説明

フロート弁装置

【課題】燃料液面の上昇によりフロートが上昇して閉弁された状態で、燃料液面が再び下降したときに、速やかに開弁されるようにしたフロート弁装置を提供する。
【解決手段】このフロート弁装置10は、ハウジングと、該ハウジング内に収容されたフロート50と、フロート50が所定高さまで浮上したとき、弁座32aに当接して開口部32を閉塞する可動弁70と、可動弁70の外周を囲む枠状をなし、可動弁70をフロート50に対して所定の距離で昇降可能かつ傾動可能に保持するように、フロート50の上部外周に装着された保持枠60とを備えている。そして、可動弁70のフロート50に対する昇降高さを規制する保持枠60と可動弁70との当接部に周方向に偏った凸部90が形成されており、閉弁状態でフロート50が下降するとき、凸部90が最初に当接して可動弁70に下降力を付与するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の液面の高さが上昇するとき、ハウジング内でフロートが浮上して、液面が所定の高さとなったときに、外部へ連通する開口部を閉じるようにしたフロート弁装置に関し、特に、自動車の燃料タンク内の燃料蒸気をキャニスタに逃がすと共に、燃料の液面の高さが所定値を超えたときに開口部を閉じて燃料の外部流出を防止し、かつ、給油時には満タン規制を行うようにしたフロート弁装置として好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の燃料タンク内には、燃料蒸気を外部に配置されたキャニスタに逃がしてタンク内圧が上昇するのを防止すると共に、燃料の液面の高さが所定の高さを超えるときには、キャニスタに連通する開口部を閉じて、燃料が外部に流出するのを防止し、また、給油時には満タン規制を行うためのフロート弁装置が配置されている。
【0003】
このようなフロート弁装置として、下記特許文献1には、一端がキャニスタに連絡した通路の他端に連絡する燃料タンクの開口部に配置された第1の平面部よりなるシート部(弁座に相当)と、前記シート部の平面部に当接する第1の平面部を有するバルブ部材と、燃料タンク内において燃料の浮力によって浮いており、燃料液面の上昇に応じて頂部によって前記バルブ部材を上方に押すことにより前記シート部に当接させて塞ぎ得るフロートとからなることを特徴とする液面高さ制御バルブが開示されている。また、バルブ部材はフロートに相対動自在に係合されており、フロートの頂部はフロート上部の中央に形成された3次元曲面よりなる突起部によって構成されることが記載されている。
【0004】
そして、燃料液面の上昇によりフロートが浮き上がると、フロートの頂部がバルブ部材を上方に押し、シート部に当接させて開口部が塞がれる。このとき、バルブ部材はフロートに対して相対動可能となっているので、車両の傾き等によって、フロートの姿勢が開口部に対して傾いていても、バルブ部材の姿勢が適宜修正されて、同バルブ部材がシート部の全周にしっかりと当接して、開口部が塞がれるようになっている。
【特許文献1】特開平7−279789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のような構造をなすフロート弁装置は、上昇した燃料液面が下降すると、フロートに働く浮力が小さくなるので、フロートは自重により下降して元の位置に戻って、開口部が再び開くようになっている。
【0006】
しかしながら、フロートの上部に配置されたバルブ部材によって開口部が気密性よく塞がれた状態では、燃料タンクの内圧がバルブ部材を押し上げる力としてかかるため、燃料液面が下降してフロートにかかる浮力が小さくなり、本来はフロートの自重によって開口すべき状態になっても、バルブ部材が開口部に貼り付いてしまって直ちに開口しない場合があった。このように、燃料液面が下降したときの開弁が応答性良くなされないと、一時的ではあっても燃料タンク内の蒸気圧が著しく高まる可能性があるため、望ましいことではなかった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、燃料液面の上昇によりフロートが上昇して弁によって開口部が閉じられた状態で、燃料液面が再び下降したときに、燃料タンクの内圧が比較的高くても、弁が開口部から速やかに離れて開弁がなされるようにしたフロート弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、全体として筒状をなし、仕切壁を介して下方空間と上方空間に別れており、上方空間の外壁には、上方空間を外部に連通させる通気管が取付けられており、前記仕切壁には開口部が設けられており、その下面に弁座が形成されており、下方空間の外壁には、下方空間を外部に連通させる連通孔が形成されているハウジングと、
前記ハウジングの下方空間に上下摺動可能に配置され、前記ハウジングの連通孔を通して流入する液体によって浮上するように構成されたフロートと、
前記フロートの上部に揺動自在に支持され、前記フロートが所定高さまで浮上したとき、前記弁座に当接して前記開口部を閉塞する可動弁と、
前記可動弁の外周を囲む枠状をなし、前記可動弁を前記フロートに対して所定の距離で昇降可能かつ傾動可能に保持するように、前記フロートの上部外周に装着された保持枠とを備え、
前記可動弁の前記フロートに対する昇降高さを規制する前記保持枠と前記可動弁との当接部に周方向に偏った凸部が形成されており、閉弁状態で前記フロートが下降するとき、前記凸部が当接して前記可動弁に下降力を付与するように構成されていることを特徴とするフロート弁装置を提供するものである。
【0009】
上記発明によれば、例えば燃料タンクに取付けられた状態で、燃料タンク内の燃料が揺動する等して燃料液面が上昇した場合に、フロートが浮き上がって、フロートの上部に配置された可動弁が、フロートの突起部に押されて弁座に当接し、これにより開口部が閉じられて、燃料の外部への漏れが防止される。
【0010】
そして、燃料の揺動が収まる等して燃料液面が下がると、フロートに働く浮力が小さくなるので、フロートが自重により下降しようとする。このとき、可動弁のフロートに対する昇降高さを規制する保持枠と可動弁との当接部に形成された凸部が当接して、可動弁に下降力を付与するので、可動弁に対して周方向に偏った下降力が付与される。それによって、周方向の一部に引き剥がし力が集中するため、可動弁を真っ直ぐに下降させて弁座から引き剥がす場合に比べて、より小さな力で弁座から引き剥がすことが可能となり、再開弁圧力(閉弁状態でフロートに浮力がかからなくなったときに再開弁できる燃料タンク内の圧力)を高くする、すなわち弁開閉の応答性を良くすることができる。
【0011】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記可動弁の前記フロートに対する昇降高さを規制する前記保持枠と前記可動弁との当接部に形成された凸部の高さは、前記可動弁に対して前記フロートが最大に傾動した状態でも、前記保持枠と前記可動弁とが前記凸部のみで当接するように設定されているフロート弁装置を提供するものである。
【0012】
閉弁状態からフロートが下降しようとするとき、保持枠と可動弁とが凸部で当接し、可動弁を開口部から引き剥がす力が作用するが、フロートが可動弁に対して十分に傾くことができれば、フロートの凸部が設けられていない部分(例えば周方向において凸部と対向する部分)でも可動弁に当接できるようになる可能性がある。その場合には、可動弁を弁座から引き剥がす力が少なくとも2箇所で作用するため、該引き剥がし力が周方向に分散し、効率よく引き離せない可能性がある。しかし、上記の態様によれば、フロートが可動弁に対して最大に傾動した状態でも、保持枠と可動弁とが凸部のみで当接した状態が維持されるので、周方向の一部に引き剥がし力を集中させることができ、可動弁を弁座から確実に引き剥がすことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフロート弁装置によれば、燃料の揺動が収まる等して燃料液面が下がると、フロートに浮力が働かなくなるので、フロートが自重により下降しようとする。このとき、可動弁のフロートに対する昇降高さを規制する保持枠と可動弁との当接部に形成された凸部が最初に当接して、可動弁に下降力を付与するので、可動弁に対して周方向に偏った下降力が付与される。それによって、周方向の一部に引き剥がし力が集中するため、可動弁を真っ直ぐに下降させて弁座から引き剥がす場合に比べて、より小さな力で弁座から引き剥がすことが可能となり、弁開閉の応答性を良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明のフロート弁装置の一実施形態について説明する。この実施形態のフロート弁装置10は、自動車の燃料タンク内に配設され、燃料タンク内の燃料蒸気をキャニスタに逃がすと共に、燃料の液面の高さが所定値を超えたときに開口部を閉じて燃料の外部流出を防止し、かつ、給油時には満タン規制を行うものである。
【0015】
図1に示すように、このフロート弁装置10は、全体として筒状をなすハウジング20と、このハウジング20内に上下摺動可能に配設されるフロート50と、このフロート50の上部に相対動可能に取付けられる可動弁70とを有している。
【0016】
ハウジング20は、上面が閉塞されたほぼ円筒状をなすハウジング本体21と、このハウジング本体21の上面に溶着された上部キャップ22と、ハウジング本体21の下面に嵌合される下部キャップ23とで構成されている。
【0017】
ハウジング本体21は、その外周壁28のほぼ中間部に長方形状の連通孔24と、外周壁28の下部に円形の連通孔25とを有している。また、外周壁28の下部には、下部キャップ23の係合孔26に嵌合する係合爪27が形成されている。
【0018】
図2に示すように、外周壁28の内部には、筒軸方向に延設されたリブ状の連結壁29を介して、横断面が円弧状をなす一対の内壁30が、周方向に対向して配置されている。内壁30どうしの間は、燃料が流出入する空隙となっている。これにより燃料は、図2の矢印Aで示すように、連通孔24を通って内壁30の外周側から回り込むようにして、ハウジング本体21内に流入するようになっている。
【0019】
また、図3を併せて参照すると、内壁30は、その内周面に筒軸方向に伸びる平行な複数のリブ45が突設され、これによりフロート50の上下摺動がガイドされるようになっている。更にリブ45は、フロート50が傾いたときに、フロート50の外周面に当接する部分となっており、これによって、フロート50の最大傾き角度が規制されるようになっている。これについては、後述するフロート50の開弁構造を説明する際に併せて説明することとする。
【0020】
また、ハウジング本体21の上面は、仕切壁31によって閉塞され、この仕切壁31の中央部には、開口部32が形成されている。開口部32は、ハウジング本体21と下部キャップ23とで囲まれた下方空間46と、ハウジング本体21の仕切壁31と上部キャップ22とで囲まれた上方空間35とを連通させる部分となっている。開口部32の下面周縁には、環状に突出した弁座32aが形成されている。また、仕切壁31の上面の開口部32の周縁には、筒状の隔壁33が突設され、この隔壁33の後述する通気孔37に対向する位置には切欠き部34が形成されている。隔壁33は、フロート50が急上昇し開口部32から燃料が飛び出たとき、該燃料が通気孔37を通して通気管36内に直接入り込むのを防止する役割をなしている。
【0021】
ハウジング本体21の仕切壁31上には、上部キャップ22が溶着されている。この上部キャップ22には、図示しない配管に接続されて、燃料タンクの外部に配設されるキャニスタに連通される通気管36が一体に形成されている。通気管36の基端開口は、上方空間35に連通する通気孔37をなしている。
【0022】
更に、上部キャップ22には、図示しない配管によって、圧力調整弁を介して、図示しないカットオフ弁に連通される連通管38が形成されている。ただし、カットオフ弁は、圧力調整弁を介して、独自に燃料タンク外に連通させる構造を採用することもでき、その場合には、連通管38を設ける必要はない。このカットオフ弁は、フロート弁装置10によって開口部32が閉塞された後、燃料タンク内の圧力が所定値以上に上昇したときに、圧力調整弁を介して燃料タンク内の燃料蒸気等を外部に排出すると共に、燃料液面が更に上昇したときには圧力調整弁への開口も閉じて、燃料の外部流出を阻止するものである。
【0023】
フロート50は、ほぼ円筒状をなし、外周に筒軸方向に伸びる複数のリブ51を有している。このリブ51により、フロート50は、ハウジング本体21の内壁30の間に、上下摺動可能に保持されている。フロート50の下端部外周には、周方向に対向して一対の突起52(図1参照)が形成され、この突起52が内壁30どうしの隙間に挿入され、フロート50の回転が規制される。
【0024】
図3に示すように、フロート50の底面には、環状の凹部53が形成され、この凹部53にフロート用スプリング54が挿入されている。また、フロート用スプリング54の下端部は、下部キャップ23の突部43の外周に形成された受け溝44に挿入保持されている。フロート用スプリング54は、フロート50に上向きの付勢力を付与して、フロート50の所定体積が燃料中に浸漬されたとき、その浮力と合わせてフロート50を浮上させる役割をなしている。
【0025】
フロート50の上面中央には、突起部55が形成されている。突起部55は、中心に配置された頂部56と、この頂部56から外周に向かうほど低くなる周辺部57とを有している。この実施形態における突起部55は、図1に示すように複数のリブで構成され、各リブの縦断面が上記のような頂部56から外周に向かうほど低くなる周辺部57を有する形状となっている。この突起部55は、例えば円錐や半球のような形状でもよく、頂部56を中心として放射状に伸びる複数のリブで構成されていてもよい。
【0026】
フロート50上面の突起部55の外周には、環状リブ58が形成されている。この環状リブ58内には、後述する可動弁70が上下摺動可能に収容される。環状リブ58の外周には、後述する保持枠60の係合孔65aに係合する係合爪59が複数形成されている(図1参照)。
【0027】
そして、環状リブ58の外周には、可動弁70の外周を囲む枠状をなし、同可動弁70をフロート50に対して所定の距離で昇降可能かつ傾動可能に保持するための、保持枠60が装着されるようになっている。この保持枠60は、円形状の開口部63aを有する円形状の板体63と、該板体63の周縁から下方に延設された周壁65とからなる枠状をなしている。前記周壁65の外周には、前記係合爪59が係合する係合孔65aが形成されている。また、図7に示すように、前記板体63の開口部63aの内面側周縁からは、所定高さで環状当接部63bが突設している。この環状当接部63bは、後述する凸部90に当接する部分となっている。
【0028】
なお、図6に示すように、可動弁70の外周と環状リブ58内周との間には、可動弁70を環状リブ58の中心に配置した状態で、所定の間隙Gが形成されている。この間隙Gは、フロート50外周と内壁30の内周との間隙よりも大きくされており、フロート50が内壁30内で横方向に移動しても、それ以上に可動弁70が大きく横方向に移動できるようになっている。
【0029】
上記突起部55の上部には、フロート50が所定高さまで浮上したときに、弁座52aに当接して、開口部32を閉塞する可動弁70が、揺動自在に支持されている。この可動弁70について、図1、図4及び図5を参照して説明する。
【0030】
図1に示すように、この可動弁70は、本体71と、この本体71の上部に装着される弁部材72とで構成されている。図4,5に示すように、本体71は、ほぼ円形状をなす板部74と、この板部74の周縁から下方に延設された円筒状の周壁75と、前記板部74の上面から前記周壁75よりも小さな外径で上方に延設された円筒状のリブ76と、該円筒状のリブ76の上方開口部に連結された上板部77とを有している。
【0031】
上板部77の中央には、弁部材72を装着するための取付孔78が形成され、この取付孔78から外周に向けて放射状に通気溝79が形成されている。通気溝79は、弁部材72と上板部77との間に空気を侵入させ、開弁の際に弁部材72が上板部77に貼り付いてしまうのを防止し、図4(c)に示すように、弁部材72がめくれ上がって、開弁がスムーズになされるようにしている。また、図4(a)に示すように、円筒状のリブ76には、周方向に沿って所定幅の抜き孔80が形成され、板部74と上板部77との間に柔軟性を付与するのに寄与している。
【0032】
一方、板部74の下面中央には、図5(c)に示すように、フロート50の突起部55が当接し、可動弁70を揺動自在に支持するための受け部81が形成されている。この受け部81の中心には中心穴83が形成され、この中心穴83から外周に向かうほど次第に浅くなる案内凹部84が形成されている。
【0033】
上記本体71に装着される弁部材72は、合成ゴム等の弾性部材からなり、図3及び図5(c)に示すように、フランジ部86と、このフランジ部86の下面中央から延出された軸部87と、軸部87の先端部で拡開された係合突部88とを有している。弁部材72は、係合突部88を上板部77の取付孔78に押し込んで挿入し、取付孔78の裏面側に係合させることによって、上板部77上に装着される。
【0034】
上記可動弁70は、弁体用スプリング73を介して上方に付勢されており、円筒状のリブ76、上板部77及び弁部材72が、保持枠60の開口部63aから上方に突出している。ただし、可動弁70は、弁体用スプリング73が設けられておらず、上方に付勢されていないものであってもよい。
【0035】
可動弁70は、前記突起部55外周に弁体用スプリング73を配置した状態で、環状リブ58内に挿入することにより、突起部55上部に受け部81を介して揺動自在に収容支持される。その状態で、前記環状リブ58外周に保持枠60を被せて嵌合させることにより、円筒状のリブ76、上板部77及び弁部材72を、開口部63aから上方に突出させ、可動弁70を常時上方に付勢すると共に、同可動弁70を上下方向に摺動可能に、かつ、左右方向に揺動可能に保持させるようになっている。なお、可動弁70を上方に付勢させる必要は必ずしもないので、弁体用スプリング73を配設しなくてもよい。
【0036】
こうして、可動弁70は、保持枠60により外周を囲まれて、環状リブ58内にて昇降可能かつ傾動可能に保持されていると共に、可動弁70が保持枠60に対して所定距離上昇すると、保持枠60に当接して、可動弁70の移動が規制されるようになっている。
【0037】
そして、この実施形態では、可動弁70と保持枠60との当接部分となる、上記可動弁70の上面外周74aの周方向一箇所に、所定高さの凸部90が形成されている。図5(a)に示すように、この凸部90の外周92は、所定曲率の曲面形状をなし(この実施形態では、半円柱状をなす)、可動弁70が保持枠60に対して上昇すると、保持枠60の環状当接部63bに、凸部90が当接するようになっている。
【0038】
次に、このフロート弁装置10の作用について説明する。
【0039】
燃料タンク内の燃料の液面が低く、フロート50の所定体積以上が燃料に浸漬されていない状態では、図3に示すように、可動弁70の弁部材72が、弁座32aに当接せず、開口部32が開かれている。このため、燃料タンク内の燃料蒸気は、ハウジング20の連通孔24,25、41,42を遠って下方空間46に入り、開口部32を通過して、上方空間35に入り、通気孔37を通って通気管36内に入り、図示しない配管を介して燃料タンクの外部に配置されたキャニスタに送られる。
【0040】
次に、燃料タンク内の燃料の液面が高くなり、フロート50の所定体積以上が燃料に浸漬されると、フロート50に働く浮力とフロート用スプリング54の付勢力とによって、 図6に示すように、フロート50が浮上し、弁体用スプリング73を圧縮させて、可動弁70の弁部材72が弁座32aに当接し、更にフロート50の突起部55が可動弁70の受け部81を押圧して、弁部材72のフランジ部86を弁座32aに密接させて、開口部32を閉塞させる。このとき、フロート50の突起部55は、その周辺を可動弁70の受け部81の中心穴83に当接させて、可動弁70を押し上げる。
【0041】
これによって、例えば自動車の旋回等によって燃料が大きく揺れて液面が上昇したような場合には、開口部32を閉じて燃料が上方空間35内に流れるのを防止し、給油時において液面が所定高さまで上昇した場合には、開口部32を閉じてタンク内圧を上昇させることにより、給油を停止させて満タン規制を行うことができる。
【0042】
そして、燃料の揺動が収まったり、或いは、燃料タンク内の燃料が消費されたりして、燃料タンク内の燃料の液面が下がった場合には、フロート50に浮力が働かなくなるので、フロート50が自重により下降する。
【0043】
このとき、本発明においては、保持枠60と可動弁70との当接部に周方向に偏った凸部90を設けたことにより、図7,8に示すように、可動弁70側の当接部に設けた凸部90に、保持枠60側の環状当接部63bが最初に当接して、可動弁70に下降力を付与するようになっている。
【0044】
それによって、図7に示すように、保持枠60を介して、可動弁70に、弁座32aに対する引き剥がし力Fが付与される。この引き剥がし力Fは、可動弁70及び弁座32aの周方向の一箇所に片寄っているため、周方向のその箇所に引き剥がし力Fが集中し、可動弁70が傾いて弁座32aとの間に隙間が発生する。そして、一旦隙間が発生すると、その隙間から燃料タンク内の燃料蒸気が逃げて、燃料タンクの内圧が急激に低下することになるので、可動弁70が弁座32aから速やかに引き剥がされ、フロート50と共に下降することになる。
【0045】
このため、燃料タンクの内圧が比較的高く、可動弁70を弁座32aに押し付ける圧力が比較的高い状態でも、燃料液面が下降してフロート50の浮力が所定値以下になったときには、可動弁70を弁座32aから速やかに引き剥がして開弁させることができ、開弁が遅れて燃料タンクの内圧が異常に高くなることを防止できる。
【0046】
なお、図8に示すように、可動弁70側の当接部に設けた凸部90に、保持枠60側の環状当接部63bが当接すると、フロート50及び保持枠60の、凸部90に当接した部分とは反対側だけが下降して、フロート50が弁座32aの軸心に対して傾く傾向が生じる。しかし、フロート50は、その下端外周が、フロート50の上下摺動をガイドする内壁30の内面から突設したリブ45に当接して、その傾動角度が規制されているので、最大傾き角θ以上に傾くことはない。そして、この実施形態では、図7に示すように、フロート50が最大傾き角θで傾いた状態でも、可動弁70の凸部90とは反対側の上面側外周74aは、保持枠60側の環状当接部63bに当接しないように構成されているので、引き剥がし力Fが周方向の一箇所に付加された状態を維持できるようにされている。
【0047】
これに関して、比較例を挙げて説明すると、図9は、可動弁70の上面側外周74aに凸部90が設けられていない場合の、可動弁70と保持枠60との当接状態を示し、図10は、その状態でのフロート50の姿勢を示している。
【0048】
図9に示すように、可動弁70の上面側外周74aに凸部90が設けられていない場合には、可動弁70の上面側外周74aのほぼ全周が、保持枠60側の環状当接部63bに当接するので、フロート50が下降しようとしたときの引き剥がし力Fは、可動弁70の全周に均等に作用する。また、図10に示すように、フロート50は、自動車の旋回等の他の外力が加わらない限り、弁座32aの軸心に対してそれほど傾くことなく支持された状態となる。このような状態では、可動弁70の引き剥がし力Fが分散し、全周を一度に引き剥がす必要が生じるため、燃料タンク内圧が高い場合には、その内圧による可動弁70に対する弁座32aへの押し付け力と相まって、燃料液面が下降してフロート50に浮力がなくなっても、可動弁70が弁座32aに貼り付いて開弁しない状態が生じる可能性がある。
【0049】
また、図11は、可動弁の上面側外周74aに凸部90が設けられているが、凸部90の高さが十分でない場合の、可動弁70と保持枠60との当接状態を示し、図12は、その状態でのフロート50の姿勢を示している。この実施形態は、本発明に含まれるものであるが、図1〜7に示した実施形態よりは、開弁しにくいものである。
【0050】
すなわち、凸部90の高さが十分でない場合でも、閉弁状態から燃料液面が下降してフロート50が下降しようとしたとき、可動弁70側の当接部に設けた凸部90に、保持枠60側の環状当接部63bが最初に当接する。したがって、その時点では、可動弁70には、凸部90に当接した部分にのみ、引き剥がし力F1が作用する。燃料タンク内の圧力がそれほど高くない場合には、引き剥がし力F1を受けた部分で可動弁70が弁座32aから引き剥がされ、開弁させることができる。
【0051】
しかし、燃料タンクの内圧が高く、その内圧による可動弁70に対する弁座32aへの押し付け力が高いときには、凸部90に当接した部分にのみ、引き剥がし力F1が作用しても、可動弁70が弁座32aから直ちに離れない場合がある。その場合には、フロート50及び保持枠60の、凸部90に当接した部分とは反対側だけが下降して、フロート50が弁座32aの軸心に対して傾く傾向が生じる。
【0052】
そして、凸部90の高さが低い場合には、フロート50が弁座32aの軸心に対して最大に傾いた状態となる前に、すなわち、弁座32aの軸心に対する傾き傾き角θ’が、その最大傾き角θ(図7,8参照)となる前に、保持枠60の環状当接部63bの、前記凸部90に当接した部分と周方向において対向する部分も、可動弁70の上面側外周74aに当接してしまう。その結果、可動弁70の凸部90と対向する上面側外周74aにも、フロート50の荷重による引き剥がし力F2が作用することとなり、フロート50の荷重が、可動弁70の周方向の対向する2箇所に、引き剥がし力F1とF2に分散されてかかることになるので、可動弁70が弁座32aからスムーズに剥がれにくくなってしまう可能性がある。
【0053】
このように、図1〜7に示した実施形態のように、フロート50が最大傾き角θで傾いた状態でも、可動弁70の凸部90とは反対側の上面側外周74aは、保持枠60側の環状当接部63bに当接しないように、凸部90の高さを設定することにより、燃料液面の下降時における開弁をより確実かつスムーズに行わせることが可能となる。
【0054】
なお、前記各実施形態においては、可動弁70側の当接部である、板部74の上面側外周74aに凸部90が突設されているが、その代わりに、保持枠60側の当接部である、環状当接部63bに周方向に偏った部分的に突出した部分を設けて、これを本発明における凸部としてもよい。更には、可動弁70側及び保持枠60側の両当接部にそれぞれ凸部を設け、凸部どうしが当接するようにしてもよい。更に、前記各実施形態では、凸部90は一個のみ設けられているが、可動弁70に対して、保持枠60が周方向に偏って当接するように構成されていればよいので、凸部90が周方向に偏って複数設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明によるフロート弁装置の一実施例形態を示す分解斜視図である。
【図2】同フロート弁装置のハウジング本体及び下部キャップを示す斜視図である。
【図3】同フロート弁装置の縦断面図である。
【図4】同フロート弁装置の可動弁を示し、(a)は本体の斜視図、(b)は(a)とは異なる方向から見た場合の、本体の斜視図、(c)は弁部材を装着した状態の本体の斜視図である。
【図5】同フロート弁装置の可動弁を示し、(a)は本体の正面図、(b)は本体の平面図、(c)は図4(b)のB−B矢示線に沿った断面図である。
【図6】同フロート弁装置において、フロートが上昇して可動弁により弁座が閉じられた状態を示す部分拡大断面図である。
【図7】同フロート弁装置において、閉弁状態から、フロートが下降して、可動弁を弁座から引き剥がす状態を示す部分拡大断面図である。
【図8】図7の状態における装置全体を示す断面図である。
【図9】保持枠と可動弁との間に凸部が設けられていないフロート弁装置において、閉弁状態から、フロートが下降して、可動弁を弁座から引き剥がす状態を示す部分拡大断面図である。
【図10】図9の状態における装置全体を示す断面図である。
【図11】保持枠と可動弁との間に凸部が設けられているが、凸部の高さが十分でない本発明によるフロート弁装置において、閉弁状態から、フロートが下降して、可動弁を弁座から引き剥がす状態を示す部分拡大断面図である。
【図12】図11の状態における装置全体を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
10 フロート弁装置
20 ハウジング
24,25,40,41,42 連通孔
31 仕切壁
32 開口部
32a 弁座
35 上方空間
36 通気管
46 下方空間
50 フロート
55 突起部
60 保持枠
63b 環状当接部
70 可動弁
90 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体として筒状をなし、仕切壁を介して下方空間と上方空間に別れており、上方空間の外壁には、上方空間を外部に連通させる通気管が取付けられており、前記仕切壁には開口部が設けられており、その下面に弁座が形成されており、下方空間の外壁には、下方空間を外部に連通させる連通孔が形成されているハウジングと、
前記ハウジングの下方空間に上下摺動可能に配置され、前記ハウジングの連通孔を通して流入する液体によって浮上するように構成されたフロートと、
前記フロートの上部に揺動自在に支持され、前記フロートが所定高さまで浮上したとき、前記弁座に当接して前記開口部を閉塞する可動弁と、
前記可動弁の外周を囲む枠状をなし、前記可動弁を前記フロートに対して所定の距離で昇降可能かつ傾動可能に保持するように、前記フロートの上部外周に装着された保持枠とを備え、
前記可動弁の前記フロートに対する昇降高さを規制する前記保持枠と前記可動弁との当接部に周方向に偏った凸部が形成されており、閉弁状態で前記フロートが下降するとき、前記凸部が当接して前記可動弁に下降力を付与するように構成されていることを特徴とするフロート弁装置。
【請求項2】
前記可動弁の前記フロートに対する昇降高さを規制する前記保持枠と前記可動弁との当接部に形成された凸部の高さは、前記可動弁に対して前記フロートが最大に傾動した状態でも、前記保持枠と前記可動弁とが前記凸部のみで当接するように設定されている請求項1記載のフロート弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−168045(P2009−168045A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3486(P2008−3486)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】