説明

フレキシブル管用継手

【課題】継手本体の軸方向長さを抑えて継手全体をできるだけ小型化できるフレキシブル管用継手を提供する。
【解決手段】半挿入状態にある押輪7はこれの先端部がフレキシブル管2の差込み前におけるシールゴム6の後側に当接もしくは近接する初期位置に位置決め保持される。この位置決め保持手段は、受口部3の入口側に露出する半挿入状態の押輪7の外周に設けたスペーサ溝28に着脱可能に装着したスペーサ29と、受口部3の内周に設けたスナップリング収容溝23と、このスナップリング収容溝23に外周部が嵌め込まれたスナップリング27と、押輪7に設けられてスナップリング27の内周部に係合するスナップリング保持溝21からなる。完全に押込まれた押輪7は、これの先端部がフレキシブル管2の差込みに伴い押込まれたシールゴム6の後側に当接もしくは近接する押込み位置に位置決め保持される。この位置決め保持は、スペーサ29をスペーサ溝28から取外して押輪7を押込むに伴いスナップリング27の内周部にスペーサ溝28が係合することにより行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体や液体等の流体を導くためのフレキシブル管を差込み、押輪を押込むだけのワンタッチ操作で、フレキシブル管をシール状に接続できるようにした差込み式のフレキシブル管用継手に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の差込み式のフレキシブル管用継手として、例えば、図6(A)、(B)に示すように、蛇腹状のフレキシブル管40を挿入するための管挿入孔41を有する継手本体42と、該管挿入孔41に配置された、フレキシブル管40の外面の環状凹部43に差し込まれる後方突起44aを有するリテーナ部材44と、リテーナ部材44の後方突起44aをフレキシブル管40の外面の環状凹部43に差し込まれた状態で固定する押輪(ナット部材)45と、フレキシブル管40と継手本体42との間をシールするパッキン部材46と、 を具備し、押輪45が、継手本体42の管挿入孔41内で軸方向にスライドし、リテーナ部材44の後方突起44aがフレキシブル管40の環状凹部43へ嵌まり込んだ状態を保持する位置と、リテーナ部材44の後方突起44aがフレキシブル管40の環状凹部43へ嵌まり込まない位置との間で変位可能であり、さらに、押輪45をリテーナ部材44の後方突起44aがフレキシブル管40の環状凹部43へ嵌まり込んだ状態を保持する位置でロックするロック手段が設けられている。
【0003】
そして、上記ロック手段として、継手本体42に、ストップリング部材47の外周部が係合する第1溝(ストップリング収容凹部)48と第2溝(ストップリング保持段部)49が形成されており、押輪45の基端側の外周面に形成した溝部50にC字状のストップリング部材47の内周部が係合したまま、押輪45のスライドに応じてストップリング部材47の外周部が第1溝48と第2溝49間を変位可能であり、ストップリング部材47の外周部が第1溝48に係合しているときは、押輪45はリテーナ部材44の後方突起44aがフレキシブル管40の環状凹部43へ嵌まり込まない位置に位置して、押輪45は継手本体42に仮止めされており、ストップリング部材47の外周部が第2溝49に係合するときは、押輪45はリテーナ部材44の後方突起44aがフレキシブル管40の環状凹部43へ嵌まり込んだ状態に保持してロックされる、というものがある(例えば、特許文献1参照。)。因みに、押輪45の押し込み量であるストローク長さS(図6(A)参照)は、上記第1溝48と第2溝49との間の距離とほぼ同じになるように設定されている。
【0004】
このフレキシブル管用継手によれば、押輪45を押込むだけで、良好なシール性を維持した状態でフレキシブル管40の接続を行うことができる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−176888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記ロック手段を備えたフレキシブル管用継手では、押輪45の基端側の外周面に溝部50を形成し、この溝部50にストップリング部材47の内周部を係合させ、継手本体42に、ストップリング部材47の外周部が係合する第1溝48と第2溝49を形成し、押輪45の溝部50にストップリング部材47の内周部が係合したまま、押輪45のスライドに応じてストップリング部材47の外周部が第1溝48と第2溝49間を変位可能にしてあるので、継手本体42は、ストップリング部材47を第1溝48から第2溝49へ移動させ得る長さを確保する必要があり、それだけ継手本体42の軸方向長さが長くなる。そのため、継手全体が大型となり、またコスト高となる、という問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、フレキシブル管を差込み、押輪を押込むだけのワンタッチ操作で、フレキシブル管をシール状に接続できるうえ、フレキシブル管の差込み前、すなわち在庫、保管時にシールゴムが半挿入状態にある押輪により押込まれて変形を加えられるのを防止でき、フレキシブル管の差込み及び押輪の押込み完了後にシールゴムが入口側方向へ移動するのを阻止できてシールゴムによるシール状態を確保でき、しかも継手本体の軸方向長さを抑えて継手全体をできるだけ小型化できるフレキシブル管用継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、請求項1に記載のように、その発明の内容を理解しやすくするために図1〜図5に付した符号を参照して説明すると、外周部に円周方向全周に延びる山部8と谷部9とを管軸方向へ交互に並設したフレキシブル管2の先端部が差込まれる受口部3を有する継手本体5と、受口部3内に収容され、受口部3の内周と受口部3に差込まれたフレキシブル管2の先端部付近の外周との間をシールするシールゴム6と、受口部3内に挿入される押輪7とを備え、押輪7は、受口部3に押込み代を残す半挿入状態に挿入され、前記押込み代分だけ完全に押込まれると押輪7の先端部でシールゴム6が受口部3の入口側方向へ戻り移動するのを抑えるようにしてある、フレキシブル管用継手において、半挿入状態にある押輪7はこれの先端部がフレキシブル管2の差込み前におけるシールゴム6の後側に当接もしくは近接する初期位置に位置決め保持される第1の位置決め保持手段と、完全に押込まれた押輪7はこれの先端部が、先にフレキシブル管2の差込みに伴い押込まれたシールゴム6の後側に当接もしくは近接する押込み位置に位置決め保持される第2の位置決め保持手段を備えており、前記第1の位置決め保持手段は、受口部3の入口側に露出する半挿入状態の押輪7の外周に設けた環状のスペーサ溝28に着脱可能に装着したスペーサ29と、受口部3の内周に設けたスナップリング収容溝23と、このスナップリング収容溝23に外周部が嵌め込まれたスナップリング27と、押輪7の外周にスペーサ溝28より前方に並べて設けられてスナップリング27の内周部に係合するスナップリング保持溝21とからなり、スナップリング保持溝21内の後側溝壁には後方に向かって漸次拡がり状のテーパ面21aを形成しており、前記第2の位置決め保持手段は、スペーサ29をスペーサ溝28から取外して押輪7を押込み代分だけ押込むとスナップリング27の内周部にスペーサ溝28が係合するように構成しており、シールゴム6が管端受け部6bを有する形に形成されており、受口部3にフレキシブル管2の先端部を半挿入状態にある押輪7から差込むに伴い該フレキシブル管2の先端部がシールゴム6の内部に挿入し管端受け部6bに当接してシールゴム6を受口部内奥方向へ押込むことに特徴を有するものである。
【0009】
上記構成のフレキシブル管用継手によると、フレキシブル管2の差込み後、押輪7が押込み代だけ完全に押込まれるとその押輪7の先端部でシールゴム6が受口部3の入口側方向へ戻り移動するのを抑えるようにしてあるので、シールゴム6によるフレキシブル管2の先端部付近と受口部3の内周との間のシール機能を確保できる。
【0010】
第1の位置決め保持手段により、押輪7の半挿入状態を保持するので、フレキシブル管2の差込み前、すなわち在庫、保管時に、押輪7が不用意に押込まれてシールゴム6に変形を加えるのを防止できる。
第2の位置決め保持手段により、フレキシブル管2の差込み及び押輪7の押込み完了後にシールゴム6が入口側方向へ移動するのを阻止するので、シールゴム6によるシール状態および抜止め状態を確保できる。
【0011】
第1,2の位置決め保持手段として、継手本体5の受口部3の内周にスナップリング収容溝23を設け、このスナップリング収容溝23にスナップリング27の外周部を嵌め込み収容する一方、押輪7にスペーサ29を装着するスペーサ溝28、およびスナップリング保持溝21を設けて、押輪7が半挿入状態にあるときはスナップリング27の内周部がスナップリング保持溝21に係合し、スペーサ29をスペーサ溝28から外して押輪7を完全に押込んだときはスナップリング27の内周部にスペーサ溝28が係合するようにしたものであり、つまり継手本体5にはスナップリング27の外周部を収容するスナップリング収容溝23を設けてあるだけであるので、前述した従来のように継手本体42に、ストップリング部材47の外周部が係合する第1溝48と第2溝49を形成したものに比べて、継手本体5の軸方向長さが短くて足り、従来のように継手本体42においてストップリング部材47を第1溝48から第2溝49へ移動させ得る長さを確保する必要がなく、継手の大型化を抑えることができる。
【0012】
請求項1記載のフレキシブル管用継手は、受口部3内には入口側から内奥側に向かって順に大径孔11、中径孔12、小径孔13を形成しており、シールゴム6が、フレキシブル管2の山部8の外径と略同一の内径を有する筒状の前側胴部6aを有しており、管端受け部6bがこの前側胴部6aの前端部に内向きに張り出しており、シールゴム6が、前側胴部6a及び管端受け部6bに加えて前側胴部6aの後端部に外向きに張り出した環状のシール作用部6cと、このシール作用部6cから後方へ連設され前側胴部6aの内径より大きい内径の後側胴部6dと、この後側胴部6dの後端部に連設され後側胴部6dの内径より小さく山部8の外径より大きい内径で且つ後側胴部6dの外径より大きい外径の抜止め突部6eとを有する形に一体形成されており、小径孔13と中径孔12との間に第1テーパ15を小径孔13に向かって窄まり状に形成し、中径孔12と大径孔11との間に第2テーパ16を中径孔12に向かって窄まり状に形成しており、シールゴム6は自由状態において管端受け部6bおよび前側胴部6aが小径孔13内に位置し、かつシール作用部6cが中径孔12内に位置するとともに、抜止め突部6eが大径孔11内に位置するように収容配置されており、受口部3にフレキシブル管2の先端部を差込むに伴い半挿入状態にある押輪7から該フレキシブル管2の先端部がシールゴム6の内部に挿入し管端受け部6bに当接してシールゴム6を受口部内奥方向へ押込み、この押込みに伴いシール作用部6cが第1テーパ15の窄まり側に摺接することにより縮径変形してフレキシブル管2の谷部9の少なくとも斜面9aに密着するとともに、抜止め突部6eがこれの外径部を第2テーパ16の窄まり側に摺接することにより縮径して内径部をフレキシブル管2の谷部9に嵌入するように構成してあってもよい。
尚、本明細書および特許請求の範囲において、「自由状態」とは、ゴムシール6が拡縮径するように変形されておらず圧縮応力又は引張応力が作用していない状態を言う。
【0013】
このような構成によれば、フレキシブル管2の先端部付近の外周面と小径孔13の内周面との間のシールゴム6による密封シール状態は、シールゴム6のシール作用部6cがフレキシブル管2の谷部8の少なくとも斜面8aに密着することで得られるようにしてあるので、フレキシブル管2の受口部3内に挿入される先端部や先端部付近の変形及び施工後の曲げ等に対する影響を受けにくくなり、シール性能を高めることができる。
また、フレキシブル管2を受口部3に差込むに伴いフレキシブル管2の先端部がシールゴム6の内部に挿入し管端受け部6bに当接してシールゴム6を受口部3の内奥方向へ押込み、この押込みに伴いシール作用部6cが第1テーパの窄まり側に摺接することにより内向きに縮径変形してフレキシブル管2の谷部8に密着するようにしてあるので、フレキシブル管2を差込むだけで簡単にシール状に接続することができる。
【0014】
さらに、シールゴム6は、当初、即ちフレキシブル管差込み前の段階ではシール作用部6cを外向きに張り出しているので、フレキシブル管2の先端部の差込み時に該先端部がシール作用部6cに支えて差込み障害になるようなことがなく、フレキシブル管2をシールゴム6にスムーズに差込むことができ、フレキシブル管2の差込み容易性を確保できる。
更に又、上記のようにフレキシブル管2の差込みによりシールゴム6を受口部3の内奥方向へ押込むに伴い、シールゴム6と一体の抜止め突部6eがこれの外径部を第2テーパ16の窄まり側に摺接することにより縮径して内径部をフレキシブル管2の谷部9に嵌入するようにしてあるので、フレキシブル管2を差込むだけで簡単に抜け止め状に接続することができる。抜止め突部6eはシールゴム6と一体に形成してあるので、それだけ部材点数並びに組立工数の減少、コストの削減を図ることができる。
【0015】
半挿入状態にある押輪7はこれの先端部がフレキシブル管2の差込み前におけるシールゴム6の抜止め突部6eの後側に当接もしくは近接する初期位置に第1の位置決め保持手段で位置決め保持しておくと、フレキシブル管2の差込み前、すなわち在庫、保管時にシールゴム6は、半挿入状態にある押輪7により押込まれるおそれがなく、自由状態でシール作用部6cが中径孔12に保持されるようにしてあるため、シール作用部6cには内部応力が発生せず、シール作用部6cはフレキシブル管2が差込まれたときにはじめて弾性的に縮径してフレキシブル管2の谷部に密着するので、適切な圧縮代が長期間にわたり維持され、所定の耐用年数を保証することができる。
また、完全に押込まれた押輪7はこれの先端部が、先にフレキシブル管2の差込みに伴い小径孔13内にまで押込まれたシールゴム6の抜止め突部6eの後側に当接もしくは近接する押込み位置に位置決め保持される第2の位置決め保持手段を備えておくと、フレキシブル管2の差込み及び押輪7の押込み完了後にシールゴム6が入口側方向へ移動するのを阻止することができ、シールゴム6によるシール状態および抜止め状態を確保できるとともに、フレキシブル管2の引抜き阻止力を発生させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フレキシブル管を差込み押輪を押込むだけの簡単な操作でシール状に接続でき、しかもフレキシブル管の差込み前、すなわち在庫、保管時にシールゴムが半挿入状態にある押輪により押込まれて変形を加えられるのを防止できるとともに、フレキシブル管の差込み及び押輪の押込み完了後にはシールゴムが入口側方向へ移動するのを阻止できてシールゴムによるシール状態を確保することができる。特に、従来のように継手本体においてストップリング部材を第1溝から第2溝へ移動させ得る長さを確保する必要がなく、継手本体の軸方向長さが短くて足り、継手の大型化を抑えることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示すフレキシブル管用継手を、フレキシブル管差込み前の状態で示す半欠截断面図である。
【図2】フレキシブル管差込み途中の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図である。
【図3】フレキシブル管の差込み完了後の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図である。
【図4】図1におけるA部の拡大図である。
【図5】(a)はシールゴムの半欠截断面図、(b)はシールゴムの正面図、(c)はシールゴムの背面図である。
【図6】(A)は従来例のフレキシブル管用継手を、フレキシブル管差込み途中の状態で示す断面図、(B)は同フレキシブル管用継手を、フレキシブル管差込み完了後の状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例を示すフレキシブル管用継手を、フレキシブル管差込み前の状態で示す半欠截断面図、図2はフレキシブル管差込み途中の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図、図3はフレキシブル管の差込み完了後の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図、図4は図1におけるA部の拡大図、図5の(a)はシールゴムの半欠截断面図、(b)はシールゴムの正面図、(c)はシールゴムの背面図である。
【0019】
図1に示すように、本発明に係るフレキシブル管用継手1は、一端部に金属製のフレキシブル管2の先端部を受け入れる受口部3を形成し、他端部の外周に接続用雄ねじ4を形成した継手本体5と、この継手本体5の受口部3の内部に収容されるシールゴム6と、受口部3内に押込み代を残す半挿入状態に挿入される押輪7等を備える。
【0020】
フレキシブル管2は、図1に示すように、外周部に円周方向全周に延びる山部8と谷部9とを管軸方向へ交互に並設し、その外周を塩化ビニール等の合成樹脂層10で被覆している。
【0021】
図1、図4に示すように、継手本体5の受口部3内には入口側から内奥側に向かって順に大径孔11、中径孔12、小径孔13を連通状に形成する。小径孔13の内奥端にはストッパー部14を径方向内方へ突設している。小径孔13と中径孔12との間には第1テーパ15を小径孔13に向かって窄まり状に形成し、中径孔12と大径孔11との間には第2テーパ16を中径孔13に向かって窄まり状に形成している。
【0022】
図5の(a)〜(c)に示すように、シールゴム6は、フレキシブル管2の山部8の外径と略同一の内径を有する筒状の前側胴部6aと、この前側胴部6aの前端部に内向きに張り出した管端受け部6bと、前側胴部6aの後端部に外向きに張り出した環状のシール作用部6cと、このシール作用部6cから後方へ連設され前側胴部6aの内径より大きい内径の後側胴部6dと、この後側胴部6dの後端部に連設され後側胴部6dの内径より小さく且つ山部7の外径より大きい内径で且つ後側胴部6dの外径より大きい外径の抜止め突部6eとを有する形に一体形成されている。
前側胴部6a、シール作用部6cおよび後側胴部6dはNBR、SBR、EPDM等からなる。管端受け部6bは、それら前側胴部6a、シール作用部6cおよび後側胴部6d等と同一材料又は異材料で形成し、異材料としては例えば熱膨張性黒鉛入りゴム等耐火パッキンなどである。
抜止め突部6eは、前側胴部6a、シール作用部6cおよび後側胴部6dよりも硬い金属材料または硬質樹脂等で部分円弧状に形成され、この複数個が後側胴部6dの後端部の円周方向に所定間隔置きに並べて一体成型される。抜止め突部6eの外周と後端面の交わる角部には後方窄まり状のテーパcを形成している。
【0023】
このシールゴム6は、フレキシブル管2の差込み前(初期状態)において、図1に示すように、管端受け部6bおよび前側胴部6aが小径孔13内に位置し、かつシール作用部6cが中径孔12内に位置するとともに、抜止め突部6eが大径孔11内に位置するように収容配置される。
【0024】
図1に示すように、継手本体5内のストッパー部14には先端掛止め部材17を装着している。先端掛止め部材17は、拡縮径自在なC形のリング部17aと、このリング部17aの内径部の数箇所から突設する弾性変形自在な逆止爪17bとを有する形に金属や硬質樹脂等で形成されている。そして、先端掛止め部材17は、リング部17aがストッパー部14に重合するとともにリング部17aの外径部がストッパー部14の外径側に設けた円周溝14a内に係合して、逆止爪17bが小径孔13内に向けて突出するようにストッパー部14に装着される。
【0025】
図1に示すように、押輪7は、継手本体5の大径孔11の入口側に軸方向に移動可能に挿入されフレキシブル管2が挿通可能な円筒部7aを有し、この円筒部7aの入口側後端部の外周には大径孔11の孔径より大きい外径の鍔部7bを一体に形成している。押輪7の円筒部7aの入口側後端の内周にはパッキン溝18を円周方向に形成し、このパッキン溝18にEPDM等よりなる断面T形状の防水パッキン19を嵌め込んでいる。円筒部7aの先端部の外周には第2テーパ16と略同一勾配の先細状のテーパ20aを、円筒部7aの先端部の内周には先拡がり状のテーパ20bをそれぞれ形成している。
【0026】
図1に示すように、押輪7の円筒部7aの外周には断面矩形のスナップリング保持溝21を円周方向に形成する一方、継手本体5の大径孔11の内周には入口側から奥側に向かって順に選択透過部材溝22、断面矩形のスナップリング収容溝23をそれぞれ円周方向に形成している。スナップリング保持溝21内の後側溝壁には後方へ向かって漸次拡がり状のテーパ面21aを形成している。選択透過部材溝22には内部から外部へ気体を透過するが、固体や液体は透過しない選択透過性部材26を嵌め込んでいる。
【0027】
押輪7はこれの先端部が図1のようにフレキシブル管2の差込み前におけるシールゴム6の抜止め突部6eの後側に当接もしくは近接する半挿入状態(初期位置)に位置決め保持される第1の位置決め保持手段と、前記先端部が図3のようにフレキシブル管2の差込みに伴い小径孔13内にまで押込まれるシールゴム6の抜止め突部6eの後側に当接もしくは近接する完全な押込み位置に位置決め保持される第2の位置決め保持手段を備えている。
【0028】
フレキシブル管2の差込み前では、図1、図4に示すように、継手本体5のスナップリング収容溝23に、穴用のC形止め輪等からなる拡縮径自在なスナップリング27の外周部が嵌め込まれて収容されているとともに、スナップリング27の内周部が大径孔11の内周面より突出して押輪7のスナップリング保持溝21に係脱可能に係合されている。このスナップリング27は、スナップリング収容溝23に拡径可能な状態に収容されている。
【0029】
第1の位置決め保持手段は、継手本体5の入口端から露出する押輪7の円筒部7aの外周の軸方向中間部に環状のスペーサ溝28を円周方向に設け、このスペーサ溝28にC形のスペーサ29を着脱可能に嵌め込んで受口部3の開口端面に当接するように装着しており、これらスペーサ溝28およびスペーサ29と、スナップリング収容溝23、このスナップリング収容溝23に外周部が嵌め込み収容されたスナップリング27、およびスナップリング保持溝21によって構成される。この第1の位置決め保持手段により、押輪7は、図1、図4のように、フレキシブル管2の差込み前において半挿入状態の押輪7の先端部がシールゴム6の中径孔12内に位置する抜止め突部6eの後側に当接もしくは近接する初期位置に位置決め保持される。すなわち、半挿入状態の押輪7は、初期位置において、スペーサ29によって押込まれるのを阻止され、スナップリング27の内周部とスナップリング保持溝21との係合により抜き出し方向に移動するのを阻止される。押輪7は、この第1の位置決め保持手段により初期状態の半挿入状態より不用意に押し込まれるのを阻止されることにより、シールゴム6を不用意に押し込むようなことがない。
【0030】
上記第2の位置決め保持手段は、スペーサ29をスペーサ溝28から取外して押輪7を押込み代分だけ押込むと、図3のようにスナップリング27の内周部にスペーサ溝28が係合するように構成している。押輪7の押込み代であるストローク長さS(図2参照)は、スナップリング保持溝21とスペーサ溝28との間の距離と略同じになるように設定されている。
【0031】
次に、上記のフレキシブル管用継手1にフレキシブル管2を接続する要領について図1〜図3を参照にして説明する。
【0032】
図1のようにフレキシブル管2の接続前、フレキシブル管2の差込み前、すなわち在庫、保管時においては、押輪7のスペーサ溝28にスペーサ29を嵌め込むとともに、スナップリング収容溝23に収容されたスナップリング27の内周部を押輪7のスナップリング保持溝21に係合した第1の位置決め保持手段により、半挿入状態の押輪7が、不用意に押込まれてシールゴム6に変形を加えるのを防止できる。
【0033】
フレキシブル管2の接続に際しては、先ず、図2に示すように、スペーサ29をスペーサ溝28から取外し、合成樹脂層10を剥離して山部8が6個分ほど露出したフレキシブル管2を、押輪7の入口側から継手本体5の受口部3内のシールゴム6の抜止め突部6e、後側胴部6d、シール作用部6c、および前側胴部6aの順に差込み、そのフレキシブル管2の先端部をシールゴム6の管端受け部6bに当接させる。その際、シールゴム6のシール作用部6cは外向きに張り出す形に形成しているので、フレキシブル管2の差込み時にそのシール作用部6cが障害になるようなことなくフレキシブル管2の先端部をシールゴム6内にスムーズに挿入できる。
【0034】
引き続いて、図3のようにフレキシブル管2を所定深さまで差込むと、シールゴム6がフレキシブル管2と共に受口部内奥方向へ押込まれ、この押込みに伴いシールゴム6のシール作用部6cが第1テーパ15の窄まり側に摺接することにより該第1テーパ15で押圧されて内向きに縮径変形し、第1テーパ面15を通過して小径孔13内に移動するや否やフレキシブル管2の谷部9の斜面9a及び谷底部9bの双方、または少なくとも斜面9aに圧縮状に密着し、これと同時にシールゴム6の抜止め突部6eが第2テーパ16の窄まり側に摺接することにより該第2テーパ16で縮径方向に押圧されながら中径孔12に移動し該中径孔12の内周面でフレキシブル管2の前記谷部9とは別の谷部9に押込まれて嵌入する。これによりフレキシブル管2の先端部の外周面と継手本体5の小径孔13の内周面との間がシールゴム6により確実に密封シールされ、フレキシブル管2内を流れる流体がフレキシブル管2の先端部からフレキシブル管2の先端部外周と継手本体5の小径孔13内周との間を経て漏れ出るのを防止できる状態が得られるとともに、抜止め突部6eによりフレキシブル管2の抜止め状態が得られる。なお、フレキシブル管2の先端部とシールゴム6の管端受け部6bとの間でもシール機能を期することができる。
【0035】
また、図3のようにフレキシブル管2が所定深さまで差込まれると、シールゴム6の管端受け部6bの内径部及びフレキシブル管2の先端部の内面が先端掛止め部材17の逆止爪17bと小径孔13の内周面との間を該逆止爪17bの弾性縮径変形を介して通過後に該逆止爪17bに係合する。この管端受け部6bが逆止爪17bを通過する時、施工者は手応えを感じ、フレキシブル管2が所定深さまで差込まれたことを実感できる。
また、そのようにフレキシブル管2の先端部が先端掛止め部材17の逆止爪17bに係合するとともに、抜止め突部6eが谷部9に入り込むことで、フレキシブル管2が振れるのを抑制することができる。
【0036】
フレキシブル管2の差込み完了後には、図3のように押輪7を押込み代分だけ完全に押込む。この押し込みに伴い、スナップリング27は、スナップリング収容溝23内に外周部が嵌め込み収容された状態で、押輪7のスナップリング保持溝21のテーパ面21aを摺接しながらその直径が弾性的に拡径される。そして、押輪7が完全に押し込まれた時点で、この拡径されたスナップリング27の内周部に押輪7のスペーサ溝28が至ってスナップリング27が弾性復元作用で縮径して内周部をスペーサ溝28に係合する、という第2の位置決め保持手段が作用する。これにより、押輪7はこれの先端部がシールゴム6の抜止め突部6eの後側に近接もしくは当接する完全な押込み位置に保持されるため、シールゴム6が受口部3の入口側方向へ戻り移動するのを防止できる。したがって、シールゴム6によるシール状態および抜止め状態を確保できるとともに、フレキシブル管2の引抜き阻止力を発生させることができる。
【0037】
また、押輪7の完全な押込みに伴い押輪7の先端部のテーパ20bがシールゴム6の抜止め突部6eのテーパcに近接対向する。したがって、このときフレキシブル管2を引き抜く方向に外力が加わったとしても、フレキシブル管2と同行する抜止め突部6eのテーパcが押輪7のテーパ20bの窄まり側に当接することにより、抜止め突部6eが後側胴部6dの弾性を介して縮径してその抜止め突部6eの内径部がフレキシブル管2の谷部9への係合力を増すので、フレキシブル管2の抜け出しが確実に阻止される。
【0038】
上記実施例では、継手本体5の一端に受口部3を、他端の外周に接続用雄ねじ4を形成した雄ねじフレキシブル管用継手について記述したが、本発明はこれに限られず、他の構造、例えば、両端に受口部を有する左右対称のソケット形のフレキシブル管用継手や、エルボ型のフレキシブル管用継手等にも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1 フレキシブル管用継手
2 フレキシブル管
3 受口部
5 継手本体
6 シールゴム
6a 前側胴部
6b 管端受け部
6c シール作用部
6d 後側胴部
6e 抜止め突部
7 押輪
8 山部
9 谷部
9a 斜面
11 大径孔
12 中径孔
13 小径孔
15 第1テーパ
16 第2テーパ
21 スナップリング保持溝
21a テーパ面
23 スナップリング収容溝
27 スナップリング
28 スペーサ溝
29 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部に円周方向全周に延びる山部と谷部とを管軸方向へ交互に並設したフレキシブル管の先端部が差込まれる受口部を有する継手本体と、前記受口部内に収容され、前記受口部の内周と前記受口部に差込まれた前記フレキシブル管の先端部付近の外周との間をシールするシールゴムと、受口部内に挿入される押輪とを備え、前記押輪は、前記受口部に押込み代を残す半挿入状態に挿入され、前記押込み代分だけ完全に押込まれると前記押輪の先端部で前記シールゴムが前記受口部の入口側方向へ戻り移動するのを抑えるようにしてある、フレキシブル管用継手において、
半挿入状態にある前記押輪はこれの先端部がフレキシブル管差込み前における前記シールゴムの後側に当接もしくは近接する初期位置に位置決め保持される第1の位置決め保持手段と、完全に押込まれた前記押輪はこれの先端部が、先にフレキシブル管の差込みに伴い押込まれた前記シールゴムの後側に当接もしくは近接する押込み位置に位置決め保持される第2の位置決め保持手段を備えており、
前記第1の位置決め保持手段は、前記受口部の入口側に露出する半挿入状態の前記押輪の外周に設けた環状のスペーサ溝に着脱可能に装着したスペーサと、前記受口部の内周に設けたスナップリング収容溝と、このスナップリング収容溝に外周部が嵌め込まれたスナップリングと、前記押輪の外周に前記スペーサ溝より前方に並べて設けられて前記スナップリングの内周部に係合するスナップリング保持溝とからなり、前記スナップリング保持溝内の後側溝壁には後方に向かって漸次拡がり状のテーパ面を形成しており、
前記第2の位置決め保持手段は、前記スペーサを前記スペーサ溝から取外して前記押輪を前記押込み代分だけ押込むと前記スナップリングの内周部に前記スペーサ溝が係合するように構成しており、
前記シールゴムが管端受け部を有する形に形成されており、
前記受口部に前記フレキシブル管の先端部を半挿入状態にある前記押輪から差込むに伴い該フレキシブル管の先端部が前記シールゴムの内部に挿入し前記管端受け部に当接して前記シールゴムを受口部内奥方向へ押込むことを特徴とする、フレキシブル管用継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−233587(P2012−233587A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−158484(P2012−158484)
【出願日】平成24年7月17日(2012.7.17)
【分割の表示】特願2007−304102(P2007−304102)の分割
【原出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】