説明

フードクッション

【課題】フードの建付け調整が可能で、かつフードから所定値以上の荷重を受けた場合に早期脱落が可能なフードクッションを得る。
【解決手段】フードクッション30の螺子山38の一部を構成する羽根部40は、螺子山38の螺旋方向に間隔を開けて配設されかつ装着状態で上下方向側に隣り合う配設位置同士が雄螺子部34の軸線34X回りの周方向にオフセットされている。螺子山38の一部を構成して羽根部40同士の間に形成された突片部42は、フードの自重で破断する破断強度に設定されており、羽根部40は、フードクッション30がフードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けると破断するように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部の上端側に形成された取付孔に装着されるフードクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
車両前部においては、車両前部の上端側の取付孔内にフードストッパが弾性的に装着されている場合がある(例えば、特許文献1参照)。このようなフードストッパとしては、例えば、取付孔へ係止される溝部の上方側が円錐台形状に形成されている場合がある。このような構造にすることによって、フードへの衝突体の衝突時にフードストッパがフードから所定値以上の荷重を受けた際には、当該フードストッパが取付孔から早期に脱落してフードの変形ストローク(変形可能なストローク)が確保されるようになっている。しかし、この従来のフードストッパでは、フードの建付け調整ができない。
【特許文献1】特開2005−1493公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記事実を考慮して、フードの建付け調整が可能で、かつフードから所定値以上の荷重を受けた場合に早期脱落が可能なフードクッションを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載する本発明のフードクッションは、車両前部の上端側に形成された取付孔に雄螺子部を螺合させることによって装着され、この螺合位置を変えることで前記取付孔からの突出高さが調整可能とされると共に、フード閉止時の緩衝材として機能するフードクッションであって、前記雄螺子部における螺旋状の螺子山は、前記フードクッションが前記フードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けた場合に破断又は変形することで前記フードクッションを前記取付孔から脱落させる羽根部を備え、前記羽根部は、前記螺子山の螺旋方向に間隔を開けて配設されると共に装着状態で上下方向側に隣り合う配設位置同士が前記雄螺子部の軸線回りの周方向にオフセットされていることを特徴とする。
【0005】
請求項1に記載する本発明のフードクッションによれば、車両前部の上端側に形成された取付孔への雄螺子部の螺合位置を変えることで取付孔からの突出高さが調整されるので、雄螺子部の螺合位置を調整することによってフードの建付け調整がされる。
【0006】
また、フードクッションがフードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けると、羽根部が破断又は変形することによって、フードクッションが取付孔から脱落する。ここで、羽根部は、螺子山の螺旋方向に間隔を開けて配設されると共に装着状態で上下方向側に隣り合う配設位置同士が雄螺子部の軸線回りの周方向にオフセットされているので、羽根部が破断又は変形した際に、羽根部同士の干渉が防止又は抑制される。このため、フードクッションが取付孔から早期に脱落し、フードに変形ストロークがもたらされる。その結果、フードは、荷重作用方向へ変形して荷重を吸収する。
【0007】
請求項2に記載する本発明のフードクッションは、請求項1記載の構成において、前記羽根部は、車両下方側への荷重に対する強度が装着状態における最下部側から最上部側へ向かうに従って低く設定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載する本発明のフードクッションによれば、羽根部は、車両下方側への荷重に対する強度が装着状態における最下部側から最上部側へ向かうに従って低く設定されているので、フードクッションがフードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けた場合、羽根部を破断又は変形させるための荷重が徐々に低くなっていく。このため、フードクッション側からフードへの反力が抑えられ、フードクッションが取付孔からスムーズに脱落する。
【0009】
請求項3に記載する本発明のフードクッションは、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記螺子山の一部を構成して前記羽根部同士の間に形成された突片部を有し、前記突片部は、前記フードの自重で破断又は変形する強度に設定され、かつ、螺子溝の底部からの突出量が前記螺子溝の溝幅に比べて小さく設定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載する本発明のフードクッションによれば、螺子山の一部を構成する突片部が羽根部同士の間に形成されているので、雄螺子部と取付孔側との接触面積が増加し、雄螺子部の取付孔への螺合位置がより安定的に維持される。
【0011】
一方、突片部は、フードの自重で破断又は変形する強度に設定されているので、フードクッションがフードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けた場合に、突片部によるフード側への反力は極めて小さい。また、突片部は、螺子溝の底部からの突出量が螺子溝の溝幅に比べて小さく設定されているので、突片部が破断又は変形しても、羽根部への干渉が防止又は抑制される。このため、突片部が形成されていても、フードクッションが取付孔から脱落する際の突片部42による抵抗は極めて小さい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のフードクッションによれば、フードの建付け調整が可能で、かつフードから所定値以上の荷重を受けた場合に早期脱落が可能であるという優れた効果を有する。
【0013】
請求項2に記載のフードクッションによれば、フードから所定値以上の荷重を受けた場合に、フードクッション側からフードへの反力を抑えてフードクッションを取付孔からスムーズに脱落させることができるという優れた効果を有する。
【0014】
請求項3に記載のフードクッションによれば、フードから所定値以上の荷重を受けて取付孔から脱落する際の抵抗を抑えながら、雄螺子部の取付孔への螺合位置をより安定的に維持することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るフードクッションについて図1〜図6を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0016】
図1に示されるように、自動車(車両)10における車両前部10Aには、車体前後方向に沿ってエプロンアッパメンバ12が配設されており、このエプロンアッパメンバ12は、車両前部10Aにおける車両幅方向の両端上部にそれぞれ取り付けられている。エプロンアッパメンバ12の前端部には、ラジエータサポートアッパ14が車両幅方向に沿って架設されている。なお、エプロンアッパメンバ12及びラジエータサポートアッパ14は、広義には「車体骨格部材」として把握される要素である。
【0017】
エプロンアッパメンバ12の上方には、フード20(エンジンフード、広義には「開閉扉」として把握される要素である。)が、後端部に配設されたヒンジ(図示省略)を介して取り付けられている。このフード20によって、エンジンルーム18が開閉可能となっている。
【0018】
図2に示されるように、フード20は、フード20の外板(閉止状態で上部)を構成するフードアウタパネル22と、フード20の内板(閉止状態で下部)を構成するフードインナパネル24とを備えており、フードアウタパネル22の外周縁部22Aとフードインナパネル24の外周縁部24Aとがヘミング加工によって互いに結合されている。フード20の閉止状態では、フード20の前部寄り両サイドは、フード閉止時の緩衝材として機能するフードクッション30(詳細後述)を介してエプロンアッパメンバ12に支持されている。
【0019】
図3に示されるように、エプロンアッパメンバ12の上壁部12A(車両前部10A(図1参照)の上端側)には、プレス成形によって所定径寸法の取付孔26が形成されてフードクッション30の装着用とされている。取付孔26の周縁部には、取付孔26の径方向に沿って伸びる切欠28が一箇所形成されている。また、取付孔26の周縁部は、切欠28を挟んで対向する一方の周縁部28Aから、他方の周縁部28Bにかけて次第に低くなるように傾斜している。これによって、取付孔26の周縁部には雌螺子の一周が形成されている。この取付孔26には、切欠28側から通されたフードクッション30が螺合可能とされている。
【0020】
フードクッション30は、全体として略円柱状に形成され、硬質材料(硬質樹脂材料)によって構成された雄螺子部34と、雄螺子部34の先端側(上方側)に配設されて軟質材料(ゴム)によって構成された先端部32と、を備えた二色成形品とされている。図2に示されるように、フードクッション30の先端部32は、フード20が閉止状態にある場合にフードインナパネル24の下面24Bに当接して車両下方側に弾性圧縮変形するようになっている。このように、フードクッション30の上部である先端部32を軟質材料(ゴム)で構成したのは、初期荷重の立ち上がりを抑え、静閉力(フードを静的に押し下げる荷重)を低く抑えるためである。なお、本実施形態では、フードクッション30が二色成形品とされてその先端部32が軟質材料で構成されているが、変形例として、例えば、フードクッションが単一の硬質材料によって構成されると共に、その先端部(上部)に中空の肉盗み部が形成されることによって先端部が弾性変形可能とされるような構成であってもよい。
【0021】
また、フードクッション30における雄螺子部34の外周部34Aには、所定のピッチで螺子溝36がフードクッション30の軸線回りに螺旋状に刻まれており、螺子溝36の間が螺旋状の螺子山38となっている。フードクッション30は、エプロンアッパメンバ12の取付孔26に雄螺子部34(螺子溝36及び螺子山38)を螺合させることによって取付孔26側(エプロンアッパメンバ12側)に装着されている。フードクッション30は、この螺合位置(換言すれば、捩じ込み量)を変えることで取付孔26からの突出高さHが調整可能とされている。なお、フードクッション30の突出高さHは、フードインナパネル24の下面24Bと、エプロンアッパメンバ12の上壁部12Aの上面との間の面間隙と等しい長さとなる。
【0022】
図2の4A−4A線に沿う拡大断面図である図4(A)、及び図2の4B−4B線に沿う拡大断面図である図4(B)に示されるように、螺子山38は、当該螺子山38の螺旋方向に間隔を開けて配設される比較的大きな羽根部40(図4(A)及び図4(B)では、それぞれ計三枚図示)と、図4の断面視における羽根部40同士の間に形成された比較的小さな突片部42(図4(A)及び図4(B)では、それぞれ計三枚図示)と、によって構成されている。
【0023】
突片部42は、平面視で細片状とされてフード20(図2参照)の自重で破断する強度(破断強度)に設定されている。また、羽根部40は、平面視で略半円状とされて車両下方側への荷重に対する強度(破断強度)が図2に示される装着状態における最下部側から最上部側へ向かうに従って低く設定されており、フードクッション30がフード20から所定値以上の車両下方側への荷重fを受けた場合に破断することでフードクッション30を取付孔26から脱落(離脱)させるように強度設定されている。
【0024】
羽根部40を破断させる閾値f3は、強閉時入力荷重(フード20を強く閉めた場合又はフード20を高い位置から閉めた場合の荷重)f2と頭部インパクタが入力される場合の最大入力荷重f4との関係がf2<f3<f4の関係になるように設定されている。これにより、羽根部40は強閉時には破断しない。また、羽根部40の破断強度は、(閾値f3)=(羽根部40の最下部強度)>(羽根部40の最上部強度)>(強閉時必要強度(すなわち、強閉時入力荷重f2で破断しない強度))となるように、設定されている。このような羽根部40の破断強度は、板厚、形状(例えば羽根部の上面視での曲率半径により設定される形状や、羽根部の縦断面視での抜きテーパ形状)、エプロンアッパメンバ12側(取付孔26側)との接触面積等を変えることによって設定する。
【0025】
なお、フードクッション30の螺子溝36の底部36Aと取付孔26の内周部26Aとの間には、隙間が形成されており、この隙間内を破断した羽根部40及び突片部42が通過可能となっている。
【0026】
図4に示されるように、羽根部40は、装着状態で上下方向側に隣り合う配設位置同士が雄螺子部34の軸線34X回りの周方向にオフセットされて(換言すれば、螺子山38の直近上下で重ならないように位置がずらされて)いる。これによって、車両下方側への荷重によって羽根部40が破断した場合に、羽根部40同士が干渉しにくい構造になっている。
【0027】
また、図2に示されるように、羽根部40の上下には、突片部42が配設されており、突片部42は、螺子溝36の底部36Aからの突出量が螺子溝36の溝幅36Wに比べて小さく設定されている。これによって、車両下方側への荷重によって突片部42が破断した場合に、突片部42がその上方側の羽根部40に干渉しにくく、また、車両下方側への荷重によって羽根部40が破断した場合に、羽根部40とその上方側の突片部42との干渉量を抑えることができる(又は干渉しにくい)構造になっている。
【0028】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0029】
図2に示されるように、本実施形態に係るフードクッション30を適用すれば、エプロンアッパメンバ12に形成された取付孔26への雄螺子部34の螺合位置を変えることで取付孔26からの突出高さHが調整されるので、雄螺子部34の螺合位置を調整することによってフード20の建付け調整がされる。
【0030】
また、フード20の閉止時には、フード20のフードインナパネル24の下面24Bが、フードクッション30の先端部32に当接する。このとき、フードクッション30は、雄螺子部34が取付孔26(エプロンアッパメンバ12側)に装着された状態を維持して閉止方向への荷重に抗すると共に、フードクッション30の先端部32が車両下方側に弾性圧縮変形してフードクッション30に入力される荷重を抑える。
【0031】
フード20が閉じられた状態で衝突体44がフード20に接触することによって、フードクッション30がフード20から所定値以上の車両下方側への荷重fを受けると、羽根部40が破断することによって、図5に示されるように、フードクッション30が取付孔26から車両下方側に脱落する。ここで、図4に示されるように、羽根部40は、螺子山38の螺旋方向に間隔を開けて配設されるので、一連の螺子山構造(破断のきっかけがないような構造)の場合に比べて破断の設定がし易い。また、羽根部40は、装着状態で上下方向側に隣り合う配設位置同士(図4(A)、(B)参照)が雄螺子部34の軸線34X回りの周方向にオフセットされているので、羽根部40が破断した際に、羽根部40同士の干渉が防止又は抑制される。
【0032】
このため、図5に示されるように、フードクッション30が取付孔26から早期に脱落する(完全に抜け落ちる)。これにより、フード20とフードクッション30の取付部位であるエプロンアッパメンバ12との間に所定の空きスペース(すなわち、フードクッション30の当初の突出高さH(図2参照)に相当する変形ストローク)が形成される。その結果、フード20は荷重作用方向、つまり車両下方側へ塑性変形することが可能となり、衝突体44との荷重を吸収(エネルギー吸収)することが可能となる。
【0033】
また、図2に示される羽根部40は、車両下方側への荷重に対する破断強度が装着状態における最下部側から最上部側へ向かうに従って低く設定されているので、フードクッション30がフード20から所定値以上の車両下方側への荷重fを受けた場合、羽根部40を破断させるための荷重が徐々に低くなっていく。このため、フードクッション30側からフード20への反力が抑えられ、フードクッション30が取付孔26からスムーズに脱落する。
【0034】
また、本実施形態に係るフードクッション30では、図4に示されるように、螺子山38の一部を構成する突片部42が羽根部40同士の間に形成されているので、図2に示される雄螺子部34と取付孔26側との接触面積が増加し、雄螺子部34の取付孔26への螺合位置がより安定的に維持される。すなわち、突片部42が設けられることで、雄螺子部34の取付孔26側との摺動抵抗が十分に確保されて例えば激しい振動に対する廻り止めの性能が良好になり、傾き防止(ひいていは所謂ガタ防止)の性能も向上する。また、突片部42が羽根部40と連続するように設けられることによって、雄螺子部34の取付孔26への捩じ込み作業性がより良くなる。
【0035】
一方、突片部42は、フード20の自重で破断する破断強度に設定されているので、フードクッション30がフード20から所定値以上の車両下方側への荷重fを受けた場合に、突片部42によるフード20側への反力は極めて小さい。また、突片部42は、螺子溝36の底部36Aからの突出量が螺子溝36の溝幅36Wに比べて小さく設定されているので、突片部42が破断しても、羽根部40への干渉が防止又は抑制される。このため、突片部42が形成されていても、フードクッション30が取付孔26から脱落する際の突片部42による抵抗は極めて小さい。
【0036】
ここで、フードクッション30がフード20から車両下方側への荷重fを受けた場合の作用を図6のグラフを用いて説明する。図6には、フードクッション30のF−S線図、すなわち、フードクッション30のストロークSとフードクッション30への入力荷重Fとの関係を示すグラフが示されている。図6のF−S線図にて、f1は静閉力上限(フード20を静的に押し下げる場合の荷重)、f2は強閉時入力(フード20を強く閉めた場合又はフード20を高い位置から閉めた場合の荷重)、f3は羽根部40を破断させる閾値、f4は頭部インパクタが入力される場合の最大入力荷重である。また、S1は荷重がf1の場合の変位量、S2は荷重がf2の場合の変位量、S3は荷重がf3の場合の変位量をそれぞれ示し、S4は図2に示されるフードインナパネル24の下面24Bとエプロンアッパメンバ12の上壁部12Aの上面との間の面間隙と等しい量(換言すれば、フードクッション30の突出高さHと等しい量)を示す。
【0037】
図2に示されるフードクッション30にて軟質材料で構成された先端部32によって、図6に示されるように、初期荷重の立ち上がりが抑えられて静閉力が低く抑えられ、荷重が閾値f3に達すると、図2に示される(車両下方側への荷重fに対する強度が装着状態における最下部側から最上部側へ向かうに従って低く設定された)羽根部40が下側から順次破断するので、図6に示されるように、荷重は徐々に下がっていく。
【0038】
このため、例えば、螺子山の車両下方側への荷重に対する強度が一定で車両下方側への荷重に対して螺子山が撓むことでフードクッションが脱落するような対比構造の線図(二点鎖線で図示)に比べてフードクッションを変形させるエネルギーが少なくて済む(斜線部参照)。前記対比構造では、フードクッションが螺子山を越えて下がる際に一旦は荷重が下がるが、次の螺子山を越える際に前の螺子山を越える際と同様の荷重となる。これに対して、本実施形態の構造では、破断時の荷重が徐々に小さくなっていくので、フードクッションによる反力が抑えられる。その結果として、例えば、フードクッションにて取付孔へ係止される溝部の上方側が円錐台形状に形成されるような対比構造(フードの建付け調整はできないがフードから所定値以上の荷重を受けた際に取付孔から早期に脱落する構造(前記特許文献1参照))における荷重特性に極めて近い荷重特性を得ることができる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係るフードクッション30によれば、フード20の建付け調整が可能で、かつフード20から所定値以上の荷重を受けた場合に早期脱落(歩行者保護対応)が可能となる。
【0040】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るフードクッションについて、図7を用いて説明する。図7には、本発明の第2の実施形態に係るフードクッション50の一部が縦断面図にて示されている。この図に示されるように、フードクッション50は、硬質の雄螺子34Bの外周が軟質材52によって被覆されている点で、第1の実施形態に係るフードクッション30とは異なるが、他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。第1の実施形態と同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
本実施形態における雄螺子34Bは、第1の実施形態における雄螺子部34とほぼ同様の構成となっており、螺子溝部36Bが螺子溝36に相当し、螺子山部38Bが螺子山38に相当し、羽根40Bが羽根部40に相当し、突片42Bが突片部42に相当する(図2参照)。また、図7に示されるように、本実施形態では、雄螺子34Bと軟質材52とで雄螺子部54が構成され、螺子溝部36Bに軟質材52が被覆されて螺子溝56が構成され、螺子山部38Bに軟質材52が被覆されて螺子山58が構成され、羽根40Bに軟質材52が被覆されて羽根部60が構成され、突片42Bに軟質材52が被覆されて突片部62が構成されている。
【0042】
フードクッション50は、エプロンアッパメンバ12の取付孔26に雄螺子部54を螺合させることによって装着され、この螺合位置を変えることで取付孔26からの突出高さが調整可能とされると共に、フード閉止時の緩衝材として機能している。雄螺子部54における螺旋状の螺子山58は、当該螺子山58の螺旋方向に間隔を開けて配設される羽根部60を備えており、これらの羽根部60は、装着状態で上下方向側に隣り合う配設位置同士が雄螺子部54の軸線回りの周方向にオフセットされている。また、螺子山58の一部を突片部62が構成しており、突片部62は、羽根部60同士の間に形成され、螺子溝56の底部56Aからの突出量が螺子溝56の溝幅56Wに比べて小さく設定されている。
【0043】
突片部62は、フード20(図2参照)の自重で曲げ変形する強度(曲げ強度)に設定され、羽根部60は、フードクッション50がフード20(図2参照)から所定値以上の車両下方側への荷重f(図2参照)を受けた場合に曲げ変形することでフードクッション50を取付孔26から脱落させる強度(曲げ強度)に設定されている。羽根部60は、車両下方側への荷重に対する強度が装着状態における最下部側から最上部側へ向かうに従って低く設定されている。
【0044】
軟質材52は、雄螺子34B側と取付孔26側(エプロンアッパメンバ12側)とのクリアランスをガタ詰めする機能を有し、また、フードクッション50側と取付孔26側(エプロンアッパメンバ12側)との摺動抵抗が高くなりすぎるのを抑えて組付性を向上させる機能を果たしている。
【0045】
また、フードクッション50がフード20(図2参照)から所定値以上の車両下方側への荷重f(図2参照)を受けた場合に軟質材52が破断せずに曲げ変形するような構成にすることで、前記荷重を受けた場合に羽根40Bや突片42Bが破断しても散らばるのを防ぐことができる。これにより、破断して散らばった羽根40Bや突片42Bを回収する作業が省略できる(回収効率への配慮)。なお、図7では、羽根部60及び突片部62が曲げ変形した状態の一部を二点鎖線にて示す。
【0046】
また、本実施形態に係るフードクッション50では、フード20(図2参照)の建付け調整時には、作業者が軟質材52に手を当てて雄螺子部54を回して組み付けることになるので、作業者が硬質で凹凸のある雄螺子34Bを手で回して組み付ける場合に比べて、手が痛くなりにくい(組付作業者への配慮)。
【0047】
以上説明した本実施形態に係るフードクッション50によっても、フード20(図2参照)の建付け調整が可能で、かつフード20から所定値以上の荷重を受けた場合に早期脱落が可能になる。
【0048】
[実施形態の補足説明]
なお、上記実施形態では、羽根部40、60同士の間に突片部42、62が形成されており、このような形態が好ましいが、フードクッションは、例えば、雄螺子部における螺旋状の螺子山が突片部を備えず羽根部のみで構成されていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、羽根部40、60は、車両下方側への荷重fに対する強度が装着状態における最下部側から最上部側へ向かうに従って低く設定されており、このような構成が好ましいが、羽根部における車両下方側への荷重に対する強度は、例えば、装着状態における下部及び上部では上方側へ向かうに従って低く設定されているが装着状態における上下方向中間領域では一定とされているような構成とすることも可能である。
【0050】
さらに、上記実施形態では、図2及び図7に示されるように、羽根部40、60は、螺子溝36、56の底部36A、56Aからの突出量が螺子溝36、56の溝幅36W、56Wに比べて大きく設定されているが、羽根部は、突出量以外に関しての上記実施形態で記載した条件を満たせば、螺子溝の底部からの突出量が螺子溝の溝幅に比べて小さく設定されてもよく、また、前記溝幅と同等の長さに設定されてもよい。
【0051】
さらにまた、上記第1の実施形態では、硬質の羽根部40は、フードクッション30がフード20から所定値以上の車両下方側への荷重fを受けた場合に破断するような破断強度に設定されているが、第1の実施形態と同様の硬質の羽根部は、例えば、フードクッションがフードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けた場合に曲げ変形することでフードクッションを取付孔から脱落させるような曲げ強度に設定されていてもよい。
【0052】
また、上記第1の実施形態では、突片部42は、フード20の自重で破断する破断強度に設定されているが、突片部は、フードの自重で曲げ変形する曲げ強度に設定されていてもよい。
【0053】
なお、フードクッションに形成される羽根部や突片部の枚数は、上記実施形態の枚数に限定されない。
【0054】
また、上記実施形態では、本発明のフードクッションがエプロンアッパメンバ12側に装着されたフードクッション30、50に適用されているが、本発明のフードクッションは、図1に示されるラジエータサポートアッパ14の車両幅方向の両端上部に装着された強閉対策用のフードクッション(図示省略)にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフードクッションが適用された車両前部を車両斜め前方から見た状態で示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿った拡大断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るフードクッション及び該フードクッションが装着される取付孔を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るフードクッションの断面図である。図4(A)は、図2の4A−4A線に沿った拡大断面図である。図4(B)は、図2の4B−4B線に沿った拡大断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るフードクッションが取付孔から脱落している状態を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るフードクッションのF−S線図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るフードクッションの一部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0056】
10A 車両前部
26 取付孔
30 フードクッション
34 雄螺子部
34X 軸線
36 螺子溝
36A 底部
36W 溝幅
38 螺子山
40 羽根部
42 突片部
50 フードクッション
54 雄螺子部
56 螺子溝
56A 底部
56W 溝幅
58 螺子山
60 羽根部
62 突片部
f 荷重
H 突出高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部の上端側に形成された取付孔に雄螺子部を螺合させることによって装着され、この螺合位置を変えることで前記取付孔からの突出高さが調整可能とされると共に、フード閉止時の緩衝材として機能するフードクッションであって、
前記雄螺子部における螺旋状の螺子山は、前記フードクッションが前記フードから所定値以上の車両下方側への荷重を受けた場合に破断又は変形することで前記フードクッションを前記取付孔から脱落させる羽根部を備え、
前記羽根部は、前記螺子山の螺旋方向に間隔を開けて配設されると共に装着状態で上下方向側に隣り合う配設位置同士が前記雄螺子部の軸線回りの周方向にオフセットされていることを特徴とするフードクッション。
【請求項2】
前記羽根部は、車両下方側への荷重に対する強度が装着状態における最下部側から最上部側へ向かうに従って低く設定されていることを特徴とする請求項1記載のフードクッション。
【請求項3】
前記螺子山の一部を構成して前記羽根部同士の間に形成された突片部を有し、
前記突片部は、前記フードの自重で破断又は変形する強度に設定され、かつ、螺子溝の底部からの突出量が前記螺子溝の溝幅に比べて小さく設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフードクッション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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