説明

フレキシブル配線基板製造方法及びそれにより製造されたフレキシブル配線基板

【課題】フレキシブル配線基板に対し防水用部材を、両者の位置関係を正しく保ちつつ、効率良く形成することができるフレキシブル配線基板製造方法を提供する
【解決手段】)フレキシブル配線基板10の回路パターン21を複数台分形成したパネル20を製造し、パネル20をプレス金型にセットして打ち抜きを行い、回路パターン21中の防水用部材形成箇所25、26が外側のパネル部分に連結部27、28、29、30でつながっている状態にし、回路パターン21に電気部品を実装し、パネル20を射出成型金型にセットし、防水用部材形成箇所25、26に防水用部材13、14を成型し、パネル20を別のプレス金型にセットして打ち抜きを行い、回路パターン21をパネル20から切り離して、フレキシブル配線基板10を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレキシブル配線基板製造方法及びそれにより製造されたフレキシブル配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
小型電子機器の配線に、フレキシブル配線基板は無くてはならない存在である。小型電子機器に用いられるフレキシブル配線基板の例を特許文献1に見ることができる。
【0003】
特許文献1には、小型電子機器の一例として、携帯電話機が示されている。携帯電話機は第1筐体と第2筐体をヒンジで連結した構成であり、第1筐体と第2筐体を連結するのにフレキシブル配線基板が用いられている。この携帯電話機は防水型であり、フレキシブル配線基板には、第1筐体と第2筐体のそれぞれに形成されたフレキシブル配線基板通し孔を密閉するための防水用部材が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−344813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレキシブル配線基板に防水用部材を形成する場合、射出成型金型にフレキシブル配線基板をセットし、インサート成型により防水用部材を成型する。フレキシブル配線基板が正しく防水用部材の中に収まるようにするためには、射出成型金型にフレキシブル配線基板を位置決めするピンを設ける必要がある。しかしながら、防水用部材の大きさによっては、ピンをかなり細くしなければならない。ピンがあまりに細いと、成型時の射出圧力やフレキシブル配線基板の厚みのバラツキなどによってピンが曲がったり、折れたりすることがある。これは当然成型ミスにつながる。成型ミスの一例を図10に示す。ここには、フレキシブル配線基板101が、防水用部材102の中で片側だけ浮き上がってしまった状態が描かれている。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、フレキシブル配線基板に対し防水用部材を、両者の位置関係を正しく保ちつつ形成することが可能であり、しかもそれを短時間で効率良く行うことができるフレキシブル配線基板製造方法を提供することを目的とする。また、その製造方法で製造されたフレキシブル配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい実施形態によれば、フレキシブル配線基板製造方法は、次の工程を順次遂行するものである。
(a)フレキシブル配線基板の回路パターンを複数台分形成したパネルを製造する工程
(b)前記パネルをプレス金型にセットして打ち抜きを行い、前記回路パターン中の防水用部材形成箇所が外側のパネル部分に連結部でつながっている状態にする工程
(c)前記回路パターンに電気部品を実装する工程
(e)前記パネルを射出成型金型にセットし、前記防水用部材形成箇所に防水用部材を成型する工程
(f)前記パネルを別のプレス金型にセットして打ち抜きを行い、前記フレキシブル配線基板の回路パターンを前記パネルから切り離す工程。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記のフレキシブル配線基板製造方法において、工程(c)と工程(e)の間に次の工程が置かれる。
(d)前記防水用部材形成箇所に接着剤を塗布する工程。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記のフレキシブル配線基板製造方法において、前記防水用部材の材料がエラストマーである。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、フレキシブル配線基板は、上記のフレキシブル配線基板製造方法で製造されたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、フレキシブル配線基板の回路パターンを複数台分パネルに形成し、複数台分の回路パターンに対し一括して防水用部材を成型するものであるから、フレキシブル配線基板を1個ずつ射出成型金型にセットして防水用部材をインサート成型するのに比べ、成型時間を大幅に短縮できる。またフレキシブル配線基板自体に触れる必要がないから、フレキシブル配線基板の変形やセットミスが減少し、品質が向上する。そして、回路パターン中の防水用部材形成箇所が外側のパネル部分に連結部でつながっている状態で防水用部材の成型を行うから、射出圧力が加わっても防水用部材形成箇所は安定して位置を保ち、防水用部材形成箇所の位置の不安定性が解消される。さらに、単品のフレキシブル配線基板を射出成型金型にセットする場合に必要であった位置決め用ピンが不要となるため、射出成型金型の品質も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】小型電子機器の第1筐体と第2筐体がフレキシブル配線基板で接続されている状態を示す概略斜視図である。
【図2】実施形態に係るフレキシブル配線基板の正面図である。
【図3】図2のフレキシブル配線基板の側面図である。
【図4】フレキシブル配線基板の回路パターンを形成したパネルの部分平面図である。
【図5】図4と同様のパネルの部分平面図で、プレス金型で打ち抜きを行った後の状態を示すものである。
【図6】図4の状態から進んで、電気部品実装工程と接着剤塗布工程を経た状態を示す、パネル全体の平面図である。
【図7】図6の状態から進んで、防水用部材成型工程を経た状態を示す、パネル全体の平面図である。
【図8】図7のパネルから切り離されたフレキシブル配線基板の正面図である。
【図9】図8のフレキシブル配線基板の防水用部材を、図8とは異なる角度から見た図である。
【図10】従来のフレキシブル配線基板の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す小型電子機器1は、第1筐体2と第2筐体3を備える。第1筐体2と第2筐体3をフレキシブル配線基板10が接続する。
【0014】
図2にフレキシブル配線基板10の実施形態を示す。フレキシブル配線基板10の両端には、第1筐体2及び第2筐体3の内部の図示しない配線基板に接続するためのコネクタ11、12が実装されている。
【0015】
小型電子機器1は防水型であり、フレキシブル配線基板10には、第1筐体2と第2筐体3のフレキシブル配線基板通し孔に対応する箇所に、その通し孔を密閉する防水用部材13、14が形成されている。フレキシブル配線基板10は図3に示すように第1筐体2と第2筐体3を接続する。
【0016】
フレキシブル配線基板10の製造は、フレキシブル配線基板10の回路パターンを複数台分、1枚のパネルに形成することからスタートする。図4には、パネル20の一部分と、その部分に形成された2台分の回路パターン21が示されている。図6の全体平面図に示されるように、パネル20には2行5列、計10台分の回路パターン21が形成される。なお、上記数値は単なる例示であり、発明を限定するものではない。
【0017】
図6で上段に位置する回路パターン21の行において、隣接する回路パターン21同士は、互いに180°ずつ回転させられている。これは、2個の回路パターン21を巴型に組み合わせてスペースを節約するための処理である。下段の回路パターン21の行でも同じ処理が行われている。
【0018】
パネル20の四隅には、当該パネルを金型にセットするときに位置決めの役割を果たす円形の貫通孔22が形成されている。またパネル20の一辺には、当該パネルの方位の目印となるノッチ23が刻まれている。
【0019】
図4の状態のパネル20を図示しないプレス金型にセットし、回路パターン21の周囲に貫通孔を打ち抜く。打ち抜き後は、図5に示すように、回路パターン21の周囲を複数の貫通孔24が、あたかもステンシルを形成するかのように取り囲んだ形になる。
【0020】
回路パターン21には、防水用部材13が形成されるべき防水用部材形成箇所25と、防水用部材14が形成されるべき防水用部材形成箇所26が存在する。防水用部材形成箇所25は外側のパネル部分にブリッジ状の連結部27、28でつながっており、防水用部材形成箇所26は外側のパネル部分にブリッジ状の連結部29、30でつながっている。連結部27、28、29、30は細く形成されているが、防水用部材13、14をインサート成型する際の射出圧力に耐えて防水用部材形成箇所25、26を所定位置に保てるだけの強度を持っている。
【0021】
回路パターン21は、防水用部材形成箇所25、26以外の箇所でも、複数のブリッジ状の連結部31により外側のパネル部分につながっている。
【0022】
続く工程で、回路パターン21に電気部品が実装される。ここでは「電気部品」の語をLSIやチップコンデンサなどの電子部品をも含む意味で用いる。図6には、電気部品として、コネクタ11、12が実装された状態が示されているが、それ以外の電子部品もこの工程で実装できることは言うまでもない。
【0023】
電気部品実装後、防水用部材形成箇所25、26に接着剤が塗布される。接着剤の塗布は、防水用部材形成箇所25、26と防水用部材13、14の密着性を向上させる目的で行われる。図6において、防水用部材形成箇所25、26に施されたハッチングは接着剤塗布が行われたことを表している。個別に切り離した状態の回路パターン21でなく、パネル20に保持されている複数の回路パターン21に対して接着剤を塗布するものであるから、タンポ印刷等で短時間に効率良く塗布を行うことができる。塗布品質も向上する。
【0024】
続く工程では、図示しない射出成型金型に図6の状態のパネル20をセットし、エラストマーの射出成型で防水用部材13、14を成型する。図7に防水用部材13、14成型後のパネル20を示す。
【0025】
従来、フレキシブル配線基板に形成されていた防水用部材は、ゴムを材料とし、押し出し成型でフレキシブル配線基板に取り付けられる構成が多かった。この場合、ゴムが充填不足とならないようにするためには、金型の合わせ目からゴムがはみ出るくらいに圧力をかける必要があり、防水用部材の周囲にバリが発生することを避けられなかった。このため、多数個取りのパネルを金型に入れてゴムの防水用部材を成型する方式は採用困難であった。これに対しエラストマーは、ゴムに比べてバリの発生量が少ないので、多数個取りのパネルを金型に入れて防水用部材を射出成型するという工程を問題なく実現できる。
【0026】
続く工程では、図示しないプレス金型に図7の状態のパネル20をセットし、10個分の回路パターン21の全てに対して打ち抜きを行い、それらをパネル20から切り離す。これにより、図8に示す個別のフレキシブル配線基板10が得られる。
【0027】
防水用部材13、14の射出成型の間、防水用部材形成箇所25は連結部27、28で支持され、防水用部材形成箇所26は連結部29、30で支持されているから、射出圧力が加わっても防水用部材形成箇所25、26は安定して位置を保っている。このため、成型後の防水用部材13、14と防水用部材形成箇所25、26は、図9に示すように(図9には防水用部材14と防水用部材形成箇所26のみ示されている)、相互の位置関係を正しく保っている。
【0028】
上記の工程では、貫通孔24の打ち抜きにより連結部27、28、29、30を形成するとき、あたかもステンシルを形成するかのように回路パターン21の周囲全体に貫通孔24が打ち抜かれることとしたが、別の打ち抜き手法を採用することもできる。すなわち、最初の打ち抜き工程では連結部27、28、29、30の形成に必要な貫通孔24を打ち抜くだけにとどめ、電気部品の実装、接着剤の塗布、防水用部材13、14の成型と工程を進めた後、連結部27、28、29、30を切り離す段階で、フレキシブル配線基板10の全体形状を一気に打ち抜く、という手順にしてもよい。
【0029】
また上記実施形態のフレキシブル配線基板10は、第1筐体2と第2筐体3を備えた小型電子機器1に用いられるものであったが、単一の筐体しか有しない小型電子機器や、3個以上の筐体が組み合わさった小型電子機器に用いられるフレキシブル配線基板にも本発明を適用できることは言うまでもない。
【0030】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は防水用部材を備えたフレキシブル配線基板の製造に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 小型電子機器
2 第1筐体
3 第2筐体
10 フレキシブル配線基板
11、12 コネクタ
13、14 防水用部材
20 パネル
21 回路パターン
24 貫通孔
25、26 防水用部材形成箇所
27、28、29、30 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を順次遂行することを特徴とするフレキシブル配線基板製造方法:
(a)フレキシブル配線基板の回路パターンを複数台分形成したパネルを製造する工程
(b)前記パネルをプレス金型にセットして打ち抜きを行い、前記回路パターン中の防水用部材形成箇所が外側のパネル部分に連結部でつながっている状態にする工程
(c)前記回路パターンに電気部品を実装する工程
(e)前記パネルを射出成型金型にセットし、前記防水用部材形成箇所に防水用部材を成型する工程
(f)前記パネルを別のプレス金型にセットして打ち抜きを行い、前記フレキシブル配線基板の回路パターンを前記パネルから切り離す工程。
【請求項2】
工程(c)と工程(e)の間に次の工程が置かれることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル配線基板製造方法:
(d)前記防水用部材形成箇所に接着剤を塗布する工程。
【請求項3】
前記防水用部材の材料がエラストマーであることを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブル配線基板製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかのフレキシブル配線基板製造方法で製造されたことを特徴とするフレキシブル配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−84673(P2012−84673A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229139(P2010−229139)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】