説明

ブレンステッド酸化合物、縮合化合物の製造方法、縮合化合物粒子分散液、結着樹脂の製造方法、樹脂粒子分散液、静電荷像現像トナー、静電荷像現像剤、及び、画像形成方法

【課題】界面活性剤及びブレンステッド酸として使用されるアルキルベンゼンスルホン酸において、特に界面活性能を向上させ、さらに酸触媒として、低温でも少量の使用で高い反応性を付与することができるブレンステッド酸化合物を提供すること、また、それを用いた縮合化合物の製造方法及び結着樹脂の製造方法、該縮合化合物より製造される縮合化合物粒子分散液、該結着樹脂より製造される樹脂粒子分散液、これらを用いて製造される静電荷像現像トナー、静電荷像現像剤、及び、画像形成方法を提供すること。
【解決手段】下記式(I)で表される化合物であることを特徴とするブレンステッド酸化合物。式(I)中、RHLはCl又はFを表し、R1は炭素数8〜20のアルキル基を表し、nは1〜4の整数を表す。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤及びブレンステッド酸として使用されるアルキルベンゼンスルホン酸において、特に界面活性能を向上させ、さらに酸触媒として、低温でも少量の使用で高い反応性を付与することができる化合物に関する。
また、本発明は、電子写真法又は静電記録法等により形成される静電潜像を現像剤により現像する際に好適に用いられる縮合化合物の製造方法及び結着樹脂の製造方法に関する。さらに、該縮合化合物より製造される縮合化合物粒子分散液、該結着樹脂より製造される樹脂粒子分散液、及び、これらを用いて製造される静電荷像現像トナーに関する。また、本発明は、該静電荷像現像トナーを用いた静電荷像現像剤、及び、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル化技術の急速な普及により、一般家庭、オフィス、パブリッシング領域のユーザーにおけるプリント、コピーなどのアウトプットにおける高画質化が要求されているが、その一方で、持続可能な社会の実現に向け、企業活動および、その活動の成果である製品に対する低エネルギー、省エネルギー化要求が高まっている。そこで、電子写真法または静電記録法等による画像形成法においても多くのエネルギーを消費する定着工程の省電力化や、その材料を使用して製品を製造する工程の低環境負荷活動を実施することが必要となっている。前者に対応する対策としては、トナーの定着温度をより低温化させる等の対策を挙げることができる。トナー定着温度を低温化させることにより、省電力化に加え、電源入力時の定着部材表面の定着可能温度までの待ち時間、ウォームアップタイムの短時間化、定着部材の長寿命化が可能である。
【0003】
トナーの結着樹脂としては、従来よりビニル系重合体が広く使用されてきたが、高分子量のビニル系重合体はその軟化点が高いため、優れた光沢性を備えた定着像を得るために、ヒートローラの温度を高く設定する必要があり、省エネルギーに逆行する。
一方、ポリエステル樹脂は、鎖中に剛直な芳香環を有すことからビニル系重合体にくらべ可撓性を有し、機械強度を同一にした際の分子量を低く設定することができる。さらに分子鎖の絡み合い性、限界分子量等の点で低温定着用樹脂としてビニル系結着樹脂とに比べ設計し易いという利点を有するため、ポリエステルが省エネルギートナーの結着樹脂として多く使用されている。
【0004】
通常ポリエステルの重縮合法は、200℃を越す高温下で大動力による撹拌下、かつ高減圧下で10時間以上の時間に及ぶ反応が必要であり、大量のエネルギー消費を招く。またそのために反応設備の耐久性を得るために膨大な設備投資を必要とする場合が多い。
しかし、近年ポリエステルを初め各種反応の、低温化、脱溶媒化が報告されている。例えば、既に上に記載した発明に加え、特許文献1では酵素を触媒としたポリエステルの製造方法が発明され、特許文献2では、スカンジウムトリフラート触媒による160〜200度でのポリエステル合成が報告されている。
しかし、このような低温での反応、例えばポリエステルの場合重縮合が十分に進行せず分子量が増加しにくいという点と、使用できる単量体が一部に制限されるなどの課題がある。よって、このようなマイルドな条件下でも活性の高い触媒の探索が求められていた。
【0005】
また他方では、これまで、アルキルベンゼンスルホン酸が界面活性剤として多用され、さらに界面活性能を有する酸として水中での反応に用いることができることがわかっている。
例えば、特許文献3によれば、水中で脱水反応を行う方法であって、少なくとも、界面活性剤構造を有する触媒と反応基質を水中で混合することを特徴とする水中脱水反応方法が発明されている。この触媒は、ブレンステッド酸またはプロトン酸であり、例えば長鎖アルキル基を有するドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)等を例示している。特許文献4においても、酸触媒を用いた直接的チオエステル合成法が発明されている。この発明では、フルオロアルカンスルホン酸が好ましく使用されている。
【0006】
一方、特許文献5では、o−アルキルフルオロベンゼン類の製造方法の製造方法が示されているが、該化合物のスルホン化についての記載はない。
【0007】
同様に、アルキルベンゼンスルホン酸のフッ化物としては、アルキル部をフッ素化したフッ素系界面活性剤は広く使用されている。しかし、これらの界面活性剤において、ベンゼン環をフッ素化した化合物は認められない。
【0008】
特許文献6においては、レジスト被覆用の難溶化層形成防止方法及び材料において、フッ素化した酸を用いることで、薄膜状態でも安定で強いイオン結合を形成させ、安定性の高い化学増幅型レジスト材料を形成することができるとしているが、このフッ素化した酸としては、フルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸等であり、ベンゼン環上をフッ素化したアルキルベンゼンスルホン酸を含んでいない。
【0009】
【特許文献1】特開平11−313692号公報
【特許文献2】特開2003−306535号公報
【特許文献3】特開2003−55302号公報
【特許文献4】特開2003−155271号公報
【特許文献5】特開平10−120598号公報
【特許文献6】特開2003−29410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、界面活性剤及びブレンステッド酸として使用されるアルキルベンゼンスルホン酸において、特に界面活性能を向上させ、さらに酸触媒として、低温でも少量の使用で高い反応性を付与することができるブレンステッド酸化合物を提供することである。
本発明の他の目的は、前記ブレンステッド酸化合物を用いる縮合化合物の製造方法、及び、結着樹脂の製造方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、前記縮合化合物の製造方法により製造された縮合化合物を用いた縮合化合物粒子分散液、及び、前記結着樹脂の製造方法により製造された結着樹脂を用いた樹脂粒子分散液を提供することである。
またさらに、本発明の他の目的は、前記縮合化合物粒子分散液又は前記樹脂粒子分散液を少なくとも用いた静電荷像現像トナー及びその製造方法、静電荷像現像剤、並びに、画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明が解決しようとする上記課題は、以下の<1>〜<9>によって解決された。
<1> 下記式(I)で表される化合物であることを特徴とするブレンステッド酸化合物、
【0012】
【化1】

(式(I)中、RHLはCl又はFを表し、R1は炭素数8〜20のアルキル基を表し、nは1〜4の整数を表す。)
<2> 上記<1>に記載のブレンステッド酸化合物を触媒として用いて縮合性化合物を縮合する工程を含む縮合化合物の製造方法、
<3> 少なくとも縮合化合物を含む粒子が分散媒に分散している縮合化合物粒子分散液であって、前記縮合化合物が、上記<2>に記載の製造方法により製造された縮合化合物を含む縮合化合物粒子分散液、
<4> 上記<1>に記載のブレンステッド酸化合物を触媒として用いて重縮合性単量体を重縮合する工程を含む結着樹脂の製造方法、
<5> 少なくとも結着樹脂を含む樹脂粒子が分散媒に分散している樹脂粒子分散液であって、前記結着樹脂が、上記<4>に記載の製造方法により製造された結着樹脂を含む樹脂粒子分散液、
<6> 縮合化合物粒子分散液又は樹脂粒子分散液を少なくとも含む分散液中で該樹脂粒子を凝集して凝集粒子を得る工程、及び、該凝集粒子を加熱して融合させる工程を含む静電荷像現像トナーの製造方法であって、前記縮合化合物粒子分散液が上記<3>に記載の縮合化合物粒子分散液である、又は、粒子分散液前記樹脂粒子分散液が上記<5>に記載の樹脂粒子分散液である静電荷像現像トナーの製造方法、
<7> 上記<6>に記載の製造方法により製造された静電荷像現像トナー、
<8> 上記<7>に記載の静電荷像現像トナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤、
<9> 潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程、及び、前記被転写体表面に転写されたトナー像を熱定着する定着工程を含む画像形成方法であって、前記トナーとして上記<7>に記載の静電荷像現像トナー、又は、前記現像剤として上記<8>に記載の静電荷像現像剤を用いる画像形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、界面活性能を向上させ、さらに酸触媒として、低温でも少量の使用で高い反応性を付与することができるブレンステッド酸化合物を提供することができる。
また、本発明によれば、前記ブレンステッド酸化合物を用いる縮合化合物の製造方法、及び、結着樹脂の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、前記縮合化合物の製造方法により製造された縮合化合物を用いた縮合化合物粒子分散液、及び、前記結着樹脂の製造方法により製造された結着樹脂を用いた樹脂粒子分散液を提供することができる。
またさらに、本発明によれば、前記縮合化合物又は前記樹脂粒子分散液を少なくとも用いた静電荷像現像トナー及びその製造方法、静電荷像現像剤、並びに、画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のブレンステッド酸化合物は、下記式(I)で表される化合物であることを特徴とする。
【0015】
【化2】

(式(I)中、RHLはCl又はFを表し、R1は炭素数8〜20のアルキル基を表し、nは1〜4の整数を表す。)
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0016】
(ブレンステッド酸化合物)
本発明のブレンステッド酸化合物(以下、単に「本発明の化合物」ともいう。)は、前記式(I)で表される化合物であり、アルキル部分の疎水性を有することにより界面活性効果を有する化合物である。
本発明の化合物は、ハロゲン原子の電子求引効果により、ハロゲン原子が置換されていないアルキルベンゼンスルホン酸よりも強い酸となる。これは酸触媒を必要とする反応において、触媒効率を向上させる結果となる。その結果、量の削減や、量に起因する着色や副反応を制御することができる。
また、界面活性能としては、アルキル部分の疎水性に加え、さらにハロゲン化物としての疎水性が加わり、界面活性能力を高め、例えば乳化重合において安定したミセルや油滴を作製することができる。特にこの酸触媒と界面活性能を組み合わせて使用する、水系媒体中での酸触媒を使用する脱水反応において、本発明の効果は顕著に現れる。
したがって、本発明の化合物は、脱水反応の酸触媒として好ましく用いることができ、水系媒体中での脱水反応の酸触媒としてより好ましく用いることができる。
脱水反応としては、例えば、カルボン酸とアルコール、アミン又はチオールとの縮合反応、後述する重縮合性単量体の重縮合反応等が好ましく挙げられる。
本発明の化合物を酸触媒として用い、水系媒体中で縮合反応や重縮合反応を行うことで、縮合化合物又は重縮合樹脂を水系媒体中に分散した縮合化合物粒子又は重縮合樹脂粒子の状態で得ることができるため、縮合化合物又は重縮合樹脂を粒子として、又は、粒子分散液として使用する用途おいて特に好ましい。
【0017】
式(I)におけるRHLは、塩素原子(Cl)又はフッ素原子(F)を表し、ベンゼン環上の任意の位置で結合する1つの置換基である。
HLとしては、反応性の面からフッ素原子であることが好ましい。また、RHLの結合位置は、反応性の面から、スルホ基に対しm位、すなわち、3位(スルホ基が1位)であることが好ましい。
【0018】
式(I)におけるR1は、炭素数8〜20の分岐を有していてもよいアルキル基であり、炭素数10〜20であることが好ましく、炭素数12〜20であることがより好ましい。
式(I)の構造において、R1の炭素数が記載の値よりも小さい場合は、重縮合が十分に進展せず、分子量が増加しない、低分子量成分の残留に起因して分子量分布が広がるなどの影響が現れることがある。分子量が小さい、又は多量の低分子量成分に起因する分子量分布の拡大は、トナー化した場合に定着時のホットオフセットが起こりやすく、またトナーの粉体流動性の悪化、熱保管性の悪化、粉砕性の悪化などを起こすことがある。
一方、R1の炭素数が記載の値よりも大きい場合は、その触媒の安定した製造が工業的に困難であると同時に、溶解性が低いために触媒能力を十分に発揮できないおそれがある。
また、アルキル基R1の構造は限定されず、直鎖であっても、分岐構造であってもよい。分岐としては、一般にハード型と呼称される櫛型構造や、通常の二叉構造、2つ以上の分岐構造が結合した環構造など、いずれの形状もとることができる。これらの中でも、アルキル基R1の構造としては直鎖であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の化合物におけるR1の炭素数は分布を有していてもよく、例えば、R1の炭素数の最大値が8〜20であればよく、触媒成分の分布においてR1の炭素数が8以下の触媒を含むこともある。このような分布を有することは工業製品においては既知の事実であり、一般に工業的に許容されうる純度としては、R1の炭素数のうち25重量%以上が、8〜20より選択される炭素数であることが好ましい。これらの分離、定量は例えば高速液体クロマトグラフィーにより行うことができる。
【0020】
式(I)におけるnは、ベンゼン環上におけるRHLの置換数を表す1〜4の整数であり、反応性のバランスの面から、nが1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0021】
式(I)で表される化合物としては、2−フルオロ−4−オクチルベンゼンスルホン酸(o−フルオロ−p−オクチルベンゼンスルホン酸)、3−フルオロ−4−オクチルベンゼンスルホン酸(m−フルオロ−p−オクチルベンゼンスルホン酸)、2−フルオロ−4−デシルベンゼンスルホン酸、3−フルオロ−4−デシルベンゼンスルホン酸、2−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸、3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸、2−フルオロ−4−ペンタデシルベンゼンスルホン酸、3−フルオロ−4−ペンタデシルベンゼンスルホン酸、2−フルオロ−4−オクタデシルベンゼンスルホン酸、3−フルオロ−4−オクタデシルベンゼンスルホン酸、2−クロロ−4−オクチルベンゼンスルホン酸、3−クロロ−4−オクチルベンゼンスルホン酸、2−クロロ−4−デシルベンゼンスルホン酸、3−クロロ−4−デシルベンゼンスルホン酸、2−クロロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸、3−クロロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸、2−クロロ−4−ペンタデシルベンゼンスルホン酸、3−クロロ−4−ペンタデシルベンゼンスルホン酸、2−クロロ−4−オクタデシルベンゼンスルホン酸、3−クロロ−4−オクタデシルベンゼンスルホン酸、3,5−ジフルオロ−4−オクチルベンゼンスルホン酸、3,5−ジクロロ−4−オクチルベンゼンスルホン酸、3−クロロ−5−フルオロ−4−オクチルベンゼンスルホン酸、3,5−ジフルオロ−4−デシルベンゼンスルホン酸、3,5−ジクロロ−4−デシルベンゼンスルホン酸、3−クロロ−5−フルオロ−4−デシルベンゼンスルホン酸、3,5−ジフルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸、3,5−ジクロロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸、3−クロロ−5−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸、3,5−ジフルオロ−4−ペンタデシルベンゼンスルホン酸、3,5−ジクロロ−4−ペンタデシルベンゼンスルホン酸、3−クロロ−5−フルオロ−4−ペンタデシルベンゼンスルホン酸を好ましく例示することができる。これらの構造においてR1で示されるアルキル部分は、直鎖、分岐、櫛形構造等どのような形状をもとることができるが、直鎖構造であることがより好ましい。
【0022】
前記式(I)で表される化合物のうち、より好ましい化合物としては、2−フルオロ−4−n−オクチルベンゼンスルホン酸、3−フルオロ−4−n−オクチルベンゼンスルホン酸、2−フルオロ−4−n−ドデシルベンゼンスルホン酸、3−フルオロ−4−n−ドデシルベンゼンスルホン酸、2−フルオロ−4−n−ペンタデシルベンゼンスルホン酸、3−フルオロ−4−n−ペンタデシルベンゼンスルホン酸、2−フルオロ−4−n−オクタデシルベンゼンスルホン酸、3−フルオロ−4−n−オクタデシルベンゼンスルホン酸、3,5−ジフルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸が挙げられる。
これらの中でも特に好ましくは、3−フルオロ−4−n−ドデシルベンゼンスルホン酸、3−フルオロ−4−n−ペンタデシルベンゼンスルホン酸、3−フルオロ−4−n−オクタデシルベンゼンスルホン酸が挙げられる。
【0023】
式(I)で表される化合物の製造方法は、特に制限はなく、公知の方法を用いて製造しても、市販品を用いてもよい。
式(I)で表される化合物の製造方法としては、例えば、アルキルベンゼンをハロゲン化金属やフルオロリン酸カリウム等の求電子ハロゲン化剤によりハロゲン化された酸の塩化合物等と反応させて、ベンゼン環上にハロゲン原子を導入したハロゲン化アルキルベンゼンを作製し、その後スルホン化する方法、アルキルベンゼンスルホン酸塩を上記ハロゲン化物等と反応させ、ハロゲン元素を導入した後にスルホン酸に戻すなどの方法等が好ましく挙げられる。
前記求電子ハロゲン化剤としては、公知のものを用いることができ、市販のものも用いることができる。導入するハロゲン原子がフッ素である場合、例えば、ヘキサフルオロリン酸カリウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウムなどのヘキサフルオロリン酸金属、フッ素ガス、その他市販の求電子フッ素化剤等を好ましく用いることができる。
【0024】
<水系媒体>
本発明の化合物を用いる脱水反応は、水系媒体中で行うことが本発明の効果を顕著に発揮できるため好ましい。
本発明に用いることのできる水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水や、エタノール、メタノール等のアルコール類などが挙げられる。これらの中でも、エタノールや水であることが好ましく、蒸留水及びイオン交換水等の水が特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、水系媒体には、水混和性の有機溶媒を含んでいてもよい。水混和性の有機溶媒としては、例えば、アセトンや酢酸等が挙げられる。
【0025】
<有機溶剤>
本発明における縮合反応では、有機溶剤を用いて行ってもよい。
本発明に用いることができる有機溶剤の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、ジクロロベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、p−クロロトルエン等のハロゲン系溶媒、3−ヘキサノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン系溶媒、ジブチルエーテル、アニソール、フェネトール、o−ジメトキシベンゼン、p−ジメトキシベンゼン、3−メトキシトルエン、ジベンジルエーテル、ベンジルフェニルエーテル、メトキシナフタレン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、フェニルスルフィド、チオアニソール等のチオエーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、安息香酸メチル、フタル酸メチル、フタル酸エチル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶媒、ジフェニルエーテル、又は、4−メチルフェニルエーテル、3−メチルフェニルエーテル、3−フェノキシトルエン等のアルキル置換ジフェニルエーテル、又は、4−ブロモフェニルエーテル、4−クロロフェニルエーテル、4−ブロモジフェニルエーテル、4−メチル−4’−ブロモジフェニルエーテル等のハロゲン置換ジフェニルエーテル、又は、4−メトキシジフェニルエーテル、4−メトキシフェニルエーテル、3−メトキシフェニルエーテル、4−メチル−4’−メトキシジフェニルエーテル等のアルコキシ置換ジフェニルエーテル、又は、ジベンゾフラン、キサンテン等の環状ジフェニルエーテル等のジフェニルエーテル系溶媒が挙げられ、これらは、混合して用いてもよい。そして、溶媒として容易に水と分液分離できるものが好ましく、特に平均分子量の高いポリエステルを得るためにはエステル系溶媒、エーテル系溶媒及びジフェニルエーテル系溶媒がより好ましく、アルキル−アリールエーテル系溶媒及びエステル系溶媒が特に好ましい。
【0026】
本発明の化合物以外に、例えば、金属触媒や加水分解酵素等の一般的に使用される重縮合触媒を併用することもできる。
金属触媒としては以下のものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。例えば、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ハロゲン化スズ化合物、希土類金属触媒を挙げられる。
有機スズ化合物、有機チタン化合物、及び、有機ハロゲン化スズ化合物としては、重縮合触媒として公知のものを用いることができる。
希土類含有触媒としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド元素としてランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などを含むものが有効であり、特にアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、又はトリフラート構造を有するものなどが有効である。
希土類含有触媒としては、スカンジウムトリフラート、イットリウムトリフラート、及び、ランタノイドトリフラートなどのトリフラート構造を有するものが好ましい。ランタノイドトリフラートについては、有機合成化学協会誌、第53巻第5号、p44−54)に詳述されている。前記トリフラートとしては、構造式では、X(OSO2CF33が例示できる。ここでXは、希土類元素であり、これらの中でも、前記Xがスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)などであることがさらに好ましい。
【0027】
触媒として金属触媒を使用する場合には、得られる樹脂中の触媒由来の金属含有量を100ppm以下とすることが好ましく、75ppm以下とすることがより好ましく、50ppm以下とすることがさらに好ましい。
【0028】
併用することができる加水分解酵素としては、エステル合成反応を触媒するものであれば特に制限はない。加水分解酵素としては、例えば、カルボキシエステラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アセチルエステラーゼ、ペクチンエステラーゼ、コレステロールエステラーゼ、タンナーゼ、モノアシルグリセロールリパーゼ、ラクトナーゼ、リポプロテインリパーゼ等のEC(酵素番号)3.1群(丸尾・田宮監修「酵素ハンドブック」朝倉書店(1982)等参照)に分類されるエステラーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、キシロシダーゼ等のグリコシル化合物に作用するEC3.2群に分類される加水分解酵素、エポキシドヒドラーゼ等のEC3.3群に分類される加水分解酵素、アミノペプチダーゼ、キモトリプシン、トリプシン、プラスミン、ズブチリシン等のペプチド結合に作用するEC3.4群に分類される加水分解酵素、フロレチンヒドラーゼ等のEC3.7群に分類される加水分解酵素等を挙げることができる。
【0029】
これらエステラーゼのうち、グリセロールエステルを加水分解し脂肪酸を遊離する酵素を特にリパーゼと呼ぶが、リパーゼは有機溶媒中での安定性が高く、収率良くエステル合成反応を触媒し、さらに安価に入手できることなどの利点がある。したがって、本発明のポリエステルの製造方法においても、収率やコストの面からリパーゼを用いることが好ましい。
【0030】
リパーゼには種々の起源のものを使用できるが、好ましいものとして、シュードモナス(Pseudomonas)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、カンジダ(Candida)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、リゾプス(Rhizopus)属、ムコール(Mucor)属等の微生物から得られるリパーゼ、植物種子から得られるリパーゼ、動物組織から得られるリパーゼ、さらに、パンクレアチン、ステアプシン等を挙げることができる。このうち、シュードモナス属、カンジダ属、アスペルギルス属の微生物由来のリパーゼを用いることが好ましい。
【0031】
塩基性触媒としては、一般の有機塩基化合物、含窒素塩基性化合物、テトラブチルホスホニウムヒドロキシドなどのテトラアルキル又はアリールホスホニウムヒドロキシドを挙げることができるがこれに限定されない。
有機塩基化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウムヒドロキシド類、含窒素塩基性化合物としては、トリエチルアミン、ジベンジルメチルアミン等のアミン類、ピリジン、メチルピリジン、メトキシピリジン、キノリン、イミダゾールなど、更にナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム等のアルカリ金属類及びカルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属類の水酸化物、ハイドライド、アミドや、アルカリ、アルカリ土類金属と酸との塩、例えば炭酸塩、燐酸塩、ほう酸塩、カルボン酸塩、フェノール性水酸基との塩を挙げることができる。
また、アルコール性水酸基との化合物やアセチルアセトンとのキレート化合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
(縮合化合物及びその製造方法)
本発明の縮合化合物の製造方法は、本発明のブレンステッド酸化合物を触媒として用いて縮合性組成物を縮合する工程(以下、「縮合工程」ともいう。)を含む。
また、本発明の縮合化合物の製造方法は、離型剤の製造方法として好適に用いることができ、静電荷像現像トナー用離型剤の製造方法としてより好適に用いることができる。
本発明の縮合化合物は、前記製造方法により製造された縮合化合物である。
【0033】
本発明の縮合化合物の製造方法における本発明の化合物の使用量は、縮合性化合物の総重量に対し、0.001〜2重量%であることが好ましく、0.002〜1重量%であることがより好ましい。使用量が上記範囲であると、反応性が向上し、低温での反応を十分進行させることができ、また、コスト面にも優れるため好ましい。
【0034】
前記縮合化合物としては、エステル化合物、アミド化合物、チオエステル化合物等が好ましく例示できる。
また、前記縮合性組成物としては、本発明の化合物を用いて縮合化合物が得られる化合物又は化合物の組み合わせであれば、特に制限はなく、カルボン酸化合物、多価カルボン酸、アルコール類、多価アルコール、アミン化合物、多価アミン、チオール類、多価チオールよりなる群から選ばれる化合物又は化合物の組み合わせが例示でき、カルボン酸とアルコール類、多価アルコール、アミン化合物、多価アミン、チオール類及び/又は多価チオールとの組み合わせ、多価カルボン酸とアルコール類、アミン化合物及び/又はチオール類との組み合わせが好ましく例示できる。
【0035】
また、本発明の縮合化合物は、離型剤(特に、静電荷像現像トナー用離型剤)として使用する場合、水系媒体中で縮合して得られた縮合化合物であることが好ましく、また、エステル化合物であることが好ましく、カルボン酸化合物と多価アルコールとを縮合したエステル化合物であることがより好ましい。
また、本発明の縮合化合物を離型剤(特に、静電荷像現像トナー用離型剤)として使用する場合、本発明の縮合化合物の融点は、60℃以上130℃以下であることが好ましく、より好ましくは70℃以上110℃以下であり、さらに好ましくは80℃以上100℃以下である。このような融点範囲は、結着樹脂と離型剤との相溶性と分散性のバランスをとりやすいために好ましい。該融点が60℃以上であると、相溶性が適度であり、トナーの保存性が良好であるため好ましく、130℃以下であると、適度な温度で浸み出すため、剥離性が良好であり好ましい。
【0036】
前記縮合工程における縮合反応は、水系媒体中で行っても、バルクで行っても、溶液中で行ってもよいが、水系媒体中で行うことが本発明の化合物の効果を顕著に発揮できるため好ましい。また、前記縮合反応は、大気圧下、減圧、窒素気流下等の一般的な条件を広く用いることができる。
前記縮合工程における縮合反応では、前記水系媒体や前記有機溶剤を好適に用いることができる。
【0037】
(縮合化合物粒子分散液)
本発明の縮合化合物粒子分散液(以下、単に「縮合化合物粒子分散液」ともいう。)は、少なくとも縮合化合物を含む粒子が分散媒に分散している樹脂粒子分散液であって、前記縮合化合物が、本発明の縮合化合物の製造方法により製造された縮合化合物を含むことを特徴とする。
本発明の縮合化合物粒子分散液は、静電荷像現像トナー用離型剤粒子分散液として好適に用いることができる。
本発明において、縮合化合物粒子分散液の分散媒は、前記水系媒体であることが好ましい。
【0038】
本発明の縮合化合物粒子分散液のメジアン径(中心径)は0.05μm以上2.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1.5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。このメジアン径が上記範囲となることで、上述のように水系媒体中における粒子の分散状態が安定するため好ましい。また、トナー作製に用いた場合、粒径の制御が容易であり、また、定着時の剥離性やオフセット性に優れるため好ましい。
なお、縮合化合物粒子のメジアン径は、例えば、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)で測定することができる。
【0039】
本発明の縮合化合物粒子分散液中の縮合化合物粒子の標準偏差は0.40以下であることが好ましく、より好ましくは0.30未満、さらに好ましくは0.25以下である。上記範囲であると、粒子の径の分布が広くならず、トナー製造の際に、離型剤が樹脂中に適切かつ均一に含有され、定着性及び凝集性、粗粉の影響によるトナー粒径、粒径分布、形状制御性、粉体流動性などが良好であり好ましい。また、本発明の縮合化合物粒子分散液を使用して作製されるトナーにおいて、かぶりや画像の悪化、転写効率の低下が起こらず好ましい。なお、標準偏差は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)を用いて算出することができる。
【0040】
本発明の縮合化合物粒子分散液は、本発明の製造方法により製造された縮合化合物を用い、公知の方法により製造することができる。
本発明の縮合化合物粒子分散液の製造方法としては、例えば、水系媒体中に縮合化合物含有物を分散し縮合化合物粒子分散液を得る分散工程を含む方法等が挙げられる。
前記分散工程では、分散効率の上昇や縮合化合物粒子分散液の安定性向上のため、界面活性剤等を添加し、分散を行ってもよい。
本発明の縮合化合物を水系媒体中に分散、粒子化する方法としては、例えば、水系媒体中で乳化し分散する方法等が挙げられる。
また、本発明の縮合化合物の製造方法及び縮合化合物粒子分散液の製造方法において、水系媒体中で乳化縮合を行う場合、好ましい乳化温度は、省エネルギー性、縮合化合物ーの生成速度及び生成した縮合化合物の熱分解速度を考慮して、低いほうが望ましいが、好ましくは40〜150℃であり、より好ましくは60〜130℃である。乳化温度が150℃以下であると、必要とするエネルギーが過大とならず、高熱により縮合化合物の分解が起こらないため好ましい。また、40℃以上であると縮合化合物の粘度が適度であり粒子化が容易であるため好ましい。
【0041】
トナーの粒度分布を制御する目的で、縮合化合物粒子を分級することもある。分級により、不適切な径の粒子を排除することにより、トナーの定着性や画像品質を向上する効果がある。
【0042】
(結着樹脂及びその製造方法)
本発明の結着樹脂の製造方法は、本発明のブレンステッド酸化合物を触媒として用いて重縮合性単量体を重縮合する工程(以下、「重縮合工程」ともいう。)を含む。
また、本発明の結着樹脂の製造方法は、静電荷像現像トナー用結着剤の製造方法としてより好適に用いることができる。
本発明の結着樹脂は、前記製造方法により製造された結着樹脂である。
【0043】
本発明の結着樹脂の製造方法における本発明の化合物の使用量は、重縮合性単量体の総重量に対し、0.001〜2重量%であることが好ましく、0.002〜1重量%であることがより好ましい。使用量が上記範囲であると、反応性が向上し、低温での反応を十分進行させることができ、また、コスト面にも優れるため好ましい。
【0044】
また、本発明の結着樹脂は、本発明のブレンステッド酸化合物を触媒として用いることで、得られた結着樹脂自体に着色が少ないため好ましい。
【0045】
本発明の結着樹脂としては、本発明のブレンステッド酸化合物を触媒として用いて重縮合性単量体を重縮合して得られる樹脂であれば、特に制限はないが、ポリエステルであることが好ましい。
【0046】
本発明に用いることができる重縮合性単量体としては、特に限定はなく、結晶性多量体及び非結晶性多量体のいずれを形成する単量体も使用することができ、非結晶性多量体のいずれを形成する単量体であることが好ましい。
重縮合性単量体としては、例えば、脂肪族、脂環族、芳香族の多価カルボン酸及びそれらのアルキルエステル、多価アルコール及びそれらのエステル化合物、ヒドロキシカルボン酸化合物、並びに、多価アミンなどが挙げられ、それらを直接エステル化反応、エステル交換反応などにより重合を行うことで、重縮合樹脂が得られる。
【0047】
多価アルコールとは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。多価アルコールとしては、特に限定はされないが、次の単量体を挙げることができる。
ジオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、例えばプロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、オクタデカンジオール等を挙げることができる。
また、ジオール以外の多価オールとしては、例えば、グリコール、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等を挙げることができる。
また、環状構造を有する多価アルコールとしては次の単量体を挙げることができる。例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールP、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノール、ビフェノール、ナフタレンジオール、1,3−アダマンタンジオール、1,3−アダマンタンジメタノール、1,3−アダマンタンジエタノール、ヒドロキシフェニルシクロヘキサン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。本発明では、上記ビスフェノール類が少なくとも一つのアルキレンオキサイド基を有することが好ましい。アルキレンオキサイド基としては、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド等を挙げることができるが、これらに限定されない。好適には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドであり、その付加モル数は1〜3が好ましい。この範囲である場合、作製するポリエステルの粘弾性やガラス転移温度がトナーとして使用するために適切に制御することができる。
上述の単量体のうち、好適に使用される単量体としては、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、及び、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールS、ビスフェノールZのアルキレンオキサイド付加物である。
【0048】
重縮合性単量体として用いることができる多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシル基を2個含有する化合物であり、例えば、シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、リンゴ酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、アゼライン酸、ピメリン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シトラコン酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−カルボン酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロルフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレン二酢酸、p−フェニレンジプロピオニック酸、m−フェニレンジプロピオニック酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、1,1−シクロペンテンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸、1、3−アダマンタンジ酢酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等を挙げることができる。
また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等を挙げることができる。
上記のカルボン酸は、カルボキシル基以外の官能基を有していてもよく、酸無水物、酸エステル等のカルボン酸誘導体を用いることもできる。
これら多価カルボン酸のうち好ましく用いられる単量体は、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレン二酢酸、p−フェニレンジプロピオニック酸、m−フェニレンジプロピオニック酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸である。
【0049】
また、一分子中にカルボン酸と水酸基とを含有するヒドロキシカルボン酸化合物を用い、重縮合を実施することもできる。例えば、ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシノナン酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロキシドデカン酸、ヒドロキシテトラデカン酸、ヒドロキシトリデカン酸、ヒドロキシヘキサデカン酸、ヒドロキシペンタデカン酸、ヒドロキシステアリン酸等を挙げることができるが、これに限定されることを意味しない。
【0050】
本発明において、ポリアミドを得るために用いることができる多価アミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,4−ブテンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)等を挙げることができる。
【0051】
本発明は上記の単量体をいずれも制限なく使用することができるが、作製されるポリエステルが非結晶性であることが好ましい。非結晶性ポリエステルは、常温での高い硬度を有するために流動性が高く、オフセット抑制、低温定着性、画像品質等の面でも、トナーに非常に適した特性を有する。主に直鎖モノマーより構成される結晶性ポリエステルは、結晶性に起因するシャープメルト性を有し、低温定着性へのメリットは大きいが、粉体流動性や画像強度に劣るという欠点があり、結着樹脂の主成分としての特性は非結晶性がより適切である。非結晶性の確認は、作製したポリエステルの示差熱分析(DSC)により、ガラス転移温度、融点の有無で判別することができる。
ここで、非結晶性樹脂のガラス転移点は、ASTM D3418−82に規定された方法(DSC法)で測定した値をいう。
なお、前記の「結晶性ポリエステル樹脂」に示すような「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを示し、具体的には、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が6℃以内であることを意味する。
一方、吸熱ピークの半値幅が6℃を越える樹脂や、明確な吸熱ピークが認められない樹脂は、非結晶性(非晶質)であることを意味する。
【0052】
非結晶性ポリエステルを構成する単量体としては、上記の単量体のうち、多価アルコールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールS、ビスフェノールZのアルキレンオキサイド付加物を挙げることができ、多価カルボン酸としては、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレン二酢酸、p−フェニレンジプロピオニック酸、m−フェニレンジプロピオニック酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができる。
【0053】
本発明の結着樹脂の製造方法により得られる結着樹脂は、その構造は特に限定はされないが、ポリエステルであることが好ましく、ポリエステル中の繰り返し単位の90%以上が下記のUnit−A、Unit−B及び/又はUnit−Cの構造を有する樹脂であることがより好ましく、ポリエステル中の繰り返し単位の90%以上がUnit−A又はUnit−Bの構造を有する樹脂であることがさらに好ましい。なお、これらの構造は、例えばUnit−Aの場合、その樹脂中にUnit−Aで表される構造が1種のみでも、2種以上が混在していてもよく、また、下記に示す各Unit構造についてもそれぞれ同様である。また、前記結着樹脂は、非結晶性樹脂であることが好ましい。
【0054】
【化3】

【0055】
Unit−A中、A1は連結基を含んでいてもよい多価の炭化水素基を表し、また、カルボキシ結合部位の数nは0以上の整数を表す。
Unit−B中、B1は連結基を含んでいてもよい多価の炭化水素基、又は、該炭化水素基に1以上のアルキレンオキサイド基が結合した基を表し、また、アルコキシ結合部位の数mは0以上の整数を表す。
UnitC中、連結基を含んでいてもよい多価の炭化水素基、又は、該炭化水素基に1以上のアルキレンオキサイド基が結合した基を表し、カルボキシ結合部位の数pは0以上の整数を表し、また、アルコキシ結合部位の数qは0以上の整数を表す。
前記Unit−A〜C中における二重波線部及び二重点線部は、他の構造との結合部であることを表し、二重波線部はUnit−B等における二重点線部やUnit−A〜C及び後述するUnit−D、E以外の構造と結合していてもよく、二重点線部は二重波線部やUnit−A〜C及び後述するUnit−D、E以外の構造と結合していてもよく、また、二重波線部同士、及び、二重点線部同士は結合しないものとする。
【0056】
前記A1は、炭素数3以上であることが好ましく、また、前記B1としては、炭素数5以上であることが好ましい。
1及びC1におけるアルキレンオキサイド基としては、2以上のアルキレンオキサイド基が結合したものであってもよく、その場合、2種以上のアルキレンオキサイド基が結合したものであってもよい。また、アルキレンオキサイド基はアルコキシ部に直接結合し、その数は両端のアルコキシ部において同数であることが好ましい。
前記連結基を含んでいてもよい多価の炭化水素基は、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素若しくは炭化水素環から水素原子を2以上除いた基、これらの基が2以上結合した基、並びに、これらの基が2以上結合し、かつ、その少なくとも一部の結合が連結基である基が例示できる。
前記アルカン、アルケン及びアルキンは、直鎖であっても分岐していてもよく、また、炭素数が1〜20であることが好ましい。
芳香族炭化水素及び炭化水素環は、環状構造にさらにアルキル基、アルケニル基及び/又はアルキニル基を有していてもよく、2以上の環が結合した構造でもよい。また、芳香族炭化水素の炭素数は6〜30であることが好ましい。炭化水素環の炭素数は3〜20であることが好ましく、5〜12であることがより好ましく、6〜8であることがさらに好ましい。
前記連結基は、−O−、−S−、−SO−、−SO2−が好ましく例示でき、その中でも−O−、−SO2−であることがより好ましい。
前記B1は、ビスフェノールA骨格(−C64−C(CH32−C64−)、ビスフェノールE骨格(−C64−C(CH2)−C64−)、ビスフェノールF骨格(−C64−CH2−C64−)、ビスフェノールP骨格(−C(CH32−1,4−C64−C(CH32−)、ビスフェノールM骨格(−C(CH32−1,3−C64−C(CH32−)、ビスフェノールS骨格(−C64−SO2−C64−)、ビスフェノールZ骨格(−C64−C610−C64−)、又は、これらの基に1以上のアルキレンオキサイド基が結合した基であることが好ましく、−C64−C(CH32−C64−、−C64−SO2−C64−、−C64−C610−C64−、又は、これらの基に1以上のアルキレンオキサイド基が結合した基であることがより好ましい。
【0057】
前記Unit−A中のカルボキシ結合部位の数nは、0〜5であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。
前記Unit−B中のアルコキシ結合部位の数mは、0〜5であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。
前記Unit−C中のカルボキシ結合部位の数pは、0〜5であることが好ましく、0であることがより好ましい。
前記Unit−C中のアルコキシ結合部位の数qは、0〜5であることが好ましく、0であることがより好ましい。
前記n、m、p、qが0である場合は、丸括弧中のカルボキシ結合部位又はアルコキシ結合部位がないことを表し、前記n、m、p、qが1以上の整数である場合は、丸括弧中のカルボキシ結合部位又はアルコキシ結合部位が1以上の整数個あることを表す。
【0058】
また、本発明の結着樹脂の製造方法により得られる結着樹脂としては、Unit−A〜Cの中でも、繰り返し単位の90%以上が下記のUnit−ABの構造である樹脂が好ましい。
【0059】
【化4】

【0060】
Unit−AB中、A1は連結基を含んでいてもよい多価の炭化水素基を表し、B1は連結基を含んでいてもよい多価の炭化水素基、又は、該炭化水素基に1以上のアルキレンオキサイド基が結合した基を表し、カルボキシ結合部位の数nは0以上の整数を表し、また、アルコキシ結合部位の数mは0以上の整数を表す。なお、二重波線部及び二重点線部は、他の構造との結合部であることを表し、二重波線部は二重点線部やUnit−A〜E以外の他の構造と結合していてもよく、二重点線部は二重波線部やUnit−A〜E以外の構造と結合していてもよく、また、二重波線部同士、及び、二重点線部同士は結合しないものとする。
【0061】
前記Unit−AB中のA1、B1、n及びmは、前記Unit−A又はB中のA1、B1、n及びmと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。
【0062】
また、前記Unit−Aは下記Unit−Dであることが好ましい。
【0063】
【化5】

【0064】
Unit−D中、A2は炭素数1〜20のアルカン、炭素数6〜20の芳香族炭化水素若しくは炭素数3〜20の炭化水素環から水素原子を2以上除いた基、又は、この基が2つ以上結合した基を表す。
前記Unit−D中における二重波線部は、他の構造との結合部であることを表し、また、二重波線部は前記Unit−B等における二重点線部やUnit−A〜E以外の等以外の他の構造と結合していてもよく、また、二重波線部同士は結合しないものとする。
前記A2としては、炭素数3以上の基が好ましい。また、前記A2としては、例えば、炭素数6〜18の直鎖アルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキシレン基、ノルボルネンやアダマンタン等の架橋を含む炭化水素環、フェニレン基に2つのアルキレン基が結合した基(例えば、−CH2−C64−CH2−や−CH2CH2−C64−CH2CH2−等)、ナフチレン基に2つのアルキレン基が結合した基、及び、シクロヘキシレン基に2つのアルキレン基が結合した基等がより好ましく挙げられる。
【0065】
また、前記Unit−Bは下記Unit−Eであることが好ましい。
【0066】
【化6】

【0067】
UnitE中、B2は直鎖アルキレン基、炭化水素環、又は、ビスフェノール化合物から2つのヒドロキシ基を除いた基を表し、また、E1及びE2は、それぞれ独立に、単結合、アルキレンオキサイド基、又は、2以上のアルキレンオキサイド基が結合した基を表す。
前記Unit−E中における二重点線部は、他の構造との結合部であることを表し、二重点線部は前記Unit−A等おける二重波線部やUnit−A〜E以外の構造と結合していてもよく、また、二重点線部同士は結合しないものとする。
前記ビスフェノール化合物は、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールP、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールZ等が好ましく挙げられる。
2が直鎖アルキレン基である場合、E1及びE2は炭化水素であることが好ましく、また、B2が前記ビスフェノール化合物から2つのヒドロキシ基を除いた基である場合、E1及びE2は、それぞれ独立に、アルキレンオキサイド基、又は、2以上のアルキレンオキサイド基が結合した基であり、炭化水素環は上記のいずれもとることができる。また、アルキレンオキサイド基としては、エチレンオキサイド基及び/又はプロピレンオキサイド基であることがより好ましい。
【0068】
本発明の結着樹脂は、樹脂中の繰り返し単位の80%以上がUnit−D又はUnit−Eであるポリエステルであることが特に好ましい。
【0069】
また、本発明の結着樹脂は、樹脂中の繰り返し単位の80%以上が下記Unit−DEの構造であるポリエステルが特に好ましい。
【0070】
【化7】

【0071】
Unit−DE中、A2は炭素数1〜20のアルカン、炭素数6〜20の芳香族炭化水素若しくは炭素数3〜20の炭化水素環から水素原子を2以上除いた基、又は、この基が2つ以上結合した基を表し、B2は直鎖アルキレン基、又は、ビスフェノール化合物から2つのヒドロキシ基を除いた基を表し、また、E1及びE2としては、それぞれ独立に、単結合、アルキレンオキサイド基、又は、2以上のアルキレンオキサイド基が結合した基を表す。
【0072】
前記Unit−DE中のA2、B2、E1及びE2は、Unit−D又はUnit−E中のA2、B2、E1及びE2と同義であり、また、好ましい範囲も同様である。
【0073】
本発明で作製される静電荷像現像トナー用結着樹脂のガラス転移温度は、定着性、画像形成性の観点から、30〜80℃であることが好ましい。ガラス転移温度が30℃以上であると、常温でのトナー粉体の流動性が良好で、高温度域での結着樹脂自体の凝集力に優れ、定着の際にホットオフセットが生じにくいため好ましい。また、ガラス転移温度が80℃以下であると、十分な溶融が得られ、最低定着温度が上昇しにくいため好ましい。ガラス転移温度は、さらに好ましくは35〜75℃、最も好適には45〜65℃である。ガラス転移温度は、結着樹脂の分子量や、結着樹脂のモノマー構成、架橋剤の添加等により制御することができる。
【0074】
本発明の結着樹脂は、従来の反応温度よりも低温で反応させて得ることができるため、エネルギーコストの面で好ましい。反応温度は70℃以上150℃未満が好ましい。より好適には70℃以上140℃以下であり、さらに好適には80℃以上140℃未満である。この温度よりも低い場合、モノマーの溶解性、触媒活性度の低下に起因する反応性の低下、分子量の伸長抑制等が生じることがあり、この温度以上であると、低エネルギー製法という本来の目的からはずれることとなる。更に高温に起因する樹脂の着色や、生成した重縮合樹脂の分解等が起こることがある。
【0075】
前記重縮合工程における重縮合反応は、乳化重合や懸濁重合等の水中重合、バルク重合、溶液重合、界面重合等一般の重縮合法で実施することが可能であるが、好適に水中重縮合が用いられる。また、大気圧下で反応が可能であるが、重縮合樹脂の高分子量化等を目的とした場合、減圧、窒素気流下等の一般的な条件を広く用いることができる。
前記重縮合工程における重縮合反応では、前記水系媒体や前記有機溶剤を用いて行ってもよい。
【0076】
さらにまた、本発明において、重量平均分子量の高いポリエステルを得るため、有機溶剤に脱水、脱モノマー剤を加えても良い。脱水、脱モノマー剤の具体例としては、例えば、モレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ13X等のモレキュラーシーブ類、アルミナ、シリカゲル、塩化カルシム、硫酸カルシウム、五酸化二リン、濃硫酸、過塩素酸マグネシウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、あるいは水素化カルシウム、水素化ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム等の金属水素化物、又は、ナトリウム等のアルカリ金属等が挙げられる。中でも、取扱い及び再生の容易さからモレキュラーシーブ類が好ましい。
【0077】
本発明の結着樹脂の製造方法により製造された結着樹脂がトナー適性を有するために適当な重量平均分子量は、好ましくは5,000〜50,000、より好適には7,000〜35,000、さらに好適には8,000〜30,000の範囲である。重量平均分子量が5,000以上であると、常温での粉体流動性に優れ、トナーのブロッキングが起こりにくく、更にトナー用結着樹脂としての凝集力が十分であり、ホットオフセット性に優れるため好ましい。また、重量平均分子量が50,000以下であると、ホットオフセット性及び最低定着温度が共に良好であり、重縮合に要する時間が短く、重縮合時の温度が低いために製造効率に優れるので好ましい。
また、本発明の結着樹脂の製造方法により製造された結着樹脂の数平均分子量としては、好ましくは1,000〜10,000、より好適には1,500〜8,000、さらに好適には1,800〜7,000の範囲である。上記範囲であると、粉体の熱に対する安定性の点で好ましい。
重量平均分子量及び数平均分子量は、公知の方法により測定でき、例えば、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィ(GPC)等により測定することができる。
また、本発明の結着樹脂の分子量分布としては、好ましくは1.0〜4.0、より好適には1.0〜3.5の範囲である。上記範囲であると、トナーの定着特性やトナーの製造性にばらつきが少なくなるため好ましい。
【0078】
本発明に用いることができる非結晶性ポリエステルは、その特性を損なわない限り、上述した以外のモノマーとともに重縮合することも可能である。例えば、一価カルボン酸、一価アルコールや、不飽和結合を有するラジカル重合性モノマーなどである。こうした単官能モノマーはポリエステル末端をキャッピングするため、効果的な末端変性を可能としポリエステルの性状を制御することが可能である。単官能モノマーは重合初期から用いても良く、また重合途中に添加しても良い。
【0079】
本発明においては、重縮合工程として、既述単量体と予め作製しておいたプレポリマーとの重合反応とを含むこともできる。プレポリマーは、上記単量体に溶融または均一混合できるポリマーであれば限定されない。
さらに本発明の結着樹脂は、上述した単量体の単独重合体、上述した単量体を含む単量体を2種以上組み合せた共重合体、又はそれらの混合物、グラフト重合体、一部枝分かれや架橋構造などを有していても良い。
【0080】
(樹脂粒子分散液)
本発明の樹脂粒子分散液(以下、単に「樹脂粒子分散液」ともいう。)は、少なくとも結着樹脂を含む樹脂粒子が分散媒に分散している樹脂粒子分散液であって、前記結着樹脂が、本発明の結着樹脂の製造方法により製造された結着樹脂を含むことを特徴とする。
本発明の樹脂粒子分散液は、静電荷像現像トナー用樹脂粒子分散液として好適に用いることができる。
本発明において、樹脂粒子分散液の分散媒は、前記水系媒体であることが好ましい。
【0081】
本発明の樹脂粒子分散液のメジアン径(中心径)は0.05μm以上2.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1.5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。このメジアン径が上記範囲となることで、上述のように水系媒体中における樹脂粒子の分散状態が安定するため好ましい。また、トナー作製に用いた場合、粒径の制御が容易であり、また、定着時の剥離性やオフセット性に優れるため好ましい。
なお、樹脂粒子のメジアン径は、例えば、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)で測定することができる。
【0082】
本発明の樹脂粒子分散液中における樹脂粒子の標準偏差は0.40以下であることが好ましく、より好ましくは0.30未満、さらに好ましくは0.25以下である。上記範囲であると、樹脂粒子の径の分布が広くならず、トナー製造の際に、離型剤が樹脂中に適切かつ均一に含有され、定着性及び凝集性、粗粉の影響によるトナー粒径、粒径分布、形状制御性、粉体流動性などが良好であり好ましい。また、本発明の樹脂粒子分散液を使用して作製されるトナーにおいて、かぶりや画像の悪化、転写効率の低下が起こらず好ましい。なお、標準偏差は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)を用いて算出することができる。
【0083】
本発明の樹脂粒子分散液は、本発明の製造方法により製造された結着樹脂を用い、公知の方法により製造することができる。
本発明の樹脂粒子分散液の製造方法としては、例えば、水系媒体中に前記結着樹脂含有物を分散し樹脂粒子分散液を得る分散工程を含む方法等が挙げられる。
前記分散工程では、分散効率の上昇や樹脂粒子分散液の安定性向上のため、界面活性剤等を添加し、分散を行うことが好ましい。
本発明の結着樹脂を水系媒体中に分散、粒子化する方法としては、例えば、上述したように結着樹脂の製造を行う際に、水系媒体中で懸抱重合法、溶解懸濁法、ミニエマルジョン法、マイクロエマルジョン法、多段膨潤法やシード重合を含む乳化重合法などの方法が挙げられる。
また、本発明の結着樹脂の製造方法及び樹脂粒子分散液の製造方法において、水系媒体中で乳化重縮合を行う場合、好ましい乳化温度は、省エネルギー性、ポリマーの生成速度及び生成したポリマーの熱分解速度を考慮して、低いほうが望ましいが、好ましくは40〜150℃であり、より好ましくは60〜130℃である。乳化温度が150℃以下であると、必要とするエネルギーが過大とならず、高熱により樹脂の分解に起因する分子量の低下が起こらないため好ましい。また、40℃以上であると樹脂粘度が適度であり粒子化が容易であるため好ましい。
【0084】
また、結着樹脂を水系媒体中に分散、粒子化する方法としては、例えば、強制乳化法、自己乳化法、転相乳化法など、既知の方法からも選択することができる。これらのうち、乳化に要するエネルギー、得られる乳化物の粒径制御性、安定性等を考慮すると、自己乳化法、転相乳化法が好ましく適用される。
自己乳化法、転相乳化法に関しては、「超微粒子ポリマーの応用技術(シーエムシー出版)」に記載されている。自己乳化に用いる極性基としては、カルボキシル基、スルホン基等を用いることができるが、本発明のトナー用非結晶性ポリエステル結着樹脂に適用する場合、カルボキシル基が好ましく用いられる。
【0085】
前記分散工程において有機溶剤を用いた場合、本発明の樹脂粒子分散液の製造方法として、少なくとも有機溶剤の一部を除去する工程、及び、樹脂粒子を形成する工程を含んでいてもよい。
例えば、結着樹脂含有物を乳化後、有機溶剤の一部を除去することにより粒子として固形化するのが好ましい。固形化の具体的方法としては、重縮合樹脂含有物を水系媒体中に乳化分散した後、溶液を撹拌しながら空気、あるいは窒素等の不活性ガスを送り込みながら、気液界面での有機溶剤の乾燥を行う方法(廃風乾燥法)、又は、減圧下に保持し必要に応じて不活性ガスをバブリングしながら乾燥を行う方法(減圧トッピング法)、更には、重縮合樹脂含有物を水系媒体中に乳化分散した乳化分散液若しくは重縮合樹脂含有物の乳化液を細孔からシャワー状に放出し例えば皿状の受けに落としこれを繰り返しながら乾燥させる方法(シャワー式脱溶剤法)などがある。使用する有機溶剤の蒸発速度、水への溶解度などからこれら方式を適時選択、あるいは組み合わせて脱溶剤を行うのが好ましい。
【0086】
トナーの粒度分布を制御する目的で、樹脂粒子を分級することもある。分級により、不適切な径の粒子を排除することにより、トナーの定着性や画像品質を向上する効果がある。
【0087】
(静電荷像現像トナー及びその製造方法)
一方、近年の高画質要求に伴い、トナーの小径化、低エネルギー製法対応技術として、トナーの化学的製法も多く採用されている。本発明のポリエステルを用いるトナーの化学製法としては、汎用の製法を用いることができるが、凝集合一法が好ましい。凝集合一法とは、水に結着樹脂を分散させたラテックスを作製し、他のトナー原材料とともに凝集(会合)させる既知の凝集法である。
本発明の静電荷像現像トナー(単に「トナー」ともいう。)の製造方法は、縮合化合物粒子分散液又は樹脂粒子分散液を少なくとも含む分散液中で該粒子を凝集して凝集粒子を得る工程(以下、「凝集工程」ともいう。)、及び、該凝集粒子を加熱して融合させる工程(以下、「融合工程」ともいう。)を含む静電荷像現像トナーの製造方法であって、前記縮合化合物粒子分散液が本発明の縮合化合物粒子分散液である、又は、前記樹脂粒子分散液が本発明の樹脂粒子分散液である。
本発明のトナーの製造方法において、本発明の縮合化合物粒子分散液を離型剤粒子分散液として、また、本発明の樹脂粒子分散液を結着樹脂分散液として用いることができ、前記分散液のどちらか一方を用いても、両方とも用いてもよい。
【0088】
例えば、樹脂粒子分散液、所謂ラテックスを使用し、凝集(会合)法を用いてトナー粒子径及び分布を制御したトナーを製造することが可能である。詳細には、ラテックスを、着色剤粒子分散液及び離型剤粒子分散液(本発明の縮合化合物粒子分散液であってもよい。)と混合し、さらに凝集剤を添加しヘテロ凝集を生じさせることによりトナー径の凝集粒子を形成し、その後、樹脂粒子のガラス転移点以上または融点以上の温度に加熱して前記凝集粒子を融合・合一し、洗浄、乾燥することにより得られる。この製法は加熱温度条件を選択することでトナー形状を不定形から球状まで制御できる。
【0089】
前記凝集工程においては、本発明の樹脂粒子分散液以外の樹脂粒子分散液と本発明の樹脂粒子分散液を混合し、凝集以降の工程を実施することも可能である。その際、本発明の樹脂粒子分散液を予め凝集し第一の凝集粒子形成後、さらに本発明の樹脂粒子分散液又は別の樹脂粒子分散液を添加し第一の粒子表面に第二のシェル層を形成する等、粒子を多層化することも可能である。また、当然前記の一例と逆の順序で多層粒子を作製することも可能である。
また、例えば、凝集工程において、本発明の結着樹脂を含む樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液を予め凝集し、第一の凝集粒子形成後、さらに本発明の結着樹脂を含む樹脂粒子分散液又は別の樹脂粒子分散液を添加して第一の粒子表面に第二のシェル層を形成する事も可能である。この例示においては着色剤分散液を別に調整しているが当然、樹脂粒子に予め着色剤が配合されても良い。
【0090】
凝集粒子の融合・合一工程を終了した後、任意の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て所望のトナー粒子を得るが、洗浄工程は帯電性を考慮すると、イオン交換水で十分に置換洗浄することが望ましい。また、固液分離工程には特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好適である。さらに、乾燥工程も特に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられる。
【0091】
凝集剤としては、界面活性剤のほか、無機塩、2価以上の金属塩を好適に用いることができる。特に、金属塩を用いる場合、凝集性制御およびトナー帯電性などの特性において好ましい。凝集に用いる金属塩化合物としては、一般の無機金属化合物又はその重合体を樹脂微粒子分散液中に溶解して得られるが、無機金属塩を構成する金属元素は周期律表(長周期律表)における2A、3A、4A、5A、6A、7A、8、1B、2B、3B族に属する2価以上の電荷を有するものであり、樹脂粒子の凝集系においてイオンの形で溶解するものであればよい。好ましい無機金属塩を具体的に挙げると、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシム等の無機金属塩重合体などである。その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。一般的に、よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価以上で、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方がより適している。
【0092】
本発明においては、必要に応じて、本発明の結果に影響を与えない範囲で公知の添加剤を、1種又は複数を組み合わせて配合することができる。例えば、難燃剤、難燃助剤、光沢剤、防水剤、撥水剤、無機充填剤(表面改質剤)、離型剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、分散剤、滑剤、充填剤、体質顔料、結着剤、帯電制御剤等である。これらの添加物は、塗布剤を製造するいずれにおいても配合することができる。
【0093】
内添剤の例としては、帯電制御剤として4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物など通常使用される種々の帯電制御剤を使用することが出来るが、製造時の安定性と廃水汚染減少の点から水に溶解しにくい材料が好適である。
【0094】
離型剤の例としては、本発明の縮合化合物の他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類やエステルワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用できる。
これらのワックス類は、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに強い剪断をかけられるホモジナイザーや圧力吐出型分散機により粒子化し、1ミクロン以下の粒子の分散液を作製することができる。
【0095】
難燃剤、難燃助剤としては、すでに汎用されている臭素系難燃剤や、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウムを例示できるがこれに限定されるものではない。
【0096】
着色成分としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ベンガラ、紺青、酸化チタン等の無機顔料、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンレッド、キレートレッド、ブリリアントカーミン、パラブラウン等のアゾ顔料、銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン顔料、フラバントロンイエロー、ジブロモアントロンオレンジ、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料があげられる。クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラロゾンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、デュポンオイルレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレート、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3などの種々の顔料などが挙げられ、これらは1種または2種以上を併せて使用することができる。
【0097】
また、通常のトナーと同様に乾燥後、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機粒子やビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂粒子を乾燥状態で剪断をかけて表面へ添加して流動性助剤やクリーニング助剤として用いることもできる。
【0098】
本発明に用いることができる界面活性剤の例としては、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤、またポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤を併用することも効果的であり、分散のため手段としては、回転せん断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものが使用可能である。
【0099】
本発明のトナーは平均体積粒子径(D50)が3.0〜20.0μmであることが好ましい。更に好ましくは、平均体積粒子径が3.0〜9.0μmの場合である。D50が3.0μm以上であると、付着力が適度であり、現像性に優れるため好ましい。また、20.0μm以下であると、画像の解像性に優れるため好ましい。平均体積粒子径(D50)はレーザー回折式粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。
【0100】
また、本発明のトナーは、平均体積粒子分布GSDvが1.4以下であることが好ましく、GSDvが1.3以下であることが更に好ましい。粒子分布は、累積分布のD16、D84を用いて以下のような平均体積粒子分布GSD又は数GSDを簡易的に用いることができる。
体積GSDv=(体積D84/体積D160.5
GSDvが1.4以下であると、粒子径が均一であり、定着性に優れ、定着不良に起因する装置故障が起こりにくく、また、トナーの飛散による機内汚染や現像剤の劣化なども起こりにくいため好ましい。平均体積粒子分布GSDはレーザー回折式粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。
【0101】
同様に、本発明のトナーの形状係数SF1は、画像形成性の点から、好ましくは100〜140、更に好適には110〜135である。このときSF1は以下のように計算される。
【0102】
【数1】

ここでML:粒子の絶対最大長、A:粒子の投影面積
これらは、主に顕微鏡画像または走査電子顕微鏡画像をルーゼックス画像解析装置によって取り込み、解析することによって数値化される。
【0103】
本発明の縮合化合物粒子分散液を離型剤粒子分散液としてトナーの作製に用いた場合、トナー内の離型剤の平均ドメイン径は、0.05〜1.0μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。上記範囲であると、定着の際離型性が向上するため好ましい。
トナー内の離型剤の平均ドメイン径は、公知の方法で測定することができ、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)装置にて50個のトナーに対して断面を確認し、平均をとる方法などが挙げられる。
【0104】
本発明の縮合化合物粒子分散液を離型剤粒子分散液としてトナーの作製に用いた場合、定着像における透過度(HAZE値)が優れるため好ましい。
透過度(HAZE値)は、公知の方法で測定することができ、例えば、以下の方法により測定することができる。
本発明の縮合化合物粒子分散液を離型剤粒子分散液としてトナーの作製に用いて得られたトナー又は現像剤を用い、Docu Centre Color500改造機(定着機構成はヒートロールとベルト、ニップ幅:16mm)で、単位面積あたりのトナー重量が18.0mg/cm2になるよう調整し、OHP(富士ゼロックス オフィスサプライ社製:XEROX FILM)にトナー画像を3.5mg/cm2形成して、定着温度が180℃、プロセススピードが180mm/秒となるように調整して定着を行う。得られた定着像をヘイズメータ(直読式ヘーズコンピューター HGM−2DP スガ試験機(株)製)を用いて透過度(HAZE値)を求めた。
前記HAZE値は、35%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることが更に好ましい。上記範囲であると、実用において十分なレベルの透過度を有していると考えられるため好ましい。
【0105】
(静電荷像現像剤)
本発明の静電荷像現像トナーは、静電荷像現像剤として使用することができる。この現像剤は、この静電荷像現像トナーを含有することのほかは特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成をとることができる。静電荷像現像トナーを、単独で用いると一成分系の静電荷像現像剤として調製され、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷像現像剤として調製される。
一成分系現像剤として、現像スリーブ又は帯電部材と摩擦帯電して、帯電トナーを形成して、静電潜像に応じて現像する方法も適用できる。
キャリアとしては、特に限定されないが、通常、鉄粉、フェライト、酸化鉄粉、ニッケル等の磁性体粒子;磁性体粒子を芯材としてその表面をスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、エチレン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂などの樹脂やステアリン酸等のワックスで被覆し、樹脂被覆層を形成させてなる樹脂被覆キャリア;結着樹脂中に磁性体粒子を分散させてなる磁性体分散型キャリア等が挙げられる。中でも、樹脂被覆キャリアは、トナーの帯電性やキャリア全体の抵抗を樹脂被覆層の構成により制御可能となるため特に好ましい。
二成分系の静電荷像現像剤における本発明のトナーとキャリアとの混合割合は、通常、キャリア100重量部に対して、トナー2〜10重量部である。また、現像剤の調製方法は、特に限定されないが、例えば、Vブレンダー等で混合する方法等が挙げられる。
【0106】
(画像形成方法)
また、本発明の静電荷像現像トナー及び静電荷像現像剤は、通常の静電荷像現像方式(電子写真方式)の画像形成方法に使用することができる。
本発明の画像形成方法は、潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を熱定着する定着工程とを含む画像形成方法であって、前記トナーとして本発明の静電荷像現像トナー、又は、前記現像剤として本発明の静電荷像現像剤を用いることを特徴とする。
上記の各工程は、いずれも画像形成方法において公知の工程が利用でき、例えば、特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている。
また、本発明の画像形成方法は、上記した工程以外の工程を含むものであってもよく、例えば、静電潜像担持体上に残留する静電荷像現像剤を除去するクリーニング工程等が好ましく挙げられる。本発明の画像形成方法においては、さらにリサイクル工程をも含む態様が好ましい。前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程において回収した静電荷像現像トナーを現像剤層に移す工程である。このリサイクル工程を含む態様の画像形成方法は、トナーリサイクルシステムタイプのコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施することができる。また、クリーニング工程を省略し、現像と同時にトナーを回収する態様のリサイクルシステムにも適用することができる。
【0107】
前記潜像保持体としては、例えば、電子写真感光体および誘電記録体等が使用できる。
電子写真感光体の場合、該電子写真感光体の表面を、コロトロン帯電器、接触帯電器等により一様に帯電した後、露光し、静電潜像を形成する(潜像形成工程)。次いで、表面に現像剤層を形成させた現像ロールと接触若しくは近接させて、静電潜像にトナーの粒子を付着させ、電子写真感光体上にトナー像を形成する(現像工程)。形成されたトナー像は、コロトロン帯電器等を利用して紙等の被転写体表面に転写される(転写工程)。さらに、被転写体表面に転写されたトナー像は、定着機により熱定着され(定着工程)、最終的なトナー像が形成される。
なお、前記定着機による熱定着の際には、オフセット等を防止するため、通常、前記定着機における定着部材に離型剤が供給される。
【実施例】
【0108】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明を何ら限定するものではない。
なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「重量部」を意味する。
【0109】
1)水中縮合反応
(実施例1)
3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸 1.30重量部
イオン交換水 200重量部
パルミチン酸 47重量部
ペンタエリスリトール 6.5重量部
を混合し、90℃に加熱し融解した後水溶液に投入し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)で5分間乳化した。さらに超音波バス中で5分間乳化後、乳化物を撹拌しながらフラスコ中で70℃、15時間保持した。これにより粒子の中心径が280nm、標準偏差が0.19、融点が71℃の縮合化合物粒子分散液(1)を得た。
反応終了後、リアクターを氷水に漬け、更に凍結乾燥後にSEMで粒子を観察し、形状係数SF2を測定した。この測定は、5,000倍の光学顕微鏡画像を画像解析装置(LUZEX III、(株)ニレコ製)に取り込み、画像解析プログラムを用いて実施した。
少なくとも500個の粒子について、
【0110】
【数2】

の式に従い測定した(Lはラテックス粒子周囲長さ、Aはラテックス粒子面積)。粒子が真円である場合、SF2は100、一般的に粉砕された粒子は150程度である。SF2が100に近いほど粒子の融着や異型化がなく、安定したラテックス粒子が得られていると考えることができる。
上記縮合化合物粒子のSF2は、110であり、安定した粒子形状を有していた。
【0111】
(比較例1)
4−n−ドデシルベンゼンスルホン酸(直鎖DBSA) 1.20重量部
イオン交換水 200重量部
パルミチン酸 47重量部
ペンタエリスリトール 6.5重量部
上記成分を用いて実施例1と同様に粒子を作製し、粒子の中心径が350nm、標準偏差が0.33、融点が71℃の縮合化合物粒子分散液(2)を得た。SF2は140であり、粒子の融着が観測された。
【0112】
【表1】

【0113】
2)水中重縮合反応
(実施例2)
<水相>
3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸 1.3重量部
イオン交換水 200重量部
<油相>
1,9−ノナンジオール 16.0重量部
ドデカン二酸 23.0重量部
スチレン 5.0重量部
上記水相を70℃恒温槽中で混合して溶解した。一方、油相を混合し、120℃に加熱して融解した後、上記の水相混合液に投入し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)で8,000rpmで5分間乳化した後、さらに超音波バス中で5分乳化後、撹拌機を備えたリアクターに上記乳化物を投入し、窒素雰囲気下、70℃で24時間重縮合を実施した。
この樹脂粒子分散液に0.3重量部の過硫酸アンモニウムを5重量部のイオン交換水に溶解した物を添加し、窒素雰囲気下でさらに6時間重合を行った。
これにより粒子の中心径が310nm、標準偏差が0.25、融点が57℃、重量平均分子量が4,700のポリエステル樹脂粒子分散液(1)を得た。この粒子を実施例1と同様に乾燥し、SF2を測定したところ、SF2は115であった。
【0114】
(比較例2)
<水相>
ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA、Hard型、テイカ社製テイカパワーB120) 1.20重量部
イオン交換水 200重量部
<油相>
1,9−ノナンジオール 16.0重量部
ドデカン二酸 23.0重量部
スチレン 5.0重量部
上記材料を用いて実施例2と同様に重縮合粒子を作製した。これにより粒子の中心径が380nm、標準偏差が0.43、融点が56℃、重量平均分子量が2,900のポリエステル樹脂粒子分散液(2)を得た。この粒子を実施例1と同様に乾燥し、SF2を測定したところ、SF2は135で、粒子の融着による異型化が観測された。
【0115】
【表2】

【0116】
3)直接的チオエステル化反応(バルク)
(実施例3)
ラウリン酸 20重量部
ドデカンチオール 20.5重量部
3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸 0.25重量部(0.7mol%)
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターにを投入し、120℃で24時間チオエステル化を実施したところ、均一反応物を得た。得られた化合物をプロトンNMR測定し、カルボキシル基またはチオール基のピーク面積と、チオエステル基のピーク面積を比較することにより、収率を算出したところ、収率は91%であった。
【0117】
(比較例3)
ラウリン酸 20重量部
ドデカンチオール 20.5重量部
ペンタデシルベンゼンスルホン酸(PDBSA、Hard型、テイカ社製テイカパワーB150) 0.26重量部(0.7mol%)
上記材料を混合し、撹拌機を備えたのリアクターにを投入し、120℃で24時間チオエステル化を実施したところ、均一反応物を得た。得られた化合物をプロトンNMR測定し、カルボキシル基またはチオール基のピーク面積と、チオエステル基のピーク面積を比較することにより、収率を算出したところ、収率は62%であった。
【0118】
【表3】

【0119】
4)非結晶性樹脂重縮合(バルク)
(実施例4)
シクロヘキサンジカルボン酸 17.0重量部
ビスフェノールA エチレンオキサイド2モル付加物
16.0重量部(50mol%)
ビスフェノールS エチレンオキサイド2モル付加物
17.0重量部(50mol%)
3−フルオロ−4−ペンタデシルベンゼンスルホン酸
0.08重量部(0.1mol%)
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターにを投入し、120℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明な乳白色の非結晶性ポリエステル樹脂を得た。
GPCによる重量平均分子量 14,500
GPCによる数平均分子量 4,050
Tg(オンセット2nd) 64.3℃
このようにして得た樹脂を撹拌機及び冷却管に付いた三口フラスコに投入し、95℃に保ちながら1N NaOH水溶液を徐々に添加しながら撹拌を続けた。NaOH水溶液を総量で50重量部投入すると、樹脂はスラリー状を呈した。85℃に調整したイオン交換水180重量部の入ったフラスコ中に本スラリーを投入し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)で10分間乳化した後、さらに超高圧ホモジナイザー(吉田機械興業社製ナノマイザー)にて、10パス乳化し、その後分散液を氷冷することによりポリエステル樹脂粒子分散液(3)を得た。樹脂粒子のメジアン径は190nm、標準偏差は0.24であった。
【0120】
(比較例4)
シクロヘキサンジカルボン酸 17.0重量部
ビスフェノールA エチレンオキサイド2モル付加物
16.0重量部(50mol%)
ビスフェノールS エチレンオキサイド2モル付加物
17.0重量部(50mol%)
4−n−ドデシルベンゼンスルホン酸 0.07重量部(0.1mol%)
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターにを投入し、120℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明で淡黄色の非結晶性ポリエステル樹脂を得た。
GPCによる重量平均分子量 8,700
GPCによる数平均分子量 3,300
Tg(オンセット2nd) 59.5℃
実施例4と同様の方法でポリエステル樹脂粒子分散液(4)を作製したところ、樹脂粒子のメジアン径は180nm、標準偏差は0.46であった。
【0121】
(比較例5)
シクロヘキサンジカルボン酸 17.0重量部
ビスフェノールA エチレンオキサイド2モル付加物
16.0重量部(50mol%)
ビスフェノールS エチレンオキサイド2モル付加物
17.0重量部(50mol%)
4−n−ドデシルベンゼンスルホン酸 0.15重量部(0.2mol%)
上記材料を混合し、撹拌機を備えたリアクターにを投入し、120℃で24時間重縮合を実施したところ、均一透明で淡黄色の非結晶性ポリエステル樹脂を得た。
GPCによる重量平均分子量 11,500
GPCによる数平均分子量 3,880
Tg(オンセット2nd) 62.0℃
実施例4と同様の方法でポリエステル樹脂粒子分散液(5)を作製したところ、樹脂粒子のメジアン径は180nm、標準偏差は0.30であった。
【0122】
【表4】

【0123】
5)トナーの作製
<離型剤粒子分散液(W1)の調製>
・ポリエチレンワックス 30重量部
(東洋ペトロライト社製、Polywax725、融点103℃)
・カチオン性界面活性剤(花王社製、サニゾールB50) 3重量部
・イオン交換水 67重量部
上記成分をホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で95℃に加熱しながら十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザー)で分散処理し、離型剤粒子分散液(W1)を調整した。得られた分散液中の離型剤粒子の個数平均粒子径D50nは460nmであった。その後イオン交換水を加えて、分散液の固形分濃度を30%に調整した。
【0124】
<シアン顔料分散液の調製>
・シアン顔料(大日精化工業社製、C.I.Pigment Blue 15:3)
20重量部
・アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC) 2重量部
・イオン交換水 78重量部
上記成分を、混合溶解し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)5分と超音波バスにより10分間分散し、シアン顔料分散液を得た。分散液中の顔料の数平均粒子径D50nは120nmであった。その後イオン交換水を加えて分散液の固形分濃度を20%に調整した。
【0125】
<樹脂粒子分散液Aの調製:非結晶性ビニル系樹脂ラテックス>
スチレン 460重量部
n−ブチルアクリレート 140重量部
アクリル酸 12重量部
ドデカンチオール 9重量部
前記成分を混合溶解して溶液を調製した。
他方、アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス)12重量部をイオン交換水250重量部に溶解し、前記溶液を加えてフラスコ中で分散し乳化した。(単量体乳化液A)
さらに、同じくアニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス)1重量部を555重量部のイオン交換水に溶解し、重合用フラスコに仕込んだ。
重合用フラスコを密栓し、還流管を設置し、窒素を注入しながら、ゆっくりと撹拌しながら、75℃まで重合用フラスコをウオーターバスで加熱し、保持した。
過硫酸アンモニウム9重量部をイオン交換水43重量部に溶解し、重合用フラスコ中に定量ポンプを介して、20分かけて滴下した後、単量体乳化液Aをやはり定量ポンプを介して200分かけて滴下した。
その後、ゆっくりと撹拌を続けながら重合用フラスコを75℃に、3時間保持して重合を終了した。
これにより粒子のメジアン径が290nm、ガラス転移点が52.0℃、重量平均分子量が30,000、固形分量が42%のアニオン性樹脂粒子分散液Aを得た。
【0126】
(トナー実施例1:縮合化合物実施例1を使用したトナーの作製)
<シアントナー(トナーC1)の作製>
・縮合化合物粒子分散液(1) 50重量部
・樹脂粒子分散液A 90重量部
・シアン顔料分散液(C1) 60重量部
・ポリ塩化アルミニウム10重量%水溶液 15重量部
(浅田化学社製、PAC1000W)
・1%硝酸水溶液 3重量部
上記成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中で、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて5,000rpmで3分間分散した後、前記フラスコに磁力シールを有した撹拌装置、温度計とpH計を具備した蓋をしてから、加熱用マントルヒーターをセットし、フラスコ中の分散液全体が撹拌される最低の回転数に適宜調節して撹拌しながら62℃まで1℃/1minで加熱し、62℃で30分間保持し、凝集粒子の粒径をコールターカウンター(日科機社製、TA II)で確認した。昇温停止後ただちに樹脂粒子分散液(L1)を50重量部追加し、30分間保持したのち、系内のpHが6.5になるまで水酸化ナトリウム水溶液を加えてから、1℃/1minで97℃まで加熱した。昇温後、硝酸水溶液を加えて系内のpHを5.0にして、10時間保持して凝集粒子を加熱融合した。この後系内を50℃まで降温、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを12.0に調節して10分間保持した。その後フラスコから取り出し、イオン交換水を用いて充分にろ過、通水洗浄した後、さらに固形分量が10重量%となるようにイオン交換水中に分散し、硝酸を加えてpH3.0で10分間撹拌した後、再びイオン交換水を用いて充分にろ過、通水洗浄して得られたスラリーを凍結乾燥してシアントナー(トナーC1)を得た。このようにして作製したトナーの累積体積平均粒径D50は5.7μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.23、トナー粒子の形状係数は128であった。
さらに、透過型電子顕微鏡(TEM)装置にて50個のトナーに対して断面を確認したところ、離型剤の平均ドメイン径は0.7μmであった。
トナーの累積体積平均粒径D50と体積平均粒度分布指標GSDvはレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)、また形状係数はルーゼックスによる形状観察でそれぞれ求めた。
【0127】
このシアントナーに、ヘキサメチルジシラザン(以下、「HMDS」と略す場合がある)で表面疎水化処理した一次粒子平均粒径40nmのシリカ(SiO2)微粒子と、メタチタン酸とイソブチルトリメトキシシランの反応生成物である一次粒子平均粒径20nmのメタチタン酸化合物微粒子とを、それぞれ1重量%づつ添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、シアン外添トナーを作製した。
ついで、これらトナーそれぞれ5重量部とポリメタクリル酸メチル(Mw78,000)でキャリアの重量に対し1.5重量%樹脂被覆されたフェライト粒子(平均粒子径35μm)100重量部を混合して二成分現像剤を調整した。
【0128】
得られた現像剤を用い、Docu Centre Color500改造機(定着機構成はヒートロールとベルト、ニップ幅:16mm)で、OHP(富士ゼロックス オフィスサプライ社製:XEROX FILM)にトナー画像を3.5mg/cm2形成して、定着温度が180℃、プロセススピードが60mm/秒となるように調整して定着を行った。得られた定着像をヘイズメータ(直読式ヘーズコンピューター HGM−2DP、スガ試験機(株)製)を用いて透過度(HAZE値)を求めた。一般にHAZE値が35%以下である場合、実用において十分なレベルの透過度を有していると考えられる。本現像剤の透過度は24%であり、離型剤の良好な分散状態が示唆された。
【0129】
(トナー比較例1:縮合化合物比較例1を使用したトナーの作製)
トナー実施例において縮合化合物粒子(1)に代えて(2)を用いた以外は、同様の方法でトナーを作製した。このようにして作製したトナーの累積体積平均粒径D50は5.8μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.24、トナー粒子の形状係数は129であった。またTEM観察による離型剤の平均ドメイン径は1.8μmであり、トナー実施例1と同様にして求めた画像HAZE値は42%であり、透過度が悪化していることが明らかとなった。
【0130】
【表5】

【0131】
(トナー実施例2:ポリエステル樹脂粒子分散液(1)を使用したトナー)
・ポリエステル樹脂粒子分散液(1) 100重量部
・樹脂粒子分散液A 60重量部
・離型剤粒子分散液(W1) 33重量部
・シアン顔料分散液 60重量部
・ポリ塩化アルミニウム10重量%水溶液 15重量部
(浅田化学社製、PAC100W)
・1%硝酸水溶液 3重量部
上記の材料を用いて、トナー実施例1と同様の方法でトナーを作製した。このようにして作製したトナーの累積体積平均粒径D50は5.8μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.24、トナー粒子の形状係数は127であった。
【0132】
(トナー比較例2:ポリエステル樹脂粒子分散液(2)を使用したトナー)
トナー実施例2において、ポリエステル樹脂粒子分散液を(1)に代えて(2)にした以外は同様の材料と方法でトナー比較例2を作製した。このようにして作製したトナーの累積体積平均粒径D50は6.0μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、トナー粒子の形状係数は125であった。
【0133】
(トナー実施例3:ポリエステル樹脂粒子分散液(3)を使用したトナー)
・ポリエステル樹脂粒子分散液(3) 120重量部
・樹脂粒子分散液A 40重量部
・離型剤粒子分散液(W1) 33重量部
・シアン顔料分散液 60重量部
・ポリ塩化アルミニウム10重量%水溶液 15重量部
(浅田化学社製、PAC100W)
・1%硝酸水溶液 3重量部
上記の材料を用いて、トナー実施例1と同様の方法でトナーを作製した。このようにして作製したトナーの累積体積平均粒径D50は5.8μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.22、トナー粒子の形状係数は129であった。
【0134】
(トナー比較例3:ポリエステル樹脂粒子分散液(4)を使用したトナー)
トナー実施例3において、ポリエステル樹脂粒子分散液を(3)に代えて(4)にした以外は同様の材料と方法でトナー比較例2を作製した。このようにして作製したトナーの累積体積平均粒径D50は5.9μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.26、トナー粒子の形状係数は128であった。
【0135】
(トナー比較例4:ポリエステル樹脂粒子分散液(5)を使用したトナー)
トナー実施例3において、樹脂粒子分散液を(3)に代えて(5)にした以外は同様の材料と方法でトナー比較例2を作製した。このようにして作製したトナーの累積体積平均粒径D50は5.9μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.24、トナー粒子の形状係数は128であった。
【0136】
<帯電安定性評価、及び、画質評価>
富士ゼロックス社製Docu Centre Color500改造機により、トナー実施例2及び3、比較例2〜4の現像剤に関して、3万枚の連続走行試験を行い、初期、及び、3万枚連続走行後のトナーの帯電特性をブローオフ方法(東芝ケミカル社製、TB200、現像剤に対するトナー重量5%、ブロー気体は空気、ブロー圧は1.0kg/cm2、ブロー時間は30秒)により測定した。
また、背景の汚れに関しても初期及び3万枚連続走行後の画質について目視評価した。
【0137】
<定着強度>
画像強度の評価は、次の方法により行った。富士ゼロックス社製 Docu Centre Color500CP改造機を用い、ecolor081A4紙(富士ゼロックスオフィスサプライ社製)上に、未定着のソリッドサンプルを作製した。ソリッドサンプルにおけるトナーの単位面積あたりの重量が、0.7〜0.8mg/cm2になるように調整した。作製した定着サンプルを半分に曲げた後、500g程度の過重を有するロール(外形600mm 真鍮製)にて、一定のスピードで、この折り曲げた所の上を転がし、定着画像の折り目をウエスで、軽くこすり、像の欠落状態を観察した。
評価は以下の基準により、官能評価で実施した。
○:折り目がつくが、像の欠落状態はないか、又は、低い。
△:白いかすかな折り目がみられ、部分的に像が欠落している。
×:白い帯状の折り目が目立ち、像の欠落が半分以上見られる。
【0138】
【表6】

【0139】
(実施例5)
3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸の代わりに2−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸を用いた以外は、前記水中縮合反応の実施例1と同様な方法で縮合化合物粒子分散液(6)を得た。得られた縮合化合物粒子分散液(6)は、メジアン径及び標準偏差に優れ、粒子の融着や異型化のないものであった。
さらに、縮合化合物粒子分散液(1)の代わりに縮合化合物粒子分散液(6)を用いた以外は、前記トナー実施例1と同様な方法でトナーを作製した。得られたトナーはHAZE値に優れたものであった。
また、3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸の代わりに2−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸を用いた以外は、前記水中重縮合反応の実施例2と同様な方法でポリエステル樹脂粒子分散液(6)を得た。得られたポリエステル樹脂粒子分散液(6)は、重量平均分子量、メジアン径及び標準偏差に優れ、粒子の融着や異型化のないものであった。
さらに、ポリエステル樹脂粒子分散液(1)の代わりにポリエステル樹脂粒子分散液(6)を用いた以外は、前記トナー実施例2と同様な方法でトナーを作製した。得られたトナーは帯電安定性評価、画質評価及び画像強度に優れたものであった。
また、3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸の代わりに2−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸を用いた以外は、前記実施例3と同様な方法で直接的チオエステル化反応を行ったところ、収率よくチオエステル化が進行した。
【0140】
(実施例6)
3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸の代わりに3,5−ジフルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸を用いた以外は、前記水中縮合反応の実施例1と同様な方法で縮合化合物粒子分散液(7)を得た。得られた縮合化合物粒子分散液(7)は、メジアン径及び標準偏差に優れ、粒子の融着や異型化のないものであった。
さらに、縮合化合物粒子分散液(1)の代わりに縮合化合物粒子分散液(7)を用いた以外は、前記トナー実施例1と同様な方法でトナーを作製した。得られたトナーはHAZE値に優れたものであった。
また、3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸の代わりに3,5−ジフルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸を用いた以外は、前記水中重縮合反応の実施例2と同様な方法でポリエステル樹脂粒子分散液(7)を得た。得られたポリエステル樹脂粒子分散液(7)は、重量平均分子量、メジアン径及び標準偏差に優れ、粒子の融着や異型化のないものであった。
さらに、ポリエステル樹脂粒子分散液(1)の代わりにポリエステル樹脂粒子分散液(7)を用いた以外は、前記トナー実施例2と同様な方法でトナーを作製した。得られたトナーは帯電安定性評価、画質評価及び画像強度に優れたものであった。
また、3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸の代わりに3,5−ジフルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸を用いた以外は、前記実施例3と同様な方法で直接的チオエステル化反応を行ったところ、収率よくチオエステル化が進行した。
【0141】
(比較例6)
3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸の代わりに2−フルオロ−4−ヘプチルベンゼンスルホン酸を用いた以外は、前記水中縮合反応の実施例1と同様な方法で縮合化合物粒子分散液(8)を得た。得られた縮合化合物粒子分散液(8)は、実施例1、5及び6に比べ、メジアン径及び標準偏差に劣り、粒子の融着や異型化が見られた。
さらに、縮合化合物粒子分散液(1)の代わりに縮合化合物粒子分散液(8)を用いた以外は、前記トナー実施例1と同様な方法でトナーを作製した。得られたトナーは実施例1、5及び6HAZE値に劣ったものであった。
また、3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸の代わりに2−フルオロ−4−ヘプチルベンゼンスルホン酸を用いた以外は、前記水中重縮合反応の実施例2と同様な方法でポリエステル樹脂粒子分散液(8)を得た。得られたポリエステル樹脂粒子分散液(8)は、実施例1、5及び6に比べ、重量平均分子量、メジアン径及び標準偏差に劣り、粒子の融着や異型化が見られた。
さらに、ポリエステル樹脂粒子分散液(2)の代わりにポリエステル樹脂粒子分散液(8)を用いた以外は、前記トナー実施例2と同様な方法でトナーを作製した。得られたトナーは実施例2、5及び6に比べ、帯電安定性評価、画質評価及び画像強度に劣ったものであった。
また、3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸の代わりに2−フルオロ−4−ヘプチルベンゼンスルホン酸を用いた以外は、前記実施例3と同様な方法で直接的チオエステル化反応を行ったところ、実施例1、5及び6に比べ、収率が悪化した。
【0142】
(比較例7)
3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸の代わりに2−フルオロ−4−ドコシルベンゼンスルホン酸を用いた以外は、前記水中縮合反応の実施例1と同様な方法で縮合化合物粒子分散液(9)を得た。得られた縮合化合物粒子分散液(9)は、実施例1、5及び6に比べ、メジアン径及び標準偏差に劣り、粒子の融着や異型化が見られた。
さらに、縮合化合物粒子分散液(1)の代わりに縮合化合物粒子分散液(9)を用いた以外は、前記トナー実施例1と同様な方法でトナーを作製した。得られたトナーは実施例1、5及び6HAZE値に劣ったものであった。
また、3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸の代わりに2−フルオロ−4−ドコシルベンゼンスルホン酸を用いた以外は、前記水中重縮合反応の実施例2と同様な方法でポリエステル樹脂粒子分散液(9)を得た。得られたポリエステル樹脂粒子分散液(9)は、実施例1、5及び6に比べ、重量平均分子量、メジアン径及び標準偏差に劣り、粒子の融着や異型化が見られた。
さらに、ポリエステル樹脂粒子分散液(2)の代わりにポリエステル樹脂粒子分散液(9)を用いた以外は、前記トナー実施例2と同様な方法でトナーを作製した。得られたトナーは実施例2、5及び6に比べ、帯電安定性評価、画質評価及び画像強度に劣ったものであった。
また、3−フルオロ−4−ドデシルベンゼンスルホン酸の代わりに2−フルオロ−4−ドコシルベンゼンスルホン酸を用いた以外は、前記実施例3と同様な方法で直接的チオエステル化反応を行ったところ、実施例1、5及び6に比べ、収率が悪化した。
【0143】
以下の表7に、トナーに関する実施例5及び6、並びに、比較例6及び7の評価結果を示す。
【0144】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物であることを特徴とする
ブレンステッド酸化合物。
【化1】

(式(I)中、RHLはCl又はFを表し、R1は炭素数8〜20のアルキル基を表し、nは1〜4の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載のブレンステッド酸化合物を触媒として用いて縮合性組成物を縮合する工程を含む
縮合化合物の製造方法。
【請求項3】
少なくとも縮合化合物を含む粒子が分散媒に分散している縮合化合物粒子分散液であって、
前記縮合化合物が、請求項2に記載の製造方法により製造された縮合化合物を含む
縮合化合物粒子分散液。
【請求項4】
請求項1に記載のブレンステッド酸化合物を触媒として用いて重縮合性単量体を重縮合する工程を含む
結着樹脂の製造方法。
【請求項5】
少なくとも結着樹脂を含む樹脂粒子が分散媒に分散している樹脂粒子分散液であって、
前記結着樹脂が、請求項4に記載の製造方法により製造された結着樹脂を含む
樹脂粒子分散液。
【請求項6】
縮合化合物粒子分散液又は樹脂粒子分散液を少なくとも含む分散液中で該粒子を凝集して凝集粒子を得る工程、及び、
該凝集粒子を加熱して融合させる工程を含む静電荷像現像トナーの製造方法であって、
前記縮合化合物粒子分散液が請求項3に記載の縮合化合物粒子分散液である、又は、前記樹脂粒子分散液が請求項5に記載の樹脂粒子分散液である
静電荷像現像トナーの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法により製造された静電荷像現像トナー。
【請求項8】
請求項7に記載の静電荷像現像トナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤。
【請求項9】
潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、
前記潜像保持体表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、
前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程、及び、
前記被転写体表面に転写されたトナー像を熱定着する定着工程を含む画像形成方法であって、
前記トナーとして請求項7に記載の静電荷像現像トナー、又は、前記現像剤として請求項8に記載の静電荷像現像剤を用いる
画像形成方法。

【公開番号】特開2007−326816(P2007−326816A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159561(P2006−159561)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】