説明

フランジ部材付きパイプの製造方法

【課題】フランジ部材が端部に圧入固着されたフランジ部材付きパイプの製造方法であって、パイプの軸に対するフランジ部材の軸の同軸度を高めることができるフランジ部材付きパイプの製造方法を提供する。
【解決手段】フランジ部材付きパイプの製造方法は、素管1の外周面をスルーフィード研削する第1スルーフィード研削工程と、第1スルーフィード研削工程の後で、素管1の端部にフランジ部材2を圧入固着するフランジ部材圧入工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部にフランジ部材が圧入固着されたフランジ部材付きパイプの製造方法及びフランジ部材付きパイプの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ装置等に搭載される現像スリーブ、感光ドラム等は、金属製パイプから形成されている。このパイプは、高品位な画像を得るために高い表面精度が要求されるし、更に、高い寸法精度(例:真直度)が要求される。
【0003】
この種のパイプの端部には、支軸部を有するフランジ部材がパイプの端面開口部を閉塞する状態に圧入固着されている。従来のこの種のパイプの製造方法として、例えば、特開平7−299710号公報(特許文献1)及び特開2000−288879号公報(特許文献2)に開示された方法が知られている。これらの公報には、フランジ部材が端部に固着された素管の外周面を心なし研削(詳述するとスルーフィード研削又はインフィード研削)する工程が開示されている。
【0004】
図6は、この種のパイプの製造方法の一例を説明する図である。この製造方法について同図を参照して説明すると、次のとおりである。
【0005】
まず、パイプの素管101と、支軸部102aを有するフランジ部材102とを準備する。次いで、素管101の端部にフランジ部材102を圧入固着する。次いで、素管101の外周面をスルーフィード研削することにより、素管101の外周面を所定の表面粗さに加工するとともに素管101の曲がり(振れ)を減少させる。次いで、素管101のインロー部とフランジ部材102の外周面とをそれぞれ旋削加工する。この工程で行われる加工を、インロー部の頭文字「I」とフランジ部材102の頭文字「F」とを合わせて「IF加工」と呼ぶ。次いで、素管101の外周面をインフィード研削することにより、素管101の外周面を所定の表面粗さに仕上げ加工するとともに素管101の曲がり(振れ)を更に減少させる。
【0006】
なお、従来の心なし研削装置として、特開2005−329517号公報(特許文献3)及び特開2006−123132号公報(特許文献4)に開示された装置が知られている。
【特許文献1】特開平7−299710号公報
【特許文献2】特開2000−288879号公報
【特許文献3】特開2005−329517号公報
【特許文献4】特開2006−123132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、上記のパイプの製造方法には次の欠点があった。すなわち、フランジ部材102が素管101の端部に圧入固着される前の状態では、素管101の軸は一般的に僅かなに曲がっている。このように曲がった素管101の端部にフランジ部材102を圧入すると、フランジ部材102の軸が素管101の軸に対して曲がった状態にフランジ部材102が素管101の端部に固着されてしまう。この状態のままで、素管101の外周面をスルーフィード研削しても、素管101の軸に対するフランジ部材102の軸の曲がりは残る。そのため、その後で素管101の外周面をインフィード研削しても、素管101の軸に対するフランジ部材102の軸の曲がりを大幅に除去することができなかった。
【0008】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、端部にフランジ部材が圧入固着されたフランジ部材付きパイプの製造方法であって、パイプの軸に対するフランジ部材の軸の同軸度を高めることができるフランジ部材付きパイプの製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1] フランジ部材付きパイプの製造方法において、
素管の外周面をスルーフィード研削する第1スルーフィード研削工程と、
第1スルーフィード研削工程の後で、素管の端部にフランジ部材を圧入固着するフランジ部材圧入工程と、
を含むことを特徴とするフランジ部材付きパイプの製造方法。
【0011】
[2] フランジ部材圧入工程の後で、素管の外周面をスルーフィード研削する第2スルーフィード研削工程を含む前項1記載のフランジ部材付きパイプの製造方法。
【0012】
[3] 第2スルーフィード研削工程では、
平面視において研削砥石軸と調整砥石軸との間隔が素管の送り方向に漸次狭くなるように、研削砥石と調整砥石とが配置されたスルーフィード研削手段を用い、
研削砥石と調整砥石との間に、フランジ部材を前側にして素管を送ることにより、素管の外周面をスルーフィード研削する前項2記載のフランジ部材付きパイプの製造方法。
【0013】
[4] 第2スルーフィード研削工程の後で、素管の外周面をインフィード研削するインフィード研削工程を含む前項1〜3のいずれかに記載のフランジ部材付きパイプの製造方法。
【0014】
[5] 第2スルーフィード研削工程とインフィード研削工程との間に、フランジ部材の支軸部の外周面をDカット又はHカットするDHカット工程と、フランジ部材の外周面と素管のインロー部とのうち少なくとも一方を加工するIF加工工程と、を備えている前項4記載のフランジ部材付きパイプの製造方法。
【0015】
[6] フランジ部材付きパイプの製造装置において、
素管の外周面をスルーフィード研削する第1スルーフィード研削手段と、
第1スルーフィード研削手段により素管の外周面をスルーフィード研削した後で、素管の端部にフランジ部材を圧入固着するフランジ部材圧入手段と、
を含むことを特徴とするフランジ部材付きパイプの製造装置。
【0016】
[7] フランジ部材圧入手段により素管の端部にフランジ部材を圧入固着した後で、素管の外周面をスルーフィード研削する第2スルーフィード研削手段を含む前項6記載のフランジ部材付きパイプの製造装置。
【0017】
[8] 第2スルーフィード研削手段は、
平面視において研削砥石軸と調整砥石軸との間隔が素管の送り方向に漸次狭くなるように配置された研削砥石と調整砥石とを備えるとともに、
研削砥石と調整砥石との間にフランジ部材を前側にして送られてきた素管の外周面をスルーフィード研削するものとなされている前項7記載のフランジ部材付きパイプの製造装置。
【0018】
[9] 第2スルーフィード研削手段により素管の外周面をスルーフィード研削した後で、素管の外周面をインフィード研削するインフィード研削手段を含む前項6〜8のいずれかに記載のフランジ部材付きパイプの製造装置。
【0019】
[10] 第2スルーフィード研削手段により素管の外周面をスルーフィード研削した後であって、且つインフィード研削手段により素管の外周面をインフィード研削する前に、フランジ部材の支軸部の外周面をDカット又はHカットするDHカット手段と、フランジ部材の外周面と素管のインロー部とのうち少なくとも一方を加工するIF加工手段と、を備えている前項9記載のフランジ部材付きパイプの製造装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明は以下の効果を奏する。
【0021】
[1]の発明によれば、第1スルーフィード研削工程において、素管の外周面をスルーフィード研削することにより、素管の曲がり(振れ)を低減することができる。次いで、フランジ部材圧入工程では、このように曲がりが低減された素管の端部にフランジ部材を圧入固着することにより、素管(即ちパイプ)の軸に対するフランジ部材の軸の同軸度を高めることができる。
【0022】
[2]の発明によれば、フランジ部材圧入工程の後で、素管の外周面をスルーフィード研削することにより、素管の曲がりを更に減少させることができる。
【0023】
[3]の発明は次の効果を奏する。すなわち、フランジ部材圧入工程において、フランジ部材を素管の端部に圧入すると、素管の端部がその径方向外側に僅かに膨出して素管の端部の直径が局部的に増大し、その結果、素管の直径のその軸方向における均一性が低下するという問題が生じる。そこで、フランジ部材圧入工程の後で、素管の外周面をスルーフィード研削することとした(第2スルーフィード研削工程)。これにより、素管の端部の直径が素管のその他の部位の直径と同一になるように素管の端部の膨出を研削除去することができ、もって素管の直径のその軸方向における均一性を向上させることができる。しかるに、この第2スルーフィード研削工程において、スルーフィード研削手段として、もし仮に、平面視において研削砥石軸と調整砥石軸との間隔が素管の送り方向に一定になるように研削砥石と調整砥石とが配置されたスルーフィード手段を用いた場合には、各砥石の素管入り側の部分が損傷し易い。そこで、この難点を解消するため、[3]の発明では、スルーフィード研削手段として、平面視において研削砥石軸と調整砥石軸との間隔が素管の送り方向に漸次狭くなるように研削砥石と調整砥石とが配置されたスルーフィード研削手段を用いることとした。このスルーフィード研削手段における研削砥石と調整砥石との間に、フランジ部材を前側にして素管を送ることにより、素管の端部の膨出を研削除去することができる上、更に、各砥石の素管入り側の部分の損傷を防止することができる。
【0024】
[4]の発明では、第2スルーフィード研削工程の後で、素管の外周面をインフィード研削することにより、素管の外周面を所定の表面粗さに仕上げ加工することができるとともに素管の曲がりをより一層減少させることができる。
【0025】
[5]の発明では、フランジ部材の支軸部の外周面をDカット又はHカットすることができるし、フランジ部材の外周面と素管のインロー部とのうち少なくとも一方を加工することができる。
【0026】
[6]〜[10]の発明では、本発明に係るフランジ部材付きパイプの製造方法に好適に用いられるフランジ部材付きパイプの製造装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0028】
図1〜図5は、本発明の一実施形態に係るフランジ部材付きパイプの製造方法及び製造装置を説明する図である。
【0029】
図1において、符号20は本実施形態に係るフランジ部材付きパイプの製造装置であり、また符号3は本実施形態で製造されるフランジ部材付きパイプである。このパイプ3は、例えば、電子複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ装置等に搭載される現像スリーブに用いられるパイプである。このパイプ3は、断面円形状のものであり、例えばアルミニウム(その合金を含む。以下同じ)製である。さらに、このパイプ3の一端部には、支軸部を有するフランジ部材2が圧入装着されている。このフランジ部材付きパイプの製造方法について図1を参照して以下に説明する。
【0030】
まず、フランジ部材付きパイプ3の素管として、押出材からなる素管1A、即ち押出素管1Aを準備する。この押出素管1Aは例えばアルミニウム製である。
【0031】
この押出素管1Aの一端部が縮径されるように押出素管1Aの一端部をスエージング加工し、これにより押出素管1Aの一端部に口付け部1zを形成する。この工程を「スエージング加工工程」という。このスエージング加工は、公知のスエージング加工装置(スエージング加工手段)を用いて行われる。
【0032】
次いで、この押出素管1Aを引抜き加工し、これにより引抜き素管1Bを得る。この工程を「引抜き加工工程」という。この引抜き加工は、引抜きダイス(図示せず)及びプラグ(図示せず)を有する公知の引抜き加工装置(引抜き加工手段)を用いて行われる。その後、この引抜き素管1Bの両端部をぞれぞれプレス剪断装置等により切除する。なお図1において、符号Cは切断線である。
【0033】
次いで、引抜き素管1Bをロール矯正し、これにより引抜き素管1Bの曲がり(振れ)が減少するように引抜き素管1Bの曲がりを矯正する。この工程を「ロール矯正工程」という。このロール矯正は、例えば、複数個の矯正ロール4aを有する公知のロール矯正装置4(ロール矯正手段)を用いて行われる。
【0034】
その後、引抜き素管1Bを複数個に切断することにより、所定の長さの素管1を得る。この工程を「切断工程」という。この切断工程では、通常、引抜き素管1Bは所定長さに定尺切断される。この切断は、例えば、鋸刃(図示せず)を有する公知の切断装置(切断手段)を用いて行われる。
【0035】
次いで、素管1の端面の周縁部を面取り加工する。この工程を「面取り加工工程」という。この面取り加工は、例えば、バイト(図示せず)を有する面取り加工装置(例:旋盤)(面取り加工手段)を用いて行われる。
【0036】
その後、素管1の外周面をスルーフィード研削し、これにより素管1の曲がり(振れ)を低減する。この工程を「第1スルーフィード研削工程」という。
【0037】
この第1スルーフィード研削工程では、図2〜4に示した第1スルーフィード研削手段5を用いてスルーフィード研削を行う。この第1スルーフィード研削手段5は、互いに左右方向に対向し且つ横向きに配置された研削砥石6と調整砥石7とを備えている。研削砥石6と調整砥石7は、図3に示すように、平面視において研削砥石軸6aと調整砥石軸7aとの間隔が素管の送り方向8に一定になるように配置されている。この第1スルーフィード研削手段5は、研削砥石6と調整砥石7との間に素管1を所定の送り手段(図示せず)により水平に送ることによって、素管1が両砥石6、7の間で挟まれた状態で素管1の外周面がスルーフィード研削するものとなされている。なお本明細書において、「平面視」とは、図3に示すように、素管の送り方向8と両砥石6、7の素管挟み方向9、9とに垂直な方向から見た状態をいう。
【0038】
研削砥石6は略円柱状に形成されている。一方、調整砥石7は略鼓状に形成されている。なお図2〜4では、調整砥石7が略鼓状であることを分かり易くするため、調整砥石7の形状を鼓状に誇張して示している。図4に示すように、研削砥石6はその軸6aが水平になるように配置されている。調整砥石7は、水平方向においてその素管出側の部分が素管入り側の部分よりも僅かに下側に位置した姿勢に配置されており、これにより、素管1の外周面を研削しながら素管1を送り方向8に前進させうるものとなされている。また図3の下段には、この第1スルーフィード研削手段5による素管1の削れ方が示されており、符号1bは素管1の研削部分を示している。
【0039】
この第1スルーフィード研削工程では、素管1の端部にフランジ部材2がまだ圧入されていないので、素管1の端部は膨出していない。そのため、上記の第1スルーフィード研削手段5を用いて、すなわち、平面視において研削砥石軸6aと調整砥石軸7aとの間隔が素管の送り方向8に一定になるように研削砥石6と調整砥石7とが配置された第1スルーフィード研削手段5を用いて、素管1の外周面を研削しても、各砥石6、7の素管入り側の部分は殆ど損傷しない。
【0040】
次いで、図1に示すように、支軸部2aを有するフランジ部材2の基端部を素管1の一端面開口部内に圧入することにより、フランジ部材2を素管1の一端部に素管1の一端面開口部をフランジ部材2で閉塞する状態に固着する。この工程を「フランジ部材圧入工程」という。このフランジ部材2の圧入は、例えば油圧式圧入機(フランジ部材圧入手段)を用いて行われる。
【0041】
フランジ部材2はアルミニウム製である。フランジ部材2の支軸部2aは、この時点では断面円形状であり、フランジ部材2の軸に同軸状にフランジ部材2に一体形成されている。
【0042】
このフランジ部材圧入工程において、フランジ部材2を素管1の端部に圧入すると、素管1の端部がその径方向外側に僅かに膨出して素管1の端部の直径が局部的に増大する。
【0043】
その後、素管1の外周面をスルーフィード研削する。この工程を「第2スルーフィード研削工程」という。
【0044】
この第2スルーフィード研削工程では、図5に示した第2スルーフィード研削手段10を用いてスルーフィード研削を行う。この第2スルーフィード研削手段10は、同図に示すように、平面視において研削砥石軸11aと調整砥石軸12aとの間隔が素管の送り方向8に漸次狭くなるように研削砥石11と調整砥石12とが配置されている。同図において、符号θは研削砥石軸11aと調整砥石軸12aとのなす角度であり、この角度θは例えば1〜10°に設定されるのが望ましい。ただし本発明では、角度θは上記の範囲であることに限定されるものではない。
【0045】
この第2スルーフィード研削手段10は、研削砥石11と調整砥石12との間に、フランジ部材2を前側にして素管1を所定の送り手段(図示せず)により水平に送ることによって、素管1の外周面をスルーフード研削するものとなされている。この第2スルーフィード研削手段10を用いて素管1の外周面をスルーフィード研削することにより、素管1の曲がりが更に低減されるし、その上、素管1の端部の直径が素管1のその他の部位の直径と同一になるように素管1の端部の膨出を研削除去され、もって素管1の直径のその軸方向における均一性が向上する。
【0046】
なお図5の下段には、この第2スルーフィード研削手段10による素管1の削れ方が示されており、符号1bは素管1の研削部分を示している。
【0047】
この第2スルーフィード研削手段10の他の構成は、上記第1スルーフィード研削手段5と同じである。
【0048】
次いで、図1に示すように、素管1を所定の洗浄液(例:灯油)を用いて洗浄及び乾燥する。この工程を「洗浄及び乾燥工程」という。
【0049】
その後、フランジ部材2の支軸部2aの外周面をDカット又はHカットする。この工程を「DHカット工程」という。なお図1では、フランジ部材2の支軸部2aの外周面をHカットではなくDカットする場合を示している。このDカット(又はHカット)は、例えば切削用バイト(回転式)を有する切削機(DHカット手段)を用いて行われる。符号2bは、フランジ部材2の支軸部2aの外周面のDカット部を示している。
【0050】
次いで、素管1のインロー部1yとフランジ部材2の外周面とをそれぞれ旋削加工し、これにより素管1のインロー部1yの振れの精度及びフランジ部材2の振れの精度をそれぞれ向上させる。この工程で行われる加工を、インロー部1yの頭文字「I」とフランジ部材2の頭文字「F」とを合わせて「IF加工」と呼び、この工程を「IF加工工程」という。このIF加工は、例えば、所定のバイト(図示せず)を有するNC旋盤(IF加工手段)を用いて行われる。
【0051】
なお本実施形態では、素管1のインロー部1yとフランジ部材2の外周面とをそれぞれ加工しているが、本発明では、その他に、素管1のインロー部1yとフランジ部材2の外周面とのうちいずれか一方だけを加工しても良い。
【0052】
ここで、上記のDHカット工程及びIF加工工程では、公知のクランプ手段(図示せず)により素管1を真直にクランプ固定した状態で、DHカット及びIF加工を行うのが望ましい。こうすることにより、フランジ部材2の支軸部2aの外周面を精度良くDカット又はHカットすることができるし、また素管1のインロー部1yとフランジ部材2の外周面とをそれぞれ精度良く加工することができる。
【0053】
その後、素管1の外周面を公知のインフィード研削装置(図示せず)(インフィード研削手段)を用いてインフィード研削し、これにより、素管1の外周面を所定の表面粗さに仕上げ加工するとともに素管1の曲がりを更に減少させる。この工程を「インフィード研削工程」という。
【0054】
次いで、素管1を再度洗浄及び検査する。この工程を「再洗浄及び検査工程」という。この検査工程では、キズ、汚れ、曲がり(振れ)、寸法等について検査が行われる。
【0055】
この検査工程で検査に合格したフランジ部材付き素管1は、現像スリーブ用のフランジ部材付きパイプ3として次の工程に搬送され、もって最終的に現像スリーブが製作される。
【0056】
而して、上記実施形態のフランジ部材付きパイプ(即ち現像スリーブ用パイプ)の製造方法によれば、第1スルーフィード研削工程において、素管1の外周面をスルーフィード研削することにより、素管1の曲がり(振れ)を低減することができる。次いで、フランジ部材圧入工程では、このように曲がりが低減された素管1の端部にフランジ部材2を圧入固着することにより、素管1の軸に対するフランジ部材2の軸の同軸度を高めることができる。
【0057】
さらに、フランジ部材圧入工程の後で、素管1の外周面をスルーフィード研削することにより、素管1の曲がりを更に減少させることができる。
【0058】
さらに、本実施形態のフランジ部材付きパイプの製造方法には次の利点がある。
【0059】
すなわち、フランジ部材圧入工程において、フランジ部材2を素管1の端部に圧入すると、上述したように、素管1の端部がその径方向外側に僅かに膨出して素管1の端部の直径が局部的に増大し、その結果、素管1の直径のその軸方向における均一性が低下するという問題が生じる。そこで、本実施形態では、フランジ部材圧入工程の後で、素管1の外周面をスルーフィード研削し(第2スルーフィード研削工程)、これにより、素管1の端部の直径が素管1のその他の部位の直径と同一になるように素管1の端部の膨出を研削除去することができ、もって素管1の直径のその軸方向における均一性を向上させることができる。しかるに、この第2スルーフィード研削工程において、スルーフィード研削手段として、もし仮に、図2〜図4に示した第1スルーフィード研削手段5のように、平面視において研削砥石軸6aと調整砥石軸7aとの間隔が素管の送り方向8に一定になるように研削砥石6と調整砥石7とが配置されたスルーフィード手段5を用いた場合には、各砥石6、7の素管入り側の部分が損傷し易い。そこで、この難点を解消するため、本実施形態では、スルーフィード研削手段として、図5に示すように、平面視において研削砥石軸11aと調整砥石軸12aとの間隔が素管の送り方向8に漸次狭くなるように研削砥石11と調整砥石12とが配置された第2スルーフィード研削手段10を用いることとした。この第2スルーフィード研削手段10における研削砥石11と調整砥石12との間に、フランジ部材2を前側にして素管1を送ることにより、素管1の端部の膨出を研削除去することができる上、更に、各砥石11、12の素管入り側の部分の損傷を防止することができる。
【0060】
さらに、第2スルーフィード研削工程の後で、素管1の外周面をインフィード研削することにより、素管1の外周面を所定の表面粗さに仕上げ加工することができるとともに素管1の曲がりをより一層減少させることができる。
【0061】
さらに、本実施形態のパイプの製造方法は、第2スルーフィード研削工程とインフィード研削工程との間に、フランジ部材2の支軸部2aの外周面をDカット又はHカットするDHカット工程と、フランジ部材2の外周面と素管1のインロー部1yとをそれぞれ旋削加工するIF加工工程と、を備えている。したがって、フランジ部材2の支軸部2aの外周面をDカット又はHカットすることができるし、フランジ部材2の外周面と素管1のインロー部1yとをそれぞれ所定の形状や寸法に加工することができる。
【0062】
以上で本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に示したものであることに限定されるものではなく、様々に変更可能である。
【0063】
また本発明により製造されるフランジ部材付きパイプは、現像スリーブ用パイプ3であることに限定されるものではなく、様々なフランジ部材付きパイプに適用可能であり、その他に、例えば感光ドラム用パイプであっても良い。
【0064】
また本発明では、素管1及びフランジ部材2はいずれもアルミニウム製であることに限定されるものではなく、アルミニウム以外の金属(例えば銅又はその合金)製であっても良いし、その他の材料製であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、端部にフランジ部材が圧入固着されたフランジ部材付きパイプの製造方法及びフランジ部材付きパイプの製造装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るフランジ部材付きパイプの製造方法を示す工程図である。
【図2】図2は、同製造方法で用いられる第1スルーフィード研削手段の概略斜視図である。
【図3】図3は、同第1スルーフィード研削手段の概略平面図である。
【図4】図4は、同第1スルーフィード研削手段の概略側面図である。
【図5】図5は、同製造方法で用いられる第2スルーフィード研削手段の概略平面図である。
【図6】図6は、従来のフランジ部材付きパイプの製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0067】
1:素管
1y:インロー部
2:フランジ部材
2a:支軸部
2b:Dカット部
3:フランジ部材付きパイプ
4:ロール矯正装置(ロール矯正手段)
5:第1スルーフィード研削手段
6:研削砥石
6a:研削砥石軸
7:調整砥石
7a:調整砥石軸
8:素管の送り方向
10:第2スルーフィード研削手段
11:研削砥石
11a:研削砥石軸
12:調整砥石
12a:調整砥石軸
20:フランジ部材付きパイプの製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ部材付きパイプの製造方法において、
素管の外周面をスルーフィード研削する第1スルーフィード研削工程と、
第1スルーフィード研削工程の後で、素管の端部にフランジ部材を圧入固着するフランジ部材圧入工程と、
を含むことを特徴とするフランジ部材付きパイプの製造方法。
【請求項2】
フランジ部材圧入工程の後で、素管の外周面をスルーフィード研削する第2スルーフィード研削工程を含む請求項1記載のフランジ部材付きパイプの製造方法。
【請求項3】
第2スルーフィード研削工程では、
平面視において研削砥石軸と調整砥石軸との間隔が素管の送り方向に漸次狭くなるように、研削砥石と調整砥石とが配置されたスルーフィード研削手段を用い、
研削砥石と調整砥石との間に、フランジ部材を前側にして素管を送ることにより、素管の外周面をスルーフィード研削する請求項2記載のフランジ部材付きパイプの製造方法。
【請求項4】
第2スルーフィード研削工程の後で、素管の外周面をインフィード研削するインフィード研削工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載のフランジ部材付きパイプの製造方法。
【請求項5】
第2スルーフィード研削工程とインフィード研削工程との間に、フランジ部材の支軸部の外周面をDカット又はHカットするDHカット工程と、フランジ部材の外周面と素管のインロー部とのうち少なくとも一方を加工するIF加工工程と、を備えている請求項4記載のフランジ部材付きパイプの製造方法。
【請求項6】
フランジ部材付きパイプの製造装置において、
素管の外周面をスルーフィード研削する第1スルーフィード研削手段と、
第1スルーフィード研削手段により素管の外周面をスルーフィード研削した後で、素管の端部にフランジ部材を圧入固着するフランジ部材圧入手段と、
を含むことを特徴とするフランジ部材付きパイプの製造装置。
【請求項7】
フランジ部材圧入手段により素管の端部にフランジ部材を圧入固着した後で、素管の外周面をスルーフィード研削する第2スルーフィード研削手段を含む請求項6記載のフランジ部材付きパイプの製造装置。
【請求項8】
第2スルーフィード研削手段は、
平面視において研削砥石軸と調整砥石軸との間隔が素管の送り方向に漸次狭くなるように配置された研削砥石と調整砥石とを備えるとともに、
研削砥石と調整砥石との間にフランジ部材を前側にして送られてきた素管の外周面をスルーフィード研削するものとなされている請求項7記載のフランジ部材付きパイプの製造装置。
【請求項9】
第2スルーフィード研削手段により素管の外周面をスルーフィード研削した後で、素管の外周面をインフィード研削するインフィード研削手段を含む請求項6〜8のいずれかに記載のフランジ部材付きパイプの製造装置。
【請求項10】
第2スルーフィード研削手段により素管の外周面をスルーフィード研削した後であって、且つインフィード研削手段により素管の外周面をインフィード研削する前に、フランジ部材の支軸部の外周面をDカット又はHカットするDHカット手段と、フランジ部材の外周面と素管のインロー部とのうち少なくとも一方を加工するIF加工手段と、を備えている請求項9記載のフランジ部材付きパイプの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−142957(P2009−142957A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324676(P2007−324676)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】