説明

フルオロスルホニル基含有化合物および該化合物から誘導される化合物の製造方法

【課題】高い重合反応性を有するフルオロスルホニル基含有化合物の製造方法の提供。
【解決手段】例えば下記化合物(3−10)をフッ素化した後、液相熱分解反応を行うことにより下記化合物(5−10)の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン交換膜(たとえば、食塩電解や固体高分子型燃料電池に使用される膜)や燃料電池の触媒層に用いる電解質等として有用なスルホン酸基含有重合体、および、該重合体製造に用いられるフルオロスルホニル基を含有する重合体およびこれらの原料となりうるフルオロスルホニル基含有化合物、の製造方法に関する、また本発明は、スルホン酸基含有重合体製造用中間体として有用な新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食塩電解用膜、固体高分子型燃料電池の膜または触媒層には、下式で表される含フッ素モノマーとテトラフルオロエチレンの共重合体が用いられている。ただし、下式中、Yはフッ素原子またはトリフルオロメチル基を示し、nは1〜12の整数を示し、mは0〜3の整数を示し、pは0または1を示し、かつ、m+p>0である。
【0003】
CF=CF−(OCFCFY)−O−(CF−SO
さらに、該共重合体中のフルオロスルホニル基(−SOF)は、アルカリ加水分解した後、酸で処理することによって、スルホン酸基(−SOH)に変換されうる。
【0004】
スルホン酸基含有重合体(以下、スルホン酸ポリマーとも記す。)は、高イオン交換容量の膜にして食塩電解セル等に使用した場合には、電解電力を低減できるポリマーである。またスルホン酸ポリマーを燃料電池に使用した場合には、発電エネルギー効率を向上させうるポリマーである。そして、該スルホン酸ポリマーとしては、よりイオン交換容量が大きく、より電気抵抗が低い重合体であるのが好ましい。
【0005】
しかし、スルホン酸ポリマーのイオン交換容量を大きくする目的で、共重合に用いるフルオロスルホニル基含有モノマーの比率を高くすると、共重合体の分子量が低くなる問題があった。分子量の低い共重合体から形成される膜は、機械強度および耐久性が不充分であり、実用的ではない問題があった。
【0006】
また、従来のスルホン酸モノマーでは、高分子量のパーフルオロポリマーを得るためには重合反応性の高いテトラフルオロエチレンとの共重合が必須であり、他のパーフルオロモノマーとの共重合では、分子量が高いポリマーが得られなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、スルホン酸基に変換しうる基を有し、かつ高い重合反応性を有するフルオロスルホニル基含有化合物およびその製造方法、該化合物を重合させたフルオロスルホニル基含有重合体、および該重合体から得たスルホン酸ポリマーを提供することにある。
また本発明は該課題を解決するモノマーであり、合成の困難性からこれまで知られていなかった環状構造を有するフルオロスルホニル基含有化合物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は下記構成を有する発明を提供する。
1.下記化合物(3)をフッ素化して下記化合物(4)とし、つぎに該化合物(4)の分解反応を行うことを特徴とする下記フルオロスルホニル基含有化合物(5)の製造方法。
ただし、式中の記号は以下の意味である。R〜R、X〜X、およびEから選ばれる1つ以上は水素原子を含有する基または水素原子であり、かつ、RAF〜REF、X1F〜X3F、およびEから選ばれる1つ以上はフッ素化されて形成した基または原子である。
:2価有機基。
AF:Rに対応する基であり、Rがフッ素化された2価有機基またはRと同一の2価有機基。
、R、R:それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または1価有機基。
BF、RCF、RDF:RBFはRに、RCFはRに、RDFはRにそれぞれ対応する基であり、R〜Rのいずれかが水素原子である場合のその水素原子に対応するRBF〜RDFは水素原子またはフッ素原子、R〜Rのいずれかがハロゲン原子である場合のそのハロゲン原子に対応するRBF〜RDFはハロゲン原子、R〜Rのいずれかが1価有機基である場合のその一価有機基に対応するRBF〜RDFは、対応するR〜Rがフッ素化された1価有機基または対応するR〜Rと同一の基。
:1価有機基。
EF:Rに対応する基であり、Rがフッ素化された1価有機基またはRと同一の1価有機基。
E:2価連結基。
:Eに対応する基であり、Eと同一の2価連結基またはEがフッ素化された2価連結基。
F1:Eが切断されて形成した基。
、X、X:それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、またはフッ素原子。
1F、X2F、X3F:X1FはXに、X2FはXに、X3FはXに対応する基であり、X〜Xのいずれかが水素原子である場合のその水素原子に対応するX1F〜X3Fは水素原子またはフッ素原子、X〜Xのいずれかがフッ素原子である場合のそのフッ素原子に対応するX1F〜X3Fはフッ素原子、X〜Xのいずれかが塩素原子である場合のその塩素原子に対応するX〜Xは塩素原子。
【0009】
【化1】

【0010】
2.フッ素化反応を、液相中でフッ素と反応させることにより行う前記1に記載の製造方法。
3.化合物(3)のフッ素含量が20〜86質量%である前記2に記載の製造方法。
4.化合物(3)の分子量が200〜1000である前記2または3に記載の製造方法。
5.Rがペルフルオロ化された1価有機基であり、REFがRと同一の基である前記1〜4のいずれかに記載の製造方法。
6.フッ素化が、化合物(3)を実質的にペルフルオロ化する反応である前記1〜5のいずれかに記載の製造方法。
7.化合物(3)が下記化合物(3−1)であり、化合物(4)が下記化合物(4−1)であり、化合物(5)が下記化合物(5−1)である前記1〜6のいずれかに記載の製造方法。ただし、式中の記号は上記と同じ意味を示す。
【0011】
【化2】

【0012】
8.化合物(3−1)が、下記化合物(A1−1)と下記化合物(A2−1)との反応生成物である、下記化合物(B1−1)と下記化合物(B2−1)との反応生成物である、または下記化合物(C1−1)とアセトンの反応とを反応させて下記化合物(C1−2)とし、該化合物(C1−2)と下記化合物(B2−1)とを反応させた反応生成物である前記7に記載の製造方法。ただし、式中の記号は上記と同じ意味を示す。
【0013】
【化3】

【0014】
9.化合物(3−1)が、上記化合物(C1−1)とアセトンの反応とを反応させて上記化合物(C1−2)とアセトンを含む反応生成物を得て、該アセトンを含む反応生成物のまま化合物(B2−1)との反応に用いて得た化合物である前記8に記載の製造方法。
10.下記化合物(5−1)を熱分解することを特徴とする下記化合物(7−1)の製造方法。ただし、下式中の記号は上記と同じ意味を示す。
【0015】
【化4】

【0016】
11.下記化合物(7−1)の1種以上、または該化合物(7−1)の1種以上と該化合物(7−1)と共重合しうる重合性単量体の1種以上、を重合することを特徴とするフルオロスルホニル基含有重合体の製造方法。
12.下記化合物(7−1)の1種以上が重合したモノマー単位、または該化合物(7−1)の1種以上が重合したモノマー単位と該化合物(7−1)と共重合しうる重合性単量体の1種以上が重合したモノマー単位、を含むフルオロスルホニル基含有重合体。
13.分子量が5×10〜5×10であり、化合物(7−1)と共重合しうる重合性単量体の1種以上が重合したモノマー単位を含む場合には、該モノマー単位を0.1〜99.9モル%で含む前記12に記載のフルオロスルホニル基含有重合体。
14.前記11の方法で製造されたフルオロスルホニル基含有重合体のフルオロスルホニル基をアルカリ加水分解する、または、該アルカリ加水分解した後に酸処理する、ことを特徴とするスルホン酸塩基またはスルホン酸基含有重合体の製造方法。
15.下式で表されるモノマー単位、または該モノマー単位と該モノマー単位と共重合しうる他のモノマー単位、を含むフルオロスルホン酸含有重合体。ただし、Mは水素原子または対イオンを示す。
【0017】
【化5】

【0018】
16.分子量が5×10〜5×10であり、他の共重合しうる重合性単量体のモノマー単位を含む場合には、該モノマー単位を0.1〜99.9モル%で含む前記15に記載のフルオロスルホニル基含有重合体。
17.下式(7−1A)で表される化合物。ただし、RAF10は、炭素数1〜20のペルフルオロアルキレン基、または炭素数1〜20のペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキレン)基を示す。
【0019】
【化6】

【0020】
18.下式で表される化合物のいずれか。ただし、式中のMはアルカリ金属イオンを示す。
【0021】
【化7】

【発明の効果】
【0022】
本発明の方法によれば、イオン交換膜、特に食塩電解や固体高分子型燃料電池の膜や該燃料電池の触媒層に用いる電解質等、またはそれらの原料として有用な化合物を、入手容易な化合物から短い工程で効率的に製造できる。また本発明によれば前記用途に用いるポリマー等またはそれらの原料として有用な新規な化合物が提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】例7で製造した化合物(7−10)の単独重合体の19FNMRスペクトル(横軸:δ(ppm))
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書においては、式(3)で表される化合物を化合物(3)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
有機基とは炭素原子を1以上含む基をいう。本明細書における有機基としては、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、またはハロゲン化(ヘテロ原子含有炭化水素)基が挙げられる。炭化水素基とは炭素原子と水素原子とからなる有機基をいう。特に記載のない限り有機基の炭素数は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。また、ハロゲン化炭化水素基は、炭素原子に結合した水素原子の1個以上がハロゲン原子によって置換された炭化水素基をいう。ヘテロ原子含有炭化水素基は、ヘテロ原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子等)および/またはヘテロ原子団(−C−C(=O)−C−、−C−SO−C−等)を含む炭化水素基をいう。また、ハロゲン化(ヘテロ原子含有炭化水素)基は、上記ヘテロ原子含有炭化水素基における炭素原子に結合した水素原子の1個以上が、ハロゲン原子によって置換された基をいう。
【0025】
化合物(3)におけるRはフッ素化されうる2価有機基またはペルフルオロ化された2価有機基であるのが好ましい。R〜Rは、フッ素化されうる1価有機基または水素原子であるのが好ましい。Rは含フッ素1価有機基であるのが好ましく、ペルフルオロ化された1価有機基であるのが特に好ましい。Eはエステル結合を含有する2価有機基であるのが好ましく、フッ素化されうる該2価有機基であるのが好ましい。X〜Xは、同一であっても異なっていてもよく、同一であるのが好ましく、全てが水素原子であるのが好ましい。
【0026】
具体的には、Rとしては、2価炭化水素基、ヘテロ原子含有2価炭化水素基、フルオロ2価炭化水素基またはフルオロ(ヘテロ原子含有)2価炭化水素基が挙げられ、フルオロアルキレン基、またはフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキレン)基であるのが特に好ましい。R〜Rとしては、水素原子またはアルキル基であるのが好ましく、水素原子であるのが特に好ましい。Rとしては、フルオロ1価炭化水素基またはフルオロ(ヘテロ原子含有1価炭化水素)基であるのが好ましく、フルオロアルキル基、またはフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキル)基であるのが特に好ましく、ペルフルオロ化されたこれらの基であるのがとりわけ好ましい。
【0027】
Eはエステル結合を含有する基であるのが好ましく、−COOCHR−(ただし、該基の向きは限定されず、Rは水素原子または1価炭化水素基を示し、水素原子またはメチル基であるのが好ましい。)であるのが特に好ましい。
【0028】
化合物(3)は、下記の方法A、方法B、または方法Cにより製造された化合物(3)であるのが好ましい。
[方法A]下記化合物(A1)と下記化合物(A2)を反応させて化合物(3)を得る方法。
【0029】
【化8】

【0030】
ただし、式中のR〜R、X、X、Xは、それぞれ、上記と同じ意味を示し、好ましい態様も同様である。EおよびEは相互に反応して2価連結基(E)を形成する基であり、EおよびEの一方が−CHROHであり他方がXCO−(ここで、Rは上記と同じ意味を示し、Xはハロゲン原子を示し、フッ素原子が好ましい。)であるのが好ましい。−CHROHとXCO−とは、エステル化反応により2価連結基(E)としての−CHROCO−を形成させうる。
【0031】
方法AにおいてEがエステル結合含有基(−CHROCO−)である場合、化合物(3)は目的化合物の有用性の観点から下記化合物(3−1)であるのが好ましい。該化合物(3−1)は、下記化合物(A1−1)と化合物(A2−1)とのエステル化反応の反応生成物として得ることができる。ただし、下式中の記号は上記と同じ意味を示す。
【0032】
【化9】

【0033】
エステル化反応は、公知のエステル化反応の条件により実施できる。該反応は、溶媒の存在下に実施してもよいが、溶媒の不存在下に実施することが容積効率の点から好ましい。溶媒を使用する場合の量は、化合物(A1−1)と化合物(A2−1)の総量に対して500質量%以下とするのが好ましく、特に50〜500質量%であるのが好ましい。
【0034】
また、エステル化反応の反応温度は、−50℃以上であることが好ましく、溶媒の沸点温度以下でありかつ+100℃以下であるのが好ましい。また、該反応の反応時間は原料の供給速度と反応に用いる化合物量に応じて適宜変更され、反応圧力(ゲージ圧、以下同様)は大気圧〜2MPaが好ましい。
【0035】
化合物(A1−1)と化合物(A2−1)との反応では、HFが発生する。このHFを中和するために、アルカリ金属フッ化物(NaF、KFが好ましい)やトリアルキルアミン等の中和剤を反応系中に存在させてもよい。中和剤を使用しない場合には、酸を不活性ガス気流(たとえば、窒素ガス気流等)に同伴させて反応系外に排出することが好ましい。アルカリ金属フッ化物を用いる場合の量は化合物(A2−1)に対して1〜10倍モルとすることが好ましい。
【0036】
[方法B]
下記化合物(B1−1)と下記化合物(B2)と反応させて化合物(3)を得る方法。ただし、式中の記号は上記と同じ意味を示す。
【0037】
【化10】

【0038】
方法Bの具体例としては、下記化合物(B1−1)と化合物(B2−1)の反応による化合物(3−1)の製造方法が例示されうる。ただし、下式中の記号は、上記と同じ意味を示す。
【0039】
【化11】

【0040】
化合物(B1−1)と化合物(B2−1)との反応は、酸触媒と、オルトギ酸エステルまたはオルト酢酸エステルの存在下に実施するのが好ましい。酸触媒としては、塩酸、硫酸等の液体の無機酸、四塩化チタン、三フッ化ホウ素エーテラート、塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、ビーズ状の該ポリマー、または該ポリマーをアモルファスシリカ上に担持してポーラスナノコンポジットとした固体酸触媒等が挙げられる。これらのうち、生成物との分離が容易である点から固体酸触媒が好ましい。
【0041】
オルトギ酸エステルまたはオルト酢酸エステルとしては、入手のしやすさから、メチルエステルまたはエチルエステルが好ましい。該反応の反応温度は−10℃以上が好ましく、反応に用いる化合物のうち一番沸点の低い化合物の該沸点以下であるのが特に好ましい。
【0042】
化合物(B1−1)は、酸触媒の存在下で下記化合物(C1−1)と水を反応させることにより合成できる。該化合物(B1−1)としては下記化合物(B1−10)が好ましい。
【0043】
【化12】

【0044】
FSO(CFOCHCH(OH)CHOH・・・(B1−10)。
【0045】
この化合物(B1−10)は、J.Fluorine Chem.,Vol.46,39(1990)およびJ.Fluorine Chem.,Vol.68,253(1994)に記載される方法、または、C法中に説明する方法にしたがって製造できる。該化合物(B1−1)の製造ルートの一例としては、以下の例が挙げられる。
【0046】
【化13】

【0047】
化合物(B2−1)は、下記化合物(B2−a)と化合物(B2−b)とのエステル化反応により製造するのが好ましい。ただし、Xは水酸基またはハロゲン原子を示す。
CHCO−CHOH・・・(B2−a)、
COR・・・(B2−b)。
【0048】
[方法C]
下記化合物(C1−2)と下記化合物(B2)を反応させて化合物(3)を得る方法。ただし、式中の記号は上記と同じ意味を示す。
【0049】
【化14】

【0050】
方法Cの具体例としては、下記化合物(C1−2)と化合物(B2−1)の反応による化合物(3−1)の製造方法が挙げられる。ただし、下式中の記号は、上記と同じ意味を示す。
【0051】
【化15】

【0052】
化合物(C1−2)としては、下記化合物(C1−20)が好ましい。
【0053】
【化16】

【0054】
化合物(C1−2)と化合物(B2−1)との反応は、酸触媒の存在下に実施するのが好ましい。酸触媒としては、方法Bにおいて記載したものと同様のものが用いられ、四塩化チタン、三フッ化ホウ素エーテラート、塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸触媒が好ましい。
【0055】
化合物(C1−2)と化合物(B2−1)との反応の温度は、0〜180℃が好ましく、室温〜120℃が特に好ましい。さらに、反応より副生するアセトンを反応系から留去等の方法で除去しながら反応を行うと、短時間に高収率で化合物(3−1)を得ることができ、好ましい。さらに、アセトンの除去する際にアセトンより高沸点の溶媒を加えて加熱、好ましくは減圧下加熱、すると、より効率的にアセトンが除去できるため、特に好ましい。該高沸点の溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロエタン、酢酸エチル等が挙げられ、特にトルエンが好ましい。
【0056】
C法の原料である化合物(C1−2)の製造方法としては、上記化合物(B1−1)とアセトンの反応により得る方法、または、下記化合物(C1−1)とアセトンの反応により得る方法が挙げられ、後者の製造方法が好ましい。特に化合物(C1−2)の好ましい態様である化合物(C1−20)は上記化合物(C1−10)とアセトンとの反応により製造するのが好ましい。
【0057】
【化17】

【0058】
後者の方法の原料である化合物(C1−1)の製造方法の例としては、下記化合物(D−1)を酸化剤により酸化する方法が挙げられる。酸化剤の例としてはm−クロロ過安息香酸、過安息香酸、過酢酸、過酸化水素等が挙げられる。
【0059】
【化18】

【0060】
化合物(C1−1)の好ましい態様である化合物(C1−10)は、方法Bの説明の中で記載した製造ルートによっても製造できるが、J.Fluorine Chemistry Vol.46,21−38(1990)に記載されている下記の方法によって化合物(D−10)を得て、下記化合物(D−10)を、酸化剤を用いて酸化する方法によって得ることもできる。下式中の金属フッ化物(MF)の例としては、KF,CsFまたはAgFが挙げられる。
【0061】
【化19】

【0062】
化合物(C1−1)とアセトンとの反応は、酸触媒の存在下に実施するのが好ましい。酸触媒としては、化合物(C1−2)と化合物(B2−1)の反応に用いたものと同様のものを用いることができ、好ましい態様も同じである。
【0063】
アセトンを用いた上記方法で得た化合物(C1−2)は、アセトンを除去して単離および必要に応じて精製を行った後に化合物(B2−1)と反応させてもよい。また、化合物(C1−1)とアセトンの反応により得た化合物(C1−2)においては、アセトンを含む生成物のまま、化合物(B2−1)との反応に用いて、アセトンを除去しながら反応を行ってもよい。
【0064】
化合物(C1−1)を出発物質に用いる場合、後者の方法は、方法Bよりも工程が短く、量産に適している点で有利である。
【0065】
本発明においては、化合物(3)をフッ素化して化合物(4)を得る。化合物(3)は、後述する液相フッ素化を行う場合に、液相に溶解しやすく、かつ、分解反応を防ぐのに充分な分子量を有する化合物であることが好ましい。すなわち化合物(3)の分子量は200〜5000が好ましく、200〜1000であることが特に好ましい。分子量が小さすぎる場合、特に200未満の場合は化合物(3)が気化しやすくなるため、液相フッ素化時に気相中で分解反応が起こるおそれがある。一方、分子量が大きすぎる場合、特に1000を超す場合は化合物(3)の精製が困難になるおそれがある。
【0066】
また、液相フッ素化を行う場合の化合物(3)は、フッ素含量が20質量%以上であるのが好ましく、20〜86質量%であるのがより好ましく、20〜76質量%であるのがさらに好ましい。そして、該フッ素含量となるように、化合物(3)中の各基、特に基(R)の構造を適宜変更するのが好ましい。
【0067】
化合物(3)中のRとしては上記のとおりであり、Rの炭素数は2〜20が好ましく、特に2〜10が好ましい。Rの具体例としては、以下の例が挙げられる。
CFCF−、
CF(CFOCF(CF)−、
CF(CFOCF(CF)CFOCF(CF)−、
(CFCF−、
CFCFCF(CF)−、
【0068】
また、Rが下記の基である場合は、後述する化合物(4)の分解反応がエステル結合の分解反応である場合において、分解反応の生成物である化合物(5−1)と化合物(6−1)が同一化合物になるため好ましい。
【0069】
【化20】

【0070】
本発明における化合物(3)は、フッ素化反応を行う前に、精製して、フッ素化反応を円滑に進行させるようにするのが好ましい。特に上記の方法Aまたは方法Bで化合物(3−1)を製造した場合には、フッ素化反応前に、水酸基を有する未反応の化合物の残量ができるだけ少なくするように精製するのが好ましい。精製方法としては、蒸留する方法、希アルカリ水などで処理して分液する方法、有機溶媒で抽出した後に蒸留する方法、シリカゲルカラムクロマトグラフィ等が挙げられる。
【0071】
フッ素化反応の方法としては、電解フッ素化法(ECF法)、コバルトフッ素化法等の液相中で行うフッ素化反応、気相でフッ素と反応させる方法等が挙げられるが、反応の操作性および収率の点から液相中で行うフッ素化が特段に有利な方法であり、化合物(3)とフッ素(F)とを液相中で反応させる方法(いわゆる液相フッ素化と呼ばれる方法)によるのが特に好ましい。
【0072】
液相フッ素化においては、フッ素は、フッ素ガスをそのまま用いても、不活性ガスで希釈されたフッ素ガスを用いてもよい。不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガスが好ましく、経済的な理由から窒素ガスが特に好ましい。窒素ガス中のフッ素量は特に限定されず、10vol%以上とすることが効率の点で好ましく、20vol%以上とすることが特に好ましい。
【0073】
液相フッ素化において、液相を形成させるためには、通常溶媒を用いる。溶媒としては、C−H結合を含まずC−F結合を必須とする溶媒が好ましく、さらに、ペルフルオロアルカン類、または、塩素原子、窒素原子および酸素原子からなる群より選ばれる1種以上の原子を構造中に有する公知の有機溶剤をペルフルオロ化した有機溶剤が好ましい。さらに該溶媒としては、化合物(3)の溶解性が高い溶媒を用いることが好ましく、特に化合物(3)を1質量%以上溶解しうる溶媒、特には5質量%以上溶解しうる溶媒を用いることが好ましい。
【0074】
溶媒の例としては、ペルフルオロ化された化合物である場合の化合物(4)、ペルフルオロ化された化合物である場合の化合物(5)、およびペルフルオロ化された化合物である場合の下記化合物(6)、ペルフルオロアルカン類(商品名:FC−72等)、ペルフルオロエーテル類(FC−75、FC−77等)、ペルフルオロポリエーテル類(商品名:クライトックス、フォンブリン、ガルデン、デムナム等)、クロロフルオロカーボン類(商品名:フロンルーブ)、クロロフルオロポリエーテル類、ペルフルオロアルキルアミン(例えば、ペルフルオロトリアルキルアミン等)、および不活性流体(商品名:フロリナート)等が挙げられる。溶媒としては、反応後の後処理が容易になる利点があることから、ペルフルオロ化された化合物である場合の化合物(4)、ペルフルオロ化された化合物である場合の化合物(5)、およびペルフルオロ化された化合物である場合の下記化合物(6)から選ばれる1種または2種以上であるのが好ましい。また、溶媒の量は、化合物(3)に対して、5倍質量以上が好ましく、特に10〜100倍質量が好ましい。
【0075】
液相フッ素化反応の反応形式は、バッチ方式であっても連続方式であってもよい。また液相フッ素化反応は、以下に示すフッ素化法1または2で実施するのが好ましく、反応収率と選択率の点からフッ素化法2で実施するのが好ましい。またフッ素ガスは、バッチ方式で実施する場合においても連続方式で実施する場合においても、窒素ガス等の不活性ガスで希釈したものを使用してもよい。
【0076】
[フッ素化法1]
反応器に化合物(3)と溶媒とを仕込み撹拌を開始して、所定の反応温度と反応圧力に制御した後、フッ素ガスまたはフッ素ガスと溶媒とを連続的に供給しながら反応させる方法。
【0077】
[フッ素化法2]
反応器に溶媒を仕込み撹拌を開始して、所定の反応温度と反応圧力に制御した後、フッ素ガスと、化合物(3)とを所定のモル比で連続的かつ同時に供給する方法。
【0078】
フッ素化法2において化合物(3)を供給する際には、選択率を向上させ、副生成物量を抑制させることから、溶媒で希釈した化合物(3)を供給することが好ましい。また、フッ素化法2において化合物(3)を溶媒で希釈する際には、化合物(3)に対する溶媒の量を5倍質量以上とすることが好ましく、特に10倍質量以上とすることが好ましい。
【0079】
液相フッ素化に用いるフッ素量は、バッチ方式で反応を実施する場合にも連続方式で実施する場合にも、フッ素化されうる水素原子に対して、フッ素の量が常に過剰当量になる量にすることが好ましく、該水素原子に対して1.5倍当量以上(すなわち、1.5モル以上)になる量にするのが選択率の点から特に好ましい。またフッ素量は、反応の開始時点から反応の終了時点まで、常に過剰当量になるように保つのが好ましい。
【0080】
液相フッ素化の反応温度は、通常は−60℃以上かつ化合物(3)の沸点以下が好ましく、反応収率、選択率、および工業的実施のしやすさの点から−50℃〜+100℃が特に好ましく、−20℃〜+50℃が特に好ましい。液相フッ素化の反応圧力は特に限定されず、常圧〜2MPaが、反応収率、選択率、工業的な実施のしやすさの観点から特に好ましい。
【0081】
さらに、液相フッ素化を効率的に進行させるためには、反応の後期にC−H結合含有化合物を反応系中に添加したり、紫外線照射を行うことが好ましい。C−H結合含有化合物の使用によって、反応系中に存在する化合物(3)を効率的にフッ素化でき、反応率を飛躍的に向上させうる。
【0082】
C−H結合含有化合物としては、化合物(3)以外の有機化合物であり、特に芳香族炭化水素が好ましく、ベンゼン、トルエン等が特に好ましい。該C−H結合含有化合物の添加量は、化合物(3)中の水素原子に対して0.1〜10モル%であることが好ましく、特に0.1〜5モル%であることが好ましい。
【0083】
C−H結合含有化合物は、反応系中にフッ素ガスが存在する状態で添加することが好ましい。さらに、C−H結合含有化合物を加えた場合には、反応系を加圧することが好ましい。加圧時の圧力としては、0.01〜5MPaが好ましい。
【0084】
本発明におけるフッ素化反応によって化合物(3)はフッ素化されて化合物(4)が生成する。化合物(4)のRAF〜REFはR〜Rに、EはEに、X1F〜X3FはX〜Xに、それぞれ対応する基である。化合物(3)中の基がそれぞれフッ素化されうる基であって、実際にフッ素化された場合には、化合物(4)中の基は、それぞれに対応する基がフッ素化された基である。しかし、化合物(3)中の基がフッ素化されうる基であってもフッ素化されなかった場合や、化合物(3)中の基がフッ素化されない基であった場合の化合物(4)中の基は、それぞれに対応する基と同一の基である。ただし、R〜R、X〜X、およびEから選ばれる1つ以上は、水素原子を含有する基または水素原子であり、化合物(4)中のRAF〜REF、X1F〜X3F、およびEから選ばれる1つ以上は、フッ素化されて形成した基または原子である。
【0085】
本発明におけるフッ素化反応では、炭素原子に結合した水素原子はフッ素原子に置換されるが、炭素原子に結合した塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子はフッ素原子に置換されない。
【0086】
化合物(3)中のR〜Rが有機基である場合、該有機基がフッ素化されない場合や、該有機基がペルハロゲン化された有機基(たとえば、ペルフルオロ化された有機基)である場合のRAF〜REFは、対応するR〜Rとそれぞれ同一の基である。一方、R〜Rがフッ素化されうる有機基であってフッ素化された場合のRAF〜REFは、対応するR〜Rがフッ素化された有機基になる。R〜Rが水素原子であってフッ素化された場合のRAF〜REFはフッ素原子であり、R〜Rが水素原子であってフッ素化されなかった場合のRAF〜REFは、水素原子になる。R〜Rがハロゲン原子である場合のRAF〜REFはハロゲン原子になる。X〜Xが水素原子であってフッ素化された場合のX1F〜X3Fは、フッ素原子であり、X〜Xが水素原子であってフッ素化されなかった場合のX1F〜X3Fは、水素原子である。X〜Xが塩素原子またはフッ素原子である場合のX1F〜X3Fは、対応するX〜Xと同じ塩素原子またはフッ素原子になる。
【0087】
化合物(3)のEがフッ素化されない2価連結基である場合、または、フッ素化されうる2価連結基であってもフッ素化されない場合のEは、Eと同一の2価連結基である。Eがフッ素化されうる2価連結基であってフッ素化された場合のEは、Eがフッ素化された2価連結基になる。
【0088】
化合物(3)をフッ素化した化合物(4)としては、化合物(3)中のフッ素化されうる構造が実質的にペルフルオロ化された化合物であるのが好ましい。ここで実質的にペルフルオロ化されたとは、化合物(3)の一部のフッ素化されうる構造がフッ素化されなかったとしても、化合物としての性質が、完全にフッ素化された化合物(3)と同等である程度にフッ素化されたことをいう。化合物(4)としては、化合物(3)中のフッ素化されうる構造が完全にフッ素化(すなわちペルフルオロ化)された化合物であるのが好ましい。
【0089】
具体的には、Rがフッ素化されうる2価有機基またはペルフルオロ化された2価有機基であって、RAFがペルフルオロ化された2価有機基であるのが好ましい。R〜Rがフッ素化されうる1価有機基または水素原子であって、RBF〜RDFがペルフルオロ化された1価有機基またはフッ素原子であるのが好ましい。Rが含フッ素1価有機基であってREFがペルフルオロ化された1価有機基であるのが好ましい。Eが−COOCHR−(ただし、Rは前記と同じ意味を示す。)であって、Eが−COOCFR1F−(ただし、R1Fはフッ素原子またはペルフルオロ化された1価炭化水素基を示し、フッ素原子またはトリフルオロメチル基であるのが好ましい。)であるのが好ましい。X〜Xが水素原子であって、X1F〜X3Fがフッ素原子であるのが好ましい。
【0090】
特にRAFは、ペルフルオロ2価炭化水素基またはペルフルオロ(ヘテロ原子含有2価炭化水素)基であるのが好ましく、ペルフルオロアルキレン基、またはペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキレン)基であるのが特に好ましい。さらにRAFは、炭素数1〜20のペルフルオロアルキレン基、または炭素数1〜20のペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキレン)基(炭素数1である該基とはペルフルオロオキシメチレン基である。)であるのが好ましく、特に炭素数1〜12であるこれらの基が好ましく、炭素数1〜6であるこれらの基がとりわけ好ましい。
【0091】
BF〜RDFは、ペルフルオロ1価有機基またはフッ素原子であるのが好ましく、ペルフルオロアルキル基またはフッ素原子が特に好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基がとりわけ好ましい。REFは、ペルフルオロ1価炭化水素基またはペルフルオロ(ヘテロ原子含有)1価炭化水素基であるのが好ましく、ペルフルオロアルキル基、またはペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキル)基であるのが特に好ましい。さらにREFは、Rと同一の基であり、かつペルフルオロ化された1価有機基であるのが好ましい。
【0092】
2価連結基(E)としては、−COOCHR−である2価連結基(E)がフッ素化されて形成する−COOCFR1F−(ただし、R1Fは前記と同じ意味を示す。)が好ましい。
【0093】
化合物(3)を液相中でフッ素化する反応においては、通常は、水素原子がフッ素原子に置換されてHFが副生する。副生したHFを除去するには、反応系中にHFの捕捉剤を共存させる、または反応器ガス出口でHF捕捉剤と出口ガスを接触させることが好ましい。該HF捕捉剤としては、前述の中和剤と同様のものを用いられ、NaFが好ましい。
【0094】
反応系中にHF捕捉剤を共存させる場合の量は、化合物(3)中に存在する全水素原子量に対して1〜20倍モルが好ましく、1〜5倍モルが特に好ましい。反応器ガス出口にHF捕捉剤をおく場合には、(a)冷却器(10℃〜室温に保持することが好ましく、特には約20℃に保持することが好ましい。)(b)NaFペレット充填層、および(c)冷却器(−78℃〜+10℃に保持することが好ましく、−30℃〜0℃に保持することが好ましい)を(a)−(b)−(c)の順に直列に設置することが好ましい。なお、(c)の冷却器からは凝集した液を反応器に戻すための液体返送ラインを設置してもよい。
【0095】
フッ素化工程で得た化合物(4)を含む粗生成物は、そのまま次の分解反応に用いてもよく、精製して高純度のものにしてもよい。精製方法としては、粗生成物をそのまま常圧または減圧下に蒸留する方法等が挙げられる。化合物(4)としては、化合物(3−1)のフッ素化で生成する化合物(4−1)が好ましい。
【0096】
【化21】

【0097】
次に、本発明においては化合物(4)における2価連結基(E)を分解させて化合物(5)を得る。以下、Eが−COOCFR1F−である場合を例に挙げて説明する。Eが−COOCFR1F−である場合の分解反応は、エステル結合の分解反応である。エステル結合の分解反応は、熱による分解反応、または求核剤もしくは求電子剤の存在下に液相中で行う分解反応により実施することが好ましい。
【0098】
熱による分解反応は、化合物(4)を加熱することにより実施できる。熱による分解反応の反応形式としては、化合物(4)の沸点とその安定性により選択することが好ましい。たとえば、気化しやすい化合物(4)を熱分解する場合には、気相で連続的に分解させて、得られた化合物(5)を含む出口ガスを凝縮、回収する気相熱分解反応を採用しうる。
【0099】
気相熱分解反応の反応温度は50〜350℃が好ましく、50〜300℃が特に好ましく、150〜250℃が特に好ましい。また、反応には直接には関与しない不活性ガスを反応系中に共存させてもよい。不活性ガスとしては、窒素、二酸化炭素等が挙げられる。不活性ガスは化合物(4)に対して0.01〜50vol%程度を添加することが好ましい。不活性ガスの添加量が多いと、生成物の回収量が低減することがある。
【0100】
一方、化合物(4)が気化しにくい化合物である場合には、反応器内で液のまま加熱する液相熱分解反応を採用することが好ましい。この場合の反応圧力は限定されない。通常の場合、化合物(5)を含む生成物は、より低沸点であることから、生成物を気化させて連続的に抜き出す反応蒸留形式による方法で得ることが好ましい。また加熱終了後に反応器中から一括して生成物を抜き出す方法であってもよい。この液相熱分解反応の反応温度は50〜300℃が好ましく、特に100〜250℃が好ましい。
【0101】
液相熱分解反応は、無溶媒で行っても、溶媒の存在下に行ってもよい。該溶媒としては、化合物(4)と反応せず、かつ化合物(4)と相溶性のあるもので、生成する化合物(5)と反応しないものであれば特に限定されない。また、溶媒としては、化合物(5)の精製時に分離しやすいものを選定することが好ましい。溶媒の具体例としては、ペルフルオロトリアルキルアミン、ペルフルオロデカリンなどの不活性溶媒、クロロフルオロカーボン類等のなかでも高沸点であるクロロトリフルオロエチレンオリゴマー(例えば、商品名:フロンルーブ)、が好ましい。また、溶媒の量は化合物(4)に対して10〜1000質量%が好ましい。
【0102】
また、化合物(4)を、液相中で求核剤または求電子剤と反応させて分解させる場合、該反応は、無溶媒で行っても、溶媒の存在下に行ってもよい。該溶媒としては、液相熱分解反応における溶媒と同じものが挙げられる。求核剤としてはFが好ましく、特にアルカリ金属のフッ化物由来のFが好ましい。アルカリ金属のフッ化物としては、NaF、NaHF、KF、CsFがよく、これらのうち経済性の面からNaFが、低い反応温度で実施できる点からはKFが、特に好ましい。
【0103】
求核剤(たとえばF)を用いた場合には、反応の最初に用いた求核剤は触媒量であってもよく、過剰に用いてもよい。すなわちF等の求核剤の量は化合物(4)に対して1〜500モル%が好ましく、1〜100モル%が特に好ましく、とりわけ5〜50モル%が好ましい。反応温度は、−30℃〜溶媒または化合物(4)の沸点までの間の温度が好ましく、−20℃〜250℃が特に好ましい。この方法も、反応蒸留形式で実施することが好ましい。
【0104】
エステル結合の分解反応では、−COF基およびR1FCO−基が形成される。−EF1基に対応する基は、−COF基であってもR1FCO−基であってもよいが、後述する熱分解反応によって重合性の不飽和二重結合に導く場合には、−COF基であるのが好ましい。該−COF基としては、R1Fがフッ素原子である場合のR1FCO−基であってもよい。
【0105】
化合物(5)としては化合物(4−1)のエステル結合の分解反応で生成する化合物(5−1)が好ましい。
【0106】
【化22】

【0107】
化合物(4)のエステル結合の分解反応では、化合物(5)とともに下記化合物(6)が生成する。ただし、REFは前記と同じ意味を示し、EF2はEが切断されたEF1とともに形成される基を示す。
EF−EF2・・・(6)
エステル結合の分解反応生成物からは、化合物(5)のみを得ても、化合物(5)と化合物(6)の両方を得てもよい。
【0108】
が−COOCFR1F−である場合のEF2に対応する基は、−COF基またはR1FCO−であり、R1Fがフッ素原子である場合のEF2はEの向きに関わらず、−COF基となる。本発明におけるEF1とEF2とは、いずれも−COF基であるのが好ましい。すなわち、EF1が−COF基である化合物(5)は、後述する反応により有用な化合物に導かれ、EF2が−COF基である化合物(6)は後述する連続反応を実施できる点で好ましい。すなわち、化合物(6)としては、下記化合物(6−1)が好ましい。
EF−COF・・・(6−1)
該化合物(6−1)は、方法Aにおいて、化合物(A1−1)と反応させる化合物(A2−1)として用いることにより、化合物(5−1)の連続製造が実施できる。
【0109】
化合物(5−1)は、さらに熱分解反応により、重合性の化合物(7−1)に導かれる。ただし、下式中の記号は上記と同じ意味を示す。
【0110】
【化23】

【0111】
熱分解反応は、気相反応または液相反応で実施でき、気相反応で実施するのが効率的であり好ましい。そして、熱分解反応の方法および反応温度は、化合物(5−1)の沸点や安定性により選択するのが好ましい。さらに、化合物(5−1)は、気相反応で効率的に熱分解反応を行いうる理由で、常圧における沸点が350℃以下であるのが好ましい。また、化合物(5−1)の沸点は50℃以上であるのが好ましい。さらに気相反応は、ガラスビーズ、アルカリ金属の塩、またはアルカリ土類金属の塩の存在下に実施するのが好ましい。
【0112】
気相反応は連続式反応で行うのが好ましい。連続式反応は、加熱した反応管中に気化させた化合物(5−1)を通し、生成した化合物(7−1)を出口ガスとして得て、これを凝縮し、連続的に回収する方法により実施するのが好ましい。
【0113】
気相反応で熱分解を行う場合の反応温度は、化合物(5−1)の構造により適宜変更されうるが、一般には150℃以上が好ましく、200℃〜500℃が特に好ましく、とりわけ250℃〜450℃が好ましい。反応温度が高くなりすぎると、生成物の分解反応により収率が低下するおそれがある。
【0114】
また気相反応で熱分解反応を行う場合には、管型反応器を用いるのが好ましい。管型反応器を用いる場合の滞留時間は、空塔基準で0.1秒〜10分程度が好ましい。反応圧力は特に限定されない。また、化合物(5−1)が高沸点化合物の場合には、減圧下で反応を実施するのが好ましい。特に化合物(5−1)が低沸点化合物である場合には、生成物の分解が抑制され、かつ反応率が高くなることから、加圧下で反応を実施するのが好ましい。
【0115】
管型反応器を用いて気相反応を行う場合には、反応を促進させる目的で、反応管中にガラス、アルカリ金属の塩、またはアルカリ土類金属の塩を充填するのが好ましい。アルカリ金属の塩またはアルカリ土類金属の塩としては、炭酸塩またはフッ化物が好ましい。ガラスとしては一般的なソーダガラスが挙げられ、特にビーズ状にして流動性を上げたガラスビーズが好ましい。アルカリ金属の塩としては、炭酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸リチウムが挙げられる。アルカリ土類金属の塩としては、炭酸カルシウム、フッ化カルシウムまたは炭酸マグネシウム等が挙げられる。さらに、反応管中にガラス、アルカリ金属の塩、またはアルカリ土類金属の塩を充填させる場合に、ガラスビーズや、炭酸ナトリウムの軽灰等であって、粒径が100〜250μm程度であるものを用いると、流動層型の反応形式を採用できることから特に好ましい。
【0116】
気相反応においては、化合物(5−1)の気化を促進する目的で、熱分解反応には直接は関与しない不活性ガスの存在下で反応を行うのが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。不活性ガス量は化合物(5−1)に対して0.01〜50vol%程度が好ましい。不活性ガス量が多すぎると、生成物の回収量が低くなるおそれがあり好ましくない。一方、化合物(5−1)の沸点が高い場合には、熱分解を液相反応で行ってもよい。
【0117】
熱分解反応は、化合物(5−1)を対応するカルボン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩に変換した後に熱分解することもできる。該方法においては、化合物(5−1)は溶媒の存在下、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩または炭酸水素塩と反応させ、溶媒を除去することにより、対応するカルボン酸のアルカリ金属の塩、またはアルカリ土類金属の塩に導かれる。該方法では、化合物(5−1)中のFSO−基を加水分解することなく、−COF基をカルボン酸の塩に選択的に導くことができる。アルカリ金属の炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、または炭酸リチウムが挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸カルシウム、または炭酸マグネシウム等が挙げられる。また、アルカリ金属の炭酸水素塩としては具体的には炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、または炭酸水素リチウムが挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸水素塩としては、炭酸水素カルシウム、または炭酸水素マグネシウム等が挙げられる。また、アルカリ金属、アルカリ土類金属塩は充分乾燥したものを用いるのが好ましい。また溶媒としては非極性溶媒であっても、極性溶媒であってもよく、低温での反応が可能になることから、極性溶媒であるのが好ましい。極性溶媒の例としては、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0118】
化合物(5−1)のアルカリ金属塩の熱分解の温度は、100〜300℃が好ましく、特に150〜250℃が好ましい。アルカリ金属塩を経由する熱分解反応は、気相での熱分解法に比較して低温で行うことができるため好ましい。
【0119】
化合物(7−1)としては、下式化合物(7−1A)で表される化合物が好ましい。ただし、RAF10は、炭素数1〜20のペルフルオロアルキレン基、または炭素数1〜20のペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキレン)基を示す。
【0120】
【化24】

【0121】
化合物(7−1)は重合性の不飽和基(>C=CF)と、フルオロスルホニル基(FSO−基)を有する特徴ある構造を有する化合物である。該化合物を重合させたポリマーは、食塩電解や燃料電池用の電解質材料として有用に用いうる。
【0122】
たとえば、化合物(7−1)を単独重合して生成するフルオロスルホニル基含有重合体は、高分子量でイオン交換容量の高いスルホン酸ポリマーの前駆体として有用である。また、化合物(7−1)を、化合物(7−1)と共重合しうる他の重合性単量体(以下、コモノマーと記載する。)と共重合させて、フルオロスルホニル基含有重合体とすることもできる。コモノマーは、1種であっても、2種以上であってもよい。
【0123】
コモノマーの例としては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、エチレン、ペルフルオロ(3−ブテニルビニルエーテル)、ペルフルオロ(アリルビニルエーテル)、ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(1,3−ジオキソール)、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、ペルフルオロ(3,5−ジオキサ−1,6−ヘプタジエン)、ペルフルオロ(4−メトキシ−1,3−ジオキソール)等が挙げられる。
【0124】
さらに、コモノマーとしては、上記に例示したコモノマーとともに、プロペン、ヘキサフルオロプロペン等のペルフルオロ(α−オレフィン)類、(ペルフルオロブチル)エチレン等の(ペルフルオロアルキル)エチレン類、3−ペルフルオロオクチル−1−プロペン等の(ペルフルオロアルキル)プロペン類、ペルフルオロビニルエーテル類(たとえば、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)や、ペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキル)ビニルエーテル))等を用いてもよい。
【0125】
重合反応は、ラジカルが生起する条件のもとで行われるものであれば特に限定されない。例えば、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、液体または超臨界の二酸化炭素中の重合等により行ってもよい。
【0126】
ラジカルを生起させる方法は特に限定されず、例えば、紫外線、γ線、電子線等の放射線を照射する方法を用いてもよく、通常のラジカル重合で用いられるラジカル開始剤を使用する方法を用いてもよい。重合反応の反応温度も特に限定されず、例えば、通常は15〜150℃程度である。ラジカル開始剤を使用する場合のラジカル開始剤としては、たとえば、ビス(フルオロアシル)パーオキシド類、ビス(クロロフルオロアシル)パーオキシド類、ジアルキルパーオキシジカーボネート類、ジアシルパーオキシド類、パーオキシエステル類、アゾ化合物類、過硫酸塩類等が挙げられる。
【0127】
溶液重合を行う場合には、使用する溶媒は取り扱い性の観点から、通常は20〜350℃の沸点を有していることが好ましく、40〜150℃の沸点を有していることがより好ましい。
【0128】
化合物(7−1)が重合したモノマー単位を含む重合体の分子量は5×10〜5×10が好ましく、特には1×10〜3×10が好ましい。また、化合物(7−1)を重合させたモノマー単位を含む重合体が、コモノマーが重合したモノマー単位を含む共重合体である場合、化合物(7−1)を重合させたモノマー単位の割合は、共重合体中の全モノマー単位に対して0.1〜99.9モル%が好ましく、5〜90モル%が特に好ましく、10〜75モル%がとりわけ好ましい。
【0129】
化合物(7−1)とコモノマーとの共重合体は、食塩電解や燃料電池等の電解質材料の前駆体としての用途に有用に用いうる。さらに、該共重合体を食塩電解や燃料電池等の用途に使用する場合には、ペルフルオロ化合物であるものを選択するのが、耐久性の観点から好ましい。
【0130】
ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)類のコモノマーとしては、下記化合物(7B)が好ましい。
CF=CF−(OCFCFZ)−O−R(7B)
ただし、tは0〜3の整数であり、Zはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、Rは炭素数1〜12のペルフルオロアルキル基である。また、Rは直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。
【0131】
ペルフルオロビニルエーテル化合物(7B)としては、下記化合物(7B−1)、下記化合物(7B−2)、下記化合物(7B−3)が好ましい。ただし、式中、vは1〜9の整数であり、wは1〜9の整数であり、xは2または3である。
CF=CFO(CFCF・・・(7B−1)、
CF=CFOCFCF(CF)O(CFCF・・・(7B−2)、
CF=CF(OCFCF(CF))O(CFCF・・・(7B−3)。
【0132】
さらに、本発明においては、化合物(7−1)に基づくフルオロスルホニル基(−SOF基)をアルカリ加水分解する、または、該アルカリ加水分解した後に酸処理する、ことにより、スルホン酸塩基またはスルホン酸基を含有する重合体を製造することができる。
【0133】
該重合体としては、下式で表されるモノマー単位、または該モノマー単位と該モノマー単位と共重合しうる他のモノマー単位、を含むフルオロスルホン酸含有重合体が挙げられる。ただし、Mは水素原子または対イオンを示す。
【0134】
【化25】

【0135】
スルホン酸塩基またはスルホン酸基を含有する重合体は、分子量が5×10〜5×10であり、他の共重合しうる重合性単量体のモノマー単位を含む場合には、該モノマー単位を0.1〜99.9モル%で含む重合体であるのが好ましい。
【0136】
アルカリ加水分解においては、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属炭酸塩を用いるのが好ましい。酸処理においては、塩酸、硝酸または硫酸を用いるのが好ましい。これにより、フルオロスルホニル基はスルホン酸塩基(−SO基:ここで、Mは対イオンを示す。)に変換されうる。ここでMとしては、アルカリ金属イオンまたはN(ただし、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、または、炭素数1〜5のアルキル基。)であるのが好ましい。アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンが好ましい。また、NはN(CH、N(CHCH、N(CHCHCH、N(CHCHCHCHが好ましい。
【0137】
スルホン酸塩基におけるMがアルカリ金属イオンである場合の重合体は、スルホン酸基含有重合体にアルカリ金属水酸化物を反応させることにより得るのが好ましい。またスルホン酸塩基におけるMがNである場合の重合体は、フルオロスルホニル基含有重合体に、式NR(OH)で表される化合物を反応させることにより得るのが好ましい。
【0138】
さらに、加水分解で得られたスルホン酸塩基を含有するポリマーは、Mとは異なる対イオンとなりうるイオン、を含む水溶液に浸漬することにより、他の対イオンに変換することができる。
【0139】
また、スルホン酸塩基(−SO基)は、塩酸、硝酸又は硫酸等の酸で処理することによりスルホン酸基(−SOH基)に変換することができる。
これらの基の変換方法は、公知の方法および条件にしたがって実施できる。
【0140】
本発明の方法で得られるフルオロスルホニル基を有する重合体は、他の基材への密着性に優れる。また、官能基のないペルフルオロ重合体に比べて高い屈折率を有することから、光学材料としても有用である。また本発明の方法で得られるスルホン酸塩基またはスルホン酸基含有重合体は、食塩電解や燃料電池用の電解質材料に限定されず、固体電解質材料として種々の用途に用いることができる。
【0141】
たとえば、水電解、過酸化水素製造、オゾン製造、廃酸回収等に使用するプロトン選択透過膜、脱塩又は製塩に使用する電気透析用陽イオン交換膜等に用いることができる。また、リチウムイオン電池のポリマー電解質、固体酸触媒、陽イオン交換樹脂、修飾電極を用いたセンサー、空気中の微量イオンを除去するためのイオン交換フィルターやアクチュエーター等にも使用できる。すなわち、化合物(7−1)の重合反応で得られるポリマーは、各種の電気化学プロセスの材料として使用できる。
【0142】
また、スルホン酸塩基またはスルホン酸基含有重合体は、酸、塩基、および塩類の分離精製に用いる拡散透析用の膜、蛋白質分離のための荷電型多孔膜(荷電型逆浸透膜、荷電型限外ろ過膜、荷電型ミクロろ過膜等)、除湿膜、加湿膜等にも使用できる。
【0143】
さらに、本発明における好ましい態様としては、つぎの態様が挙げられる。
すなわち、下記化合物(3−10)をフッ素化して下記化合物(4−10)とし、つぎに該化合物(4−10)のエステル結合を分解させることを特徴とする下記化合物(5−10)の製造方法である。該化合物(5−10)を熱分解することによる、または該化合物(5−10)を下記化合物(6−10)(ただし、Mはアルカリ金属原子イオンを示す。)に導いた後に熱分解することによる、下記化合物(7−10)の製造の製造方法である。さらに該化合物(7−10)の1種以上を重合させたモノマー単位、または該化合物(7−10)の1種以上を重合させたモノマー単位と、該化合物と共重合しうるコモノマーの1種以上を重合させたモノマー単位を含む重合体およびその製造方法である。さらに該重合体中のフルオロスルホニル基をアルカリ加水分解する、または、該アルカリ加水分解した後に酸処理する、ことによりスルホン酸塩基またはスルホン酸基含有重合体を製造する方法である。これらの製造方法における下記化合物は新規化合物である。
【0144】
【化26】

【実施例】
【0145】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
なお、以下において1,1,2−トリクロロトリフルオロエタンをR−113と記し、CClFCFCHClFをHCFC225cbと記し、ガスクロマトグラフィーをGCと、サイズ排除クロマトグラフィーをGPCと、数平均分子量をMと、重量平均分子量をMと記す。
【0146】
19F−NMRを用いた定量は、ペルフルオロベンゼンを内部標準とした。GCによる定量値はピーク面積比から求めた値である。GPCは東ソー社製装置名、SEC HLC−8020を用い、移動相はHCFC225cb/ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(99/1体積比)を、カラムはポリマーラボラトリー社製のPlgel 5μMIXED−Cを2本、分子量換算用標準試料はポリメタクリル酸メチルを用いた。
【0147】
[例1]化合物(B1−10)の調製例
【0148】
【化27】

【0149】
J.Fluorine Chem.,Vol.46,39(1990)に記載される方法で化合物(C1−10)を合成した。化合物(C1−10)からJ.Fluorine Chem.,Vol.68,253(1994)に記載される方法にしたがって化合物(B1−10)を製造した。ただし、該文献における固体酸触媒としてのペルフルオロイオン交換樹脂ビース(商品名:Nafion NR50)を、アモルファスシリカ上に担持した10〜20%フルオロスルホン酸ナノコンポジット(商品名:Nafion SAC−13。以下、商品名で記載する。)に変更した。化合物(C1−10)(105.7g)から化合物(B1−10)(43.5g)が得られた。
【0150】
[例2]化合物(B2−10)の製造例
CHC(O)CHOCOCFCF(B2−10)
CHCOCHOH(150.0g)とトリエチルアミン(225.4g)をフラスコに入れ、氷浴下で撹拌した。窒素ガスで希釈したCFCFCOF(377.5g)を、内温を10℃以下に保ちながら4時間かけて吹き込んだ。つぎに、室温で2時間撹拌して、氷水500mLに加えた。
得られた粗液を分液し、フルオロカーボン層を得た。さらにフルオロカーボン層を水(250mL)で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。さらに、ろ過して粗液を得た。ろ液を減圧蒸留して化合物(B2−10)(167.3g)を47.1〜47.9℃/0.7kPa(絶対圧)の留分として得た。留分のGCによる純度は、99%であった。
H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:CHCl)δ(ppm):2.22(s,3H),4.92(s,2H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−82.9(3F),−121.4(2F)。
【0151】
[例3]化合物(3−10)の製造例
【0152】
【化28】

【0153】
(B法による製造例)
200mLフラスコに例1で得た化合物(B1−10)(40.0g)、例2で得た化合物(B2−10)(32.1g)、オルトギ酸エチル(21.6g)およびNafion SAC−13(2.0g)を仕込み、内温80℃で4時間撹拌した。その後、反応器内を減圧にして低沸成分を除去し、粗液を得た。粗液を、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:HCFC225cb)で精製して化合物(3−10)(64.3g)を得た。GC純度は93%であった。
【0154】
(C法による製造例)
乾燥雰囲気下で三フッ化ホウ素エーテラート(32.01g)と脱水アセトン(4.5L)を混合し、例1で得た化合物(C1−10)(1198.1g)を脱水アセトン(1.2L)で希釈して上記混合物に滴下し、1時間加熱還流し、化合物(C1−20)とした。アセトンを約半分留去した後、例2で得た化合物(B2−10)(1031.41g)をトルエン(2L)で希釈して反応系に加え、65℃以下で加熱しながら減圧下で残りのアセトンを留去した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と氷の混合物に注ぎ、t−ブチルメチルエーテル(2.9L)で3回に分けて抽出し、抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を減圧濾過で除去し、濾液を濃縮した。残存物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:HCFC225cb/n−ヘキサン1:1の後、HCFC225cbのみ)で精製して化合物(3−10)(1478.95g)を得た。GC純度は99%であった。
H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:CHCl)δ(ppm):1.42,1.45(s,3H),3.82〜3.93(m,1H),4.11〜4.25(m,4H),4.35〜4.46(m,2H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):43.3(1F),−82.9(3F),−84.1(2F),−110.9(2F),−121.4(2F)。
【0155】
[例4]化合物(4−10)の製造例
【0156】
【化29】

【0157】
500mLのニッケル製オートクレーブに、R−113(312g)を加えて撹拌し、25℃に保った。オートクレーブガス出口には、20℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層、および−10℃に保持した冷却器を直列に設置した。冷却器からは凝集した液をオートクレーブに戻すための液体返送ラインを設置した。
窒素ガスを1.0時間吹き込んだ後、窒素ガスで20%に希釈したフッ素ガス(以下、希釈フッ素ガスと記す。)を、流速12.72L/hで1時間吹き込んだ。つぎに、フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、例3で得た化合物(3−10)(20.0g)をR−113(200g)に溶解した溶液を7.6時間かけて注入した。
つぎに、希釈フッ素ガスを同じ流速で吹き込み、かつ、反応器圧力を0.15MPaに保ちながら、ベンゼン濃度が0.01g/mLのR−113溶液を25℃から40℃にまで昇温しながら23mL注入した。さらに、オートクレーブのベンゼン注入口を閉め、反応器圧力を0.15MPaに、反応器内温度を40℃に保ち、1.0時間撹拌を続けた。ベンゼンの注入総量は0.22g、R−113の注入総量は23mLであった。さらに、窒素ガスを1.0時間吹き込んだ。生成物を19F−NMRで分析した結果、標記化合物の生成が認められ、収率は98%であった。
19F−NMR(376.0MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):45.3(1F),−77.4(1F),−80.1(3F),−80.7〜−81.4(1F),−82.1(1F),−82.5(2F),−83.3(3F),−82.7〜−83.6(1F),−85.5〜−87.1(2F),−112.8(2F),−121.9(1F),−122.2(2F)。
【0158】
[例5]液相熱分解反応による化合物(5−10)の製造例
【0159】
【化30】

【0160】
(例5−1)
例4で得た化合物(4−10)(10.6g)を、充分に乾燥させたKF粉末(0.18g)と共にフラスコに仕込み、室温で24時間撹拌した。冷却後、フラスコより回収したサンプル(8.8g)をろ過し、液状サンプルを回収した。NMR、およびGC−MSにより、主生成物が標記化合物であることを確認した。収率は77.8%であった。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):45.5(1F),24.4(1F),−77.9〜−79.1(1F),−81.7(3F),−81.9〜−82.4(3F),−82.8〜−83.9(2F),−112.7(2F),−123.5〜−124.7(1F)。
【0161】
(例5−2)
例5−1と同様の方法で、化合物(4−10)(706g)から化合物(5−10)を主成分とする反応液(531g)を得た。該反応液を減圧蒸留することにより純度99%の化合物(5−10)(481g)を得た。留出温度は71−73℃/5.3kPaであった。
【0162】
[例6]化合物(7−10)および化合物(7−2)の製造例
【0163】
【化31】

【0164】
(例6−1)
100mLの3つ口フラスコに炭酸水素カリウム(3.21g、0.032モル)、1,2−ジメトキシエタン(24.4g)を仕込んだ。つぎに内温が5〜10℃になるまで冷却し、充分に撹拌しながら化合物(5−10)(15.4g、0.0314モル)を滴下した。滴下している間、フラスコ内温が5〜20℃に保つようにした。さらに室温で撹拌した。その後、1,2−ジメトキシエタンを減圧で留去して、生成した固体を粉砕し、減圧乾燥機を用いて80〜100℃で2日間乾燥することにより化合物(7−2)(13.9g、0.0264モル)を得た。
次に100mLの3つ口フラスコに化合物(7−2)(12.9g、0.0245モル)を仕込み、真空下、内温が190〜200℃になるまで加熱、熱分解反応を行った。生成物は真空ポンプ側のドライアイストラップにより回収した。さらに粗生成物を蒸留して、化合物(7−10)(1.47g)を得た。
精密質量(EI)423.9263(M+H)[理論値:C12S=423.9275]。
19F−NMR(564.55MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):45.3(1F),−82.0〜−83.7(5F),−87.7(1F),−112.8(2F),−125.2(1F),−126.5(1F),−128.4(1F)。
【0165】
(例6−2)ガラスビーズが充填された内径1/2インチのステンレス反応管(流動層型)を350℃に加熱し、あらかじめ該温度に加熱した化合物(5−10)と窒素の混合ガス(モル比1:9)を流通させた。滞留時間は10秒、線速度は2.5cm/秒であった。化合物(5−10)の使用量は68.1gであった。反応管から出てきたガスを冷却することにより化合物(7−10)を主成分とする液を得た。反応収率は52%であった。
次に反応液にメタノールを加え、未反応の化合物(5−10)をメチルエステル化した。水洗後、蒸留により精製された化合物(5−10)を得た。沸点は48℃/2.7kPaであった。
【0166】
[例7]化合物(7−10)の単独重合体の製造例
例6−1で得た化合物(7−10)(1.25g)とペルフルオロ過酸化ベンゾイル(4.5mg)をガラス管に入れ、液体窒素で固めたのち真空下で封管した。70℃で45時間保持したのち、生成したポリマーを取り出し、n−C13Hに溶解してヘキサンで再沈殿させ、洗浄し、80℃で16時間減圧乾燥した。19FNMR(282.65MHz,溶媒:ペルフルオロベンゼンに重ベンゼンを添加、基準:CFCl)のデータを図1に示す。46.0ppmに−SOFに由来する1F分のフッ素原子のシグナルが確認された。化合物(7−10)の単独重合体の収量は0.823g(収率66%)であった。GPCによるMは6.5×10、Mは9.8×10であった。DSCで測定したガラス転移温度は92℃であった。
さらに、再沈殿および洗浄して、低沸点成分を減圧下で留去した。さらに80℃で16時間減圧乾燥した結果、標記重合体からなる粉状ポリマー(0.072g)を回収した。先に得たポリマーとあわせた収率は71%であった。
【0167】
[例8]化合物(7−10)とペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)の共重合体の製造例
容積0.1Lのステンレス製オートクレーブに、化合物(7−10)(7.9g)、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)(9.6g)、HCFC225cb(109.7g)、パーフルオロ過酸化ベンゾイル(255mg)を入れ、液体窒素で冷却して脱気した。70℃で5時間反応したのち、ヘキサンに投入することでポリマーを沈殿させた。ヘキサンで洗浄した後、100℃で真空乾燥することにより、白色のポリマー14.0gを得た。元素分析で求めた硫黄の含有量から得られたポリマーの組成は、化合物(7−10)/ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)=34.6/65.4(モル比)であった。パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)を溶媒に用いて測定した30℃における固有粘度は0.16dl/gであった。
得られた共重合体(10g)にメタノール(40g)、10%KOH水溶液(160g)を添加し、1週間60℃に保持することにより共重合体中のフルオロスルホニル基をスルホン酸のカリウム塩に変換した。ろ過後、イオン交換水に浸漬し、60℃で一晩保持した。このろ過・水浸漬の操作を3回行った。ろ過後、1mol/Lの塩酸に60℃で一晩浸漬した。このろ過・塩酸浸漬の操作を4回行った。次いで、前記と同様のろ過・水浸漬の操作を3回行った。ろ液が中性であることを確認し、共重合体を空気下80℃のオーブン中で一晩乾燥した後、さらに80℃で一晩真空乾燥し、スルホン酸基含有共重合体を得た。
【0168】
[例9]化合物(7−10)とテトラフルオロエチレンの共重合体の製造例
容積0.1Lのステンレス製オートクレーブに、化合物(7−10)(8.48g)、17mgのメタノールを含有するHCFC225cb(76.3g)、パーフルオロ過酸化ベンゾイル(170mg)を入れ、液体窒素で冷却して脱気した。テトラフルオロエチレン(11.3g)を導入した後、70℃で50分反応を行った。この間ゲージ圧力は0.97MPaから0.43MPaに低下した。冷却後、系内のガスをパージし、ヘキサンに投入することでポリマーを沈殿させた。ヘキサンで洗浄した後、100℃で真空乾燥することにより、白色のポリマー(14.1g)を得た。元素分析で求めた硫黄の含有量から得られたポリマーの組成は、化合物(7−10)/テトラフルオロエチレン=17.6/82.4(モル比)であった。
次に得られたポリマーの容量流速を測定した。本発明において容量流速とは、長さ1mm、内径1mmのノズルを用い、30kg/cmの押出し圧力の条件で樹脂の溶融押出しを行った際の押出し量であって、単位はmm/秒で表される。本実施例の共重合体の300℃における容量流速をフローテスタCFT−500A(島津製作所製)を用いて測定したところ34mm/秒であった。
本実施例の共重合体を300℃で加圧プレスし、厚さ約100μmのフィルムを作成した。このフィルムをDMSO30%、KOH11%、水59%からなる液に90℃で16時間浸漬してフルオロスルホニル基をスルホン酸カリウム塩に変換した。水洗後、1mol/L硫酸に浸漬し、水洗することにより、スルホン酸基含有共重合体からなるフィルムに変換した。
【0169】
[比較例]
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOF(1.25g)とペルフルオロ過酸化ベンゾイル(4.5mg)をガラス管に入れて、液体窒素で固めた後、真空下で封管した。70℃で45時間反応させた後も、無色透明の液体のままであった。反応液を丸底フラスコに移し、HCFC225cbでガラス管壁を洗浄して、洗液を前記丸底フラスコに添加した。減圧下で低沸点成分を留去して、80℃で16時間減圧乾燥した。水飴状のオリゴマー(0.328g)を得た。ポリマー収率は26%。GPCによるMは3.7×10、Mは4.7×10であった。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の方法によれば、イオン交換膜、特に食塩電解や固体高分子型燃料電池の膜や該燃料電池の触媒層に用いる電解質等、またはそれらの原料として有用な化合物を、入手容易な化合物から短い工程で効率的に製造できる。また本発明によれば前記用途に用いるポリマー等またはそれらの原料として有用な新規な化合物が提供されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物(3)をフッ素化して下記化合物(4)とし、つぎに該化合物(4)の分解反応を行うことを特徴とする下記フルオロスルホニル基含有化合物(5)の製造方法。
ただし、式中の記号は以下の意味である。
:炭素数1〜10の2価の炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、フルオロ炭化水素基またはフルオロ(ヘテロ原子含有)炭化水素基。
AF:Rに対応する基であり、Rがフッ素化された炭素数1〜10の2価の炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、フルオロ炭化水素基またはフルオロ(ヘテロ原子含有)炭化水素基またはRと同一の基。
、R、R:それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10の1価の炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、フルオロ炭化水素基またはフルオロ(ヘテロ原子含有)炭化水素基。
BF、RCF、RDF:RBFはRに、RCFはRに、RDFはRにそれぞれ対応する基であり、R〜Rのいずれかが水素原子である場合のその水素原子に対応するRBF〜RDFは水素原子またはフッ素原子、R〜Rのいずれかがハロゲン原子である場合のそのハロゲン原子に対応するRBF〜RDFはハロゲン原子、R〜Rのいずれかが炭素数1〜10の1価の炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、フルオロ炭化水素基またはフルオロ(ヘテロ原子含有)炭化水素基である場合のその炭素数1〜10の1価の炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、フルオロ炭化水素基またはフルオロ(ヘテロ原子含有)炭化水素基に対応するRBF〜RDFは、対応するR〜Rがフッ素化された炭素数1〜10の1価の炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、フルオロ炭化水素基またはフルオロ(ヘテロ原子含有)炭化水素基または対応するR〜Rと同一の基。
:炭素数1〜20の1価の炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、フルオロ炭化水素基またはフルオロ(ヘテロ原子含有)炭化水素基。
EF:Rに対応する基であり、Rがフッ素化された炭素数1〜20の1価の炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、フルオロ炭化水素基またはフルオロ(ヘテロ原子含有)炭化水素基またはRと同一の基。
E:−COOCHR−(ただし、該基の向きは限定されず、Rは水素原子または1価炭化水素基を示す)。
:Eに対応する基であり、−COOCFR1F−(ただし、該基の向きは限定されず、R1Fはフッ素原子またはぺルフルオロ化された1価炭化水素基を示す)。
F1:−COF。
、X、X:それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、またはフッ素原子。
1F、X2F、X3F:X1FはXに、X2FはXに、X3FはXに対応する基であり、X〜Xのいずれかが水素原子である場合のその水素原子に対応するX1F〜X3Fは水素原子またはフッ素原子、X〜Xのいずれかがフッ素原子である場合のそのフッ素原子に対応するX1F〜X3Fはフッ素原子、X〜Xのいずれかが塩素原子である場合のその塩素原子に対応するX〜Xは塩素原子。
【化1】

【請求項2】
フッ素化反応を、液相中でフッ素と反応させることにより行う請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
化合物(3)のフッ素含量が20〜86質量%であり、分子量が200〜1000である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
フッ素化が、化合物(3)を実質的にペルフルオロ化する反応である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
化合物(3)が下記化合物(3−1)であり、化合物(4)が下記化合物(4−1)であり、化合物(5)が下記化合物(5−1)である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。ただし、式中の記号は上記と同じ意味を示す。
【化2】

【請求項6】
化合物(3−1)が、下記化合物(A1−1)と下記化合物(A2−1)との反応生成物である、下記化合物(B1−1)と下記化合物(B2−1)との反応生成物である、または下記化合物(C1−1)とアセトンの反応とを反応させて下記化合物(C1−2)とし、該化合物(C1−2)と下記化合物(B2−1)とを反応させた反応生成物である請求項5に記載の製造方法。ただし、式中の記号は上記と同じ意味を示す。
【化3】

【請求項7】
がフルオロアルキレン基またはフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキレン)基であり、RAFがペルフルオロアルキレン基またはペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキレン)基であり、R、R、Rが水素原子またはアルキル基であり、RBF、RCF、RDFがフッ素原子またはペルフルオロアルキル基であり、RとREFが同一の基であり、かつ、ペルフルオロアルキル基、またはペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキル)基であり、X〜Xが水素原子であり、X1F〜X3Fがフッ素原子である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
下記化合物(5−1)を熱分解することを特徴とする下記化合物(7−1)の製造方法。ただし、RAFがペルフルオロアルキレン基またはペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキレン)基を示し、RBF、RCF、RDFがフッ素原子またはペルフルオロアルキル基を示す。
【化4】

【請求項9】
下記化合物(7−1)の1種以上、または該化合物(7−1)の1種以上と該化合物(7−1)と共重合しうる重合性単量体の1種以上、を重合することを特徴とするフルオロスルホニル基含有重合体の製造方法。ただし、RAFがペルフルオロアルキレン基またはペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキレン)基を示し、RBF、RCF、RDFがフッ素原子またはペルフルオロアルキル基を示す。
【化5】

【請求項10】
請求項9の方法で製造されたフルオロスルホニル基含有重合体のフルオロスルホニル基をアルカリ加水分解する、または、該アルカリ加水分解した後に酸処理する、ことを特徴とするスルホン酸塩基またはスルホン酸基含有重合体の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−59171(P2010−59171A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250366(P2009−250366)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【分割の表示】特願2003−540166(P2003−540166)の分割
【原出願日】平成14年10月30日(2002.10.30)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】