説明

フリップチップボンダー用アタッチメント

【課題】ボイドを抑制して信頼性の高い半導体装置を製造することのできるフリップチップボンダー用アタッチメント及びステージを提供する。また、該フリップチップボンダー用アタッチメントによって半導体チップを対向基板に接合させる方法、及び、該フリップチップボンダー用アタッチメントを備えたアタッチメント−ヒーター複合体及びフリップチップボンダーを提供する。
【解決手段】突起状電極を有する半導体チップを保持して、前記半導体チップに熱及び圧力を伝え、封止樹脂を介して前記半導体チップを対向基板に接合させるためのフリップチップボンダーに用いられるアタッチメントであって、前記半導体チップから投影される部分の周辺部よりも内部のほうが、熱伝導率が低いフリップチップボンダー用アタッチメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイドを抑制して信頼性の高い半導体装置を製造することのできるフリップチップボンダー用アタッチメント及びステージに関する。また、本発明は、該フリップチップボンダー用アタッチメントによって半導体チップを対向基板に接合させる方法、及び、該フリップチップボンダー用アタッチメントを備えたアタッチメント−ヒーター複合体及びフリップチップボンダーに関する。
【背景技術】
【0002】
フリップチップ実装においては、一般的に、封止樹脂を介して、複数のハンダ等からなる突起状電極を有する半導体チップが対向基板に接合される。
近年、半導体チップの小型化が進行するとともに突起状電極間のピッチも狭くなっており、また、これらに伴って半導体チップ同士又は半導体チップと対向基板との間のギャップも狭くなっている。そのため、封止樹脂の充填時に空気が巻き込まれてボイドが発生することを防ぐために、電極接合後に封止樹脂を充填するのではなく、予め封止樹脂を半導体チップ又は対向基板上に設けておく方法が検討されている。
【0003】
このようなフリップチップ実装は、例えば、半導体チップを吸着等により保持して半導体チップに熱及び圧力を伝える、セラミック製のアタッチメントを備えたフリップチップボンダーを用いて行われる。具体的には、封止樹脂を半導体チップ又は対向基板上に設けた後、半導体チップをアタッチメントに保持して、ステージ上に配置した対向基板に向けて位置合わせし、アタッチメントから半導体チップに熱及び圧力を伝えることで、封止樹脂の流動及び硬化、半導体チップの突起状電極と対向基板上の電極との接合等を行う。
【0004】
しかしながら、アタッチメントから半導体チップ及び封止樹脂に均一に熱を伝えることは難しく、通常、半導体チップの各コーナー部は各辺の中央部に比べて低温となり、突起状電極の接合性が悪くなったり、封止樹脂の硬化性が悪くなったりする。一方で、各コーナー部の温度を上げるためにアタッチメントから伝わる熱の設定温度を高くすると、封止樹脂からの揮発分が増え、ボイドが発生しやすくなる。
【0005】
特許文献1には、接着剤の硬化温度に偏りが発生しないようにし、ステージへの放熱を減少させ、さらに、ベアチップ部品の周辺部の温度も高温に保つような手段を備えることを目的として、ステージが、プリント配線板を吸着する吸着穴を当該プリント配線板に搭載するベアチップ部品投影面の外側に形成する、ベアチップ部品の実装装置が記載されている。また、ツールが、ベアチップ部品を加圧・加熱する先端部に凹部を形成しベアチップ部品の上面とベアチップ部品の側面とを加熱する、ベアチップ部品の実装装置も記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の実装装置であっても、ボイドを抑えつつ、半導体チップ及び封止樹脂に均一に熱を伝え、充分に高い信頼性を実現するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−176933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ボイドを抑制して信頼性の高い半導体装置を製造することのできるフリップチップボンダー用アタッチメント及びステージを提供することを目的とする。また、本発明は、該フリップチップボンダー用アタッチメントによって半導体チップを対向基板に接合させる方法、及び、該フリップチップボンダー用アタッチメントを備えたアタッチメント−ヒーター複合体及びフリップチップボンダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、突起状電極を有する半導体チップを保持して、前記半導体チップに熱及び圧力を伝え、封止樹脂を介して前記半導体チップを対向基板に接合させるためのフリップチップボンダーに用いられるアタッチメントであって、前記半導体チップから投影される部分の周辺部よりも内部のほうが、熱伝導率が低いフリップチップボンダー用アタッチメントである。
また、本発明は、突起状電極を有する半導体チップを保持して、前記半導体チップに熱及び圧力を伝え、封止樹脂を介して前記半導体チップを対向基板に接合させるためのフリップチップボンダーに用いられるステージであって、前記半導体チップから投影される部分の周辺部のほうが、内部よりも熱伝導率が低いフリップチップボンダー用ステージである。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は、ボイドを抑制して信頼性の高い半導体装置を製造することを目的として、フリップチップボンダーを検討した。その結果、本発明者は、半導体チップに接触してヒーターからの熱を伝えるアタッチメント、及び、半導体チップと対向基板とを通してヒーターからの熱が逃げるステージに工夫を施し、半導体チップの周辺部と内部との温度差を小さくすればよいことを見出した。半導体チップの周辺部と内部との温度差を小さくするためには、半導体チップの内部よりも周辺部に熱を効率的に流すようにすればよい。
すなわち、本発明者は、アタッチメントにおいて、半導体チップから投影される部分の周辺部よりも内部の熱伝導率を低くすることにより、半導体チップの内部よりも周辺部に熱を効率的に流し、半導体チップの周辺部における突起状電極の接合不良を抑制できるアタッチメントが得られることを見出した。また、本発明者は、ステージにおいては、半導体チップから投影される部分の周辺部の熱伝導率を内部よりも低くすることにより、半導体チップの周辺部よりも内部に熱を効率的に流し、半導体チップの周辺部における突起状電極の接合不良を抑制できるステージが得られることを見出した。
このようなフリップチップボンダー用アタッチメント及びステージによれば、フリップチップボンダーのヒーターから伝わる熱の設定温度を必要以上に高くする必要がないため、ボイドを抑えるとともに封止樹脂の材料設計の自由度を高めることもできる。
以下、本発明を実施の態様に即して説明する。
【0010】
本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントは、突起状電極を有する半導体チップを保持して、上記半導体チップに熱及び圧力を伝え、封止樹脂を介して上記半導体チップを対向基板に接合させるためのフリップチップボンダーに用いられるものである。
【0011】
本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントは、半導体チップから投影される部分の周辺部よりも内部のほうが、熱伝導率が低い。
本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントにおいては、このように熱伝導率に差が設けられることにより、アタッチメント中央部では熱伝導のパスが小さくなり、半導体チップの周辺部と内部との温度差を小さくすることができる。これにより、半導体チップ及び封止樹脂に均一に熱を伝えることができ、半導体チップの周辺部における突起状電極の接合不良を抑制し、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。また、フリップチップボンダー用アタッチメントから伝わる熱の設定温度を必要以上に高くする必要がないため、ボイドを抑えるとともに封止樹脂の材料設計の自由度を高めることもできる。
【0012】
本明細書中、熱伝導率とは、単位長さ、単位温度勾配があるときの単位時間当たりに流れる熱量を意味する。
【0013】
本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントは、半導体チップから投影される部分の周辺部よりも内部のほうが、熱伝導率が50〜100W/m・k低いことが好ましく、100〜300W/m・k低いことがより好ましい。熱伝導率の差が上記範囲を外れると、熱伝導率に差を設ける効果が充分に得られないことがある。
【0014】
半導体チップから投影される部分の周辺部よりも内部の熱伝導率を低くするためには、本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントは、半導体チップから投影される部分の周辺部よりも内部のほうが、熱伝導率の低い材料からなることが好ましい。
このような場合の本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントの一例の断面図を、図4〜6に模式的に示す。図4〜6に示すフリップチップボンダー用アタッチメント1は、熱伝導率の低い材料からなる部分9を有する。
【0015】
上記熱伝導率の低い材料からなる部分は、フリップチップボンダー用アタッチメントの縦方向に貫通していてもよいし(例えば、図6)、その一部分だけであってもよい(例えば、図4及び5)。
上記熱伝導率の低い材料からなる部分の形状は特に限定されないが、半導体チップの形状を考慮すると、上面図において四角形であることが好ましい。また、長方形であってもよいし、正方形であってもよい。また、上記熱伝導率の低い材料からなる部分のエッジは、半導体チップに投影される部分よりも0.5〜2mm内側にあることが好ましい。上記熱伝導率の低い材料からなる部分の大きさ(面積)が上記範囲を外れると、熱伝導率に差を設ける効果が充分に得られないことがある。
【0016】
本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントを構成する材料として、例えば、鉄の合金(SUS)、銅、Al等の金属、AlN、アルミナ等のセラミック、ガラス等が挙げられる。これらの材料から、半導体チップから投影される部分の周辺部よりも内部のほうが熱伝導率の低い材料からなるように、複数の材料を組み合わせることが好ましい。材料の組み合わせとして、例えば、AlN(熱伝導率200W/m・K)とSUS(熱伝導率20W/m・k)、銅(熱伝導率400W/m・K)とガラス(熱伝導率0.5W/m・k)等が挙げられる。
【0017】
半導体チップから投影される部分の周辺部よりも内部の熱伝導率を低くするためには、本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントは、半導体チップに接触するアイランド部と、上記アイランド部とは逆側の面に形成された凹部とを有し、上記凹部のエッジが、上記凹部の全周において上記アイランド部の半導体チップ接触面のエッジよりも内側にあることが好ましい。
このような場合の本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントの一例の上面図及び断面図を、図1に模式的に示す。図1に示すフリップチップボンダー用アタッチメント1は、半導体チップに接触するアイランド部2と、アイランド部2とは逆側の面に形成された凹部3とを有する。図1に示すフリップチップボンダー用アタッチメント1は、例えば、図2に示すようにして用いられる。即ち、図2において、フリップチップボンダー用アタッチメント1は、突起状電極4aを有する半導体チップ4を保持して、半導体チップ4に熱及び圧力を加え、封止樹脂5を介して半導体チップ4を対向基板6に接合させている。
【0018】
上記凹部のエッジは、上記凹部の全周において上記アイランド部の半導体チップ接触面のエッジよりも0.1〜2mm内側にあることが好ましい。上記範囲よりも上記凹部が小さいと、凹部を設ける効果が充分に得られないことがある。上記範囲よりも上記凹部が大きいと、ボンディング時の荷重に耐え切れなくて、アタッチメントが破壊されてしまうことがある。上記凹部のエッジは、上記凹部の全周において上記アイランド部の半導体チップ接触面のエッジよりも0.3〜1.5mm内側にあることがより好ましい。
【0019】
上記アイランド部及び上記凹部の形状は特に限定されないが、半導体チップの形状を考慮すると、例えば図1に示すように上面図において四角形であることが好ましい。また、長方形であってもよいし、正方形であってもよい。また、コーナー部を特に熱伝導を良くするために、コーナー部のところの凹部を辺中央部にくらべて減らしてもよい。
【0020】
上記アイランド部の大きさ(面積)は、半導体チップの大きさによって決められる。薄い半導体チップの場合、ボンディング時のフィレットの這い上がりによるアタッチメントへの封止樹脂の吸着を避けるために、上記アイランド部の大きさ(面積)は、チップサイズよりもわずかに小さいことが好ましく、チップのエッジから全周において0〜200μm小さいことが好ましい。
上記アイランド部の大きさ(面積)が上記範囲より小さいと、チップ周辺にある突起状電極の接合性が悪くなることがあり、上記範囲より大きいと、ボンディング時のフィレットの這い上がりによって、工程が中断してしまうことがある。上記アイランド部の大きさ(面積)は、チップのエッジから全周において30〜180μm小さいことが好ましい。
【0021】
上記アイランド部の厚みは特に限定されないが、半導体チップ及び封止樹脂に均一かつ充分に熱を伝える観点からは、0.2〜2mmであることが好ましく、0.5〜1mmであることがより好ましい。
【0022】
上記凹部の深さは、アタッチメントの厚み全体の10〜80%であることが好ましい。深さが10%未満であると、凹部を設ける効果が充分に得られないことがある。深さが80%を超えると、ボンディング時の荷重に耐え切れなくて、アタッチメントが破壊されてしまうことがある。深さのより好ましい範囲は、アタッチメントの厚み全体の30〜70%である。
【0023】
本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントにおいて、半導体チップを保持するための吸着穴の位置は特に限定されないが、上記凹部の内側かつ前記凹部の対向する辺の中心を結ぶ線上に、複数個の吸着穴を有することが好ましい。
通常、フリップチップボンダー用アタッチメントには、吸着により半導体チップを保持するために吸着穴が設けられている。本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントにおいては、吸着穴が、上記凹部の内側かつ前記凹部の対向する辺の中心を結ぶ線上に複数個設けられている、即ち、コーナー部を避けるように吸着穴の位置が配置されているので、半導体チップの各コーナー部にもより一層熱が伝わりやすくなり、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
【0024】
図3に、吸着穴を有する本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントの一例の上面図を、模式的に示す。図3に示すフリップチップボンダー用アタッチメント1は、凹部3の内側かつ前記凹部の対向する辺の中心を結ぶ線上に、半導体チップを保持するための吸着穴8を有する。なお、図3では4箇所に吸着穴を示しているが、3箇所以下に吸着穴を有していてもよい。
【0025】
上記吸着穴の大きさは特に限定されないが、半導体チップ及び封止樹脂に均一かつ充分に熱を伝える観点からは、0.2〜1mmφであることが好ましく、0.3〜0.8mmφであることがより好ましい。
【0026】
本発明のフリップチップボンダー用ステージは、突起状電極を有する半導体チップを保持して、前記半導体チップに熱及び圧力を伝え、封止樹脂を介して前記半導体チップを対向基板に接合させるためのフリップチップボンダーに用いられるものである。
【0027】
本発明のフリップチップボンダー用ステージは、半導体チップから投影される部分の周辺部のほうが、内部よりも熱伝導率が低い。
本発明のフリップチップボンダー用ステージにおいては、このように熱伝導率に差が設けられることにより、ステージ中央部では熱伝導のパスが大きくなり、半導体チップの周辺部と内部との温度差を小さくすることができる。これにより、半導体チップ及び封止樹脂に均一に熱を伝えることができ、半導体チップの周辺部における突起状電極の接合不良を抑制し、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
【0028】
本発明のフリップチップボンダー用ステージは、半導体チップから投影される部分の周辺部のほうが、内部よりも熱伝導率が50〜100W/m・k低いことが好ましく、100〜300W/m・k低いことがより好ましい。熱伝導率の差が上記範囲を外れると、熱伝導率に差を設ける効果が充分に得られないことがある。
【0029】
半導体チップから投影される部分の周辺部の熱伝導率を内部よりも低くするためには、本発明のフリップチップボンダー用ステージは、半導体チップから投影される部分の周辺部のほうが、内部よりも熱伝導率の低い材料からなることが好ましい。
このような場合の本発明のフリップチップボンダー用ステージの一例の断面図を、図7に模式的に示す。図7に示すフリップチップボンダー用ステージ7は、熱伝導率の低い材料からなる部分10を有する。
【0030】
熱伝導率の高い材料からなる部分のエッジは、半導体チップに投影される部分よりも0.5〜2mm内側にあることが好ましい。熱伝導率の高い材料からなる部分の大きさ(面積)が上記範囲を外れると、熱伝導率に差を設ける効果が充分に得られないことがある。
【0031】
本発明のフリップチップボンダー用ステージを構成する材料として、例えば、鉄の合金、銅、Al等の金属、AlN、アルミナ等のセラミック、ガラス等が挙げられる。これらの材料から、半導体チップから投影される部分の周辺部のほうが内部よりも熱伝導率の低い材料からなるように、複数の材料を組み合わせることが好ましい。材料の組み合わせとして、例えば、AlN(熱伝導率200W/m・K)とSUS(熱伝導率20W/m・k)、銅(熱伝導率400W/m・K)とガラス(熱伝導率0.5W/m・k)等が挙げられる。
【0032】
本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントによって対向基板に接合される半導体チップとして、例えば、シリコン、ガリウム砒素等の半導体からなり、金、銅、銀−錫ハンダ、アルミニウム、ニッケル等からなる複数の突起状電極を有する半導体チップ等が挙げられる。このような半導体チップの大きさ(面積)は特に限定されないが、通常、3〜15mm□程度、好ましくは5〜10mm□程度である。また、半導体チップの厚みは特に限定されないが、150μm以下であることが好ましい。
【0033】
本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントによって半導体チップを対向基板に接合させる際には、予め封止樹脂を半導体チップ又は対向基板上に設けることが好ましい。
上記封止樹脂を半導体チップ又は対向基板上に設ける方法は特に限定されないが、精密ノズルを取り付けたシリンジ等とディスペンサ等とを組み合わせて、上記封止樹脂を対向基板に塗布する方法、シート状の封止樹脂を対向基板上に貼付する方法が挙げられる。また、例えば、予めウエハにシート又は溶液を塗布又は印刷して塗膜を形成し、半導体チップに個片化してもよい。
【0034】
本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントによって半導体チップを対向基板に接合させる際には、次いで、半導体チップをフリップチップボンダー用アタッチメントに保持して、ステージ上に配置した対向基板に向けて位置合わせすることが好ましい。
このとき、上記半導体チップに対して押圧し、上記半導体チップの突起状電極と上記対向基板上の電極とを接触させることが好ましい。上記半導体チップの突起状電極と上記対向基板上の電極とを接触させる際の圧力は特に限定されないが、突起状電極当たり0.05〜10Nであることが好ましい。圧力が0.05N未満であると、半導体チップの突起状電極と対向基板上の電極とが接触しないことがある。圧力が10Nを超えると、半導体チップの突起状電極がつぶれすぎて隣の突起状電極と接触し、ショートすることがある。
【0035】
本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントによって半導体チップを対向基板に接合させる際には、次いで、フリップチップボンダー用アタッチメントから半導体チップに熱及び圧力を伝えることで、封止樹脂の流動及び硬化、並びに、半導体チップの突起状電極と対向基板上の電極との接合を行うことが好ましい。
このとき、例えば、上記半導体チップの突起状電極がハンダからなる場合には、ハンダの溶融温度以上に加熱してハンダを溶融し、上記半導体チップの突起状電極と上記対向基板上の電極とを接合させることが好ましい。上記半導体チップのハンダからなる突起状電極と上記対向基板上の電極とを接合させる際の圧力は特に限定されないが、突起状電極当たり0.001〜1Nであることが好ましい。圧力が0.001N未満であると、適切な対向基板と半導体チップとの距離を形成できないことがある。圧力が1Nを超えると、溶融したハンダが流れて隣の突起状電極と接触し、ショートすることがある。
【0036】
なお、上記半導体チップの突起状電極と上記対向基板上の電極とを接合させた後、更に、上記封止樹脂の硬化を行ってもよい。上記封止樹脂を硬化する方法は特に限定されず、上記封止樹脂の硬化特性に合わせた硬化条件を適宜選択して用いることができ、例えば、120℃で30分、170℃で30分加熱する方法等が挙げられる。
【0037】
本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントによって半導体チップを対向基板に接合させる方法であって、封止樹脂を半導体チップ又は対向基板上に設ける工程と、前記半導体チップを本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントに保持して、ステージ上に配置した前記対向基板に向けて位置合わせする工程と、本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントから前記半導体チップに熱及び圧力を伝えることで、前記半導体チップの突起状電極と前記対向基板上の電極との接合を行う工程とを有する方法もまた、本発明の1つである。
【0038】
本発明の半導体チップを対向基板に接合させる方法においては、対向基板を吸着させるためのステージの吸着穴又は吸着溝の位置を、半導体チップを対向基板に投影した部分のエッジ周辺部に対応した位置に配置することが好ましい。吸着穴の直径及び吸着溝の幅は、投影される半導体チップのエッジよりも0.5〜2mm内側となるように配置されることが好ましい。
【0039】
本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントによれば、半導体チップの各コーナー部にも熱が伝わりやすくなり、半導体チップの各コーナー部と各辺の中央部との間の温度差を緩和することができる。これにより、半導体チップ及び封止樹脂に均一に熱を伝えることができ、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。また、フリップチップボンダー用アタッチメントから伝わる熱の設定温度を必要以上に高くする必要がないため、ボイドを抑えるとともに封止樹脂の材料設計の自由度を高めることもできる。
【0040】
本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントと、フリップチップボンダーに用いられるヒーターとを有するアタッチメント−ヒーター複合体、本発明のアタッチメント−ヒーター複合体、又は、本発明のフリップチップボンダー用ステージを備えるフリップチップボンダーもまた、本発明の1つである。
上記ヒーターもまた、アタッチメントと同様に、半導体チップから投影される部分の周辺部よりも内部のほうが、熱伝導率が低いことが好ましい。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、ボイドを抑制して信頼性の高い半導体装置を製造することのできるフリップチップボンダー用アタッチメント及びステージを提供することができる。また、本発明によれば、該フリップチップボンダー用アタッチメントによって半導体チップを対向基板に接合させる方法、及び、該フリップチップボンダー用アタッチメントを備えたアタッチメント−ヒーター複合体及びフリップチップボンダーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントの一例を模式的に示した上面図及び断面図である。
【図2】本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントが突起状電極を有する半導体チップを保持して、半導体チップに熱及び圧力を伝え、封止樹脂を介して半導体チップを対向基板に接合させた状態の一例を模式的に示した断面図である。
【図3】吸着穴を有する本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントの一例を模式的に示した上面図である。
【図4】本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントの一例を模式的に示した断面図である。
【図5】本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントの一例を模式的に示した断面図である。
【図6】本発明のフリップチップボンダー用アタッチメントの一例を模式的に示した断面図である。
【図7】本発明のフリップチップボンダー用ステージ上に配置した対向基板に、封止樹脂を介して半導体チップを接合させた状態の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0044】
(実施例1)
(1)封止樹脂の製造
表1に示す組成に従って、ホモディスパーを用いて下記に示す各材料(重量部)を攪拌混合し、封止樹脂を調製した。
(エポキシ樹脂)
ビスフェノール型エポキシ樹脂(EXA−830−CRP、DIC社製)
NBR変性エポキシ樹脂(EPR−4033、ADEKA社製)
(エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物)
エポキシ基含有アクリル樹脂(ブレンマーCP−30、日油社製)
(硬化剤)
YH−306(酸無水物系硬化剤、JER社製)
(硬化促進剤)
2MA−OK(四国化成工業社製)
(表面処理されたシリカフィラー)
球状シリカ(SE−4050−SPE、アドマテックス社製)
(その他)
シランカップリング剤(SP−1000、日鉱マテリアル社製)
チキソトロピー付与剤(QS−40、トクヤマ社製)
【0045】
(2)使用した半導体チップ及びフリップチップボンダー
ハンダからなる突起状電極を有し、厚みが100μm、大きさ(面積)が7.3mm□(53.29mm)の半導体チップ(WALTS−TEG MB50−0101JY、突起状電極の数544個、ウォルツ社製)を使用した。
また、アイランド部(大きさ7.1mm□、厚み0.5mm)(台座の大きさは22mm□、厚みは1mm)と、アイランド部とは逆側の面に形成された凹部(大きさ6.1mm□、深さ0.8mm)とを有し、凹部のエッジが、凹部の全周においてアイランド部の半導体チップ接触面のエッジよりも0.5mm内側にあるフリップチップボンダー用アタッチメントを使用した。このフリップチップボンダー用アタッチメントは、凹部の対向する辺の中心を結ぶ線上に2個、他の対向する辺の中心を結ぶ線上に2個(合計4個)、凹部のエッジから2mm内側に入ったところに、直径0.5mmφの吸着穴を有していた。このアタッチメントはAlNでできていた。このアタッチメントントを固定させるヒーターの表面材質はAlNでできていた。またステージはSUS製であり、基板の吸着穴は2mmφであり、吸着穴の中心が基板の中心にくるように配置した。
【0046】
(3)半導体チップの実装
得られた封止樹脂を10mLシリンジ(岩下エンジニアリング社製)に充填し、シリンジ先端に精密ノズル(岩下エンジニアリング社製、ノズル先端径0.3mm)を取り付け、ディスペンサ装置(SHOT MASTER300、武蔵エンジニアリング社製)を用いて、吐出圧0.4MPa、対向基板とニードルとのギャップ200μm、塗布量3.3μLにて対向基板(WALTS−KIT MB50−0101JY、ウォルツ社製)上に塗布した。
半導体チップに、フリップチップボンダー(FC3000S、東レエンジニアリング社製)に備えられた上記のフリップチップボンダー用アタッチメントを接触させ、塗布した封止樹脂を介して、半導体チップの突起状電極と対向基板の電極とを位置合わせして、温度120℃、荷重40N(突起状電極1個当たり0.07N)で2秒間押圧することにより、突起状電極と対向基板の電極とを接触させた。その後、フリップチップボンダーにて、温度を120℃から280℃に3秒間で上昇させながら、荷重を40Nから1Nとし、この状態で280℃3秒間、突起状電極と対向基板上の電極との接合を行った。その後、170℃30分加熱し、半硬化状態の封止樹脂を完全に硬化させて、半導体装置を得た。
【0047】
(実施例2)
フリップチップボンダー用アタッチメントとして、アイランド部(大きさ7.1mm□、厚み0.5mm)(台座の大きさは22mm□、厚みは1mm)と、アイランド部とは逆側の面に形成された凹部(大きさ2.1mm□、深さ0.8mm)とを有し、凹部のエッジが、凹部の全周においてアイランド部の半導体チップ接触面のエッジよりも2.5mm内側にあるフリップチップボンダー用アタッチメントを使用した。このフリップチップボンダー用アタッチメントは、凹部の対向する辺の中心を結ぶ線上に2個、他の対向する辺の中心を結ぶ線上に2個(合計4個)、凹部のエッジから2mm内側に入ったところに、直径0.5mmφの吸着穴を有していた。このアタッチメントはAlNでできていた。このフリップチップボンダーのアタッチメントを固定させるヒーターの表面材質はAlNでできていた。またステージはSUS製であった。
上記記載の他は実施例1と同じにして、半導体装置を得た。
【0048】
(実施例3)
フリップチップボンダー用アタッチメントとして、アイランド部(大きさ7.1mm□、厚み0.5mm)(台座の大きさは22mm□、厚みは1mm)を有するフリップチップボンダー用アタッチメントを使用した。このフリップチップボンダー用アタッチメントは、アイランド部の対向する辺の中心を結ぶ線上に2個、他の対向する辺の中心を結ぶ線上に2個(合計4個)、アイランド部のエッジから2.5mm内側に入ったところに直径0.5mmφの吸着穴を有していた。このアタッチメントはアイランド部の周辺部がAlN(熱伝導率:200W/m・K)でできており、アイランドサイズよりエッジから0.5mm小さいサイズでSUS(熱伝導率:20W/m・k)を用いてできていた(SUSでできている材質のサイズ6.1mm□)。このフリップチップボンダーのアタッチメントを固定させるヒーターの表面材質はAlNでできていた。またステージはSUS製であり、基板の吸着穴は2mmφであり、吸着穴の中心が基板の中心にくるように配置した。
上記記載の他は実施例1と同じにして、半導体装置を得た。
【0049】
(実施例4)
フリップチップボンダー用アタッチメントとして、実施例1記載のアタッチメントにおいて、凹部のみがなく、吸着穴は同じ大きさ及び位置であるアタッチメントを用いた。ステージの材質においてベースがSUS製であり、チップサイズよりも1mm小さい6.3mm□の部分のみAlN製である部分をステージ中に作製した。この中心部分に2mmφの吸着穴を作製し、吸着穴の中心が基板の中心にくるように配置した。
上記記載の他は実施例1と同じにして、半導体装置を得た。
【0050】
(実施例5)
フリップチップボンダー用アタッチメントとして、実施例4記載のアタッチメントと同じアタッチメントを使用した。ステージの材質としてSUSを使用し、ステージ表面にチップの大きさに対応する四角い吸着溝を作製した(吸着溝の中心を結んで、チップと同じサイズになるように7.3mm□)。このとき吸着溝の幅は2mmであり、チップのエッジから1mmの幅で吸着溝が重なるように配置した。
上記記載の他は実施例1と同じにして、半導体装置を得た。
【0051】
(比較例1)
アタッチメントは実施例4で用いた凹部のないアタッチメントを使用し、ステージは実施例1で用いたSUS製のステージを用い、他は実施例1と同じにして、半導体装置を得た。
【0052】
<評価>
実施例及び比較例で得られた半導体装置について、下記の評価を行った。結果を表1に示した。
(半導体チップのセンター部とコーナー部の温度差測定)
実施例で使用したチップと基板と樹脂と同じものを使用し、チップのセンター部とコーナー部(チップのコーナー部からセンター部にかけて0.1mm内側の部分)に熱電対のセンサー部がくるようにして、実際の温度を測定した。このジグを用い、フリップチップボンダーのステージを70℃、ヒーターを350℃にして、センター部とコーナー部の実際の温度差を測定した(表中の単位は℃)。
【0053】
(ボイド評価及び接合性評価)
超音波探査映像装置(C−SAM D9500日本バーンズ社製)を用いて、得られた半導体装置のボイドを観察し、下記の基準で評価した。
○ ボイドがほとんど観察されなかった。
△ ボイドがわずかに観察された。
× ボイドによる目立った剥離が観察された。
突起状電極と対向電極の接合性を評価するために、接合後のサンプルの断面観察を行った。
チップ側の半田と基板側の銅電極の濡れ性によって評価した。観察箇所としては、辺の中央部及びコーナー部である。
○ 半田と銅電極が完全に濡れている。
△ 一部濡れていない部分がある。
× 全く濡れていない。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、ボイドを抑制して信頼性の高い半導体装置を製造することのできるフリップチップボンダー用アタッチメント及びステージを提供することができる。また、本発明によれば、該フリップチップボンダー用アタッチメントによって半導体チップを対向基板に接合させる方法、及び、該フリップチップボンダー用アタッチメントを備えたアタッチメント−ヒーター複合体及びフリップチップボンダーを提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 フリップチップボンダー用アタッチメント
2 アイランド部
3 凹部
4 突起状電極を有する半導体チップ
4a 突起状電極
5 封止樹脂
6 対向基板
7 ステージ
8 吸着穴
9 熱伝導率の低い材料からなる部分
10 熱伝導率の低い材料からなる部分
11 ヒーター
12 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起状電極を有する半導体チップを保持して、前記半導体チップに熱及び圧力を伝え、封止樹脂を介して前記半導体チップを対向基板に接合させるためのフリップチップボンダーに用いられるアタッチメントであって、
前記半導体チップから投影される部分の周辺部よりも内部のほうが、熱伝導率が低い
ことを特徴とするフリップチップボンダー用アタッチメント。
【請求項2】
半導体チップから投影される部分の周辺部よりも内部のほうが、熱伝導率の低い材料からなることを特徴とする請求項1記載のフリップチップボンダー用アタッチメント。
【請求項3】
半導体チップに接触するアイランド部と、前記アイランド部とは逆側の面に形成された凹部とを有し、
前記凹部のエッジが、前記凹部の全周において前記アイランド部の半導体チップ接触面のエッジよりも内側にある
ことを特徴とする請求項1記載のフリップチップボンダー用アタッチメント。
【請求項4】
凹部のエッジが、前記凹部の全周においてアイランド部の半導体チップ接触面のエッジよりも0.1〜2mm内側にあることを特徴とする請求項3記載のフリップチップボンダー用アタッチメント。
【請求項5】
凹部の内側かつ前記凹部の対向する辺の中心を結ぶ線上に、複数個の、半導体チップを保持するための吸着穴を有することを特徴とする請求項3又は4記載のフリップチップボンダー用アタッチメント。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載のフリップチップボンダー用アタッチメントと、フリップチップボンダーに用いられるヒーターとを有することを特徴とするアタッチメント−ヒーター複合体。
【請求項7】
請求項1、2、3、4又は5記載のフリップチップボンダー用アタッチメントによって半導体チップを対向基板に接合させる方法であって、
封止樹脂を半導体チップ又は対向基板上に設ける工程と、
前記半導体チップを請求項1、2、3、4又は5記載のフリップチップボンダー用アタッチメントに保持して、ステージ上に配置した前記対向基板に向けて位置合わせする工程と、
請求項1、2、3、4又は5記載のフリップチップボンダー用アタッチメントから前記半導体チップに熱及び圧力を伝えることで、前記半導体チップの突起状電極と前記対向基板上の電極との接合を行う工程とを有する
ことを特徴とする半導体チップを対向基板に接合させる方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体チップを対向基板に接合させる方法であって、対向基板を吸着させるためのステージの吸着穴又は吸着溝の位置を、半導体チップを対向基板に投影した部分のエッジ周辺部に対応した位置に配置することを特徴とする半導体チップを対向基板に接合させる方法。
【請求項9】
突起状電極を有する半導体チップを保持して、前記半導体チップに熱及び圧力を伝え、封止樹脂を介して前記半導体チップを対向基板に接合させるためのフリップチップボンダーに用いられるステージであって、
前記半導体チップから投影される部分の周辺部のほうが、内部よりも熱伝導率が低い
ことを特徴とするフリップチップボンダー用ステージ。
【請求項10】
半導体チップから投影される部分の周辺部のほうが、内部よりも熱伝導率の低い材料からなることを特徴とする請求項9記載のフリップチップボンダー用ステージ。
【請求項11】
請求項6記載のアタッチメント−ヒーター複合体、又は、請求項9若しくは10記載のフリップチップボンダー用ステージを備えることを特徴とするフリップチップボンダー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−98264(P2013−98264A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238032(P2011−238032)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】