突出した長い突出板部25とで成り、各突出板部25の内面25aはブロック部7の上下の外面7bに対向して平行に位置し、内面25aと外面7bとの間に溝部26を成している。
【0036】
両コネクタ3,4の嵌合時に、図1の他方のコネクタ4の切欠部16に立ち上げ壁部24が嵌合し、突出板部25の内面25aがブロック部7の外面7bに接触する。作用の詳細は後述する。立ち上げ壁部24の前端面24aは鍔部8の前端面8aと同一面に続いている。図4の突出壁23以外の構成は図2の一方のコネクタ3と同様であるので、同じ構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。符号13は接点カバー、2はフラット回路体、15は係止突起をそれぞれ示す。
【0037】
図5〜図6は、図1の両コネクタ3,4の嵌合状態を示すものである。図6の如く、一方のコネクタ3は、フラット回路体2の端末部2bの上下左右(板厚方向及び幅方向)に樹脂材を中実に充填して成る嵌合部9を有し、接点カバー13の下面に端子としての露出した導体22を有して成る。嵌合部9に端末部2bが貫通され、端末部2bは前側に露出導体22を有する。
【0038】
他方のコネクタ4の主周壁10の内側のコネクタ嵌合室5に前側のブロック部7が殆ど隙間なく嵌合し、後側の部分周壁11の内側に後側の鍔部8が殆ど隙間なく嵌合し、鍔部8の上下の突壁14が部分周壁11の間の切欠部16に隙間なく嵌合する。ブロック部7の前端面7cはコネクタ嵌合室5の底壁5aに当接し、鍔部8と突壁14との前端面8a,14aは主周壁10の後端面10aに当接する。上下の突壁14の上面又は下面は主周壁10の上面又は下面と同一面に位置する。突壁14の後面と鍔部8の後面は部分周壁11の後端と同一面に位置する。
【0039】
ブロック部7と鍔部8とが嵌合部(固定部)9として他方のコネクタ4との間のガタをなくし、突壁(補強部)14がフラット回路体2や嵌合部9が外部から受ける力を両コネクタ3,4の端子22,27の接点に伝えない役割をする。
【0040】
図1の他方のコネクタ4の係止枠片17は外側に撓んで一方のコネクタ3の係止突起15の進入を許容するので、部分周壁11と鍔壁8とが隙間なく嵌合する。左右の係止枠片17と係止突起15との係合状態で、左右方向すなわちフラット回路体2の幅方向の外力が作用しても、左右の部分周壁11が鍔部8の左右の半円状の外面部分8c(図2)を受け止めるので、左右方向のガタつきが防止される。
【0041】
また、上下方向すなわちフラット回路体2の厚さ方向の外力が作用しても、突壁14の前端面14aが鍔部8の前端面8aと共に広い面積で主周壁10の後端面10aに当接するので、上下方向のガタつきが防止される。
【0042】
また、左右方向の外力が作用した際に、突壁14の左右の側端面14b(図2)が切欠部16において部分周壁11の端面11aに当接することで、左右方向のガタつきが防止される。ブロック部7の前端面7cがコネクタ嵌合室5の底壁5aに当接し、鍔部8の前端面8aが主周壁10の後端面10aに当接することで、前後方向のガタつきも防止される。各方向のガタつきが防止されることで、フラット回路体2の導体22と相手端子27(図6)との摩耗が防止され、電気的接触性が良好に維持させる。
【0043】
図6の如く、他方のコネクタ4のハウジング20にはコネクタ嵌合室5に続いて端子収容室18が設けられ、端子収容室18に端子27が収容されている。本例の端子27は一方に弾性接触部27aを含む雌型の電気接触部(符号27aで代用)を有し、他方に雄型の電気接触部27bを有し、雄型の電気接触部27bはハウジング20の他方のコネクタ嵌合室28内に突出されている。
【0044】
端子27はフラット回路体2の導体22の数に対応して一対一で複数配置され、端子27の弾性接触部27aが露出導体22に弾性接触する。他方の電気接触部27bを電線接続部(図示せず)に代えて、電線接続部に電線(図示せず)を圧着接続させることも可能であり、その場合は他方のコネクタ嵌合室28は電線導出孔に代わる。
【0045】
図7,図8は、図4の例の一方のコネクタ3’を図5,図6の他方のコネクタ4に嵌合させた状態を示すものである。
【0046】
一方のコネクタ3’の上下の補強部としての略L字状に突出壁23の立ち上げ壁部24が他方のコネクタ4のハウジング20の上下の切欠部16に嵌合し、立ち上げ壁部24の前端面24aがハウジング20の主周壁10の後端面10aに当接し、突出壁23の突出板部25が主周壁10の上下の壁部10cの外側に重なって、突出板部25の内面25aが主周壁10の外面10c’に接触する。
【0047】
一方のコネクタ3のブロック部7が他方のコネクタ4の主周壁10の内側のコネクタ嵌合室5に嵌合し、ブロック部7の上下の外面10c’と突出板部25の内面25aとの間の溝部26に主周壁10の上下の壁部10cが嵌合する。図5,図6の例に較べて主周壁10の上下の壁部10cを溝部26の間に挟み込んで保持することで、両コネクタ3,4間の上下方向のガタつきが一層確実に抑止される。
【0048】
図9〜図15は、本発明に係るフラット回路用コネクタの第二の実施形態を示すものである。
【0049】
このフラット回路用コネクタ31は、一方のコネクタ33のブロック部7にOリングや環状パッキンといった合成ゴム製の弾性のシール部材32を装着したことを特徴としている。他の構成は前記第一の実施形態のコネクタ1と同様であるので、同様の構成部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。シール部材32は装着に限らず合成樹脂製のブロック部7に二色成型等で一体に固着させることも可能である。
【0050】
図9の如く、一方のコネクタ33は、絶縁樹脂製のブロック部7と鍔部8とで成る嵌合部9と、嵌合部9から前方に突出した接点カバー13とで成る樹脂成型部6をFPCやFFCといったフラット回路体2の端末部2bに一体に備えている。正面視で略長円形状のブロック部7の外周面の前後方向中間部に周溝34が設けられ、周溝34内にシール部材32が装着されている。
【0051】
周溝34の前側にシール部材挿入用の大きな前端のテーパ面取7dとそれに続く幅狭な環状外面7eとを有するブロック前部が位置し、周溝34の後側に平坦な環状外面7fを有するブロック後部が位置する。環状外面7d,7fは図2の例の外周面7a,7bに相当する。後端の鍔部8は上下に補強部としての突壁14を有し、左右に係止突起15を有する。
【0052】
他方のコネクタ4は図1の第一の実施形態におけると同様であり、絶縁樹脂製のハウジング20の後部に主周壁10とその後方に一体に続く部分周壁11とで成る周壁部12を有し、部分周壁11の上下に、突壁14を嵌合させる切欠部16を有し、部分周壁11の左右に、係止突起15を係合させる可撓性の係止枠片17を有する。ハウジング20は主周壁10内に一方のコネクタ嵌合室5(図1)を有し、前部に隔壁35で部分的に区画された他方のコネクタ嵌合室28を有する。
【0053】
図10の如く、一方のコネクタ33の鍔部8の上下方向中央からフラット回路体2が後方に導出され、フラット回路体2は鍔部8とブロック部7とを貫通し、且つ鍔部8とブロック部7とで固着され、ブロック部7から前方に突出した接点カバー13の下面にフラット回路体2の端末部2bの複数の並列な導体22が露出して位置する。シール部材32はブロック部7の上下の平坦部7bに沿う上下の真直部32bと左右の湾曲部7aに沿う半円状の湾曲部32aとで成る。フラット回路体2と樹脂成型部6’とシール部材32とでフラット回路組立体が構成される。
【0054】
図11は、図10の突壁14に代えて第一の実施形態の図4の突出壁23を鍔部8の上下に設けた一方のコネクタ33’の例を示すものであり、ブロック部7の周溝34に装着されたシール部材32の上下の真直部32bの上側と下側に突出壁23の上下の突出板部25の前端が位置する。符号13は接点カバー、15は係止突起、2はフラット回路体をそれぞれ示す。
【0055】
図12は、図10の一方のコネクタ33の縦断を示すものであり、本例のシール部材32は断面円形に形成され、シール部材32の外周端32cはブロック部7の外面よりも高く突出し、鍔部8とその上下の突壁14とはシール部材32よりも高く突出している。周溝34は前後の垂直な内面34aと水平な底面34bとを有する。フラット回路体2の端末部2bに嵌合部9が樹脂成型され、接点カバー13の内面側の溝13a内に端末部2bの露出導体22が収容されている。
【0056】
図13,図14は、図9の両コネクタ4,33の嵌合状態を示すものであり、図13の如く、一方のコネクタ33の上下の突壁14が他方のコネクタ4の上下の切欠部16に嵌合し、突壁14の前端面14aが切欠部16の底面(周壁10の後端面10a)に当接し、突壁14の左右の端面14bが切欠部16の左右の端面(部分周壁11の端部)11aに当接し、左右の係止突起15が左右の係止枠片17に係合して、両コネクタ4,33の上下左右のガタつきが防止されている。
【0057】
図14の如く、一方のコネクタ33のシール部材32の外周面32cが他方のコネクタ4の主周壁10の内面10dに弾性的に密着し、シール部材32の内周面32dが周溝34の底面(内面)34bに弾性的に密着して、切欠部16や部分周壁11からコネクタ嵌合室5への水の浸入が防止される。シール部材32は周溝34の底面34bと主周壁10の内面10dとの間で径方向に圧縮され、弾性反発力でブロック部7と主周壁10との間のガタつきを吸収する。
【0058】
ブロック部7はコネクタ嵌合室5に嵌合し、ブロック部7の前端面7cがコネクタ嵌合室5の底面5aに当接し、鍔部8の前端面8aと突壁14の前端面14aとが主周壁10の後端面10aに同一面で当接する。一方のコネクタ33の嵌合部9の突壁14が他方のコネクタ4の切欠部16に嵌合し、鍔部8が部分周壁11内に嵌合して、嵌合部9と他方のコネクタ4のハウジング20とのガタが防止されるので、シール部材32の有害な変形が阻止されて、シール部材32のシール性が良好に維持される。コネクタ嵌合室5に連通した端子収容室18内の端子27にフラット回路体2の露出導体22が弾性接触する。
【0059】
図15は、図11の例の一方のコネクタ33’を図14の例と同じ他方のコネクタ4に嵌合させた状態を示すものであり、一方のコネクタ33’の突出壁23の立ち上げ壁部(突壁)24が図14の例の突壁14と同様に他方のコネクタ4の切欠部16に嵌合し、突出板部25が主周壁10の外面に接触し、突出板部25とブロック部7との間の溝部26に主周壁10の上下の壁部10cが嵌合することで、両コネクタ4,33’の上下方向のガタが一層確実に防止され、それにより、シール部材32の有害な変形が阻止されて、シール部材32のシール性が良好に維持される。
【0060】
なお、上記各実施形態においては、他方のコネクタ4に端子金具27を設けたが、端子金具27に代えて一方のコネクタ3におけるようなフラット回路体(2)を設け、フラット回路体(2)の端末導体(22)に弾性接触部(27a)を有する不図示の端子を接続して設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係るフラット回路用コネクタは、フラット回路体に外力が作用した場合等においてコネクタ相互のガタつきを防止し、それに加えて、フラット回路体に外力が作用した場合等においてコネクタ内の防水シール性を良好に維持させるために利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1,31 フラット回路用コネクタ
2 フラット回路体
2b 端末部
3,3’,33’ 一方のコネクタ
4 他方のコネクタ
7 ブロック部
8 鍔部
10 主周壁
11 部分周壁
14 突壁
15 係止突起(係止部)
16 切欠部
17 係止枠片(被係止部)
22 導体
24 立ち上げ壁部(突壁)
25 突出板部
26 溝部
27 端子
32 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラット回路体の端末部に樹脂成型された一方のコネクタと、該端末部の導体を接続させる端子を有する他方のコネクタとで成り、該一方のコネクタが、該導体の後側に樹脂製のブロック部と該ブロック部よりも大径な鍔部とを一体に有し、該鍔部の上下に突壁が設けられ、該他方のコネクタが、該ブロック部を嵌合させる主周壁と、該主周壁の後側に一体形成された薄肉の左右の部分周壁とを有し、該左右の部分周壁の間に、該突壁を嵌合させる切欠部が構成されたことを特徴とするフラット回路用コネクタ。
【請求項2】
前記鍔部の左右に係止部が設けられ、前記左右の部分周壁に、該係止部を係合させる可撓性の被係止部が形成されたことを特徴とする請求項1記載のフラット回路用コネクタ。
【請求項3】
前記突壁に直交して突出板部が前向きに設けられ、該突出板部と前記ブロック部との間に溝部が構成され、該溝部に前記主周壁が嵌合することを特徴とする請求項1又は2記載のフラット回路用コネクタ。
【請求項4】
前記ブロック部の外周に弾性のシール部材が設けられ、該シール部材が前記主周壁の内面に密着することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のフラット回路用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−178246(P2012−178246A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39686(P2011−39686)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】