説明

ブレーキ制御装置

【課題】ブレーキ制御装置において、電動モータの回転位置を検出するレゾルバの出力信号をデジタル信号に変換するRD変換回路の異常を検知する。
【解決手段】ブレーキペダル19の操作に基づき、電動モータ22を制御し、ボールネジ機構23を介してプライマリピストン8を推進してマスタシリンダ2で液圧を発生させる。このとき、マスタシリンダ2の液圧の反力を入力ピストン17を介してブレーキペダル19にフィードバックする。電動モータ22の回転位置を検出するレゾルバ25の出力信号をRD変換回路によってデジタル信号に変換してマスタ圧制御ユニット4によって処理する。プライマリピストン8を移動させる制御指令に対して、電動モータ22に供給される駆動電流がプライマリピストン8を逆方向に移動させるものであることを検知したとき、RD変換回路の異常を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキ装置の作動を制御するブレーキ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のブレーキ装置において、負圧アクチュエータや電動アクチュエータ、ホイール圧制御機構等を制御して、運転者によるブレーキペダルの操作力を補助する倍力制御及びブレーキアシスト制御、あるいは、路面状態及び走行状態等に応じて車輪毎に制動力を調整することにより、制動時の車輪のロックを防止するアンチロック制御、アンダーステア、オーバーステアを抑制して操縦安定性を高める車両安定性制御等の種々な制御を行なうブレーキ制御装置が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、運転者によるブレーキペダルの操作量を検出し、コントローラにより、ブレーキペダルに連結された入力部材とマスタシリンダのピストンとの相対変位に基づき、ピストンを駆動する電動モータの作動を制御することにより、上述の倍力制御、ブレーキアシスト制御等の種々のブレーキ制御を実行する電動倍力装置が記載されている。電動倍力装置においては、電動モータのロータの回転位置を検出するために、レゾルバ、ロータリエンコーダ等の回転位置センサが利用されている。レゾルバは、車載時の耐環境性に優れており、電動倍力装置の回転位置センサに適しているが、出力信号がアナログ信号であるため、出力信号を変換回路によってデジタル信号に変換してコントローラで処理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−112426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レゾルバのアナログ信号をデジタル信号に変換する際、変換回路等の信号変換機構に異常が生じて正確な回転情報が得られなくなることがある。この場合、信号変換機構の異常を検出して補正処理を行うことにより、ある程度対処可能であるが、信号変換機構の全ての異常に対して、補正処理が可能なわけではない。信号変換機構の異常が補正不可能な場合には、正常な制御を行うことはできない。
【0006】
本発明は、レゾルバの出力信号をデジタル信号に変換する信号変換機構の異常を検出し得るブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、ピストンの推進によってブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダと、電動モータと、該電動モータのロータの回転運動を直線運動に変換して前記マスタシリンダのピストンを推進する回転−直動変換機構と、前記ロータの回転位置を検出するレゾルバと、前記レゾルバの出力信号をデジタル信号に変換する信号変換機構と、所与の制御指令及び前記信号変換機構によって変換した前記レゾルバの出力信号に基づき、駆動電流を供給して前記電動モータを制御するコントローラとを備えたブレーキ制御装置において、前記ピストンを移動させる制御指令に対して、前記電動モータに供給される駆動電流が前記ピストンを逆方向に移動させるものであることを検知したとき、前記信号変換機構の異常を判定する異常判定手段を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るブレーキ制御装置によれば、レゾルバの出力信号をデジタル信号に変換する信号変換機構の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るブレーキ制御装置が組込まれた車両のブレーキシステムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るブレーキ制御装置の概略構成を示す図である。
【図3】図1に示すブレーキ制御装置のマスタ圧制御装置の概略構成を示す回路図である。
【図4】図2に示すブレーキ制御装置において、ブレーキペダルが踏込まれていない状態で異常検出を実行するための制御を示すフローチャートである。
【図5】図4に示す制御による異常検出のタイムチャートである。
【図6】図2に示すブレーキ制御装置において、ブレーキペダルが踏込まれている状態で異常検出を実行するための制御を示すフローチャートである。
【図7】図6に示す制御による異常検出のタイムチャートである。
【図8】図2に示すブレーキ制御装置において、ブレーキペダルが踏込まれていない状態で異常検出を実行するための制御の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態に係るブレーキ制御装置が組込まれた自動車のブレーキシステムの概略構成を図1に示し、本実施形態に係るブレーキ制御装置の概略構成を図2に示す。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るブレーキ制御装置1は、左前輪Wa、右後輪Wb、右前輪Wc、左後輪Wdの4輪の制動力を制御するためのものである。ブレーキ制御装置1は、マスタシリンダ2と、マスタシリンダ2に一体に組込まれたマスタ圧制御機構3と、マスタ圧制御機構3の作動を制御するコントローラであるマスタ圧制御ユニット4と、各車輪Wa、Wb、Wc、Wdに装着された液圧ブレーキBa、Bb、Bc、Bdのホイールシリンダに供給する液圧を制御するホイール圧制御機構5と、このホイール圧制御機構5の作動を制御するホイール圧制御ユニット6とを備えている。マスタ圧制御装置4及びホイールある制御ユニット5を含む車載制御機器は、車載通信系統Nを介して相互接続され、また、また、車載電力系統Lを介して電源装置Eに接続されている。
【0011】
図2に示すように、マスタシリンダ2は、タンデム型マスタシリンダであって、ブレーキ液が充填されたシリンダ7内の開口側にプライマリピストン8(ピストン)が挿入され、底部側にセカンダリピストン9が挿入され、プライマリピストン8とセカンダリピストン9との間にプライマリ室10を形成し、セカンダリピストン9とシリンダ7の底部との間にセカンダリ室11を形成している。そして、プライマリピストン8の前進により、プライマリ室10内のブレーキ液を加圧すると共に、セカンダリピストン9を前進させてセカンダリ室11内のブレーキ液を加圧して、プライマリポート12及びセカンダリポート13からホイール圧制御機構5を介して液圧ブレーキBa、Bb、Bc、Bdのホイールシリンダにブレーキ液を供給する。プライマリ室10及びセカンダリ室11には、リザーバ14が接続されている。リザーバ14は、プライマリピストン8及びセカンダリピストン9が原位置にあるとき、プライマリ10室及びセカンダリ室11に連通して、マスタシリンダ2にブレーキ液を適宜補充する。プライマリピストン8及セカンダリピストン9は、戻しバネ15、16によって原位置側に付勢されている。
【0012】
このように、プライマリピストン8及びセカンダリピストン9の2つのピストンによってプライマリポート12及びセカンダリポート13から2系統の液圧回路にブレーキ液を供給することにより、万一、一方の液圧回路が失陥した場合でも、他方の液圧回路によって液圧を供給することでき、制動力を確保することができる。
【0013】
プライマリピストン8の中心部には、入力ピストン17が摺動可能かつ液密的に貫通され、入力ピストン17の先端部がプライマリ室10内に挿入されている。入力ピストン17の後端部には、入力ロッド18が連結され、入力ロッド18はマスタ圧制御機構3を貫通して外部へ伸ばされ、その端部にブレーキペダル19が連結されている。プライマリピストン8と入力ピストン17との間には、一対の中立バネ20、21が介装され、プライマリピストン8及び入力ピストン17は、中立バネ20、21のバネ力によって中立位置に弾性的に保持され、これらの軸方向の相対変位に対して中立バネ20、21のバネ力が作用するようになっている。
【0014】
マスタ圧制御機構3は、プライマリピストン8を駆動するアクチュエータである電動モータ22と、プライマリピストン8と電動モータ22との間に介装された回転−直動変換機構であるボールネジ機構23及び減速機構であるベルト減速機構24とを備えている。電動モータ22は、その回転位置を検出する回転位置センサとしてレゾルバ25を備え、レゾルバ25の出力信号に基づき、マスタ圧制御装置4から供給される駆動電流によって作動して、所望の回転位置が得られるようになっている。電動モータ22は、例えば公知のDCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ等とすることができるが、本実施形態では、電動モータ22として、小型で大トルクが得られ、制御性、静粛性、耐久性、車載性に優れた三相DCブラシレスモータを採用している。
【0015】
ボールネジ機構23は、入力ロッド18が挿入された中空の直動部材26と、直動部材26が挿入された円筒状の回転部材27と、これらの間に形成されたネジ溝に装填された複数の転動体であるボール28(鋼球)とを備え、直動部材26の前端部がプライマリピストン8の後端部に当接し、回転部材27が軸受29によってシリンダ7に回転可能に支持されている。そして、電動モータ22によってベルト減速機構24を介して回転部材27を回転させることにより、ネジ溝内をボール28が転動し、直動部材26が直線運動してプライマリピストン8を移動させるようになっている。直動部材26は、戻しバネ30によって後退位置側に付勢されている。
【0016】
なお、回転−直動変換機構は、電動モータ22(すなわち減速機構24)の回転運動を直線運動に変換してプライマリピストン8に伝達するものであれば、ラックアンドピニオン機構等の他の機構を用いることができるが、本実施形態では、遊びの少なさ、効率、耐久性等の観点から、ボールネジ機構23を採用している。ボールネジ機構23は、バックドライバビリティを有しており、直動部材26の直線運動によって回転部材27を回転させることができる。また、直動部材26は、プライマリピストン8に後方から当接し、プライマリピストン8が直動部材26から離れて単独で前進できるようになっている。これにより、万一、電動モータ22が断線等によって作動不能になった場合、直動部材26が戻しバネ30のバネ力によって後退位置に戻され、このとき、プライマリピストン8は単独で移動できるので、ブレーキの引き摺りを防止することができ、また、ブレーキペダル19によって入力ピストン17を操作し、さらに、入力ロッド18を介してプライマリピストン8を操作することにより、液圧を発生させることができる。
【0017】
ベルト減速機構24は、電動モータ22の出力軸に取付けられた駆動プーリ31と、ボールネジ機構23の回転部材27の周囲に取付けられた従動プーリ32と、これらの間に巻装されたベルト33とを含み、電動モータ22の出力軸の回転を所定の減速比で減速してボールネジ機構23に伝達するものである。ベルト減速機構24に、歯車減速機構等の他の減速機構を組み合わせてもよい。ベルト減速機構24の代りに、公知の歯車減速機構、チェーン減速機構、差動減速機構等を用いることができるが、また、電動モータ22によって充分大きなトルクが得られる場合には、減速機構を省略して、電動モータ22によって回転−直動変換機構を直接駆動するようにしてもよい。
【0018】
入力ロッド18には、ブレーキ操作量検出装置34が連結されている。ブレーキ操作量検出装置34は、少なくとも入力ロッド18の位置又は変位量(ストローク)を検出できるもの(ストローク検出手段)であり、入力ロッド18の変位センサを含む複数の位置センサと、運転者によるブレーキペダル19の踏力を検出する力センサとを含むものであってもよい。
【0019】
ホイール圧制御機構5は、マスタシリンダ2のプライマリポート12からの液圧を左前輪Wa及び右後輪Wbのブレーキ装置Ba、Bbに供給するための第1液圧回路5Aと、セカンダリポート13からの液圧を右前輪Wc及び左後輪Wdのブレーキ装置Bc、Bdに供給するための第2液圧回路5Bとからなる2系統の液圧回路を備えている。本実施形態では、ブレーキ装置Ba〜Bdは、液圧をホイールシリンダに供給してピストンを前進させ、ブレーキパッドを車輪と共に回転するディスクロータに押圧して制動力を発生させる液圧式ディスクブレーキとしているが、公知のドラムブレーキ等の他の液圧式ブレーキでもよい。
【0020】
第1液圧回路5Aと第2液圧回路5Bとは同様の構成であり、また、各車輪Wa〜Wdのブレーキ装置Ba〜Bdに接続された液圧回路の構成は同様の構成であり、以下の説明において参照符号の添え字A及B並びにa乃至dは、それぞれ、第1液圧回路5A及び第2液圧回路5B、並びに、各車輪Wa乃至Wdに対応することを示している。
【0021】
ホイール圧制御機構5には、マスタシリンダ2から各車輪Wa〜Wdのブレーキ装置Ba〜Bdのホイールシリンダへの液圧の供給を制御する電磁開閉弁である供給弁35A、35Bと、ブレーキ装置Ba〜Bdへの液圧の供給を制御する電磁開閉弁である増圧弁36a〜36dと、ブレーキ装置Ba〜Bdから液圧を解放するためのリザーバ37A、37Bと、ブレーキ装置Ba〜Bdからリザーバ37A、37Bへの液圧の解放を制御する電磁弁開閉弁である減圧弁38a〜38dと、ブレーキ装置Ba〜Bdに液圧を供給するためポンプ39A、39Bと、ポンプ39A、39Bを駆動するポンプモータ40と、マスタシリンダ2からポンプ39A、39Bの吸込み側への液圧の供給を制御する電磁開閉弁である加圧弁41A、41Bと、ポンプ39A、39Bの下流側から上流側への逆流を防止するための逆止弁42A、42B、43A、43B、44A、44Bと、マスタシリンダ2のプライマリポート12及びセカンダリポート13の液圧を検出する液圧センサ45A、45Bとを備えている。
【0022】
そして、ホイール圧制御ユニット6によって供給弁35A、35B、増圧弁36a〜36d、減圧弁38a〜38d、加圧弁41A、41B及びポンプモータ40の作動を制御する。このとき、供給弁35A、35B及び増圧弁36a〜36dを開き、減圧弁38a〜38d、加圧弁41A、41Bを閉じることにより、マスタシリンダ2から各車輪Wa〜Wdのブレーキ装置Ba〜Bdに液圧を供給する。減圧弁38a〜38dを開き、供給弁35A、35B、増圧弁36a〜36d及び加圧弁41A、41Bを閉じることにより、ブレーキ装置Ba〜Bdの液圧をリザーバ37A、37Bに解放して減圧する。増圧弁36a〜36d及び減圧弁38a〜38dを閉じることにより、ブレーキ装置Ba〜Bdの液圧を保持する。増圧弁36a〜36dを開き、供給弁35A、35B、減圧弁38a〜38d及び加圧弁41A、41Bを閉じて、ポンプモータ40を作動することにより、マスタシリンダ2の液圧にかかわらず、ブレーキ装置Ba〜Bdの液圧を増圧する。また、加圧弁41A、41B及び増圧弁36a〜36dを開き、減圧弁38a〜38d及び供給弁35A、35Bを閉じて、ポンプモータ40を作動することにより、マスタシリンダ2からの液圧をポンプ42A、42Bによって更に加圧してブレーキ装置Ba〜Bdに供給する。
【0023】
これにより、各種ブレーキ制御を実行することができる。例えば、制動時に接地荷重等に応じて各車輪に適切に制動力を配分する制動力配分制御、制動時に各車輪の制動力を自動的に調整して車輪のロックを防止するアンチロックブレーキ制御、走行中の車輪の横滑りを検知して各車輪に適宜自動的に制動力を付与することにより、アンダーステア及びオーバーステアを抑制して車両の挙動を安定させる車両安定性制御、坂道(特に上り坂)において制動状態を保持して発進を補助する坂道発進補助制御、発進時等において車輪の空転を防止するトラクション制御、先行車両に対して一定の車間を保持する車両追従制御、走行車線を保持する車線逸脱回避制御、障害物との衝突を回避する障害物回避制御等を実行することができる。
【0024】
なお、ポンプ39A、39Bとしては、例えばプランジャポンプ、トロコイドポンプ、ギヤポンプ等の公知の液圧ポンプを用いることができるが、車載性、静粛性、ポンプ効率等を考慮するとギヤポンプとすることが望ましい。ポンプモータ40としては、例えばDCモータ、DCブラシレスモータ、ACモータ等の公知のモータを用いることができるが、制御性、静粛性、耐久性、車載性等の観点からDCブラシレスモータが望ましい。
【0025】
また、ホイール圧制御機構5の電磁開閉弁の特性は、使用態様に応じて適宜設定することができるが、供給弁35A、35B及び増圧弁36a〜36dを常開弁とし、減圧弁38a〜38d及び加圧弁41A、41Bを常閉弁とすることにより、ホイール圧制御ユニット6からの制御信号がない場合に、マスタシリンダ12からブレーキ装置Ba〜Bdに液圧を供給することができるので、フェイルセーフ及び制御効率の観点から、このような構成とすることが望ましい。
【0026】
次に、マスタ圧制御ユニット4について説明する。マスタ圧制御ユニット4の回路構成の一例を図3に示す。
図3に示すように、マスタ圧制御ユニット4は、中央処理ユニット(CPU)46と、電動モータ22(三相DCブラシレスモータ)に駆動電流を出力する三相モータ駆動回路47と、マスタ圧制御機構3のレゾルバ25(回転位置センサ)、変位センサを含むペダル操作量検出装置34、温度センサ48(図3にのみ示す)、並びに、マスタシリンダ2のプライマリ室10及びセカンダリ室11の圧力を検出する圧力センサ45A、45Bからの各種検出信号を中央処理ユニット46に受入れるための回転角検出センサインタフェイス49、温度センサインタフェイス50、変位センサインタフェイス51、51及び圧力センサインタフェイス52と、ホイール圧制御ユニット6を含む車載器機からのCAN信号を受入れるためのCAN通信インタフェイス53と、中央処理ユニット46(CPU)が処理を実行するための各種情報を格納した記憶装置54(EEPROM)と、中央処理ユニット46に安定電力を供給する第1及び第2電源回路55、56と、中央処理ユニット46並びに第1及び第2電源ユニット55、56の異常を監視する監視用制御回路57と、フェイルセーフリレー58及びECU電源リレー59と、フィルタ回路60とを備えている。
【0027】
中央処理ユニット46は、レゾルバ25、操作量検出装置34、温度センサ48及び圧力センサ45A、45B等からの各種検出信号、ホイール圧制御ユニット6を含む各種車載器機等からのCAN信号による各種情報、並びに、記憶装置54(EEPROM)の記憶情報等に基づき、これらを所定の論理規則によって処理して、三相モータ駆動回路47に指令信号を出力して電動モータ22の作動を制御する。
【0028】
車載の電源ライン61からECU電源リレー59を介して第1及び第2電源回路55、56に電力を供給する。このとき、ECU電源リレー59は、CAN通信インタフェイス53によるCAN信号の受信、又は、イグニッションスイッチ、ブレーキスイッチ、ドアスイッチ等からの所定の起動信号W/Uの受信のいずれかを検知することにより、第1及び第2電源回路55、56に電力を供給する。また、電源ライン61からフィルタ回路60及びフェイルセーフリレー58を介して三相モータ駆動回路47に電力を供給する。このとき、フィルタ回路60によって三相モータ駆動回路47に供給される電力のノイズを除去する。
【0029】
三相モータ駆動回路47の三相出力の各相は、相電流モニタ回路47A及び相電圧モニタ回路47Bによって監視されている。中央処理ユニット46は、これらの監視値及び記憶装置54に記憶された故障情報等に基づき、マスタ圧制御ユニット4の故障診断を実行し、故障ありと判断したとき、故障信号を監視用制御回路57に出力する。監視用制御回路57は、中央処理ユニット46からの故障信号、第1及び第2電源回路55、56の電圧等の各種作動情報に基づき、異常時には、フェイルセーフリレー58を作動させて三相モータ駆動回路47への電力の供給を遮断する。
【0030】
ブレーキ制御装置1が搭載された車両は、回生制動システムRを備えている。回生制動システムRは、減速時及び制動時等に車輪の回転によって発電機(電動モータ)を駆動することにより、運動エネルギーを電力として回収する。回生制動システムRは、CAN信号ラインに接続されており、CAN通信インタフェイス53を介してマスタ圧制御ユニット4に接続されている。
【0031】
次に、マスタ圧制御ユニット4によるマスタ圧制御機構3の制御について説明する。
操作量検出装置34によって検出したブレーキペダル19の操作量(変位量、踏力等)に基づき、電動モータ22を作動させてプライマリピストン8の位置を制御して液圧を発生させる。このとき、入力ピストン17に作用する液圧による反力が入力ロッド18を介してブレーキペダル19にフィードバックされる。そして、プライマリピストン8と入力ピストン17との受圧面積比及び相対変位によって、ブレーキペダル19の操作量と発生液圧との比である倍力比を調整することができる。
【0032】
例えば、入力ピストン17の変位に対して、プライマリピストン8を追従させ、これらの相対変位が0になるように相対変位制御することにより、入力ピストン17とプライマリピストン8との受圧面積比によって決まる一定の倍力比を得ることができる。また、入力ピストン17の変位に対して、比例ゲインを乗じて、入力ピストン17とプライマリピストン8との相対変位を変化させることにより、倍力比を変化させることができる。
【0033】
これにより、ブレーキペダル19の操作量、操作速度(操作量の変化率)等から緊急ブレーキの必要性を検知し、倍力比を増大させて迅速に必要な制動力(液圧)を得る、いわゆるブレーキアシスト制御を実行することができる。さらに、回生制動システムRからのCAN信号に基づき、回生制動時に、回生制動分を差引いた液圧を発生させるように倍力比を調整して、回生制動分と液圧による制動力との合計で所望の制動力が得られるようにする回生協調制御を実行することができる。また、ブレーキペダル19の操作量(入力ピストン17の変位量)にかかわらず、電動モータ22を作動させてプライマリピストン8を移動させることにより、制動力を発生させる自動ブレーキ制御を実行することも可能である。これにより、各種センサ手段によって検出した車両状態に基づき、自動的に制動力を調整し、適宜、エンジン制御、ステアリング制御等の他の車両制御と組合わせることにより、マスタ圧制御ユニット4を用いて前述の車両追従制御、車線逸脱回避制御、障害物回避制御等の車両の運転制御を実行することもできる。
【0034】
次に、レゾルバ25の異常診断について説明する。
レゾルバ25は、励磁信号を入力することにより、電動モータ22のロータに連結されたレゾルバロータの回転角に応じてレゾルバステータの2つのコイルから、それぞれ検出信号(アナログ信号)を出力する。これらの検出信号を本発明の信号変換機構としてのレゾルバデジタル変換回路70(以下、RD変換回路70という)によって処理して、電動モータ22のロータの回転角を表す適当な分解能を有するデジタル信号である回転角信号に変換して、マスタ圧制御ユニット4の回転角検出センサインタフェイス49に入力する。本実施形態では、RD変換回路70は、12ビットの分解能を有するデジタル信号を出力する。
【0035】
このRD変換回路70および回転角検出センサインタフェイス49を通じて取り込んだ回転角信号と、相電流モニタ47Aを通じて取り込んだ三相電流から、制御に用いるq軸電流を計算する。このq軸電流は、正方向が電動モータ22が発生するトルクの正方向と同じ向きになるように計算する。
【0036】
このとき、RD変換回路70は、その回路上の故障等の異常によって出力信号が実際の回転信号に対してズレを生じてしまい、このズレが維持され継続してしまうことがある。例えば、出力された信号が正しい信号に対して、(1/2)×π(90°)より大きく、(3/2)×π(270°)より小さい範囲でずれた場合、q軸電流は、本来通電したい方向とは逆向きになる。そのため、電動モータ22が発生するトルクの方向は、q軸電流と逆になり、電動モータ22の正常な制御を行うことができない。
【0037】
これに対して、マスタ圧制御ユニット4は、異常判定手段により、次のようにして、イグニッションスイッチのオン又はブレーキペダル19の踏込みによるブレーキシステムの起動時に電流が逆向きとなる回転角信号のずれが生じていないかRD変換回路70の異常を検知する。
【0038】
(1)ブレーキペダルが踏込まれていない場合
ブレーキペダル19が踏込まれていない状態において、イグニッションスイッチのオンにより、ブレーキシステムが起動されると、プライマリピストン8の0点学習を行なうために、電動モータ22に後退方向の駆動電流を供給してプライマリピストン8を後退させる。このとき、RD変換回路70が正常ならば、電動モータ22の回転により、プライマリピストン8が後退位置まで移動して停止し、駆動電流の指令が停止し、マスタシリンダ2の液圧は上昇しない。一方、RD変換回路70において電流が逆向きとなる回転角信号のずれる異常が生じている場合、電動モータ22は、制御方向、すなわち、後退方向とは逆向きの位相の駆動電流が供給されて前進方向に回転することになる。このため、プライマリピストン8が前進し続け、マスタシリンダ2の液圧が上昇し、この間、最大の駆動電流が指令され続けることになり、その後、液圧の上昇によりプライマリピストン8が停止する。
【0039】
このとき、マスタシリンダ2の液圧の上昇及び一定以上のq軸電流を検知することにより、RD変換回路70の電流が逆向きとなる回転角信号のずれる異常を判定することができる。このようにして、RD変換回路70の異常を検知したとき、マスタ圧制御ユニット4は、電動モータ22を停止し、ホイール圧制御ユニット5によって、ブレーキペダル19の操作量に応じて制動力を発生させるブレーキ制御を実行する指令を出力すると共に、インストルメントパネルの警告燈の点燈等によって運転者にブレーキシステムの異常を警告する。
【0040】
マスタシリンダ2の液圧の上昇は、プライマリピストン8の変位がプライマリ室10のリザーバポートを閉じる位置以上となったことを検知することにより、判定することができる。このとき、プライマリピストン8がリザーバポートを閉じる位置以上に移動したことを判定する閾値として、プライマリピストン8が機構上最も後退した位置からリザーバポートを閉じる位置までの距離を基準として決定する。これにより、ブレーキシステム起動時のプライマリピストン8の位置にかかわらず、その位置からプライマリピストン8が前進した距離が閾値以上である場合には、確実にリザーバポートが閉じてマスタシリンダ2で液圧発生していることになる。
【0041】
一定以上のq軸電流の有無を判定するための閾値は、プライマリピストン8を後退する指令に対して、電動モータ22は前進方向に回転するため、指令に応答が追従しないことになり、駆動電流の指令は下限値(後退方向の制限値)となるので、この下限値を閾値として設定する。
【0042】
また、RD変換回路70の異常時には、後退方向とは逆向きの位相の駆動電流が供給されて電動モータ22が前進方向に回転し、その後、液圧の上昇により停止することになるので、上述のマスタシリンダ2の液圧の上昇及びq軸電流に加えて、電動モータ22の前進方向への回転及びその後の停止を検知したとき、RD変換回路70の異常を判定するようにしてもよい。この場合、レゾルバ25の出力信号のノイズの影響を考慮して電動モータ22の前進方向の回転及びその後の停止を判定する閾値を決定する。
【0043】
次に上述のRD変換回路70の異常を検出するための制御フローの一例について、図4を参照して説明する。図4を参照して、イグニッションスイッチのオンにより制御フローを開始し、ステップS1で0点学習のための電動モータ22への駆動電流の指令の有無を判定し、駆動電流の指令があったとき、ステップS2に進む。ステップS2では、マスタシリンダ2で液圧の発生の有無を判定し、液圧が発生している場合には、ステップS3に進み、液圧が発生していない場合には、ステップS8でタイマをリセットして、ステップS1に戻る。
【0044】
ステップS3では、電動モータ22の駆動電流(三相電流)のq軸電流は、下限値(後退方向の制限値)となっているか否かを判定し、下限値となっている場合には、ステップS4でタイマのカウントをアップしてステップS5に進み、下限値となっていない場合には、ステップS8でタイマをリセットして、ステップS1に戻る。ステップS5では、所定時間(例えば数百ミリ秒程度)の経過の有無を判定し、経過していれば、S6に進み、経過していなければ、ステップS2に戻る。ステップS6では、RD変換回路70の異常ありの判定を行い、警告燈の点燈、ホイール圧制御装置5による制動制御の指令を行い、ステップS7に進む。そして、ステップS7で電動モータ22の停止を指令し、ステップS8でタイマをリセットしてステップS1に戻る。
【0045】
上述のブレーキペダル19が踏込まれていない場合のRD変換回路70の異常判定中のタイムチャートを図5に示す。
図5を参照して、イグニッションスイッチのオンにより、プライマリピストン8の0点学習が開始されると、時刻t1で、電動モータ2にプライマリピストン8の後退のための駆動電流の指令が行なわれる。このとき、q軸電流の指令値は、後退方向(図の下側)であるが、RD変換回路70に異常があると、実際のq軸電流は前進方向(図の上側)となる。これにより、電動モータ2の回転方向は、後退方向(図の下側)の指令に対して、実際には、前進方向(図の上側)に立ち上がる。
【0046】
そして、時刻t2で、プライマリピストン8がリザーバポートを遮断してマスタシリンダ2で液圧が発生する。時刻t3で、液圧の上昇によりプライマリピストン8が停止する。マスタシリンダ2の液圧の発生及びq軸電流の下限値(後退方向の制限値)の検出により、時刻t2でタイマのカウントを開始し、所定時間(例えば数百ミリ秒程度)経過したとき、時刻t4でRD変換回路70が異常であると判定して電動モータ22の停止が指令される。このとき、q軸電流の下限値(後退方向の制限値)の指令は、時刻t4で電動モータ22の停止が指令されるまで継続されることになる。
【0047】
(2)ブレーキペダルが踏込まれている場合
ブレーキペダル19が踏込まれた状態でイグニッションスイッチのオン、又は、イグニッションスイッチがオフの状態でブレーキペダル19が踏込まれてブレーキスイッチのオンによってブレーキシステムが起動したとき、所定の初期診断を実行した後(この時点では、プライマリピストン8の0点学習は行なわれていない)、RD変換回路70の異常検出を実行する。
【0048】
倍力制御の実行により、ブレーキペダル19の操作量に応じた位置にプライマリピストン8を移動させる際、電動モータ22への駆動電流及びマスタシリンダ2の液圧を監視する。このとき、RD変換回路70が正常ならば、電動モータ22の回転により、プライマリピストン8がブレーキペダル19の操作量に応じた位置まで前進して保持され、マスタシリンダ2の液圧が上昇する。一方、RD変換回路70において異常が生じている場合、電動モータ22は、指令された方向、すなわち、前進方向とは逆向きの位相の駆動電流が供給されて後退方向に回転することになる。このため、プライマリピストン8が後退方向に移動して後退位置で停止し、マスタシリンダ2の液圧は上昇しない。この間、プライマリピストン8を前進させようとして最大の駆動電流が指令され続ける。
【0049】
したがって、ブレーキペダル19の踏込み、マスタシリンダ2で液圧が発生しないこと及び一定以上のq軸電流を検知することにより、RD変換回路70の異常を判定することができる。このようにして、RD変換回路70の異常が検知されたとき、マスタ圧制御ユニット4は、電動モータ22を停止し、ホイール制御ユニット5による制動制御を実行する指令を出力すると共に、インストルメントパネルの警告燈の点燈等によって運転者にブレーキシステムの異常を警告する。
【0050】
このとき、プライマリピストン8の指令位置が所定の待機位置(後退位置からリザーバポートに向かって一定距離だけ前進した位置)以上であることを検知することより、ブレーキペダル19の踏込みを判定することができる。また、プライマリピストン8の位置が待機位置以下であることを検知することにより、プライマリピストン8が前進していないこと、すなわち、マスタシリンダ2で液圧が発生しないことを判定することができる。なお、プライマリピストン8の0点学習前において、プライマリピストン8を後退位置から所定距離だけ前進させた位置とシステム起動時の位置との小さい方に待機位置を設定した場合には、ブレーキシステム起動時にプライマリピストン8が後退位置にあると、後退位置が待機位置に設定されることになるため、プライマリピストン8の位置が待機位置未満になることがない。この場合、ブレーキペダル19の踏込み及びプライマリピストン8が前進していないことを正確に判定することができない。そこで、上述の判定に加えて、q軸電流が上限値を指令していることを検知したとき、異常と判定することにより、正確に異常を判定することができる。
【0051】
なお、液圧センサ45A、45Bによって、マスタシリンダ2の液圧を直接検知してもよい。
また、上記説明においては、q軸電流により判定する例を示しているが、q軸電流の指令値を用いてもよい。この場合、指令値は、生の値より応答遅れや誤差等が少ないので、確実で早い検出が可能となる。
【0052】
次に上述のRD変換回路70の異常を検出するための制御フローの一例について、図6を参照して説明する。図6を参照して、ブレーキペダル19の踏込みのより、制御フローを開始し、ステップS11で、プライマリピストン8の0点学習以外の所定のブレーキシステムの初期診断が終了したか否かを判定し、終了した場合にはステップS12に進む。ステップS12では、ブレーキペダル19の踏込みの有無を判定し、踏込まれている場合にはステップS14に進み、踏込まれていない場合には、ステップS13に進む。ステップS13では、イグニッションスイッチがオンか否かを判定し、オンである場合にはステップS11に戻り、オンでない場合にはステップS12に戻る。
【0053】
ステップS14では、プライマリピストン8をブレーキペダル19の操作量に応じた位置に移動させるように(前進方向に)電動モータ22に駆動電流を指令して、ステップS15に進む。ステップS15では、マスタシリンダ2で液圧が発生しているか否かを判定し、発生していなければステップS16に進み、発生していればステップS11に戻る。ステップS16では、電動モータ22の駆動電流(三相電流)のq軸電流は、上限値(前進方向の制限値)となっているか否かを判定し、なっている場合にはステップS17に進み、なっていない場合にはステップS11に戻る。
【0054】
ステップS17では、RD変換回路70の異常ありの判定を行い、警告燈の点燈、ホイール圧制御装置5による制動制御の指令を行い、ステップS18に進む。そして、ステップS18で電動モータ22の停止を指令して、ステップS11に戻る。
【0055】
上述のブレーキペダル19が踏込まれている場合のRD変換回路70の異常判定中のタイムチャートを図7に示す。
図7を参照して、時刻t1でブレーキペダル19が踏込まれて、ブレーキシステムが起動し、所定の初期診断が実行される。初期診断の終了後、時刻t2で、プライマリピストン8をブレーキペダル19の操作量(入力ロッド18の変位量)に応じた位置に移動させるように、電動モータ22に駆動電流が指令される。このとき、q軸電流の指令値は、ブレーキペダル19の踏込みに応じた前進方向(図の上側)であるが、RD変換回路70の異常があると、実際のq軸電流は後退方向(図の下側)となる。これにより、電動モータ2は後退方向に回転して、プライマリピストン8が後退する。そして、時刻t3で、プライマリピストン8が後退位置まで後退して停止する。この間、マスタシリンダ2で液圧は発しない。
【0056】
ブレーキペダル19の踏込み、マスタシリンダ2で液圧が発生しないこと及び一定以上のq軸電流を検知することにより、RD変換回路70の異常を判定して、時刻t4で電動モータ22の停止が指令される。このとき、q軸電流の上限値(前進方向の制限値)の指令は、時刻t4でモータの停止が指令されるまで継続されることになる。
【0057】
次に、ブレーキペダル19が踏込まれていない状態において、RD変換回路70の異常を検出する制御の変形例について、図8を参照して説明する。
本変形例では、上述のブレーキペダル19が踏込まれていない場合のマスタシリンダ2の液圧の上昇及び一定以上のq軸電流の検知によるRD変換回路70の異常判定に加えて、プライマリピストン8の前進を確実に検知するため、電動モータ22の前進方向の回転速度を監視し、回転速度が一定以上になることによって異常判定を行う。なお、この場合、RD変換回路70の異常時においても、上述の補完処理により、電動モータ22の回転速度データを得ることができる。
【0058】
次に本変形例に係るRD変換回路70の異常を検出するための制御フローの一例について、図8を参照して説明する。なお、図8に示すフローチャートにおいて、ステップS21〜S23の処理は、図4に示すフローチャートのステップS1〜S3の処理と同様である。
【0059】
図8を参照して、イグニッションスイッチのオンにより制御フローを開始し、ステップS21でプライマリピストン8の0点学習のための電動モータ22への駆動電流の指令の有無を判断し、指令があったとき、ステップS22に進む。ステップS22では、マスタシリンダ2で液圧の発生の有無を判定し、液圧が発生している場合には、ステップS23に進み、液圧が発生していない場合にはステップS21に戻る。
【0060】
ステップS23では、電動モータ22のq軸電流は、下限値(後退方向の制限値)となっているか否かを判定し、下限値となっている場合には、ステップS24に進み、下限値となっていない場合には、ステップS21に戻る。ステップS24では、レゾルバ25の検出に基づき、電動モータ22が前進方向に所定速度以上で回転又は停止しているか否かを判定し、所定速度以上で回転又は停止していれば、ステップS25に進み、所定速度以上で回転又は停止していなければ、ステップS21に戻る。ステップS25では、RD変換回路70の異常ありの判定を行い、警告燈の点燈、ホイール圧制御装置5による制動制御の指令を行なってステップS21に戻る。
【0061】
上述のRD変換回路70の異常判定は、ブレーキシステムを起動し、初期診断の終了後、プライマリピストン8の位置のゼロ点学習前、又は、初期診断終了後、一定時間以内に実行するようにしてもよい。
なお、上記実施の形態では、専用回路であるレゾルバデジタル変換回路70を用いてレゾルバからの信号をアナログからデジタルに変換する例を示したが、これに限らず、回転角検出センサインタフェイス49にアナログからデジタルに変換する回路を設けてもよく、また、レゾルバデジタル変換回路をなくし、回転角検出センサから検出信号(アナログ信号)をインタフェイス49からCPU46に直接入力し、CPU46内でデジタル変換するようにしてもよい。この場合、本発明の信号変換機構は、CPUがそれに該当する。
【符号の説明】
【0062】
1 ブレーキ制御装置、2 マスタシリンダ、4 マスタ圧制御ユニット(コントローラ)、8 プライマリピストン、25 レゾルバ、70 RD変換回路(信号変換機構回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンの推進によってブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダと、
電動モータと、
該電動モータのロータの回転運動を直線運動に変換して前記マスタシリンダのピストンを推進する回転−直動変換機構と、
前記ロータの回転位置を検出するレゾルバと、前記レゾルバの出力信号をデジタル信号に変換する信号変換機構と、
所与の制御指令及び前記信号変換機構によって変換した前記レゾルバの出力信号に基づき、駆動電流を供給して前記電動モータを制御するコントローラとを備えたブレーキ制御装置において、
前記ピストンを移動させる制御指令に対して、前記電動モータに供給される駆動電流が前記ピストンを逆方向に移動させるものであることを検知したとき、前記信号変換機構の異常を判定する異常判定手段を有していることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記マスタシリンダと、該マスタシリンダから供給されるブレーキ液圧によって制動力を発生させるブレーキ装置との間に、前記ブレーキ装置に供給するブレーキ液圧を制御する液圧制御装置が介装され、前記異常判定手段が前記信号変換機構の異常を判定したとき、前記コントローラは、前記液圧制御装置に指令して前記ブレーキ装置にブレーキ液圧を供給することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−101686(P2012−101686A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252090(P2010−252090)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】