説明

フレネルレンズおよび照明器具

【課題】入射光量に対する出射光量の比としての射出効率を低下させることなく、金型の製作を容易にできるとともに、射出成形時に離型し易く、製品良品率の高い樹脂製のフレネルレンズを提供する。
【解決手段】プリズム4の高さをh、プリズムの頂点部の半径をr、フレネルレンズ1の光学機能を有する有効径をD、有効径Dの範囲に含まれるプリズムの数をNとする。この場合以下の式(1)で示されるkの値を0.04〜0.38とする。これによって、フレネルレンズの入射光に対する出射光の比率を示す射出効率を必要十分な状態に維持できる。さらに、金型の製造が容易で、かつ、成形されたフレネルレンズの離型が容易になる。また成形されたフレネルレンズの品質を安定させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレネルレンズおよびこのフレネルレンズを用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の前照灯(ヘッドランプ、フォグランプ等)には、凸レンズであるプロジェクタレンズが使われている(例えば、特許文献1,2参照)。
図15は、この前照灯の主要部の概略を示す断面図である。
前照灯は、従来、レンズ保持部101、光源取付部102、リフレクタ保持部103を備えるベース部104と、プロジェクタレンズとしての非球面レンズ106と、光源107と、リフレクタ108とを備えている。
この前照灯では、光源107からの光が、リフレクタ108で反射され、この反射光がリフレクタ108により主に上下方向に集光された後に拡散する状態で非球面レンズ106に入射し、入射した光が非球面レンズ106で方向を変換されて所定の投光範囲を照らすように出射される。
【0003】
しかし、プロジェクタレンズとして非球面レンズ106を用いると、レンズ中心厚が厚くなるので、この非球面レンズ106を樹脂で射出成形により形成すると、樹脂が固まるのが遅く成形時間が長くなり、またヒケ(成形時の収縮による変形)が大きくなる虞がある。
【0004】
また、基本的に、上述のプロジェクタレンズのような投光を目的とするレンズを含む照明用途のレンズでは、例えば、他の用途の光学素子に比較して径が大きい場合があり、レンズ中心厚が厚いと、体積が大きくなることによって、照明装置の各部材の配置などのスペース状の問題が生じたり、スペース効率が悪かったり、重量が大きくなったり、原材料の使用量が多くなってコストが高くなったり、光の透過率が高くない材料では厚みによる透過光量の減衰が大きかったりするといった問題がある。
【0005】
そこで、プロジェクタレンズに厚さを薄くできるフレネルレンズを用いて、樹脂で射出成形により形成することが考えられる。このようにすると、成形時間の短縮、ヒケの低減、レンズの軽量化、小型化(薄型化)および光の透過率の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−207527号公報
【特許文献2】特開2008−47383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、フレネルレンズは、断面形状が略三角形状に形成された複数個のプリズム(輪帯)を備えているので、合成樹脂を材料として、射出成形等の樹脂成形により製造する場合に、金型に成形品(フレネルレンズ)が食いつきやすく成形品が破損して取出せないなどの問題が生じる場合がある。取出しが可能な場合でも、局所的に金型から剥がれにくい部分があると、取出しにより成形品が変形してしまって所望の光学特性が得られなくなってしまう場合もある。
【0008】
また、断面略三角形状のプリズムの頂点側に向かうほど樹脂の流路は狭くなることとなり、樹脂が頂点まで流入せずに途中で固化してしまうことでプリズム頂点部分が丸みを帯びてしまう、いわゆる転写不足となる場合がある。このような場合、樹脂の特性バラつきによる流動性や、金型の温度、成形機の射出圧力などの微細な変動であっても、前記プリズム頂点部分の丸みの状態は大きく変化して、レンズの光学特性が大きくばらついてしまう。
【0009】
また、このようなフレネルレンズの成形金型を製作する場合において、プリズム頂点部分に対応する断面略三角形状の凹部を鋭角の状態にしようとした場合には、先端部分が鋭角の金型加工工具を用いる必要があるが、このような工具を用いた場合は工具先端が摩耗しやすく、工具の頻繁な交換が必要となったり、加工精度が悪くなったり、面粗度が悪くなるなどの問題が生じる。
【0010】
以上のような問題を解消する上で、設計段階において、フレネルレンズのプリズムの頂点部分の断面形状を円弧状とするとともに、それに合わせて金型の凹部の最深部の断面形状を円弧することが考えられるが、上述のようにプリズムの頂点部分の形状が変わると光学特性が変化し、入射光量に対する出射光量が減少する虞がある。特に、照明用途のレンズとしては効率が低下してしまう虞がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、入射光量に対する出射光量の比としての射出効率を低下させることなく、金型の製作を容易にできるとともに、射出成形時の変形や転写不足を抑えて、製品良品率の高い樹脂製のフレネルレンズおよび照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、樹脂を射出成形して形成されるフレネルレンズにおいて、各プリズムの配置方法とレンズの有効径とプリズムの数と、各プリズムの高さを底辺の幅で除算したアスペクト比と、断面円弧状にされたプリズム頂点部分の前記円弧の半径とが、フレネルレンズの品質や光学特性に及ぼす影響について検討し、金型製造の容易さについて検討した結果、プリズムの高さをh(mm)、プリズムの頂点部の半径をr(mm)、フレネルレンズのレンズ有効径をD(mm)、レンズ有効径Dの範囲に含まれるプリズムの数をNとした場合に、前記rを以下の式(1)で示すものとし、かつ、前記式(1)におけるkの値を0.04〜0.38とすることにより、フレネルレンズの入射光に対する出射光の比率を示す射出効率を必要十分なものにしつつ、金型の製造が容易で、かつ、成形されたフレネルレンズの離型が容易になり、また成形されたフレネルレンズの品質を安定させることができることを見出したものである。
【0013】
【数1】

【0014】
ここで、2Nh/Dはアスペクト比を表しており、プリズムの高さhをD/2Nで示されるプリズムの平均ピッチ(プリズムの幅の平均値)で除算したものである。式(1)は、基本的に円弧状の頂点の半径rをアスペクト比で規定したものであり、アスペクト比が高くなると、樹脂の流路が狭められることとなって金型の成形品への転写性が悪くなるので、半径rを大きくする必要がある。アスペクト比に対応して適切な半径rを設定することにより、光学特性を必要十分なレベルで保持しながら、離型性や品質の向上等を図ることができる。
【0015】
なお、プリズムの高さhは、各プリズムの高さを一定とした場合には全てのプリズムの各高さを示すが、各プリズムで高さが異なる場合は、全てのプリズムの平均の高さとする。また、プリズムの頂点にRをつけた場合に、プリズムの高さが低くなるが、ここでの高さは、プリズム4の頂点部7にRを付けない場合の高さであって、Rを付ける前の設計時のプリズムの高さである。また、製造されたフレネルレンズの場合には、一つのプリズムのプリズム面(光学機能面)と分割面(フレネルの元のレンズ形状の光学機能面を分割している面)との断面を直線状とした場合(曲線の場合は、近似する曲線とした場合)に、プリズム面と分割面の頂点側への延長面どうしが交差する部分の高さ、もしくは複数のプリズムにおける上述の延長面どうしが交差する高さの平均を高さhとしている。
【0016】
このような本発明は、射出成形により形成された樹脂製のフレネルレンズであって、
光が入射する第1の面と、光が出射する第2の面とを有し、
前記第2の面に、複数個のプリズムが形成され、
前記プリズムは、プリズム面と、分割面と、これらプリズム面および分割面をつなげる円弧状の頂点部とから断面が略三角形状に形成され、
前記頂点部の円弧の半径をr、前記プリズムの高さをh、レンズ有効径をD、レンズ有効径Dの範囲に含まれるプリズムの数をNとした場合、
前記rを以下の式(1)で示すものとし、
かつ、前記式(1)におけるkの値が0.04〜0.38であることを特徴とする。
【数2】

【0017】
本発明においては、円弧状のプリズムの頂点の半径rを上記式(1)、すなわち、アスペクト比に対応して求める。この際に、上記式でアスペクト比に乗算される係数としてのkの値を0.04〜0.38とすることにより、必要な光学特性を確保しながら成形上の問題を解消する。
すなわち、プリズムの断面円弧状の頂点部の半径rの上限を設ける事によって、成形上は十分な生産性が確保できるにも関わらず、過剰に大きいr寸法としてしまうことでのフレネルレンズの光学特性の劣化を防止し、下限を設ける事で転写不足や離型によるレンズの破損や変形を防止する。
【0018】
成形の際、金型キャビティ内で樹脂がプリズム頂点側に流れ込む事象を考えた場合、金型に触れた樹脂は冷却されて極薄い冷却固化層、いわゆるスキン層が生じる。樹脂がプリズム頂点側に向かうにつれて樹脂が流れるための流路は狭くなっていき、頂点近傍ではプリズム面と分割面のそれぞれに形成されたスキン層が会合して樹脂がそれ以上流れなくなり転写不足が生じる。樹脂が流動し得る転写可能領域はスキン層の厚み分を差し引いて考える必要があり、この領域はアスペクト比によって関連付けられる。
【0019】
図5の様にプリズムの配置方法を変えた場合や、同様の形状でもレンズ径が比例して大きくなる場合において、同じアスペクト比であってもプリズム高さが異なる場合がある。プリズムの高さが低い場合と比較して、プリズムの高さが高い場合は樹脂の熱がより奪われやすく、樹脂温度が下がり流動性が低くなった状態で頂点側に向うことになり、転写不足領域が大きくなることになる。しかし、プリズムの配置方法を変えてプリズムの高さを高くした場合においてはアスペクト比が小さくなり、同様の形状でレンズ径を比例で大きくする場合においてはランナーやゲートも比例させて大きくするので、上記の影響が相殺されるように働く。一方、フレネルレンズに変換される前のレンズから各プリズムに分割する数、すなわち、レンズ有効径内に形成されるプリズムの数を多くした場合、アスペクト比はほとんど変わらないがプリズム高さが減少するため、転写不足が起きにくい傾向となる。
【0020】
転写には様々な要素が影響するが、転写不足となる領域の大きさという視点のマクロ的現象を捉える上では、分割数が同じであれば、プリズムの配置方法やレンズ径に依らず、アスペクト比で一義的に関係付けられる。一方で分割数が異なる場合には、分割数が多いほど転写しやすい傾向にあるから、プリズム頂点Rを小さくすることができるので、式1は分割数Nの影響を考慮した式としている。
【0021】
このようにプリズム頂点部を式1から定義される適切な半径rの円弧とすることにより、転写不足を抑えてプリズム先端部の形状バラつきを抑制し、安定した品質のフレネルレンズを作ることができる。
【0022】
上記式(1)においてアスペクト比を、プリズムの平均高さhとレンズ有効径Dとレンズ有効径Dの範囲に含まれるプリズムの数Nで定義しているのは、前記の説明を根拠とするものであって、プリズム個々の高さや幅からプリズム個々にアスペクト比を求めて例えば個々のアスペクト比の平均値を上記式(1)に適用した場合、プリズムの配置方法を変えるとアスペクト比も変化して、前記説明の根拠にそぐわないものとなる。
また、上記式(1)によれば、プリズムの断面円弧状の頂点部の半径rは、プリズム各々に決められるものではなく、プリズム全ての頂点に共通するものとして一つのr寸法が定められる。そのため、金型加工途中で加工工具を交換したり、複雑な加工を行う必要が無いので、容易に精度良く金型加工することができる。
【0023】
成形されたレンズを金型から取り出す離型について考えた場合、離型のし易さは製品が金型に食いつく部分の面積と関連付けられる。凸型レンズでは、分割面が金型に食いつく部分となるが、プリズム頂点に断面円弧状のRを付けていない場合は、プリズムの配置方法や分割数を変えた場合でも、この部分の面積はあまり大きく変わらない。またレンズ径が比例して大きくなる場合は金型に食いつく部分の面積も比例して大きくなるが、エジェクタピン等の金型に設ける離型機構部も比例して大きくすることができるので、レンズ径が小さい場合と同程度の離型し易さにすることができる。プリズム頂点部にRを設けた場合、金型に食いつく部分の面積はR寸法の大きさに比例して減少するので、離型が容易になる。その減少率はプリズムの分割数によって異なる。プリズム頂点のR寸法が同じでも、プリズム分割数が多いほど、金型に食いつく部分の面積減少率が大きくなる。従って、プリズム分割数が多いほど、プリズム頂点のR寸法を小さくしても同等の離型し易さとすることができるので、式1には分割数Nが離型に与える影響性を考慮した式としている。
【0024】
上述の通り、プリズム頂点のR寸法が大きいほど転写不足が起きにくく離型しやすくなる。プリズム頂点のR寸法がある大きさ以上では、成形上の問題は生じず十分な生産性が確保される。それ以上にR寸法を大きくしても生産性は何ら変わらないが、逆にレンズの射出効率が低下したり、配光特性が変化したりといった不具合が生じることになる。
入射光量に対する出射光量の比である射出効率を考えると、分割数を多くすれば、各プリズムのプリズム面の断面を直線としても、フレネル化される前の元のレンズの光学機能面に各プリズムのプリズム面を合わせた形状が元の光学機能面により近似していくことになるので、基本的には、レンズの光学特性が向上するはずであるが、各プリズムが基本的に小さくなる(高さが低くなる)ことから、プリズムの頂点部分を円弧状にする場合に、分割数に関わらず頂点部の円弧の半径rを同じとすると、この半径rのプリズムの高さに対する割合が大きくなり、これにより各プリズム面の光学特性は悪化する。この場合に、分割数を増やすことによるメリットよりも、分割数を増やすことで、円弧状の頂点部分が増えることにより光学特性が悪化するデメリットの方が大きくなる虞がある。これらのことからプリズムの数を増やした場合には、上述の半径rを小さくすることが好ましい。
【0025】
また、フレネルレンズとしたことにより、従来の非球面レンズに対して、軽量化、薄型化、薄型化によるスペース効率の向上、薄型化による原材料の削減によるコストダウン、薄型化による成形時間の短縮、薄型によりひけによる変形量の減少を図ることができる。
【0026】
上記構成において、kの上限値がk=0.5553e-0.02N以下であることが好ましい。
【0027】
また、上記構成において、前記各プリズムは、同心円状または同心の楕円状に形成されているようにしてもよい。
【0028】
また、上記構成において、前記プリズムの前記分割面には、逃げ角が設けられ、
前記分割面の前記逃げ角は、
光源から入射した光のうちの前記隣り合うプリズムの前記プリズム面と前記分割面とから構成される谷の最深部に至る光の方向に、当該谷を構成する当該分割面がほぼ沿うように設定されていてもよい。
【0029】
各プリズムの高さhが、当該高さhの平均に対してプラス・マイナス10%以内に設定されていてもよい。
【0030】
また、レンズ径が20mm〜80mmであることが好ましい。
【0031】
また、上記構成において、前記プリズムは、前記プリズム面および前記分割面の断面形状が直線または曲線であるようにしてもよい。なお、曲線は凸となるものであり、かつ、分割面の断面形状の曲線とする場合に、分割面の基端部からの離型方向に沿った線分を想定した場合に、凸となる曲線が前記線分から突出しないようになっている必要がある。
【0032】
また、上記構成において、前記各プリズムは、高さが略同一であり、前記プリズム面の傾斜角に対応して底面の幅が異なるようにしてもよい。
【0033】
また、上記構成において、レンズ有効径の範囲内における最大厚みは、0.5〜4mmであるようにしてもよい。
【0034】
また、上記構成において、前記第1の面および第2の面の少なくともいずれか一方に、反射防止膜が形成されているようにしてもよい。
【0035】
また、上記のようなフレネルレンズを用いて照明器具を構成するようにしてもよい。
このような照明器具には、例えば、車両用前照灯(ヘッドランプ、ホグランプ等)、交通信号灯、スポットライト、ダウンライト、白熱灯、蛍光灯などが含まれる。
【0036】
また、上記照明器具の光源がLEDであるようにしてもよい。
【0037】
また、光が入射する第1の面と、光が出射する第2の面とを有し、前記第2の面に、複数個のプリズムが形成され、前記プリズムが、プリズム面と、分割面と、これらプリズム面および分割面をつなげる円弧状の頂点部とから断面が略三角形状に形成されるフレネルレンズを成形するための成形型であって、前記頂点部の円弧の半径をr、前記プリズムの高さをh、レンズ有効径をD、レンズ有効径Dの範囲に含まれるプリズムの数をNとした場合、前記rが以下の式(1)で示されるものとされ、かつ、前記式(1)におけるkの値が0.04〜0.38にされる前記プリズムの形状に対応する凹部が形成されているようにしてもよい。
【数3】

【0038】
光が入射する第1の面と、光が出射する第2の面とを有し、前記第2の面に、複数個のプリズムが形成され、前記プリズムが、プリズム面と、分割面と、これらプリズム面および分割面をつなげる円弧状の頂点部とから断面が略三角形状に形成されるフレネルレンズを製造するに際し、前記頂点部の円弧の半径をr、前記プリズムの高さをh、レンズ有効径をD、レンズ有効径Dの範囲に含まれるプリズムの数をNとした場合、
前記rを以下の式(1)で示すものとし、かつ、前記式(1)におけるkの値を0.04〜0.38にするものとしてもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、フレネルレンズの光学特性を必要十分なだけ保持しつつ、金型の製造を容易とし、成形されたフレネルレンズの離型性の向上によりフレネルレンズの製造を容易とし、さらに離型による変形や転写不足を抑えてフレネルレンズの品質を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係るフレネルレンズを示す正面図であり(b)はフレネルレンズを示す断面図である。
【図2】図1(b)の一部の拡大図である。
【図3】図2の一部の拡大図である。
【図4】図2の一部の拡大図である。
【図5】フレネルレンズのバリエーションを示す断面図であって、(a)はプリズムの高さが略一定のフレネルレンズを示す断面図であり、(b)はプリズムの幅が略一定のフレネルレンズを示す断面であり、(c)は、プリズムの幅が略一定で、プリズムの頂点位置を合わせたフレネルレンズを示す断面図である。
【図6】プリズム幅が一定のフレネルレンズの離型時の問題を説明するための図である。
【図7】フレネルレンズの離型時の固化収縮による問題を説明するための図である。
【図8】フレネルレンズのプリズムの円弧状の頂点のRによる光学的機能を有するプリズム面の減少を説明するための図である。
【図9】分割面の逃げ角の設定を説明するための図である。
【図10】式(2)基づく分割面の逃げ角の設定を説明するための図である。
【図11】フレネルレンズを用いた照明器具を示す断面図である。
【図12】フレネルレンズを成形する金型のキャビティ部分を示す断面図である。
【図13】実施例の結果を示すグラフである。
【図14】実施例の結果を示すグラフである。
【図15】実施例の結果を示すグラフである。
【図16】従来の非球面レンズを用いた照明器具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1から図4に示すように、本発明の実施の形態に係るフレネルレンズ1は、光が入射する第1の面2と、光が出射する第2の面3とを有し、第2の面3に同心円状に複数個のプリズム4を形成したものである。なお、図2は、図1(b)のフレネルレンズ1の中心からレンズ有効径D(光が入射されてレンズとして機能する範囲の径)部分の外縁部分までの拡大図であり、図3は図2の内径側の拡大図であり、図4は図2の外径側の拡大図である。
【0042】
各プリズム4は、円板状のベース10の第2の面3に、ベース10の中心を中心として同心円状に複数配置されている。また、図3および図4に示すように、プリズム4は、プリズム面5と、分割面6と、これらプリズム面5と分割面6とが繋がる頂点部7とから断面が略三角形状に形成されている。なお、中心のプリズム4は、断面が二等辺三角形状に形成され、三角形の左右の斜辺を形成する両方の面がプリズム面5とされている。
また、ベース10のプリズム4が形成されていないレンズ有効径Dの外側となる部分がフランジ部11とされ、フレネルレンズ1の取付等に利用される。
【0043】
このフレネルレンズ1のプリズム4においては、その断面形状のプリズム面5部分と分割面6とに対応する辺になる部分が直線状とされている。なお、プリズム4が円環状に形成されているので、プリズム面5および分割面6は、円錐台の外周面状の曲面になっている。また、プリズム面5と分割面6とが繋がる頂点部7は、その断面が円弧状に形成されており、その円弧の半径をrとする。また、隣り合うプリズム4どうしの間は、断面が略三角形状の谷(凹部)になるが、谷の最深部も円弧状に形成するものとしてもよい。なお谷の最深部は、成形の際に樹脂が最初に接触する部分であるから円弧状でなくても転写不足となることは無く、また金型製作において、この部分に対応する金型は凸状であるので、加工工具の先端形状が鋭角でなくても金型は容易に角状に形成できるので、円弧状である必然性は無いが、レンズ自体の強度を高める意味では角状でなく微小な円弧状に形成されるのが望ましい。
【0044】
また、このフレネルレンズ1では、各プリズム4のRを付ける前の設計上の高さh(断面が略三角形状のプリズム4の底辺から、プリズム面5と分割面6を頂点側へ延長して定まる交点までの距離)が略一定となるようになっている。なお、プリズム面5の傾斜角度は、レンズとして設定されているとともに、個々のプリズム4毎に異なるものとなっていることから、プリズム4の底辺のフレネルレンズ1の径方向に沿った幅は、個々のプリズム4毎に異なる場合がある。プリズム面の傾斜角度が大きいほど、幅が狭くなる。なお、各プリズム4のRを付ける前の設計上の高さhを精度高く一定にする必要はなく、例えば、各プリズム4のRを付ける前の設計上の高さhの違いを基準となる高さhの10%以内とすることが好ましい。
【0045】
このように各プリズム4の高さを略一定にすることによって、他のプリズム4に対してかなり高いプリズム4が設けられることがなく、金型の製造が容易になるとともに、離型が容易になり、かつ、ヒケに対して有利な構造になる。フレネルレンズ1が冷えて縮小する際に、厚い部分と、薄い部分とで縮小度合いに差がでることによって、ひけによる変形が生じることになり、各プリズムの高さを略一定とすることによって、ヒケによる変形も抑制することができる。また、フレネルレンズの場所によって大きく厚みが異なる部分がなくなり、厚みが平均化することから、厚みに基づいて光が透過する距離が大きく異なることがないので、光の透過距離に基づく内部透過率の違いにより明暗が生じるのを防止することができる。
【0046】
このようなフレネルレンズ1においては、プリズム4のRを付ける前の設計上の高さをh、頂点部7の円弧の半径をr、レンズ有効径をD、レンズ有効径Dの範囲に含まれるプリズムの数をNとした場合に、前記rを以下の式(1)で示すものとし、かつ、前記式(1)におけるkの値を0.04〜0.38になるように設定している。
【数4】

【0047】
ここで、D/2Nは、レンズ有効径Dをプリズムの数の2倍で除算したものであり、プリズム4のフレネルレンズ1の径方向に沿ったピッチを示すものである。したがって、D/2Nは、上述の各プリズム4のフレネルレンズ1の径方向に沿った底辺の幅bの平均値を示すものとなる。
また、上述のように各プリズム4の高さを略一定にした場合は、高さhは各プリズム4で共通になるが、各プリズム4で高さが異なっている場合がある際には、高さhを平均値としてもよい。なお、ここでの高さは、プリズムの頂点にRを付ける前の設計上の高さであり、プリズム4の断面を見た場合に、プリズム面となる辺の延長線と、分割面となる辺の延長線とが交差する交点位置がプリズム4の設計上の仮想の頂点であり、底辺から設計上の仮想の頂点までの距離が高さhである。
【0048】
また、高さhを幅bで除算したものをアスペクト比とした場合に、2Nh/Dは、平均幅で高さ(平均)を除算した平均アスペクト比になる。この場合に、後述のように、アスペクト比が高くなるほど、すなわち、断面略三角形状のプリズム4の幅bに対して高さhが高くなり、より鋭角な(尖った)三角形になるほど、成形時にプリズム4の頂点付近の変形が起きやすく離型が難しくなるとともに、金型のプリズムに対応する凹部の最深部に樹脂が流入し難くなり、転写性が悪化する。したがって、成形の容易さを考慮した場合に、アスペクト比が小さい方が好ましい。
【0049】
また、離型のし易さや、転写性の良さを考慮した場合に、プリズム4の頂点部7の円弧の半径rが大きい方が好ましい。
一方、フレネルレンズの光学特性、特に照明用途に用いた場合に、入射光に対する出射光の割合である射出効率を高くする上では、半径rが小さい方が好ましい。
【0050】
したがって、成形時の転写性の良さや、離型のし易さを考慮した場合にkの値が0.04以上であることが好ましい。成形上の効果が見込めないにも関わらず必要以上に大きな半径rを設定して光の射出効率が低下してしまうことを防止する上では、kの値が0.38以下であることが好ましい。この場合、選択した分割数とk値の組合せによっては、フレネル形状を設計する上でのベースとなっている元のレンズよりも射出効率が落ちてしまう場合がある。射出効率が最優先される場合には、少ない分割数とするか、小さなk値を選択することで、必要十分な効率が確保できる。
【0051】
レンズの見た目が重視されるために、分割数を多くして個々の環状のプリズムを目立たせたくない場合もある。このような場合には、分割数が多くなることで、射出効率が元のレンズよりも悪くなってしまう虞がある。この様な場合には、kの上限値をk=0.5553e-0.02N以下とすることが好ましく、分割数とk値がどのような組合せになっても、もともとのレンズより射出効率を良くすることができる。
【0052】
ここでは、フレネルレンズ1の形状として、元のレンズの光学機能面を分割する際に、プリズム4の高さを略一定としてプリズム底部の幅を可変とした形状ものについて説明したが、図5に示すように、フレネルレンズとしては、フレネルレンズ1以外に、プリズム4の底部幅を略一定としてプリズム4の高さを可変とした形状のフレネルレンズ12や、プリズム4の底部幅を略一定とするとともに、プリズム4の頂点位置が略一定となるようにプリズム4の底部の位置を可変としたフレネルレンズ13などがあり、これらのフレネルレンズ12,13も含めて、上述の式(1)について説明する。
【0053】
フレネルレンズ1の形状においては、光軸中心から外周部へ向かうと、プリズム4の高さは同じであるがプリズム4の底部幅が徐々に狭くなっていくようになっている。この場合に、プリズム4の底部幅はプリズム4の頂点方向へ流れる樹脂の流入口であり、狭くなればプリズム4の頂点部へ樹脂が流れ込みにくくなる。そのため、外周側のプリズム4ほどプリズム4の頂点部分まで樹脂が充填されにくく、金型への転写が不十分となって所定形状とならない場合がある。すなわち、金型転写が不十分になり、この場合は、成形上の温度や材料自体の流動性の微小なバラつきも、形状に対しては大きく影響してバラつきが大きくなり、その結果、配光特性などの品質バラつきも大きくなる虞がある。
【0054】
フレネルレンズ12の形状においては、樹脂流入口であるプリズム4の底部幅はどのプリズムでも同じであるが、光軸中心から外周に向かうにつれて、プリズム4の高さが高くなるから、フレネルレンズ1と同様に光軸中心から外周に向うにつれて、プリズム4に樹脂が流れ込みにくい傾向となっていくことになる。
【0055】
同じ分割数の場合において、フレネルレンズ1とフレネルレンズ12の形状を比較すると、例えば同じ最外周のプリズム4同士を比較した場合、プリズム4の底部幅に対するプリズムの高さの比(アスペクト比)はフレネルレンズ12の方が小さい。この傾向は、外周から2番目のプリズム4どうし、あるいは3番目、4番目、N番目のプリズム4どうしであっても同じ傾向であって、フレネルレンズ12の方が金型形状の転写に有利と考えられる。その反面、フレネルレンズ12のプリズムの高さhは、外周側のおよそ4割のプリズムでフレネルレンズ1のプリズム高さよりも高くなり、その分、樹脂の熱が奪われて流動性が低くなることで、転写しにくいと言える。結果的にはこれらの効果が相殺されることで、ほぼ同程度の転写のしやすさになるものと考えられる。
【0056】
プリズム4の分割数(プリズム4の数)で比較すると、フレネルレンズ1およびフレネルレンズ12のどちらの形状の場合でも、分割数が多くなればアスペクト比は極僅か大きくなる傾向はあるものの、ほぼ同程度と考えられる。しかし、プリズムの高さhは分割数が多いほど低くなるので、分割数が多いほど、転写には有利と考えられる。
【0057】
また、金型40(図6に図示)から成形品を取りだす離型の工程を考えた場合、プリズム4の頂点部付近の変形の問題がある。図6に示すように、フレネルレンズ12の形状の場合、特に外周側のプリズム4の頂点7付近の変形が生じやすい。金型40から成形品が徐々に離れていく過程において、まず光軸中心付近のプリズム4が金型40から完全に離れていき、最外周部のプリズム4は最後に金型40から離れることになる。このため、離型時の成形品姿勢が安定に欠け、姿勢が傾くことで金型40と接している部分(外周側のプリズム4の分割面6)に外力が加わりやすい。
【0058】
フレネルレンズ1の形状の場合は、中心側から最外周側のプリズム4まで最終離型部が存在する状態であり、全プリズム4が略同時に離型することになり、成形品姿勢が安定しやすい上、仮に姿勢が傾いた場合にも、外力が全プリズム4で分散されるため、変形を生じにくくなる。また、フレネルレンズ13の場合も、基本的に全プリズム4が略同時に離型することになり、フレネルレンズ1と略同様に変形を生じにくくなる。
どの形状の場合においても、プリズム4の頂点部7は肉薄であるため、少しの外力で変形を起こしやすい。また、アスペクト比が大きいほどプリズム4の先端(頂点部7)は肉薄となり、外力に対してより変形しやすくなる。この変形は、頂点部にRを設けることにより、肉薄部分を減少させ、抑制できる。
また、離型時の成形品姿勢の安定及び内側輪帯と外側輪帯の離型タイミングのずれによる離型の遅れる部分の変形防止のためには、輪帯にRを形成した後の各輪帯の高さが揃っているのが好ましい。成型品の全輪帯の内周側の谷部分の最低高さを基準として、Rが設けられた各輪帯の高さの平均をh’とした場合、Rが設けられた各輪帯の高さはh’の±10%以内であるのが望ましい。
【0059】
離型時のもう一つの問題として、成形品の全体的な歪みや、クラック、破損などが考えられる。射出成形においては、可動金型と固定金型の二つの金型が用いられ、離型の際は二つの金型を開いて成形品を取りだすが、離型する直前の成形品は、図7に示すように、片側の面が一方の金型40内に収まった状態であり、反対面は先に金型から離れ、金型に拘束されずに空気に接した状態となっている。
【0060】
金型40と接している面は金型40と同じ高温になっており、一方、金型に拘束されていない面は空気によって冷却された状態となっているため、固化収縮によって成形品には常に圧縮の内部応力が働いており、それが金型40に食いつく力となって離型をし難くする。
【0061】
樹脂材料の種類や金型40の温度等でも収縮の度合いが異なるが、形状的な視点で見れば金型40に食いつく面積が多いほど、離型し難くなる。
図7に示すように元のレンズ形状を分割した垂直面である分割面6に食いつく力が生じるため、これにより離型がし難くなる。フレネルレンズ1とフレネルレンズ12の場合で比較すると、分割面6の面積はほとんど変わらない。分割数で比較した場合、分割数が多い方が分割面6の面積は若干増加する傾向ではあるが、さほど大きな違いは無い。プリズム頂点部にRを設けた場合、金型に食いつく部分の面積はR寸法の大きさに比例して減少するので、離型が容易になるが、その減少率はプリズムの分割数によって異なる。プリズム頂点のR寸法が同じであれば、プリズム分割数が多いほど、金型に食いつく部分の面積減少率が大きくなる。従って、プリズム分割数が多いほど、プリズム頂点のR寸法を小さくしても同等の離型し易さとすることができる。
【0062】
なお、分割面6は、後述のように抜き勾配を設けることで、離型方向に沿った垂直面から少し角度が異なるようにされ、分割面6を垂直面とした場合よりも、離型し易い形状とされる。成型品の収縮により離型方向へ応力が発生することにより、さらに離型は容易となる。
【0063】
成形品は一般に成形品周囲に配置されたエジェクタピンで金型から離型されるが、上述の食い付き力が大き過ぎる場合には、成形品が金型から押し出されずエジェクタピンが成形品にめり込んでしまったり、エジェクタピン近傍とエジェクタピンから離れた領域での変形・歪みが生じたり、甚だしい場合は、成形品にクラックや破損が起きる。同じ直径のレンズの場合、フレネルレンズに分割する前の設計上の元のレンズの厚みが厚いほど、分割面6の面積は大きくなるので、金型に食いつく力が大きくなって離型し難くなる。他方、厚みが同じでも、レンズ直径が大きい場合には、例えばエジェクタピンの本数を増やしたり、エジェクタピンの径を大きくすることができるため、離型は容易になる。
【0064】
上述の通り、フレネルレンズの成形においては、「転写不足」と「離型によるプリズム4の頂点7付近の変形」と「離型による全体的な歪みや破損」の問題がある。
【0065】
「転写不足」ついては、アスペクト比が大きい程、転写しにくい。レンズ形状の違いによってはさほど大きくは変わらないが、分割数が多いほど転写しやすくなる傾向がある。
「離型によるプリズム4の頂点7付近の変形」については、アスペクト比が大きいほど、先端が薄肉となるから変形しやすい。フレネルレンズの形状についてはフレネルレンズ12の形状では変形が起きやすい。
「離型による全体的な歪みや破損」については、プリズム頂点にRを付けることで金型に食いつく面積が減少して離型し易くなる。金型に食いつく面積はレンズ形状による差はほとんどないが、分割数が多い程、Rを付けたことによる効果が大きくなる。
【0066】
このような成形上の問題を解決するためには、プリズム4の頂点部7にできるだけ大きいrを設けることが望ましい。しかしながら、半径rを大きくすることは、図8に示すように、そもそもの光学機能面としてのプリズム面5を減少させることとなり、所望の配光特性や射出効率が得られなくなってしまう場合がある。また、それぞれのプリズムの個々にr形状を変えることは、金型製作の観点上から望ましくない。
【0067】
例えば、個々にr形状を変えようとした場合、個々のr形状に合った金型加工用バイトを用いて複数工程にまたがって金型加工を行うか、最も小さいr形状に合わせて金型加工用バイトを選定し、バイトの輪郭制御によって大きいR形状を加工することになる。
前者の方法によれば、プリズム4に対応する金型40の凹部のrの違い毎の複数工程(あるいはバイト交換)にまたがるために、輪帯間の位置を精度よく保てなくなる虞がある。
【0068】
後者の方法の場合は、加工機械制御が複雑化するとともに、加工面の面粗さを十分確保するために加工時間が長くなってしまい、加工環境の温度変化による位置ズレやバイト摩耗によるバイト形状のズレが生じて、やはり位置精度、形状精度を十分に精度よく保てなくなる虞がある。
【0069】
以上のような光学特性上の課題と金型製作上の課題も考慮したうえで、成形不良発生メカニズムとフレネル形状との関連性について検討した。その結果、生産性に優れ且つ光学特性の良いフレネルレンズを実現するために、プリズム4の頂点部7に設けるRの半径rを適切な値とすることを見出し、上述の式(1)において、上述のように、kの範囲を0.04から0.38にするものとした。
【0070】
この実施形態の基本的思想はアスペクト比に係数を掛けて適切なR寸法を算出することにある(プリズム4の断面円弧状頂点部7の半径rを算出することにある)。
また、上述の金型40の製造の問題を考慮して、プリズム4の個々にRの形状(半径r)を変えるので無く、プリズム4の全てを一様なRとするために、アスペクト比は、代表値として平均のアスペクト比を採用する。
【0071】
同じアスペクト比でも高さhが異なると、Rを付けたことによる見掛け上のアスペクト比の減少量が異なってくる。そして高さhは分割数によって変わってくる。
そのためその補正分として分割数Nを式中に取り入れるものとした。検討の結果、(1/√N)とするのが現実に即している。
【0072】
ここでhはrを含まない設計上のプリズム4の高さであって、成形されたフレネルレンズから設計状の高さを求める場合には、上述のようにプリズム面5と分割面6の2面それぞれの延長面の交点(線)から算出される。
【0073】
この式(1)は、上述のようにフレネルレンズ1の形状に示すプリズム4の高さ一定のフレネル形状だけに適用されるものではない。フレネルレンズ12の様に高さ可変の場合は、全プリズム4の平均高さを高さhとして適用することができる。同様にフレネルレンズ13にも式(1)を適用することができる。
【0074】
なお、全プリズム4の平均高さはフレネルレンズ1の形状でもフレネルレンズ12の形状でも同じになる。基本的にフレネルレンズ13でも、全プリズム4の平均高さがフレネルレンズ1と略同様となる。
断面形状でみてプリズム4の頂点部7に設けられる円弧は真円の円弧に限定されるものではなく、例えば断面形状が円に対する近似多角形も含むものであり、同様の効果が期待できる。
【0075】
また、レンズの有効径内に設けられたすべてのプリズム4の頂点分7の半径rが上述のkの範囲を満たす値に設定されている必要はなく、フレネルレンズ13の光学特性が許容される範囲に収まるならば、一部のプリズム4の頂点部7における半径rの値が上述のkの範囲から外れる値であってもよい。例えば、プリズム4の頂点部7の半径rは、1個から数個のプリズム4を除いて上述のkの範囲内の所定のkに対応する所定のrに設定されるが、前記1個から数個のプリズム4の頂点部7の半径rが、上述のkの範囲から外れるkの値に対応する値となっていてもよい。
【0076】
このような式(1)によりプリズム4の頂点部7の半径rが設定されたフレネルレンズ1,12,13においては、最小rを定義することで、食いつきによる成形品の破損、クラック、歪みを抑制できる。
また、kと平均アスペクト比の積としてrの範囲を定義することで十分生産可能な歩留りとすることができる。kと平均アスペクト比の積として最大rを定義することで、歩留り向上に寄与しない無駄に大きなrを付けることが無く、射出効率も確保できる。
【0077】
また、このフレネルレンズ1,12,13では、例えば、点光源16の拡散光を入射すると、分割面がフレネルレンズ1とされる元のレンズの光軸方向にほぼ沿っている場合に、フレネルレンズ1、12,13から出射した光の一部がプリズム4の分割面6に当たり、隣り合うプリズム4どうしの間で多重反射し、射出効率を低減させる要因になる。
また、成形品としてのフレネルレンズ1,12,13を離型する際には、上述のように固定金型に対して可動金型が移動する。この際に、図7に示すように、他方の金型から離れ、一方の金型40に保持された成形品としてのフレネルレンズ1,12,13の離型方向と上述の可動金型の移動方向とが同じになり、かつ前記光軸方向に沿ったものになる。金型40に対してフレネルレンズ1、12,13の離型方向に分割面6が沿っていると、離型時に分割面6と金型内面とが接触した状態で離型されることになり、プリズム4の先端部分の変形の要因になる。また、上述の食い付きにより離型が難しくなるとともに、フレネルレンズ1,12,13の破損等の要因になる。
【0078】
ここで、離型を容易にするためにプリズム4の分割面6を傾けて上述の逃げ角を設定することが考えられるが、この逃げ角の設定いかんによっては光学機能面としてのプリズム面が減少し、光学特性が劣化する恐れがある。そこで、図9に示すように、フレネルレンズ1の所定位置に点光源(光源)20を設けた場合に、点光源20から入射した光のうちの隣り合うプリズム4のプリズム面5と分割面7とから構成される谷8の最深部9に至る光(L)の方向に、当該谷8を構成する当該分割面7がほぼ沿うように設定する。なお、逃げ角は、上述の金型40に対するフレネルレンズ1の離型方向に対する角度である。
【0079】
これにより、フレネルレンズ1を通過した光が分割面6に当たるのを抑制し、多重反射を抑制することができる。このように分割面6に逃げ角を設けることにより、光の射出効率が低下する虞があるが、上述のように逃げ角を設定することにより、プリズム4で多重反射による射出効率の低下が生じるのを防止することができる。これらのことから逃げ角を設けることにより離型を容易にするとともに、射出効率等の光学特性の劣化を抑制することができる。すなわち、逃げ角により分割面6を傾けることによる光学特性の劣化を、多重反射を防止して光学特性を向上することにより抑制することができる。
【0080】
なお、谷8の最深部9に至る光は、フレネルレンズ1に入射する際に屈折してから最深部9に至ることになり、フレネルレンズ1の屈折率に基づいて決定される。この例では、例えば、自動車の前照灯に用いられるので、基本的に可視光領域で波長に広がりを持つ例えば白色LEDが用いられることになる。したがって、広い範囲の波長が用いられており、屈折率はその中心波長における屈折率を採用する。
【0081】
分割面6の逃げ角が上記光Lに精度高く沿っている必要はなく、上述谷8の最深部9を通過する光の角度に対してプラス・マイナス3度以内の範囲であればよいが、逃げ角は離型上の観点から逃げ角が最低限0.5度は必要とされる。
【0082】
ここで、点光源20から入射した光のうちの隣り合うプリズム4のプリズム面5と分割面7とから構成される谷8の最深部9に至る光(L)の方向に、当該谷8を構成する当該分割面7がほぼ沿うように設定する方法の一例としては、例えば、図10に示すように、フレネルレンズの中心軸から前記プリズム4の頂点までの距離をX、前記レンズ後端面と前記逃げ角に設定されている分割面の延長面との交差位置からフレネルレンズの中心軸までの距離をX、前記プリズムの頂点のレンズ後端面からの高さをH、レンズ後端面から光源20までの距離をB、レンズの屈折率をnとした場合に、下記の式(2)で定義される逃げ角を採用することができる。
=X+(h×tan(sin-1(sin(tan-1(X/B))/n)))・・・(2)
【0083】
また、式(2)は、後述の式(3)、式(4)、式(5)から求められる。
【0084】
【数5】

【0085】
【数6】

【0086】
【数7】

【0087】
式(4)の角度θ0に式(3)を代入した式を、式(5)の角度θ1に代入することで式(2)を求めることができる。
【0088】
レンズ径を20mm〜80mmとすることが好ましい。なお、フレネルレンズ1,12,13のレンズ径を20mmより短くした場合には、上述の金型への食い付きにより、フラネルレンズ1,12,13のエジェクタピンによる離型が難しくなり、エジェクタピンに成形品が押された場合に、変形、クラック、破損等の虞がある。
また、レンズ径を80mmより大きくすると、レンズ中心部からのエジェクタピン距離が長くなり過ぎて、たわみ変形が起きやすくなる。
【0089】
フレネルレンズ1は、そのレンズ有効径Dの範囲内の最大厚みが0.5mm〜4mmであることが好ましい。最大厚を0.5mmより薄くすると、それにともなってフレネルレンズ1の厚みが薄くなり、フレネルレンズ1の形状を保持することが難しくなる。また、最大厚を4mm以下とすることにより、成形時間が長くなるのを防止できる。
【0090】
フレネルレンズ1の光が入射する第1面2および光が出射する第2面3の少なくとも一方にARコート(反射防止膜)を施すことも可能である。
【0091】
ARコートとしては、例えば、二酸化ケイ素と、二酸化ジルコニウムからなる4層構造のものが適用できる。例えば、ARコートは、ZrO2−SiO2−ZrO2−SiO2といった構造となっている。
第1面にARコートを設けた場合に、第1面で入射光が反射するのを防止して、光の射出効率を向上することができる。
また、第2面側にARコートを施した場合には、上述の多重反射を防止し、光の射出効率を向上することができる。
上述の4層のARコートを用いた場合には、例えば、ARコートが無い場合の反射率が4%程度だった場合に、3%程度改善して、反射率を1%程度に抑えることが可能になる。これにより、例えば分割数を増やしたい場合、十分な製造マージンを確保しようとすると射出効率が低下してしまうが、ARコートを用いることにより射出効率を改善できる。
また、ARコートには、単一波長用のARコートもあるが、ここでは、上述のように単一波長ではなく、白色光が用いられるので、可視光領域に対応するARコートが用いられることになる。
【0092】
なお、上記例では、複数の円環状の径の異なるプリズム4を同心円状に配置したが、プリズム4を円環状ではなく、楕円環状としてもよく、楕円環状のプリズムを同心状に配置してもよい。この場合、長径側と短径側で断面形状が異なるが、式(1)において有効径Dをそれぞれの径として、長径側と短径側でrが同一となるように、それぞれのkを定める。但しkが0.04〜0.38の範囲内となっている必要がある。
【0093】
また、プリズム4の断面形状において、プリズム面5となる辺と、分割面6となる辺を円弧状の頂点部7を除いて直線状に形成したが、これら片のどちらか一方または両方を曲線状としてもよい。
【0094】
なお、フレネルレンズ1のプリズム4が離型できる形状である必要があり、前記各辺を曲線状とする場合に、例えば、凸となる曲線状となる。この場合も離型の邪魔にならない程度に突出する曲線である必要がある。この場合に離型性が向上する可能性がある。
また、プリズム面5を曲線状とする際に、例えば、非球面形状等に対応した曲線とすることにより、光の射出効率を向上することができる。
【0095】
このようなフレネルレンズ1においては、例えば、非球面レンズ等の厚いレンズをフレネルレンズ1とすることにより、大幅な軽量化、薄型化を図ることができる。これにより、成形時に速く冷却することから成形時間を大幅に短縮することができる。また、薄型可によりレンズの配置を容易にすることができる。また、成形時間の短縮および薄型化による原材料の低減によりコストダウンを図ることができる。
【0096】
また、前記kの値を上述のように設定することで、射出効率の低下を抑制しつつ離型し易い構造とするとともに、金型の製造を容易にし、かつ、安定した品質のフレネルレンズ1を提供することができる。
【0097】
次に、このフレネルレンズを用いた照明器具を説明する。照明器具は、例えば、自動車の前照灯であり、その主要部として、図11に示すように、レンズ保持部31、光源取付部32およびリフレクタ保持部33を備えるベース部34と、プロジェクタレンズとしてのフレネルレンズ1と、光源37と、リフレクタ38とを備えている。光源37は、LEDとされている。
【0098】
ベース部34の光源取付部32に取り付けられた光源37の光は、リフレクタ38で主に上下方向に集光されて、フレネルレンズ1に入射させられる。フレネルレンズ1は、入射した光を所定の投光範囲に投光するように光の方向を変換する。
【0099】
この照明器具においては、従来の非球面レンズに代えて投光用のレンズとしてフレネルレンズ1を用いているので、上述のように軽量化および薄型化による効果を得ることができる。特に、薄型化により、前照灯の設置位置におけるスペース効率の向上を図ることができる。また、上述のように高効率で製造が容易でさらに品質が安定したフレネルレンズ1を用いることにより高性能の照明器具を低コストに製造することができる。
【0100】
この照明器具では、光源37としてLEDを用いているので、LED以外の他の光源に比較して発熱量が少なく、フレネルレンズ1に対して大きな熱の影響を与えることがなく、フレネルレンズ1が樹脂製であっても、熱による変形等がおきない。
【0101】
また、LEDは、発光する光の波長が限定されるので、フレネルレンズ1の設計において、波長に対応する屈折率を用いることで、レンズとしての機能の効率化を図ることができる。特に、上述のように逃げ角を決定する際の屈折率を波長に対応したものとすることで、より確実に多重反射を防止して、光の出射の効率を向上することができる。なお、照明器具は、前照灯に限定されるものではなく各種の照明器具に応用可能であるが、特に、フレネルレンズ1を用いて所定範囲に光を投光する照明器具に好適にフレネルレンズ1を用いることができる。
【0102】
次に、フレネルレンズの製造に用いられる金型について説明する。
射出成形において、二つの金型によりフレネルレンズ1が成形される。二つの金型の一方が固定金型で、他方が可動金型となっている。離型時には、固定金型に対して可動金型を離れるように移動させることになる。
【0103】
この可動金型の型面には、フレネルレンズ1の第2面3を成形するための図12に示すキャビティ41が設けられている。キャビティ41には、フレネルレンズ1の第2の面3の複数のプリズム4に対応して溝42が複数形成されている。この溝42の内部空間は、プリズム4の形状に対応する形状となっているとともに、プリズム面5、分割面6および頂点部7の外面それぞれに対応する面が形成されている。
【0104】
基本的に、各溝42の形状は、フレネルレンズ1の各プリズム4に対応するものとなっているが、金型の溝42に対して成形品であるプリズム4は少しだけ収縮するものとなる。金型のキャビティ寸法は成形に用いられる樹脂の収縮を見込んで、樹脂の成形収縮率から決定される比率で、最終的な製品よりも大きめに設定されている。
キャビティ41の内面を、上述のフレネルレンズ1のプリズム4に対応する形状とすることで、溝42の最深部が尖った形状ではなく、プリズム4の頂点部7の円弧に対応した曲面となることで、金型の製造が容易になっている。また、金型の形状を上述ようにフレネルレンズ1に対応する形状とすることで、フレネルレンズ1の離型が容易になるとともに、フレネルレンズ1の品質を高効率の状態で安定させることができる。
【0105】
次に、フレネルレンズ1の射出成形方法を説明する。
フレネルレンズ1の射出成形は、上述のキャビティ41を備えた可動金型およびそれに対応する固定金型を用いて行われる。
固定金型および可動金型を閉じた状態で、射出ノズルから射出された樹脂がスプル−、ランナー、ゲートを介してキャビティ41に内に注入される。
【0106】
この状態で所定温度までキャビティ41の温度が低下した際に、固定金型に対して可動金型を移動させて成形されたフレネルレンズ1を取り出す。
この際に、フレネルレンズ1が例えば非球面レンズ等と比較して薄いので、温度の低下が速く、離型までにかかる時間を短縮することができる。
【0107】
また、成形に際しては、フレネルレンズ1の各プリズム4の頂点部7に対応して、金型のキャビティ41の溝42の最深部の形状が決定される。この際に、上述のkの値の範囲でプリズム4の頂点部7に対応して溝42の最深部が円弧状に形成されることから、離型がし易く、かつ、品質を安定させることができる。
【実施例】
【0108】
以下に、実施例として、フレネルレンズ1を製造し、その際の成形サイクルとレンズ重量、ヒケ量を確認した。また、製造されたフレネルレンズ1の入射光量に対する射出光量の比である射出効率(%)と、製品良品率(%)を求めた。
フレネルレンズ1としては、表1に示すように、プリズム(輪帯)の数Nが21,42,63のものを製造した。
プリズムが形成されるレンズ有効径Dはφ30mm、取付フランジを含むレンズ全体の径はφ37mmとした。
プリズム形状部分を除いたベースの厚みは2mmとした。プリズムは、図5(a)に記載のフレネルレンズ1に示されるような、設計上のプリズムの高さhが一定の形状とするタイプとした。設計上のプリズムの高さは、プリズムの数Nが21のレンズでは0.4mm、Nが42のレンズでは0.2mm、Nが63のレンズでは0.134mmとした。プリズムを含む最大の厚みは、ベースの厚みとプリズムの高さhを足したものとなり、2.4mm〜2.134mmとなる。また、プリズムの分割面には、前述したように谷の最深部9に至る光線の方向に沿うように逃げ角を設定した。
レンズの材料としてはメタクリル樹脂(PMMA、一般にアクリル樹脂とも呼ばれる)を用いた。
それぞれのプリズムの数Nに対して表4から6に示すように、k値を4段階に変えたフレネルレンズを製造した。(実際には金型製作の便宜上から、プリズム頂点部の半径r寸法が0mm、0.01mm、0.03mm、0.05mmとなるように設定した。)
なお、kの値が0のフレネルレンズ1と、非球面レンズのデータは比較例となるものである。製品良品率は、製造されたフレネルレンズ1から不良品を覗いた後の良品の数を、製造されたフレネルレンズ1の全部の数で除算して求めたものである。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
【表3】

【0112】
【表4】

【0113】
【表5】

【0114】
【表6】

【0115】
成形サイクルとレンズ重量、ヒケ量の測定結果を表1〜表3に示す。プリズム数Nが21、42、63のフレネルレンズではプリズム頂点部の半径r寸法が0.01mmの場合のデータであるが、0.03mm、0.05mmでもほぼ同じ値であった。ただしr寸法が0mmの場合には、成形品が離型できず、完全な状態のサンプルが製作できなかったため、測定ができなかった。
射出効率と、製品良品率の結果を表4〜表6と図13〜図15のグラフに示す。
図13〜図15において、図13のP21がプリズム数Nが21のフレネルレンズ1の射出効率を示し、図14のP42がプリズム数Nが42のフレネルレンズ1の射出効率を示し、図15のP63がプリズム数Nが63のフレネルレンズ1の射出効率を示すものである。また、各図においてUが製品良品率を示すものである。
尚、表4〜表6と図13〜図15の頂点r寸法が0mmの場合の射出効率は、前述の通り成形品が離型出来ず測定が出来なかったため、シミュレーションによる結果を記載してある。頂点r寸法が0.01mm、0.03mm、0.05mmの場合には、シミュレーションの結果と測定の結果は一致しており、測定値を記載している。
【0116】
また、射出効率のボーダーラインを比較例としての非球面レンズの場合の77%とした。また、製品良品率のボーダーラインは、コスト等を考慮して85%とした。図13に示されるように、製品良品率は、kの値が0.04以上となることでボーダーラインの85%を超えるものとなっている。製品良品率のボーダーライン85%とは、100個成型した場合に、変形や転写不十分の輪帯がなく、製品として成立するものが85個あるという意味である。
【0117】
射出効率については、プリズム数Nが21のフレネルレンズ1において、kの値が0.38以下となる場合にボーダーラインである77%を超えるようになっている。なお、プリズム数Nが42の場合と63の場合は、射出効率がボーダーラインである77%を超えるkの値がさらに小さくなる。したがって、kの値が0.04〜0.38の範囲で十分な射出効率を得るためには、レンズ有効径D内のプリズム数Nを少くする必要がある。
【0118】
ただし、プリズム数Nが多くとも、kの値を小さくすることで、ボーダーラインを超えるものであり、これらについては、kの範囲を狭くすることで、有効に利用可能である。また、目的や用途によっては、射出効率のボーダーラインより下であっても、プリズム数を増やすことによって得られる効果、特に各プリズム(輪帯)4による光の濃淡の影響がわかりづらくなり、フレネルレンズ1であることが分かり難くなることで、プリズム数の多いフレネルレンズを用いるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 フレネルレンズ
2 第1の面
3 第2の面
4 プリズム
5 プリズム面
6 分割面
7 頂点部
8 谷
9 最深部
12 フレネルレンズ
13 フレネルレンズ
20 点光源(光源)
h プリズムの高さ
L 谷野最深部に至る光の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形により形成された樹脂製のフレネルレンズであって、
光が入射する第1の面と、光が出射する第2の面とを有し、
前記第2の面に、複数個のプリズムが形成され、
前記プリズムは、プリズム面と、分割面と、これらプリズム面および分割面をつなげる円弧状の頂点部とから断面が略三角形状に形成され、
前記頂点部の円弧の半径をr、前記プリズムの高さをh、レンズ有効径をD、レンズ有効径Dの範囲に含まれるプリズムの数をNとした場合、
前記rを以下の式(1)で示すものとし、
かつ、前記式(1)におけるkの値が0.04〜0.38であることを特徴とするフレネルレンズ。
【数1】

【請求項2】
kの上限値がk=0.5553e-0.02N以下であることを特徴とする請求項1に記載のフレネルレンズ。
【請求項3】
前記各プリズムは、同心円状または同心の楕円状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフレネルレンズ。
【請求項4】
前記プリズムの前記分割面には、逃げ角が設けられ、
前記分割面の前記逃げ角は、
光源から入射した光のうちの前記隣り合うプリズムの前記プリズム面と前記分割面とから構成される谷の最深部に至る光の方向に、当該谷を構成する当該分割面がほぼ沿うように設定されていていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフレネルレンズ。
【請求項5】
各プリズムの高さhが、当該高さhの平均に対してプラス・マイナス10%以内に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフレネルレンズ。
【請求項6】
レンズ径が20mm〜80mmであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフレネルレンズ。
【請求項7】
前記プリズムは、前記プリズム面および前記分割面の断面形状が直線または曲線であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフレネルレンズ。
【請求項8】
前記各プリズムは、高さが略同一であり、前記プリズム面の傾斜角に対応して底面の幅が異なることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のフレネルレンズ。
【請求項9】
レンズ有効径の最大厚みは、0.5〜4mmであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のフレネルレンズ。
【請求項10】
前記第1の面および第2の面の少なくともいずれか一方に、反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のフレネルレンズ。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のフレネルレンズを備えていることを特徴とする照明器具。
【請求項12】
光源がLEDであることを特徴とする請求項11に記載の照明器具。
【請求項13】
光が入射する第1の面と、光が出射する第2の面とを有し、
前記第2の面に、複数個のプリズムが形成され、
前記プリズムが、プリズム面と、分割面と、これらプリズム面および分割面をつなげる円弧状の頂点部とから断面が略三角形状に形成されるフレネルレンズを成形するための成形型であって、
前記頂点部の円弧の半径をr、前記プリズムの高さをh、レンズ有効径をD、レンズ有効径Dの範囲に含まれるプリズムの数をNとした場合、
前記rが以下の式(1)で示されるものとされ、
かつ、前記式(1)におけるkの値が0.04〜0.38にされる前記プリズムの形状に対応する凹部が形成されていることを特徴とする成形型。
【数2】

【請求項14】
光が入射する第1の面と、光が出射する第2の面とを有し、
前記第2の面に、複数個のプリズムが形成され、
前記プリズムが、プリズム面と、分割面と、これらプリズム面および分割面をつなげる円弧状の頂点部とから断面が略三角形状に形成されるフレネルレンズを製造するに際し、
前記頂点部の円弧の半径をr、前記プリズムの高さをh、レンズ有効径をD、レンズ有効径Dの範囲に含まれるプリズムの数をNとした場合、
前記rを以下の式(1)で示すものとし、
かつ、前記式(1)におけるkの値を0.04〜0.38にすることを特徴とするフレネルレンズの製造方法。
【数3】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−68751(P2013−68751A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206575(P2011−206575)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】