説明

フルオロアルカンスルホンアミド誘導体の製造方法

【課題】工業的規模での製造に適したフルオロアルカンスルホンアミド誘導体の合成方法を提供する。
【解決手段】フルオロアルカンスルホン酸無水物を有機第1アミンと特定の塩基存在下、水と有機溶媒の混合溶媒中、反応させ、フルオロアルカンを製造する。該反応は無機塩基の存在下、反応温度が−10℃〜50℃、有機第1級アミン1gあたり0.2g〜100gの水と0.5g〜100gの非水溶性有機溶媒を共存させることが特に好ましい。本発明によれば、安価な原料から、高い収率で目的のフルオロスルホンアミド化合物を高純度で得ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次世代フォトレジストに対応するモノマー等、有機中間体として有用な化合物である式[3]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体
【0002】
【化14】

【0003】
(式中、Rは炭素数1〜20のパーフルオロアルキレン基{−(C2a)−;aは1〜20の整数を意味する。}を表す。Rは、フッ素原子、水素原子または、二重結合を有していてもよい有機官能基を表す。RとRは1つになって、環状構造を形成してもよい。Rは少なくとも1箇所に重合性二重結合を有する有機官能基である。)
の製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
式[3]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体は、有機中間体として有用な化合物であり、例えば次世代フォトレジストに対応するモノマーとして期待される化合物である。
【0005】
式[3]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体もしくは、その類縁化合物は、例えば次のa法〜d法の各種方法で合成できることが知られている。
【0006】
[a法]
トリフルオロメタンスルホン酸無水物
【0007】
【化15】

【0008】
と、1−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−イルメタンアミンとを、無水塩化メチレン溶媒中、塩基としてトリエチルアミンの存在下、反応させる例(非特許文献1)。
【0009】
[b法]
トリフルオロメタンスルホン酸フルオリド
【0010】
【化16】

【0011】
と、1−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−イルメタンアミンとを、無水塩化メチレン溶媒中、塩基としてトリエチルアミンの存在下で、反応させる例(非特許文献1)。
【0012】
[c法]
トリフルオロメタンスルホン酸クロリド
【0013】
【化17】

【0014】
をスルホン化剤として用い、これを塩基としてピリジンの存在下で、無水エーテル溶媒中で、アニリンと反応させ、トリフルオロメタンスルホン酸アニリドを合成する例(非特許文献2)。
【0015】
[d法]
m−トリフルオロメチルフェニルスルホン酸クロリドをスルホン化剤として用い、これを塩基として20%水酸化ナトリウム溶液の存在下、エーテル溶媒中で、1−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−イルメタンアミンと反応させ、N−(m−トリフルオロメチルフェニルスルホニル)−5−アミノメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンを合成する例(非特許文献1)。
【0016】
この他に、トリフルオロメチル基を含有するスルホン酸ハライドを、アミン系化合物と反応させ、[−SO−NH−]結合を形成する反応の例として、特許文献1〜3等が知られている。
【非特許文献1】Zhurnal OrganicheskoiKhimii(ロシア国)、(1995), 31(3), p.357-64
【非特許文献2】Journal of Chemical Society, vol.6 (5), p.2574-2578 (1957年刊行)
【特許文献1】特開平8−81436号公報
【特許文献2】特開平11−209338号公報
【特許文献3】国際公開97/23448号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述のように、フルオロアルカンスルホン酸ハライドを、アミン類と反応させ、[−SO−NH−]結合を形成する反応としては、数多くの例が知られている。しかし、重合性二重結合を有する基質が関与するスルホンアミド化反応に対して、フルオロアルカンスルホン酸ハライドを原料に用いると、副反応として「不飽和結合へのハロゲンの付加反応」が起こるという問題がある。例えば、トリフルオロメタンスルホン酸クロライドを原料に用いて、スルホンアミド化合物の合成を行うと、次式で表されるN−[(6−クロロビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−イル)メチル]−1,1,1−トリフルオロメタンスルホンアミド(塩素付加体)が、2%〜3%副生する。
【0018】
【化18】

【0019】
この「ハロゲン付加体」を目的物から分離することは容易ではない。例えば蒸留で分離するには高段数の蒸留塔を用いた精密蒸留が必要である。蒸留収率も低く、大量規模での製造には必ずしも有利とは言えない。
【0020】
これに対し、「フルオロアルカンスルホン酸無水物」を、有機第1級アミン類と反応させ、フルオロアルカンスルホンアミドを合成した例ははるかに少ない(上述の[a法])。フルオロアルカンスルホン酸無水物は、1分子中にフルオロアルキル鎖(例えばCF基)が2個存在するため、その単価はフルオロアルカンスルホン酸ハライドに比べて高いことが多い。しかしながら、フルオロアルカンスルホン酸無水物を用いる場合には、上述のような副反応(付加反応)は進行しない。この結果、反応後の精製の負荷が著しく軽減され、特に要求される目的物の純度が高い場合には、総合的には却って有利になる。特に、電子材料に用いられる材料への塩素の混入は好ましくないことから、そのような用途に供される目的物を製造する際には、塩素付加体の副生がない「フルオロアルカンスルホン酸無水物」を使用することは非常に有用である。
【0021】
上述のように、この「フルオロアルカンスルホン酸無水物」を原料とする、フルオロアルカンスルホンアミド誘導体の製造方法としては、上記[a法]が知られている。同方法によれば、高い選択率で目的物を製造でき、分離の難しい副生物も生成しないというメリットがある。
【0022】
しかしながら、この方法の主たる問題点は、トリエチルアミンという比較的高価な有機塩基を用いることにある。またこの塩基は、反応後に有機廃液として処理しなければならないため、処理費用が大きい。さらに、反応に伴い副生成物として、水にも有機相にも難溶解性の「フルオロアルカンスルホン酸のトリエチルアミン塩」が析出するため、該塩を濾過で除去する工程が必須であり、後処理に過大な負担がかかる。
【0023】
すなわち、非特許文献1記載の「フルオロアルカンスルホン酸無水物」を原料とする方法は、小規模〜中規模で目的物を生産するには有用な方法であるが、大量規模での生産にはなお十分とは言えず、さらなる改善が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らはかかる問題点に鑑み、大量規模での製造に適したフルオロアルカンスルホンアミド誘導体の製造法を確立するべく、鋭意検討を行なった。
【0025】
その結果、式[1]で表されるフルオロアルカンスルホン酸無水物と、式[2]で表される有機第1級アミンとを、水の存在下、および、「アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属含有の塩基性塩」から選ばれる塩基の存在下、反応させることにより、高収率で目的とする式[3]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体を製造できることを見出し、本発明に到達した。
【0026】
本発明において「アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属含有の塩基性塩」から選ばれる塩基とは、一般に「無機塩基」として知られている物質に該当する。ここで「アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属含有の塩基性塩」とは、アルカリ金属水酸化物もしくはアルカリ土類金属水酸化物の、酢酸、プロピオン酸、ホウ酸、リン酸、炭酸など、「弱酸ないし中程度の酸」との塩であって、塩基性(例えば0.1mol・dm−3濃度の水溶液を調整したとき、pHが8以上の値を示すものをいう)を呈するものをいう。このような無機塩基を使用できるようになったことで、製造コストを大幅に削減できることとなった。
【0027】
本発明においては、反応系内に水を共存させることが重要である。すなわち、水を共存させ、二相系(不均一系)にすることによって、「無機塩基」を用いた場合でも目的反応が高い収率で進行するようになった。また反応に伴い副生するフルオロアルカンスルホン酸塩は水に易溶であることから、反応後の精製処理の負荷も大幅に低減されることとなった。
【0028】
一般に酸無水物は水と接触すると、容易に、対応する酸(カルボン酸やスルホン酸)へと分解してしまうことが知られている(例えば「化学大辞典」(共立出版株式会社)、第3巻、997頁を参照)。このため、カルボン酸無水物やスルホン酸無水物を反応剤として使用する場合、反応は専ら無水条件下で行われる。上記[a法]もこの例外ではない。
【0029】
ところが、式[3]で表されるフルオロアルカンスルホンアミドの合成に関しては、上記[a法]にならって、フルオロアルカンスルホン酸無水物を原料とし、塩基として上述の「無機塩基」を用いた場合、無水条件では、目的の反応はごく低い収率でしか進行しない(比較例を参照)。
【0030】
本発明者らはこのような状況に鑑み、水を系内に共存させることを試みたところ、意外にも目的反応が高収率で進行するようになることを見出した。すなわち、本反応系では、水が系内に共存しても、「水によるフルオロアルカンスルホン酸無水物の分解」は有意には起こらず、目的反応が優先して起こることが判明した。その結果、目的とするフルオロアルカンスルホンアミドを、従来技術よりも格段に有利に製造できることとなった。
【0031】
本発明者らは、上記反応を、式[1]で表されるフルオロアルカンスルホン酸無水物または水の何れか一方を、反応系内に逐次添加または連続添加する方法で実施することにより、一層好ましく進行することを見出した。
【0032】
本発明者らは、さらに上記反応が、非水溶性有機溶媒の共存下で、一層好ましく進行することを見出した。また、上述の「無機塩基」の種類、水の量、非水溶性有機溶媒の種類や量などが特定のものであることが一層好ましいことを見出し、本発明の完成に到達した。
【0033】
すなわち、本発明は[発明1]〜[発明14]を含み、フルオロアルカンスルホンアミドを製造するための新規方法を提供する。
【0034】
[発明1]
式[1]で表されるフルオロアルカンスルホン酸無水物
【0035】
【化19】

【0036】
と、式[2]で表される有機第1級アミン
【0037】
【化20】

【0038】
とを、水の存在下、および、「アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属含有の塩基性塩」から選ばれる塩基の存在下、反応させることを特徴とする、式[3]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体
【0039】
【化21】

【0040】
の製造方法。
(式中、Rは炭素数1〜20のパーフルオロアルキレン基{−(C2a)−;aは1〜20の整数を意味する。}を表す。Rは、フッ素原子、水素原子または、二重結合を有していてもよい有機官能基を表す。RとRは1つになって、環状構造を形成してもよい。Rは少なくとも1箇所に重合性二重結合を有する有機官能基である。)
[発明2]
発明1において、Rがフッ素原子であり、かつRが式[4]で表される官能基
【0041】
【化22】

【0042】
である、式[3a]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体
【0043】
【化23】

【0044】
の製造方法。
(式中、Aは[4a]、[4b]、[4c]の何れかの官能基
【0045】
【化24】

【0046】
【化25】

【0047】
【化26】

【0048】
を表す。R2aは炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数5〜40の脂環基、または炭素数5〜40の芳香環基を表し、炭素の一部が窒素、酸素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素で置換されていても良い。)
[発明3]
発明1において、[R−R]がトリフルオロメチル基であり、かつRが式[5]で表される官能基が
【0049】
【化27】

【0050】
である、式[3b]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体
【0051】
【化28】

【0052】
の製造方法。
(式中、Xは−CH−、−O−、−S−の何れかを表す。nは0〜6の整数を表す。)
[発明4]
Xが−CH−を表し、nが2〜6の整数である、請求項3に記載のフルオロアルカンスルホンアミド誘導体の製造方法。
【0053】
[発明5]
フルオロアルカンスルホン酸無水物または水の何れか一方を、反応系内に逐次添加または連続添加することにより、反応を行うことを特徴とする、発明1〜発明4の何れかに記載のフルオロアルカンスルホンアミド誘導体の製造方法。
【0054】
[発明6]
非水溶性有機溶媒をさらに共存させて、反応を行うことを特徴とする、発明1〜発明5の何れかに記載の方法。
【0055】
[発明7]
塩基が水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸水素二ナトリウム、燐酸水素二カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、発明1〜発明6の何れかに記載の方法。
【0056】
[発明8]
塩基が炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、発明1〜発明7の何れかに記載の方法。
【0057】
[発明9]
非水溶性有機溶媒がペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、発明6〜発明8の何れかに記載の方法。
【0058】
[発明10]
水の量が、有機第1級アミン1gあたり、0.2g〜100gであることを特徴とする、発明1〜発明9の何れかに記載の方法。
【0059】
[発明11]
非水溶性有機溶媒の量が、有機第1級アミン1gあたり、0.5g〜100gであることを特徴とする、発明6〜発明10の何れかに記載の方法。
【0060】
[発明12]
反応を行う際の温度が、−10℃〜50℃であることを特徴とする、発明1〜発明11の何れかに記載の方法
[発明13]
式[1]で表されるフルオロアルカンスルホン酸無水物
【0061】
【化29】

【0062】
と、式[2]で表される有機第1級アミン
【0063】
【化30】

【0064】
とを、水の存在下、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸水素二ナトリウム、および燐酸水素二カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の塩基の存在下、反応させ、式[3]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体
【0065】
【化31】

【0066】
を製造する方法であって、
フルオロアルカンスルホン酸無水物以外の反応試薬を予め反応器に投入し、そこにフルオロアルカンスルホン酸無水物を逐次または連続的に導入して反応を行い、反応の際、有機第1級アミン1gあたり0.2g〜100gの水と、0.5g〜100gの非水溶性有機溶媒を共存させ、かつ、−10℃〜50℃で反応させる、ことを特徴とする、式[3]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体の製造方法。
(式中、Rは炭素数1〜20のパーフルオロアルキレン基{−(C2a)−;aは1〜20の整数を意味する。}を表す。Rは、フッ素原子、水素原子または、二重結合を有していてもよい有機官能基を表す。RとRは1つになって、環状構造を形成してもよい。Rは少なくとも1箇所に重合性二重結合を有する有機官能基である。)
[発明14]発明13に記載のフルオロアルカンスルホンアミド誘導体の製造方法であって、
塩基の種類が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムからなる群より選ばれ、
水の量が、有機第1級アミン1gあたり2g〜6gであり、なおかつ、
非水溶性有機溶媒の量が、有機第1級アミン1gあたり2g〜5gであることを特徴とする、発明13に記載の方法。
【発明の効果】
【0067】
本発明によれば、式[3]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体を、安価な原料から高収率で製造することができる。また、「無機塩基」を用いることができることから廃液の処理等、反応後の操作の負荷も軽減され、大量規模で目的化合物を製造するために有用である。
【0068】
本発明の方法によれば、有害物質である塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素等を用いる必要もなく、塩を濾過で除去する工程が削減できるため操作も簡便になることから、工業的な規模で目的物を製造する上で特に有用な方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明は、式[1]で表されるフルオロアルカンスルホン酸無水物と、式[2]で表される有機第1級アミンを、水の存在下、および「アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属含有の塩基性塩」から選ばれる塩基の存在下、反応させることによって達成される。以下においてその反応条件を述べるが、当業者が容易に調節しうる程度の反応条件の変更を妨げるものではない。
【0070】
式[1]で表されるフルオロアルカンスルホン酸無水物におけるRは炭素数1〜20のパーフルオロアルキレン基[−(C2a)−;aは1〜20の整数]を表す。中でも炭素数1〜6のものが好ましく、炭素数1〜2が特に好ましい。一方、Rは、フッ素原子、水素原子、または、二重結合を有していてもよい有機官能基を表す。中でも、Rがまとまってトリフルオロメチル基であることは特に好ましい。この場合、式[1]の化合物はトリフルオロメタンスルホン酸無水物である。Rがフッ素、水素以外の場合としては、二重結合を有していてもよい有機官能基であるが、該有機官能基は、O、S、N、F等のヘテロ原子を有していてもよく、環状構造を有していてもよい。具体的には、アダマンチル基、−(CO)−O−R(ここでRは炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基または、次の官能基
【0071】
【化32】

【0072】
【化33】

【0073】
を表す。)基、−CHCH−O−R(ここでRは前記と同じ)が、生成物の有用性から、特に好ましい。
【0074】
式[1]で表される化合物として好ましく用いることのできる化合物を以下に列記する。
【0075】
【化34】

【0076】
式[2]で表される有機第1級アミンのRは、少なくとも1箇所に重合性二重結合を有する有機官能基である。既に記したように、重合性二重結合を有する基質に、フルオロアルカンスルホン酸ハライドを反応させると、二重結合部位への付加反応が生じやすい。しかし、フルオロアルカンスルホン酸無水物を用いるとそのような副反応がないため、工業的に有利である。ここで「重合性二重結合基」としては、アリール基、アクリル酸基、メタクリル酸基、ビニル基、ノルボルネニル基などが挙げられる。Rとしては、これらの重合性二重結合基が、直接、有機第1級アミンのN原子に結合した基や、該重合性二重結合部位が、アルキレン基(これらのアルキレン基は直鎖または分岐鎖であり、一部または全体が環を形成していてもよい。通常炭素数は1〜25、好ましくは1〜12である。また当該アルキレン基を構成する炭素原子の一部が酸素または硫黄原子と置換してもよい。)を介してN原子に結合した基が好適である。例えば次のような基が列挙できる。
【0077】
【化35】

【0078】
式[2]で表される化合物として好ましく用いることのできる化合物を以下に列記する。
【0079】
【化36】

【0080】
【化37】

【0081】
【化38】

【0082】
【化39】

【0083】
【化40】

【0084】
【化41】

【0085】
【化42】

【0086】
【化43】

【0087】
【化44】

【0088】
【化45】

【0089】
【化46】

【0090】
【化47】

【0091】
【化48】

【0092】
【化49】

【0093】
【化50】

【0094】
【化51】

【0095】
【化52】

【0096】
【化53】

【0097】
【化54】

【0098】
【化55】

【0099】
【化56】

【0100】
【化57】

【0101】
【化58】

【0102】
【化59】

【0103】
【化60】

【0104】
本発明の中で、Rがフッ素原子であり、かつRが式[4]で表される官能基である、式[3a]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体は、生成物の有用性から、好ましい例である。ここで、R2aは炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数5〜40の脂環基、または炭素数5〜40の芳香環基であるが、炭素数1〜3のアルキレン基、炭素数5〜20の脂環基、炭素数5〜20の芳香環基は特に好ましい。
【0105】
また、[R−R]がトリフルオロメチル基であり、かつRが式[5]で表される官能基である、式[3b]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体も、生成物の有用性から、特に好ましい例である。nは0〜6の整数であるが、2〜6の整数が好ましく、2のものが特に好ましい。
【0106】
(反応の形式)
本発明の方法は、バッチ式反応装置によって実施するのが簡便で、有利である。
【0107】
また、フルオロアルカンスルホン酸無水物または水の何れか一方を、反応系内に逐次添加または連続添加する方式で行うと、フルオロアルカンスルホン酸無水物と水との接触を最小限に抑えることができ、不要な副反応であるフルオロアルカンスルホン酸への分解反応を抑制できるため、好ましい。前述のように、本発明の反応系では、トリフルオロメタンスルホン酸への分解反応よりも、目的化合物であるフルオロアルカンスルホンアミドの生成が優先するため、敢えてこのような逐次または連続的な添加方式をとらなくとも、目的物を得ることは可能である。しかし、逐次または連続添加方式をとることによって、目的物の収率を向上でき、併せて反応の制御も行いやすくなる。このため本発明においては、フルオロアルカンスルホン酸無水物または水の何れか一方を、反応系内に逐次添加または連続添加し、反応の進行状況や反応系の温度を測定しつつ、添加速度を調節していくことが特に好ましい。中でもフルオロアルカンスルホン酸無水物を逐次または連続的に添加していく方法が好ましい。
【0108】
(原料の混合比)
本発明で使用する出発原料の、式[1]で表されるフルオロアルカンスルホン酸無水物と、式[2]で表される有機第1級アミンの混合比に特別の制限はないが、1:1のモル比での反応であるため、通常、両者を等モル比率(1:1)前後で混合することが好ましい。具体的には、有機第1級アミン1モルに対して、フルオロアルカンスルホン酸無水物は、通常0.5モル〜2モルであり、0.9モル〜1.5モルが好ましく、1モル〜1.2モルがより好ましい。0.5モル未満では反応に関与しない有機第1級アミンが多くなって、経済的に不利であるばかりでなく、反応終了後に着色が生じることがあり、精製に負荷がかかる場合がある。また、2モルを超えると反応に関与しないフルオロアルカンスルホン酸無水物が増加し、廃棄の手間から経済的に好ましくない。
【0109】
(塩基について)
本発明に用いることができる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどの、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸水素二ナトリウム、燐酸水素二カリウムなど、「アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属含有の塩基性塩」が挙げられる。これらのうち経済性、その取り扱い易さ、塩基としての反応性の高さなどから炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。
【0110】
本反応に使用する塩基の量は基質の有機第1級アミン1モルに対して、一価の塩基の場合0.2モル〜2モルであり、0.5モル〜1.5モルが好ましく、0.9モル〜1.2モルがより好ましい。基質の有機第1級アミン1モルに対して塩基の量が0.2モル未満では反応の選択率、目的物の収率共に低下し、2モルを超えると反応に関与しない塩基の量が増加するため経済的に好ましくない。これらの量関係は、塩基の価数に反比例し、例えば二価の塩基の場合は、この半分である。
【0111】
(水の量について)
本発明においては、その反応性の増大を達成するために、水を反応系に共存させることが必要である。また、水を共存させることによって、反応に伴い析出するフルオロアルカンスルホン酸塩が水相に溶解するため、非特許文献1とは異なり「難溶解性塩の析出」を回避でき、操作性も著しく改善される。
【0112】
共存させる水の量は、有機第1級アミン1gに対して通常、0.2g〜100g(20重量%〜10000重量%)であり、1g〜10g(100重量%〜1000重量%)が好ましく、2g〜6g(200重量%〜600重量%)がより好ましい。有機第1級アミン1gに対して共存させる水の量が0.2g(20重量%)未満では、収率向上の程度が小さく、敢えて水を添加する効果を得られにくいため好ましくない。これに対して、水の量が1g(100重量%)以上、より好ましくは1.5g(150重量%)以上、さらに好ましくは2g(200重量%)以上であると、本発明に利用する無機塩基を十分量溶解させることができ、高い反応性を確保できるのみならず、反応に伴い副生するフルオロアルカンスルホン酸塩をより確実に溶解できる。このような過剰量の水を用いることは、特に大量規模で反応を実施する場合に著しく有利である。したがって、水の量が1.5g〜6g、とりわけ2g〜6g(200重量%〜600重量%)であることは、本発明を実施する上で、一層好ましい。本発明は、このような大過剰の水を系内に共存させても、フルオロアルカンスルホン酸無水物の水との反応は有意に起こらず、なおかつ、有機第1級アミンとの反応は大幅に促進される、という点に特徴がある。
【0113】
一方、水の量が100gを超えると生産性の観点から経済的に好ましくない。
【0114】
(非水溶性有機溶媒について)
本反応においては、収率の向上と、生成した目的物と副生したフルオロアルカンスルホン酸塩水溶液との分離を容易にする目的で、非水溶性有機溶媒をさらに系内に共存させることが好ましい。
【0115】
使用可能な非水溶性有機溶媒の種類に特別な制限はないが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族化合物、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物を用いることができ、これらは単独で用いても、複数の溶媒を併用しても良い。また、上述の通り、非特許文献1においては、溶媒として塩化メチレンが使用されていたが、本発明では、このようなハロゲン化炭化水素を使用しなくとも、反応は良好に進行するという利点もある。したがって本発明では、その利点を一層活かす上で、ハロゲン系炭化水素やベンゼンなどよりも、環境の負荷の少ないトルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ジイソプロピルエーテルなどを用いることが一層好ましい。
【0116】
本反応に非水溶性有機溶媒を使用する場合、その量は有機第1級アミン1gに対して通常、0.5g〜100gであり、1g〜10gが好ましく、2g〜5gがより好ましい。溶媒量が1g、特に、2g以上であると、無機塩基が溶解する水相と、反応物が溶解する有機相が良好な二相系を形成し、目的物の収率の観点で良好である。一方、溶媒量が有機第1級アミン1gに対して0.5g未満では、反応後の二層分離が困難となる等、操作性の問題も起こることがある。また、100gを超えると生産性の観点から経済的に好ましくない。
【0117】
本発明を実施するには、例えば、有機第1級アミン1gに対して水が1g〜10g、非水溶性有機溶媒が1〜10gであることは好ましい組み合わせである。そして水が2〜6g、非水溶性有機溶媒が2〜5gであることは特に好ましい組み合わせである。
【0118】
(温度について)
本発明を実施する際の反応温度は通常、−20℃〜100℃であり、−15℃〜70℃が好ましく、−10℃〜50℃がより好ましい。−20℃未満では反応系中の水が固化する場合があるため操作性が低下し、100℃を超えると生成物の分解等が起こる場合があるため好ましくない。
【0119】
(反応器について)
本発明の反応を行う反応器に特に制限はなく、密閉系、開放系どちらでも用いることができる。材質としては、四フッ化エチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂、ガラスなどを内部にライニングしたもの、グラス容器、もしくはステンレスで製作したものが好ましい。
【0120】
本発明を実施する方法は限定されるものではないが、望ましい態様の一例につき、詳細を述べる。反応条件に耐えられる反応器に塩基、溶媒および原料の有機第1級アミンを加え、外部より温度を制御しながら、フルオロアルカンスルホン酸無水物を加えて撹拌する。サンプリング等により原料の消費をモニタリングして、反応が終了したことを確認することが好ましい。
【0121】
(精製方法について)
本発明の方法で製造された式[3]で表されるフルオロアルカンスルホンアミドは公知の方法を適用して精製できる。
【0122】
本発明の反応を実施した後は、目的物フルオロアルカンスルホンアミドは有機相(未反応原料や非水溶性有機溶媒等からなる相)中に存在し、副生したフルオロアルカンスルホン酸塩は水相に溶存している。このため、反応液を二層分離することで、容易にフルオロアルカンスルホン酸塩を系外に除去できる。その後、水洗し、さらに溶媒を留去することで粗有機物が得られる。得られた粗有機物は、分離の難しい副生物を含まないことから、カラムクロマトグラフィーや蒸留等の精製を行うことで、容易に高純度のフルオロアルカンスルホンアミドを得ることができる。
【0123】
本発明は、式[1]で表されるフルオロアルカンスルホン酸無水物と、式[2]で表される有機第1級アミンとを、水の存在下、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸水素二ナトリウム、および燐酸水素二カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の塩基の存在下、反応させる方法であって、なおかつ、フルオロアルカンスルホン酸無水物以外の反応試薬を予め反応器に投入し、そこにフルオロアルカンスルホン酸無水物を逐次または連続的に導入して反応を行い、反応の際、有機第1級アミン1gあたり0.2g〜100gの水と、0.5g〜100gの非水溶性有機溶媒を共存させ、かつ、−10℃〜50℃で反応させると、特に、高い収率で、しかも操作的にも有利にフルオロアルカンスルホンアミドを製造でき、本発明を実施する上で特に好ましい態様である。
【0124】
また、その中でも、
フルオロアルカンスルホン酸無水物以外の反応試薬を予め反応器に投入し、そこにフルオロアルカンスルホン酸無水物を逐次または連続的に導入して反応を行い、
塩基の種類は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムからなる群より選ばれ、なおかつ、
反応の際、有機第1級アミン1gあたり2g〜6gの水と、2g〜5gの非水溶性有機溶媒を共存させ、かつ、反応温度が−10℃〜50℃である、
という態様は、特に優れたものとして挙げられる。
【0125】
[実施例]
以下、実施例により本発明を詳細に説明するがこれらの実施態様に限られない。ここで、組成分析値の「%」とは、反応混合物の一部を採取してガスクロマトグラフィーによって測定して得られた、溶媒成分を除く有機成分の「面積%」を表す。
【実施例1】
【0126】
滴下ロートおよび撹拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコにヘプタンを100g、水酸化ナトリウムを17.9g(0.45モル)、水を200g(11.1モル)、下記式で表される有機第1級アミン
【0127】
【化61】

【0128】
を51.3g(0.41モル)入れ撹拌した。外部冷却装置により内温が10℃以下になったところで、トリフルオロメタンスルホン酸無水物114g(0.41モル)を滴下ロートより1時間かけて添加した。滴下終了後、内温20℃で1時間撹拌した後、組成をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、目的とするN−(ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−イルメチル)−1,1,1−トリフルオロメタンスルホンアミドの異性体混合物が合計99.4%であった。その他に原料の1−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−イルメタンアミンが0.6%検出された。反応液を分液ロートにて二層分離後、有機層を5%硫酸水溶液100mlで洗浄し、続いて100mlの水で2回洗浄した。得られた溶液を溶媒留去して粗有機物を得た。この粗有機物を、減圧蒸留し、90.7gの下記式のフルオロアルカンスルホンアミドの異性体混合物
【0129】
【化62】

【0130】
が得られた。ガスクロマトグラフィーにより組成を調べたところ、目的物である下記のフルオロアルカンスルホンアミド(endo体とexo体の混合物)の純度は99.9%であった。収率は86%であった。
【実施例2】
【0131】
滴下ロートおよび撹拌装置を備えた1Lの四つ口フラスコにヘプタンを100g、水酸化ナトリウムを17.9g(0.45モル)、水を200g、下記式で表される有機第1級アミン
【0132】
【化63】

【0133】
を56.2g(0.41モル)入れ撹拌した。外部冷却装置により内温が10℃以下になったところで、トリフルオロメタンスルホン酸無水物114g(0.41モル)を滴下ロートから1時間かけて添加した。滴下終了後、内温50℃で1時間撹拌した後、組成をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、目的とする次式のフルオロアルカンスルホンアミドの異性体混合物の合計が99.9%であった。反応液を分液ロートにて二層分離後、有機層を5%硫酸水溶液100mlで洗浄し、続いて100mlの水で2回洗浄した。
【0134】
得られた溶液を溶媒留去し粗有機物を得た。この粗有機物を、減圧蒸留に付し、留分を集め、目的物の異性体混合物を得た。ガスクロマトグラフィーにより組成を調べたところ、目的物である下記式のフルオロアルカンスルホンアミドの異性体混合物
【0135】
【化64】

【0136】
の合計が99.9%、その他が0.2%であった。収率は87%であった。
【0137】
[比較例1]
実施例1と同一の原料を用いて、水を加えず、無水条件下(窒素雰囲気)で反応を行った他は、実施例1と同一の条件で、反応および後処理を行った。その結果、目的とする含フルオロアルカンスルホンアミドの異性体混合物(純度99.9%)は得たものの、収率は40%であった。
【0138】
[比較例2]
実施例2と同一の原料を用いて、水を加えず、無水条件下(窒素雰囲気)で反応を行った他は、実施例2と同一の条件で、反応および後処理を行った。その結果、目的とするフルオロアルカンスルホンアミドの異性体混合物(純度99.8%)は得たものの、収率は41.5%であった。
[実施例3〜9、および、比較例3〜9]
実施例3〜9については実施例1と、比較例3〜9については比較例1と、それぞれ、同一の条件(試薬のモル量、操作、温度、時間を全て一致させた条件)で、反応を行った。得られた結果を表1にまとめる。
【0139】
【表1】

【0140】
このように、水を共存させた実施例3〜9では、無水条件の比較例3〜9に比較して、目的物の収率に顕著な向上が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明によれば、安価な原料から、より高い収率でフルオロスルホンアミド化合物を製造ことが可能となる。反応後の精製操作も容易であり、大量規模でフルオロスルホンアミド化合物を製造するのに好適な優れた方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[1]で表されるフルオロアルカンスルホン酸無水物
【化1】

と、式[2]で表される有機第1級アミン
【化2】

とを、水の存在下、および、「アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属含有の塩基性塩」から選ばれる塩基の存在下、反応させることを特徴とする、式[3]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体
【化3】

の製造方法。
(式中、Rは炭素数1〜20のパーフルオロアルキレン基{−(C2a)−;aは1〜20の整数を意味する。}を表す。Rは、フッ素原子、水素原子または、二重結合を有していてもよい有機官能基を表す。RとRは1つになって、環状構造を形成してもよい。Rは少なくとも1箇所に重合性二重結合を有する有機官能基である。)
【請求項2】
がフッ素原子であり、かつRが式[4]で表される官能基
【化4】

である、請求項1に記載の式[3a]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体
【化5】

の製造方法。
(式中、Aは[4a]、[4b]、[4c]の何れかの官能基
【化6】

【化7】

【化8】

を表す。R2aは炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数5〜40の脂環基、または炭素数5〜40の芳香環基を表し、炭素の一部が窒素、酸素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素で置換されていても良い。)
【請求項3】
[R−R]がトリフルオロメチル基であり、かつRが式[5]で表される官能基
【化9】

である、請求項1に記載の式[3b]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体
【化10】

の製造方法。
(式中、Xは−CH−、−O−、−S−の何れかを表す。nは0〜6の整数を表す。)
【請求項4】
Xが−CH−を表し、nが2〜6の整数である、請求項3に記載のフルオロアルカンスルホンアミド誘導体の製造方法。
【請求項5】
フルオロアルカンスルホン酸無水物または水の何れか一方を、反応系内に逐次添加または連続添加することにより、反応を行うことを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れかに記載のフルオロアルカンスルホンアミド誘導体の製造方法。
【請求項6】
非水溶性有機溶媒をさらに共存させて、反応を行うことを特徴とする、請求項1〜請求項5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
塩基が水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸水素二ナトリウム、燐酸水素二カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1〜請求項6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
塩基が炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1〜請求項7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
非水溶性有機溶媒がペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項6〜請求項8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
水の量が、有機第1級アミン1gあたり、0.2g〜100gであることを特徴とする、請求項1〜請求項9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
非水溶性有機溶媒の量が、有機第1級アミン1gあたり、0.5g〜100gであることを特徴とする、請求項6〜請求項10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
反応を行う際の温度が、−10℃〜50℃であることを特徴とする、請求項1〜請求項11の何れかに記載の方法
【請求項13】
式[1]で表されるフルオロアルカンスルホン酸無水物
【化11】

と、式[2]で表される有機第1級アミン
【化12】

とを、水の存在下、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸水素二ナトリウム、および燐酸水素二カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の塩基の存在下、反応させ、式[3]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体
【化13】

を製造する方法であって、
フルオロアルカンスルホン酸無水物以外の反応試薬を予め反応器に投入し、そこにフルオロアルカンスルホン酸無水物を逐次または連続的に導入して反応を行い、反応の際、有機第1級アミン1gあたり0.2g〜100gの水と、0.5g〜100gの非水溶性有機溶媒を共存させ、かつ、−10℃〜50℃で反応させる、ことを特徴とする、式[3]で表されるフルオロアルカンスルホンアミド誘導体の製造方法。
(式中、Rは炭素数1〜20のパーフルオロアルキレン基{−(C2a)−;aは1〜20の整数を意味する。}を表す。Rは、フッ素原子、水素原子または、二重結合を有していてもよい有機官能基を表す。RとRは1つになって、環状構造を形成してもよい。Rは少なくとも1箇所に重合性二重結合を有する有機官能基である。)
【請求項14】
請求項13に記載のフルオロアルカンスルホンアミド誘導体の製造方法であって、
塩基の種類が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムからなる群より選ばれ、
水の量が、有機第1級アミン1gあたり2g〜6gであり、なおかつ、
非水溶性有機溶媒の量が、有機第1級アミン1gあたり2g〜5gであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。


【公開番号】特開2009−29707(P2009−29707A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191117(P2007−191117)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】