説明

フレキシブル光導波路

【課題】屈曲耐久性に優れ、光損失の少ないフレキシブル光導波路を提供する。
【解決手段】下部クラッド層2、コア層6、上部クラッド層7が順に積層されてなるフレキシブル光導波路であって、コア層6が中間部より端部が厚く、かつ厚い部分から薄い部分にかけて傾斜を有し、上部クラッド層7がコア層6の傾斜面上で傾斜を有し、コア層6の傾斜角度が、上部クラッド層7の傾斜角度よりも大きいことを特徴とするフレキシブル光導波路、並びに前記フレキシブル光導波路を、フレキシブル電気配線板と複合化した光電気複合配線板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲耐久性に優れたフレキシブル光導波路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子素子間や配線基板間の高速・高密度信号伝送において、従来の電気配線による伝送では、信号の相互干渉や減衰が障壁となり、高速・高密度化の限界が見え始めている。これを打ち破るため電子素子間や配線基板間を光で接続する技術、いわゆる光インタコネクションが検討されている。光の伝送路として加工の容易さ、低コスト、配線の自由度が高く、かつ高密度化が可能な点からポリマー光導波路が注目を集めている。特に、携帯電話やノート型パソコンなどに光導波路を用いることが検討されている。
【0003】
ところで、携帯電話などの電子機器においては、開閉可能な二つの機構部間の信号伝送にフレキシブル光導波路を用いる場合に、該フレキシブル光導波路は二つの機構部の連結部(ヒンジ)を跨ぐことが考えられる。この場合に、ヒンジによってフレキシブル光導波路は曲げられ、屈曲によって割れやクラックが生じることがあった。特に、近年の電子機器の小型化の要請から、ヒンジにおいて、Rが1〜2mm程度の小さい曲げ半径で曲げることが要求されるため、ヒンジでの割れやクラックの発生が顕著になるという問題があった。
特に、省スペース、薄型化に対応するため、光配線と電気配線を組み合わせた光電気混載基板が望まれるが、光電気混載基板ではさらにその厚さが増大するため、フレキシブル光導波路にはより一層の屈曲耐久性が求められていた。
【0004】
フレキシブル光導波路の屈曲耐久性を向上させる方法としては、屈曲部分の厚さを薄くする方法があるが、光導波路フィルムの厚さを薄くするには、光導波路フィルムのコアサイズを小さくすることが必要である。コアサイズが小さくなると、光結合効率が低下することが考えられることから、光入力部よりもフィルム厚さが薄い箇所を有する光導波路フィルムが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、上記のようなフレキシブル光導波路を作製する方法として、コア材もしくはクラッド材、又はその前駆体の溶液を膜厚制御部を有するアプリケータヘッドを具備するアプリケータを用いて塗布するステップ、及び塗布された溶液の一部を除去するステップを含む製造方法が記載されているが、このような溶液を用いる方法では、膜厚の制御が容易ではなく、特に、塗布された溶液の一部を除去するステップの後に、レベリングするためにコア部の傾斜を制御することが容易ではない。また、フレキシブル光導波路のさらなる屈曲耐久性の向上と、光損失の減少が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公報2007/026601パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、屈曲耐久性に優れ、かつ光損失の少ないフレキシブル光導波路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、コア層をテーパ状に中間部を端部より薄くして、その傾斜角度を、上部クラッド層の傾斜角度よりも大きくすることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)下部クラッド層、コア層、上部クラッド層が順に積層されてなるフレキシブル光導波路であって、コア層が中間部より端部が厚く、かつ厚い部分から薄い部分にかけて傾斜を有し、上部クラッド層が前記コア層の傾斜面上で傾斜を有し、前記コア層の傾斜角度が、前記上部クラッド層の傾斜角度よりも大きいことを特徴とするフレキシブル光導波路、
(2)上記(1)に記載のフレキシブル光導波路を、フレキシブル電気配線板と複合化した光電気複合配線板、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屈曲耐久性に優れ、光損失の少ないフレキシブル光導波路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のフレキシブル光導波路の一態様を示す模式図である。
【図2】本発明のフレキシブル光導波路を得るために好適な製造方法の各工程を示す模式図である。
【図3】本発明のフレキシブル光導波路の製造に用いるクラッド層形成用樹脂フィルムを説明する図である。
【図4】本発明のフレキシブル光導波路の製造に用いるコア層形成用樹脂フィルムを説明する図である。
【図5】本発明のフレキシブル光導波路の製造方法の工程の一部を示す模式図である。
【図6】本発明のフレキシブル光導波路の他の一態様を示す模式図である。
【図7】屈曲耐久性試験の内容を示す概念図である。
【図8】光導波路コアの傾斜角度と光損失の関係を示すシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のフレキシブル光導波路は、図1に示すように、光導波路の第2クラッド層(上部クラッド層)7及びコア層6(第1のコア層3と第2のコア層5が積層して一体化したもの)が、端部から中間部に向けて、傾斜を有するテーパ形状となる。そして、このように、コア層をテーパ状に中間部を端部より薄くして、コア層が厚い部分から薄い部分にかけて傾斜を有し、上部クラッド層が前記コア層の傾斜面上で傾斜を有し、コア層の傾斜角度αが、上部クラッド層の傾斜角度βよりも大きいことが特徴である。このようにすることにより、テーパ部のコアの安定的保護、屈曲部の薄膜化、および膜厚変化による光損失劣化の抑制が可能になり、その条件を満たさないフレキシブル光導波路に比べ、屈曲耐久性に優れ、光損失が少ない。
なお、本発明において、上記傾斜角度α、βとは、コアまたは上部クラッドの膜厚変化開始位置と終了位置の2点を結ぶ直線によって形成される角度である。
【0011】
また、コア層6の傾斜角度としては、図8のシミュレーション結果に示すように、光閉じ込めの観点からは傾斜角度が小さい方が、一方、テーパ長を短くする観点からは傾斜角度が大きい方が良い。これらの観点から、0.05〜4度が好ましく、0.1〜2度の範囲がより好ましく、0.1〜1度の範囲がさらに好ましい。上部クラッド層7の傾斜角度としては、屈曲性向上という理由から0.01〜2度であると好ましく、0.02〜1.5度がより好ましく、0.05〜1度の範囲がさらに好ましい。
また、本発明のフレキシブル光導波路は、図5(g’)に示すように、コア層がコアパターン8を形成してなり、コアパターン8が、下部クラッド層2及び上部クラッド層7に取り囲まれている形状であると好ましい。
【0012】
本発明のフレキシブル光導波路において、光信号はコア層の光入力部から入力され中間部を通って光出力部に出力されるが、光入出力部は他の光部品と光結合されて信号となる光が入力又は出力される部位であって、特に制限はなく、たとえば、コア層の一方の端部が光入力部で、他方の端部が光出力部であってもよい。また、光入出力部は、端部ではなく、端部と中間部の間に設けられていてもよい。この場合、光導波路のコアに光を入射する経路及びコアから光を出射する経路として、例えば、コアにミラーを設けて、さらに必要に応じてクラッド層に光を貫通させるための経路を設けてもよい。
【0013】
本発明のフレキシブル光導波路を得るための好適な製造方法としては、たとえば、以下に記載する(I)〜(V)工程を有する方法を挙げることができる。以下、図2を参照しつつ、工程ごとに詳細に記載する。
なお、以下記載の製造方法では、クラッド層及びコア層を形成するに際し、クラッド層及びコア層形成用の樹脂をスピンコート等の塗布により積層させることが可能であるが、クラッド層形成用樹脂フィルム及びコア層形成用樹脂フィルムを用いることが、より好ましい。このようなフィルムを用いることで、膜厚の制御が容易であるとともに、ハンドリング性に優れたものとなる。図2に示す工程図では、樹脂フィルムを用いた場合を例として説明する。
【0014】
(I)工程
(I)工程は、第1のクラッド層を形成する工程である。第1のクラッド層を形成する方法としては、種々の方法があるが、図2(a)に示すように、クラッド層形成用樹脂フィルムのクラッド層形成用樹脂を硬化して第1のクラッド層(下部クラッド層)2を形成する方法が好ましい。
ここで用いるクラッド層形成用樹脂フィルム10は、図3に示すように、基材フィルム11上にクラッド層形成用樹脂12を塗工したものであり、必要に応じて保護フィルム(セパレーター)13が積層された構造をなす。
なお、保護フィルムは、クラッド層形成用樹脂フィルムの製造に際し、クラッド層形成用樹脂フィルムの保護やロール状に製造する際の巻き取り性を向上させるなどの目的で設けられ、保護フィルムとしては、後述する基材フィルムとして例示されるものと同様なものが使用できる。なお、保護フィルムは、クラッド層形成用樹脂フィルムからの剥離を容易にするためコロナ処理等の接着処理は行っていないことが好ましく、必要に応じ離型処理や帯電防止処理がなされていてもよい。
【0015】
基材フィルム11としては、クラッド層形成用樹脂12を塗工し、かつ後の光導波路製造工程の支持基材となるものであり、その材料については特に制限はないが、柔軟性、強靭性を有するとの観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルサルファイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、アラミドなどが好適に挙げられる。
【0016】
これら基材フィルムの中でも、光導波路の製造に際して、製造可能な耐熱性、現像液耐性、クラッド層を硬化するための紫外線透過性、入手のしやすさの観点からポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、アラミドを基材フィルムに用いるのが好ましい。特に、光導波路製造時の耐熱性、低収縮率の観点からは、アラミド、ポリアミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム及びポリフェニレンサルファイドフィルムが、また、クラッド層の硬化のための紫外線透過性の観点からはポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
基材フィルムの表面は、クラッド層形成用樹脂12との接着性などを向上させるために、処理が施されていてもよく、例えば、酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を挙げることができる。酸化法としては、例えばコロナ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。
【0017】
上記(I)工程において、クラッド層形成用樹脂フィルムの基材フィルムの反対側に保護フィルム13を設けている場合(図3参照)には該保護フィルムを剥離後、クラッド層形成用樹脂フィルムを光(紫外線(UV)など)又は加熱により硬化し、第1のクラッド層(下部クラッド層)2を形成する。
【0018】
本発明で用いるクラッド層形成用樹脂としては、コア層より低屈折率で、光又は熱により硬化する樹脂組成物であれば特に限定されず、熱硬化性樹脂組成物や感光性樹脂組成物を使用することができる。
より好適には、クラッド層形成用樹脂が、(A)ベースポリマー、(B)光又は熱重合性化合物、及び(C)光又は熱重合開始剤を含有する樹脂組成物により構成されることが好ましい。
【0019】
ここで用いる(A)ベースポリマーはクラッド層を形成し、該クラッド層の強度を確保するためのものであり、該目的を達成し得るものであれば特に限定されず、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン等、あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。これらのベースポリマーは1種単独でも、また2種以上を混合して用いてもよい。
上記で例示したベースポリマーのうち、耐熱性が高いとの観点から、主鎖に芳香族骨格を有することが好ましく、特にフェノキシ樹脂が好ましい。
また、3次元架橋し、耐熱性を向上できるとの観点からは、エポキシ樹脂、特に室温で固形のエポキシ樹脂が好ましい。さらに、後に詳述する(B)光又は熱重合性化合物との相溶性が、クラッド層形成用樹脂フィルムの透明性を確保するために重要であるが、この点からは上記フェノキシ樹脂及び(メタ)アクリル樹脂が好ましい。なお、ここで(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂を意味するものである。
【0020】
フェノキシ樹脂の中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF、ビスフェノールF型エポキシ化合物及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種を共重合成分として用いるフェノキシ樹脂が、耐熱性、密着性及び溶解性に優れるため好ましい。ビスフェノールA又はビスフェノールA型エポキシ化合物の誘導体としては、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ化合物等が好適に挙げられる。また、ビスフェノールF又はビスフェノールF型エポキシ化合物の誘導体としては、テトラブロモビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールF型エポキシ化合物等が好適に挙げられる。ビスフェノールA/ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂の具体例としては、東都化成(株)製「フェノトートYP−70」(商品名)が挙げられる。
【0021】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の具体例としては、室温で固形のエポキシ樹脂として、例えば、東都化学(株)製「エポトートYD−7020、エポトートYD−7019、エポトートYD−7017」(いずれも商品名)、ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート1010、エピコート1009、エピコート1008」(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0022】
(A)ベースポリマーの分子量については、フィルム形成性の点から、数平均分子量で5,000以上であることが好ましく、さらに10,000以上が好ましく、特に30,000以上であることが好ましい。数平均分子量の上限については、特に制限はないが、(B)光又は熱重合性化合物との相溶性や、光又は熱硬化性(露光現像性)の観点から、1,000,000以下であることが好ましく、さらには500,000以下、特には200,000以下であることが好ましい。なお、本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレン換算した値である。
【0023】
(A)ベースポリマーの配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、10〜80質量%とすることが好ましい。この配合量が10質量%以上であると、光導波路形成に必要な50〜500μm程度の厚膜フィルムの形成が容易であるという利点があり、一方、80質量%以下であると、光又は熱硬化反応が十分に進行する。以上の観点から、(A)ベースポリマーの配合量は、20〜70質量%とすることがさらに好ましい。
【0024】
次に、(B)光又は熱重合性化合物としては、紫外線等の光の照射や加熱によって重合するものであれば特に限定されず、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物や分子内にエチレン性不飽和基を有する化合物などが挙げられる。
【0025】
分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等の2官能芳香族グリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂等の多官能芳香族グリシジルエーテル;ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂、ヘキサンジオール型エポキシ樹脂等の2官能脂肪族グリシジルエーテル;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の2官能脂環式グリシジルエーテル;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、ソルビトール型エポキシ樹脂、グリセリン型エポキシ樹脂等の多官能脂肪族グリシジルエーテル;フタル酸ジグリシジルエステル等の2官能芳香族グリシジルエステル;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等の2官能脂環式グリシジルエステル;N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトリフルオロメチルアニリン等の2官能芳香族グリシジルアミン;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4−ジアミノジフェニルメタン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール等の多官能芳香族グリシジルアミン;アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド等の2官能脂環式エポキシ樹脂;ジグリシジルヒダントイン等の2官能複素環式エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の多官能複素環式エポキシ樹脂;オルガノポリシロキサン型エポキシ樹脂等の2官能又は多官能ケイ素含有エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0026】
これらの分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物は、通常その分子量が、100〜2000程度であり、さらに好ましくは150〜1000程度であり、室温で液状のものが好適に用いられる。またこれらの化合物は、単独または2種類以上組み合わせて使用することができ、さらにその他の光又は熱重合性化合物と組み合わせて使用することもできる。なお、本発明における光又は熱重合性化合物の分子量は、GPC法又は質量分析法にて測定できる。
【0027】
また、分子内にエチレン性不飽和基を有する化合物の具体例としては、(メタ)アクリレート、ハロゲン化ビニリデン、ビニルエーテル、ビニルピリジン、ビニルフェノール等が挙げられるが、これらのうち透明性と耐熱性の観点から、(メタ)アクリレートが好ましく、1官能性のもの、2官能性のもの、3官能性以上のもののいずれも用いることができる。なお、ここで(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。アクリレートとはアクリロイル基を有する化合物を意味し、メタクリレートとはメタクリロイル基を有する化合物を意味する。また、ここでいう1官能性とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基のいずれかを1つ有することを意味する。
【0028】
1官能性(メタ)アクリレートとしては、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等がある。
【0029】
また、2官能性(メタ)アクリレートとしては、エトキシ化2−メチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−フェニル−4−アクリロイルポリオキシエトキシ)フルオレン、ビスフェノールA型,フェノールノボラック型,クレゾールノボラック型,及びグリシジルエーテル型のエポキシ(メタ)アクリレート等がある。
【0030】
さらに、3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等がある。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
なお、ここで(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。前記(B)光又は熱重合性化合物の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、20〜90質量%とすることが好ましい。この配合量が、20質量%以上であると、ベースポリマーを絡み込んで硬化させることが容易にでき、一方、90質量%以下であると、十分な厚さのクラッド層を容易に形成することできる。以上の観点から、(B)光又は熱重合性化合物の配合量は30〜80質量%とすることがさらに好ましい。
【0032】
次に(C)成分の光又は熱重合開始剤としては、特に制限はなく、例えばエポキシ化合物の開始剤として、p−メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのアリールジアゾニウム塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスホニウム塩、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロアンチモネート塩などのジアリールヨードニウム塩;トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスホニウム塩、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムペンタフロロヒドロキシアンチモネート塩などのトリアリールスルホニウム塩;トリフェニルセレノニウムヘキサフロロホスホニウム塩、トリフェニルセレノニウムホウフッ化塩、トリフェニルセレノニウムヘキサフロロアンチモネート塩などのトリアリルセレノニウム塩;ジメチルフェナシルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩、ジエチルフェナシルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩などのジアルキルフェナジルスルホニウム塩;4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩、4−ヒドロキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフロロアンチモネートなどのジアルキル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム塩;α−ヒドロキシメチルベンゾインスルホン酸エステル、N−ヒドロキシイミドスルホネート、α−スルホニロキシケトン、β−スルホニロキシケトンなどのスルホン酸エステルなどが挙げられる。
【0033】
また、分子内にエチレン性不飽和基を有する化合物の開始剤も使用でき、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等の芳香族ケトン;2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド類;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物などが挙げられる。上記2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体において、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は同一で対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。なお、コア層及びクラッド層の透明性を向上させる観点からは、上記化合物のうち、芳香族ケトン及びフォスフィンオキサイド類が好ましい。これらの(C)光又は熱重合開始剤は、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
(C)光又は熱重合開始剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましい。0.1質量部以上であると、光や熱に対する感度が十分であり、一方10質量部以下であれば、光導波路の表面のみが選択的に硬化し、硬化が不十分となることがなく、また、光又は熱重合開始剤自身の吸収により伝搬損失が増大することもなく好適である。以上の観点から、(C)光又は熱重合開始剤の配合量は、1〜5質量部とすることがさらに好ましい。
【0035】
また、このほかに必要に応じて、本発明のクラッド層形成用樹脂中には、酸化防止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、着色剤、可塑剤、安定剤、充填剤などのいわゆる添加剤を本発明の効果に悪影響を与えない割合で添加してもよい。
【0036】
クラッド層形成用樹脂フィルムは(A)〜(C)成分を含有する樹脂組成物を溶媒に溶解して、前記基材フィルムに塗布し、溶媒を除去することにより容易に製造することができる。ここで用いる溶媒としては、該樹脂組成物を溶解し得るものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒又はこれらの混合溶媒を用いることができる。樹脂溶液中の固形分濃度は30〜80質量%程度であることが好ましい。
【0037】
第1のクラッド層の厚さに関しては、乾燥後の厚さで、5〜500μmの範囲が好ましい。5μm以上であると、光の閉じ込めに必要なクラッド厚さが確保でき、500μm以下であると、膜厚を均一に制御することが容易である。以上の観点から、該クラッド層の厚さは、さらに10μm〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0038】
また、最初に形成される第1のクラッド層(下部クラッド層)と、後述するコアパターンを埋め込むための第2のクラッド層(上部クラッド層)の厚さは、同一であっても異なってもよいが、コアパターンを埋め込むために、第2のクラッド層(上部クラッド層)の厚さはコア層の厚さよりも厚くすることが好ましい。
【0039】
(II)工程
(II)工程は、第1のクラッド層(下部クラッド層)上の少なくとも一方の端部にコア層形成用樹脂フィルムを積層して第1のコア層を形成する工程である。該第1のコア層は第1のクラッド層上の少なくとも一方の端部にあればよいが、図2(c)に示すように、両端部にあることが構造対称性の点から好ましい。
コア層形成用樹脂フィルムを積層して、第1のコア層を形成するする方法としては、コア層形成用樹脂フィルムを必要な大きさに裁断しておき、一方の端部又は両端部に加熱圧着や接着剤・粘着剤等を用いて接着することにより得ることができる。
【0040】
また、図2(b)に示すように、端部以外の部分(両端部以外の部分を指す場合には以下「中間部」と記載する。)にマスキング用フィルム4を配し、該マスキング用フィルム4が配されている部分及び配されていない部分の両者を含む第1のクラッド層2上の全面にコア層形成用樹脂フィルム20を積層し、マスキング用フィルムとともに該マスキング用フィルム上のコア層形成用樹脂フィルムを剥離除去することにより、第1のコア層を形成することもできる(図2(c)参照)。
当該方法は、必要な大きさに裁断されたコア形成用樹脂フィルムを用いる上記方法に比較して、コア層形成用樹脂フィルムを前もって裁断する工程がなく、かつコア層形成用樹脂フィルムの積層工程も1回でよいことから効率的であり好ましい。
なお、本発明において、端部とは、屈曲部分にかからない範囲を指す。その長さは、設計により自由に変えることができるが、扱いやすさの点から光導波路の端から導波方向に向って、光導波路の全長に対して3〜20%程度の長さとすることが好ましい。
【0041】
マスキング用フィルム4としては、第1のクラッド層2から容易に剥離することができるものであれば特に制限はなく、前記クラッド層形成用樹脂フィルムの基材フィルムとして例に挙げたものと同様なものが使用できるが、取り扱いが容易との観点からPETフィルムなどのポリエステルフィルムが好ましい。
なお、マスキング用フィルムについても、クラッド層2からの剥離を容易にするためコロナ処理等の接着処理は行っていないことが好ましく、必要に応じ離型処理、帯電防止処理が施されていてもよい。
【0042】
本発明において用いられるコア層形成用樹脂フィルムとは、基材フィルム上にコア層形成用樹脂を塗工したもの、又はコア層形成用樹脂単独で構成されているものが挙げられるが、基材フィルム上にコア層形成用樹脂を形成したものを用いるほうが取り扱いが容易で好ましい。より具体的には、図4に示すような構成のものが挙げられる。すなわち、基材フィルム21上にコア層形成用樹脂22を形成したものであり、コア層形成用樹脂フィルムの保護やロール状に製造する際の巻き取り性を向上させるなどの目的で、所望により基材フィルム21の反対側に保護フィルム23が設けられたものである。保護フィルムとしては、前記クラッド層形成用樹脂フィルムの基材フィルムとして例に挙げたものと同様なものが使用できる。
なお、保護フィルム及び基材フィルムは、コア層形成用樹脂フィルムからの剥離を容易にするためコロナ処理等の接着処理は行っていないことが好ましく、必要に応じ離型処理、帯電防止処理が施されていてもよい。
【0043】
コア層形成用樹脂フィルム20の積層に際しては、密着性及び追従性の見地から、コア層形成用樹脂フィルムは減圧下で積層することが好ましい。また、ここでの加熱温度は50〜130℃とすることが好ましく、圧着圧力は、0.1〜1.0MPa(1〜10kgf/cm2)程度とすることが好ましいが、これらの条件には特に制限はない。
また、第1のクラッド層とコア層の間への気泡の混入を防ぐとの観点から、ロールラミネータを用いて積層することが好ましい。
【0044】
本発明で使用するコア層形成用樹脂フィルムは、コア層がクラッド層より高屈折率であるように設計され、活性光線によりコアパターンを形成し得る樹脂組成物を用いることができ、感光性樹脂組成物が好適である。具体的には、上記クラッド層形成用樹脂で用いたのと同様の樹脂組成物を用いることが好ましい。すなわち、前記(A)、(B)及び(C)成分を含有し、必要に応じて前記任意成分を含有する樹脂組成物である。
【0045】
コア層形成用樹脂フィルムは、(A)〜(C)成分を含有する樹脂組成物を溶媒に溶解して基材フィルムに塗布し、溶媒を除去することにより容易に製造することができる。ここで用いる溶媒としては、該樹脂組成物を溶解し得るものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒又はこれらの混合溶媒を用いることができる。樹脂溶液中の固形分濃度は、通常30〜80質量%程度であることが好ましい。
【0046】
コア層形成用樹脂フィルムの厚さについては特に限定されず、乾燥後のコア層の厚さに応じて適宜決定される。本発明により得られる光導波路は、少なくとも一方の端部と該端部以外(中間部)でコア層の厚さが異なり、それぞれ所望の厚さとなるように、(II)工程及び(III)工程で用いられるコア層形成用樹脂フィルムの厚さが制御される。
本発明により得られる光導波路は、端部におけるコア層の厚さが、通常は10〜100μmとなるように調整される。コア層の厚さが10μm以上であると、光導波路形成後の受発光素子又は光ファイバーとの結合において位置合わせトレランスが拡大できるという利点があり、100μm以下であると、光導波路形成後の受発光素子又は光ファイバーとの結合において、結合効率が向上するという利点がある。以上の観点から、端部におけるコア層の厚さは、さらに30〜70μmの範囲であることが好ましい。
一方、中間部でのコア層の厚さは、薄いほど屈曲耐久性には有利であり、光損失を抑制するとの点からはある程度の厚さが必要である。以上の観点から、中間部でのコア層の最小厚さは、端部でのコア層の厚さに対して30〜80%の範囲が好ましく、40〜60%の範囲がより好ましい。
【0047】
コア層形成用樹脂フィルムが、基材フィルム上にコア層形成用樹脂を形成したものである場合は、その基材フィルム、コア層形成用樹脂フィルムがコア層形成用樹脂単独で構成されている場合は、コア層形成用樹脂フィルムの製造過程で用いる基材フィルムについて、その材料については特に限定されないが、後に剥離することが容易であり、かつ、耐熱性及び耐溶剤性を有するとの観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが好適に挙げられる。
また、該基材フィルムの厚さは、5〜50μmであることが好ましい。5μm以上であると、支持体としての強度が得やすいという利点があり、50μm以下であると、パターン形成時のマスクとのギャップが小さくなり、より微細なパターンが形成できるという利点がある。以上の観点から、該基材フィルムの厚さは10〜40μmの範囲であることがより好ましく、15〜30μmであることが特に好ましい。
【0048】
また、露光用光線の透過率向上及びコアパターンの側壁荒れ低減のため、高透明タイプのフレキシブルな基材を用いるのが好ましい。高透明タイプの基材フィルムのヘイズ値は5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることが特に好ましい。なお、ヘイズ値はJIS K7105に準拠して測定したものであり、例えば、NDH−1001DP(日本電色工業(株)製)等の市販の濁度計などで測定可能である。このような基材フィルムとしては、東洋紡績(株)製、商品名「コスモシャインA1517」や「コスモシャインA4100」として入手可能である。
なお、上記基材フィルムは、剥離を容易とするため、離型処理、帯電防止処理等が施されていてもよい。
【0049】
(III)工程
(III)工程は、図2(d)に示すように、第1のコア層3上及び第1のクラッド層2上の全面にコア層形成用樹脂フィルム20を積層して第2のコア層5を形成する工程である。
ここで用いられるコア層形成用樹脂フィルムは、安定した光の伝搬特性を得るとの観点から、前述の第1のコア層3を形成するために用いられたものと同様のものを用いることが好ましい。
また、コア層形成用樹脂フィルムの積層条件に関しても、第1のコア層3を形成する場合と同様の条件が好ましい。
【0050】
上記のように形成した第2のコア層5の表面には、図2(d)に示すように第1のコア層3の形成部分と中間部分との間で段差が生じる。(III)工程において、光損失低下の観点からは、第1のコア層上及び該第1のクラッド層上の全面にコア層形成用樹脂フィルムを積層後、その表面の段差を平滑化してテーパ形状を有する第2のコア層を形成することが好ましい。平滑化する方法としては、図2(e)に示すように、(I)〜(III)工程により得られた積層体を上下から圧縮する方法が挙げられる。圧縮する方法としては、特に制限はないが、平滑化を効率的に行うことができる点から、平板型ラミネータを用いることが好ましい。
本発明において平板型ラミネータとは、積層材料を一対の平板の間に挟み、平板を加圧することにより圧着させるラミネータのことをいう。平板型ラミネータとしては、例えば、特開平11−320682号公報に記載されているような真空加圧式ラミネータを好適に用いることができる。
なお、加圧材31については、一定の硬度を有するものであれば特に制限はなく、例えば、SUS板などの金属板、高硬度シリコーンゴムなどを挙げることができる。
【0051】
上記平板型ラミネータを用いての平滑化は、減圧雰囲気下で行われることが平滑化の観点及び密着性向上の観点から好ましい。減圧の尺度である真空度の上限は、10000Pa以下が好ましく、さらには1000Pa以下が好ましい。一方、真空度の下限は、生産性の観点(真空引きにかかる時間)から、10Pa程度であることが好ましい。加熱温度は、40〜130℃とすることが好ましく、圧着圧力は、0.1〜1.0MPa(1〜10kgf/cm2)とすることが好ましい。
【0052】
上述のような第2のコア層の表面の段差の平滑化を行うことにより、図2(f)に示すように、第1のコア層3と第2のコア層5は一体化してコア層6を形成するとともに、コアの厚さが端部で厚く、中間部では薄い構造となり、かつ厚い部分から薄い部分にかけて段差がなくテーパ形状をとる。
該コアの厚さとしては、上述の通りであり、上記厚い部分から薄い部分にかけての傾斜角度としては、光学損失が少ない観点からは傾斜角度が小さい方が好ましく、テーパ長を短くする観点からは傾斜角度が大きい方が好ましいことから、0.05〜4度が好ましく、0.1〜2度の範囲がより好ましく、0.1〜1度の範囲がさらに好ましい。
【0053】
(IV)工程
(IV)工程は、コア層6(第1のコア層及び第2のコア層)をパターニングする工程である。パターニングの方法としては、種々の方法を用い得るが、コア層形成用樹脂として感光性樹脂を用いて露光現像により行うことが好ましい。パターニング後の積層体を、図2(f)におけるx方向から見た図が、図5(f’)である。
露光の方法としては、具体的には、ネガマスクパターンを通して活性光線が画像状に照射される。活性光線の光源としては、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射する公知の光源が挙げられる。また、他にも写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いることができる。
【0054】
次いで、必要に応じ露光後加熱を行った後、コア層形成用樹脂フィルムの基材フィルムが残っている場合には基材フィルムを剥離し、ウエット現像、ドライ現像等で未露光部を除去して現像し、コアパターンを製造する。ウエット現像の場合は、有機溶剤、アルカリ性水溶液、水系現像液等のうち、樹脂フィルムの組成に対応した現像液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像する。
現像液としては、有機溶剤、アルカリ性水溶液等の安全かつ安定であり、操作性が良好なものが好ましく用いられる。前記有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、引火防止のため、1〜20質量%の範囲で水を添加してもよい。
【0055】
上記アルカリ性水溶液の塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ、リチウム、ナトリウム、カリウム若しくはアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩などが用いられる。また、現像に用いるアルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等が好ましく挙げられる。また、現像に用いるアルカリ性水溶液のpHは9〜14の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂組成物の層の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0056】
上記水系現像液としては、水又はアルカリ水溶液と一種以上の有機溶剤とからなる。ここでアルカリ物質としては、前記物質以外に、例えば、ホウ砂、メタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2ーアミノ−2−ヒドロキシメチル−1、3−プロパンジオール、1、3−ジアミノプロパノール−2、モルホリン等が挙げられる。現像液のpHは、レジストの現像が充分にできる範囲でできるだけ小さくすることが好ましく、pH8〜12とすることが好ましく、pH9〜10とすることがより好ましい。上記有機溶剤としては、例えば、三アセトンアルコール、アセトン、酢酸エチル、炭素数1〜4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。有機溶剤の濃度は、通常、2〜90質量%とすることが好ましく、その温度は、現像性にあわせて調整することができる。また、水系現像液中には、界面活性剤、消泡剤等を少量混入することもできる。
【0057】
また、必要に応じて2種類以上の現像方法を併用してもよい。現像の方式としては、例えば、ディップ方式、バトル方式、高圧スプレー方式等のスプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。
現像後の処理として、必要に応じて60〜250℃程度の加熱又は0.1〜1000mJ/cm2程度の露光を行うことによりコアパターンをさらに硬化して用いてもよい。
【0058】
(V)工程
(V)工程は、コア層6を露光現像などの方法により得たコアパターン及び第1のクラッド層上に第2のクラッド層を形成して、コアパターンを埋め込む工程である。当該工程は、クラッド層形成用樹脂フィルムを用いて行われることが好ましく、コアパターンを埋め込んだ後に、該クラッド層形成用樹脂フィルムの樹脂を硬化して、第2のクラッド層(上部クラッド層)を形成することが好ましい(図2(g)及び図5(g’)参照)。
このときの第2のクラッド層の厚さは、コア層(コアパターン)の厚さより大きくすることが好ましい。第2のクラッド層形成用樹脂の硬化は光又は熱によって、第1のクラッド層を形成するのと同様の方法で行うことができる。
また、本発明のフレキシブル光導波路を製造する際、コア層の厚い部分から薄い部分にかけての傾斜角度が、その上に位置する上部クラッド層の傾斜角度よりも大きくなるように、上部クラッド層の形成条件、例えば材料が樹脂フィルムである場合、そのラミネート条件(圧力、温度、加圧時間)を調整する。
【0059】
ここで用いる第2のクラッド層形成用樹脂フィルムは、第1のクラッド層形成用樹脂フィルムと同様であって、図3に示すように、基材フィルム11上にクラッド層形成用樹脂12を積層したものであり、必要に応じて保護フィルム(セパレーター)13が積層された構造をなす。また、基材フィルム11の材料については、第1のクラッド層形成用樹脂フィルムにおける基材フィルムと同様である。さらに、クラッド層形成用樹脂についても、第1のクラッド層形成用樹脂フィルムにおけるクラッド層形成用樹脂と同様である。
また、第2のクラッド層形成用樹脂フィルムの基材フィルムの反対側に保護フィルムを設けている場合(図3参照)には該保護フィルムを剥離後、クラッド層形成用樹脂フィルムを光又は加熱により硬化し、第2のクラッド層を形成する。保護フィルムは、クラッド層形成用樹脂フィルムからの剥離を容易にするため接着処理は行っていないことが好ましく、必要に応じ離型処理、帯電防止処理が施されていてもよい。
なお、本発明のフレキシブル光導波路は、第2のクラッド層(上部クラッド層)形成後に、第1及び第2のクラッド層形成用樹脂フィルムを剥離しても良い。
【0060】
本発明においては、クラッド層形成用樹脂フィルムの基材フィルムは、フレキシブル光導波路の製造過程において、支持体としての役割をも担う。この基材フィルムは、従来支持体として用いられていたシリコン基板などに比べ、大きなものを用いることができるため、大面積化が容易で、生産性に優れたフレキシブル光導波路の製造方法を提供することができる。
なお、基材フィルムは、フレキシブル光導波路の片面に残してもよいが、両面剥離した対称構造とすることで反りの少ないフレキシブル光導波路を製造することができる。また、基材フィルムを剥離することで、フレキシブル光導波路の薄型化も可能となる。
【0061】
また、基材フィルムを剥離する工程中に加湿処理を含むことが好ましい。加湿処理は、基材フィルムとクラッド層の密着力を低下させることができ、光導波路の破損なく容易に基材フィルムを剥離できるためである。加湿処理は、加熱を併用すると処理時間を短縮できるため、例えば、高温高湿条件、煮沸条件、プレッシャクッカ条件下などで行うことがより好ましい。
【0062】
なお、本発明のフレキシブル光導波路は、前記(V)工程の記載から明らかなように、コアパターンが上部クラッド層及び下部クラッド層に取り囲まれる形であり、上下クラッド層に加えて、サイドクラッドを有する。
【0063】
また、図6に示すように、さらに上部クラッド層の幅が、中間部において、下部クラッド層の幅よりも小さいことが好ましい(図6は上部クラッド側からみた透視図を示す)。上部クラッド層の幅が狭いことによって、さらに屈曲耐久性が向上するからである。このような中間部における上部クラッド層の幅は、小さいほど該中間部における屈曲耐久性は向上するが、クラッド層としての十分な機能を発揮させるためには、上部クラッド層がコア部を完全に埋め込み、良好な光の伝播特性を維持する程度の幅が必要である。以上の点を考慮すると、上部クラッド層の幅xは下部クラッド層の幅yに対して、20〜60%程度であることが好ましく、20〜50%の範囲がより好ましい。
このように、中間部において、上部クラッド層の幅を下部クラッド層の幅よりも小さくする方法としては、上記第2のクラッド層形成用樹脂フィルムを露光現像し、コアパターンの埋め込みを維持しつつ、中間部において、第1のクラッド層(下部クラッド層)2よりも幅の小さい第2のクラッド層(上部クラッド層)7を形成する方法がある。また、あらかじめ、中間部における上部クラッド層の幅が、下部クラッド層の幅よりも小さくなるような形状を有する上部クラッド層形成用樹脂フィルムを作製しておき、これをコアパターン上に積層して、コアパターンを埋め込む方法を用いることもできる。
【0064】
本発明のフレキシブル光導波路を、フレキシブル電気配線板(Flexible Printed Circuit,以下FPCと表記)と複合化することで、フレキシブルタイプの光電気複合配線板を作製可能である。FPCと複合化した光電気複合配線板では、FPCの分、全体の厚さが増すため、屈曲部の光導波路の厚さが薄いことが、屈曲性向上には大変重要である。
複合化の方法としては、別々に製造した光導波路と電気配線板を、接着剤等を用いて積層する方法に加え、FPC上に光導波路をビルドアップしていく方法、さらには銅箔付きポリイミド上に光導波路をビルドアップにより形成後、銅回路をパターニングし、FPCを作製する方法なども挙げられる。
【0065】
本発明の光電気複合配線板の構成例としては、例えば、電気配線板の片面に光導波路を接着したものが挙げられる。また、電気配線板の両面に光導波路を有していてもよい。このような構成にすることで、光電気複合配線板の光配線数を増やすことができ、光伝送容量の増加が可能となる。また上下対称の構造になるため、光電気複合配線板の反りの抑制も可能となる。
また、光導波路の両側に接着剤層を有し、電気配線板を両面に有する構造であってもよい。このような構成とすることで上下対称の構造になるため、光電気複合配線板の反りの抑制や屈曲耐性の向上も可能となる。なお、必ずしも電気配線板が両面になくてもよく、反りの抑制や屈曲耐性向上を目的に、電気配線板と同等な物性を持ったもの、例えば電気配線板の基材や電気絶縁層などをカバーフィルムとして電気配線板の反対側に設けてもよい。
さらに、光導波路や光電気複合回路基板が多層化された構造であってもよく、このような構成とすることで、信号伝送容量のさらなる増加が可能となる。
【実施例】
【0066】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
1.引張弾性率及び引張強度
測定対象のフィルムから、幅10mm、長さ70mmのサンプルを得、引張試験機((株)オリエンテック製「RTM−100」)を用い、JIS−K7127に準拠して、以下の条件で測定した。
条件:つかみ具間距離50mm、温度25℃、引張り速度50mm/min
引張弾性率は、引張り応力―ひずみ曲線の初めの直線部分を用いて以下に示す式により算出した。また、引張り応力―ひずみ曲線において、破断するまでの最大強度を引張強度とした。
引張り弾性率(MPa)=直線上の2点間の応力の差(N)÷光導波路フィルムの元の平均断面積(mm2)÷同じ2点間のひずみの差
2.屈曲耐久性試験
各実施例及び比較例で製造された光電気複合配線板について、図7に示すようなスライド式の屈曲耐久試験機((株)大昌電子製)を用いて、屈曲耐久性試験を行った。試験は各実施例及び比較例で得られた光電気複合配線板41を、屈曲軸44に対して、フレキシブル光導波路を内側に配置して行った。また、曲げ半径(R)については、1.5mmの条件で行い、スライド速度80mm/秒、X1〜X2間の距離20mmの条件で試験を行った。評価については、1万回毎に破断の有無を観察して破断しない最大回数を求めた。なお、屈曲軸44は実際に存在するものではなく、光電気複合配線板を屈曲させ、スライドさせる際の仮想軸である。
【0067】
実施例1
(1)クラッド層形成用樹脂フィルムの作製
(A)バインダポリマーとして、フェノキシ樹脂(商品名:フェノトートYP−70、東都化成(株)製)48質量部、(B)光又は熱重合性化合物として、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート(商品名:KRM−2110、分子量:252、旭電化工業(株)製)49.6質量部、(C)光又は熱重合開始剤として、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩(商品名:SP−170、旭電化工業(株)製)2質量部、増感剤として、SP−100(商品名、旭電化工業(株)製)0.4質量部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を広口のポリ瓶に秤量し、メカニカルスターラ、シャフト及びプロペラを用いて、温度25℃、回転数400rpmの条件で、6時間撹拌し、クラッド層形成用樹脂ワニスAを調合した。その後、孔径2μmのポリフロンフィルタ(商品名:PF020、アドバンテック東洋(株)製)を用いて、温度25℃、圧力0.4MPaの条件で加圧濾過し、さらに真空ポンプ及びベルジャーを用いて減圧度50mmHgの条件で15分間減圧脱泡した。
上記で得られたクラッド層形成用樹脂ワニスAを、アラミドフィルム(商品名:ミクトロン、東レ(株)製、厚さ:12μm)のコロナ処理面上に塗工機(マルチコーターTM−MC、(株)ヒラノテクシード製)を用いて塗布し、80℃、10分、その後100℃、10分乾燥し、次いで保護フィルムとして離型PETフィルム(商品名:ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム(株)、厚さ:25μm)を離型面が樹脂側になるように貼り付け、クラッド層形成用樹脂フィルムを得た。このとき樹脂層の厚さは、塗工機のギャップを調節することで、任意に調整可能であり、本実施例では、下部クラッド用フィルムが20μm、上部クラッド用フィルムが66μmとなるように調節した。
【0068】
(2)コア層形成用樹脂フィルムの作製
(A)バインダポリマーとして、フェノキシ樹脂(商品名:フェノトートYP−70、東都化成(株)製)26質量部、(B)光又は熱重合性化合物として、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(商品名:A−BPEF、新中村化学工業(株)製)36質量部、およびビスフェノールA型エポキシアクリレート(商品名:EA−1020、新中村化学工業(株)製)36質量部、(C)光又は熱重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア819、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1質量部、及び1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名:イルガキュア2959、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1質量部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を用いたこと以外は上記製造例と同様の方法および条件でコア層形成用樹脂ワニスBを調合した。その後、上記製造例と同様の方法および条件で加圧濾過さらに減圧脱泡した。
上記で得られたコア層形成用樹脂ワニスBを、PETフィルム(商品名:コスモシャインA1517、東洋紡績(株)製、厚さ:16μm)の非処理面上に、上記製造例と同様な方法で塗布乾燥し、次いで保護フィルムとして離型PETフィルム(商品名:ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム(株)、厚さ:25μm)を離型面が樹脂側になるように貼り付け、コア層形成用樹脂フィルムを得た。本実施例では膜厚が40μmとなるよう、塗工機のギャップを調整した。
【0069】
(3)フレキシブル光導波路の作製
上記で得られた下部クラッド層形成用樹脂フィルムの保護フィルムである離型PETフィルム(ピューレックスA31)を剥離し、紫外線露光機((株)オーク製作所製、EXM−1172)にて樹脂側(基材フィルムの反対側)から紫外線(波長365nm)を1J/cm2照射し、次いで80℃で10分間加熱処理することにより、第1のクラッド層(下部クラッド層)を形成した((I)工程)。該下部クラッド層の厚さは、約20μmであった。
【0070】
次に、該下部クラッド層の中間部(90mm)にマスキング用フィルムとして、PETフィルム(商品名:コスモシャインA31、東洋紡績(株)製、厚さ:25μm)を配し、端部に残る下部クラッド層(端からの長さ20mm)と該マスキング用フィルム上に、ロールラミネータ(日立化成テクノプラント(株)製、HLM−1500)を用い圧力0.5MPa、温度50℃、ラミネート速度0.2m/minの条件で、上記コア層形成用樹脂フィルムをラミネートした。
次いで、マスキング用フィルムとともにマスキング用フィルム上のコア層形成用樹脂を剥離除去し、下部クラッド層上の両端に第1のコア層を得た((II)工程)。第1のコア層の厚さは約40μmであった。
【0071】
次に、下部クラッド層と第1のコア層を含む全面に、ロールラミネータ(日立化成テクノプラント(株)製、HLM−1500)を用い圧力0.5MPa、温度50℃、ラミネート速度0.2m/minの条件で、上記コア層形成用樹脂フィルムをラミネートし、第2のコア層を形成した((III)工程)。端部でのコア層の厚さが77μmであり、中間部のコア層の厚さが38μmであった。
【0072】
次いで平板型ラミネータとして真空加圧式ラミネータ((株)名機製作所製、MVLP−500)を用い、500Pa以下にて7秒間真空引きした後、圧力0.4MPa、温度60℃、加圧時間30秒の条件にて平滑化した((III)工程)。なお、加圧材としてはSUS板を用いた。
平滑化によって、コア層は端部から中間部にかけてテーパ状に薄くなるような傾斜を有し、その傾斜角度は0.15度であった。
【0073】
次に、幅50μmのネガ型フォトマスクを介し、上記紫外線露光機にて紫外線(波長365nm)を0.6J/cm2照射し、次いで80℃で5分間露光後加熱を行った。その後、支持フィルムであるPETフィルムを剥離し、現像液(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/N,N−ジメチルアセトアミド=7/3、質量比)を用いて、コアパターンを現像した。続いて、洗浄液(イソプロパノール)を用いて洗浄し、100℃で10分間加熱乾燥して、コアパターンを得た((IV)工程)。
【0074】
次いで、上記と同様なラミネート条件にて、上部クラッド層として上記クラッド層形成用樹脂フィルムをラミネートした((V)工程)。さらに、紫外線(波長365nm)を両面に合計で25J/cm2照射後、160℃で1時間加熱処理することによって、上部クラッド層を形成し((V)工程)、基材フィルムが外側に配置されたフレキシブル光導波路を作製した。さらにアラミドフィルム剥離のため、該フレキシブル光導波路を85℃/85%の高温高湿条件で24時間処理し、基材フィルムを除去したフレキシブル光導波路を作製した。表1に、作製したフレキシブル光導波路における端部と中間部の膜厚測定結果を示す。
また、上部クラッド層はコア層の傾斜面上に位置する端部から中間部にかけて傾斜を有し、その傾斜角度は0.06度であった。
【0075】
なお、コア層及びクラッド層の屈折率をMetricon社製プリズムカプラー(Model2010)で測定したところ、波長830nmにて、コア層が1.584、クラッド層が1.550であった。また、作製したフレキシブル光導波路(図1)の挿入損失を、光源に850nmの面発光レーザー((EXFO社製、FLS−300−01−VCL)を、受光センサに(株)アドバンテスト製、Q82214を、入射ファイバーにGI−50/125マルチモードファイバー(NA=0.20)、出射ファイバーにSI−114/125マルチモードファイバー(NA=0.22))を用いて測定したところ、1.0dBであった。後述の比較例1に示すように、コア厚を80μmで一定としたフレキシブル光導波路では、挿入損失が0.8dBであったことから、テーパ状に薄くなるような構造導入による損失増加は、0.2dBと十分に小さいことを確認した。
また、得られたフレキシブル光導波路の引張弾性率及び引張強度を上記方法により測定した結果、引張弾性率が2100MPa、引張強度が100MPaであった。
【0076】
(4)光電気複合配線板の作製
(4−1)シート状接着剤の作製
HTR−860P−3(帝国化学産業(株)製、商品名、グリシジル基含有アクリルゴム、分子量100万、Tg−7℃)100質量部、YDCN−703(東都化成(株)製、商品名、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量210)5.4質量部、YDCN−8170C(東都化成(株)製、商品名、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量157)16.2質量部、プライオーフェンLF2882(大日本インキ化学工業(株)製、商品名、ビスフェノールAノボラック樹脂)15.3質量部、NUCA−189(日本ユニカー(株)製、商品名、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)0.1質量部、NUCA−1160(日本ユニカー(株)製、商品名、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン)0.3質量部、A−DPH(新中村化学工業(株)製、商品名、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)30質量部、イルガキュア369(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−オン:I−369)1.5質量部、シクロヘキサノンを加えて攪拌混合し、真空脱気し、粘接着剤ワニスを得た。この粘接着剤ワニスを、厚さ75μmの表面離型処理ポリエチレンテレフタレート(帝人(株)製、テイジンテトロンフィルム:A−31)からなる保護フィルム上に塗布し、80℃で30分間加熱乾燥し、粘接着剤層と保護フィルムとからなる粘接着シートを得た。この粘接着シートの粘接着剤層側に、厚さ80μmの光透過性の支持基材(サーモ(株)製、低密度ポリエチレンテレフタレート/酢酸ビニル/低密度ポリエチレンテレフタレート三層フィルム:FHF−100)をあわせてラミネートすることにより、保護フィルム(表面離型処理ポリエチレンテレフタレート)、粘接着剤層、及び光透過性の支持基材からなるシート状接着剤を作製した。粘接着剤層の厚みは10μmとした。
【0077】
(4−2)光電気複合配線板の作製
上記で作製したフレキシブル光導波路を、ロールラミネータ(日立化成テクノプラント(株)製、HLM−1500)を用い、圧力0.4MPa、温度50℃、ラミネート速度0.2m/minの条件で、保護フィルムを剥がしたシート状接着剤の粘接着剤層側にラミネートした。次に、シート状接着剤の支持基材側から紫外線(365nm)を250mJ/cm2照射し、粘接着剤層と支持基材界面の密着力を低下させて支持基材を剥がした面に、電気回路パターンを有するFPC(基材:カプトンEN、12.5μm、銅回路厚さ:5μm)の所定の箇所に、紫外線露光機((株)大日本スクリーン製,MAP−1200−L)付随のマスクアライナー機構を利用して位置決めし、上述の真空加圧式ラミネータを用い、500Pa以下にて30秒間真空引きした後、圧力0.4MPa、温度100℃、加圧時間30秒の条件にて圧着した後、クリンオーブン中で180℃、1時間加熱しフレキシブル光導波路とFPCを接着して、光電気複合配線板を得た。
得られた光電気複合配線板の繰り返しスライド試験(屈曲耐久性試験)を、上記方法により行ったところ、10万回経過後においても光導波路の断線はなく、良好な屈曲耐久性(スライド耐久性)を示した(表1参照)。
【0078】
比較例1
実施例1において、(II)工程を行わず、(III)工程で厚さ80μmのコアフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、コア厚が80μmで一定のフレキシブル光導波路を作製した。また、実施例1と同様にして光電気複合配線板を作製した。この場合、挿入損失は0.8dBであったが、光電気複合配線板の繰り返しスライド試験では、5000回で光導波路が破断し、十分な屈曲耐久性(スライド耐久性)が得られなかった(表1参照)。
【0079】
実施例2
実施例1において、平板型真空加圧式ラミネータによる平滑化を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、フレキシブル光導波路及び光電気複合配線板を作製した。表1に、作製したフレキシブル光導波路における端部と中間部の膜厚測定結果を示す。光電気複合配線板の繰り返しスライド試験では、10万回経過後においても光導波路の断線はなく、良好な屈曲耐久性(スライド耐久性)を示した。一方、挿入損失は2.2dBと、平滑化を行った場合に比べて1.2dBの損失増加が見られ、高い光特性を求められる用途においては、平滑化を行う方が好ましいことが確認された。(表1参照)。
【0080】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のフレキシブル光導波路は、屈曲耐久性に優れ、光損失が少ないため、実用性の高いフレキシブル光導波路として極めて有用である。
【符号の説明】
【0082】
1;フレキシブル光導波路
2;第1のクラッド層(下部クラッド層)
3;第1のコア層
4;マスキング用フィルム
5;第2のコア層
6;コア層
7;第2のクラッド層(上部クラッド層)
8;コアパターン
10;クラッド層形成用樹脂フィルム
11;基材フィルム(クラッド層形成用)
12;クラッド層形成用樹脂
13;保護フィルム
20;コア層形成用樹脂フィルム
21;基材フィルム(コア層形成用)
22;コア層形成用樹脂
23;保護フィルム
30;平板型ラミネータ
31;加圧材
41;光電気複合配線板
42;フレキシブル光導波路
43;フレキシブル電気配線板(FPC)
44;屈曲軸(仮想軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部クラッド層、コア層、上部クラッド層が順に積層されてなるフレキシブル光導波路であって、コア層が中間部より端部が厚く、かつ厚い部分から薄い部分にかけて傾斜を有し、上部クラッド層が前記コア層の傾斜面上で傾斜を有し、前記コア層の傾斜角度が、前記上部クラッド層の傾斜角度よりも大きいことを特徴とするフレキシブル光導波路。
【請求項2】
前記コア層の傾斜角度が0.05〜4度である請求項1に記載のフレキシブル光導波路。
【請求項3】
前記上部クラッド層の傾斜角度が0.01〜2度である請求項1又は2に記載のフレキシブル光導波路。
【請求項4】
前記コア層がコアパターンを形成してなり、該コアパターンが、前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層に取り囲まれている請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブル光導波路。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のフレキシブル光導波路を、フレキシブル電気配線板と複合化した光電気複合配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−271369(P2010−271369A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120783(P2009−120783)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】