説明

ブラシホルダ及びモータ

【課題】ブラシを保持する一対のホルダ部が互いの角度間隔が90°以内の狭角状態で配置されてなるブラシホルダであって、ブラシ間の短絡をより確実に防止する。
【解決手段】対をなすホルダ部17,18が互いの角度間隔が90°の狭角状態となるようにベース部16に設けられることから、各ホルダ部17,18間の狭角領域において、対をなすスプリング保持柱22,23にそれぞれ装着されるブラシ押圧用のトーションスプリング24,25が近接する。このトーションスプリング24,25は金属線にて形成され、かつブラシ19,20と直接接触することから、隣接するトーションスプリング24,25間に介在する隔壁21がベース部16上に設けられる。そして、隔壁21は、ベース部16における整流子8と対向する挿通孔16aの内周縁部まで延設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーマチャ(電機子)に整流子を通じて電源供給するブラシを保持するためのブラシホルダ及びそのブラシホルダを備えたモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラシ付きモータには、そのブラシを保持するブラシホルダを備えている。ブラシホルダには、ブラシを4個以上用いる場合や2個でもモータの構成上、90°以内の狭角状態で配置されているものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このブラシホルダ(文献中、ブラシホルダ装置)は樹脂にて形成されており、該ホルダ上にはブラシを径方向に摺動可能に保持する矩形筒状のホルダ部(文献中、ブラシホルダ)が対同士で略60°の狭角状態で設けられている。対をなすホルダ部間の狭角領域には、ブラシ後端面(径方向外側面)を押圧するトーションスプリングを保持するためのスプリング保持柱が立設されている。スプリング保持柱には、縦割り溝形状の係止部が形成されている。
【0004】
これに対し、トーションスプリングは、スプリング保持柱に嵌挿保持されるコイル部と、該コイル部の一端から内側に折り曲げられスプリング保持柱の係止部内に挿入される反力側端部と、該コイル部の他端から外側に延びブラシ後端面を押圧する作用側端部とを有している(文献の図2及び図3にて図示)。即ち、このトーションスプリングは、反力側端部を係止部内に挿入しつつコイル部をスプリング保持柱に嵌挿するとともに、該反力側端部を支点として作用側端部をコイル部の周方向に広げた状態でブラシ後端面に係止させることで、該作用側端部が復帰しようとする付勢力にてブラシ後端面を押圧するようになっている。
【特許文献1】特開平8−266019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記文献では、対をなすホルダ部間の狭角領域にそれぞれのホルダ部(ブラシ)に対応するトーションスプリングが配置されることから、各スプリングは互いに近接している。そのため、隣接するトーションスプリング間に平板形状の隔壁が立設されている。即ち、トーションスプリングは金属線にて形成され、かつブラシと直接接触することから、隔壁にて互いの直接的接触を回避し絶縁させている。
【0006】
しかしながら、この隔壁は、単に隣接するトーションスプリングの直接的接触を回避して絶縁を図るものである。即ち、整流子を内側に配置すべく円環状をなすブラシホルダステー上面において、隔壁は、外側縁部から径方向内側に向かって略中間部まで延びる形状をなしている。そのため、整流子にブラシが摺接することにより生じるブラシ摩耗粉等が隔壁の径方向内側端部よりも更に内側のホルダステー上に堆積し、やがて隣接するトーションスプリング間を導通させてしまう場合がある。このことは、ブラシ間を短絡させることとなって、モータの作動不良を引き起こす。
【0007】
また、上記文献のブラシホルダに用いられるトーションスプリングは、反力側端部が内側に折り曲げられているため、反力側端部と作用側端部とが共にコイル部から外側に延びる一般的なトーションスプリングよりもその形成が難しい。また、トーションスプリングを保持するスプリング保持柱においても細長の縦割り溝を形成する必要があり、該保持柱の形成が難しい。
【0008】
そこで、同文献には、反力側端部と作用側端部とが共にコイル部から外側に延びる一般的なトーションスプリングを使用するものも開示されている(文献の図8にて図示)。
しかしながら、この形態では、反力側端部をホルダ部の側壁に係止するようにしているため、トーションスプリングの反力がホルダ部に作用し、該ホルダ部の形状を変形させてしまう。そこで、ホルダ部に補強リブが設けられているが、ホルダ部内のブラシの摺動に影響を与えかねない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、第1の目的は、ブラシを保持する一対のホルダ部が互いの角度間隔が90°以内の狭角状態で配置されてなるブラシホルダ及びそのブラシホルダを備えたモータであって、ブラシ間の短絡をより確実に防止することにある。
【0010】
また、第2の目的は、ブラシを押圧するためのトーションスプリングの付勢力がホルダ部に極力影響しない構成とし、ホルダ部内のブラシの円滑な摺動を好適に維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、整流子の外周面に摺接するためのブラシを径方向に摺動可能に保持する少なくとも2つの筒状のホルダ部が互いの角度間隔が90°以内の狭角状態となるようにブラシホルダベース上に設けられ、前記ベース上の各ホルダ部間の狭角領域において、各ホルダ部間の中間部に隔壁と、前記隔壁の両側にスプリング保持柱とを有し、前記各スプリング保持柱に前記各ブラシの後端面を前記整流子側に押圧するトーションスプリングをそれぞれ装着するとともに、前記隔壁にて各トーションスプリング相互の絶縁を図るようにしたブラシホルダであって、前記ベースは前記整流子と対向する内周縁部を有し、前記隔壁がその内周縁部まで延設されていることをその要旨とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のブラシホルダにおいて、前記ブラシホルダベースは樹脂よりなり、前記ホルダ部、前記スプリング保持柱及び前記隔壁が前記ブラシホルダベースに一体に形成されていることをその要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のブラシホルダにおいて、前記トーションスプリングは、コイル状に形成され前記スプリング保持柱に嵌挿されるコイル部と、前記コイル部の一端から外側に延びる反力側端部と、前記コイル部の他端から外側に延びる作用側端部とを有するものであり、前記作用側端部が前記ブラシの後端面に係止されるとともに、前記反力側端部が前記スプリング保持柱の周囲に設けられ該保持柱への前記トーションスプリングの装着をガイドするガイド壁、又は前記隔壁に係止されることをその要旨とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のブラシホルダにおいて、前記ガイド壁又は前記隔壁には、前記反力側端部が係止する係止部が設けられていることをその要旨とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のブラシホルダにおいて、前記係止部にて係止される前記反力側端部の位置が前記隔壁の高さよりも低い位置に設定されていることをその要旨とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のブラシホルダを備え、前記ブラシホルダにて保持される前記ブラシがアーマチャに備えられる前記整流子と摺接し、前記ブラシから前記整流子への電源供給に基づいて前記アーマチャが回転するように構成されているモータである。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のモータにおいて、開口部を有し、該開口部から前記アーマチャを回転可能に収容するヨークハウジングと、前記ヨークハウジングの開口部を閉塞する樹脂製の蓋部材とを備えるものであり、前記蓋部材には、前記ブラシホルダベース、前記ホルダ部、前記スプリング保持柱及び前記隔壁が一体に形成されていることをその要旨とする。
【0018】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、対をなすホルダ部が互いの角度間隔が90°以内の狭角状態となるようにブラシホルダベース上に設けられることから、各ホルダ部間の狭角領域において、対をなすスプリング保持柱にそれぞれ装着されるブラシ押圧用のトーションスプリングが近接する。このトーションスプリングは金属線にて形成され、かつブラシと直接接触することから、隣接するトーションスプリング間に介在する隔壁が設けられる。そして、隔壁は、ベースにおける整流子と対向する内周縁部まで延設される。これにより、隔壁が隣接するトーションスプリング間に介在して該スプリング相互の直接的接触を回避して絶縁を図るだけでなく、整流子と対向するベースの内周縁部までその隔壁を縁設させているので、整流子にブラシが摺接することにより生じるブラシ摩耗粉等が堆積するベース上のスペースが小さくなる。これにより、ブラシ摩耗粉等の堆積によりトーションスプリング間の導通が抑制され、ひいてはブラシ間が短絡することが抑制される。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、ホルダ部、スプリング保持柱及び隔壁が、樹脂よりなるブラシホルダベースに一体に形成されるため、ブラシホルダを構成する部品点数が少なくなり、ブラシホルダ、ひいてはそのブラシホルダを用いるモータの組み付け工数を低減できる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、トーションスプリングは、コイル部と、コイル部の一端から外側に延びる反力側端部と、コイル部の他端から外側に延びる作用側端部とを有する一般的なものが用いられる。トーションスプリングの作用側端部はブラシの後端面に係止されるとともに、反力側端部はスプリング保持柱の周囲に設けられ該保持柱へのトーションスプリングの装着をガイドするガイド壁、又は隔壁に係止される。つまり、反力側端部を近傍のガイド壁や隔壁に係止させ、ブラシを保持するホルダ部に対して係止しない構成としたことで、ホルダ部へのトーションスプリングの付勢力がホルダ部に与える影響が小さくなって該ホルダ部の変形が抑制され、ホルダ部内のブラシの円滑な摺動が好適に維持される。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、ガイド壁又は隔壁には、トーションスプリングの反力側端部が係止する係止部が設けられる。これにより、反力側端部が係止部に係止されることで、その係止がより確実となる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、係止部にて係止される反力側端部の位置が隔壁の高さよりも低い位置に設定される。これにより、係止部にて係止される反力側端部が隔壁よりも上方に突出することが防止され、より確実な絶縁を図ることが可能となる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、モータには、請求項1〜5のいずれか1項に記載のブラシホルダが備えられ、該ブラシホルダにて保持されるブラシがアーマチャに備えられる整流子と摺接し該整流子側に電源供給を行う。このようなブラシホルダはブラシ間の短絡が生じにくいので、モータの長寿命化に寄与できる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、ヨークハウジングの開口部を閉塞する樹脂製の蓋部材に、ブラシホルダベース、ホルダ部、スプリング保持柱及び隔壁が一体に形成される。これにより、ブラシホルダを構成する部品点数が少なくなり、ブラシホルダ、ひいてはモータの組み付け工数を低減できる。
【発明の効果】
【0025】
従って、請求項1〜7に記載の発明によれば、ブラシを保持する一対のホルダ部が互いの角度間隔が90°以内の狭角状態で配置されてなるブラシホルダ及びそのブラシホルダを備えたモータであって、ブラシ間の短絡をより確実に防止することができる。
【0026】
また、請求項3〜5に記載の発明によれば、ブラシを押圧するためのトーションスプリングの付勢力がホルダ部に極力影響を与えない構成となり、ホルダ部内のブラシの円滑な摺動を好適に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施の形態のモータ1を示す。本実施の形態のモータ1は、車両のパワーシート装置の駆動源として用いられるものであり、シートの各機構部、例えばシートを前後にスライドさせる機構部やシートの背もたれ部を傾動させる機構部等に装備されるモータである。
【0028】
モータ1は、磁性金属板材にて有底円筒状に形成されるヨークハウジング2を有しており、該ハウジング2の内周面にはマグネット3が固着されている。因みに、本実施の形態のマグネット3の磁極数は「4」となっている。マグネット3の内側には、アーマチャ(電機子)4が回転可能に収納されている。アーマチャ4は、回転軸5と、該回転軸5に固定されるコア6と、該コア6に巻装される巻線7と、コア6よりも先端側の回転軸5に固定され巻線7と接続される整流子8と、を備えてなる。アーマチャ4は、回転軸5の基端部がヨークハウジング2の底部中央に保持される軸受9により回転可能に支持されている。ヨークハウジング2の開口部2aには、アーマチャ4を収容した後に該開口部2aを閉塞するように蓋部材10が装着される。
【0029】
蓋部材10は、樹脂よりなり、ヨークハウジング2の開口部2aに対応させて略円盤状に形成されている。蓋部材10の中央部には、回転軸5の先端部を挿入するために軸方向に貫通する貫通孔10aが形成されており、該貫通孔10aのハウジング2内部側には軸受11が保持されている。軸受11には回転軸5の先端部が回転可能に支持され、該回転軸5の先端部はその貫通孔10a内で負荷側の連結部と連結可能に露出されている。また、蓋部材10の外周部には、外部から電源供給を受けるべく外部コネクタ(図示略)と連結するコネクタ部12が一体に構成されている。
【0030】
ここで、図2は蓋部材10におけるハウジング2内部側(ブラシホルダ15側)から見た平面図であり、同図2において、回転軸5の中心軸線L1を通過する基準線L2を設定すると、コネクタ部12は、中心線がその基準線L2と一致するように、蓋部材10の円盤状の本体部分から径方向に突設されている。コネクタ部12には、その基準線L2の両側に、一対のターミナル13の一端の接続端子部13aが配置され、該端子部13aからターミナル13の中間部まで該基準線L2に沿って延びている。各ターミナル13は、その中間部が蓋部材10の内側面に設けられる複数のターミナル保持爪14にて保持される。一方、各ターミナル13の中間部から他端側は、蓋部材10の内側面に一体に構成される後述のブラシホルダ15に配置されている。
【0031】
蓋部材10の内側面には、ブラシホルダ15を構成すべく円環状のベース部16が形成されている。ベース部16の内側には、回転軸5の先端側に設けた整流子8が配置可能な円形状の挿通孔16aが設けられている。ベース部16におけるコネクタ部12側半分の領域では、各ターミナル13の略中間部から他端側がそれぞれ挿通孔16aを挟むように折り曲げられている。因みに、各ターミナル13の他端には、ブラシ19,20から延びるピッグテール19a,20aと接続するための雌端子部13bが形成されている。
【0032】
ベース部16における反コネクタ部12側半分の領域では、前記基準線L2を中心として両側に45°間隔にそれぞれホルダ部17,18が一体に形成されている。つまり、ホルダ部17,18は、互いの角度間隔が90°間隔で設けられている。各ホルダ部17,18は、図2及び図3に示すように矩形筒状をなしており、内側に径方向に貫通する断面矩形状の保持孔17a,18aを有している。各保持孔17a,18aには、前記整流子8の外周面に摺接する直方体形状のブラシ19,20が径方向に摺動可能にそれぞれ嵌挿される。因みに、図3の斜視図においては、一方のホルダ部18及びその周辺を図示しており、もう一方のホルダ部17及びその周辺は略対称形状となっているため、ホルダ部17側の斜視図は省略する。
【0033】
各ホルダ部17,18の上壁には、該ホルダ部17,18の径方向外側端部17b,17bから内側に向かってスリット17c,18cが形成され、該ホルダ部17,18内に保持されるブラシ19,20の上部から延びるピッグテール19a,20aが該スリット17c,18cから導出される。各ピッグテール19a,20aの先端部は、対応する前記ターミナル13の他端の雌端子部13bと接続される。
【0034】
各ホルダ部17,18間の狭角領域であって、該狭角領域には、基準線L2上に平板形状の隔壁21がベース部16上に立設されている。隔壁21は、ホルダ部17,18と同等の高さH1にて形成されており、ベース部16の径方向外側から内側の挿通孔16aの内周縁部まで延びている。隔壁21は、両側の領域を仕切って、後述するトーションスプリング24,25の絶縁を図っている。
【0035】
隔壁21と各ホルダ部17,18との間には、円柱状のスプリング保持柱22,23がベース部16上に立設されている。各スプリング保持柱22,23は、各ホルダ部17,18よりも高く形成されている。このスプリング保持柱22,23には、トーションスプリング24,25がそれぞれ嵌挿され保持される。
【0036】
各トーションスプリング24,25は、金属線にて形成されている。トーションスプリング24,25は、スプリング保持柱22,23の外径と略等しい内径のコイル状をなし該保持柱22,23に嵌挿されるコイル部24a,25aと、該コイル部24a,25aの一端から外側に延びる反力側端部24b,25bと、該コイル部24a,25aの他端から外側に延びる作用側端部24c,25cとを有している。各反力側端部24b,25bは、後述するガイド壁26,27の係止溝26b,27b内に挿入され該溝26b,27bの内壁面にそれぞれ係止される。一方、各作用側端部24c,25cは、各ホルダ部17,18の側壁に設けた図示しないスリットを通じて該ホルダ部17,18内に挿入され、ブラシ19,20の後端面(径方向外側端面)に係止される。
【0037】
この場合、作用側端部24c,25cは反力側端部24b,25bに対して相対的に広がるようにしてブラシ19,20の後端面に係止されるため、該作用側端部24c,25cには、反力側端部24b,25bに対して縮まろうとする主にコイル部24a,25aの付勢力が作用する。この付勢力により、ブラシ19,20の後端面が押圧され、ブラシ19,20が整流子8に押圧接触するようになっている。
【0038】
前記各ホルダ部17,18の周囲には、それぞれ略円弧状のガイド壁26,27がベース部16上に立設されている。各ガイド壁26,27は、ホルダ部17,18におけるスプリング保持柱22,23側の側壁上を径方向外側端部17b,18bから内側方向に延び、内側端部の直前位置から湾曲し、ホルダ部17,18の側壁から隔壁21近傍まで突出している。
【0039】
また、ガイド壁26,27は、一端(ホルダ部17,18側端部)がスプリング保持柱22,23の高さと略同等の高さとなっており、そこからガイド壁26,27の他端(隔壁21側端部)に向けてホルダ部17,18の高さと略同等の高さまで次第に低く形成されている。つまり、各ガイド壁26,27の上面には、一端から他端に向けて次第に高さが低くなるようなスロープ面26a,27aが形成されている。
【0040】
ガイド壁26,27の他端は隔壁21との近接しており、その隙間は反力側端部24b,25b(トーションスプリング24,25)の線径より若干大きい程度、即ち反力側端部24b,25bが挿通可能でかつ極力小さい隙間となるように設定されている。このガイド壁26,27の他端側面(隔壁21と対向する面)には、該側面から凹設される係止溝26b,27bが設けられている。各係止溝26b,27bは、その上側に位置する内壁が前記隔壁21の高さH1よりも低い高さH2となるように設けられている。この係止溝26b,27bには、各トーションスプリング24,25の反力側端部24b,25bが挿入され、該溝26b,27b内壁面と該端部24b,25bとが係止される。
【0041】
ここで、図2及び図3に示す各トーションスプリング24,25の装着状態においては、その反力側端部24b,25bと作用側端部24c,25cとが広がった状態となっている。これに対し、図示しないが、各トーションスプリング24,25の装着前の状態(自然状態)では、反力側端部24b,25bと作用側端部24c,25cとが若干の間隔を有して近接した状態となっている。
【0042】
このようなトーションスプリング24,25の装着にあたり、先ず、コイル部24a,25aを各スプリング保持柱22,23に嵌挿させつつ作用側端部24c,25cがガイド壁26,27の一端側面に係止させ、反力側端部24b,25bがスロープ面26a,27a上に載置される。次いで、トーションスプリング24,25がスプリング保持柱22,23に沿って嵌挿される。このとき、反力側端部24b,25bがスロープ面26a,27aの案内によってガイド壁26,27の一端側面に係止している作用側端部24c,25cに対して次第に広げられる。そして、トーションスプリング24,25の更なる嵌挿により、反力側端部24b,25bがガイド壁26,27の他端側面に到達し、やがて係止溝26b,27b内に挿入される。このとき、作用側端部24c,25cもホルダ部17,18の側壁に設けた図示しないスリット内に挿入され、ブラシ19,20の後端面(径方向外側端面)に係止するようになっている。
【0043】
このような構成のブラシホルダ15は蓋部材10に一体に構成され、該蓋部材10はヨークハウジング2の開口部2aを閉塞するように該ハウジング2に対して固定される。そして、コネクタ部12に外部コネクタが連結され、該コネクタ部12内に設けられるターミナル13の接続端子部13aと外部と電気的に接続され外部から電源供給を受ける。この供給された電源はターミナル13及びブラシ19,20を通じて整流子8に供給され、該整流子8にて整流されて巻線7に供給されることで、アーマチャ4がマグネット3との磁気的関係により回転するようになっている。
【0044】
次に、本実施の形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施の形態のブラシホルダ15のように、対をなすホルダ部17,18が互いの角度間隔が90°の狭角状態となるようにベース部16に設けられることから、各ホルダ部17,18間の狭角領域において、対をなすスプリング保持柱22,23にそれぞれ装着されるブラシ押圧用のトーションスプリング24,25が近接する。このトーションスプリング24,25は金属線にて形成され、かつブラシ19,20と直接接触することから、隣接するトーションスプリング24,25間に介在する隔壁21がベース部16上に設けられる。そして、隔壁21は、ベース部16における整流子8と対向する挿通孔16aの内周縁部まで延設されている。これにより、隔壁21が隣接するトーションスプリング24,25間に介在して該スプリング24,25相互の直接的接触を回避して絶縁が図られる。これに加え、整流子8と対向するベース部16の挿通孔16aの内周縁部までその隔壁21を縁設させているので、整流子8にブラシ19,20が摺接することにより生じるブラシ摩耗粉等が堆積するベース部16上のスペースが小さくなる。これにより、ブラシ摩耗粉等の堆積によりトーションスプリング24,25間の導通を抑制することができ、ひいてはブラシ19,20間が短絡することを抑制することができる。また、このようなブラシホルダ15を用いる本実施の形態のモータ1では、そのブラシ19,20間の短絡が生じにくいので、長寿命化に寄与することができる。
【0045】
(2)ヨークハウジング2の開口部2aを閉塞する樹脂製の蓋部材10に、ブラシホルダ15を構成するベース部16、ホルダ部17,18、スプリング保持柱22,23及び隔壁21が一体に形成されている。これにより、ブラシホルダ15を構成する部品点数が少なくなり、ブラシホルダ15、ひいてはモータ1の組み付け工数を低減することができる。
【0046】
(3)トーションスプリング24,25は、コイル部24a,25aと、コイル部24a,25aの一端から外側に延びる反力側端部24b,25bと、コイル部24a,25aの他端から外側に延びる作用側端部24c,25cとを有する一般的なものが用いられる。トーションスプリング24,25の作用側端部24c,25cはブラシ19,20の後端面に係止されるとともに、反力側端部24b,25bはスプリング保持柱22,23の周囲に設けられ該保持柱22,23へのトーションスプリング24,25の装着をガイドするガイド壁26,27に係止されている。つまり、反力側端部24b,25bを近傍のガイド壁26,27に係止させ、ブラシ19,20を保持するホルダ部17,18に対して係止しない構成とした。これにより、ホルダ部17,18へのトーションスプリング24,25の付勢力がホルダ部17,18に与える影響が小さくなって該ホルダ部17,18の変形が抑制され、ホルダ部17,18内のブラシ19,20の円滑な摺動を好適に維持することができる。
【0047】
(4)ガイド壁26,27には、トーションスプリング24,25の反力側端部24b,25bが挿入されて係止する係止溝26b,27bが設けられている。これにより、反力側端部24b,25bが係止溝26b,27bに係止されることで、その係止がより確実となる。
【0048】
(5)係止溝26b,27bにて係止される反力側端部24b,25bの位置が隔壁21の高さH1よりも低い位置(高さH2)に設定されている。これにより、係止溝26b,27bにて係止される反力側端部24b,25bが隔壁21よりも上方に突出することを防止でき、より確実な絶縁を図ることができる。
【0049】
尚、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
○上記実施の形態では、トーションスプリング24,25の反力側端部24b,25bを該スプリング24,25の装着をガイドするガイド壁26,27に係止させたが、これに限定されるものではない。例えば、図4に示すように変更してもよい。
【0050】
図4では、隔壁21の径方向内側部分の両側に、径方向外側に開口する係止凹部21a,21bを形成し、該凹部21a,21b内にトーションスプリング24,25の反力側端部24b,25bを挿入して係止させている。因みに、このように反力側端部24b,25bを隔壁21側に係止させることで、ガイド壁26,27を省略することもできる。
【0051】
また、トーションスプリング24,25の反力側端部24b,25bを係止する係止部としてガイド壁26,27には係止溝26b,27bが、隔壁21には係止凹部21a,21bが形成されるが、溝や凹部以外、例えば突起等に変更してもよい。また、係止溝26b,27bや係止凹部21a,21b、突起等の係止部を特に設けなくてもよい。
【0052】
○上記実施の形態では、コイル部24a,25aと、コイル部24a,25aの一端から外側に延びる反力側端部24b,25bと、コイル部24a,25aの他端から外側に延びる作用側端部24c,25cとを有する一般的なトーションスプリング24,25を用いたが、トーションスプリングの形状はこれに限定されるものではない。例えば、各端部の曲げ方向を任意に設定したトーションスプリングを用いてもよい。
【0053】
○上記実施の形態では、ブラシホルダ15を蓋部材10に一体に構成したが、ブラシホルダ15と蓋部材10とを別体として構成してもよい。つまり、ベース部16をブラシホルダベースとして蓋部材10と別体とし、該ベースにホルダ部17,18、スプリング保持柱22,23及び隔壁21を一体に形成、若しくはこれらも別体として組み付けるようにしてもよい。このようにいずれかの部材を別体とすることで、別体とした部材の材料を任意に変更できる。また、ブラシホルダベース(ベース部16)を円環状としたが、ホルダ部17,18等が集約する部分だけの円弧状としてもよい。
【0054】
○上記実施の形態では、対をなすホルダ部17,18が互いの角度間隔が90°の狭角状態となるように各ホルダ部17,18が配置されているが、ホルダ部間の角度間隔はこれに限るものではない。つまり、対をなすホルダ部(ブラシ)間の角度間隔がモータ1の電気磁気的構成から設定される90°以下の狭角状態とし、その狭角領域にトーションスプリング24,25が配置されるブラシホルダに適用するものである。
【0055】
○上記実施の形態では、一対(2個)のブラシ19,20を保持するブラシホルダ15であったが、3個以上の任意の個数としたブラシを保持するブラシホルダに実施してもよい。
【0056】
○上記実施の形態では、車両のパワーシート装置の駆動源として用いられるモータ1に実施したが、車両の他の装置や車両以外に用いられるモータに実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施の形態におけるモータの断面図である。
【図2】蓋部材のハウジング内部側(ブラシホルダ側)から見た平面図である。
【図3】ホルダ部及びその周辺を示す斜視図である。
【図4】別例における蓋部材のハウジング内部側(ブラシホルダ側)から見た平面図である。
【符号の説明】
【0058】
2…ヨークハウジング、2a…開口部、4…アーマチャ、8…整流子、10…蓋部材、15…ブラシホルダ、16…ブラシホルダベースとしてのベース部、16a…挿通孔(内周縁部)、17,18…ホルダ部、19,20…ブラシ、21…隔壁、21a,21b…係止部としての係止凹部、22,23…スプリング保持柱、24,25…トーションスプリング、24a,25a…コイル部、24b,25b…反力側端部、24c,25c…作用側端部、26,27…ガイド壁、26b,27b…係止部としての係止溝、H1,H2…高さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流子の外周面に摺接するためのブラシを径方向に摺動可能に保持する少なくとも2つの筒状のホルダ部が互いの角度間隔が90°以内の狭角状態となるようにブラシホルダベース上に設けられ、前記ベース上の各ホルダ部間の狭角領域において、各ホルダ部間の中間部に隔壁と、前記隔壁の両側にスプリング保持柱とを有し、前記各スプリング保持柱に前記各ブラシの後端面を前記整流子側に押圧するトーションスプリングをそれぞれ装着するとともに、前記隔壁にて各トーションスプリング相互の絶縁を図るようにしたブラシホルダであって、
前記ベースは前記整流子と対向する内周縁部を有し、前記隔壁がその内周縁部まで延設されていることを特徴とするブラシホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシホルダにおいて、
前記ブラシホルダベースは樹脂よりなり、前記ホルダ部、前記スプリング保持柱及び前記隔壁が前記ブラシホルダベースに一体に形成されていることを特徴とするブラシホルダ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブラシホルダにおいて、
前記トーションスプリングは、コイル状に形成され前記スプリング保持柱に嵌挿されるコイル部と、前記コイル部の一端から外側に延びる反力側端部と、前記コイル部の他端から外側に延びる作用側端部とを有するものであり、
前記作用側端部が前記ブラシの後端面に係止されるとともに、前記反力側端部が前記スプリング保持柱の周囲に設けられ該保持柱への前記トーションスプリングの装着をガイドするガイド壁、又は前記隔壁に係止されることを特徴とするブラシホルダ。
【請求項4】
請求項3に記載のブラシホルダにおいて、
前記ガイド壁又は前記隔壁には、前記反力側端部が係止する係止部が設けられていることを特徴とするブラシホルダ。
【請求項5】
請求項4に記載のブラシホルダにおいて、
前記係止部にて係止される前記反力側端部の位置が前記隔壁の高さよりも低い位置に設定されていることを特徴とするブラシホルダ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のブラシホルダを備え、前記ブラシホルダにて保持される前記ブラシがアーマチャに備えられる前記整流子と摺接し、前記ブラシから前記整流子への電源供給に基づいて前記アーマチャが回転するように構成されていることを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項6に記載のモータにおいて、
開口部を有し、該開口部から前記アーマチャを回転可能に収容するヨークハウジングと、前記ヨークハウジングの開口部を閉塞する樹脂製の蓋部材とを備えるものであり、
前記蓋部材には、前記ブラシホルダベース、前記ホルダ部、前記スプリング保持柱及び前記隔壁が一体に形成されていることを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−320152(P2006−320152A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141734(P2005−141734)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】