説明

フルオロポリマー硬化組成物

フルオロカーボンポリマー、ラジカル反応開始剤、および第1および第2の硬化助剤を含む組成物が提供される。一態様においては、第1の硬化助剤は、式CH2=CH−Rf−CH=CH2、によって表され、ここで、Rfは、一つ以上のO原子を任意に含む二価のペルフルオロアリファティック基、ペルフルオロアリレン基、およびペルフルオロアルカリレン基から選択される。別の態様において、第1の硬化助剤は、アリルシアヌレート、アリルイソシアヌレート、メタリルシアヌレート、およびメタリルイソシアヌレートからなる群から選択される。どちらの態様においても、第2の硬化助剤は、少なくとも1つの末端アルケンを含む有機化合物である。ただし第2の硬化助剤は、第1の硬化助剤の群の構成要素ではない。またこれらの組成物の反応生成物、およびこれらの組成物を硬化することを含むエラストマーの形成方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この説明は、フルオロポリマー硬化組成物、硬化された物品、および硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素化エラストマー、特に全フッ素化エラストマーは、固有の耐熱性および耐化学性特性を有する。しかしこれらのエラストマーを、フルオロポリマー前駆体(しばしば「生ゴム」と言われる)から調製することは、難しい可能性がある。フルオロポリマー前駆体とフルオロポリマー前駆体を含む組成物とは、処理添加剤および硬化添加剤(たとえば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)など)と共存できない場合がある。非共存性に加えて、TAICも、望ましくない単独重合を起こす傾向がある。これは、フッ素化エラストマーを調製する際の処理上の問題となる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フルオロポリマー前駆体とフルオロポリマー前駆体を含む組成物とは、処理添加剤および硬化添加剤(たとえば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)など)と共存できない場合がある。非共存性に加えて、TAICも、望ましくない単独重合を起こす傾向がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の組成物によって、シアヌレートまたはイソシアヌレート硬化助剤(curing co-agent)を唯一の硬化助剤として含む同様の組成物に対して複数の処理上の優位性が提供される場合がある。たとえば、本発明の組成物のレオロジー特性は、TAICを唯一の硬化助剤として用いる組成物よりも改善されている場合がある。本明細書に記載した組成物が示すt’50およびt’90は、一般的に、TAICを唯一の硬化助剤として用いる組成物の場合よりも長い。値t’50およびt’90は、サンプルのトルクが、ML+0.50(MH−ML)に等しい値に達するまでの時間と、トルクが、ML+0.90(MH−ML)に達するまでの時間とを、それぞれ測定したものである。(ML)は最小トルクであり、(MH)は、平坦域も最大トルクも得られないときの特定の時間の間に到達する最も高いトルクである。t’50またはt’90が長くなった場合には、組成物の予備硬化のレベルが下がったか、硬化助剤の単独重合のレベルが下がったか、またはそれらの組み合わせを示す場合がある。組成物に添加するTAICの量を減らすことによって、本発明の実施形態のいくつかにおいては、予備硬化および硬化助剤の単独重合が著しく減少することが示される。予備硬化および硬化助剤の単独重合を減らすことによって、フッ素化エラストマーの加工性を向上させることができる。
【0005】
一態様においては、本説明は、フルオロカーボンポリマー、ラジカル反応開始剤、および第1の硬化助剤を含む組成物に関する。第1の硬化助剤は、アリルシアヌレート、アリルイソシアヌレート、メタリルシアヌレート、およびメタリルイソシアヌレートからなる群から選択される。組成物はさらに、少なくとも1つの末端アルケンを含む有機化合物を含む第2の硬化助剤を含む。ただし第2の硬化助剤は、第1の硬化助剤の群の構成要素ではない。本明細書で使用する場合、末端アルケンは、C=CH2部分を含む化合物を指す。
【0006】
別の態様においては、本説明では、フルオロカーボンポリマー、ラジカル反応開始剤、および第1の硬化助剤を含む組成物を提供する。この態様においては、第1の硬化助剤は、式CH2=CH−Rf−CH=CH2によって表わされるフッ素系化合物である。Rfは、一つ以上のO原子を任意に含む二価のペルフルオロアリファティック(脂肪族(perfluoroaliphatic))基、ペルフルオロアリレン基、およびペルフルオロアルカリレン基から選択される。組成物はさらに、少なくとも1つの末端アルケンを含む有機化合物を含む第2の硬化助剤を含む、ただし第2の硬化助剤は、第1の硬化助剤の群の構成要素ではない。
【0007】
別の態様においては、本説明は、フルオロカーボンポリマー、ラジカル反応開始剤、および第1の硬化助剤を含む組成物を硬化させることを含むエラストマーの形成方法を提供する。第1の硬化助剤は、アリルシアヌレート、アリルイソシアヌレート、メタリルシアヌレート、およびメタリルイソシアヌレートからなる群から選択される。組成物はさらに、少なくとも1つの末端アルケンを含む有機化合物を含む第2の硬化助剤を含む。ただし第2の硬化助剤は、第1の硬化助剤の群の構成要素ではない。
【0008】
さらに別の態様においては、本説明は、フルオロカーボンポリマー、ラジカル反応開始剤、および第1の硬化助剤の反応生成物を含むエラストマーを提供する。第1の硬化助剤は、アリルシアヌレート、アリルイソシアヌレート、メタリルシアヌレート、およびメタリルイソシアヌレートからなる群から選択される。組成物はさらに、少なくとも1つの末端アルケンを含む有機化合物を含む第2の硬化助剤を含む。ただし第2の硬化助剤は、第1の硬化助剤の群の構成要素ではない。
【0009】
別の態様においては、本説明は、フルオロカーボンポリマー、ラジカル反応開始剤、および第1の硬化助剤を含む組成物を硬化させることを含むエラストマーの形成方法を提供する。この態様においては、第1の硬化助剤は、式CH2=CH−Rf−CH=CH2によって表わされるフッ素系化合物である。Rfは、一つ以上のO原子を任意に含む二価のペルフルオロアリファティック基、ペルフルオロアリレン基、およびペルフルオロアルカリレン基から選択される。組成物はさらに、少なくとも1つの末端アルケンを含む有機化合物を含む第2の硬化助剤を含む。ただし第2の硬化助剤は、第1の硬化助剤の群の構成要素ではない。
【0010】
さらに別の態様においては、本説明は、フルオロカーボンポリマー、ラジカル反応開始剤、および第1の硬化助剤の反応生成物を含むエラストマーを提供する。この態様においては、第1の硬化助剤は、式CH2=CH−Rf−CH=CH2によって表わされるフッ素系化合物である。Rfは、一つ以上のO原子を任意に含む二価のペルフルオロアリファティック基、ペルフルオロアリレン基、およびペルフルオロアルカリレン基から選択される。組成物はさらに、少なくとも1つの末端アルケンを含む有機化合物を含む第2の硬化助剤を含む。ただし第2の硬化助剤は、第1の硬化助剤の群の構成要素ではない。
【0011】
一般的に、本明細書で説明した組成物によって、TAICを唯一の硬化助剤として含むもの(TAICは、望ましくない単独重合を起こしがちである)に対して驚くべき優位性が実現される。TAICが唯一の硬化助剤である組成物は、多くの場合にモールドの汚れ、モールドの焼付き、および表面のブリーディングを起こす。対照的に、組成物として、アリルシアヌレート、アリルイソシアヌレート、メタリルシアヌレート、およびメタリルイソシアヌレートからなる群から選択される第1の硬化助剤と、少なくとも1つの末端アルケンを含む有機化合物を含む第2の硬化助剤であって、第1の硬化助剤の群の構成要素ではない第2の硬化助剤とを含む組成物は、TAICを唯一の硬化助剤として用いる組成物と比べて、良好な離型およびモールドの汚れの低減を示す場合がある。さらに、組成物として、式CH2=CH−Rf−CH=CH2によって表わされるフッ素系化合物である第1の硬化助剤であって、Rfは、一つ以上のO原子を任意に含む二価のペルフルオロアリファティック基、ペルフルオロアリレン基、およびペルフルオロアルカリレン基から選択される第1の硬化助剤と、少なくとも1つの末端アルケンを含む有機化合物を含む第2の硬化助剤であって、第1の硬化助剤の群の構成要素ではない第2の硬化助剤とを含む組成物も、TAICを唯一の硬化助剤として用いる組成物と比べて、良好な離型およびモールドの汚れの低減を示す場合がある。
【0012】
さらに、TAICは、本明細書に記載したフルオロカーボンポリマーでは、容易に処理することができない。特にTAICは、従来の処理方法を用いた場合には容易に取り入れることができない。対照的に、本明細書に記載した組成物であれば、本明細書に記載したフルオロカーボンポリマーに硬化助剤を容易に取り入れることができる。この取り入れが容易であることによって、処理がもっと望ましくなる。
【0013】
他の実施形態においては、驚くべきことに次のことが分かっている。すなわち、本説明による組成物を硬化させた場合には、フルオロポリマーの硬化によって形成されるエラストマーに対する圧縮永久ひずみが、TAICを唯一の硬化助剤として有するフルオロポリマーの硬化によって形成されるエラストマーの場合に匹敵するかまたはそれよりも良好である、ということである。こうして、本明細書に記載した処理上の優位性が、本明細書に記載した組成物またはエラストマー製品の物理特性の有意な変化を起こすことなく、得られる場合がある。
【0014】
上記の要約は、本発明の開示された各実施形態またはあらゆる実施を記載することを意図するものではない。以下の詳細な説明および実施例によって、例示的な実施形態がより具体的に例示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
一態様においては、本説明は、アリルシアヌレート、アリルイソシアヌレート、メタリルシアヌレート、およびメタリルイソシアヌレートからなる群から選択される第1の硬化助剤を含む組成物を提供する。別の態様においては、第1の硬化助剤は、式CH2=CH−Rf−CH=CH2で表され、ここでRfは、一つ以上のO原子を任意に含む二価のペルフルオロアリファティック基、ペルフルオロアリレン基、およびペルフルオロアルカリレン基から選択される。どちらの態様においても、組成物はさらに、少なくとも1つの末端アルケンを含む有機化合物を含む第2の硬化助剤を含む。ただし第2の硬化助剤は、第1の硬化助剤の群の構成要素ではない。組成物にはさらに、フルオロカーボンポリマーおよびラジカル反応開始剤が含まれる。
【0016】
本明細書に記載した組成物は、いくつかの実施形態においては、そのレオロジー特性が、たとえばトリアリルイソシアヌレートを唯一の硬化助剤として用いることで得られる組成物と比べて改善されている。実際には、本明細書で説明したように、トリアリルイソシアヌレートを唯一の硬化助剤として、第1の硬化助剤と組み合わせて用いたときには、組成物の示すt’50およびt’90は、一般に、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)を唯一の硬化助剤として用いる組成物の場合よりも長い。t’50はたとえば、同じフルオロカーボンポリマーおよびラジカル反応開始剤を含むがTAICを唯一の硬化助剤として用いる組成物よりも、10%以上長くても良いし、20%以上長くても良いし、50%以上長くても良いし、100%を超えて長くても良い。同様に、t’90はたとえば、同じフルオロカーボンポリマーおよびラジカル反応開始剤を含むがTAICを唯一の硬化助剤として用いる組成物よりも、10%以上長くても良いし、20%以上長くても良いし、50%以上長くても良いし、100%を超えて長くても良い。
【0017】
第1の硬化助剤がシアヌレートおよびイソシアヌレートを含む態様においては、例として以下のものが挙げられる。すなわち、トリ(メチル)アリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルシアヌレート、ポリ−トリアリルイソシアヌレート、キシレン−ビス(ジアリルイソシアヌレート)、N,N’−mフェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、トリス(ジアリルアミン)−2トリアジン、トリアリル亜リン酸塩、1,2−ポリブタジエン、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、およびそれらの組み合わせである。
【0018】
別の態様において、第1の硬化助剤が式CH2=CH−Rf−CH=CH2によって与えられる場合には、Rfは、一つ以上のO原子を任意に含む二価のペルフルオロアリファティック基、ペルフルオロアリレン基、およびペルフルオロアルカリレン基から選択される。例としては、たとえば、1,6−ジビニルペルフルオロヘキサン、および1,8−ジビニルペルフルオロオクタンが挙げられる。
【0019】
また第2の硬化助剤には、トリビニルシクロヘキサン、トリアリルシクロヘキサン、およびそれらの誘導体も含まれる。この文脈において「誘導体」が示すのは、シクロヘキサン構を有する第2の硬化助剤であって、一般式−CA=CB2および−CA2CB=CG2を有する基から選択される少なくとも1つの基と置換されたものである。このような文脈において、各A、B、およびGは、水素原子、ハロゲン、アルキル基、アリール基、およびアルカリール基から独立に選択しても良い。なお後者の3つは、フッ素化されていなくても良いし、部分的にフッ素化されていても良いし、全フッ素化されていても良い。加えて、第1の硬化助剤を、アリルシアヌレート、アリルイソシアヌレート、メタリルシアヌレート、およびメタリルイソシアヌレートからなる群から選択する場合、第2の硬化助剤は、式CH2=CH−Rf−CH=CH2によって表わされても良い。ここで、Rfは、一つ以上のO原子を任意に含む二価のペルフルオロアリファティック基、ペルフルオロアリレン基、およびペルフルオロアルカリレン基から選択される。また第1の硬化助剤が、式CH2=CH−Rf−CH=CH2によって表わされ、Rfが、一つ以上のO原子を任意に含む二価のペルフルオロアリファティック基、ペルフルオロアリレン基、およびペルフルオロアルカリレン基から選択される場合、第2の硬化助剤を、アリルシアヌレート、アリルイソシアヌレート、メタリルシアヌレート、およびメタリルイソシアヌレートからなる群から選択しても良い。
【0020】
第1の硬化助剤は一般的に、任意の量で用いても良い。いくつかの実施形態においては、第1および第2の硬化助剤を含む量が、1〜10部、特に1〜5部(フルオロカーボンポリマーの100部あたり)であることが有用である。
【0021】
また組成物は、充填剤として、硬化されたフルオロエラストマーの一般的な物理特性(たとえば、伸長および圧縮永久ひずみ)を向上させ得るものを含んでいても良い。充填剤は、10部(フルオロカーボンポリマーの100部あたり)で含まれる。充填剤の非限定の例には、以下のものが含まれる。すなわち、カーボンブラック、グラファイト、従来認識されている熱可塑性フルオロポリマーマイクロパウダー、粘土、シリカ、タルク、珪藻土、硫酸バリウム、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、カルシウムフッ化物、酸化チタン、および酸化鉄である。これらの充填剤の組み合わせを用いても良い。当業者であれば、硬化されたエラストマーの所望の物理特性を実現するために、具体的な充填剤を指摘の範囲の量で選択することができる。
【0022】
組成物の物理特性(たとえば、伸長および圧縮永久ひずみ)をさらに高めるために、他の材料を組成物に取り入れても良い。たとえば、化合物の硬化および熱安定性を促進するために酸受容体を用いても良い。好適な酸受容体には、以下のものが含まれていても良い。たとえば、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、二塩基性亜燐酸鉛、酸化亜鉛、炭酸バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、ステアリン酸アルカリ、シュウ酸マグネシウム、またはそれらの組み合わせである。酸受容体を用いる量の範囲は1〜25重量部(ポリマーの100重量部あたり)であっても良い。しかし別の態様においては、このような酸受容体は必要ではなく、それらを除くことによって、いわゆる透明なエラストマーを形成することができる場合がある。
【0023】
本明細書に記載した組成物において有用なフルオロカーボンポリマーには、たとえば、フルオロエラストマーを調製するために硬化しても良いものが含まれる。フルオロカーボンポリマー、したがってこのポリマーから調製されるフルオロエラストマーは、部分的にフッ素化しても良いし、全フッ素化しても良い。またフルオロカーボンポリマーは、いくつかの態様においては、ポストフッ素化しても良い。フルオロカーボンポリマーの構成単位として有用なモノマーには、以下のものが含まれる。たとえば、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニルエーテル(たとえば、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル)、クロロトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ビニルフッ化物、プロピレン、エチレン、およびそれらの組み合わせである。
【0024】
フッ素化ビニルエーテルを用いる場合、フッ素化ビニルエーテルはペルフルオロ(ビニル)エーテルであっても良い。いくつかの実施形態においては、ペルフルオロ(ビニル)エーテルは、CF2=CFO−[D]x−Rfから選択される。ここで、各Dは、−(CF2z−、−O(CF2z−、−O(CF(CF3)CF2)−、および−CF2CF(CF3)−、から独立に選択され、各zは独立に1〜10であり、xは0〜10であり、またRfは、1〜10炭素原子を有する直鎖または分枝鎖ペルフルオロアルキルである。例には以下のものが含まれる。たとえば、CF2=CFOCF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2CF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2OCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF2OCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF2CF2OCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2CF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2CF2CF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2CF2CF2CF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2(OCF23OCF3、CF2=CFOCF2CF2(OCF24OCF3、CF2=CFCF2OCF2CF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2OCF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2CF2CF3、CF2=CFOCF2CF2OCF2CF2OCF2CF2CF3、CF2=CFCF2OCF2CF2OCF3、CF2=CFCF2OCF2OCF3、CF2=CFOCF2CF2CF3、CF2=CFOCF(CF3)CF2CF3、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3、およびそれらの組み合わせである。
【0025】
別の態様においては、本明細書に記載したフルオロカーボンポリマーには、硬化部位モノマーが含まれていても良い。硬化部位モノマーを用いることで、エラストマーの調製が、フルオロカーボンポリマーを硬化させることによって可能になる。含まれている場合には、硬化部位モノマーは、たとえば、式(IV)CX2=CX(Z)の一つ以上の化合物から選択しても良い。この式において、各Xは、HおよびFから独立に選択しても良く、Zは、Br、I、Cl、およびR’fUから選択しても良い。このような文脈において、Uは、Br、I、Cl、およびCNから選択しても良く、R’fは、任意に一つ以上のO原子を含む全フッ素化二価結合基である.また硬化部位モノマーは、たとえば、式(V)Y(CF2qYの一つ以上の化合物から選択しても良い。この式において、各Yは、Br、IおよびClから選択しても良く、またqは1〜6である。これらの態様のいずれにおいても、ZおよびYは、フルオロカーボンポリマーの鎖末端に化学結合されていても良い。ここで説明したフルオロカーボンポリマーにおいて有用な硬化部位モノマーの例には、以下のものが含まれる。たとえば、1−ブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロ−3ブテン、ブロモテトラフルオロエチレン、1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレン、およびCF2=CFO(CF25CN(MV5CN)である。
【0026】
本明細書に記載したポリマーの調製は、バッチもしくはセミバッチ、または連続エマルション重合プロセスを用いて行なっても良い。また懸濁液または溶液重合プロセスによって調製しても良い。これには、たとえばフリーラジカル重合が含まれる。
【0027】
別の態様において、本明細書に記載した組成物には、ラジカル反応開始剤が含まれていても良い。ラジカル反応開始剤には、たとえば過酸化物が含まれていても良い。有用な過酸化物には、有機過酸化物および無機過酸化物が含まれる。有機過酸化物を用いる場合、さらにそれを、動的混合温度において分解しないものから選択しても良い。好適なラジカル反応開始剤には、以下のものが含まれる。たとえば、ジカミル過酸化物、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチル過酸化物、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ラウリル過酸化物、およびそれらの組み合わせである。ラジカル反応開始剤は、フリーラジカル種の生成によって硬化反応を開始することが可能な任意の化合物である。
【0028】
さらに別の態様においては、本説明は、エラストマー(硬化された材料)を得るために本明細書に記載した組成物を硬化することを含むエラストマーの調製方法に関する。
【0029】
硬化するための組成物を調製する際に、組成物を硬化助剤と混合することまたは1つもしくは複数のステップにおいて混合することを、通常のゴム混合装置(たとえば密閉式ミキサー(たとえば、バンバリーミキサー)、ロールミルなど)のいずれかを用いて、行なうことができる。最良の結果を得るためには、混合温度は、硬化反応の開始温度よりも上に上昇してはならない。当業者であれば、この温度の決定を、選択したラジカル反応開始剤、存在する硬化助剤、フルオロカーボンポリマーなどに基づいて、行なうことができる。いくつかの実施形態においては、成分を、組成物の全体に渡って一様に分散させても良い。この結果、硬化をもっと効果的に行なうことに役立つ場合がある。
【0030】
一態様においては、硬化を、本明細書に記載した組成物のプレス硬化を通して行なっても良い。組成物のプレス(すなわち、プレス硬化)は通常、温度として約95〜230℃、特に約150〜205℃で、時間として約1分間〜約15時間、通常、約1〜10分間において、行なう。この態様においては、プロセスには、組成物をモールド内に用意すること、およびモールドを加熱することが含まれる。プロセスにはさらに、組成物をプレスすること(すなわち、圧力を印加すること)を、圧力として約700〜20,000kPa、特に3,400〜6,800kPaにおいて行なうことが含まれる。プロセスにはさらに、最初にモールドに離型剤をコーティングすること、およびモールドをプリベークすることが含まれる。プリベーキングは、この意味において、モールドの加熱を、組成物を加える前に行なうことを指す。モールドを室温に戻すことを、組成物を加える前に行なっても良い。別の態様においては、本明細書に記載した第1の硬化助剤を用いて、モールドからの離型を助けても良い。この点に関して、本明細書に記載した組成物のプレス硬化においては、最初に離型剤をコーティングすることを必要としなくても良い。
【0031】
プロセスにはさらに、本明細書で説明したような組成物の硬化によって得られるエラストマーを後硬化することが含まれていても良い。後硬化は、炉において、温度として約150〜315℃で、より詳細には約200〜260℃で、時間として約2〜50時間またはそれ以上において(これらは、サンプルの断面厚さに応じる)、行なっても良い。サンプルがもっと厚い場合には、後硬化中の温度を、ある範囲の下端から所望する最大温度まで、徐々に上げても良い。そして最大温度(たとえば、260℃)を、約4時間以上の間、保持しても良い。
【0032】
また本説明では、フルオロカーボンポリマー、ラジカル反応開始剤、第1の硬化助剤、および任意に第2の硬化助剤の反応生成物を提供する。第1の硬化助剤は、一態様においては、アリルシアヌレート、アリルイソシアヌレート、メタリルシアヌレート、およびメタリルイソシアヌレートからなる群から選択しても良い。別の態様においては、第1の硬化助剤が、式CH2=CH−Rf−CH=CH2によって表わされる。Rfは、一つ以上のO原子を任意に含む二価のペルフルオロアリファティック基、ペルフルオロアリレン基、およびペルフルオロアルカリレン基から選択される。どちらの態様においても、第2の硬化助剤を用意しても良い。ただし第2の硬化助剤は、第1の硬化助剤の群の構成要素ではない。一態様においては、反応生成物はエラストマーである。
【0033】
反応生成物を、処理して、成形された物品として用意することを、たとえば押出によって(たとえばホースもしくはホース裏張りの形状において)、またはモールディングによって(たとえばOリングシールの形状において)、行なっても良い。組成物を加熱することで、組成物を硬化させることができ、硬化成形されたエラストマー物品を形成することができる。
【実施例】
【0034】
特段の指定がない限り、実施例および明細書の残りの中の全ての部、百分率、比などは重量基準であり、そして実施例で用いる全ての試薬類は、たとえばミズーリ州セントルイス(Saint Louis)のシグマ−アルドリッチカンパニー(Sigma-Aldrich Company)などの一般化学薬品供給業者類から入手したか、または入手可能であるか、あるいは従来の方法によって合成してもよい。
【0035】
以下の例において、これらの略語を用いる。wt=重量、min=分間、mol=モル、phr=ゴムの100部あたりの部、hr=時間、℃=摂氏度、psi=ポンド/平方インチ、MPa=メガパスカル、およびN−m=ニュートンメートル。
実施例全体を通して、以下の略称を使用する。
【表A】

【表B】

【0036】
実施例1〜11および比較例1〜9
フルオロポリマーを、表1に示した添加剤を添加しながら、2本ロールミル上で混合した。混合した混合物は、表1に示す種々の温度および時間でプレス硬化した。その後、モールドした試験シートおよびOリングを、空気中で、表1に示す種々の温度および時間で後硬化した。
【0037】
プレス硬化および後硬化の後、後硬化した試験厚板から切断したダンベルを用いて物理特性を測定した。
【0038】
ここで報告される結果を比較する際、以下の比較を行なうことが有用であり得る。
【表C】

【表D】

【表E】

【0039】
結果
レオロジー、物理特性、圧縮永久歪みを表2〜4に示す。
【0040】
硬化レオロジー試験を、未硬化の配合サンプルを用いて、商標名モンサントムービングダイレオメータ(Monsanto Moving Die Rheometer)(MDR)2000型で、モンサント社(Monsanto Company)(ミズーリ州、セントルイス)により販売されているレオメータを用いて、ASTMD5289−93aに従い、177℃、前加熱なし、経過時間30分、および0.5度arcで実施した。最小トルク(ML)、および平坦域または最大トルクが得られなかった場合の特定の時間の間に到達する最も高いトルク(MH)の両方を測定した。トルクがMLから2単位増加する時間(ts2)、トルクがML+0.5(MH−ML)に等しい値に到達する時間(t’50)、およびトルクがML+0.9(MH−ML)に到達する時間(t’90)もまた測定した。結果を表2(下記)に報告する。


【表F】

【表G】

【0041】
実施例1〜11および比較例1〜9で調製した硬化可能な組成物のプレス硬化シート(150mm×150mm×2.0mm)は、表3および4に示す場合を除いて、物理特性の決定のために、表3に詳しく示した種々の温度および時間でプレスすることによって調製した。プレス硬化したシートを後硬化することを、表3に詳細に示した種々の温度および時間の下で熱にさらすことによって、行なった。すべての被検査物を、試験の前に周囲温度に戻した。
【0042】
物理特性
破断点引張強さ、破断点伸長、および100%伸張時弾性率を、ASTMD412−92に従って、対応する被検査物からASTMダイDを用いて切断した試料を用いて、決定した。
【0043】
硬さを、ASTMD2240−85法Aを用いて、タイプA−2ショアジュロメータを使用して測定した。
【0044】
表3(下記)に、そこに示されている場合を除き、実施例1〜11および比較例1〜9の硬化可能な組成物のプレス硬化および後硬化シートの物理特性を報告する。


【表H】

【表I】

上表3において、「データなし」は、プレートが、特性を測定できるような方法では作製されなかったことを示す。
【0045】
表4に示す場合を除き、実施例1〜9および比較例1〜9の硬化可能な組成物の被検査物を、6mm(0.24インチ)の厚さを有するボタンを形成するためにプレス硬化および後硬化した。ボタン試料の圧縮永久ひずみの測定を、ASTM395−89の方法Bを用いて行なった。表4(下記)に、結果を永久歪のパーセンテージとして報告する。結果は、25%歪みにおいて測定したものである。
【表J】

【表K】

【0046】
上表4において、「データなし」は、圧縮永久歪みが測定されなかったことを示す。
この発明の種々の修正および変更は、この発明の範囲および趣旨から反することなく当業者によりおこなわれ得るが、この発明は、本明細書で詳述された説明的な実施形態に必要以上に限定されないと理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロカーボンポリマーと、
ラジカル反応開始剤と、
アリルシアヌレート、アリルイソシアヌレート、メタリルシアヌレート、およびメタリルイソシアヌレートからなる群から選択される第1の硬化助剤と、
少なくとも1つの末端アルケンを含む有機化合物を含む第2の硬化助剤であって、第1の硬化助剤の群の構成要素ではない前記第2の硬化助剤と、を含む組成物。
【請求項2】
前記第1の硬化助剤は、トリ(メチル)アリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリ(メチル)アリルシアヌレート、ポリ−トリアリルイソシアヌレート、キシリレン−ビス(ジアリルイソシアヌレート)、およびそれらの組み合わせから選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2の硬化助剤は、1,3,5−トリビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、1,6−ジビニルペルフルオロヘキサン、1,8−ジビニルペルフルオロオクタン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、トリス(ジアリルアミン)−2―トリアジン、トリアリルホスフェート、1,2−ポリブタジエン、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、およびそれらの組み合わせから選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ラジカル反応開始剤は有機過酸化物である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記有機過酸化物は、ジカミル過酸化物、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチル過酸化物、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ラウリル過酸化物、およびそれらの組み合わせから選択される請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記フルオロカーボンポリマーは、硬化部位モノマーから誘導される単位を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記硬化部位モノマーは、
式CX2=CX(Z)の一つ以上の化合物(各XはHおよびFから選択され、ZはBr、I、Cl、およびR’fUから選択され、UはBr、I、Cl、およびCNから選択され、R’fは任意に一つ以上のO原子を含む全フッ素化二価結合基である)、および
式Y(CF2qYの一つ以上の化合物(YはBr、I、およびClから選択され、qは1〜6である)から選択される請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ZおよびYは、前記フルオロカーボンポリマーの鎖末端に化学結合される請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記フルオロカーボンポリマーは全フッ素化されている請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記フルオロカーボンポリマーは部分的にフッ素化されている請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記フルオロカーボンポリマーは、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニルエーテル、およびクロロトリフルオロエチレンから選択されるモノマーから誘導される単位を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ビニルエーテルはペルフルオロ(ビニル)エーテルである請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ペルフルオロ(ビニル)エーテルは、一般式CF2=CFO−[D]x−Rfを有するエーテルから選択され、ここで、各Dは、−(CF2z−、−O(CF2z−、−O(CF(CF3)CF2)−、および−CF2CF(CF3)−から独立に選択され、各zは独立に1〜10であり、xは0〜10であり、ならびにRfは、1〜10炭素原子を有する直鎖または分枝鎖ペルフルオロアルキルである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、t’50が、同じ前記フルオロカーボンポリマーおよびラジカル反応開始剤を含むがTAICを唯一の前記硬化助剤として用いる組成物よりも、10%以上長い請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、t’90が、同じ前記フルオロカーボンポリマーおよびラジカル反応開始剤を含むがTAICを唯一の前記硬化助剤として用いる組成物よりも、10%以上長い請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物を硬化することを含むエラストマーの形成方法。
【請求項17】
請求項1に記載の前記フルオロカーボンポリマー、ラジカル反応開始剤、第1の硬化助剤、および第2の硬化助剤の反応によって形成される反応生成物。
【請求項18】
フルオロカーボンポリマーと、
ラジカル反応開始剤と、
式CH2=CH−Rf−CH=CH2によって表わされる第1の硬化助剤であって、
fは、一つ以上のO原子を任意に含む二価のペルフルオロアリファティック基、ペルフルオロアリレン基、およびペルフルオロアルカリレン基から選択される、第1の硬化助剤と、
少なくとも1つの末端アルケンを含む有機化合物を含む第2の硬化助剤であって、第1の硬化助剤の群の構成要素ではない前記第2の硬化助剤と、を含む組成物。

【公表番号】特表2009−529070(P2009−529070A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557435(P2008−557435)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/005603
【国際公開番号】WO2007/103318
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】