説明

フランジウェー幅測定定規

【課題】簡易な形状で必要な精度の測定値が簡単に得られることで測定値のばらつきをなくし、小型で携帯性に優れるフランジウェー幅測定定規を提供する。
【解決手段】フランジウェー幅測定定規1bは、楕円の短軸方向の半径と長軸方向の半径とこの楕円の弧とに囲まれた楕円扇形の板状の定規本体10bと、この定規本体10bの上面11に設けた目盛20bとによって構成される。さらに目盛20bが付されている楕円弧部分を頂上として楕円弧側の側面13bの各頂上間を凹ませたことを特徴とする。定規本体10bの支点12bを一方のレールの側面のフランジウェー幅を測定する位置へ当接させる。次に、支点12bを軸に定規本体10bを楕円の短軸半径側に回転させ、楕円弧側の側面13bの頂点部131bを他方のレールの側面に当接させる。当接した位置に付されている目盛20bが示す値がレール同士の間隔である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の分岐器においてフランジウェー幅を測定するための測定定規に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道の分岐器における脱線や異線進入の危険性の有無を判断するために、フランジウェー幅の測定が行われている。フランジウェー幅とは、図1に示すような分岐器50における主レール51とガードレール52との間隔(a1)およびクロッシング部60部分のウイングレール61とノーズレール62との間隔(a2)のことである。このフランジウェー幅が小さ過ぎるとレールや車輪に過大な衝撃が加わってレールや車輪が損傷したり、車輪がレールに乗り上がって脱線したりする危険性がある。また、フランジウェー幅が大きすぎるとクロッシング部60で異線進入が起こる危険性がある。そのため、定期的にフランジウェー幅を測定し、この測定値が適切な範囲内ではない場合、適宜補修を行う必要がある。なお、フランジウェー幅の適正な範囲の下限値は38mmで、上限値は一般的な分岐器では50mmである。その他、上限値が47mmや52mmになる分岐器もあるが、以下の記載においてこれら上限値を説明の便宜上「50mm程度」と表記することがある。
【0003】
従来、フランジウェー幅の測定には、物差し、巻尺、さしがね、ノギスといった周知の測定定規が用いられていた。また、特許文献1では、縦横にスライド可能な縦尺を有するフランジウェー幅測定装置を備えたポイント先端部安全度判定定規に関する技術が開示されており、このような装置によってフランジウェー幅を測定することも可能である。
【特許文献1】実用新案登録第2532064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分岐器での検査では、検査の適否を判定するための測定値はミリメートル単位で測定されている。そして、安全限度に対して5mmの余裕を持たせた範囲を適正な範囲として検査の適否を判定している。
【0005】
しかしながら、物差し、巻尺、さしがね、ノギスといった測定定規を用いてフランジウェー幅を測定する場合、測定器具や測定方法に由来する誤差のために、測定者毎によって測定値のばらつきが2〜3mm程度ある。このような状況で、例えば、フランジウェー幅の測定値が適正な範囲の限界値近くであり、且つ測定値の誤差が危険側にあった場合、実際のフランジウェー幅は、安全限度に対する余裕が少ないことになり、適切な補修時期を逸するおそれがある。
【0006】
物差し、巻尺、さしがね、ノギスといった測定定規を用いたフランジウェー幅の測定値に、上述のようなばらつきを生じるのには、以下に説明するような原因がある。
フランジウェー幅の測定は、レールの頭頂面から下へ14mm以内の範囲で幅が最小となる位置を測定位置としている。しかし、物差し、巻尺、さしがね、ノギスといった測定定規を用いた測定方法においては、レールの頭頂面から下へ14mmの位置を測定者が目測によって判断していた。例えば、物差しや巻尺でフランジウェー幅a1を測定する際、図2(a)の分岐器50の平面図におけるa−a断面図(図2(b))に示すように、物差しの側面を主レール51の頭頂面にあてがい、物差しの端部をガードレール52に当接させた状態から、主レール51の頭頂面から下へ14mm以内の範囲でレール間の幅が最小となる位置を目測によって判断することで測定する。このような測定方法では、測定位置自体を目測によって判断していることで誤差が生じ易いだけでなく、物差しをあてている位置と測定位置とが離れているために、目盛を読み取る際の視線の位置によっては誤差を生じ易くなる。
【0007】
同じく、物差しや巻尺でフランジウェー幅a2を測定する際、図2(c)の分岐器50のb−b断面図に示すように、ウイングレール61とノーズレール62とではレールの高さが違うため、物差しの側面をウイングレールの頭頂面にあてがい、物差しの端部をノーズレール62に当接させた場合、物差しをあてている位置と測定位置とが離れているだけでなく、測定位置に対して物差しを斜めにあてているために、目盛を読み取る際に誤差を生じ易くなる。
【0008】
また、ノギスを用いてフランジウェー幅を測定する場合、ノギスの嘴をレールの頭頂面から下へ14mmの位置に合わせる際に、目測によってこの位置を判断していたために誤差を生じ易い。
【0009】
上述のように、物差し、巻尺、さしがね、ノギスといった一般的な測定定規を用いてフランジウェー幅を測定する際、測定者による目測が必要であるために誤差を生じ易いことが測定者毎によって測定値にばらつきを生じる原因となっている。また、測定者によって使用する定規が様々であり測定方法に統一性がないことや、図2(b),(c)に示すようにレールの断面形状が一様ではないために測定場所によっては誤差が大きくなること等も測定値にばらつきを生じる原因となっている。
【0010】
一方、さしがねの一辺やノギスの嘴の長さを14mmに加工した上で、レールの頭頂面にこれらの定規をあてがってフランジウェー幅を測定する方法も考えられる。しかし、このような測定方法では、レールの頭頂面が磨耗して傾斜していたり変形していたりする場合、レールの頭頂面にあてがった定規が傾斜してしまうため、さしがねの一辺やノギスの嘴がレールの頭頂面から14mmの位置からずれることによって誤差を生じてしまう。
【0011】
また、特許文献1に記載のフランジウェー幅測定装置では、装置自体が大きいために携帯性が悪く、フランジウェー幅測定の際の手順が複雑であり測定に手間がかかる。
本発明は、上述のような問題を鑑みなされており、簡易な形状で必要な精度の測定値が簡単に得られることで測定値のばらつきをなくし、小型で携帯性に優れるフランジウェー幅測定定規を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述のような課題を解決するためになされた請求項1に記載のフランジウェー幅測定定規は、楕円の短軸方向の半径と長軸方向の半径とこの楕円の弧とに囲まれた楕円扇形の板状の定規本体と、定規本体の上面に設けた目盛とを有するフランジウェー幅測定定規であって、短軸方向の半径の長さは測定下限値であり、且つ、長軸方向の半径の長さは測定上限値であり、目盛は、定規本体の上面の楕円弧上の所定の点に付されており、且つ、この所定の点における楕円の接線と楕円の中心との距離を示すことを特徴とする。なお、ここでいう「半径」とは、半径の線分のことを示し、長さを示すときは「半径の長さ」と表す。また、定規本体の上面とは、定規本体の一方の楕円扇形の面を指す。さらに、上面に対して厚さ方向の面を側面と定義する。
【0013】
このような構成のフランジウェー幅測定定規によれば、平行な2つの平面の間隔を簡単に測定することが可能であり、その測定方法は以下の通りである。
まず、定規本体を2つの平面間に挿入し、定規本体の短軸半径側の側面と長軸半径側の側面とが形成する角の辺(以下、支点と称する)を一の平面の内側に当接させる。このとき、定規本体の上面は2つの平面に対して垂直になっている。次に、当接させた支点を軸にして、定規本体の楕円弧側の側面が他の平面に接するまで定規本体を楕円の周方向の短軸半径側に回転させる。楕円弧側の側面と他の平面との接点に付された目盛は、この接点における接線と楕円の中心との距離を示しており、言い換えれば一の平面に当接させた支点と他の平面との距離、即ち、一の平面と他の平面との間隔を表している。
【0014】
このような測定方法によってフランジウェー幅を測定すれば、フランジウェー幅の測定位置におけるレールの側面に支点を当接させることで、測定位置に直接定規をあてて測定をすることができる。従って、レールとの接点に表示されている目盛を読めばそのままフランジウェー幅を得ることができるので、読み取りに目測を必要とせず、簡単且つ正確にフランジウェー幅を測定することができる。
【0015】
また、フランジウェー幅の適正範囲の下限値および上限値を本発明のフランジウェー幅測定定規における測定下限値および測定上限値として、それぞれ楕円の短軸方向の半径の長さおよび長軸方向の半径の長さとすることで、フランジウェー幅が適正な範囲でない状況を容易に判断できるので便利である。具体的には、レール同士の間隔が測定下限値より狭い(即ち、楕円の短軸方向の半径の長さより狭い)場合、レールの間に定規本体を挿入して支点をレールの側面に当接させることができないため、このような場合はフランジウェー幅が適正な範囲ではないと判断できる。逆に、レール同士の間隔が測定上限値より広い(即ち、楕円の長軸方向の半径の長さより広い)場合、一方のレールの側面に当接させた支点を軸に定規本体を回転させても、定規本体の楕円弧側の側面と他方のレールの側面とが接しないため、このような場合もフランジウェー幅が適正な範囲ではないと判断できる。
【0016】
また、フランジウェー幅の適正な範囲が38mm〜50mm程度であるので、定規本体における楕円の短軸方向の半径の長さが38mm、長軸方向の半径の長さが50mm程度となり、定規本体が小さく、携帯が簡便である。
【0017】
なお、測定対象において必要とされる測定値の範囲に応じて定規本体における楕円の短軸方向の半径の長さおよび長軸方向の半径の長さを適宜決めることで、様々な測定対象毎に適した測定値の範囲を有するフランジウェー幅測定定規を提供することができる。
【0018】
さらに、請求項2に記載のフランジウェー幅測定定規のように、定規本体の厚みが、レールの測定基準位置からのフランジウェー幅を測定すべき範囲の高さと同じであるように構成するとよい。例えば、フランジウェー幅の測定において、レールの頭頂面から下へ14mm以内の範囲で幅が最小となる位置を測定位置としているならば、この14mmの範囲を本発明におけるレールの測定基準位置(即ち、レールの頭頂面)からのフランジウェー幅を測定すべき範囲の高さとして、定規本体の厚みをこのフランジウェー幅を測定すべき範囲の高さと同じ14mmとすればよい。
【0019】
定規本体の厚みをレールの測定基準位置からのフランジウェー幅を測定すべき範囲の高さと同じにしたフランジウェー幅測定定規を用いて、定規本体の上面の高さを測定基準位置であるレールの頭頂面の高さにあわせてレールの間隔を測定すると、フランジウェー幅を測定すべき範囲内で幅が最小となる位置で定規本体の楕円弧側の側面がレールの側面に当接する。そして、レールの側面に当接した部分に表示されている目盛を読むことによってフランジウェー幅を簡単に測定することができる。
【0020】
このように、定規本体の厚みを利用することによってフランジウェー幅の測定位置を目測によって判断することなく測定することができる。従って、フランジウェー幅の測定を目測に頼らないで容易に且つ誤差を少なく行うことができる。また、測定対象において必要とされる測定基準位置に応じて定規本体の厚みを適宜決めることで、様々な測定対象毎の測定基準位置における測定に適したフランジウェー幅測定定規を提供することができる。
【0021】
一方、レールの頭頂面と側面との角の端部付近は曲面になっているため、請求項2に記載のフランジウェー幅測定定規の定規本体の上面の高さをレールの頭頂面の高さに合わせる際、この曲面部分の影響によって高さを合わせにくくなることが考えられる。
【0022】
そこで、請求項3に記載のフランジウェー幅測定定規のように、定規本体の側方へ延出するように上面に沿ってスライド可能に定規本体に支持されてレールの測定基準位置に当接させることで定規本体の上面の高さをレールの測定基準位置の高さに合わせるための基準板を有するように構成するとよい。この基準板を定規本体に沿ってスライドさせて定規本体の側方へ延出させ、これをレールの頭頂面に当接させることで、レールの曲面部分に影響されることなくレールの頭頂面の高さに定規本体の上面の高さを合わせることができるので、簡単で且つ使い勝手がよい。この基準板の大きさについては、支点をレールの側面に当接させたときに定規本体の上面の高さをレールの頭頂面の高さに合わせた状態で定規本体が安定する程度にレールの頭頂面に当接できる長さおよび幅を有するものが望ましい。また、このような大きさを有する基準板であって、形状が定規本体上面の楕円扇形と略相似形で定規本体の上面よりやや小さいものであれば、基準板を使用しないときには定規本体の上面に重ねてコンパクトに収納しておくことができる。そして、基準板を使用するときにこれをスライドさせて定規本体の側方へ延出させるようにすれば、使い勝手がよいだけでなく携帯性にも優れるフランジウェー幅測定定規を提供できる。
【0023】
また、請求項4に記載のフランジウェー幅測定定規のように、目盛は、当該目盛が付されている楕円弧上の点における接線に対して垂直な直線であるように構成することで、定規本体の楕円弧側の側面がレールの側面に当接したとき、その当接した部分に付されている目盛がレールに対して垂直に位置するので、測定者にとって目盛を認識しやすくなり便利である。なお、測定者の目視によって目盛を読み取ることを考慮すれば、目盛の長さは許容される範囲内において長い方が視認性がよく、より測定しやすい。
【0024】
ところで、本発明のフランジウェー幅測定定規の目盛は、測定に必要な精度(例えば、ミリメートル単位等)で測定値が得られるような間隔で付されることが好ましいが、測定の際、定規本体の目盛が付されている位置と位置との間でレールの側面と当接する場合も考えられる。このような場合、レールの側面と当接している位置の両側にある目盛から目測で目盛が示す数値の一桁下の位まで数値を読み取り、適宜四捨五入する等して適当な近似値で測定値を得る必要がある。しかしながら、本発明のフランジウェー幅測定定規においては、所定の単位長毎に測定値が得られるように目盛が付してある場合、これらの目盛は楕円弧に沿って表示されているために目盛同士の間隔が一様ではない。そのため、目測によって目盛が示す数値の一桁下の位まで数値を読み取ることが難しい場合も考えられる。
【0025】
そこで、請求項5に記載のフランジウェー幅測定定規のように、目盛は、楕円の接線と楕円の中心との距離を、測定に要求される精度における近似値として示し、且つ楕円の接線と楕円の中心との距離がこの近似値に対応する真値の範囲で最大となる位置の楕円弧上の点に付されており、さらに定規本体の楕円弧側の側面において、目盛が付されている楕円弧部分を頂上として楕円弧側の側面の各頂上間を凹ませるように構成するとよい。
【0026】
請求項5に記載のフランジウェー幅測定定規のように、定規本体の楕円弧側の側面において、目盛が表示の対象とする楕円弧部分を頂上として楕円弧側の側面の各頂上間を凹ませたことによって、測定の際、楕円弧側の側面の目盛が付してある頂上部分でのみレールの側面に当接する。従って、頂点部分以外の目盛が付されていない部分でレールと当接することがなくなるので測定値を読み取り易くすることができる。
【0027】
さらに、目盛が、楕円の接線と楕円の中心との距離がこの目盛の表示する近似値に対応する真値の範囲で最大となる位置の楕円弧上の点に対して設けられていることで、レールの側面と当接した位置に付されている目盛が表示する数値がそのまま測定に必要な精度における近似値として得られるので便利である。具体例として、測定に必要な精度における値が整数値であり、小数点第一位の値が5以下の場合は切り捨て、5より大きい場合を切り上げて近似値を得るような場合を想定してみる。このような場合、数値n(n:自然数)を表示する目盛を、楕円の接線と楕円の中心との実際の距離がn+0.5となる位置に対して設けることで、数値nを表示する目盛の位置でレールの側面に当接するのはレールの間隔がn−0.5より大きくn+0.5以下の場合となり、実際のレールの間隔の小数点以下の値を近似させた整数の測定値を読み取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[測定原理]
まず、本発明のフランジウェー幅測定定規の測定原理を図3に基づいて説明する。
【0029】
ここでは、中心が原点0,x軸方向の半径の長さがa,y軸方向の半径の長さがbである楕円を想定する。この楕円を示す方程式は下記の数式(1)で表される。
【0030】
【数1】

そして、この楕円上の点(x0,y0)における接線の方程式は下記の数式(2)で表される。
【0031】
【数2】

ここで、数2で示される接線と原点0(即ち、楕円の中心)との距離dは下記の数式(3)で表される。
【0032】
【数3】

このように、楕円の短軸方向および長軸方向の半径長さと接点の座標が分かれば、上記の数式(3)から楕円の中心と直線(あるいは平面)との距離を求めることができる。そこで、本発明のフランジウェー幅測定定規は、楕円上の点(x0,y0)における接線と楕円の中心0との距離dを示す目盛を楕円弧上の点(x0,y0)に付すことで、楕円の中心と直線(あるいは平面)の距離を測定できるように構成されている。即ち、楕円の中心を一方のレールの側面に当接させ、楕円の弧を他方のレールの側面に当接させると、レールの側面と楕円の弧との接点に付されている目盛がレール同士の間隔を示していることになり、上述のような原理を用いてフランジウェー幅の測定をすることができるのである。
【0033】
[第1実施形態]
図4は第1の実施形態のフランジウェー幅測定定規1の構成を示す斜視図である。なお、第1の実施形態においては、フランジウェー幅の適正な範囲の下限値が38mmで上限値が50mmである一般的な分岐器を測定対象として想定している(以下、第2,第3の実施形態についても同様)。
【0034】
第1の実施形態のフランジウェー幅測定定規1は、楕円の短軸方向の半径と長軸方向の半径とこの楕円の弧とに囲まれた楕円扇形の板状の定規本体10と、この定規本体10の上面11に設けた目盛20とによって構成されている。なお、測定の際には定規本体10の楕円扇形の面の一方を上に向けて測定するのでこの面を上面11と定義しているが、図4においては、フランジウェー幅測定定規1の構造の説明をする便宜上、定規本体10を立てた状態を示しているので「上面」が示す向きに注意されたい。
【0035】
定規本体10の楕円扇形の上面11は、短軸方向の半径の長さが38mmで、長軸方向の半径の長さが50mmである。即ち、このフランジウェー幅測定定規1の測定範囲は38〜50mmとなる。これは、フランジウェー幅の適正な範囲が38〜50mmであることに対応している。また、フランジウェー幅の測定ではレールの頭頂面から下へ14mm以内の範囲で幅が最小となる位置を測定位置としていることに対応して、定規本体10の厚みは、このフランジウェー幅を測定すべき範囲の高さと同じ14mmである。
【0036】
なお、定規本体10に用いられる素材は、レールに接触させて使用することを考慮して耐摩耗性に優れるものが望ましい。具体的には、金属やアクリル樹脂のような樹脂等を用いるとよい。
【0037】
支点12は、定規本体10の短軸半径側の側面14と長軸半径側の側面15とがなす角の辺であり、楕円板の中心軸に相当する。この支点12を一方のレールの側面に当接させてフランジウェー幅の測定を行う。
【0038】
目盛20は、定規本体10の上面11の楕円弧上の所定の点に付されており、且つ、この所定の点における楕円の接線と楕円の中心との距離を示している。本実施形態の目盛20は、楕円の短軸方向の半径(長さ38mm)側から順に、39mm,40mm,41mm…といった具合に1mm毎に距離を示すように付されている。また、40mm、45mmといった区切り数値を示す目盛20は他の目盛20よりも長くなっており、視認し易くなっている。あるいは、区切り数値を示す目盛20を視認し易くするために、他の目盛20よりも太く表示してもよい。さらに、目盛20は、目盛20が付されている楕円弧上の点における接線に対して垂直な直線で構成されている。
【0039】
図5は、第1の実施形態のフランジウェー幅測定定規1使用時の説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。なお、図5では、主レール51とガードレール52との間隔を測定する場合を示しているが、図1に示すウイングレール61とノーズレール62との間隔を測定する際も同様の手順による。
【0040】
測定の手順を以下に説明する。まず、図5(a)に示すように、定規本体10の支点12を主レール51の側面のフランジウェー幅を測定する位置へ当接させ、さらに長軸半径側の側面15を主レール51の側面に当接させる。このとき、図5(b)に示すように、測定の際、定規本体10の上面13の高さを主レール51の頭頂面の高さに合わせることで、フランジウェー幅を測定すべき範囲と定規本体10の位置とを容易に一致させることができる。続いて、長軸半径側の側面15を主レール51の側面に当接させた状態から支点12を軸に定規本体10を楕円の短軸半径側に(図5(a)では反時計回り)回転させて、定規本体10の楕円弧側の側面13をガードレール52の側面に当接させる。そして、当接した位置に付されている目盛20が示す値が(図5(a)では39mm)レール同士の間隔である。このとき、39mmを示す目盛20は、ガードレール52に対して垂直になっている。
【0041】
[効果]
第1の実施形態のフランジウェー幅測定定規1によれば、以下のような効果を奏する。
(1)フランジウェー幅の測定位置におけるレールの側面に支点12を当接させることで、測定位置に直接定規本体10をあてて測定をすることができる。従って、レールとの接点に表示されている目盛20を読めばそのままフランジウェー幅を得ることができるので、読み取りに目測を必要とせず、簡単且つ正確にフランジウェー幅を測定することができる。
【0042】
(2)フランジウェー幅の適正範囲の下限値(38mm)および上限値(50mm)を、それぞれ楕円の短軸方向の半径の長さおよび長軸方向の半径の長さとすることで、フランジウェー幅が適正な範囲でない状況を容易に判断できるので便利である。即ち、レール同士の間隔が38mmより狭い場合、レールの間に定規本体10を挿入して支点12をレールの側面に当接させることができないため、このような場合はフランジウェー幅が適正な範囲ではないと判断できる。逆に、レール同士の間隔が50mmより広い場合、一方のレールの側面に当接させた支点12を軸に定規本体10を回転させても、定規本体10の楕円弧側の側面13と他方のレールの側面とが接しないため、このような場合もフランジウェー幅が適正な範囲ではないと判断できる。
【0043】
(3)定規本体10における楕円の短軸方向の半径の長さが38mm、長軸方向の半径の長さが50mmであるため、定規本体10は小さく、携帯が簡便である。
(4)定規本体10の厚みをレールの頭頂面からのフランジウェー幅を測定すべき範囲の高さと同じ14mmにしたことで、定規本体10の上面の高さをレールの頭頂面の高さに合わせることでフランジウェー幅を測定すべき範囲と定規本体10の位置とを容易に一致させることができ、目測によって測定位置を判断することなく簡単で正確に測定をフランジウェー幅の測定を行うことができる。
【0044】
(5)目盛20は、当該目盛20が付されている楕円弧上の点における接線に対して垂直な直線であるように構成されることで、定規本体10の楕円弧側の側面13がレールの側面に当接したとき、その当接した部分に付されている目盛20がレールに対して垂直に位置するので、測定者にとって目盛20を認識しやすくなり便利である。
【0045】
[第2実施形態]
図6は、第2の実施形態のフランジウェー幅測定定規1bの構成を示す斜視図である。
第2の実施形態におけるフランジウェー幅測定定規1bの定規本体10bは、第1の実施形態の定規本体10(図4参照)において、目盛20が付されている楕円弧部分を頂上として楕円弧側の側面13の各頂上間を凹ませた形状であることを特徴とする。また、この定規本体10bの楕円弧側の側面13bの凹み部分は、フランジウェー幅測定時に目盛20bが付されている頂上部131bでのみレールに当接し、頂上部131b同士の間ではレールに当接しないように形成されている。
【0046】
なお、第1の実施形態における定規本体10と同様に、定規本体10bにおける楕円の短軸方向の半径の長さは38mm、長軸方向の半径の長さは50mm、厚みは14mmである。
【0047】
一方、目盛20bは、楕円の接線と楕円の中心との実際の距離が目盛の示す数値よりも0.5mm大きくなる位置の楕円弧上の点に付してある。このようにすることで、例えば、39mmを表示する目盛20bの位置でレールの側面に当接するのはレールの間隔が38.5mmより大きく39.5mm以下の場合となり、実際のレールの間隔の小数点以下の値を適宜近似させた状態の39mmという整数の測定値を目盛20bの表示から直接得ることができる。
【0048】
なお、第1の実施形態における目盛20と同様に、目盛20bは1mm毎に距離を示すように定規本体10bの上面11bに設けられている。さらに、目盛20bは、目盛20bが付されている楕円弧上の点における接線に対して垂直な直線で構成されていることも第1の実施形態における目盛20と同様である。
【0049】
図7は、第2の実施形態のフランジウェー幅測定定規1b使用時の説明図である。
第2の実施形態のフランジウェー幅測定定規1bを用いて先述の第1の実施形態の場合と同様の測定手順で測定を行うと、目盛20bが付してある頂上部131bがガードレール52の側面に当接する。図7では、39mmを示す目盛20b付してある頂上部131bがガードレール52に当接している場合を示している。即ち、この状態においてはレール同士の間隔は38.5mmより大きく39.5mm以下の範囲である。従って、フランジウェー幅の測定に必要なミリメートル単位の精度において、この目盛20bが表示する39mmという値をそのまま測定値とすることができる。
【0050】
なお、定規本体10bの楕円弧側の側面13bは、定規本体10bの短軸側の端部と38mmを示す目盛20bが付してある部分との間を凹ませていない。短軸方向の半径が38mmで38mmを示す目盛20bが38.5mmの位置であるので、この部分でレールの側面と当接した場合は、レール同士の間隔が38.0mm以上38.5mm以下である。即ち、この凹ませていない部分の何れの場所で当接しても、近似した測定値は38mmとなる。従って、敢えて楕円弧側の側面13bの凹ませていない部分を凹ませなくとも、この部分でレールの側面と当接した場合は、38mmと読み取ることができるので実用上問題はない。同様に、定規本体10bの長軸側の端部と49mmを示す目盛20bが付してある部分との間を凹ませていないが、この凹ませていない部分の何れの場所で当接しても、近似した測定値は50mmとなる。従って、敢えて楕円弧側の側面13bのこの凹ませていない部分を凹ませなくとも、この部分でレールの側面と当接した場合は、50mmと読み取ることができる。勿論、楕円弧側の側面13bの短軸側および長軸側の端部と目盛20bが付してある部分との間を凹ませるように構成してもよい。
【0051】
[効果]
第2の実施形態のフランジウェー幅測定定規1bによれば、以下のような効果を奏する。
【0052】
(1)測定の際、頂上部131bでのみレールの側面に当接し、頂上部131b以外の目盛20bが付されていない部分でレールに当接することがなくなるので測定値を読み取り易くすることができる。
【0053】
(2)レールの側面と当接した位置に付されている目盛20bが表示する数値がそのまま測定に必要な精度における近似値として得られるので簡単で便利である。
[第3実施形態]
図8は、第3の実施形態のフランジウェー幅測定定規1cの構成を示す図であり、(a)および(b)は平面図、(c)および(d)は側面図である。
【0054】
第3の実施形態のフランジウェー幅測定定規1cは、第2の実施形態のフランジウェー幅測定定規1bと同じ構成の定規本体10cと、レールの頭頂面に当接させることで定規本体10cの上面の高さをレールの頭頂面の高さに合わせるための基準板30と、ボルト、ナット、座金等からなり、基準板30を定規本体10cの側方へ定規本体10cの上面に沿ってスライド可能に支持する軸部40とで構成されている。
【0055】
基準板30は、定規本体10cの上面と略相似形で定規本体10cの上面よりやや小さい板状の部材である。また、基準板30は、定規本体10cおよび基準板30に設けた孔へ軸部40のボルトを挿通した上で座金等と共にナットで螺合されることで定規本体10cに支持されている(図8(c)参照)。
【0056】
基準板30は、使用しないときには図8(a)に示すように定規本体10cに重ねることで収容することができる。そして、測定の際には図8(b)に示すように、基準板30を軸部40を中心に回転させるようにしてスライドさせることで定規本体10cの側方へ展開する。続いて、図8(d)に示すように、基準板30を主レール51(あるいは図1等に示すウイングレール61)の頭頂面に当接させてこれを基準にすることで定規本体10cの上面の高さをレールの頭頂面の高さに合わせてフランジウェー幅の測定を行う。このように、基準板30を利用することで、レールの頭頂面の端部が丸くなっているような場合でも、容易に定規本体10cの上面の高さをレールの頭頂面の高さに合わせることができる。
【0057】
[効果]
第3の実施形態のフランジウェー幅測定定規1cによれば、以下のような効果を奏する。
【0058】
(1)基準板30を定規本体10cの側方へ延出させ、これをレールの頭頂面に当接させることで、レールの曲面部分に影響されることなくレールの頭頂面の高さに定規本体10cの上面の高さを合わせることができるので、簡単で且つ使い勝手がよい。
【0059】
(2)基準板30を使用しないときには定規本体10cの上面に重ねてコンパクトに収納しておくことができるので携帯性に優れる。
ところで、本発明のフランジウェー幅測定定規は、平行な2つの平面の間隔を測定することを前提としており、2つの平面が平行でない場合や曲面である場合には測定値に誤差を生じる。このような誤差は、測定の際に楕円の中心の位置を楕円の接線に垂直な方向へ投影した位置と接線上の接点の位置とがずれており、2つの平面が平行でなければ定規本体の支点を当接させた位置における平面同士の間隔と、定規本体の楕円弧側の側面が当接した位置における平面同士の間隔とが異なることに由来する。従って、直線状のレールが敷設されている直線分岐器ではこのような誤差は生じないが、曲線分岐器においては、レールが曲線になっているため、レールの曲率に応じて測定誤差が生じるおそれがある。一方、曲線分岐器におけるレールのカーブの半径はおよそ300mである。本実施形態のフランジウェー幅測定定規1,1b,1cの場合、曲面の半径が300mの場合に生じる測定誤差は最大で0.0003mm程度である。しかしながら、フランジウェー幅の測定のおいては、この程度の誤差であれば測定の精度に影響しない。従って、本実施形態のフランジウェー幅測定定規1,1b,1cは直線分岐器におけるフランジウェー幅の測定だけでなく、曲線分岐器におけるフランジウェー幅の測定にも用いることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り様々な態様にて実施することが可能である。
【0061】
例えば、定規本体の大きさに関して、測定対象において必要とされる測定値の範囲に応じて定規本体における楕円の短軸方向の半径の長さおよび長軸方向の半径の長さを適宜決めることで、様々な測定対象毎に適した測定値の範囲を有するフランジウェー幅測定定規を提供することができる。具体的には、上述のようなフランジウェー幅の適正な範囲の上限値が47mmである分岐器や52mmである分岐器においては、本体の上面の楕円扇形の長軸方向の半径の長さを47mmあるいは52mmすることで、それぞれの分岐器における測定に適したフランジウェー幅測定定規を提供できる。
【0062】
なお、例えば、本体の上面の楕円扇形の長軸方向の半径の長さが52mmのフランジウェー幅測定定規であれば、フランジウェー幅の上限値が52mmより小さい47mmや50mmの分岐器おける測定にも使用することができる。ただし、フランジウェー幅測定定規の目盛が示す値がある程度の誤差を含んでいることを考慮すると、フランジウェー幅が上限値を超えていないことをより簡単・精密に検知する必要があれば、各分岐器のフランジウェー幅の上限値を楕円扇形の長軸方向の半径の長さとする専用のフランジウェー幅測定定規を用いて測定することが好ましい。
【0063】
また、定規本体の厚みに関して、測定対象において必要とされる測定基準位置に応じて定規本体の厚みを適宜決めることで、様々な測定対象毎の測定基準位置における測定に適したフランジウェー幅測定定規を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】鉄道の分岐器50の構成を示す図である。
【図2】従来のフランジウェー幅測定方法を示す図であり、(a)は、分岐器50の平面図、(b)は、分岐器50のa−a断面図、(c)は分岐器50のb−b断面図である。
【図3】本発明のフランジウェー幅測定定規の測定原理を示す図である。
【図4】第1の実施形態のフランジウェー幅測定定規1の構成を示す斜視図である。
【図5】第1の実施形態のフランジウェー幅測定定規1使用時の説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図6】第2の実施形態のフランジウェー幅測定定規1bの構成を示す斜視図である。
【図7】第2の実施形態のフランジウェー幅測定定規1b使用時の説明図である。
【図8】第3の実施形態のフランジウェー幅測定定規1cの構成を示す図であり、(a)および(b)は平面図、(c)および(d)は側面図である。
【符号の説明】
【0065】
1,1b,1c…フランジウェー幅測定定規、10,10b,10c…定規本体、11,11b…上面、12,12b…支点、13,13b…楕円弧側の側面、131b…頂上部、14,14b…短軸半径側の側面、15,15b…長軸半径側の側面、20,20b…目盛、30…基準板、40…軸部、50…分岐器、51…主レール、52…ガードレール、60…クロッシング部、61…ウイングレール、62…ノーズレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楕円の短軸方向の半径と長軸方向の半径とこの楕円の弧とに囲まれた楕円扇形の板状の定規本体と、
前記定規本体の上面に設けた目盛と、
を有するフランジウェー幅測定定規であって、
前記短軸方向の半径の長さは測定下限値であり、且つ、前記長軸方向の半径の長さは測定上限値であり、
前記目盛は、前記定規本体の上面の楕円弧上の所定の点に付されており、且つ、この所定の点における前記楕円の接線と前記楕円の中心との距離を示すこと
を特徴とするフランジウェー幅測定定規。
【請求項2】
前記定規本体の厚みが、レールの測定基準位置からのフランジウェー幅を測定すべき範囲の高さと同じであること
を特徴とする請求項1に記載のフランジウェー幅測定定規。
【請求項3】
前記定規本体の側方へ延出するように前記上面に沿ってスライド可能に前記定規本体に支持され、レールの測定基準位置に当接させることで前記定規本体の上面の高さをレールの測定基準位置の高さに合わせるための基準板を有すること
を特徴とする請求項2に記載のフランジウェー幅測定定規。
【請求項4】
前記目盛は、当該目盛が付されている前記楕円弧上の点における接線に対して垂直な直線であること
を特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のフランジウェー幅測定定規。
【請求項5】
前記目盛は、前記接線と前記楕円の中心との距離を、測定に要求される精度における近似値として示し、且つ、前記楕円の接線と前記楕円の中心との距離がこの近似値に対応する真値の範囲で最大となる位置の前記楕円弧上の点に付されており、
前記定規本体の楕円弧側の側面において、前記目盛が付されている前記楕円弧部分を頂上として前記楕円弧側の側面の前記各頂上間を凹ませたこと
を特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のフランジウェー幅測定定規。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−133116(P2006−133116A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323519(P2004−323519)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(504412451)株式会社トキメックレールテクノ (14)
【Fターム(参考)】