説明

フラップ弁装置

【課題】フラップ弁を本体部に対して、ピンの折損等を生じることなく、スムーズに取付けられるようにしたフラップ弁装置を提供する。
【解決手段】このフラップ弁装置は、本体部20と弁体40とバネ部材60とを備え、本体部20は、取付アーム25A,25Bとバネ取付部35とを有し、弁体40は、回動アーム41,41とピン43A,43Bとを有し、各アームはピン挿入孔28をそれぞれ有し、取付アーム25Aには、取付アーム25Aのピン挿入孔28にピン43Bを挿入した状態で、ピン43Aを仮置きするピン当接部30と、このピン当接部30からピン挿入孔28に至るガイド部31とを有し、取付アーム25A,25Bのピン挿入孔周囲の外側面どうしの間隔は、回動アーム41の内側面どうしの間隔よりも狭く、ピン43A,43Bの先端面どうしの間隔よりも広くなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車等の燃料タンクに接続された燃料注入パイプの開口部に取付けられる逆止弁に好適なフラップ弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の燃料タンクには、給油口に連結された燃料注入パイプが接続され、この燃料注入パイプの下流側開口に逆止弁として、フラップ弁装置が配置されることがある。そして、給油時にフラップ弁が開いて燃料をタンク内に流入させると共に、給油後にフラップ弁が閉じて燃料注入パイプ内への燃料の逆流を防止するようにしている。
【0003】
この種のフラップ弁装置として、下記特許文献1には、パイプ(管体)の下端開口を開閉するフラップ弁(バルブ部材)と、同フラップ弁を回動支持するブラケット(突起)と、前記フラップ弁を閉じる方向に付勢する捩りばねとを備える、フラップ弁装置(燃料給油管アセンブリ)が開示されている。
【0004】
前記ブラケットは、パイプ開口周縁から外径方向に向けて所定幅で立設すると共に、その背面側から、パイプの軸方向へと伸びる切欠き溝状のスロットが形成されている。スロットの幅方向一側部はブラケットの正面側に至るまで伸びており、それによりブラケットの幅方向一側部が、前記捩りばねのコイル部を保持する部分をなしている。一方、前記フラップ弁は、円板状の弁体と、その外周から延出した一対のアームと、各アームの先端内側から突設した一対のピン(トラニオン)とを有している。
【0005】
そして、捩りばねのコイル部を、ブラケットの幅方向一側部の内部に収容保持した後、スロットの背面側の両側部端部に一対のピンを位置決めして、フラップ弁をパイプ開口側へ引っ張る。すると、一方のピンが、前記スロットの幅方向一側部であって、バネ部材の保持部分よりも外側の端部内周に圧入され、他方のピンが、同スロットの幅方向他側部の端部内周に圧入されて、パイプ開口部にフラップ弁が開閉可能に取付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4151012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1において、前記スロットは、ブラケットの背面側から切欠かれた溝状をなしているだけなので、一対のピンをスロットの背面側の両側部端部に正確に位置決めすることは難しい。そして、一対のピンがスロットに整合しない位置から圧入された場合、ピンに過度の負荷が作用して、ピンが折損・破損したり変形したりする不都合が生じることがある。一方、ピンをスロットに精度よく整合させようとした場合には、その位置合わせ作業に時間がかかり、フラップ弁の取付作業性に問題が生じる。
【0008】
また、ブラケットに形成されたスロットは、一対のピンが背面から圧入されるため、背面側が開口した状態となっている。このようなスロットに一対のピンが回動支持されているので、強い外力等がフラップ弁に作用した場合に、一対のピンがスロットから抜け出てしまって、フラップ弁が外れてしまう虞れがある。
【0009】
したがって、本発明の目的は、フラップ弁を本体部に対して、ピンの折損等を生じることなく、スムーズに取付けられるようにしたフラップ弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、内部が液体の流路をなす筒状の本体部と、この本体部の一端開口部に開閉可能に取付けられるフラップ状の弁体と、この弁体を常時は本体部の前記一端開口部に向けて閉じる方向に付勢するバネ部材とを備えたフラップ弁装置において、
前記本体部は、その側壁から延出されて前記一端開口部側に突出する一対の取付アームと、前記バネ部材を支持するバネ取付部とを有し、
前記弁体は、外方に向けてほぼ平行に伸びる一対の回動アームと、この一対の回動アームの先端部から互いに向き合う方向に突出された一対のピンとを有し、
前記一対の取付アームは、前記ピンが挿入されるピン挿入孔をそれぞれ有し、前記一対の取付アームのうちの一方の取付アームには、他方の取付アームのピン挿入孔に一方のピンを挿入した状態で、他方のピンを仮置きするピン当接部と、このピン当接部から対応するピン挿入孔に至る傾斜面からなるガイド部とを有しており、
前記一対の取付アームの前記ピン挿入孔周囲の外側面どうしの間隔は、前記一対の回動アームの内側面どうしの間隔よりも狭く、前記一対のピンの先端面どうしの間隔よりも広くなるように形成されていることを特徴とするフラップ弁装置を提供する。
【0011】
本発明においては、前記ピン当接部は、前記一方の取付アームのピン挿入孔に対して、前記本体部の半径方向外方であって、かつ、前記本体部の軸方向にずれた位置に配置されており、前記ガイド部は、前記ピン挿入孔に対して、前記ピン当接部から前記本体部の軸方向に整合する位置まで移動する際に通過する第1傾斜面と、該軸方向に整合する位置から、前記ピン挿入孔に至る第2傾斜面とで構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明においては、前記弁体には、該弁体の最大開き角度を規制する角度規制部が設けられており、前記ピンを前記ガイド部に沿って前記ピン挿入孔に挿入する際、前記弁体を前記角度規制部によって規制された最大開き角度にした状態で、前記ガイド部の前記ピン挿入孔に至る直前の傾斜面に沿うように、前記ピンの先端部に傾斜面が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、本体部の一方の取付アームのピン挿入孔に、対応する回動アームのピンを挿入し、他方の回動アームのピンを、他方の取付アームの当接部に仮置きし、その状態で該ピンをガイド部の斜面に沿ってスライドさせることにより、一対の回動アームが若干開きながらピンが斜面を移動して、対応するピン挿入孔に挿入することができる。
【0014】
こうして、両方のピンをそれぞれピン挿入孔に挿入すると、一対の取付アームのピン挿入孔周囲の外側面どうしの間隔は、一対の回動アームの内側面どうしの間隔よりも狭く、一対のピンの先端面どうしの間隔よりも広くなるように形成されているので、ピンが挿入孔に抜け止めされ、弁体を回動可能に装着することができる。
【0015】
このように、一方のピンを対応するピン挿入孔に挿入した状態で、他方のピンを当接部に仮置きし、その状態で該ピンをガイド部の斜面に沿ってスライドさせて、対応するピン挿入孔に挿入するようにしたので、一対のピンに過度の負荷を作用させずに、無理なくスムーズに対応するピン挿入孔に挿入することができ、弁体の取付作業性を向上させることができると共に、ピンの破損や変形等を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のフラップ装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同フラップ弁装置を構成する弁体の斜視図である。
【図3】同フラップ弁装置の要部斜視図である。
【図4】同フラップ弁装置において、他方の取付アームのピン挿入孔に一方のピンを挿入した状態で、一方の取付アームに他方のピンを仮置きした状態を示す、弁体及び一方の回動アームの一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図5】同フラップ弁装置において、図4に示す状態から他方のピンをスライドさせた状態を示す、弁体及び一方の回動アームの一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図6】同フラップ弁装置において、図5に示す状態から他方のピンをピン挿入孔に挿入した状態を示す、弁体及び一方の回動アームの一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図7】同フラップ弁装置の平面説明図である。
【図8】同フラップ弁装置の側面説明図である。
【図9】同フラップ弁装置を燃料タンクに取付けた状態を示す説明図である。
【図10】本発明のフラップ装置の他の実施形態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係るフラップ弁装置の一実施形態について説明する。
【0018】
図9に示すように、この実施形態におけるフラップ弁装置10(以下、「弁装置10」という)は、燃料逆流防止弁として用いられるもので、燃料タンクの燃料注入パイプP(以下、「パイプP」という)の下流側に取付けられ、パイプ上流側の給油口からパイプP内に注入された燃料を、パイプPを通して燃料タンク内へと流入させると共に、燃料タンク内に流入した燃料を、パイプ側へ逆流するのを防止する役割を果たすものである。以下の説明中、「上流側」及び「下流側」とは燃料の流れる方向を示し、具体的にはパイプPにおいて弁装置10が設けられた側を下流側とし、パイプPの給油口が接続される側(弁装置10とは反対側)を上流側として説明する。
【0019】
図1に示すように、この実施形態における弁装置10は、内部が液体の流路をなす筒状の本体部20と、この本体部20の一端開口部21に開閉可能に取付けられるフラップ状の弁体40と、この弁体40を常時は本体部20の一端開口部21に向けて閉じる方向に付勢するバネ部材60とを備えている。
【0020】
また、この実施形態における本体部20は、前記パイプPの下流側開口に、タンク取付部材70を介して取付けられるようになっている。図1,9に示すように、このタンク取付部材70は、その下流側の端部が本体部20の上流側開口部に挿入される本体接続管71をなし、上流側の端部が前記パイプP(図9参照)の下流側開口部に挿入されるパイプ接続管73をなし、更に軸方向途中に燃料タンクTの取付孔Ta周縁に溶着により固着される環状のフランジ75が形成されている。
【0021】
なお、この実施形態の本体部20は、上記タンク取付部材70を介してパイプPの下流側に取付けられるようになっているが、パイプP自体を本発明に係る本体部とし、その下流側開口部(この場合、本発明の一端開口部をなす)に弁体40を直接取付けてもよい。
【0022】
本体部20の説明に戻ると、この本体部20は、上流側及び下流側が共に開口した略円筒状に形成され、下流側開口部が一端開口部21をなし、弁体40が取付けられる部分とされ、同一端開口部21外周の周壁先端が、弁体40が接離する弁座22をなしている。また、本体部20の上流側端部はやや拡径すると共に、その内周に前記タンク取付部材70の本体接続管71が嵌合する段部23が形成されている(図9参照)。
【0023】
図1,3,8に示すように、本体部20の側壁24の周方向所定箇所には、所定間隔を設けて平行に配置された一対の取付アーム25A,25Bと、両取付アーム25A,25Bの間に配置されたバネ取付部35とが、一端開口部21側に向けて延設されている。
【0024】
各取付アーム25A,25Bは、側壁24から外径方向に向けて所定高さで立設する基部26と、同基部26から一端開口部21側に向けて伸びて、同一端開口部21から所定長さ突出した先端部27と、該先端部27に形成され、本体部20の軸方向に沿って所定長さで伸びる長孔状のピン挿入孔28とを有している。
【0025】
この実施形態におけるピン挿入孔28,28は、先端部27の下半部(本体部20の側壁24に近接した部分)にそれぞれ設けられており、両ピン挿入孔28,28は、本体部20の軸方向及び外径方向に整合して配置されている。そして、長孔状のピン挿入孔28,28には、後述する弁体40の各ピン43A,43Bがそれぞれ挿入されて、同ピン43A,43Bを軸方向にスライド可能に保持すると共に回動支持する部分となっている(図8参照)。
【0026】
また、図7に示すように、一対の取付アーム25A,25Bの、各ピン挿入孔28周囲の外側面どうしの間隔Aは、後述する弁体40の一対の回動アーム41,41の内側面どうしの間隔B1よりも狭く、該弁体40の一対のピン43A,43Bの先端面どうしの間隔B2よりも広くなるように形成されている(B2<A<B1の関係)。
【0027】
そして、この弁装置10においては、図3〜7に示すように、一方の取付アーム25Bのピン挿入孔28に一方のピン43Bを挿入した状態で、他方の取付アーム25Aに、他方のピン43Aを仮置きするピン当接部30と、このピン当接部30から対応するピン挿入孔28へとピン43Aをスライドガイドする傾斜面からなるガイド部31とが形成されている。すなわち、上記状態で、他方のピン43Aを、ピン当接部30からガイド部31を経て、対応するピン挿入孔28に挿入できるようにするためである。
【0028】
図3を併せて参照すると、ピン43Aを仮置きするピン当接部30は、対応する取付アーム25Aのピン挿入孔28に対して、本体部20の半径方向外方であって、かつ、本体部20の軸方向にずれた位置(この実施形態の場合は本体部20の一端開口部21側にずれた位置)に配置されている。この実施例では、取付アーム25Aの先端部27がL字状に切り欠かれて、ピン当接部30をなしている。
【0029】
このピン当接部30と前記ピン挿入孔28との間に、ピン43Aをピン挿入孔28に至るまでガイドするガイド部31が設けられている。このガイド部31は、ピン挿入孔28に対して、ピン当接部30から本体部20の軸方向に整合する位置まで移動する際に通過する第1傾斜面32と、該軸方向に整合する位置から、ピン挿入孔28に至る第2傾斜面33とで構成されている。第1傾斜面32は、第2傾斜面33に向けた軸方向に沿って次第に高さが高くなる傾斜面をなし、第2傾斜面33は、取付けアーム25Aの基部側に向けて次第に高さが高くなる傾斜面をなしている。そして、第2傾斜面33を上りきったところに、ピン挿入孔28の開口部が位置している。
【0030】
また、取付アーム25Aの外側面であって、前記ピン挿入孔28の長手方向両側の外側縁には、突条をなした一対の乗り越え防止リブ34,34が本体部20の外径方向に沿って伸びている。この乗り越え防止リブ34,34は、ピン43Bを取付アーム25Bのピン挿入孔28に挿入し、ピン43Aを取付アーム25Aのピン挿入孔28に挿入すべく、ピン43Aをガイド部31でガイドしつつ移動させていくときに、ピン43Aがガイド部31をから外れないように保持して、ピン挿入孔28へピン43Aを確実に導く役割をなしている。
【0031】
図3,7に示すように、取付アーム25A,25Bの間に設けられ、バネ部材60を支持するバネ取付部35は、この実施形態では、各取付アーム25A,25Bに対して平行に且つ取付アーム25B側に偏心した位置に配置されている。このバネ取付部35は、本体部20の側壁24から外径方向に立設された基部37と、この基部37から本体部20の軸心に対して平行に且つ一端開口部21側に向けて直線状に伸び、取付アーム25A,25Bの先端よりも長く突出した支持アーム36とを有している。
【0032】
この支持アーム36の先端の、取付アーム25A側の側面からは、同取付アーム25A向けて所定長さでバネ支軸36aが突設しており、後述するバネ部材60のコイル部61を支持する部分となっている。このバネ支軸36aの先端には、半円形状のバネ抜け止め片36bが、本体部20に近接する方向に偏心して設けられており、バネ部材60のコイル部61をバネ支軸36aから抜けにくくしている。
【0033】
また、支持アーム36の基端の取付アーム25A側には、基部37の突出部との間に、バネ保持溝37aが設けられている。そして、図4に示すように、バネ部材60の一方の脚部62が、バネ保持溝37aに挿入され、抜け外れが防止されるようになっている。なお、図4は弁体40の一部と一方の回動アーム41のピン43A以外の部分を切り欠いて示す斜視図である。
【0034】
一方、フラップ状の弁体40は、本体部20の一端開口部21に適合する形状、この実施形態では一端開口部21よりもやや拡径した円板状をなしている。この弁体40の下流側の表面側(タンク内方に向いた面側)には、その上部から外径方向に突出すると共に、弁体40の軸方向に沿って伸びる一対の回動アーム41,41と、これらの回動アーム41,41の間に配置された角度規制部44とが、それぞれ平行に配置されている。
【0035】
前記一対の回動アーム41,41の延出方向先端部からは、前記各取付アーム25A,25Bのピン挿入孔28,28にそれぞれ挿入される、円柱状をなした一対のピン43A,43Bが互いに向き合う方向に突設されている。
【0036】
また、前記角度規制部44は、各回動アーム25A,25Bよりも長く延出し、その先端が斜めに切り欠かれていて、弁体40を本体部20の一端開口部21に対して最大限開いたときに、本体部20の側壁24の外周面に当接し、弁体40がそれ以上開くことを規制して、最大開き角度を規定する部分となっている。
【0037】
図2、4,5に示すように、上記角度規制部44に関連して、取付アーム25Aのピン挿入孔28に挿入されるピン43Aの先端部には、弁体40を前記角度規制部44によって規制された最大開き角度にした状態で、前記ガイド部31のピン挿入孔28に至る直前の傾斜面(ここでは、第2傾斜面33)に沿う傾斜面45が形成されている。
【0038】
また、図4に示すように、弁体40の表面側(タンク内方に向いた面側)の中央には、バネ部材60の他方の脚部62の先端を係止するための、バネ係止突部40aが突設されている。このバネ係止突部40aの両側には、他方の脚部62の位置ずれを防止するために、一対のリブ40b,40bが突出している。そして、バネ部材60は、前述したバネ保持溝37aに挿入保持された一方の脚部62と、上記ばね係止突部40aに係止された他方の脚部62とにより、弁体40が本体部20の一端開口部21を常時閉じるように付勢するようになっている。
【0039】
なお、弁体40は、取付アーム25A,25Bの長孔状のピン挿入孔28,28にスライド可能に支持されているため、後述する弁体40に装着されたゴム等よりなるシールフランジ50が膨潤して、このシールフランジ50の弁座22に対するシール位置が変動しても、それに対応して弁体40を軸方向に適宜スライドさせることができるため(図8参照)、弁体40のシール性能を維持できるようになっている。更に、上述したように、バネ部材60の他方の脚部62によって、弁体40の中央部が押圧されるようになっているため、スライド支持された弁体40を、本体部20の径方向に位置ずれすることなく、軸方向に沿って押圧することができ、弁座22に対する弁体40のシール性能をより確実に維持することが可能となる。
【0040】
また、図1,9に示すように、弁体40の裏面側には、本体部20の一端開口部21とのシール性を高めるために、ゴム、エラストマー等からなるシールフランジ50が配設されている。このシールフランジ50の裏面側には、更に固定部材52が配置されており、同固定部材52から突設した一対の係合爪52a,52aを、シールフランジ50の挿通孔50a,50aを通して、弁体40のバネ係止突部40aの両側に設けられた係合孔40c,40cにそれぞれ係合させることにより、弁体40及び固定部材52の間に、シールフランジ50が挟み込まれて固定されるようになっている(図9参照)。同図9に示すように、このシールフランジ50の外周縁が弁座22に当接して、本体部20の一端開口部21が閉じた状態にシールされるようになっている。
【0041】
なお、上記弁装置10を構成する本体部20及び弁体40は、耐燃料透過性で剛性が比較的高いポリアセタールやポリアミド等の合成樹脂を用いることができる他、コストが低く、剛性も比較的小さいポリエチレン等の合成樹脂も用いることができる。
【0042】
次に、上記構成からなる本発明の弁装置10の組付け手順及び作用効果について説明する。
【0043】
まず、本体部20のバネ取付部35のバネ支軸36aに、バネ部材60のコイル部61を外装して、その一方の脚部62を本体部20のバネ保持溝37aに挿入支持させる(図4参照)。
【0044】
その後、本体部20の一方の取付アーム25Bのピン挿入孔28に、対応する回動アーム41のピン43Bを挿入すると共に、他方の取付アーム25Aのピン当接部30に、対応する回動アーム41のピン43Aを仮置きする(図4参照)。このとき、バネ部材60の他方の脚部62を、その弾性力に抗して変形させて弁体40の表面側に配置し、弁体40中央のバネ係止突部40aに係止させる。
【0045】
そして、弁体40の角度規制部44が側壁24の外周面に当接するまで、一端開口部21を開く方向に弁体40を回動させて(図4参照)、ピン43Aの先端部に設けられた傾斜面45の傾斜角度を、取付アーム25Aの第2傾斜面33の傾斜角度に適合させる(図4,7参照)。
【0046】
その状態で、図5に示すように、ピン43Aを上流側に向かって押し込んで、第1傾斜面32を通過させて第2傾斜面33へと乗り上げさせ、乗り越え防止リブ34に突き当たるまでスライドさせる。なお、図5は、図4と同様に、弁体40の一部と一方の回動アーム41のピン43A以外の部分を切り欠いて示す斜視図である。このとき、ピン43A側の回動アーム41が各傾斜面32,33に押圧されて、ピン43B側の回動アーム41に対して若干開くようになっている。
【0047】
その後、ピン43Aをピン挿入孔28側へ向かって押し込むと、第2傾斜面33上をピン43Aがスライド移動し、ピン43Aが第2傾斜面33の頂部を乗り越えてピン挿入孔28に至ると、図6に示すように、押し広げられたピン43A側の回動アーム41が弾性復帰すると共に、ピン挿入孔28にピン43Aが挿入される。なお、図6は、図4、5と同様に、弁体40の一部と一方の回動アーム41のピン43A以外の部分を切り欠いて示す斜視図である。
【0048】
このとき、ピン43Aの先端部には、弁体40を角度規制部44により最大開き角度にした状態で、ガイド部31のピン挿入孔28に至る直前の傾斜面、すなわち、第2傾斜面33に沿うように、傾斜面45が形成されているので、ピン43Aの挿入をより無理なくスムーズに行うことができる。
【0049】
このように、この実施形態では、ピン43Aを一旦、第1傾斜面32に沿って本体部20の軸方向に整合する位置まで移動させ、次いで第2傾斜面33に沿ってピン挿入孔28まで移動させることにより、ピン43Aの挿入が無理なくなされると共に、ピン当接部30とピン挿入孔28との位置をできるだけ近づけて、なおかつ、ガイド部31の傾斜面によるピン43Aのスライド移動工程をできるだけ長くとって、ピン43Aに過大な負荷を作用させることなく無理のない挿入を行うことができる。
【0050】
こうして、一対のピン43A,43Bが、対応するピン挿入孔28,28にそれぞれ挿入される。このとき、図7に示すように、一対の取付アーム25A,25Bの各ピン挿入孔28周囲の外側面どうしの間隔Aは、一対の回動アーム41,41の内側面どうしの間隔B1よりも狭く、一対のピン43,43の先端面どうしの間隔B2よりも広くなるように形成されているので、ピン43A,43Bがピン挿入孔28,28に抜け止めされた状態で、弁体40を回動可能に装着することができる。
【0051】
以上のように、この実施形態に係る弁装置10においては、取付アーム25Bのピン挿入孔28にピン43Bを挿入した状態で、取付アーム25Aのピン当接部30に、ピン43Aを一旦仮置きした後、同ピン43Aを、第1傾斜面32及び第2傾斜面33よりなるガイド部31でガイドしつつ、回動アーム41,41を開きながら対応するピン挿入孔28に挿入するようになっている。それによって、一対のピン43A,43Bに過度の負荷が作用することを抑制して、無理なく適度な力で対応するピン挿入孔28,28にそれぞれ挿入することができるので、一対のピン43A,43Bの破損や変形等を確実に防止することができる。
【0052】
また、上記特許文献1のように、一対のピン43A,43Bを正確に位置決めする必要がなく、ピン43Bを取付アーム25Bのピン挿入孔28に挿入した後、ピン43Aを取付アーム25Aのピン当接部30に仮置きして、ガイド部31を介してピン挿入孔28に挿入するだけの簡単な操作で、一対のピン43A,43Bを対応するピン挿入孔にスムーズに挿入することができ、弁体40の取付作業性を向上することができる。
【0053】
更に、一対のピン43A,43Bは、上記特許文献1のようなスロットに回動支持させるものではなく、取付アーム25A,25Bの対応するピン挿入孔28,28にそれぞれ挿入されるようになっているので、一対のピン43A,43Bを抜け止めした状態でしっかりと保持することができ、弁体40が本体部20の一端開口部21から外れることを確実に防止することができる。
【0054】
また、バネ部材60は、そのコイル部61をバネ取付部35のバネ支軸36aに外装され、バネ抜け止め片36bによって抜け止めされて保持され、その一方の脚部62を本体部20のバネ保持溝37aに挿入支持され(図4参照)、他方の脚部62を弁体40中央のバネ係止突部40aに係止されるので、バネ部材60を外れにくくしてしっかりと保持することができ、弁体40の取付作業性を向上させることができる。
【0055】
図10には、本発明におけるフラップ弁装置の他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0056】
この実施形態に係るフラップ弁装置10a(以下、「弁装置10a」)は、前記実施形態と比べて、ピン43Aを仮置きするピン当接部、及び、同ピン43Aをピン挿入孔28までガイドするガイド部の形状や位置が異なっている。
【0057】
図10に示すように、この弁装置10aは、本体部20から延出された一対の取付アーム25A,25Bのうち、一方の取付アーム25Aの外側面に、凹溝状のピン当接部30が形成されている。このピン当接部30は、取付アーム25Aの上端から前記ピン挿入孔28と同じ高さに至る長さで、一定深さで形成されている。更に、このピン当接部30とピン挿入孔28との間に、ピン当接部30の底面から取付アーム25Aの外面に向けて次第に高さが高くなる傾斜面が形成されており、これがピン43Aをスライドガイドするガイド部31をなしている。また、取付アーム25Aに形成されたピン挿入孔28の基部側の上下両側縁には、一対の乗り越え防止リブ34,34が突設されている。
【0058】
そして、バネ支軸36aにバネ部材60のコイル部61を外装して、一方の脚部62を本体部20のバネ支持部38に当接支持させた後、一方の取付アーム25Bのピン挿入孔28に対応するピン43Bを挿入すると共に、他方の取付アーム25Aの凹溝状のピン当接部30に対応するピン43Aを差し込んで、ピン43Aを仮置きする。その状態で、弁体40を回動させて、角度規制部44によりピン43Aの傾斜面45の傾斜角度を、取付アーム25Aのガイド部31の傾斜角度に適合させる。
【0059】
その状態で、ピン43Aを一端開口部21へ向けて下流側にスライドさせると、一対の乗り越え防止リブ34,34によりピン43Aの外れが防止されると共に、回動アーム41を押し広げつつ、ピン43Aがガイド部31の傾斜面をスライド移動して、取付アーム25Aのピン挿入孔28に挿入されるようになっている。
【0060】
この実施形態では、ピン当接部30が凹溝状をなしているので、ピン43Aを抜け外れることなく、しっかりと仮置きすることができるという利点が得られる。
【符号の説明】
【0061】
10 フラップ弁装置
10,10a フラップ弁装置(弁装置)
20 本体部
21 一端開口部
25A,25B 取付アーム
28 ピン挿入孔
30 ピン当接部
31 ガイド部
32 第1傾斜面
33 第2傾斜面
35 バネ取付部
40 弁体
41 回動アーム
43 角度規制部
43A,43B ピン
44 角度規制部
45 傾斜面
60 バネ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が液体の流路をなす筒状の本体部と、この本体部の一端開口部に開閉可能に取付けられるフラップ状の弁体と、この弁体を常時は本体部の前記一端開口部に向けて閉じる方向に付勢するバネ部材とを備えたフラップ弁装置において、
前記本体部は、その側壁から延出されて前記一端開口部側に突出する一対の取付アームと、前記バネ部材を支持するバネ取付部とを有し、
前記弁体は、外方に向けてほぼ平行に伸びる一対の回動アームと、この一対の回動アームの先端部から互いに向き合う方向に突出された一対のピンとを有し、
前記一対の取付アームは、前記ピンが挿入されるピン挿入孔をそれぞれ有し、前記一対の取付アームのうちの一方の取付アームには、他方の取付アームのピン挿入孔に一方のピンを挿入した状態で、他方のピンを仮置きするピン当接部と、このピン当接部から対応するピン挿入孔に至る傾斜面からなるガイド部とを有しており、
前記一対の取付アームの前記ピン挿入孔周囲の外側面どうしの間隔は、前記一対の回動アームの内側面どうしの間隔よりも狭く、前記一対のピンの先端面どうしの間隔よりも広くなるように形成されていることを特徴とするフラップ弁装置。
【請求項2】
前記ピン当接部は、前記一方の取付アームのピン挿入孔に対して、前記本体部の半径方向外方であって、かつ、前記本体部の軸方向にずれた位置に配置されており、前記ガイド部は、前記ピン挿入孔に対して、前記ピン当接部から前記本体部の軸方向に整合する位置まで移動する際に通過する第1傾斜面と、該軸方向に整合する位置から、前記ピン挿入孔に至る第2傾斜面とで構成されている請求項1記載のフラップ弁装置。
【請求項3】
前記弁体には、該弁体の最大開き角度を規制する角度規制部が設けられており、前記ピンを前記ガイド部に沿って前記ピン挿入孔に挿入する際、前記弁体を前記角度規制部によって規制された最大開き角度にした状態で、前記ガイド部の前記ピン挿入孔に至る直前の傾斜面に沿うように、前記ピンの先端部に傾斜面が形成されている請求項1又は2記載のフラップ弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−11693(P2011−11693A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159308(P2009−159308)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】