説明

フードロック装置

【課題】部品数が少なくて済み、コンパクトなフードロック装置を提供すること。
【解決手段】ベースプレート4の一面に設けたラッチ6及びポウル7と、他面に設けたセカンダリレバー8を備え、ポウル7は、ラッチ6と係合してストライカ解放方向へ回動するのを規制するラッチ係合位置と、ラッチ6から離脱する離脱位置の間を回動し、セカンダリレバー8は、ストライカ3と係合してフードを僅かに開いた状態でロックする開放規制位置と、ストライカ3の進路から退避する開放位置との間を回動し、ポウル7及びセカンダリレバー8が共通の1本の支軸13によりベースプレート4に枢支され、一つのバネ23により、ポウル7がラッチ係合位置に向けて付勢されると共に、セカンダリレバー8が開放規制位置に向けて付勢されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームの開口部に開閉可能に取り付けられたフードを、車体に全閉状態又は僅かに開いた状態でロックするためのフードロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンルームには、フードを閉鎖状態でロックするフードロック装置が設置されており、ロックを解除するとフードが自動的に押し上げられて開くようになっている。ところが、フードが急に大きく開くと危険なので、フードの上昇を途中でいったん制限するのが一般的である。
従来、急激にフードが全開するのを防ぐために、フードに固定したストライカと係合して、フードを全閉状態でロックするラッチ、及び、ラッチと係合してその反転を規制するポールとは別に、ストライカと係合して、フードを僅かに開いた状態で停止させるオグジリアリレバーを配設したフードロック装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−149950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のフードロック装置において、ラッチ、ポール及びオグジリアリレバーは、それぞれ異なる支軸によってベースの異なる位置に取り付けられると共に、異なるバネで付勢されているので、構造が複雑で部品数が多くなり、しかも、ラッチ、ポール及びオグジリアリレバーの設置スペースだけでなく、バネの設置スペースも広く必要で、嵩張るという欠点があった。
本発明が解決しようとする課題は、部品数が少なくて済み、コンパクトなフードロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフードロック装置は、フードに固定されたストライカと、車体に固定されたベースプレートと、該ベースプレートの一面に取り付けられたラッチ及びポウルと、前記ベースプレートの他面に取り付けられたセカンダリレバーとを備え、前記ラッチは、回動に伴って前記ストライカと係脱し、係合時に前記フードを全閉状態でロックし、前記ポウルは、前記ラッチと係合して該ラッチがストライカ解放方向へ回動するのを規制するラッチ係合位置と、前記ラッチから離脱する離脱位置との間を回動し、前記セカンダリレバーは、前記ストライカと係合して前記フードを僅かに開いた状態でロックする開放規制位置と、前記ストライカの進路から退避する開放位置との間を回動し、前記ポウル及びセカンダリレバーが共通の1本の支軸により前記ベースプレートに枢支され、一つのバネにより、前記ポウルがラッチ係合位置に向けて付勢されると共に、前記セカンダリレバーが開放規制位置に向けて付勢されている。
【0006】
前記一つのバネを前記ポウルとセカンダリレバーとの間に架設して、該ポウル及びセカンダリレバーを互いに逆回りに付勢し、前記ポウルがラッチ係合位置を越えて回動するのを規制する第1ストッパと、前記セカンダリレバーが開放規制位置を越えて回動するのを規制する第2ストッパを設けると良い。
前記ポウルの前記支軸を挟んだ両側にそれぞれケーブル取付部を形成し、前記ポウルを付勢力に抗して回動させるべく引張操作する操作ケーブルを、前記ケーブル取付部に択一的に取り付けても良い。
前記支軸と、前記ラッチをベースプレートに枢支する取付軸とは、前記ベースプレートを挟んで同側の端部をカシメ端部とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1又は2に係る発明によれば、ポウルとセカンダリレバーは、ベースプレートに取り付けるための支軸、及び、付勢するバネを共有するので、部品数が減少するだけでなくバネを支持する部品も不要となってコストが削減され、しかも、ポウル及びセカンダリレバーの設置スペースが狭くて済み、装置全体がコンパクトとなる。
請求項3に係る発明によれば、操作ケーブルを一方のケーブル取付部に取り付けた場合と、他方のケーブル取付部に取り付けた場合とでは、操作ケーブルを逆方向に引っ張ってもポウルを離脱方向に回動させることができるので、同じ部品で右ハンドルの車両にも左ハンドルの車両にも対応可能である。
請求項4に係る発明によれば、支軸と取付軸のカシメ方向が同一になるため、カシメ工程が簡略化される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例を示すフードロック装置のフード開放状態における背面図である。
【図2】本発明の実施例を示すフードロック装置のフード全閉状態における背面図である。
【図3】本発明の実施例を示すフードロック装置のフード全閉状態における正面図である。
【図4】本発明の実施例を示すフードロック装置のストライカ解放時における正面図である。
【図5】本発明の実施例を示すフードロック装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本発明のフードロック装置は、エンジンルームの開口部に開閉可能に取り付けたフード1を車体2に全閉状態又は僅かに開いた状態でロックする装置であって、フード1に固定されたストライカ3と、車体2に固定され、ストライカ受け入れ溝5を有するベースプレート4と、ベースプレート4の一面に回動可能に取り付けられたラッチ6及びポウル7と、ベースプレート4の他面に回動可能に取り付けられたセカンダリレバー8とを備える。
【0010】
ストライカ3は、丸棒をコ字形に屈曲して成り、その両端がフード1の下面の前端略中央部に固定されている。
ベースプレート4は、エンジンルームの内部において、閉鎖されたフード1のストライカ3と対応する位置に固定される。ベースプレート4の上端中央部に形成された縦長のストライカ受け入れ溝5は上方に開口し、フード1を閉鎖したときストライカ3を受け入れるようになっている。
【0011】
ラッチ6は、ベースプレート4のストライカ受け入れ溝5を挟んだ一側に取付軸9により枢支される。ラッチ6の周縁部には、ストライカ3と係合可能な係合溝10が形成され、係合溝10に隣接してストライカ衝突面11が形成され、さらに、ストライカ衝突面11に連続してポウル7と係合可能な係止突起12が形成されている。
また、ラッチ6は、付勢バネ21(図5参照)により付勢され、常態では、図1に示すように、係合溝10がストライカ受け入れ溝5の開口部に向けて開口し、ストライカ衝突面11がストライカ受け入れ溝5を横切っている。一方、ラッチ6が付勢力に抗して回動すると、図2に示すように、係合溝10の開口部がストライカ受け入れ溝5の側縁を向くようになっている。
なお、図1及び図2では、付勢バネ21を省略してある。
【0012】
ポウル7は、細長い板材から成り、その長手方向中央部が、ベースプレート4のストライカ受け入れ溝5を挟んだ他側に支軸13により枢支される。
ポウル7の長手方向一端部の側縁には、回動に伴ってラッチ6の係止突起12と係脱するラッチ抑え部14が形成され、長手方向両端部にはそれぞれケーブル取付部15,15’が形成されている。
そして、ケーブル取付部15,15’のいずれかに、ポウル7を回動させるべく引張操作するための操作ケーブル(図示せず)の一端が取り付けられる。この操作ケーブルの他端は、運転席で操作するオープナーレバーに接続するので、運転席の位置に応じて(左ハンドル車であるか、右ハンドル車であるかに応じて)、ケーブル取付部15,15’の内の適した一方を選択して取り付ける。
【0013】
ポウル7の中央部からは、先端部をベースプレート4の他面に向けて屈曲した第1バネ係止片16が、ラッチ6と逆側に向けて張り出している。第1バネ係止片16の先端部は、ベースプレート4に形成された弧状の第1ガイド孔17に摺動可能に係合し、図3〜図5に示すように、ベースプレート4の他面から突出している。
ポウル7は、第1ガイド孔17に第1バネ係止片16がガイドされて、ラッチ抑え部14がラッチ6の係止突起12と係合するラッチ係合位置と、ラッチ6から離脱する離脱位置との間を回動するようになっている。
また、ポウル7がラッチ係合位置にある時、第1バネ係止片16が第1ガイド孔17の端部に当接し、第1バネ係止片16と第1ガイド孔17とによって、ポウル7がラッチ係合位置を越えて回動するのを規制する第1ストッパを形成している。
【0014】
図3及び図4に示すように、セカンダリレバー8は、ポウル7と共通の支軸13によりベースプレート4に回動自在に枢支される。なお、支軸13と、ラッチ6をベースプレート4に枢支する取付軸9とは、ベースプレート4を挟んで同側の端部(図に示す例では、一面側の端部)がカシメ端部となっている。
また、セカンダリレバー8の上部において、エンジンルームの開口部よりも上方に突出する位置に、セカンダリレバー8を手動で回動操作するための操作片24が形成される。
さらに、セカンダリレバー8の一側部には、上方に延びて頂部が鋭角に屈曲したフック部18が形成され、一側縁にはベースプレート4の一面に向けて屈曲したガイド片19が形成される。ガイド片19は、ベースプレート4に形成された弧状の第2ガイド孔20に摺動可能に係合している。
【0015】
そして、セカンダリレバー8は、第2ガイド孔20にガイド片19がガイドされて、フック部18がストライカ3の進路であるストライカ受け入れ溝5を横切る開放規制位置(図3)と、フック部18がストライカ受け入れ溝5から退避する開放位置(図4)との間を回動するようになっている。
また、図3に示すように、セカンダリレバー8が開放規制位置にある時、ガイド片19は第2ガイド孔20の端部に当接し、ガイド片19と第2ガイド孔20によって、セカンダリレバー8が開放規制位置を越えて回動するのを規制する第2ストッパを形成している。
【0016】
セカンダリレバー8の他側縁には第2バネ係止片22が形成され、ポウル7の第1バネ係止片16とセカンダリレバー8の第2バネ係止片22との間にバネ23が架設される。 この一つのバネ23により、ポウル7とセカンダリレバー8とは互いに逆回りに付勢され、ポウル7がラッチ係合位置に向けて付勢されると共に、セカンダリレバー8が開放規制位置に向けて付勢されている。
上方のケーブル取付部15に接続した操作ケーブルを図1及び図2の左方向に引くか(左ハンドル車の場合)、下方のケーブル取付部15’に接続した操作ケーブルを右方向に引くと(右ハンドル車の場合)、ポウル7は離脱方向へ回動する。
【0017】
この時、バネ23を支持するセカンダリレバー8は、第2ストッパに引き止められて開放規制位置を越えて回動しないので、バネ23そのものが移動することは無く、操作ケーブルの引張操作を停止すると、ポウル7は元の位置に復帰する。
また、セカンダリレバー8をバネ23の付勢力に抗して回動させると、バネ23を支持するポウル7は、第1ストッパに引き止められてラッチ係合位置を越えて回動しないので、バネ23そのものが移動することは無く、セカンダリレバー8を解放すると、バネ23の力によりセカンダリレバー8は元の位置に復帰する。
【0018】
次に、フードロック装置の作用を説明する。
フード1を全開したときは、図1に示すように、セカンダリレバー8のフック部18がストライカ受け入れ溝5を横切り、ラッチ6のストライカ衝突面11がストライカ受け入れ溝5の開口部を向いている。
フード1を押し下げると、ストライカ3がセカンダリレバー8を押し退けながらストライカ受け入れ溝5に進入し、ラッチ6のストライカ衝突面11に衝突する。すると、衝突の衝撃により、ラッチ6は付勢バネ21の付勢力に抗して回動し、フード1を完全に閉じた時には、図2及び図3に示すように、ラッチ6の係合溝10とストライカ3とが係合する。
また、この時、ポウル7のラッチ抑え部14がラッチ6の係止突起12と係合して、ラッチ6がストライカ解放方向へ回動するのを規制するので、ストライカ3はラッチ6の係合溝10及びベースプレート4のストライカ受け入れ溝5から脱出できず、フード1が全閉状態でロックされる。
【0019】
操作ケーブルを操作してポウル7を離脱位置へ回動させると、ラッチ抑え部14と係止突起12の係合が解除され、ラッチ6は付勢バネ21に引かれてストライカ解放方向へ回動する。すると、図1に示すように、ラッチ6の係合溝10が上方に向けて開口し、ストライカ3がストライカ受け入れ溝5内を上昇する。
しかし、セカンダリレバー8は開放規制位置にあってフック部18がストライカ受け入れ溝5を横切っているので、図1の破線で示すように、ストライカ3はフック部18に引っかかり、フード1が僅かに開いた状態でロックされる。
操作ケーブルの操作が終了すると、ポウル7はバネ23の付勢力によりラッチ係合位置へ復帰する。
【0020】
フード1とエンジンルームとの僅かな隙間から手を差し込み、操作片24を操作してセカンダリレバー8を開放位置へ回動させると(図4参照)、フック部18がストライカ3の進路から退避し、ストライカ3の上昇が許容されて、フード1を全開させることが可能となる。
セカンダリレバー8を解放すると、セカンダリレバー8はバネ23の付勢力により開放規制位置へ復帰する。
なお、第1ストッパ及び第2ストッパは、ポウル7とセカンダリレバー8の回動を規制するものであれば上記実施例の構造に限定されず、ベースプレート4のポウル7及びセカンダリレバー8と当接する位置にそれぞれ形成した切起し片等であっても良い。
【符号の説明】
【0021】
1 フード
2 車体
3 ストライカ
4 ベースプレート
5 ストライカ受け入れ溝
6 ラッチ
7 ポウル
8 セカンダリレバー
9 取付軸
10 係合溝
11 ストライカ衝突面
12 係止突起
13 支軸
14 ラッチ抑え部
15,15’ ケーブル取付部
16 第1バネ係止片
17 第1ガイド孔
18 フック部
19 ガイド片
20 第2ガイド孔
21 付勢バネ
22 第2バネ係止片
23 バネ
24 操作片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フードに固定されたストライカと、車体に固定されたベースプレートと、該ベースプレートの一面に取り付けられたラッチ及びポウルと、前記ベースプレートの他面に取り付けられたセカンダリレバーとを備え、前記ラッチは、回動に伴ってストライカと係脱し、係合時に前記フードを全閉状態でロックし、前記ポウルは、前記ラッチと係合して該ラッチがストライカ解放方向へ回動するのを規制するラッチ係合位置と、前記ラッチから離脱する離脱位置との間を回動し、前記セカンダリレバーは、前記ストライカと係合して前記フードを僅かに開いた状態でロックする開放規制位置と、前記ストライカの進路から退避する開放位置との間を回動するフードロック装置において、前記ポウル及びセカンダリレバーが共通の1本の支軸により前記ベースプレートに枢支され、一つのバネにより、前記ポウルがラッチ係合位置に向けて付勢されると共に、前記セカンダリレバーが開放規制位置に向けて付勢されていることを特徴としたフードロック装置。
【請求項2】
前記一つのバネが前記ポウルとセカンダリレバーとの間に架設されて、該ポウル及びセカンダリレバーが互いに逆回りに付勢され、前記ポウルがラッチ係合位置を越えて回動するのを規制する第1ストッパと、前記セカンダリレバーが開放規制位置を越えて回動するのを規制する第2ストッパを設けてある請求項1に記載のフードロック装置。
【請求項3】
前記ポウルの前記支軸を挟んだ両側にそれぞれケーブル取付部を形成し、前記ポウルを付勢力に抗して回動させるべく引張操作する操作ケーブルを、前記ケーブル取付部に択一的に取り付けてある請求項1又は2に記載のフードロック装置。
【請求項4】
前記支軸と、前記ラッチをベースプレートに枢支する取付軸とは、前記ベースプレートを挟んで同側の端部をカシメ端部としてある請求項1〜3のいずれかに記載のフードロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−229631(P2010−229631A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75346(P2009−75346)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000146434)株式会社城南製作所 (47)
【Fターム(参考)】