説明

ブラシレスモータ

【課題】電気モータ、特に、ブラシレス直流モータを提供する。
【解決手段】ブラシレスモータは、固定子と外側回転子を有する。固定子は、6Nの歯及びそれぞれ歯の周りに巻かれた6Nのコイルを有する固定子コアを含み、Nは、1に等しいか又はそれよりも大きい整数である。回転子は、6N±2の永久磁石を含む。永久磁石は、固定子コアの周りに周方向に配置され、かつ空隙を横切って歯に面している。空隙の半径方向厚みは、モータの円周方向に沿って不均一である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータ、特に、ブラシレス直流モータに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレス直流(BLDC)モータが広く受け入れられるのに伴って、より高品質のBLDCモータの需要が増大している。BLDCモータの永久磁石極及び電磁極の数に関連する改善は、品質及び効率を改善してきた。例えば、Konecnyに付与された米国特許第4,774,428号明細書は、3(2n+1)±1個の永久磁石極と3(2n+1)個の電磁極とを有するモータを教示している。Konecnyの特許によって提供された品質及び効率に対する問題の解決策は、非対称コイル巻線パターンと、従って、有意な非対称半径方向力とを伴うモータをもたらす。これらの非対称半径方向力は、モータが重負荷の下で作動する時の用途において特に有害である。また、永久磁石極と電磁極の間の均一な空隙は、有意なトルクリップル又はコギングトルクをもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,774,428号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
すなわち、対称半径方向力と低コギングトルクを有するブラシレスモータに対する要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、その1つの態様では、本発明は、Nが1に等しいか又はそれよりも大きい整数である場合に、6Nの歯を有する固定子コアと歯の周りにそれぞれ巻かれた6Nのコイルを有する固定子巻線とを含む固定子と、シャフトとシャフトに固定された回転子コアと回転子コアに固定された6N±2の永久磁石とを含む回転子とを含むブラシレスモータを提供し、永久磁石は、固定子コアの周りに周方向に配置され、かつ空隙を横切って歯に面し、空隙の半径方向厚みは、モータの円周方向に沿って不均一である。
【0006】
好ましくは、各永久磁石は、周方向中心と2つの周方向端部とを有し、中心での各永久磁石の半径方向厚みは、周方向端部での半径方向厚みよりも大きく、空隙の半径方向厚みは、磁石の周方向端部よりも磁石の中心でより小さい。
【0007】
好ましくは、各永久磁石の半径方向内面は、平坦面である。
【0008】
好ましくは、各永久磁石の半径方向内面は、弓形面であり、磁石の周方向中心は、その周方向端部よりも整列した歯により近い。
【0009】
好ましくは、固定子コアの各歯は、モータの軸線方向にその半径方向外面上を延びる少なくとも1つのスロットを有する。
【0010】
好ましくは、隣接する永久磁石は、互いから周方向に離間している。
【0011】
好ましくは、回転子コアは、カップ状シェルを含み、シェルは、シェル端部と、シェル端部から突出する実質的に管状の壁とを有し、永久磁石は、壁の内面に固定される。
【0012】
好ましくは、シェル端部は、ファンを装着するためのいくつかの組立孔を含む。
【0013】
好ましくは、シェル端部は、空気をモータの内部を通して流すためのいくつかの開口部を有する。
【0014】
好ましくは、固定子は、固定子コアに固定されてその中心を通過する中空支持部分を有する装着プレートを有し、シャフトは、支持部分の内面に固定された少なくとも2つの軸線方向に離間したベアリングによって支持部分に固定される。
【0015】
好ましくは、装着プレートは、制御回路基板を受け入れるために回転子から離れる方向に向く面に凹部を有する。
【0016】
好ましくは、装着プレートは、中空支持部分と連通する貫通孔を有する。
【0017】
その第2の態様により、本発明は、ファンと、ファンに接続された回転子及び回転子に受け入れられた固定子を有するブラシレスモータとを含む冷却ファンアセンブリを提供し、固定子は、Nが1に等しいか又はそれよりも大きい整数である場合に、6Nの歯を有する固定子コアと、歯の周りにそれぞれ巻かれた6Nのコイルを有する固定子巻線とを含み、回転子は、シャフトと、シャフトに固定された回転子コアと、回転子コアに固定された6N±2の永久磁石とを含み、永久磁石は、固定子コアの周りに周方向に配置され、かつ空隙を横切って歯に面し、空隙の半径方向厚みは、モータの円周方向に沿って不均一である。
【0018】
好ましくは、ファンは、区画を有する中心管状ハブと、管状ハブから半径方向に延びるいくつかのベーンとを有し、回転子は、この区画に配置される。
【0019】
好ましくは、回転子コアは、カップ状シェルを有し、ファンは、シェルに直接に接続される。
【0020】
ここで本発明の好ましい実施形態を添付図面の図を参照して単に一例として以下に説明する。図中、1つよりも多くの図に現れる同一の構造体、要素、又は部品は、一般的に、それらが現れる図の全てにおいて同じ参照番号を用いてラベル付けされる。図に示す構成要素及び特徴の寸法は、一般的に、便宜上かつ呈示を明瞭にするように選択され、必ずしも縮尺に従っていない。図は、以下に列挙されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるBLDCモータを示す図である。
【図2】図1のモータの断面図である。
【図3】図1のモータの固定子及び回転子を示す図である。
【図4】図3の固定子及び回転子の平面図である。
【図5】図4の回転子の磁石を示す図である。
【図6】本発明の別の実施形態によるBLDCモータの回転子及び固定子の図4と類似の平面図である。
【図7】冷却ファンアセンブリを形成するために図1のモータと共に使用するためのファンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から5を参照すると、本発明の好ましい実施形態によるブラシレスモータ1は、回転子10と固定子40を含む。
【0023】
回転子10は、シャフト12、シャフトに固定された回転子コア、及び回転子コアに固定された6N±2の永久磁石24を含み、Nは、1に等しいか又はそれよりも大きい整数である。好ましい実施形態では、回転子10は、10の永久磁石を有する。回転子コアは、カップ状シェル14の形状をしている。シェル14は、ディスク状シェル端部15と、シェル端部15の周方向縁部から延びる実質的に管状の壁23とを有する。シェル端部15は、その中心に固定孔17を形成する。理想的には、固定孔は、管状ボスの形状をしている。永久磁石24は、例えば、接着剤によって壁23の内面に固定される。従って、各永久磁石24は、永久磁石極を構成する。シャフト12の一端は、固定孔17に圧入されることによってシェルに固定される。
【0024】
固定子40は、固定子コア42、いくつかのコイル46、及び装着プレート48を含む。固定子コア42は、実質的に管状のヨーク43とヨーク43の外面から外向きに突出する6Nの歯45とを有し、Nは、1に等しいか又はそれよりも大きい整数である。好ましい実施形態では、固定子コア42は、12の歯を有する。コイル46は、12個あり、各々は、単一のそれぞれの歯の周りに巻かれる。コイル46は、「Y」型接続パターン又は「デルタ」接続パターンで接続することができるが、それらは、公知のものであり、ここで詳細に説明しないことにする。各歯45及びその周りに巻かれたコイル46は、電磁極を形成する。装着プレート48は、中空、好ましくは、管状の支持部分49を有する。管状支持部分49は、固定子コア42が装着プレート48に固定されるようにヨーク43に挿入される。図4では、回転子10と固定子40は、装着プレートが省かれたモータ1の平面図に示されており、2つのコイルも省かれて固定子コアの歯45の構造を示している。
【0025】
シャフト12は、シェル14が回転可能に固定子アセンブリ40に固定されるように支持部分49の中心の貫通孔に固定された2つの軸線方向に離間したベアリング28によって管状支持部分49に固定される。従って、永久磁石24は、固定子コア42の周りに配置され、空隙30にわたって歯45に面している。一方、壁23の自由端は、装着プレート48から離間している。
【0026】
歯45の外側端面と歯45に面する整列した永久磁石24の内面との間の半径方向距離を意味する空隙30の半径方向厚みは、モータ1の円周方向に一定又は均一ではない。空隙が均一な従来のモータと比較して、空隙30が均一ではない本発明によるモータは、鉄損が少なくコギングトルクが少ない。均一な空隙と比較して、不均一な空隙30はまた、正弦波に近い逆起電力(EMF)を作り、そのために電流、特に、疑似正弦電流又は正弦電流がコイル46を通って流れる時に、トルクリップルが遥かに小さくなることになる。また、モータが6Nの電磁極と6N±2の永久磁石極を有するので、2つの真反対の電磁極だけが、永久磁石と同時に整列することができる。従って、半径方向力が対称でモータの回転が滑らかである。
【0027】
好ましくは、各永久磁石24の中心におけるモータの半径方向厚みは、永久磁石24の周方向端部における半径方向厚みよりも大きい。従って、各磁石の中心における空隙30の半径方向厚みは、各磁石の端部におけるそれよりも小さく、従って、不均一な空隙を形成する。従って、歯の半径方向外側の面の曲率が磁石のそれよりも大きいことは、不均一な空隙を形成する別の方法であることを理解すべきである。
【0028】
好ましくは、図5に示すように、永久磁石24の内面25は平坦であるが、その外面27は弓形であり、壁23の内面に適合する。別の実施形態では、永久磁石24の内面25も、内面25の中心がその半径方向端部よりも整列した歯により近い弓形面とすることができる。
【0029】
好ましくは、装着プレート48は、支持部分49に連通する貫通孔51を形成することができる。従って、2つのベアリングの一方は、貫通孔51を通じて支持部分49に容易に挿入することができる。
【0030】
好ましくは、隣接する永久磁石24は、互いから離間し、それによって磁石の面を横切る磁束の漏れが低減される。
【0031】
好ましくは、各歯45は、コギングトルクを低減するために、モータの軸線方向にその半径方向外面上を延びる少なくとも1つ、好ましくは、3つのスロット47を形成する。
【0032】
好ましくは、シェル端部15は、図7に示すファンのようなファン60を装着するためのいくつかの第1の組立孔19を形成する。ファン60は、中心管状ハブ62と、ハブ62から半径方向に延びるいくつかのベーン64とを含む。ハブ62は、第1の組立孔19に対応するいくつかの第2の組立孔68と、モータ1の回転子10を受け入れる区画66とを形成する。回転子10が区画66に受け入れられるように、スクリュー(図示せず)が、第1及び第2の組立孔19、68を通じてファンを回転子に接続する。従って、ファン60は、モータに固定されて冷却ファンアセンブリを作る。
【0033】
シェル端部15は、モータの内部を通って、すなわち、壁23と装着プレート48の間の空間から空隙30及び隣接する歯45の間のスロットを通り、最終的に開口部21の外に又はその反対に空気が流れるためのいくつかの開口部21を更に形成することができる。
【0034】
好ましくは、装着プレート48は、回転子10から離れる方向に向く面上にモータの制御回路基板(図示せず)を受け入れるためのチャンバ/凹部53を形成する。
【0035】
BLDCモータは、12個の電磁極と10個の永久磁石極に限定されないことを理解すべきである。例えば、12個の電磁極と14個の永久磁石極を有するモータが図6に示されている。図6は、本発明の更に別の実施形態によるBLDCモータの回転子及び固定子を示している。それ以外では、このモータの構成は、第1の実施形態のモータと同様である。
【0036】
本出願の説明及び特許請求の範囲では、動詞「comprise」、「include」、「contain」、及び「have」、及びそれらの変形の各々は、包含的な意味で使用され、述べられた品目の存在を指定するが、追加品目の存在を除外しない。
【0037】
本発明は、1つ又はそれよりも多くの好ましい実施形態を参照して説明したが、様々な修正が可能であることは、当業者によって認められるべきである。従って、本発明の範囲は、以下に続く特許請求の範囲を参照することによって判断されるものとする。
【符号の説明】
【0038】
1 ブラシレスモータ
10 回転子
19 第1の組立孔
21 開口部
40 固定子
48 装着プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレスモータであって、
Nが1に等しいか又はそれよりも大きい整数である場合に、6Nの歯を有する固定子コアと該歯の周りにそれぞれ巻かれた6Nのコイルを有する固定子巻線とを含む固定子と、
シャフトと該シャフトに固定された回転子コアと該回転子コアに固定された6N±2の永久磁石とを含む回転子と、
を含み、
前記永久磁石は、前記固定子コアの周りに周方向に配置され、かつ空隙を横切って前記歯に面しており、該空隙の半径方向厚みが、ブラシレスモータの円周方向に沿って不均一である、
ことを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項2】
各永久磁石が、周方向中心及び2つの周方向端部を有し、該中心での各永久磁石の前記半径方向厚みは、該周方向端部での該半径方向厚みよりも大きく、前記空隙の該半径方向厚みは、該磁石の該周方向端部よりも該磁石の該中心でより小さいことを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
各永久磁石の前記半径方向内面は、平坦面であることを特徴とする請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
各永久磁石の前記半径方向内面は、該磁石の前記周方向中心がその前記周方向端部よりも整列した歯に近い弓形面であることを特徴とする請求項2に記載のモータ。
【請求項5】
前記固定子コアの各歯が、モータの軸線方向にその前記半径方向外面上を延びる少なくとも1つのスロットを有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
隣接する永久磁石が、互いから周方向に離間していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
前記回転子コアは、カップ状シェルを含み、該シェルは、シェル端部と、該シェル端部から突出する実質的に管状の壁とを有し、前記永久磁石は、該壁の内面に固定されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項8】
前記シェル端部は、ファンを装着するためのいくつかの組立孔を含むことを特徴とする請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記シェル端部は、空気をモータの内部を通して流すためのいくつかの開口部を含むことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のモータ。
【請求項10】
前記固定子は、更に、前記固定子コアの中心に固定されてそこを通過する中空支持部分を有する装着プレートを含み、前記シャフトは、該支持部分の内面に固定された少なくとも2つの軸線方向に離間したベアリングによって該支持部分に固定されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項11】
前記装着プレートは、前記回転子から離れる方向に向く面に制御回路基板を受け入れるための凹部を含むことを特徴とする請求項10に記載のモータ。
【請求項12】
前記装着プレートは、前記中空支持部分に連通する貫通孔を含むことを特徴とする請求項10又は請求項12に記載のモータ。
【請求項13】
冷却ファンアセンブリであって、
ファンと、
前記ファンに接続された回転子と該回転子に受け入れられた固定子とを有するブラシレスモータと、
を含み、
前記固定子は、Nが1に等しいか又はそれよりも大きい整数の場合に、6Nの歯を有する固定子コアと、該歯の周りにそれぞれ巻かれた6Nのコイルを有する固定子巻線とを含み、
前記回転子は、シャフトと、該シャフトに固定された回転子コアと、該回転子コアに固定された6N±2の永久磁石とを含み、
前記永久磁石は、前記固定子コアの周りに周方向に配置され、かつ空隙を横切って前記歯に面し、該空隙の半径方向厚みが、前記モータの周方向に沿って不均一である、
ことを特徴とする冷却ファンアセンブリ。
【請求項14】
前記ファンは、区画を有する中心管状ハブと該管状ハブから半径方向に延びるいくつかのベーンとを含み、前記回転子は、該区画に配置されることを特徴とする請求項13に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記回転子コアは、カップ状シェルを含み、前記ファンは、該シェルに直接に接続されることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載のアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−46571(P2013−46571A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−200940(P2012−200940)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【出願人】(502458039)ジョンソン エレクトリック ソシエテ アノニム (90)
【Fターム(参考)】