説明

フロントピラー構造

【課題】前面衝突時における荷重伝達性能を確保しつつ、部品点数を抑えながら補強部材の周辺における取付部の剛性を確保することができるフロントピラー構造を得る。
【解決手段】バルク30は、車両正面視で外壁部24A側に開口されて内壁部22A側に突出する内側凸部32と、車両正面視で内壁部22A側に開口されて外壁部24A側に突出する外側凸部34とが上下に連続して形成されている。ここで、内側凸部32の一部を構成する第一縦壁部30Cが内壁部22Aに結合されると共に、外側凸部34の一部を構成する第二縦壁部30Eが外壁部24Aに結合されており、第一縦壁部30Cと第二縦壁部30Eとを繋ぐ中間壁部30Dが車両正面視でフロントドアのベルトラインリインフォース16Aの一部と重なる位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エプロンアッパメンバの後端部が結合されるフロントピラーに適用されるフロントピラー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントピラーにおいては、前面衝突時にエプロンアッパメンバからの荷重をフロントドアのベルトラインリインフォースへ伝達するために、フロントピラー断面内に補強部材を設けた構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−216956公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フロントピラーにおける補強部材の周辺はドアヒンジ等の取付部にもなっており、前記補強部材の他に前記取付部の剛性確保用として別部品が配置される。このため部品点数が増加してしまう。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、前面衝突時における荷重伝達性能を確保しつつ、部品点数を抑えながら補強部材の周辺における取付部の剛性を確保することができるフロントピラー構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明のフロントピラー構造は、車両前後方向を長手方向として配置されたエプロンアッパメンバの後端部が結合されると共にフロントドア開口部の前縁部を形成するフロントピラーに適用され、前記フロントピラーの車幅方向内側の縦壁を構成する内壁部と、前記フロントピラーの車幅方向外側の縦壁を構成する外壁部と、前記内壁部と前記外壁部との間に設けられて前記エプロンアッパメンバの車両後方側に配置され、車両正面視で前記外壁部側に開口されて前記内壁部側に突出する内側凸部と、車両正面視で前記内壁部側に開口されて前記外壁部側に突出する外側凸部とが連続して形成されると共に、前記内側凸部の一部を構成して前記内壁部に結合される第一縦壁部と、前記外側凸部の一部を構成して前記外壁部に結合される第二縦壁部と、前記第一縦壁部と前記第二縦壁部とを繋いで車両正面視でフロントドアのベルトラインリインフォースの一部と重なる位置に配置される中間壁部と、を備えた補強部材と、を有する。
【0007】
請求項1に記載する本発明のフロントピラー構造によれば、内壁部と外壁部との間に補強部材が設けられており、補強部材は、エプロンアッパメンバの車両後方側に配置され、車両正面視で外壁部側に開口されて内壁部側に突出する内側凸部と、車両正面視で内壁部側に開口されて外壁部側に突出する外側凸部とが連続して形成されている。
【0008】
ここで、補強部材は、内側凸部の一部を構成する第一縦壁部が内壁部に結合されると共に、外側凸部の一部を構成する第二縦壁部が外壁部に結合されており、第一縦壁部と第二縦壁部とを繋ぐ中間壁部が車両正面視でフロントドアのベルトラインリインフォースの一部と重なる位置に配置されている。このため、前面衝突時にエプロンアッパメンバからの荷重が補強部材を介してフロントドアのベルトラインリインフォースへ伝達される場合、荷重伝達経路となる中間壁部の変形が抑えられるので、衝突荷重が効率的に伝達される。また、内壁部において第一縦壁部が結合された部位及び外壁部において第二縦壁部が結合された部位は剛性が高められているので、当該部位が別部品の取付相手とされることで補強部材の周辺の取付部剛性が確保される。
【0009】
請求項2に記載する本発明のフロントピラー構造は、請求項1記載の構成において、前記補強部材は、前記内側凸部を含む部位が前記外壁部とで第一閉断面部を形成すると共に、前記外側凸部を含む部位が前記内壁部とで第二閉断面部を形成している。
【0010】
請求項2に記載する本発明のフロントピラー構造によれば、補強部材の内側凸部を含む部位と外壁部とで第一閉断面部が形成されると共に、補強部材の外側凸部を含む部位と内壁部とで第二閉断面部が形成されている。このため、前面衝突時には、補強部材の変形が効果的に抑えられるので、ベルトラインリインフォースへの荷重伝達性が高められる。
【0011】
請求項3に記載する本発明のフロントピラー構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記補強部材は、前記第一縦壁部がインパネリインフォースの前記フロントピラーへの取付部に結合されると共に、前記第二縦壁部がドアヒンジの前記フロントピラーへの取付部に結合されている。
【0012】
請求項3に記載する本発明のフロントピラー構造によれば、補強部材は、第一縦壁部がインパネリインフォースのフロントピラーへの取付部に結合されると共に、第二縦壁部がドアヒンジのフロントピラーへの取付部に結合されている。このため、インパネリインフォースの取付部の剛性が第一縦壁部によって高められ、ドアヒンジの取付部の剛性が第二縦壁部によって高められると共に、前面衝突時における補強部材の変形が効果的に抑えられる。
【0013】
請求項4に記載する本発明のフロントピラー構造は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の構成において、前記中間壁部の車幅方向の中間部には、車両前後方向に沿った稜線を有する段部が形成されている。
【0014】
請求項4に記載する本発明のフロントピラー構造によれば、中間壁部の車幅方向の中間部には、車両前後方向に沿った稜線を有する段部が形成されているので、前面衝突時の入力荷重に対する中間壁部の剛性が高められると共に、衝突荷重の一部が稜線を通って伝達される。これによって、前面衝突時には車両前後方向の荷重伝達性が一層高められる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のフロントピラー構造によれば、前面衝突時における荷重伝達性能を確保しつつ、部品点数を抑えながら補強部材の周辺における取付部の剛性を確保することができるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項2に記載のフロントピラー構造によれば、前面衝突時に補強部材の変形を効果的に抑えることでベルトラインリインフォースへの荷重伝達性を高めることができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項3に記載のフロントピラー構造によれば、インパネリインフォースの取付部の剛性及びドアヒンジの取付部の剛性を高めることができると共に、前面衝突時における荷重伝達性能を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項4に記載のフロントピラー構造によれば、中間壁部の車幅方向の中間部に車両前後方向に沿った稜線を有する段部が形成されることで、前面衝突時には車両前後方向の荷重伝達性を高めることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフロントピラー構造が適用されたフロントピラーの車両上下方向の中間部及びその周囲部を模式的に示す側面図である。
【図2】図1の2−2線に沿った拡大断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるバルク及びその周囲部を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るフロントピラー構造を示す車両正面視の縦断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るフロントピラー構造を示す車両正面視の縦断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るフロントピラー構造を示す車両正面視の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るフロントピラー構造について図1〜図3を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車幅方向内側を示している。
【0021】
図1には、フロントピラー20(「Aピラー」ともいう)の車両上下方向の中間部及びその周囲部が模式的な側面図にて示されている。図1に示されるように、車体前部10には、略角筒状のエプロンアッパメンバ12が配設されている。エプロンアッパメンバ12は、車体側部側に左右一対設けられると共に、車両前後方向を長手方向として配置されている。このエプロンアッパメンバ12の後端部12Aはフロントピラー20の前面側に結合されている。
【0022】
フロントピラー20は、キャビン側部の前側に立設されており、フロントドア開口部14の前縁部を形成している。フロントドア開口部14は、フロントドア16(フロントサイドドア)によって開閉されるようになっている。本実施形態のフロントドア16は、スイング式のフロントドアとされ、フロントピラー20に対して車幅方向外側に配置されるドアヒンジ18(図2参照)を介してフロントピラー20に回動可能に取り付けられている。
【0023】
フロントドア16は、ドア外板を構成して車室外側に配置されるドアアウタパネル(図示省略)と、ドア内板を構成して車室内側に配置されるドアインナパネル(図示省略)とがヘミング加工により一体化されて閉断面部を形成している。フロントドア16の内部には、前記ドアインナパネル側にベルトラインリインフォース16A(広義には「ドア補強部材」として把握される要素である。)が配設されている。ベルトラインリインフォース16Aは、ドア前後方向(フロントドア16の閉止状態で車両前後方向)を長手方向として配置され、その前後端のフランジ116が前記ドアインナパネルに固定されている。また、ベルトラインリインフォース16Aの高さ位置は、フロントドア16のドア本体の上端部に設定され、エプロンアッパメンバ12とほぼ同様の高さ位置になっている。
【0024】
図2には、図1の2−2線に沿った拡大断面図が示されている。図2に示されるように、フロントピラー20は、ピラーインナパネル22(フロントピラーインナパネル)を備えている。ピラーインナパネル22は、フロントピラー20の車幅方向内側の部位を構成し、図示しない水平断面形状が車幅方向外向きに開口された略ハット形状とされており、フロントピラー20の車幅方向内側の縦壁を構成する内壁部22Aを備えている。
【0025】
ピラーインナパネル22の内壁部22Aには、インパネリインフォース42(インストルメントパネルリインフォースメント)のフロントピラー20への取付部42Aが締結具(図中では締結軸線を一点鎖線Cで示す)によって締結されている。インパネリインフォース42は、左右一対のフロントピラー20のピラーインナパネル22間において車幅方向に架設された高強度部材であり、取付部42Aは、インパネリインフォース42の長手方向両端部に設けられてフランジ状に延出されている。
【0026】
フロントピラー20においてピラーインナパネル22の車幅方向外側には、これらに対向してピラーアウタリインフォース24(フロントピラーアウタリインフォースメント)が配置されている。ピラーアウタリインフォース24は、フロントピラー20の車幅方向外側の部位を構成しており、図3に示されるように、水平断面形状が車幅方向内向きに開口されて略ハット形状(二点鎖線24X参照)を含む形状とされ、フロントピラー20の車幅方向外側の縦壁を構成する外壁部24Aを備えている。ピラーアウタリインフォース24の前後端フランジ24D、24Eと図2に示されるピラーインナパネル22の前後端フランジ(図示省略)とが接合されることで、フロントピラー20の軸線方向に沿った閉断面26が形成されて中空柱状になっている。
【0027】
ピラーアウタリインフォース24のさらに車幅方向外側には、ピラーアウタパネル28(フロントピラーアウタパネル)が配置されている。図3に示されるように、ピラーアウタパネル28は、車幅方向内向きに開口する断面ハット形状(二点鎖線28X参照)とされ、前後端フランジ28D、28Eがピラーアウタリインフォース24の前後端フランジ24D、24Eと接合されている。このピラーアウタパネル28は、自動車の外板部を成す大型のプレス部品であるサイメンアウタ(サイドアウタパネル)の一部として形成されている。
【0028】
図2に示されるように、ピラーアウタリインフォース24とピラーインナパネル22とで形成された閉断面26内には、内壁部22Aと外壁部24Aとの間に補強部材としてのバルク30(荷重伝達部材)が設けられている。図1に示されるように、バルク30は、エプロンアッパメンバ12の車両後方側(車両正面視でエプロンアッパメンバ12の後端部と重なる位置)に配置されており、車両前後方向に作用する荷重を担い、エプロンアッパメンバ12側からの入力荷重Fを軸力で受けられるように設定されている。また、バルク30は、本実施形態では、高強度材の鋼板にて構成されており、図2及び図3に示されるように、屈曲板状に形成されている。
【0029】
図2に示されるように、バルク30は、車両正面視で外壁部24A側に開口されて内壁部22A側に突出する内側凸部32と、車両正面視で内壁部22A側に開口されて外壁部24A側に突出する外側凸部34とが上下に連続して形成(連設)され、略矩形波型の断面S字状を成している。バルク30における図2に示される各曲部は、略車両前後方向に沿った稜線を有している(図3参照)。
【0030】
内側凸部32の一部を構成する第一縦壁部30Cは、内壁部22Aに面接触しており、図3に示されるように、前後二箇所に取付孔36A、36Bが形成されている。図2に示されるように、第一縦壁部30Cは、締結具でインパネリインフォース42の取付部42A及び内壁部22Aに共締めされることで、取付部42A及び内壁部22Aに結合されている。換言すれば、第一縦壁部30Cは、インパネリインフォース42の取付相手(ないしは取付相手の補強部)を兼ねている。
【0031】
第一縦壁部30Cの車両上下方向の上端から外壁部24A側へ屈曲された上壁部30Bは、車幅方向外側へ向けて車両上方側に僅かに傾斜している。図3に示されるように、上壁部30Bの車両前後方向の前端からは車両上方側へ屈曲された前端フランジ部30Hが形成されている。前端フランジ部30Hは、ピラーアウタリインフォース24の前壁部24Bにスポット溶接(打点を「×」印で示す。)により結合されている。また、上壁部30Bの外壁部24A側の端部から略車両上方側へ屈曲された上フランジ部30Aは、外壁部24Aに面接触されてスポット溶接(打点を「×」印で示す。)により結合されている。
【0032】
外側凸部34の一部を構成する第二縦壁部30Eは、外壁部24Aに面接触しており、前後二箇所に取付孔36D、36Eが形成されている。第二縦壁部30Eは、締結具(図中では締結軸線を一点鎖線Dで示す)で、図2に示されるドアヒンジ18のフロントピラー20への取付部18A、ピラーアウタパネル28及びピラーアウタリインフォース24の外壁部24Aに共締めされることで、ドアヒンジ18の取付部18A及び外壁部24Aに結合されている。換言すれば、第二縦壁部30Eは、ドアヒンジ18の取付相手(ないしは取付相手の補強部)を兼ねている。
【0033】
図3に示されるように、第二縦壁部30Eの車両前後方向の前端からは車幅方向内側へ屈曲された前端フランジ部30Iが形成されている。前端フランジ部30Iは、ピラーアウタリインフォース24の前壁部24Bにスポット溶接(打点を「×」印で示す。)により結合されている。
【0034】
図2に示されるように、第二縦壁部30Eの車両上下方向の下端から内壁部22A側へ屈曲された下壁部30Fは、車幅方向内側へ向けて車両下方側に僅かに傾斜している。図3に示されるように、下壁部30Fの車両前後方向の前端からは車両上方側へ屈曲された前端フランジ部30Jが形成されている。前端フランジ部30Jは、ピラーアウタリインフォース24の前壁部24Bにスポット溶接(打点を「×」印で示す。)により結合されている。
【0035】
また、図2に示されるように、下壁部30Fの内壁部22A側の端部から車両下方側へ屈曲された下フランジ部30Gは、内壁部22Aに面接触されてスポット溶接により接合されている。図3には、下フランジ部30Gにおける打点の位置を「×」印で示している。また、下フランジ部30Gにおける車両前後方向の中央部には、取付孔36Cが形成されている。図2に示されるように、下フランジ部30Gは、締結具でインパネリインフォース42の取付部42A及び内壁部22Aに共締めされることで、取付部42A及び内壁部22Aに結合されている。
【0036】
第一縦壁部30Cの車両上下方向の下端と第二縦壁部30Eの車両上下方向の上端とは、中間壁部30Dによって一体に繋がれている。中間壁部30Dは、内側凸部32の一部と外側凸部34の一部とを兼ねており、車幅方向外側へ向けて車両下方側に僅かに傾斜している。
【0037】
以上により、バルク30は、内側凸部32を含む部位が外壁部24Aとで第一閉断面部38を形成すると共に、外側凸部34を含む部位が内壁部22Aとで第二閉断面部40を形成している。また、中間壁部30Dは、車両正面視でフロントドア16(図1参照)のベルトラインリインフォース16Aと交差(クロス)して当該ベルトラインリインフォース16Aの一部と重なる位置に配置されている(荷重伝達バルク構造)。
【0038】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0039】
本実施形態に係るフロントピラー構造では、バルク30は、内側凸部32の一部を構成する第一縦壁部30Cが内壁部22Aに結合されると共に、外側凸部34の一部を構成する第二縦壁部30Eが外壁部24Aに結合されており、第一縦壁部30Cと第二縦壁部30Eとを繋ぐ中間壁部30Dが車両正面視でフロントドア16(図1参照)のベルトラインリインフォース16Aの一部と重なる位置に配置されている。このため、図1に示されるように、前面衝突時にエプロンアッパメンバ12からの荷重Fがバルク30を介してフロントドア16のベルトラインリインフォース16Aへ軸方向に伝達される(流される)場合、荷重伝達経路となる図2に示される中間壁部30Dの変形が抑えられるので、衝突荷重が効率的に伝達される。
【0040】
また、バルク30は、第一縦壁部30Cがインパネリインフォース42のフロントピラー20への取付部42Aに結合されると共に、第二縦壁部30Eがドアヒンジ18のフロントピラー20への取付部18Aに結合されている。このため、インパネリインフォース取付ブラケットが設けられなくてもインパネリインフォース42の取付部42Aの剛性が第一縦壁部30Cによって高められ、ドアヒンジ取付ブラケットが設けられなくてもドアヒンジ18の取付部18Aの剛性が第二縦壁部30Eによって高められると共に、前面衝突時におけるバルク30の変形が効果的に抑えられる。
【0041】
また、バルク30の内側凸部32を含む部位と外壁部24Aとで第一閉断面部38が形成されると共に、バルク30の外側凸部34と内壁部22Aとで第二閉断面部40が形成されている。このため、この部分の構造体の強度・剛性が高められ、前面衝突時には、バルク30の変形が効果的に抑えられるので、フロントドア16(図1参照)のベルトラインリインフォース16Aへの荷重伝達性が高められる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係るフロントピラー構造によれば、前面衝突時における荷重伝達性能を確保しつつ、部品点数を抑えながらバルク30の周辺における取付部の剛性を確保することができる。したがって、車体の軽量化を図ることも可能になる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るフロントピラー構造について、図4を用いて説明する。図4には、本発明の第2の実施形態に係るフロントピラー構造が車両正面視の縦断面図(第1の実施形態における図2に相当する断面図)にて示されている。この図に示されるように、本実施形態に係るフロントピラー構造は、補強部材としてのバルク50(荷重伝達部材)の中間壁部50Aに段部52が形成された点で、第1の実施形態に係るフロントピラー構造とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
図4に示されるように、バルク50の中間壁部50Aは、第一縦壁部30Cと第二縦壁部30Eとを繋いで車両正面視でフロントドア16(図1参照)のベルトラインリインフォース16Aと交差して当該ベルトラインリインフォース16Aの一部と重なる位置に配置されている。中間壁部50Aの車幅方向の中間部には、第一縦壁部30C側と第二縦壁部30E側との車両上下方向の位置を段差によって異ならせた(段状の高低差をつけた)段部52が形成されている。段部52は、車両前後方向に沿った稜線52A、52Bを有している。
【0045】
このような構成によれば、前述した第1実施形態と同様の作用及び効果が得られるうえに、前面衝突時の入力荷重に対する中間壁部50Aの剛性(耐荷重)が高められると共に、衝突荷重の一部が稜線52A、52Bを通って伝達されるので、車両前後方向の荷重伝達性が一層高められる。
【0046】
[実施形態の補足説明]
なお、上記第1、第2の実施形態では、バルク30、50の下フランジ部30Gが、締結具でインパネリインフォース42の取付部42A及び内壁部22Aに共締めされることで、取付部42A及び内壁部22Aに結合されており、このような構成がこの部分の強度を高めるためにはより好ましいが、第3の実施形態として、例えば、図5に示されるように、下フランジ部30Gがインパネリインフォース42の取付部42A及び内壁部22Aに共締めされない構造としてもよい。
【0047】
また、上記第1〜第3の実施形態では、バルク30、50の下フランジ部30Gが内壁部22Aに面接触されてスポット溶接により接合されており、前面衝突時にバルク30、50の口開き変形(開口部が広がる方向の変形)を抑える観点からはこのような構成がより好ましいが、第4の実施形態として、例えば、図6に示されるように、下フランジ部30Gが内壁部22Aから離れた構成としてもよい。
【0048】
さらに、上記第1〜第4の実施形態では、バルク30、50の上フランジ部30Aは、外壁部24Aに面接触されてスポット溶接により結合されており、前面衝突時にバルク30、50の口開き変形を抑える観点からはこのような構成がより好ましいが、変形例として、バルク(補強部材)は、上フランジ部30Aが外壁部24Aから離れた構成としてもよい。
【0049】
さらにまた、図4に示されるように、上記第2の実施形態によれば、中間壁部50Aの車幅方向の中間部には、車両前後方向に沿った稜線52A、52Bを有する段部52が形成されているが、このような構成に加えて又はこのような構成に代えて、上壁部30Bや下壁部30Fの車幅方向の中間部に車両前後方向に沿った稜線を有する段部が形成されてもよい。また、車両前後方向に沿った稜線を有する段部は、中間壁部50Aに複数形成されてもよい(上壁部30Bや下壁部30Fについても同様)。
【0050】
なお、上記実施形態では、バルク30、50は、第一縦壁部30Cがインパネリインフォース42のフロントピラー20への取付部42Aに結合されると共に、第二縦壁部30Eがドアヒンジ18のフロントピラー20への取付部18Aに結合されているが、例えば、第一縦壁部30Cがインパネリインフォース42の取付部42Aに結合され、第二縦壁部30Eがドアヒンジ18の取付部18Aに結合されないような構成でもよく、また、第二縦壁部30Eがドアヒンジ18の取付部18Aに結合され、第一縦壁部30Cがインパネリインフォース42の取付部42Aに結合されないような構成でもよい。また、第一縦壁部30Cがインパネリインフォース42以外の別部品のフロントピラー20への取付部に結合されてもよく、第二縦壁部30Eがドアヒンジ18以外の別部品のフロントピラー20への取付部に結合されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
12 エプロンアッパメンバ
14 フロントドア開口部
16 フロントドア
16A ベルトラインリインフォース
18 ドアヒンジ
18A 取付部
20 フロントピラー
22A 内壁部
24A 外壁部
30 バルク(補強部材)
30C 第一縦壁部
30D 中間壁部
30E 第二縦壁部
32 内側凸部
34 外側凸部
38 第一閉断面部
40 第二閉断面部
42 インパネリインフォース
42A 取付部
50 バルク(補強部材)
50A 中間壁部
52 段部
52A、52B 稜線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向を長手方向として配置されたエプロンアッパメンバの後端部が結合されると共にフロントドア開口部の前縁部を形成するフロントピラーに適用され、
前記フロントピラーの車幅方向内側の縦壁を構成する内壁部と、
前記フロントピラーの車幅方向外側の縦壁を構成する外壁部と、
前記内壁部と前記外壁部との間に設けられて前記エプロンアッパメンバの車両後方側に配置され、車両正面視で前記外壁部側に開口されて前記内壁部側に突出する内側凸部と、車両正面視で前記内壁部側に開口されて前記外壁部側に突出する外側凸部とが連続して形成されると共に、前記内側凸部の一部を構成して前記内壁部に結合される第一縦壁部と、前記外側凸部の一部を構成して前記外壁部に結合される第二縦壁部と、前記第一縦壁部と前記第二縦壁部とを繋いで車両正面視でフロントドアのベルトラインリインフォースの一部と重なる位置に配置される中間壁部と、を備えた補強部材と、
を有するフロントピラー構造。
【請求項2】
前記補強部材は、前記内側凸部を含む部位が前記外壁部とで第一閉断面部を形成すると共に、前記外側凸部を含む部位が前記内壁部とで第二閉断面部を形成している請求項1記載のフロントピラー構造。
【請求項3】
前記補強部材は、前記第一縦壁部がインパネリインフォースの前記フロントピラーへの取付部に結合されると共に、前記第二縦壁部がドアヒンジの前記フロントピラーへの取付部に結合されている請求項1又は請求項2に記載のフロントピラー構造。
【請求項4】
前記中間壁部の車幅方向の中間部には、車両前後方向に沿った稜線を有する段部が形成されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフロントピラー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−178218(P2011−178218A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42231(P2010−42231)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】