説明

フレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートおよびその製造方法

【課題】本発明の目的は、シリコーン系剥離ライナーを有する両面粘着シートであって、低汚染性および加工性に優れるフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートを提供することにある。
【解決手段】本発明のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートは、基材の両面側に粘着剤層を有する粘着体を有し、さらに前記粘着体の両面側にそれぞれシリコーン系剥離ライナーを有する両面粘着シートであって、前記粘着剤層が炭素数が1〜14の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須の単量体成分とするアクリル系ポリマーを含み、前記粘着体の厚さが60μm以下、120℃にて10分間加熱した際に発生するシロキサンガス量が1ng/cm2以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル印刷回路基板の固定用途に用いる両面粘着シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ハードディスクドライブ(磁気記録装置:HDD)等の製造工程において、フレキシブル印刷回路基板(「FPC」と称する場合がある)を筺体等に固定する用途に、両面粘着シート(両面感圧性接着シート)が一般的に用いられている。
【0003】
中でも、シリコーン系剥離ライナーを有する両面粘着シートは、シリコーン系剥離ライナー中に存在するシリコーン化合物が被着体を汚染したり、該シリコーン化合物がシロキサンガスを発生させて電子部品等を汚染・腐食し、電子機器等の製品の誤作動などを引き起こすという問題を有していた。
【0004】
上記の課題を解決する両面粘着シートとして、シリコーン化合物を有しない非シリコーン系の剥離ライナーを用いて、低汚染性(シリコーン化合物による低汚染性)を向上させたもの(特許文献1参照)が知られている。また、非シリコーン系の剥離ライナーを用い、かつ特定厚みのプラスチックフィルム基材を必須の構成として有することによって、低汚染性と加工性とを両立させた両面粘着シート(特許文献2参照)が知られている。さらに、前記プラスチックフィルム基材の厚みをより薄くすることで、段差追従性を向上させた両面粘着シート(特許文献2参照)も知られている。これらの両面粘着シートに用いられる非シリコーン系の剥離ライナーとしては、例えば、ポリオレフィン系の剥離ライナーやフッ素系の剥離ライナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3901490号明細書
【特許文献2】特開2009−74060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の非シリコーン系の剥離ライナーの中でも、ポリオレフィン系の剥離ライナーは耐熱性や耐溶剤性が比較的低いため、該剥離ライナー上に粘着剤を直接塗布し、乾燥させて粘着剤層を形成する際、その乾燥条件等によっては、前記粘着剤層を剥離ライナーから剥離できない等の問題が発生する場合があった。このような場合、剥離ライナー上に粘着剤層をいったん形成し、該粘着剤層をプラスチックフィルム基材に貼り合わせる方法(転写法)によって両面粘着シートを製造することが困難となる。特に、前記プラスチックフィルム基材の厚みが薄い場合には、製造条件等によっては破断が生じやすいため、プラスチックフィルム基材上に直接粘着剤を塗布して粘着剤層を形成する方法(直写法)によっても両面粘着シートを製造することが困難となることがあり、このような場合には、両面粘着シートの生産性が著しく低下するという問題が生じていた。
【0007】
一方、上記の非シリコーン系の剥離ライナーの中でも、フッ素系の剥離ライナーは、高価であるためにコスト的に不利となる問題を有していた。
【0008】
上述の問題を解決するために、良好な耐熱性や耐溶剤性を有し、比較的低コストで製造可能なシリコーン系剥離ライナーを有しながら、なおかつ低汚染性にも優れる両面粘着シートが求められているのが現状である。また、前記の両面粘着シートには、優れた加工性も求められている。
【0009】
従って、本発明の目的は、シリコーン系剥離ライナーを有する両面粘着シートであって、低汚染性および加工性に優れるフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートを提供することにある。なお、本明細書においては、シリコーン化合物による汚染が低減された性質のことを、「低汚染性」と称する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、基材の両面側に粘着剤層を有する粘着体を有し、さらに前記粘着体の両面側にそれぞれシリコーン系剥離ライナーを有する両面粘着シートであって、粘着剤層を特定組成とし、粘着体厚みを特定範囲とし、さらに加熱した際に発生するシロキサンガス量を特定範囲に制御することによって、低汚染性および加工性に優れるフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、基材の両面側に粘着剤層を有する粘着体を有し、さらに前記粘着体の両面側にそれぞれシリコーン系剥離ライナーを有する両面粘着シートであって、前記粘着剤層が炭素数が1〜14の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須の単量体成分とするアクリル系ポリマーを含み、前記粘着体の厚さが60μm以下、120℃にて10分間加熱した際に発生するシロキサンガス量が1ng/cm2以下であることを特徴とするフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートを提供する。
【0012】
さらに、前記のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートにおいては、前記基材が厚さ10μm以下のプラスチックフィルム基材であり、前記粘着剤層の厚さが20μm以上であることが好ましい。
【0013】
さらに、前記のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートにおいては、前記シリコーン系剥離ライナーが、シリコーン系剥離層を少なくとも有する剥離ライナーであって、前記シリコーン系剥離層の塗布量が0.3g/m2以下であることが好ましい。
【0014】
さらに、前記のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートは、120℃にて10分間加熱した際に発生するアウトガス量が1μg/cm2以下であることが好ましい。
【0015】
さらに、前記のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートは、下記浮き量が1.5mm以下であることが好ましい。なお、浮き量は、両面粘着シートの一方の粘着面を、厚さ0.5mm、幅10mm、長さ90mmのアルミニウム板に貼り合わせた試験片を、直径50mmの丸棒に沿わせて、試験片の長さ方向に両面粘着シート側が外側となるように弧状に曲げた後、両面粘着シートのもう一方の粘着面を、厚さ2mmのポリプロピレン板にポリイミドフィルムを貼り合わせた被着体のポリイミドフィルム側にロールラミネータで圧着し、これを23℃で24時間放置、70℃で2時間加温した後に、被着体表面から浮き上がった試験片端部の高さをいう。
【0016】
さらに、前記のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートにおいては、前記粘着剤層のゲル分率が10〜60%であることが好ましい。
【0017】
さらに、シリコーン系剥離ライナー上に粘着剤組成物を塗布し粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を基材の表面に貼り合わせる工程を少なくとも含む前記のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートはシリコーン系剥離ライナーを有するため、該シリコーン系剥離ライナー上に粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を基材に貼り合わせる方法(転写法)によっても、高い生産性で製造することができる。また、本発明のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートは、シリコーン系剥離ライナーを有する両面粘着シートでありながら、低汚染性に優れ、さらには、良好な加工性を有する。これらの効果により、該両面粘着シートを用いてフレキシブル印刷回路基板を筐体等に固定して製造した製品の生産性、品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートを表す概略断面図である。
【図2】図2は、段差追従性評価に用いたFPCの積層構成を表す説明図(概略断面図)である。
【図3】図3は、段差追従性評価に用いたFPC及び両面粘着シート(評価サンプル)の貼り付け位置を表す説明図(ベースフィルム層側から見た平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のフレキシブル印刷回路基板(FPC)固定用両面粘着シート(以下、「本発明の両面粘着シート」と称する場合がある)は、粘着体を少なくとも有する。さらに、前記粘着体の両側の表面上にそれぞれシリコーン系剥離ライナーを有する。図1は、本発明の両面粘着シートの一例を示す概略断面図である。本発明の両面粘着シート1は、基材21の両面側に粘着剤層22を有する粘着体(剥離ライナー以外の部分)2を有し、さらに、粘着体2の両面側にシリコーン系剥離ライナー3を有する。なお、本発明の「両面粘着シート」は、テープ状のもの、即ち、「両面粘着テープ」も含むものとする。また、「粘着体」とは、両面粘着テープを使用する際に被着体に貼付される部分、即ち、一般的には剥離ライナー以外の部分を表す。
【0021】
[粘着体]
本発明の両面粘着シートにおける粘着体は、前述のように、基材の両面側に粘着剤層を有する積層構造を有している。即ち、上記粘着体は両側の表面が粘着面(粘着剤層表面)となっている両面粘着体である。なお、上記粘着体は、基材及び粘着剤層以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。また、基材と粘着剤層は、直接積層されていてもよいし、中間層などの他の層を介して積層されていてもよい。
【0022】
上記粘着体の厚さは、60μm以下であり、好ましくは10〜60μm、より好ましくは25〜60μm、さらに好ましくは40〜60μmである。粘着体の厚さを60μm以下とすることにより、本発明の両面粘着テープを用いてFPCを固定して製造する製品(例えば、HDDなど)の薄膜化、小型化に有利となる。一方、厚さを10μm以上とすることにより、両面粘着テープの加工性や取り扱い性(ハンドリング性)、接着性が向上する。なお、上記「粘着体の厚さ」とは、粘着体の一方の粘着面から他方の粘着面までの厚さを意味する。
【0023】
(基材)
本発明の両面粘着シートの粘着体における基材は、粘着剤層の支持基材であり、両面粘着シートの加工性、取り扱い性を向上させる役割を担う。上記基材としては、粘着シートの支持体として一般的に使用されるものを用いることができ、例えば、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドなどからなるプラスチックフィルム(プラスチックフィルム基材)、不織布などの繊維系基材、各種の紙などの紙系基材、金属箔などの金属系基材などが挙げられる。中でも、価格、剛性の観点から、プラスチックフィルムが好ましく、より好ましくはポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルムであり、さらに好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)である。なお、基材は、単層の形態を有していてもよく、複層の形態を有していてもよい。
【0024】
また、上記基材の表面には、必要に応じて、粘着剤層との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0025】
上記基材(特に、プラスチックフィルム基材)の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以下(例えば、2〜10μm)が好ましく、より好ましくは4〜8μmである。基材の厚さを10μm以下とすることにより、「段差追従性」が向上する。「段差追従性」(「段差吸収性」ともいう)とは、両面粘着シートを貼付する際に、被着体の有する段差形状に追従しやすい性質をいう。段差追従性が良好であると、例えば、微細なパターンが設けられた被着体(例えば、FPC)に対して、両面粘着シートを貼付する際に、弱い押圧(押し圧)で貼り付けた場合でも、パターン間の狭い間隔にまで粘着剤層が追従して入り込みやすく、被着体に対する接着性が向上する。なお、上記効果は、基材の厚さに対して粘着剤層の厚さが相対的に厚くなることにより得られる。従って、上記基材の厚さを10μm以下とすることにより、微細パターンを有する被着体に対して弱い押圧で貼付した場合であっても、被着体と粘着剤層間に隙間を生じにくい。また、基材の剛性が高くなり過ぎず、貼付後の「浮き」が抑制される。さらに、本発明の両面粘着シートを用いてFPCを固定して製造する製品の小型、薄膜化に有利となる場合がある。一方、基材の厚さを2μm以上とすることにより、両面粘着シートのハンドリング性が向上する。
【0026】
(粘着剤層)
本発明の両面粘着シートの粘着体における粘着剤層は、アクリル系ポリマー(アクリル系重合体)から形成される。即ち、該粘着剤層は、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む。特に限定されないが、上記粘着剤層中のアクリル系ポリマーの含有量は、粘着剤層(100重量%)に対して、80重量%以上(80〜100重量%)が好ましく、より好ましくは90〜99重量%である。
【0027】
上記粘着剤層は、粘着剤層の形成方法によっても異なり、特に限定されないが、アクリル系ポリマーを必須成分とするアクリル系粘着剤組成物、または、アクリル系ポリマーを形成する単量体(モノマー)の混合物(「モノマー混合物」と称する場合がある)又はその部分重合物を必須成分とするアクリル系粘着剤組成物から形成される。特に限定されないが、前者としては、例えば、いわゆる溶剤型の粘着剤組成物などが挙げられ、後者としては、例えば、いわゆる活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物などが挙げられる。該アクリル系粘着剤組成物には、さらに必要に応じて、架橋剤やその他の各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0028】
本明細書において、「粘着剤組成物」には「粘着剤層を形成するための組成物」という意味も含むものとする。また、上記「モノマー混合物」とは、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分のみからなる混合物を意味する。また、上記「部分重合物」とは、上記モノマー混合物の構成成分のうち1又は2以上の成分が部分的に重合している組成物を意味する。
【0029】
上記アクリル系ポリマーは、粘着剤層のベースポリマーとして粘着性を発現する役割を担う。上記アクリル系ポリマーは、炭素数が1〜14の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、「(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル」と称する場合がある)を必須の単量体成分として形成された重合体である。上記アクリル系ポリマーを形成する単量体成分には、(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステルのほか、極性基を含有する単量体(以下、「極性基含有単量体」と称する場合がある)や、(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル、極性基含有単量体以外のその他の単量体成分が含まれていてもよい。なお、上記(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル、極性基含有単量体およびその他の単量体成分は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、上記の「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を表し、他も同様である。
【0030】
上記(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステルは、炭素数が1〜14の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル((メタ)アクリル酸ブチル)、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシルなどが挙げられる。中でも、炭素数が2〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。特に、温度特性(Tg)の観点で、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチルが好ましい。
【0031】
上記の(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステルの含有量は、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、50〜99重量%が好ましく、より好ましくは80〜97重量%、さらに好ましくは90〜95重量%である。含有量を50重量%以上とすることにより、アクリル系ポリマーとしての特性(粘着性など)を発現させやすい。一方、含有量を99重量%以下とすることにより、十分な量の極性基含有単量体を共重合でき、接着性が向上する。
【0032】
特に、本発明の両面粘着シートにおける粘着剤層は、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ブチル及びアクリル酸イソオクチルからなる群から選ばれた少なくとも一種を必須の単量体成分として含み、かつアクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ブチル及びアクリル酸イソオクチルの含有量の合計(合計含有量)が、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量(100重量%)に対して50〜99重量%であるアクリル系ポリマーを含む粘着剤層であることが好ましい。
【0033】
上記極性基含有単量体は、分子内に極性基を有する単量体(特に、エチレン性不飽和単量体)であり、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体(無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有単量体も含む);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどのヒドロキシル基(水酸基)含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル系単量体;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体などが挙げられる。上記極性基含有単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、カルボキシル基含有単量体、ヒドロキシル基含有単量体が好ましく、特に好ましくはアクリル酸(AA)、アクリル酸4−ヒドロキシブチル(4HBA)である。
【0034】
上記極性基含有単量体の含有量は、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量(100重量%)に対して1〜30重量%が好ましく、より好ましくは3〜20重量%である。含有量を1重量%以上とすることにより、アクリル系粘着剤組成物の凝集力が高くなり、せん断接着力や接着力が向上する。一方、含有量を30重量%以下とすることにより、アクリル系粘着剤組成物の凝集力が高くなり過ぎず、粘着剤層の粘着力が向上する。上記の中でも、カルボキシル基含有単量体(特に、アクリル酸)の含有量は、接着性の観点から、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量(100重量%)に対して1〜20重量%が好ましく、より好ましくは3〜10重量%である。また、ヒドロキシル基含有単量体(特に、アクリル酸4−ヒドロキシブチル)の含有量は、架橋性の観点から、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量(100重量%)に対して0.01〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.03〜5重量%である。
【0035】
上記その他の単量体成分は、(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル、極性基含有単量体以外の単量体(特に、エチレン性不飽和単量体)であり、例えば、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの炭素数が15以上の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。また、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどの多官能性単量体が挙げられる。上記その他の単量体成分は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
上記アクリル系ポリマーは、上記の単量体成分を公知乃至慣用の重合方法により重合(共重合)することによって調製することができる。アクリル系ポリマーの重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法や紫外線照射による重合方法などが挙げられるが、中でも、コスト、量産性の観点から、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましい。なお、アクリル系ポリマーの重合に際しては、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤や溶剤など、それぞれの重合方法に応じた適宜な成分を、公知乃至慣用のものの中から適宜選択して使用することができる。
【0037】
上記アクリル系ポリマーの重合に際しては、重合反応の種類に応じて、熱重合開始剤や活性エネルギー線重合開始剤(「光重合開始剤」又は「光開始剤」と称する場合がある)などの重合開始剤を用いることができる。重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
上記光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。光重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量(100重量部)に対して0.01〜0.2重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜0.15重量部である。
【0039】
上記のベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0040】
上記アクリル系ポリマーを溶液重合により重合させる際に用いられる重合開始剤としては、アゾ系開始剤が好ましく、中でも、特開2002−69411号公報に開示されたアゾ系開始剤が特に好ましい。かかるアゾ系開始剤は開始剤の分解物が加熱発生ガス(アウトガス)の発生原因となる成分としてアクリル系ポリマー中に残留しにくいため好ましい。上記アゾ系開始剤としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと称する場合がある)、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(以下、AMBNと称する場合がある)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリアン酸などが例示される。上記アゾ系開始剤の使用量は、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、0.05〜0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜0.3重量部である。
【0041】
上記アクリル系ポリマーを溶液重合により重合する際に用いられる溶剤としては、公知慣用の有機溶剤などを用いることが可能であり、例えば、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤などが使用できる。これらの有機溶剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合使用してもよい。
【0042】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば、30万〜200万が好ましく、より好ましくは60万〜150万、さらに好ましくは70万〜150万である。重量平均分子量を30万以上とすることにより、耐熱性や粘着特性が向上する。一方、重量平均分子量を200万以下とすることにより、塗工性が向上する。上記重量平均分子量は、重合開始剤の種類やその使用量、重合の際の温度や時間の他、モノマー濃度、モノマー滴下速度などによりコントロールすることができる。
【0043】
本発明の両面粘着シートにおける粘着剤層を形成する上記アクリル系粘着剤組成物は、粘着剤層のゲル分率(溶剤不溶分の割合)をコントロールする等の目的で、架橋剤を含有することが好ましい。上記架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。上記架橋剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、イソシアネート系架橋剤を必須の架橋剤として用いることが好ましく、さらにエポキシ系架橋剤を併用することがより好ましい。
【0044】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネ−ト、水素添加キシレンジイソシアネ−ト、水素添加キシリレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。
【0045】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」を用いることができる。
【0046】
アクリル系ポリマーを必須成分とするアクリル系粘着剤組成物の場合には、アクリル系粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.15〜1.05重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜1.05重量部、さらに好ましくは0.2〜0.5重量部である。
【0047】
中でも、上記イソシアネート系架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.15〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜1重量部、さらに好ましくは0.2〜0.5重量部である。含有量を0.15重量部以上とすることにより、被着体に対する粘着剤層の投錨性が向上して、浮き量が小さくなったり、「浮き」の発生が抑制される。一方、含有量を1重量部以下とすることにより、粘着剤層のゲル分率が高くなり過ぎず、粘着剤層の曲げにより発生する反発力が小さく抑えられるため、浮き量が小さくなったり、「浮き」の発生が抑制される。
【0048】
なお、上記イソシアネート系架橋剤は単独で架橋することが多いため、含有量を比較的低く抑える場合には、ゲル分率を制御しにくくなる場合があり、その場合にはエポキシ系架橋剤を添加することが好ましい。エポキシ系架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0〜0.05重量部が好ましく、より好ましくは0〜0.02重量部である。エポキシ系架橋剤の含有量を0.05重量部以下とすることにより、粘着剤層のゲル分率が高くなり過ぎず、粘着剤層の曲げにより発生する反発力が小さく抑えられるため、浮き量が小さくなったり、「浮き」の発生が抑制される。
【0049】
モノマー混合物又はその部分重合物を必須成分とするアクリル系粘着剤組成物の場合には、アクリル系粘着剤組成物中の架橋剤の含有量の好ましい範囲は、前述の「アクリル系ポリマー100重量部」の基準を「アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量100重量部」に置き換えることで表される。即ち、アクリル系粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量100重量部に対して、0.15〜1.05重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜1.05重量部、さらに好ましくは0.2〜0.5重量部である。中でも、イソシアネート系架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量100重量部に対して、0.15〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜1重量部、さらに好ましくは0.2〜0.5重量部である。さらに、エポキシ系架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量100重量部に対して、0〜0.05重量部が好ましく、より好ましくは0〜0.02重量部である。
【0050】
上記アクリル系粘着剤組成物には、前記成分の他、必要に応じて、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤が、本発明の特性を損なわない範囲で含まれていてもよい。
【0051】
上記アクリル系粘着剤組成物は、粘着付与樹脂を実質的に含まないことが好ましい。なお、「実質的に含まない」とは、不可避的に混入する場合は除いて能動的には配合しないことを指し、具体的には、粘着剤層の総重量(100重量%)に対して、粘着付与樹脂の含有量は1重量%未満が好ましく、より好ましくは0.1重量%未満である。上記アクリル系粘着剤組成物が粘着付与樹脂を実質的に含まないことにより、粘着剤層が加熱された際のアウトガスの発生量が抑制される。上記粘着付与樹脂としては、具体的には、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などが例示される。
【0052】
上記粘着剤層の厚さ(基材の片面側の粘着剤層の厚さ)としては、特に限定されないが、20μm以上(例えば、20〜29μm)が好ましく、より好ましくは22〜29μm、さらに好ましくは23〜29μmである。厚さを20μm以上とすることにより、良好な接着性を発揮させやすい。また、段差追従性が向上する。一方、厚さを29μm以下とすることにより、両面粘着シートが厚くなり過ぎず、両面粘着シートを用いてFPCを固定して製造した製品の薄膜化、小型化に有利となる。なお、粘着剤層は単層、複層の何れの形態を有していてもよい。
【0053】
上記粘着剤層のゲル分率は、特に限定されないが、例えば、10〜60%(重量%)が好ましく、より好ましくは10〜50%、さらに好ましくは15〜50%である。ゲル分率を10%以上とすることにより、粘着剤層の凝集力が高くなって凝集破壊の発生が抑制されたり、接着性やリワーク性(剥離時の糊残り抑止性など)が向上する。一方、ゲル分率を60%以下とすることにより、粘着剤層の曲げにより発生する反発力が小さく抑えられ、浮き量が小さくなり、加熱工程を経た場合であっても段差部分などで「浮き」の発生が抑制される。また、段差追従性が向上する。上記ゲル分率は、アクリル系ポリマーのモノマー組成、架橋剤の種類や含有量などにより制御することができる。
【0054】
また、上記ゲル分率(溶剤不溶分の割合)とは、以下の「ゲル分率の測定方法」により算出される値である。
(ゲル分率の測定方法)
本発明の両面粘着シートから粘着剤層:約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工(株)製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とする。なお、該浸漬前重量は、粘着剤層(上記で採取した粘着剤層)と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸との総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸の合計重量も測定しておき、該重量を包袋重量とする。
次に、粘着剤層をテトラフルオロエチレンシートで包み、凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて1週間(7日間)静置する。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とする。
そして、下記の式からゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=(A−B)/(C−B)×100 (1)
(式(1)において、Aは浸漬後重量であり、Bは包袋重量であり、Cは浸漬前重量である。)
【0055】
[剥離ライナー]
本発明の両面粘着シートは、粘着体の両面側にそれぞれ別の剥離ライナー(セパレータ)が設けられた、ダブルセパレータタイプの両面粘着シートである。なお、剥離ライナーは粘着面の保護材として用いられており、被着体に貼付する際に剥がされる。
【0056】
本発明の両面粘着シートにおける剥離ライナーは、シリコーン系剥離層(シリコーン系剥離処理層)を少なくとも有するシリコーン系剥離ライナーである。なお、上記シリコーン系剥離ライナーは、シリコーン系剥離層以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。なお、本発明の両面粘着シートにおけるシリコーン系剥離ライナーは、上記シリコーン系剥離層が粘着体の粘着面(粘着剤層表面)と接するようにして設けられる。
【0057】
上記シリコーン系剥離ライナーとしては、特に限定されないが、例えば、剥離ライナー基材の少なくとも一方の表面にシリコーン系剥離層を有する剥離ライナーが挙げられる。上記剥離ライナー基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などから構成されたプラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0058】
上記の中でも、剥離ライナー基材としては、耐熱性の観点で、ポリエステル系樹脂から構成されたプラスチックフィルム(ポリエステル系フィルム)が好ましく、PETフィルムが特に好ましい。即ち、本発明の両面粘着シートにおける剥離ライナーは、PETフィルムの少なくとも一方の表面にシリコーン系剥離層を有するシリコーン系剥離ライナーであることが好ましい。かかる構成のシリコーン系剥離ライナーは耐熱性や耐溶剤性に優れるため、該剥離ライナー上に粘着剤組成物を直接塗布し、必要に応じて乾燥及び/又は硬化させることによって粘着剤層を形成した場合であっても、前記粘着剤層を剥離ライナーから剥離できない等の不具合が生じにくい。このため、両面粘着シートの転写法による製造が容易であり、特に、より薄手の基材を有し、直写法による製造が困難な場合であっても、高い生産性で両面粘着シートを得ることができる。
【0059】
上記剥離ライナー基材の厚さとしては、特に限定されないが、例えば、25〜100μmが好ましく、より好ましくは38〜75μmである。厚さを25μm以上とすることにより、加工性が向上する。一方、厚さを100μm以下とすることにより、作業性が向上する。
【0060】
上記シリコーン系剥離層は、シリコーン化合物を含む剥離層である。上記シリコーン系剥離層は、特に限定されないが、例えば、シリコーン系剥離処理剤より形成されることが好ましい。上記シリコーン系剥離処理剤としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化性付加型シリコーン系剥離処理剤、熱硬化性縮合型シリコーン系剥離処理剤、紫外線硬化性シリコーン系剥離処理剤、電子線硬化性シリコーン系剥離処理剤等が挙げられる。上記の中でも、基材密着性(剥離ライナー基材に対する密着性)の観点で、熱による付加反応型の架橋反応(硬化反応)により硬化して剥離性被膜を形成し、有用な剥離特性を発揮できる、熱硬化性付加型シリコーン系剥離処理剤(熱硬化性付加型ポリシロキサン系剥離処理剤)が好ましい。
【0061】
上記熱硬化性付加型シリコーン系剥離処理剤は、分子中に官能基としてアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサン(アルケニル基含有シリコーン)、分子中に官能基としてヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサン(ヒドロシリル基含有シリコーン)を必須の構成成分とする。
【0062】
上記アルケニル基含有シリコーンとしては、アルケニル基が主鎖又は骨格を形成しているケイ素原子(例えば、末端のケイ素原子や、主鎖内部のケイ素原子など)に結合している構造を有するポリオルガノシロキサンが好ましく、特に、主鎖又は骨格を形成しているケイ素原子に結合しているアルケニル基を2個以上有しているポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0063】
上記アルケニル基含有シリコーンにおけるアルケニル基としては、例えば、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2−プロペニル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。中でも、ビニル基、ヘキセニル基が好ましい。
【0064】
また、上記アルケニル基含有シリコーンにおける主鎖又は骨格を形成しているポリオルガノシロキサンとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン等のポリアルキルアルキルシロキサン(ポリジアルキルシロキサン)や、ポリアルキルアリールシロキサンの他、ケイ素原子含有モノマー成分が複数種用いられている共重合体[例えば、ポリ(ジメチルシロキサン−ジエチルシロキサン)等]などが挙げられる。中でも、ポリジメチルシロキサンが好ましい。即ち、上記アルケニル基含有シリコーンとしては、具体的には、ビニル基を官能基として有するポリジメチルシロキサン、ヘキセニル基を官能基として有するポリジメチルシロキサン、又はこれらの混合物が好ましい。
【0065】
上記ヒドロシリル基含有シリコーンとしては、主鎖又は骨格を形成しているケイ素原子(例えば、末端のケイ素原子や、主鎖内部のケイ素原子など)に結合している水素原子(特に、Si−H結合を有するケイ素原子)を有しているポリオルガノシロキサンが好ましく、特に、主鎖又は骨格を形成しているケイ素原子に結合している水素原子を2個以上有しているポリオルガノシロキサンが好ましい。また、上記のヒドロシリル基含有シリコーンとしては、具体的には、ポリメチルハイドロジェンシロキサンやポリ(ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン)などが好ましい。
【0066】
上記シリコーン系剥離処理剤は、有機溶剤を含有することが好ましい。即ち、上記シリコーン系剥離処理剤は、溶剤型シリコーン系剥離処理剤であることが好ましい。上記有機溶剤としては、構成成分を均一に溶解できるものであればよく特に限定されないが、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶剤などが挙げられる。有機溶剤は単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0067】
上記シリコーン系剥離処理剤は、触媒(硬化触媒)を含有することが好ましい。上記触媒としては、特に限定されないが、例えば、白金系触媒、錫系触媒などが挙げられる。中でも、塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、塩化白金酸のオレフィン錯体から選ばれた少なくとも1つの白金系触媒が好ましい。上記白金系触媒としては、例えば、商品名「PL−50T」(信越化学工業(株)製)などの市販品を用いることもできる。
【0068】
上記シリコーン系剥離処理剤は、室温における保存安定性を付与するために反応抑制剤を含有していてもよい。例えば、3,5−ジメチル−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−インなどの反応抑制剤が使用できる。
【0069】
また、上記シリコーン系剥離処理剤は、上記成分の他にも必要に応じて、剥離コントロール剤等を含有していてもよい。例えば、MQレジンなどの剥離コントロール剤、アルケニル基又はヒドロシリル基を有しないポリオルガノシロキサン(トリメチルシロキシ基末端封鎖ポリジメチルシロキサンなど)等を含んでいてもよい。上記剥離コントロール剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、主剤(例えば、熱硬化性付加型シリコーン系剥離処理剤の場合には、アルケニル基含有シリコーン及びヒドロシリル基含有シリコーン)に対して、1〜30重量%が好ましい。
【0070】
さらに、上記シリコーン系剥離処理剤は、必要に応じて、各種添加成分(添加剤)を含有していてもよい。上記添加成分としては、特に限定されないが、例えば、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤(染料や顔料など)等が挙げられる。
【0071】
上記シリコーン系剥離処理剤の固形分濃度としては、特に限定されないが、例えば、0.1〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜2重量%である。固形分濃度を0.1重量%以上とすることにより、安定して剥離処理ができる。一方、固形分濃度を5重量%以下とすることにより、シリコーン系剥離処理剤を薄層塗布できる。シリコーン系剥離処理剤を薄層塗布することにより、シリコーン化合物の粘着剤層への移行を抑制することができる。
【0072】
上記シリコーン系剥離層は、特に限定されないが、例えば、上記シリコーン系剥離処理剤を、剥離ライナー基材の表面に塗布(塗工)した後、乾燥及び/又は硬化させる方法によって形成することができる。
【0073】
上記シリコーン系剥離層を形成する際のシリコーン系剥離処理剤の塗布量は、特に限定されないが、例えば、シリコーン系剥離処理剤の固形分換算で0.3g/m2以下(例えば、0.02〜0.3g/m2)が好ましく、より好ましくは0.05〜0.2g/m2、さらに好ましくは0.05〜0.15g/m2である。上記塗布量を0.3g/m2以下とすることにより、粘着面に付着したり、粘着剤層に吸収されるシリコーン化合物(特に低分子量のシリコーン化合物)の量が低減し、シロキサンガスの発生を抑制することができる。一方、塗布量を0.02g/m2以上とすることにより、十分な剥離力を発揮することができる。
【0074】
上記シリコーン系剥離処理剤の塗布(塗工)に際しては、慣用の塗工機(例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いることができる。
【0075】
上述のように、シリコーン系剥離処理剤を剥離ライナー基材の表面に塗布した後、乾燥及び/又は硬化させる際の加熱条件としては、特に限定されないが、例えば、100℃以上(例えば、100〜170℃)で1分以上(例えば、1〜3分)が好ましく、より好ましくは120〜150℃で1〜2分である。上記加熱条件にて乾燥及び/又は硬化させると、シリコーン系剥離層の剥離ライナー基材への密着性が上がるため、シロキサンガスの発生が抑制される。
【0076】
さらに、特に限定されないが、上記乾燥及び/又は硬化させた後には、エージング(養生)を施すことが好ましい。エージングの条件としては、特に限定されないが、例えば、20〜40℃で12〜72時間が好ましい。上記条件にてエージングすることにより、硬化度が上がり、シロキサンガスの発生が抑制される。
【0077】
上記方法により、剥離ライナー基材の少なくとも一方の表面にシリコーン系剥離層を形成することによって、本発明の両面粘着シートにおけるシリコーン系剥離ライナーを製造することができる。
【0078】
上記シリコーン系剥離ライナーにおけるシリコーン系剥離層(剥離ライナー基材の一方の表面側のシリコーン系剥離層)の塗布量は、特に限定されないが、例えば、0.3g/m2以下(例えば、0.02〜0.3g/m2)が好ましく、より好ましくは0.05〜0.2g/m2、さらに好ましくは0.05〜0.15g/m2である。上記塗布量を、0.3g/m2以下とすることにより、粘着面に付着したり、粘着剤層に吸収されるシリコーン化合物(特に低分子量のシリコーン化合物)の量が低減し、シロキサンガスの発生を抑制することができる。一方、上記塗布量を、0.02g/m2以上とすることにより、十分な剥離力を発揮することができる。なお、上記「シリコーン系剥離層の塗布量」は、「シリコーン系剥離層の単位面積(1m2)当たりの重量」という場合もある。
【0079】
[両面粘着シートの特性等]
本発明の両面粘着シートの、後述の測定方法により測定される、120℃にて10分間加熱した際に発生するシロキサンガス量(「シロキサンガス発生量」と称する場合がある)は、1ng/cm2以下であり、より好ましくは0.8ng/cm2以下、さらに好ましくは0.4ng/cm2以下である。一般に、両面粘着シートから発生するシロキサンガスが少ないことは、該シロキサンガスの発生源となるシリコーン化合物(特に、低分子量シリコーン化合物)が少ないこと、即ち、両面粘着シートの粘着面に付着したり粘着剤層中に吸収されているシリコーン化合物が少ないことを表す。このような場合、両面粘着シートを用いた製品における被着体や電子部品等のシリコーン化合物による汚染が抑制される。このため、上記のシロキサンガス発生量を特に1ng/cm2以下とした場合には、シロキサンガスおよびシリコーン化合物に起因する電子部品等の汚染が効果的に抑制され、電子機器等の製品の誤作動等の不具合発生が抑止される。
【0080】
上記シロキサンガス発生量は、シリコーン系剥離処理剤の組成、シリコーン系剥離処理剤の塗布量、シリコーン系剥離層形成時の加熱条件等によって制御することができる。
【0081】
本発明の両面粘着シートのシロキサンガス発生量は、両面粘着シートの両側のシリコーン系剥離ライナーを剥離して、粘着体のいずれか一方の粘着面に裏打ち材としてPETフィルムを貼付した後、裏打ち材を設けていない粘着面側から発生するシロキサンガスの量を測定することによって求めることができる。さらに詳細には、後述の(評価)の「(1)シロキサンガス量(シロキサンガス発生量)」に記載の方法で測定することができる。なお、本発明の両面粘着シートにおいては、いずれの側の粘着面を測定面とした場合にも、シロキサンガス発生量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0082】
本発明の両面粘着シートの、後述の測定方法により測定される、120℃にて10分間加熱した際に発生するアウトガス量(トータルアウトガス量:アウトガスの全発生量)は、1μg/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは0.8μg/cm2以下、さらに好ましくは0.7μg/cm2以下である。上記アウトガス量が1μg/cm2以下であると、両面粘着シートを電子機器(例えば、ハードディスクドライブ)などにおけるFPCの固定用途に用いた場合でも、アウトガス成分に起因して電子機器の腐食や誤作動を起こすおそれがなく、長期信頼性に優れる。一般的にこれらのアウトガスは、剥離ライナーのシリコーン系剥離処理剤や粘着剤層中の未反応モノマー成分などに由来するため、本発明においては、例えば、両面粘着シートからのシロキサンガス発生量を制御することによりアウトガスを低減できる。また、アクリル系ポリマーの重合開始剤の種類、分子量等を上記好ましい範囲に制御することによっても低減させることができる。上記両面粘着シートのアウトガス量は、両面粘着シートから両側のシリコーン剥離ライナーを剥離して、粘着体のいずれか一方の粘着面に裏打ち材としてPETフィルムを貼付した後、裏打ち材を設けていない粘着面側から発生するアウトガスの量を測定することによって求めることができる。さらに詳細には、後述の(評価)の「(2)アウトガス量」に記載の方法で測定することができる。なお、本発明の両面粘着シートにおいては、いずれの側の粘着面を測定面とした場合にも、アウトガス量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0083】
本発明の両面粘着シートの浮き量は、1.5mm以下であることが好ましく、より好ましくは0〜1mm、さらに好ましくは0〜0.8mmである。上記浮き量を1.5mm以下とすることにより、特にフレキシブル印刷回路基板固定用途においては、加温時や加熱時であっても耐反発性に優れるため、FPCを両面粘着テープを介して被着体に貼付後、加熱又は加温される場合にも、FPCの「浮き」が生じにくい。なお、「耐反発性」とは、被着体の段差部分等において加えられる曲げなどの変形に対して、反発力を生じにくい特性をいう。
上記浮き量とは、両面粘着シート(幅10mm、長さ90mm)の一方の粘着面を、厚さ0.5mm、幅10mm、長さ90mmのアルミニウム板の片面側の全面に貼り合わせて作製した試験片を、直径50mmの丸棒に沿わせて、試験片の長さ方向に両面粘着シート側が外側となるように弧状に曲げた後、該試験片における両面粘着シートのもう一方の粘着面を、被着体(厚さ2mmのポリプロピレン板にポリイミドフィルムを貼り合わせた平板)のポリイミドフィルム側にロールラミネータで圧着し、これを23℃で24時間放置、70℃で2時間加温した後に、被着体表面から浮き上がった試験片端部の高さをいう。より詳細には、上記浮き量は、後述の(評価)の「(5)浮き量(70℃×2時間)」に記載の方法で測定することができる。なお、本発明の両面粘着シートにおいては、いずれの側の粘着面をアルミニウム板に貼り合わせて測定した場合にも、浮き量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0084】
本発明の両面粘着シートにおいては、粘着体の一方の粘着面に設けられているシリコーン系剥離ライナーと粘着体との剥離力と、もう一方の粘着面に設けられているシリコーン系剥離ライナーと粘着体との剥離力は異なることが好ましい。これによって、作業性(剥離作業性など)が向上するため好ましい。剥離力が小さい側(軽剥離側)のシリコーン系剥離ライナーと粘着体の剥離力(「軽剥離側の剥離力」と称する場合がある)は、0.01〜0.3N/50mmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.3N/50mm、さらに好ましくは0.1〜0.3N/50mmである。一方、剥離力が大きい側(重剥離側)のシリコーン系剥離ライナーと粘着体の剥離力(「重剥離側の剥離力」と称する場合がある)は0.1〜2N/50mmが好ましい。軽剥離側の剥離力と重剥離側の剥離力の差(剥離力差)[(重剥離側の剥離力)−(軽剥離側の剥離力)]は、0.05N/50mm以上が好ましく、より好ましくは0.1〜1N/50mmである。なお、上記「剥離力」とは、JIS Z0237(2000)に準拠して180°剥離試験により測定される、粘着体に対する剥離ライナー(シリコーン系剥離ライナー)の180°引き剥がし粘着力を意味する。
【0085】
本発明の両面粘着シートは、フレキシブル印刷回路基板(FPC)を被着体に固定する用途に用いられる両面粘着シート(フレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シート)である。本発明の両面粘着シートを介して、FPCを固定する被着体は、特に限定されないが、例えば、携帯電話の筐体、モーター、ベース、基板、カバーなどが挙げられる。また、本発明の両面粘着シートを介して、FPCを上記の被着体に貼付固定することにより、ハードディスクドライブ、携帯電話、モーターなどが製造される。中でも、本発明の両面粘着シートは、特にシリコーン化合物による汚染が少ないことが要求される、ハードディスクドライブの製造用途に用いられることが好ましい。上述のように、本発明の両面粘着シートは、両面粘着シートから発生するシリコーン化合物やシロキサンガスによる被着体の汚染が抑制されているため、信頼性に優れた高品質な製品(ハードディスクドライブ等)を得ることができる。
【0086】
上記フレキシブル印刷回路基板(FPC)は、特に限定されないが、電気絶縁体層(「ベース絶縁層」と称する場合がある)と、前記ベース絶縁層上に所定の回路パターンとなるように形成された導電体層(「導体層」と称する場合がある)、および、必要に応じて、前記導体層上に設けられた被覆用電気絶縁体層(「カバー絶縁層」と称する場合がある)から構成される。なお、複数の回路基板が積層された構造の多層構造を有していてもよい。
【0087】
上記ベース絶縁層は、電気絶縁材により形成された電気絶縁体層である。ベース絶縁層を形成するための電気絶縁材としては、特に限定されず、公知のフレキシブル印刷回路基板で用いられている電気絶縁材の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、電気絶縁材としては、例えば、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂など)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミド系樹脂(いわゆる「アラミド樹脂」など)、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、液晶ポリマー等のプラスチック材などが好ましく挙げられる。なお、電気絶縁材は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ポリイミド系樹脂が好適である。ベース絶縁層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。ベース絶縁層の表面には、各種の表面処理(例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、粗面化処理、加水分解処理など)が施されていてもよい。ベース絶縁層の厚みとしては、特に限定されないが、3〜100μmが好ましく、より好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmである。
【0088】
上記導体層は、導電材により形成された導電体層である。導体層は、前記ベース絶縁層上に所定の回路パターンとなるように形成されている。このような導体層を形成するための導電材としては、特に限定されず、公知のフレキシブル印刷回路基板で用いられている導電材の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、導電材としては、例えば、銅、ニッケル、金、クロムの他、各種の合金(例えば、はんだ)や、白金等の金属材や、導電性プラスチック材などが挙げられる。なお、導電材は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、金属材(特に、銅)が好適である。導体層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。導体層の表面には、各種の表面処理が施されていてもよい。導体層の厚みとしては、特に限定されないが、1〜50μmが好ましく、より好ましくは2〜30μm、さらに好ましくは3〜20μmである
【0089】
上記導体層の形成方法としては、特に限定されず、公知の形成方法(例えば、サブトラクティブ法、アディティブ法、セミアディティブ法などの公知のパターニング法)から適宜選択することができる。例えば、導体層がベース絶縁層の表面に直接的に形成されている場合、導体層は、無電解メッキ法、電解メッキ法、真空蒸着法、スパッタリング法などを利用して、所定の回路パターンとなるように、導電材をベース絶縁層上にメッキや蒸着等させることにより、形成することができる。
【0090】
上記カバー絶縁層は、電気絶縁材により形成され且つ導体層を被覆する被覆用電気絶縁体層(保護用電気絶縁体層)である。カバー絶縁層は、必要に応じて設けられ、必ずしも設けられている必要はない。上記カバー絶縁層を形成するための電気絶縁材としては、特に限定されず、ベース絶縁層の場合と同様に、公知のフレキシブル印刷回路基板で用いられている電気絶縁材の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、カバー絶縁層を形成するための電気絶縁材としては、例えば、前記ベース絶縁層を形成するための電気絶縁材として例示の電気絶縁材などが挙げられ、ベース絶縁層の場合と同様に、プラスチック材(特に、ポリイミド系樹脂)が好適である。なお、上記カバー絶縁層を形成するための電気絶縁材は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。カバー絶縁層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。カバー絶縁層の表面には、各種の表面処理(例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、粗面化処理、加水分解処理など)が施されていてもよい。カバー絶縁層の厚みとしては、特に限定されないが、3〜100μmが好ましく、より好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmである。
【0091】
上記カバー絶縁層の形成方法としては、特に限定されず、公知の形成方法(例えば、電気絶縁材を含む液状物又は溶融物を塗布し乾燥させる方法、導体層の形状に対応し且つ電気絶縁材により形成されたフィルム又はシートを積層させる方法など)から適宜選択することができる。
【0092】
[両面粘着シートの製造方法]
本発明の両面粘着シートの製造方法としては、公知の粘着シートの形成方法の中から適宜選択することができ、特に限定されないが、具体的には以下の方法等が例示される。
【0093】
本発明の両面粘着シートの製造方法における基材の両面側への粘着剤層の形成は、例えば、アクリル系ポリマーを必須成分とするアクリル系粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物溶液など)を用いる場合には、アクリル系粘着剤組成物を基材の表面に塗布し、必要に応じて乾燥及び/又は硬化させる方法(直写法)、シリコーン系剥離ライナー上にアクリル系粘着剤組成物を塗布し、必要に応じて乾燥及び/又は硬化させて粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を基材の表面に貼り合わせる方法(転写法)、のいずれによっても行うことができる。
【0094】
また、アクリル系ポリマーを形成する単量体成分の混合物(モノマー混合物)又はその部分重合物を必須成分とするアクリル系粘着剤組成物を用いる場合には、アクリル系粘着剤組成物を基材の表面に直接塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化する方法(直写法)、シリコーン系剥離ライナー上にアクリル系粘着剤組成物を塗布し、活性エネルギー線照射により硬化して粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を基材の表面に貼り合わせる方法(転写法)、のいずれによっても粘着剤層を形成することができる。さらに、必要に応じて、上記粘着剤層を乾燥させてもよい。
【0095】
なお、上記の粘着剤層の形成の際のアクリル系粘着剤組成物の塗布(塗工)には、公知のコーティング方法を用いることができ、慣用の塗工機(例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いることができる。
【0096】
上記の粘着剤層の形成方法によって基材の両面側に粘着剤層を形成し、本発明の両面粘着シートにおける粘着体を製造できる。
【0097】
上記の中でも、本発明の両面粘着シートは、基材の両面側に形成された粘着剤層のうち少なくとも一方の粘着剤層が、シリコーン系剥離ライナー上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を基材の表面に貼り合わせる方法により形成されることが好ましい。即ち、本発明の両面粘着シートの製造方法は、シリコーン系剥離ライナー上に粘着剤組成物を塗布し粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を基材の表面に貼り合わせる工程を少なくとも含むことが好ましい。
【0098】
本発明の両面粘着シートの製造方法の、好ましい具体的態様の一例としては、シリコーン系剥離ライナーのシリコーン系剥離層表面に粘着剤組成物を塗布し、必要に応じて乾燥及び/又は硬化させて粘着剤層を形成し、該粘着剤層を基材の一方の表面に貼り合わせた後、前記基材の他方の表面に粘着剤組成物を塗布し、必要に応じて乾燥及び/又は硬化させて粘着剤層を形成し、さらに、該粘着剤層表面にシリコーン系剥離ライナーを設けて両面粘着シートを製造する方法が挙げられる。当該方法は、薄層(薄手)の基材を使用できるため、特に好ましい。
【0099】
また、本発明の両面粘着シートの製造方法の、好ましい具体的態様の他の一例としては、シリコーン系剥離ライナーのシリコーン系剥離層表面に粘着剤組成物を塗布し、必要に応じて乾燥及び/又は硬化させて粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を基材の両側の表面に貼り合わせて両面粘着シートを製造する方法が挙げられる。なお、当該方法における基材の両側の表面への粘着剤層の貼り合わせは、同時に行ってもよいし、逐次行ってもよい。
【0100】
上述の本発明の両面粘着シートの製造方法によると、例えば、基材が薄く破断しやすいために、該基材上に粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成することが困難な場合にも、高い生産性で両面粘着シートを製造できる。また、基材をより薄くしても両面粘着シートを生産性良く製造できるため、さらに段差吸収性等を向上させた両面粘着シートを得ることができる。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0102】
剥離ライナーの製造例1
商品名「KS−847H」(信越化学工業(株)製、熱硬化性付加型シリコーン、固形分濃度:30重量%)100重量部、商品名「PL−50T」(信越化学工業(株)製、白金系触媒)1重量部を配合し、さらにトルエンを加えて固形分濃度を1重量%としたシリコーン系剥離処理剤(溶剤型シリコーン系剥離処理剤)を得た。
PETフィルム(商品名「ルミラー S10」、東レ(株)製、厚さ50μm)の一方の表面に上記シリコーン系剥離処理剤を、固形分換算の塗布量が0.1g/m2となるように塗布し、オーブンに入れて130℃で1分間乾燥させた。その後、25℃で24時間エージングすることによって、PETフィルムの一方の表面にシリコーン系剥離層(シリコーン系剥離層の塗布量:0.1g/m2)を有するシリコーン系剥離ライナー(以下、「剥離ライナーa」と称する)を得た。なお、下記の両面粘着シートにおいては、剥離ライナーaを軽剥離側(1面側)の剥離ライナーとして使用した。
【0103】
剥離ライナーの製造例2
商品名「KS−3703」(信越化学工業(株)製、熱硬化性付加型シリコーン、固形分濃度:30重量%)90重量部、商品名「X−92−183」(信越化学工業(株)製、剥離コントロール剤、固形分濃度:30重量%)10重量部、商品名「PL−50T」(信越化学工業(株)製、白金系触媒)1重量部を配合し、さらにトルエンを加えて固形分濃度を1重量%としたシリコーン系剥離処理剤(溶剤型シリコーン系剥離処理剤)を得たこと以外は、上記剥離ライナーの製造例1と同様にして、PETフィルムの一方の表面にシリコーン系剥離層(シリコーン系剥離層の塗布量:0.1g/m2)を有するシリコーン系剥離ライナー(以下、「剥離ライナーb」と称する)を得た。なお、下記の両面粘着シートにおいては、剥離ライナーbを重剥離側(2面側)の剥離ライナーとして使用した。
【0104】
剥離ライナーの製造例3
シリコーン系剥離処理剤として、商品名「SP7265S」(東レ・ダウコーニング(株)製、熱硬化型シリコーン)100重量部、商品名「SP7243S」(東レ・ダウコーニング(株)製、白金系触媒)10重量部を配合し、シリコーン系剥離処理剤(無溶剤型シリコーン系剥離処理剤)を得た。
上質ラミネート紙(商品名「LL−50N」、リンテック(株)製)の一方の表面に上記シリコーン系剥離処理剤を塗布量が1g/m2となるように塗布し、オーブンで130℃で1分間乾燥させた。その後、25℃で24時間エージングすることによって、上質ラミネート紙の一方の表面にシリコーン系剥離層(シリコーン系剥離層の塗布量:1g/m2)を有するシリコーン系剥離ライナー(以下、「剥離ライナーc」と称する)を得た。なお、下記の両面粘着シートにおいては、剥離ライナーcを重剥離側(2面側)の剥離ライナーとして使用した。
【0105】
実施例1
アクリル酸n−ブチル:93重量部、アクリル酸:7重量部およびアクリル酸4−ヒドロキシブチル0.05重量部を、酢酸エチルを溶媒(溶剤)として、アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を開始剤として、常法により溶液重合させて、重量平均分子量が150万のアクリル系ポリマー(「アクリル系ポリマー1」と称する)の溶液(固形分濃度:25重量%)を得た。この溶液に、アクリル系ポリマー100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」、固形分濃度75重量%)0.2重量部(固形分換算)、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」)0.01重量部を配合して、粘着剤組成物(溶液)(アクリル系粘着剤組成物)を作製した。
剥離ライナーbのシリコーン系剥離層側の表面に、乾燥後の厚さ(粘着剤層厚さ)が23μmとなるように上記粘着剤組成物を塗布し、130℃で3分間乾燥させて粘着剤層を形成した後、該粘着剤層表面にPETフィルム基材(商品名「ルミラー #5AF53」、東レ(株)製、厚さ:5μm)の一方の表面を貼り合わせた。次いで、前記PETフィルム基材の他方の表面に、乾燥後の厚さが23μmとなるように上記粘着剤組成物を塗布し、130℃で3分間乾燥させて粘着剤層を形成した後、該粘着剤層表面に剥離ライナーaを貼り合わせて、両面粘着シートを得た。
【0106】
比較例1
アクリル酸2−エチルヘキシル:90重量部、アクリル酸:10重量部を、酢酸エチルを溶媒として、過酸化ベンゾイル0.5重量部を開始剤として、常法により溶液重合させて、重量平均分子量が100万のアクリル系ポリマー(「アクリル系ポリマー2」と称する)の溶液(固形分濃度:20重量%)を得た。この溶液に、アクリル系ポリマー100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」、固形分濃度75重量%)2重量部(固形分換算)を配合して、粘着剤組成物(溶液)(アクリル系粘着剤組成物)を作製した。
剥離ライナーcのシリコーン系剥離層側の表面に、乾燥後の厚さ(粘着剤層厚さ)が50μmとなるように上記粘着剤組成物を塗布し、130℃で3分間乾燥させて粘着剤層を形成した。次いで、前記粘着剤層表面に剥離ライナーaを貼り合わせて、両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
【0107】
比較例2
剥離ライナーcを剥離ライナーbに変更したこと以外は、比較例1と同様にして、両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
【0108】
(評価)
実施例および比較例で得られた両面粘着シートについて、下記の測定方法又は評価方法により測定又は評価した。なお、粘着剤層のゲル分率は、前述の方法によって測定した。測定又は評価結果は表1に示した。
【0109】
(1)シロキサンガス発生量
実施例および比較例で得られた両面粘着シートから軽剥離側の剥離ライナーを剥離して粘着面上にPETフィルム(東レ(株)製、商品名「ルミラー S−10」、厚み25μm)を貼付した。その後、上記の片面にPETフィルムを貼付した両面粘着シートを、幅1cm、長さ7cmのサイズに切断した後、重剥離側の剥離ライナーを剥離して、測定サンプルとした。
パージ&トラップヘッドスペースサンプラーにより、上記測定サンプルを120℃で10分間加熱し、発生したガスをトラップした後、このトラップされた成分について、ガスクロマトグラフ/質量分析計による測定を行った。前記成分中のシロキサンガス(検出されたD3〜D6(環状シロキサン))の量を、D3〜D6標準により作成した検量線を用いて算出した。これをPETフィルムを貼付していない粘着剤層の単位面積当たりの値に換算し、シロキサンガス発生量(単位:ng/cm2)を求めた。
なお、上記のD3〜D6標準による検量線は、D3〜D6の溶液(濃度:1ng/μg、10ng/μg)をマイクロシリンジで加熱容器に注入し(注入量:1μl)、発生したガスをトラップして、前記のガスをガスクロマトグラフ/質量分析計で測定することによって作成した。
【0110】
(2)アウトガス量
実施例および比較例で得られた両面粘着シートから軽剥離側の剥離ライナーを剥離して粘着面上にPETフィルム(東レ(株)製、商品名「ルミラー S−10」、厚み25μm)を貼付した。その後、上記の片面にPETフィルムを貼付した両面粘着シートを、幅1cm、長さ7cmのサイズに切断した後、重剥離側の剥離ライナーを剥離して、測定サンプルとした。
パージ&トラップヘッドスペースサンプラーにより、上記測定サンプルを120℃で10分間加熱し、発生したガス(アウトガス)をトラップした後、このトラップされた成分について、ガスクロマトグラフ/質量分析計による測定を行った。発生したガスの量はn−デカン標準による換算値として求め、PETフィルムを貼付していない粘着剤層の単位面積当たりの値に換算し、アウトガス量(120℃にて10分加熱した際に発生するアウトガス量)(単位:μg/cm2)を算出した。
【0111】
(3)粘着力
実施例および比較例で得られた両面粘着シートから、幅20mm、長さ150mmの短冊状のサンプルを作製した。
引張試験機を用いて、JIS Z0237(2000)に準拠して180°剥離試験を行い、試験板(SUS304BA鋼板)に対する180°引き剥がし(ピール)強度(N/20mm)を測定し、「粘着力」とした。
試験板とサンプルの貼付は、両面粘着シートから軽剥離側の剥離ライナーを剥離して厚さ25μmのPETフィルムを貼付(裏打ち)した後、重剥離側の剥離ライナーを剥離して試験板と重ね合わせ、2kgのゴムローラー(幅:約45mm)を1往復させることにより行った。
測定は、23℃、50%RHの雰囲気下、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で行った。試験回数(n数)は3回とし、平均値を算出した。
【0112】
(4)剥離ライナーの剥離力
実施例および比較例で得られた両面粘着シートから、幅50mm、長さ150mmの短冊状のシート片を切り出し、軽剥離側の剥離力測定用の測定サンプルとした。重剥離側の剥離力を測定する場合には、軽剥離側の剥離ライナーを剥離して厚さ25μmのPETフィルムを貼付(裏打ち)したものを測定サンプルとした。
引張試験機を用いて、JIS Z0237(2000)に準拠して180°剥離試験を行い、剥離ライナーの180°引き剥がし(ピール)強度(N/50mm)を測定し、「剥離ライナーの剥離力」とした。
測定は、23℃、50%RHの雰囲気下、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で行った。試験回数(n数)は3回とし、平均値を算出した。
なお、重剥離側の剥離ライナーと軽剥離側の剥離ライナーの両方について試験を行った。重剥離側の剥離ライナーの剥離力を測定する場合には、上記の通り、軽剥離側の剥離ライナーが設けられた側の粘着面をPETフィルムで裏打ちした。
【0113】
(5)浮き量(70℃×2時間)
実施例および比較例で得られた両面粘着シート(サイズ:幅10mm、長さ90mm)から、軽剥離側の剥離ライナーを剥離して、軽剥離側の粘着面を、厚さ0.5mm、幅10mm、長さ90mmのアルミニウム板に貼り合わせて試験片を作製した。その試験片の長手方向(長さ方向)を直径(φ)50mmの丸棒に沿わせて、粘着シート側が外側となるように弧状に曲げた後、該試験片から重剥離側の剥離ライナーを剥がして粘着面を露出させ、該粘着面側を、ロールラミネータを用いて、被着体(厚さ2mmのポリプロピレン(PP)板に粘着テープでポリイミドフィルム「カプトン 100H」を貼り合わせたシート)のポリイミドフィルム側に圧着した(線圧:0.3MPa)。これを23℃の環境下に24時間放置し、次いで70℃で2時間加温した後、被着体表面から浮き上がった試験片端部の高さ(mm)を測定し、浮き量(mm)とした。なお、該浮き量は試験片の両端部の浮き上がった高さの平均値である。
【0114】
(6)加工性(加工適性)
実施例および比較例で得られた両面粘着シートの重剥離側の剥離ライナー側から、プレス機にてハーフカット(重剥離側の剥離ライナーと粘着体にのみ切れ込みを入れる)して、加工性評価用サンプルを作製した。該加工性評価用サンプルを、温度:60℃、相対湿度:90%RHの雰囲気中に1週間放置した後、切断面の自着の有無を観察し、下記の評価基準により、加工性(加工適性)を評価した。
加工適性の評価基準
○(良好):切断面に自着が見られなかった。
×(不良):切断面に自着が見られた。
【0115】
(7)段差追従性
下記FPCのベースフィルム層側の表面に、軽剥離側の剥離ライナーを剥離した両面粘着シート(実施例および比較例で得られたもの、サイズ:40mm×40mm)を圧着した(圧着条件:60℃、0.5MPa、10秒)。圧着後、両面粘着シート側から50倍マイクロスコープで観察した。段差部等に、両面粘着シートとベースフィルム層の「密着不良(浮き)」が少ない場合には段差追従性良好(○)、「密着不良」が多い場合には段差追従性不良(×)と判断した。
【0116】
[FPC(被着体)]
図2は上記で被着体として用いたFPCの積層構成を示す説明図(概略断面図)である。図3は上記FPC及び両面粘着シート(評価サンプル)の貼り付け位置を示す説明図(ベースフィルム層側からみた平面図)である。
上記FPCは、ベース絶縁層(ポリイミドからなるベースフィルム層4とエポキシ系接着剤層5の積層構造)上に銅箔層(導体層)6が設けられ、さらにその上にカバー絶縁層(ポリイミドからなるカバーレイフィルム層8とエポキシ系接着剤層7の積層構造)が設けられた構造である。なお、ベースフィルム層4の厚みは0.025mm、接着剤層5の厚みは0.015mm、銅箔層6の厚みは0.035mm、カバーレイ接着剤層7の厚みは0.025mm、カバーレイフィルム層8の厚みは0.025mmである。
銅箔層は、直線状(4本)の回路パターン(銅箔部分の幅:800μm、銅箔−銅箔間の幅:400μm)となるように形成されている。上記銅箔層の銅箔部分と銅箔のない部分に起因して、FPCのベースフィルム層側の表面には段差が形成されている。
両面粘着シート(評価サンプル)10は、上記FPC(被着体)9のベースフィルム層側の表面に、図3に示すように貼り付けられる。なお、図3において、9aは銅箔が設けられている部分を表し、9bは銅箔が設けられていない部分を表す。
【0117】
【表1】

【0118】
表1に示す評価結果より、本発明の両面粘着シート(実施例1)は、シロキサンガス発生量が少なく、加工性(加工適正)にも優れていた。これに対して、比較例の両面粘着シートはシロキサンガス発生量が多く、低汚染性に劣っていた(比較例1)。また、基材を有しない基材レス両面粘着シートの場合には、加工性に劣っていた(比較例1、2)。
【符号の説明】
【0119】
1 フレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シート
2 粘着体
21 基材
22 粘着剤層
3 剥離ライナー(シリコーン系剥離ライナー)
4 ベースフィルム層(ポリイミドフィルム)
5 接着剤層(エポキシ系接着剤)
6 銅箔層
7 カバーレイ接着剤層(エポキシ系接着剤)
8 カバーレイフィルム層(ポリイミドフィルム)
9 FPC(被着体)
9a 銅箔が設けられている部分
9b 銅箔が設けられていない部分
10 両面粘着シート(評価サンプル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の両面側に粘着剤層を有する粘着体を有し、さらに前記粘着体の両面側にそれぞれシリコーン系剥離ライナーを有する両面粘着シートであって、前記粘着剤層が炭素数が1〜14の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須の単量体成分とするアクリル系ポリマーを含み、前記粘着体の厚さが60μm以下、120℃にて10分間加熱した際に発生するシロキサンガス量が1ng/cm2以下であることを特徴とするフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シート。
【請求項2】
前記基材が厚さ10μm以下のプラスチックフィルム基材であり、前記粘着剤層の厚さが20μm以上である請求項1に記載のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シート。
【請求項3】
前記シリコーン系剥離ライナーが、シリコーン系剥離層を少なくとも有する剥離ライナーであって、前記シリコーン系剥離層の塗布量が0.3g/m2以下である請求項1又は2に記載のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シート。
【請求項4】
120℃にて10分間加熱した際に発生するアウトガス量が1μg/cm2以下である請求項1〜3のいずれかの項に記載のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シート。
【請求項5】
下記浮き量が1.5mm以下である請求項1〜4のいずれかの項に記載のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シート。
浮き量:両面粘着シートの一方の粘着面を、厚さ0.5mm、幅10mm、長さ90mmのアルミニウム板に貼り合わせた試験片を、直径50mmの丸棒に沿わせて、試験片の長さ方向に両面粘着シート側が外側となるように弧状に曲げた後、両面粘着シートのもう一方の粘着面を、厚さ2mmのポリプロピレン板にポリイミドフィルムを貼り合わせた被着体のポリイミドフィルム側にロールラミネータで圧着し、これを23℃で24時間放置、70℃で2時間加温した後に、被着体表面から浮き上がった試験片端部の高さ。
【請求項6】
前記粘着剤層のゲル分率が10〜60%である請求項1〜5のいずれかの項に記載のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シート。
【請求項7】
シリコーン系剥離ライナー上に粘着剤組成物を塗布し粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を基材の表面に貼り合わせる工程を少なくとも含む請求項1〜6のいずれかの項に記載のフレキシブル印刷回路基板固定用両面粘着シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−21042(P2012−21042A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157902(P2010−157902)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】