説明

フレキシブル光源及び検出器並びにその応用

フレキシブルな共形の医療用光源と、血液性状(例えばCO、酸素、又はビリルビンのレベル)のモニタリングを目的とする関連診断デバイスと、乾癬及び幾つかの形態の癌などの動物の治療用光線療法デバイス。フレキシブル光源は、好ましくはフレキシブル基板上に1つ又はそれ以上の有機発光ダイオードを含む。光源はまた、治療の目的で用いることができる。基板はまた、患者の身体全体又は周りにデバイスを取り付けるための一体ストラップを形成することもできる。任意的には、デバイスは、発生源からの発光を検出及びモニタするように配置された光検出器を含む。フレキシブルな共形の医療用光検出器及びデバイスも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的には光電子デバイスに関し、詳細にはフレキシブル光源(例えば有機発光ダイオード)及び検出器、並びにその用途に関する。用途には、限定ではないが、治療用光源及び患者モニタリング装置を含む医療用途での使用が含まれる。
【背景技術】
【0002】
医療目的のための光源の使用は良く知られており、モニタリング目的と治療目的の用途に大きく分類することができる。
モニタリング目的では、ヒト及び動物患者の血液性状の非侵入式検出を容易にするために、種々の血液成分の吸収スペクトルを利用するモニタリングデバイスにおいて光源を用いることは良く知られている。
【0003】
このような1つのデバイスはパルス酸素濃度計であり、1970年代以降病院の手術室で一般的に使用されてきた。更に近年になると、このようなデバイスは、術後モニタリング、患者移送中、一般病棟、及び未熟児又は体格が小さい乳児のモニタリングでの使用を含む、他の状況で使用されることが広く見られるようになってきた。未熟児には無呼吸期間があり、酸素を余計に必要とする可能性があるので、新生児のモニタリングはパルス酸素濃度計の重要な用途である。逆に、幼児を酸素で過飽和状態にしないようにすることも重要である。パルス酸素濃度計の他の医療用途には、特に、異常な血中酸素レベルになる可能性がある高度で飛行中の航空パイロットのモニタリング、及び血中酸素レベルに悪影響を及ぼす恐れのある環境で動作する他のものがある。
【0004】
既知のパルス酸素濃度計は、光源及び光検出器を有するセンサを含む。既知の酸素濃度計では、センサは、通常はモニタすべき個人の指、つま先、手、又は足に取り付けたセンサを介して組織を通じた光吸収を測定するために、半導体フォトダイオード及び発光ダイオード(LED)を含む。赤色及び近赤外(NIR)スペクトルにおける光の2つの波長はそれぞれ、通常2つの隣接するLEDにより、各々からの発光を順に検出するように配列された共用の光ダイオードと共に時間インターリーブ法で発光される。各LEDから受け取った光の強さの差違を測定することによって、既知の手段によりある量の血液酸素含有量を導き出すことができる。
【0005】
一部の既知のセンサは、特別に乳児用の寸法で製造される。しかしながらこれらでさえも、集中的モニタリングが必要な未熟児及び乳幼児には大きすぎる。これらのセンサは、発泡体又は自動接着性ラップ内に組み込まれたLEDを用いる。
【0006】
しかしながら、図1(a)を参照すると、このようなセンサに関する既知の問題は、既知のLED73が、患者61に酸素濃度計を取り付ける際に達成可能なセンサデバイスの屈曲を著しく制限する、剛直なガラス又はプラスチックケースの内側に形成されることである。場合によっては、センサ構成部品の望ましくないほど大きな寸法及び非柔軟性の結果として、センサ構成部品と患者の皮膚との間に良好なオプティカルコンタクトを達成することも困難となる。このようなセンサは、例えば、乳幼児の皮膚の急な曲率に密接に従うことができないので、センサは使用中に患者に対して次第に外れ又は移動する傾向にあり、これにより誤警報を生じる可能性がある。
【0007】
従来の酸素濃度計及び同様のセンサに伴う別の良く知られた問題は、いわゆる「周縁効果」である。これは、複数の光源と検出器との間のそれぞれの経路が著しく異なるときに起こる。既知のLEDは、個別の剛性デバイスであり点光源を効果的に提供するので、これらは通常、デバイスが実際に患者に取り付けられるときに検出器に対するそれぞれの経路が着実に十分近接していることを保証するよう、互いに隣接して十分密接に配置することはできない。その結果これにより、患者へのセンサの位置付けが困難になり、得られた測定値の不確かさの可能性が高くなる。
【0008】
他の類似のデバイスは、ビリルビン及び一酸化炭素(CO)レベルを含む血液性状のモニタリング用として知られている。このようなデバイスでは、一般的には2つ、3つ、又はそれ以上がモニタすべき特性に応じて利用されるように、異なる波長で3つ又はそれ以上の光源が利用される。
【0009】
従来のセンサの電子構成部品の剛直な性質は、センサのキャリングストリップ71が患者の体の線に良好に従わないことを意味する。この問題は、キャリングストリップが患者に接着して揺動及び滑脱が回避される自動接着ストリップを使用することで既知の酸素濃度計で部分的に克服される。しかしながら、自動接着ストリップを使用すると、特に幼い乳児において皮膚炎を引き起こす場合のある望ましくない副作用があり、従ってこのようなストリップは頻繁(例えば3〜4時間毎)に他の場所に移動させる必要がある。その結果として、センサの接着力は急速に低下し、通常1日だけの使用で粘着性が無くなる。既知のセンサは、適当な場合には患者の比較的大きな面積をカバーするために十分に大きい。これは、乳幼児の場合に特に当てはまる。このため、このようなセンサは、医学的又は患者の快適さのいずれにおいても、足が患者をモニタリングするのに特に理想的ではない場合であっても、この部位の上に取り付けることが多い。
【0010】
マジックテープ(例えばVelcro(商標))は、簡単で迅速な汎用の固定及び固定解除手段として良く知られている。しかしながら既知のセンサでは、幾つかの構成部品の少なくとも部分的に剛直な性質に起因して、患者の周りでの密着性に欠けることは、既知のセンサにおいて自動接着の代わりとして、このような固定手段を使用するだけでは電子構成部品が患者の周りで揺動又は滑りやすい構成につながることを意味する。その結果、これは、不正確な測定値を生じ、酸素濃度計が患者から完全に緩み又は外れた場合には最終的に誤警報を引き起こすことになる。既知のセンサなどで、接着ストリップがこの方法で用いられる場合には、患者に対する取り付けはこのような追加の固定手段を不要にするので、ストリップ自体を固定するための追加の取り付け手段(例えばマジックテープ手段)を用いる必要がない。
【0011】
次に治療用光源にいて考えると、限定ではないが乾癬を含む皮膚状態に光線療法を用いることは知られている。乾癬の場合には、紫外(UV)スペクトルの光が治療に用いられる。患者は、UVA放射線(320〜400nm)に対して患者の一部又は全体を感作するように機能する感作剤(錠剤又はクリーム形態で)が与えられる。次に患者は、UVAランプの手段によりこの波長の光に一定時間暴露される。暴露は、治療が完了するまで必要に応じて繰り返される。既知の光源は、患者から適度の距離に配置され、治療対象領域を照射するよう配向された従来のUVAランプの形態である。従って、光源からの光が広く放散されるので、特定の治療を必要としない身体の一部が暴露される可能性があり、利用可能な光も治療対象の領域に効率的には配光されない。
【0012】
残念なことに、患者が治療対象の患部にクリームを塗布するのではなく、特に錠剤の形態で感作剤を服用している場合には、治療中に不注意によりUVAランプに目を暴露することによって生じる目の損傷に関連する危険が存在する。それにもかかわらず、皮膚状態が広範囲に及ぶ場合には、感作剤を錠剤の形態で導入して、目を保護するために身体的予防措置(例えば目隠ししたUVA検査)を講じることがより適切とすることができる。
【0013】
光線力学治療では、患者は特殊な色素を注入され、これが腫瘍部位に蓄積する。次いで、腫瘍部位は、色素により吸収される所定の波長(通常赤色スペクトル)の光で照射され、色素が蓄積している腫瘍細胞に損傷をもたらすことになる。
【0014】
有機発光ダイオード(OLED)は、当技術分野で公知であり、通常、アノード及びカソードの間に挟まれた発光層を含む。典型的にはアノードは、透明基板と接触しており、アノード自体は通常半透明である。
【0015】
このようなOLEDの既知の用途は、コンピュータディスプレイ、携帯電話、ビデオカメラなどに好適な薄型ディスプレイを含み、これらは本質的にフレキシブルとすることができる。このようなディスプレイは、まさにその性質から、必要とされる文字又は画像を表示するために小さな離散的なOLEDの比較的大きなアレイを含む必要があり、場合によっては1つ又はそれ以上のOLEDが単一の画素に相当することもある。解像度が大きくなるほど、より多くのOLEDが必要となる。カラーディスプレイでは1画素当たりに複数のOLEDが必要とされ、1画素当たりの各OLEDは、補色を出力し、組合せてフルカラーディスプレイを実現するようになる。このようなディスプレイは、薄型でフレキシブルであることで「ペーパー状」と呼ばれることが多い。明らかに、このような方法で用いられるOLEDは可視スペクトルで発光する必要があり、それらの発光は直接又は間接的に見られるものとする。
【0016】
有機光検出器の使用は、例えばコピー機及びレーザプリンタなどの装置において知られている。このような機器では、有機光検出器は、通常金属(例えばアルミニウム)で形成されたドラムの形態で剛性面に取り付けられる。暗部で低導電率を有する光検出器を覆う層は、コロナワイヤを用いて静電荷が与えられる。通常スペクトルの青色領域における光を、光検出器の層上に所定のパターンで向けることができることによって、照射領域内の電荷は、非照射領域上だけ電荷を残して放電される。続いてトナーがドラムに塗布されると、このトナーは帯電領域にのみ付着し、そこから印刷する用紙に運ばれる。コピー機のドラムに使用される1つの光検出化合物は、チタニルフタロシアニン(TioPC)である。
【0017】
米国特許第4,111,850号は、特にフレキシブル基板上に製作されたカルバゾールベースの有機光導電体を記載している。しかしながらこれは、UVスペクトルで検出するように設計され、感受性を可視内まで拡張するためのドーパントを記載するが、これらは赤色又は近赤外(NIR)の検出には不適切なものである。
【0018】
米国特許第4,167,331号は、その中の拍動血流によって変調されるように2つの異なる波長の光が身体の一部分を通過又は反射する、パルス酸素濃度計及び他のセンサからの信号を分析する方法を開示している。それぞれの光変調の対数の交流成分振幅が、ある程度の酸素飽和度をもたらすようなその分子吸光係数を考慮することによって比較される。第3の波長の光を追加することによって、色素又は一酸化炭素ヘモグロビンなどの血流内の他の吸収体の割合を測定することができる。一定の吸収体は、身体部位を通る光又はこれから反射される光の量を一定量だけ減少させるので、測定する際に用いられる交流成分の振幅への影響はない。
米国特許第5,685,299号は、同様のセンサによって信号出力を分析する別の技術を開示している。
【0019】
米国特許第6,555,958号は、LEDからの紫外発光を青色/緑色発光にまで周波数逓降するために蛍光体を用いる方法を記載している。米国特許第5,874,803号は、OLEDにより発光された青色波長から赤色/緑色波長へと周波数逓降するためにフィルタ/蛍光体の積み重ねの使用を記載している。両方の場合では、周波数逓降は、可視スペクトルに対するものである。
【0020】
【特許文献1】米国特許第4,111,850号
【特許文献2】米国特許第4,167,331号
【特許文献3】米国特許第5,685,299号
【特許文献4】米国特許第6,555,958号
【特許文献5】米国特許第5,874,803号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、フレキシブルで共形の医療用光源並びに検出器と、血液性状(例えばCO、酸素、又はビリルビンのレベル)のモニタリングを目的とする関連診断デバイスと、乾癬及び幾つかの形態の癌などの病気の治療用の光線療法デバイスとを提供する。本発明は、ヒト及び動物の身体の両方に使用することを意図している。
【0022】
本発明の第1の態様によれば、フレキシブル基板のそれぞれの領域上に形成された1つ又はそれ以上のフレキシブル発光ダイオードを含む医療用光源が提供される。
フレキシブル発光ダイオードは、単一のフレキシブル基板上に形成することができる。
医療用光源は、該光源を動作中に光源からの光が照射されることになる患者の身体の一部分に共形となる程十分にフレキシブルであるように配置することができる。
有利には、より近接しより安定したフィット性を患者の身体に提供することができる。
フレキシブル発光源は、有機発光ダイオードを含むことができる。しかしながら例えば多孔性シリコン構造体を使用することを含む、他のフレキシブル発光源を用いてもよい。
フレキシブル発光ダイオードは、ヒト又は動物の身体の病状の診断又は治療に適切な波長で発光することができる。
幾つかの実施形態では、フレキシブル発光ダイオードは、スペクトルの赤色から赤外領域で発光する。
幾つかの実施形態では、フレキシブル発光ダイオードは、スペクトルの近赤外領域で発光する。
幾つかの実施形態では、フレキシブル発光ダイオードは、スペクトルの非可視領域で発光する。
医療用光源は、互いに異なる波長で発光するように配置された複数のフレキシブル発光ダイオードを含むことができる。
【0023】
医療用光源は、互いに異なる波長で発光するように配置された少なくとも2つの発光ダイオードを含むことができ、この発光ダイオードは、これらの異なる波長における光が、これらの波長で発光する発光ダイオードによって定められる領域の総和全体にわたって実質的に均一に発光されるように配置される。
医療用光源は、動作中に1つ又はそれ以上のフレキシブル発光ダイオードから放出された光を検出するように配置された光検出器を含むことができる。
医療用光源は、患者の身体又はその周りに医療用光源を取り付けるための取り付け手段を含むストラップを備えることができる。
フレキシブル基板は、ストラップを形成することができる。
取り付け手段は、マジックテープ手段、矢じり及びスロット手段、及び自動接着手段のうちの1つとすることができる。
【0024】
発光ダイオードは、三重項発光体を含むことができる。
発光ダイオードは、光源内で放出された光を第1の波長から第2の波長に波長シフトするように配置された1つ又はそれ以上の構成部品を含むことができる。
【0025】
医療用光源は蛍光発光体を含むことができ、波長シフトが蛍光発光体を用いて少なくとも部分的に行われる。
医療用光源は波長シフト格子を含むことができ、波長シフトは、該波長シフト格子を用いて少なくとも部分的に行われる。
医療用光源は微小空洞を含むことができ、波長シフトが微小空洞を用いて少なくとも部分的に行われる。
第2の波長は、微小空洞の調整によって決定することができる。
微小空洞は、発光ダイオードの平面にほぼ垂直に第3の波長で発光するように調整することができる。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、フレキシブル基板のそれぞれの領域上に形成された1つ又はそれ以上のフレキシブル光検出器を含む医療用センサが提供される。
医療用光センサは、動作中に光検出器が患者の身体の一部分に対して共形となることができる程十分にフレキシブルであるように配置することができる。
医療用センサはまた、第1の態様による医療用光源を備えることができ、1つ又はそれ以上のフレキシブル光検出器の少なくとも1つは、動作中にフレキシブル発光ダイオードの少なくとも1つによって放出された光を検出するように配置することができる。
医療用センサは、時間インターリーブ基準に基づいて発光するように配置された2つ又はそれ以上のフレキシブル発光ダイオードを含むことができる。
医療用センサは、動作中にヒト又は動物の身体の酸素、一酸化炭素、及びビリルビンのうちの少なくとも1つのレベルの診断に好適に波長で発光するように配置された複数の医療用光源を含むことができる。
光検出器は、有機光起電力検出器とすることができる。
【0027】
本発明の別の態様によれば、後続の光パルスが発光される前に許容可能レベルまで発光が確実に低下するよう計算された時間期間の間、三重項発光体が活性化されるように所定のパルス時間期間を有するパルスモードで第1の態様による医療用光源を動作する方法が提供される。
所定のパルス時間期間は、25ms以下とすることができる。
発光パルスのタイミングは、センサが取り付けられる患者のパルスタイミングの指示に応答して決定することができる。
【0028】
本発明の別の態様によれば、スペクトルの可視領域内で発光するように配置された有機発光ダイオードと、有機発光ダイオードからの可視発光をスペクトルの赤外領域内の発光に変換するように配置された波長変換層とを含む有機発光ダイオード装置が提供される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、スペクトルの青色領域内で発光するように配置された有機発光ダイオードと、有機発光ダイオードからの青色発光をスペクトルの赤外領域内の発光に変換するように配置された波長変換層とを含む有機発光ダイオード装置が提供される。
緑色発光は、同様に赤外発光に変換することができる。
波長変換層は、蛍光体ベースの化合物を含むことができる。
波長変換層は、赤外エッジフィルタを含むことができる。
【0030】
本発明の別の態様によれば、医療用光源での用途に好適な有機発光ダイオードが提供される。
【0031】
本発明の別の態様によれば、医療用センサでの用途に好適な有機光起電力検出器が提供される。
【0032】
本発明はまた、記載した装置が動作し且つ動作させることができ、装置の全ての機能を実行するための方法段階を含む方法に関する。
【0033】
本発明の別の態様によれば、有機発光ダイオード(波長シフトOLEDを含む)及び光起電力検出器が提供され、その全ては一般的には医療用光源での用途、特に医療用センサ(パルス酸素濃度計及び同様のデバイスを含む)用に好適である。
【0034】
当業者には明らかなように、本発明の特徴は、必要に応じて組合せることができ、本発明の態様のいずれとも組合せることができる。上述の実施例に勝る本発明の他の利点もまた当業者には明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明を実際に実施することができる方法を示すために、本発明の実施形態を添付図面を参照しながら例証として以下で説明する。
本発明は、医療用光源としてフレキシブルLED(例えばフレキシブル基板上に形成された有機LED又はポリマーベース光源)を使用することで、診断及び治療目的において既知の光源に優る多くの利点が得られることが分かった。
【0036】
図2(a)を参照すると、フレキシブル有機発光ダイオードの第1の実施形態がほぼ長さ50mm及び幅13mmとすることができるプラスチック基板10上に形成されている。ORGACON(商標)フレキシブル基板(AGFA)を用いることができる。ORGACONは、導電性ポリマー(ポリスチレンスルホン酸中のPEDOT/PSS−ポリエチレン−ジオキシチオフェン)102でコーティングされた市販のPET(ポリエチレンテレフタレート)膜101である。幾つかの種類のORGACONが入手可能であり、そのうち好ましい種類は、125ミクロン厚さで350オーム/スクエアのシート抵抗率を有する基板を提供する。OLEDは、以下のような連続した複数の層を形成することによって基板上に形成される。
【0037】
次いで、追加の層がフレキシブル基板上に蒸着されて、赤色発光OLEDを形成する。
・NPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン)の60nmの層13;
・2%濃度のDCM2(4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[l,j]−キノロジン−8−イル)−ビニル]−4H−ピラン)レーザ色素で共蒸着したAlQ(アルミニウム8−ヒドロキシキノリネート)の30nmの層14;
・AlQの30nmの層15
・フッ化リチウム(LiF)の0.6nmの層16;及び
・カソードとして機能するアルミニウムの150nmの層17。
結果として得られた赤色発光OLEDは、DCM2レーザ色素から予測される発光ピークに対応する、約616nmで発光する。
【0038】
本発明の特定の実施形態はPEDOT及びPETの基板を用いるが、例えば、60オーム/スクエアのシート抵抗率のPET厚さ150ミクロンのシェルダールが提供しているインジウムスズ酸化物(ITO)コーティングPETを含む、他のフレキシブル基板を用いてもよいことは、当業者には明らかであろう。
【0039】
図2(b)に示した近赤外(NIR)発光OLEDの第1の実施形態では、塩化イッテルビウムの溶液を8−ヒドロキシキノリンの溶液と混合して、洗浄、乾燥、及び昇華させた粉体(YbQとして知られる)を形成する。その結果、OLEDは、以下の多層構造で構成される。
・NPDの68nmの層23;
・YbQの38nmの層25;
・LiFの0.6nmの層16;及び
・カソードとして機能するアルミニウムの150nmの層17。
結果として得られたデバイスは、980nmの主要イッテルビウム遷移線で発光する。
【0040】
ここで図2(c)を参照すると、第2の好ましいNIR発光OLEDの実施形態は、以下の多層構造を用いて構成された青色発光OLEDを含む。
・NPDの68nmの層23;
・バソクプロイン(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)の10nmの層34;
・AlQの38nmの層35;
・LiFの0.6nmの層16;及び
・アルミニウムの150nmの層17。
【0041】
NIR発光OLEDを提供するために、ノーランド65光学接着剤のバインダで保持された蛍光体技術PTIR1070の層38がまた、フレキシブル基板の発光面上に施工される。蛍光体層は、OLEDによって放出される青色光を885nmで赤外光に変換するように機能する。次いで、不要な可視波長を遮断するように配置された赤外エッジフィルタ39は、任意的に蛍光体層の上で接合される。
【0042】
上述の実施形態は青色発光OLEDを用いているが、多種多様の青色発光体が利用可能である。その一部はOLEDではなくポリマーであり、真空蒸着する必要がなく、すなわち単に基板表面上にスピン又はコーティングすることができる。1つのこのような特定のデバイス構造は、以下の通りである。
・アノード(例えばITO)
・ポリマー(例えば500nm厚の層)
・カソード(例えば100nmカルシウム又はマグネシウム)
ここでポリマー層は、以下のうちの1つとすることができる。
・436nmで発光するPFOポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7ジイル)、又は
・420nmで発光するポリ−TPDポリ(N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン)
約450nmでの発光は、蛍光体が青色光に対して最も感受性が高いところであることから青色発光体にとって好ましい。
【0043】
しかしながら他と同様にこの場合において、発光体は排他的にこの特定の波長で発光する必要はなく、蛍光体(すなわち波長変換)層によって吸収される波長で十分に発光することで足りることは明らかであろう。この点に関して、別の好適な光源は、実際に公称「緑色」の発光OLEDである。このような発光体には、以下のものを含むことができる。
・NPDの68nmの層;
・AlQの38ナノミリメートル(nmm)の層;
・LiFの0.6nmの層;
・Alの150nmの層
結果として得られたOLEDは、約530nmであるが広い波長で発光する。これが機能する理由は、この蛍光体が公称「緑色」OLEDの発光スペクトルと十分に重なり合う広い吸収域を有するためである。
【0044】
効率的な波長シフトを達成するために、OLED又はLEPの一次放射が蛍光体からの波長シフトした放射よりも短い波長であるような材料を選択することが望ましい既知の条件に従って、選択された波長での発光が、蛍光体の選択を適切に行うことで、可視、UV、又は短波長IRスペクトル全体にわたって一次放射を有する波長シフトOLED又はLEPデバイスから得ることができることは当業者には明らかであろう。
【0045】
LEDは、その接合部の周りに極めて小さな発光領域を有し、LEDケーシング内でレンズを使用する場合でも、LEDにより直接照射される領域は極めて小さい。対照的にOLED発光は均等拡散であり、OLEDの全領域から360度視野で等方的に発光する。検出器との光源の位置合わせは、より指向性のあるLEDを用いる場合よりもあまり重大ではないので、このことは、パルス酸素濃度計光源又は他の医療用光源にとって幾つかの点において有利である。しかしながら、実際に患者から離れる発光体の後方及び側方に照射される光は、医学上の用途に関する限り無駄なものである。従って、患者及び/又は検出器に向かってOLEDにより放出される光をより多く配光することによって、本構成を更に効率的にすることができる。
【0046】
OLEDとLEDの発光の間の別の領域の差違は、発光波長エンペロープの幅である。OLED発光は、例えば、ほぼ100nmの半値全幅(FWHM)特性を有して、通常広範である。LED発光は、ほぼ20nmほどのFWHMを有して、通常鋭敏である。それでもやはり、この広範な発光スペクトルは、特に飽和計算に実験式を用いる場合に飽和測定において余分な不確かさを取り込む可能性があるので、本発明者らは、パルス酸素濃度計においてこのことは有利ではないことがわかった。
【0047】
OLED及びLEDのいずれかを使用する上での別の潜在的な問題は、LEDでは、一定の波長でだけ利用可能であること、同様にOLEDでは、一定の波長での発光が、効率的な蛍光発光体を好適に利用可能にすることに依存することである。従って、パルス酸素濃度計での使用及び同様の目的のために選択された波長は、目的のための最適な波長であるためではなく、利用可能性の理由で選択されることがある。従って、OLEDからの発光を、現在利用可能な発光体の発光からパルス酸素濃度計用により最適な発光にシフトさせることができる場合、これは有利である。
【0048】
本発明者らは、OLEDと光が透過して発光される基板(ガラス又はプラスチック)との間に配置された格子又は他の構造体を用いてOLEDデバイスの発光を操作することが可能であり、このようなデバイスには医療用光源の用途があることを認識した。
【0049】
1つのこのようなデバイスは、ITOがコーティングされた基板の背面上でスピンさせた薄いフォトレジスト(感光性ポリマー)層を含む。次いで、フォトレジスト層は、例えば2つのレーザを用いてパターン形成し、600nmのピッチの界面格子と100nmの深さの格子とを形成する。基板の前(ITO)側には、OLEDが以下の構造で構成される。
・NPDの68nmの層
・ALQの38nmの層
・LiFの0.6nmの層
・Alの100nmの層
【0050】
ここで図3(a)を参照すると、結果として得られる発光140は、格子によって赤色スペクトルに向かってシフトされ141、すなわちこの場合では、520nmの正常発光ピークが650nmにシフトされる。更に発光のFWHMは、格子構造によって100nmから約75nmにまで低下する。赤色発光OLEDは緑色OLEDよりも本質的に効率が低く、波長がシフトした650nmでの発光は、赤色発光OLEDを生成するために構造体にドーパントを添加することを必要とせずに、パルス酸素濃度計などの用途にとって理想的なものとなるので、赤色に向かう波長のシフトは特に有益である。
【0051】
格子構造体は、この場合のOLEDに対して基板の反対側にあるにもかかわらず、基板を透過してOLEDから出てくる場合には依然として発光に影響を与える。このような構造は、ガラスとOLEDとの間の導波モードで消失することになるはずの光を抽出することによって、基板から出てくる光の量を増大させる。
【0052】
適切な格子デバイスの代替構成は、ITO層の最上部に、フォトレジスト層が導電性を殆ど妨げない薄さであるフォトレジスト格子構造を形成する段階、又は平面基板上にフォトレジスト格子を構成する段階を含み、アノードとして最上部に金の薄い半透明層を付加する。或いは格子自体は、ITO又は同様の材料で形成することができる。
【0053】
本明細書における用語「格子」とは、単一格子、2重格子、多重格子、1次元又は2次元のいずれもの周期的アレイ(例えばドット又はピット)、更に準周期的アレイ、並びに当業者には明らかであろう同様の構造体を包含するものとする。更に、上述の特定の実施形態では、格子はOLEDと基板との間に配置されているが、他の構成も可能である。これらの構成は、基板自体又は導電層内に格子を形成する段階を含む。格子は、カソードの一部として、又は発光体が形成される面上を含む、格子構造と発光デバイスの光モードとの間に十分なカップリングを達成することのできる他のいずれかの場所において形成することさえできる。
【0054】
上述の実施形態は半透明格子構造体を用いているが、ここで図3(b)を参照すると、微小空洞を形成するように配置される2つの反射面(パターン化又は非パターン化)を含む構造体を用いることもできる。微小空洞は、この場合は約1000nm離間した2つのミラーを含むファブリーペロー空洞である。
【0055】
このようなデバイスの簡単な実施例は、基板の最上部に半透明(又はより一般的には部分的に透明)の金の薄い(30nm)層を含む。この反射器の最上部では、OLEDは以下の別の構造で構成される。
・NPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン)の68nmの層
・AlQの38nmの層
・MgAgの層(第2の反射器及びカソードとして)
【0056】
2つの反射器の間に形成された単純空洞からのOLED発光142は、波長143にシフトされ、FWHMが低くなる。空洞のない対応するデバイスでのピーク発光波長は522nmであり、空洞構造がある場合、ピーク発光は567nmである。更に、FWHMは約100nmから50nmに低下する。
【0057】
ここで図3(c)を参照すると、より複合的なデバイスは、例えば以下のような層構造を含むことができる。
・誘電反射器層
・SiO2の層
・ITO(インジウムスズ酸化物)の層
・NPDの68nmの層
・ALQの68nmの層
・Mg/Ag層(ミラー及びカソードとして)
SiO2のスペーサ層は、空洞空間を最良の影響をもたらすように調整するために誘電反射器とITO層との間に追加される。次いで、ITOが、この誘電体層の最上部にスパッタされ、OLEDは真空蒸着によって従来通り最上部に構成される。
【0058】
このデバイスは、強い調整効果を示し、ピーク発光の位置がデバイスに垂直な位置から離れた角度で変化し、例えば、ピーク145a、145bは空洞の平面に垂直な位置に対し0度での発光に相当するが、ピーク146a、146bは空洞の平面に垂直な位置に対して30度で観察されるのに対応するピークである。ピーク発光もまた各事例で2つのピークに分かれる。これは、空洞、デバイス構造、及び角度を注意深く設計することによってより、高い波長又は低い波長発光にすることができることを意味する。これは、例えば、主に青色に向かって吸収する赤外発光蛍光体を誘導するために、パルス酸素濃度計にとって青色発光が望ましい場合に有益なものとなる。上述のように微小空洞を用いて発光波長をシフトとさせることにより、緑色発光OLEDを用いることができ、微小空洞は波長を青色領域内にシフトさせ、これにより必要な赤外発光を発光するようにIP発光蛍光体を誘導するように配置される。緑色又は他の色の発光源の使用は、コスト、利便性、又は効率の面で特定の事例において好ましい場合がある。
【0059】
この設計では、光をデバイスから放出させることを可能にするために、半透明の金アノードが用いられる。別の設計では、空洞効果を生成して、やはり光がデバイスを出ることができるように、ドット及びピットのアレイを使用することを含む。
【0060】
上述のデバイスは、低分子質量材料の蒸着層を含む発光層の使用に関連して説明される。しかしながら、当業者であれば、MEH−PPV(ポリ(1−メトキシ−4−(2−エチルヘキシルオキシ)−p−フェニレンビニレン))のような溶液から作ったポリマー材料、デンドリマ、並びに他の溶液から作った半導体層及び発光層が、格子構造、空洞構造、又はその両方を含むデバイスに同様に用いて、波長、発光半値幅、及び発光の方向性の最適化の望ましい結果を得ることができる点は理解されるであろう。
【0061】
センサの発光部分は、空気中で安定でない可能性があり、従って、通常は封入する必要がある(例えば酸素濃度計及び他の治療機器での使用において)。これはまた、光源及び光導電層を構成するために使用される物質から皮膚を保護するために重要である。この目的のために専用の封入方法を用いてもよい。1つのこのような方法は、デバイス全体にわたって1ミクロンのパリレン(ポリ−パラキシレン)、続いて光源及び光導電体が構成されている面を覆って150nmのアルミニウムを施工することである。1ミクロンの厚さでパリレンからなる第3の層が、デバイス全体を覆って付加される。当業者には明らかであるように、封入の他の方法を使用することもできる。
【0062】
パルス酸素濃度計センサのような用途では、好ましくは組織の領域がどれくらい厚いかに関係なく、患者の組織を透過する十分な量の光が提供されることが重要であり、例えば、指の径は個体間で大きく異なるが、理想的には少なくとも同じ設計のセンサがこのような個体全てに対して使用可能である必要がある。組織が厚くなるほどより多くの光を吸収し、検出されるパルス信号の大きさが低下し、従って信号対雑音比が低下することは明らかである。幾つかのOLEDデバイスは、従来のデバイスで用いられる多くのLEDデバイスよりも明るくないため、パルス酸素濃度計などの用途では、OLEDデバイスの光出力(すなわち効率)を改善することが望ましい。効率を高めることはまた、デバイス寿命が延び、所要電力が低下する利点がある。
【0063】
動作寿命が長く、光出力が大きく、所要電力が低い発光体を形成するためには、これらの有機エレクトロルミネセント(OEL)素子の電力効率及び外部量子効率を最大にする必要がある。
【0064】
発光デバイスの電力効率は、デバイスに供給されるエネルギーに対する放出された光出力の比率であり、外部量子効率は、デバイスに供給される電子の数に対するデバイスから放出されるフォトンの数の比率である。電力効率は、デバイスの電気抵抗を最小にすることによって高めることができ、外部電力効率ηexは、以下の関係で与えられる種々の係数に依存する。
ηex=ηpL×ηout×ηs-t×ηrec×ηbal
上式で、
ηex=外部量子効率
ηpL=光ルミネセンス効率
ηout=アウトカップリング効率
ηs-t=三重項生成に対する一重項生成比
ηrec=電子に対する正孔の再結合効率
ηbal=荷電平衡
【0065】
電流がOLEDを通って流れると、電荷の一部は再結合する。再結合した電荷は、一重項励起状態又は三重項励起状態のいずれかを形成する。一般に、OLEDにおける一重項励起状態と三重項励起状態の形成比率は、それぞれ1:4と3:4である。一重項励起状態は緩和して発光するのに対して、特別な措置をとらない限り三重項励起状態は放射の無い経路を介して緩和する。
【0066】
従って、リン光材料をOLED内に取り込むと、生成される光出力を大幅に増大させることができる。これは、三重項として形成する生成励起状態の75%から有用な光を生成することによって達成される。OLEDをドープするのに使用される最も効率的なリン光材料は、イリジウムベースの有機金属蛍光体(例えばイリジウムトリス−(フェニルピリジン)(Ir(ppy)3))である。表1に示す結果は、利用したリン光材料でOLEDがドープされたときのデバイス性能の有意な改善を示している。
【0067】
表1:OLEDデバイスの輝度効率
*これらの値は外挿されたことを示す)

表2に示すように、リン光OLEDの効率の向上は、赤色及び緑色発光体のデバイス寿命の延長にもつながる。
【0068】
表2:100cd/m2で駆動されたOLEDの寿命

【0069】
しかしながらリン光(三重項)発光が難しい点は、崩壊寿命が一重項発光よりもはるかに長いことである。この寿命は、例えば、通常高周波のパルス方式で駆動されるパルス酸素濃度計の動作と干渉する可能性があるほど十分に長い。従って、三重項発光の発光寿命は、パルス酸素濃度計デバイスの繰り返し率よりも短い必要がある。
【0070】
検出器はまた、発光と同期するようゲート制御して、検出を向上させ、先行するフラッシュ又は他の発生源からの背景光の影響を低減することができる。これによりまた、患者のパルスピーク及びトラフ期間と同期したフラッシュの「バースト」間で発光体の出力を下げることが可能となり、これは、患者の身体への消費電力を低減する利点が付加される。
【0071】
酸素濃度計及び同様の用途において、組織の光学密度を少なくとも各パルスの最大点と最小点で、従って1パルス当たり少なくとも2回サンプリングする必要がある。これは通常は、より多くの頻度(例えば、患者パルス当たり20−50回)でサンプリングされ、更にピーク及びトラフを抽出するためにある種の曲線近似又は他の適切な方法を用いることによって達成された。本発明者らはまた、例えばパルスタイミングを測定することができるECG又は他のデバイスのような別のプローブと共に酸素濃度計センサを用いることができることを認識した。次いで、プローブから受け取った患者パルスタイミング情報を用いて、採取するサンプルの数を減少させことができる。極端な場合、サンプリングは、パルス当たり2つのサンプルだけに減らすことができるが、実際には各パルスの持続時間全体からのサンプリングをECGによって識別されたピーク及びトラフと関連する2つのサブ領域まで低減することがより実用的とすることができる。これは、分析すべき600ミリ秒の範囲にあるものとすることができる最低パルスレートに基づくt2の実用上限を設定する。
【0072】
次に、2つの光源(赤色及び赤外)が必要とされることにより酸素濃度計の繰り返し間隔に対する制約が生じる。電力消費量及び更に重要な電力放射は、サンプリングサイクルのかなりの割合の間にOLEDが確実に出力を下げることによって最適にすることができる。
【0073】
従って、異なる波長で発光する少なくとも2つの光源の各々からの光の狭い(例えば1ミリ秒)フラッシュを放出し、別の光源からの連続フラッシュは個々のフラッシュ持続時間に対して広く間隔を置いた(例えば20ミリ秒)タイミングにするのが好ましい。従って、三重項発光の使用においては、適切なタイミングを定める際に、特に長い発光持続時間の影響を考慮する必要があり、すなわち、第1の発光体からの発光は、次の発光フラッシュが始まる前に実質的に消失している必要があり、よって、三重項発光では、「フラッシュ」間のルミネセンスの十分な減衰を考慮しなくてはならない。
【0074】
本発明者らは、発光寿命t1の発光体で繰り返し時間期間t2のパルス酸素濃度計での使用において、三重項発光体を、関係式:
1≦t3/2
で特徴付けられる時間t3の間に有効に励起させて、時間期間当たり各波長(酸素濃度計用途のための赤色及び赤外)で少なくとも1つのサンプルを割り当てることができることが分かった。一般に、別の色のサンプルを割り当てるために十分に短くする場合には、発光寿命はかなり短くすべきであり、良好な検出を可能にするためにピーク発光強度を最大にして、同時に消費電力全体を最小にする。
3≦3/4t2
ここで、パルス酸素濃度計用途のための典型的な繰り返し時間期間t2は、約25ms以下である。
【0075】
上述のタイミング基準を満たす幾つかの三重項発光体システムが確認されている。詳細には、図4を参照すると、第1の実施例のデバイスは、以下の多層構造を備えたイリジウム有機金属錯体Ir(ppy)3を用いる。
・ITOの層102a(アノードとして)
・NPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン)の40nmの層23
・CBP(4,4’−ビス−(カルバゾール−9−イル)ビフェニル)内のIr(ppy)3の20nmの層130
・BCP(バソクプロイン)の0.6nm層131
・AlQ3(アルミニウム トリス(8−ヒドロキシキノリン))の20nmの層35
・MgAgの層132(カソードとして)
【0076】
このシステムでの三重項寿命は、約500nsである。Ir(ppy)3のドーピングレベルはCBPに対して6%である。特定のデバイスは、緑色波長で発光することになる。しかしながら、このようなシステムを赤色波長で発光させることを可能にするリガンドの変形形態が存在する。例えば、分子Ir(btp)3の7%でCBPをドーピングすることによって、617nmでの三重項発光を可能にする。
【0077】
別の適切な実施形態(図示せず)は、ポルフィリンリガンド錯体内のプラチナ金属を用いる。これは、約100マイクロ秒の長い三重項寿命を有する。1つの好適なデバイス構造は、以下の通りである。
・ITOの層(アノードとして)
・BCPの0.6nmの層
・NPDの45nmの層
・PtOEP/AlQ3(ここでPtOEPは、プラチナオクタエチルポルフィリン)の40nmの層
・AlQ3の20nmの層
・MgAgの層(カソードとして)
ここでPtOEPは、プラチナオクタエチルポルフィリンである。
PtOEPを使用することで、光が650nmで発光し、パルス酸素濃度計光源で有用なものとなる。
【0078】
パルス酸素濃度計光源での用途にとって望ましい利点をもたらす別の実施形態(図示せず)は、所望の波長で発光する色素の感作剤としてIr(ppy)3(すなわちfac−トリス−(2−フェニルピリジン)イリジウム)を用いるものである。母材中に蛍光色素を備えた状況では、母材中の三重項励起子を蛍光色素に移送させるのが望ましい。これは、蛍光ドーパントを付加することによって容易にされ、該蛍光ドーパントは、ドーパント中の一重項及び三重項状態を介して母材中の三重項状態を色素に移送させることを可能にする。このようなシステムの1つの実施例は、CBPホストが0.2%のDCMレーザ色素及び8%のIr(ppy)3の両方でドープされるものである。その結果として、Ir(ppy)3からDCMへの殆ど完全なエネルギー移送となる。このシステムは更に、高効率赤色OLEDを形成することができるので、パルス酸素濃度計光源及び赤色発光を必要とする他の用途にとって有用である。
【0079】
赤色三重項発光を達成することができる更に別の構成(図示せず)は、リガンド錯体中にEu3+イオンを使用する。希土類錯体は、リガンド一重項と三重項状態との間の効率的なエネルギー移送、従って金属イオン励起状態を特徴とする。このため、希土類錯体は、OLED内で高効率発光体であることが期待される。以下の実施例は、従来の真空蒸着を用いて構成することができる。用いた希土類錯体は、ユウロピウム(ジベンゾイルメタナト)3(バソフェナンスロリン)[Eu(DBM)3バス]である。典型的な二重層デバイス構造は、以下の通りである。
・ITOの層
・NPDの30nmの層
・Eu(DBM)3バスの80nmの層
・MgAgの層(マグネシウム銀)
或いは以下で三重層デバイスを構成することができる。
・ITOの層
・NPDの30nmの層
・NPD:Eu(DBM)3バスの層
・Eu(DBM)3バスの50nmの層
・MgAgの層
NPDホスト中のEu(DBM)3バスの濃度は2%である。
【0080】
このようなデバイスは、約620nmで発光するが、これらは上述の他のデバイスよりも長い三重項減衰時間を有し、これらは依然として約1ミリ秒の寿命を有するパルス酸素濃度計及び関連する用途の限度内にある。
【0081】
フレキシブル光源を補完するために、フレキシブル光検出器が、フレキシブルOLEDを作成するのと同じ方法でフレキシブル基板上に光検出器を形成することによって設けられる。しかしながら以下に提案される用途では、コピー機及びレーザプリンタのようなデバイスでのこれらの従来の用途とは異なり、光検出器はスペクトルの近赤外(NIR)から赤色領域で光を検出するように配置される。
【0082】
ここで図5(a)を参照すると、適切なフレキシブル光検出器は、この実施形態では10%濃度のジクロロベンゼン(DCB)内のポリビニルカルバゾール(PVK)溶液で作られた有機光導電体により形成された第1の層41を含む。この溶液中に、3:1(PVK:TiOPC)の割合でチタニルフタロシアニン(TiOPC)の細かい粉状サンプルを混合する。次いで、得られた混合物を30分間200rpmでプラスチック基板上でスピンさせ、3−5μm程度の厚さの層を得る。金の100nmの層42は、カソードとして機能する。
好ましくは光検出器は、上述のようにOLEDの形成前に基板上に形成される。
【0083】
上述のようにポリマー内で結合されたフタロシアニン層を有するような有機光導電体材料は、パルス酸素濃度計を含む医療センサ用の完全にフレキシブルで高感度の光検出器構成素子を形成するのに用いることができるが、光起電力検出器は、現在パルス酸素濃度計で用いられる光導電センサ(有機及び無機)よりも優れた幾つかの利点を有することが分かっている。光起電力検出器は、信号雑音比を低減する過剰な雑音を取り込む傾向が少ない。これらの応答もまた、光強度に対してより線形であり、すなわち強い背景光の存在下では光導電センサの感度は低下する。信号を飽和値に変換するのに用いられる従来のアルゴリズムは、検出器が線形応答を有すると推定されるので、センサ応答が有意に非線形である場合には、より複雑な相関関数を用いて飽和を計算する必要がある。
【0084】
光起電力光検出器は通常、P(正)とN(負)の接合を生成することによって構成される。これらの材料は、ドープ結晶シリコン、他の無機材料又は有機半導体層とすることができる。光が接合部に入射されると、電荷分離が起こり、電圧が誘起される。次いで、この信号は、電流モード又は電圧モードのいずれかで検出することができる。
【0085】
検出器における有機光電池の使用は、光導電検出器の使用に勝る以下の利点を有する。すなわち、より容易なデバイス調製を可能にし、大面積の製作が簡単であり、有機光電池はよりフレキシブルとすることができ、これらは低毒性材料を用い、比較的低屈折率であるので光のカップリングに効率的である。
【0086】
勿論、パルス酸素濃度計デバイスに使用される赤外及び赤色波長に応答する光起電力システムを選択することは重要であり、フタロシアニンベース又はペリレンベースの光起電力デバイスは、パルス酸素濃度計に必要とされる赤色及び赤外波長で応答することが分かる。
【0087】
ここで図5(b)を参照すると、有機パルス酸素濃度計などの医療用センサで用いることができる、光起電力検出器デバイス多層方式の1つの実施例は、以下の通りである。
・ITOの層102a(アノードとして)
・PEDOT:PSS(ポリ(3,4,エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸)の32nmの層120
・CuPC(銅フタロシアニン)の20nmの層121
・C60の40nmの層122
・バソクプロイン(BCP)の12nmの層123
・Alの100nmの層17(カソードとして)
CuPCはドナー層として機能し、フラーレン(C60)はアクセプタ層として機能する。BCPの目的は、電子をカソードからアクセプタ層に移送すると同時に、ドナー層からの励起子がカソードで再結合するのを阻止することである。
PEDOT:PSSは、清浄化されたITO上にスピンコーティングにより堆積された高仕事関数正孔注入層である。デバイス内の他の材料は、真空蒸着により堆積される。
【0088】
ここで図5(c)を参照すると、本システムは、単一の鋭角接合ではなくてドナー層とアクセプタ層との間によりより漸次的な境界を有することにより更に改善することができる。例えば以下の層構造である。
・ITOの層102a(アノードとして)
・CuPCの3.5nmの層121
・75%CuPC、25%C60の16.7nmの層121a
・50%CuPCの16.7nmの層121b
・25%CuPCの16.7nmの層121c
・C60の5nmの層122
・BCP(バソクプロイン)の12nmの層123
・Alの100nmの層17(カソードとして)
【0089】
このような構造は、二重層構造の約2倍の効率をもたらす。組成勾配を用いて電荷をより容易に関連電極に向けて駆動することによってこの改善が得られると考えられる。
【0090】
図5(d)に示す別の実施形態では、蒸着ペリレン層とスピンコーティングMEH−PPV層とを利用して2層システムが用いられる。両方の層は、照射下で励起子を生成し、この励起子は層間の境界で伝導させるために分解されて電子と正孔になると思われる。以下のデバイス構造を用いる。
・ITOの層102a(アノードとして)
・PpyEl(ペリレンビス(ピリジルエチルイミド))の10nmの層124
・M3EH−PPV(ポリ(2,5−ジメトキシ−1,4−フェにレン−1,2−エテニレン−2−メトキシ−5(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン−1,2−エテニレン)の30nmの層125
・Auの100nmの層(カソードとして)
或いは図5(e)に示したデバイスは、2層CuPC/ペリレンシステムから作製することができる。例えば:
・ITOの層102a(アノードとして)
・CuPC(銅フタロシアニン)の30nmの層126
・PV(ペレリンテトラカルボン酸ビス−ベンズイミダゾール)の50nmの層127
・Agの層43(カソードとして)
【0091】
3つの特定の多層構成のみを詳細に説明してきたが、当業者であれば明らかなように、他の多層構成をそれらの適所で使用してもよい点は明らかであろう。
【0092】
ここで図1(b)、図6(a)−(b)、及び図7を参照すると、このようなフレキシブルOLED及び光検出器を利用する、例えばパルス酸素濃度計50である医療用センサを構成することができる。詳細には、パルス酸素濃度計は、異なる波長で発光する1対のOLEDが取り付けられたフレキシブルキャリアストリップ51を含むことができる。詳細には、第1のOLED53はスペクトルの赤色部で発光するが、第2のOLED54は、スペクトルの赤外部で発光する。上述したものの1つのような光検出器52は、酸素濃度計が監視されることになる身体部位61(例えば指又はつま先)の周りに巻かれたときに、各OLEDから放出された光が身体部位を透過して光検出器で受け取られるようにキャリアストリップ上に配置される。光検出器及びOLEDは、制御機構57に結合された電気接続ワイヤ55を介して給電、制御、及び監視がなされる。適切な機構が当技術分野で公知である。このパルス酸素濃度計センサと共に用いるのに好適なものとなる他の多くの駆動方式及び分析機能が存在する。
【0093】
上記で説明してきたように、OLED及び光検出器は、フレキシブル基板上で形成することができる。従って、OLED及び光検出器の両方をフレキシブルキャリアストラップを形成する単一の基板上で形成することが可能(必須ではないが)である。これは、既知のセンサのように別個に製造された光源及び検出器を別々のキャリアストラップに取り付ける段階に関連する各段階を排除することによって製造を単純化する。本発明の構成において明らかなことに、必要な電気接続部の全てもまた、同じ製造工程の一部として同じ基板上に形成することができる。
【0094】
それでもやはり、異なる支持部材に取り付けられた基板の1つ又はそれ以上の領域上に形成されたフレキシブルデバイスを含む実施形態を製造することもできる。支持部材は、例えば、弾性手段又は他の固定手段を含むことができる。各事例の固定手段は、使用中に患者が受ける締め付けを制限するように配置することができる。
【0095】
本発明の実施形態は、両光源53,54の発光波長に対して敏感な単一の検出器52だけを示しているが、別の実施形態では、各々がそれぞれの光源からの発光に対して敏感な複数の検出器を有するものも含むことは明らかである。
【0096】
キャリアストリップ51は、特にマジックテープ手段56a、56bを含む幾つかの取り付け手段のいずれを用いても患者の周りに固定することができる。マジックテープ手段は、OLED及び光検出器のフレキシビリティにより、キャリアストリップが既知の酸素濃度計の剛性構成部品に従うよりもより密接に身体部位の輪郭に従うことができるので、この構成には特に好適である。結果として、患者の指又は手足の周り或いはこれらから離れて滑る可能性ははるかに少ない。キャリアストリップ自体51は、取り付けを容易にし、患者のサイズの幾らかのばらつきを考慮するために伸縮性材料のものとすることができる。マジックテープ型固定具(又は実際には「ポッパー(スナップ)」を含む他の再利用可能な固定手段)を使用することにより、固定強度又は機能性を失うことなく酸素濃度計の繰り返しの取り外し及び再取り付けが容易になる。
【0097】
図8に示す別の実施形態では、取り付け手段を設けるために、ストラップ自体を形成する基板を形成することができる。1つ又はそれ以上のスロット96aがストラップの一方の端部に設けることができ、他方の端部は狭められて矢じり部96bを備える。動作中、ストラップを患者の周りに通し、矢じり状端部をスリットのいずれか一方を貫通して滑らせて、患者の周りにストラップを保持するのに十分に徐々に締め付けることができる。特に大きなデバイスにおいて適切な場合には、スロット及び矢じり状インサートの2つ又はそれ以上のペアを用いてもよいことは明らかである。
【0098】
この形態の取り付けは、取り付け手段を提供するためにストラップに追加の構成部品を取り付ける必要はない。代わりにストラップは、簡単な連続工程での製造中に、単にシート又はロールから切断して形作ることができる。
【0099】
別の実施形態では、ストラップの一部を接着剤で予めコーティングし、動作中にこのストラップの当該部分が患者の周りに配置されたときにストラップの外面に貼り付けることができるようにしてもよい。これにより、直接患者に接着剤を塗布することが回避される。
【0100】
以上の説明はパルス酸素濃度計を対象としてきたが、これに伴う技術は、より広範なデバイス及び用途に適用し得ることは勿論である。
【0101】
特に、所定のデバイスのOLEDの数は、3つ又はそれ以上に増やしてもよく、各々が異なる波長で発光して、患者の別の特性を検出するように適合された別のセンサを提供するようにする。
【0102】
次に、第3の波長の光源を用いて、例えば米国特許第4,167,331号に記載された技術で3つの連立方程式を解くことによって、血中の他の成分(例えば一酸化炭素又はビリルビン)の濃度を測定することができる。CO及びビリルビンの検出は、668nmで発光するデバイスに基づく。このような発生源は、ポリ([9,9−ジヘキシル−2,7−ビス(1−シアノビニレン)フルオレニレン]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン])(「ポリ−CFD」)をベースとすることができる。この化合物は、HW Sands Ltdからカタログ番号OHA2212として入手可能である。OLEDは、以下の構造を有する。
・アノード(例えばITO/PEDOT);
・ポリマー(上述のようなポリ−CFD)(例えば500nm)
・カソード(例えばカルシウム/マグネシウム)(100nm)
【0103】
結果として得られたOLEDは、約668nmで発光する。上述のパルス酸素濃度計50に関して例えば2つのOLEDと共にこのような発光体を用いることによって、血流中の一酸化炭素(CO)レベル用の検出器を提供することができる。
【0104】
別の実施形態では、部位内への色素注入を伴う良く知られた技術を用いて、心拍出量測定用のセンサを提供する。注入部位の上流及び下流の色素濃度を測定して比較することにより、心拍出量及び流量を求めることができる。これは、フィックの原理として知られている。
【0105】
幾つかのこのような色素は、668nmで光を吸収するメチレンブルーを含む。パルス酸素濃度計におけるような2つのOLEDを含むセンサを668nmで発光する第3のOLEDと組合せて構成することによって、メチレンブルーの濃度、従って心流量を求めることができる。
【0106】
光検出器に影響を与える他の発生源からの入射迷光を防ぐために、適切な遮光層を光源及び/又は検出器の背部の周りに設けることができる。この層は、OLED及び検出器の後方からの入射光を遮断するために、例えばOLEDの背部に堆積された遮光層、或いはOLEDに取り付けられた別個の物理的部材又は使用中にOLEDの周りを単に緩く包む別個の物理的部材のような、どのような好適な形態をもとることができる。遮光は、検出器が感知する波長を少なくとも遮断するのに十分である必要がある。
【0107】
ここで別の実施形態の図9及び図10を参照すると、フレキシブル光源は、所定の波長、すなわち治療価値を有する選択された波長の光で身体の一部分を照射するために設けられる。フレキシブル光源は、OLED106の形態とすることができる。このような用途では、OLEDの領域は通常、例えばパルス酸素濃度計で用いられた領域よりも通常はるかに大きいものとなる。これは、多くの場合患者の身体のやや大きめの部分を照射するのが適切となることに起因する。しかしながら、高度に局部的な治療では、より小さな光源を用いることができるのは言うまでもない。従ってフレキシブル光源は、様々な治療に好適なようにあらゆる寸法で容易に製造することができる。
【0108】
フレキシブル光源を使用すると、患者を大きく扱いにくい光源の近傍に固定したままの状態にする必要がなく、軽量でフレキシブル且つ携帯可能な新規のデバイスを身体部位111全体又は周りに比較的近接して巻き付けるか、又は他の方法で取り付けることができ、治療中に患者が容易に持ち歩くことができる利点がある。
【0109】
このような1つの特定の用途は、限定ではないが乾癬を含む皮膚状態のためのUV光治療用である。本発明者らは、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](PFO−BD)が、UV OLED発光体(HW Sands Ltdからカタログ番号OPA3191で入手可能)であり、溶液からキャストされると369nm及び392nmで発光することに注目している。従って、以下の構造を有するフレキシブルOLEDを構成することができる。
・アノード(例えばITO/PEDOT)
・PFO−BD(例えば500nm)
・カソード(例えばカルシウム又はマグネシウム100nm)
【0110】
不要な方向のUV光の漏洩を防ぐために、遮光層、任意的に反射層を光源の背部の周りに設けることができる。該層は、OLEDの後方への発光を遮断するために、例えばOLEDの背部上に堆積されたUV遮光層、或いはOLEDに取り付けられた別個の物理的部材又は使用中にOLEDの周りを単に緩く包む別個の物理的部材のような、どのような適切な形態をもとることができる。
【0111】
身体の患部の周りだけに比較的近接して包むことができ、更に治療に必要とされない迷放射を軽減するこのようなフレキシブル光源を提供することによって、光源からのUV迷光による目の損傷の危険を有意に低減させることができる。また、身体部位の周りにほぼ均一に近接して光源を配置することができることによって、患部全体又は周りからより遠くに位置付けられた従来のUVランプを用いて可能とすることができる以上に、患部全体に対してより均一なカバレージを一貫して得ることができる。
【0112】
次に光線力学治療での用途を考えると、使用される1つの色素は、630nmで光を吸収するPhotofrinである。従って、照射体として使用された約630nmで発光する赤色発光OLEDは、治療を行うのに適切な波長で発光する。パルス酸素濃度計実施形態と共に上述のDCMドープOLEDは、Photofrinと共に光線力学治療用に用いることもできるこのような1つのOLEDである。
【0113】
光線力学治療に用いることができる他の色素は、例えば、680nmで吸収するベンゾポルフィリン誘導体(BPD)が含まれる。この場合には上述したもののような深赤色発光体(約668nm)が必要とされる。
【0114】
これらの実施形態は、腫瘍部位の周りのあらゆる角度からの近接照射及び光透過を可能にする、これらのラップアラウンド設計によって腫瘍部位に対するより深い光の透過を可能にすることができる。
【0115】
このような医療用光源の別の利点は、OLEDが、治療に使用される従来型のランプと比較して比較的狭いスペクトルにわたって発光することである。従って光源としてOLEDを使用することにより、治療中に患部に配光される不要な発光のレベルを軽減するのに役立つ。特に、既知の光源と比較して付随的な赤外発光を軽減させることができる。これは、過剰な赤外暴露が別の健康組織を損傷する可能性があるので患者に対して有利である。
【0116】
LEDではなくOLEDの使用により可能とされる別の特徴は、LEDに関連するより狭い発光角度と比較して、OLEDがほぼ180度の照射角を提供することである。結果として、OLEDを用いたデバイスの患者に対する正確な位置合わせはあまり重要ではなく、これ自体がモニタリングセンサの周縁効果の影響を軽減するのに役立つ。
【0117】
しかしながら周縁効果は、センサのOLEDの形状を調整することによって更に軽減することができ、その結果、これらの発光領域は、実際には、これらが例えばOLEDの格子配置、交互配置、又は螺旋交互配置を用いて極めて近接して位置する領域、或いは好ましくは実質的に同一の広がりを有する領域にわたって効果的に発光するような方法で実質的にインターリーブされるようになる。これは、各々が2つ又はそれ以上のそれぞれの波長の1つで発光するように選択される、2つ又はそれ以上のOLEDを含む多くのレイアウトのいずれか1つによって達成することができる。このようなレイアウトの実施例は、図11(a)−(e)に示され、それぞれ以下のように示される。
・4つのOLED81a−84aを用いた2つの波長の格子配置;
・2つのOLED81b−82bを用いた2つの波長の螺旋配置;
・2つのOLED81c−82cを用いた2つの波長の交互櫛形配置;
・4つのOLED81d−84dを用いた4つの波長の螺旋配置;
・6つのOLED81e−86eを用いた各波長が3つずつである2つの波長の配置;
【0118】
当業者には明らかであるように、多くの他の構成が可能である。周縁効果の軽減により、患者に対するデバイスの正確な位置合わせをあまり重要とせず、従ってより信頼性が高く、あまり時間がかからないようになる。
【0119】
OLEDの微細構成におけるこのフレキシビリティは、複数の分離した領域で単一波長の発光OLEDを形成することができ、同じ波長の発光体を電気的に互いに結合して単一のOLEDとしてこれらが動作できるようにすることによって更に強向上する。OLED81(a)がOLED83(a)に結合され、OLED82(a)がOLED84(a)に結合されるときの1つのこのような適切な構成の実施例を図11(a)に示す。図11(e)は、3つの結合したOLEDからなる2つのグループの構成を示している。
【0120】
本明細書で与えられたあらゆる範囲及びデバイスの値は、本明細書の教示を理解するために当業者には明らかであるように、求められた効果を失うことなく拡張又は変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1a】従来技術によるセンサの実施例の概略図を示す。
【図1b】本発明によるセンサの実施例の概略図を示す。
【図2a】本発明による有機発光ダイオードの実施例の構造体の概略図を示す。
【図2b】本発明による有機発光ダイオードの実施例の構造体の概略図を示す。
【図2c】本発明による有機発光ダイオードの実施例の構造体の概略図を示す。
【図3a】本発明によるOLED発光の波長シフトの概略的なグラフを示す。
【図3b】本発明によるOLED発光の波長シフトの概略的なグラフを示す。
【図3c】本発明によるOLED発光の波長シフトの概略的なグラフを示す。
【図4】本発明による有機発光ダイオードの別の実施例の構造体の概略図を示す。
【図5a】本発明による例示的な光検出器の構造体の概略図を示す。
【図5b】本発明による例示的な光検出器の構造体の概略図を示す。
【図5c】本発明による例示的な光検出器の構造体の概略図を示す。
【図5d】本発明による例示的な光検出器の構造体の概略図を示す。
【図5e】本発明による例示的な光検出器の構造体の概略図を示す。
【図6】本発明による第1のセンサ構成の概略図を示す。
【図7】動作中の本発明によるセンサの概略図を示す。
【図8】本発明による第2のセンサ構成の概略図を示す。
【図9】本発明による治療光源の実施例を示す。
【図10】動作中の本発明による治療光源の概略図を示す。
【図11a】本発明によるフレキシブル光源レイアウトの概略図を示す。
【図11b】本発明によるフレキシブル光源レイアウトの概略図を示す。
【図11c】本発明によるフレキシブル光源レイアウトの概略図を示す。
【図11d】本発明によるフレキシブル光源レイアウトの概略図を示す。
【図11e】本発明によるフレキシブル光源レイアウトの概略図を示す。
【符号の説明】
【0122】
51 キャリア
52 検出器
53、54 OLED
55 コネクタ
56a 固定具
61 身体部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル基板のそれぞれの領域上に形成された1つ又はそれ以上のフレキシブル発光ダイオードを含む医療用光源。
【請求項2】
前記フレキシブル発光ダイオードが、単一のフレキシブル基板上に形成されることを特徴とする前記いずれかの請求項に記載の医療用光源。
【請求項3】
動作中に前記光源から光が照射されることになる患者の身体の一部分に対して前記光源が共形となることができる程十分にフレキシブルであるように配置されることを特徴とする前記いずれかの請求項に記載の医療用光源。
【請求項4】
前記フレキシブル発光源が、有機発光ダイオードを含むことを特徴とする前記いずれかの請求項に記載の医療用光源。
【請求項5】
前記フレキシブル発光ダイオードが、ヒト又は動物の身体の病状の診断又は治療に適切な波長で発光することを特徴とする前記いずれかの請求項に記載の医療用光源。
【請求項6】
前記フレキシブル発光ダイオードが、スペクトルの赤色から赤外領域内で発光することを特徴とする前記いずれかの請求項に記載の医療用光源。
【請求項7】
フレキシブル発光ダイオードが、スペクトルの近赤外領域内で発光することを特徴とする前記いずれかの請求項に記載の医療用光源。
【請求項8】
フレキシブル発光ダイオードが、スペクトルの非可視領域内で発光することを特徴とする前記いずれかの請求項に記載の医療用光源。
【請求項9】
互いに異なる波長で発光するように配置された複数のフレキシブル発光ダイオードを含むことを特徴とする前記いずれかの請求項に記載の医療用光源。
【請求項10】
互いに異なる波長で発光するように配置された少なくとも2つの発光ダイオードを含み、前記発光ダイオードは、これらの異なる波長における光が、これらの波長で発光する前記発光ダイオードによって定められる領域の総和全体にわたって実質的に均一に発光するように配置されることを特徴とする前記いずれかの請求項に記載の医療用光源。
【請求項11】
動作中に1つ又はそれ以上のフレキシブル発光ダイオードから放出された光を検出するように配置された光検出器を含むことを特徴とする前記いずれかの請求項に記載の医療用光源。
【請求項12】
患者の身体又はその周りに前記医療用光源を取り付けるための取り付け手段を含むストラップを備えることを特徴とする前記いずれかの請求項に記載の医療用光源。
【請求項13】
前記フレキシブル基板がストラップを形成することを特徴とする12に記載の医療用光源。
【請求項14】
前記取り付け手段が、マジックテープ手段、矢じり及びスロット手段、及び自動接着手段のうちの1つであることを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の医療用光源。
【請求項15】
前記発光ダイオードは、三重項発光体を含むことを特徴とする前記いずれかの請求項に記載の医療用光源。
【請求項16】
前記発光ダイオードは、光源内で放出された光を第1の波長から第2の波長に波長シフトするように配置された1つ又はそれ以上の構成部品を含むことを特徴とする前記いずれかの請求項に記載の医療用光源。
【請求項17】
蛍光発光体を含み、前記波長シフトが前記蛍光発光体を用いて少なくとも部分的に行われることを特徴とする請求項16に記載の医療用光源。
【請求項18】
波長シフト格子を含み、前記波長シフトが前記波長シフト格子を用いて少なくとも部分的に行われることを特徴とする請求項16から請求項17のいずれか1項に記載の医療用光源。
【請求項19】
微小空洞を含み、前記波長シフトが前記微小空洞を用いて少なくとも部分的に行われることを特徴とする請求項16から請求項18のいずれか1項に記載の医療用光源。
【請求項20】
前記第2の波長が、前記微小空洞の調整によって決定されることを特徴とする請求項19に記載の医療用光源。
【請求項21】
前記微小空洞は、前記発光ダイオードの平面にほぼ垂直に第3の波長で発光するように調整されることを特徴とする請求項20に記載の医療用光源。
【請求項22】
フレキシブル基板のそれぞれの領域上に形成された1つ又はそれ以上のフレキシブル光検出器を含む医療用センサ。
【請求項23】
請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の医療用光源を備え、前記1つ又はそれ以上のフレキシブル光検出器の少なくとも1つは、動作中、前記フレキシブル発光ダイオードの少なくとも1つによって放出された光を検出するように配置されることを特徴とする請求項22に記載の医療用センサ。
【請求項24】
時間インターリーブ基準に基づいて発光するように配置された2つ又はそれ以上のフレキシブル発光ダイオードを備えることを特徴とする請求項23に記載の医療用センサ。
【請求項25】
動作中、ヒト又は動物の身体の酸素、一酸化炭素、及びビリルビンのうちの少なくとも1つのレベルの診断に好適な波長で発光するように配置された複数の医療用光源を備えることを特徴とする請求項22から請求項24のいずれか1項に記載の医療用センサ。
【請求項26】
前記光検出器は、有機光起電力検出器であることを特徴とする請求項22から請求項25のいずれか1項に記載の医療用センサ。
【請求項27】
後続の光パルスが発光される前に許容可能レベルまで発光が確実に低下するよう計算された時間期間の間、前記三重項発光体が活性化されるように、所定のパルス時間期間を有するパルスモードで請求項15に記載の医療用光源を動作する方法。
【請求項28】
前記所定のパルス時間期間は、25ms以下であることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
パルスモードにおいて、発光パルスのタイミングが、前記センサが取り付けられる患者のパルスタイミングの指示に応答して決定されることを特徴とする請求項22から請求項26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
添付図面を参照して上述の説明で実質的に記載されたような医療用光源。
【請求項31】
添付図面を参照して上述の説明で実質的に記載されたような医療用センサ。
【請求項32】
スペクトルの青色領域で発光するように配置された有機発光ダイオードと、
前記有機発光ダイオードからの青色発光を前記スペクトルの赤外領域の発光に変換するように配置された波長変換層と、
を含む有機発光ダイオード装置。
【請求項33】
前記波長変換層が、蛍光体ベースの化合物を含むことを特徴とする請求項32に記載の有機発光ダイオード装置。
【請求項34】
前記波長変換層が、赤外エッジフィルタを含むことを特徴とする請求項32から請求項33のいずれか1項に記載の有機発光ダイオード装置。
【請求項35】
添付図面を参照して上述の説明に実質的に記載されたような有機発光ダイオード装置。
【請求項36】
添付図面を参照して上述の説明に実質的に記載されたような有機光起電力検出器装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11(a)】
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【図11(b)】
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【図11(c)】
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【図11(d)】
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【図11(e)】
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【公表番号】特表2007−518467(P2007−518467A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540592(P2006−540592)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004871
【国際公開番号】WO2005/048831
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(501297550)キネティック リミテッド (57)
【Fターム(参考)】