説明

ブロックコポリマーの自己組織化促進方法及びそれを用いたブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法

【課題】半導体装置の製造プロセス等のパターン形成に用いられるブロックコポリマーのアニーリングによる自己組織化のスループットを向上できる方法を提供する。
【解決手段】基板101の上に、第1の膜であるブロックコポリマー膜103を形成する。続いて、該ブロックコポリマー膜103を不活性ガス雰囲気、例えばネオン雰囲気、あるいは湿度が30%以上の加湿雰囲気でアニーリングすることで、ブロックコポリマーの自己組織化を促進させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造プロセス等のパターン形成に用いられるブロックコポリマーの自己組織化促進方法及びそれを用いたブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の大集積化及び半導体素子のダウンサイジングに伴って、リソグラフィ技術の開発の加速が望まれている。現在のところ、露光光としては、水銀ランプ、KrFエキシマレーザ又はArFエキシマレーザ等を用いる光リソグラフィによりパターン形成が行われている。
【0003】
最近、従来の露光波長を用いてパターンのより一層の微細化を進めるべく、液浸リソグラフィ(immersion lithography)が提案されている。また、より短波長化した露光光として極紫外線を用いることも検討されている。
【0004】
さらに微細化したパターン形成方法を目指す候補として、パターンをボトムダウンで形成するのではなく、ボトムアップで形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。具体的には、一の性質を有するポリマー鎖をモノマーユニットして、それと性質が異なる他のポリマー鎖(モノマーユニット)とが共重合してなるブロックコポリマーを用いた自己組織化による超微細パターンの形成方法である。この方法によると、ブロックコポリマー膜をアニーリングすることにより、性質が異なるモノマーユニットは反発して、同じ性質を持つモノマーユニット同士が集まろうとするために自己整合的にパターン化する(方向性自己集合)。
【0005】
以下、ブロックコポリマーを用いた従来のパターン形成方法について図面を参照しながら説明する。
【0006】
まず、図7(a)に示すように、基板1の上に以下の組成を有し、膜厚が0.07μmのブロックコポリマー膜2を形成する。
【0007】
ポリ(スチレン(50mol%)−メチルメタクリレート(50mol%))(ブロックコポリマー)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)・・・・・・・・10g
次に、図7(b)に示すように、形成されたブロックコポリマー膜2に対して、温度が180℃で24時間のオーブンによるアニーリングを行って、図7(c)に示すライン幅が16nmの自己組織化したラメラ構造(層構造)を有する第1のパターン2a及び第2のパターン2bを得る。なお、図7において、ブロックコポリマー膜2はガイドパターンの内側に形成されるが、ここではガイドパターンを省略している。
【特許文献1】特開2008−149447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来のブロックコポリマーを用いたパターン形成方法は、ブロックコポリマー膜に対する自己組織化のためのアニーリングが24時間程度と長大な時間を要するため、これが半導体製造プロセスにおける量産技術への障壁となり、工業的に適用が難しいという問題がある。
【0009】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、ブロックコポリマーの自己組織化によるパターン形成のスループットを向上できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者らは、ブロックコポリマーの自己組織化について、種々の検討を重ねた結果、ブロックコポリマーを構成するモノマーユニットのいずれか、例えば親水性又は疎水性のモノマーユニットをアニーリング中に、以下の方法により自己集合しやすくなるという知見を得ている。
【0011】
まず、ブロックコポリマー膜のアニーリングを不活性ガス雰囲気で行うと、該ブロックコポリマー膜の外部(主に上方)が極性のない状態となるため、例えば疎水性を持つモノマーユニット(疎水性ユニット)が膜の外部に強く引き寄せられるので、自己組織化が促進される。
【0012】
また、ブロックコポリマー膜のアニーリングを加湿下で行うと、該ブロックコポリマー膜の外部(主に上方)が親水性の状態となるため、例えば親水性を持つモノマーユニット(親水性ユニット)が膜の外部に強く引き寄せられるので、自己組織化が促進される。ここで、加湿の与え方には、オーブン中に水蒸気を導入する方法が挙げられる。
【0013】
また、ブロックコポリマー膜の上に水溶性ポリマー膜を形成すると、該ブロックコポリマー膜の上面に水溶性ポリマーが形成されるため、例えば親水性を持つモノマーユニットが膜の外部(上方)に強く引き寄せられるので、自己組織化が促進される。なお、水溶性ポリマー膜をレジスト膜の上に形成して露光する露光方法は従来より知られているが、本発明は、露光することなくパターンを形成できる点で従来の方法とは異なる。また、水溶性ポリマー膜はアニーリングの後に水等により除去されるが、アニーリングにより硬化した場合は、酸素系プラズマのアッシングにより除去できる。
【0014】
本発明に係るブロックコポリマー膜に対するアニーリングは、例えばオーブン中で150℃程度以上の温度で行うことが挙げられる。アニーリング時間は、本発明によれば大幅な時間短縮が可能となり、例えば2時間から6時間程度となる。但し、本発明はこの範囲に限られない。
【0015】
本発明は、前記の知見に基づいてなされ、ブロックコポリマー膜をアニーリングする際に、アニーリングされるブロックコポリマー膜の主に上面と接触する雰囲気を親水性若しくは疎水性とするか、又は該上面と接触する他の膜に親水性若しくは疎水性を持たせるものであって、具体的には以下の方法によって実現される。
【0016】
本発明に係る第1のブロックコポリマーの自己組織化促進方法は、基板の上に、ブロックコポリマーからなる第1の膜を形成する工程と、第1の膜を不活性ガス雰囲気でアニーリングする工程とを備えていることを特徴とする。
【0017】
第1のブロックコポリマーの自己組織化促進方法によると、ブロックコポリマーからなる第1の膜を不活性ガス雰囲気でアニーリングするため、該第1の膜の外部(主に上方)が極性のない状態となるので、例えば疎水性を持つモノマーユニットが第1の膜の外部に強く引き寄せられるので、自己組織化が促進される。従って、ブロックコポリマーの自己組織化によるパターン形成のスループットが向上する。
【0018】
第1のブロックコポリマーの自己組織化促進方法において、不活性ガスには、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン又はキセノンを用いることができる。
【0019】
本発明に係る第2のブロックコポリマーの自己組織化促進方法は、基板の上に、ブロックコポリマーからなる第1の膜を形成する工程と、第1の膜を加湿下でアニーリングする工程とを備えていることを特徴とする。
【0020】
第2のブロックコポリマーの自己組織化促進方法によると、ブロックコポリマーからなる第1の膜を加湿下でアニーリングするため、該第1の膜の外部(主に上方)が親水性の状態となるので、例えば親水性を持つモノマーユニットが第1の膜の外部に強く引き寄せられるので、自己組織化が促進される。従って、ブロックコポリマーの自己組織化によるパターン形成のスループットが向上する。
【0021】
第2のブロックコポリマーの自己組織化促進方法において、加湿下のアニーリングは、湿度が30%以上の加湿雰囲気で行うことが好ましい。
【0022】
本発明に係る第3のブロックコポリマーの自己組織化促進方法は、基板の上に、ブロックコポリマーからなる第1の膜を形成する工程と、第1の膜の上に水溶性ポリマーからなる第2の膜を形成する工程と、第1の膜と第2の膜とをアニーリングする工程とを備えていることを特徴とする。
【0023】
第3のブロックコポリマーの自己組織化促進方法によると、ブロックコポリマーからなる第1の膜の上に水溶性ポリマーからなる第2の膜を形成するため、該第1の膜の上面には水溶性ポリマーが形成される。このため、例えば親水性を持つモノマーユニットが第1の膜の上方に強く引き寄せられるので、自己組織化が促進される。従って、ブロックコポリマーの自己組織化によるパターン形成のスループットが向上する。
【0024】
第3のブロックコポリマーの自己組織化促進方法において、水溶性ポリマーには、ポリビニールアルコール、ポリビニールピロリドン、ポリアクリル酸又はポリスチレンスルフォン酸を用いることができる。なお、水溶性ポリマーからなる第2の膜の膜厚は50nm程度以下が好ましい。
【0025】
第1〜第3のブロックコポリマーの自己組織化促進方法において、ブロックコポリマーは、親水性ユニットと疎水性ユニットから構成されていることが好ましい。
【0026】
この場合に、親水性ユニットには、メタクリレート、ブタジエン、ビニールアセテート、アクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸、ビニールアルコール、エチレングリコール又はプロピレングリコールを用いることができる。
【0027】
また、この場合に、疎水性ユニットには、スチレン、キシリエン又はエチレンを用いることができる。
【0028】
なお、2種類のモノマーユニットを含むブロックコポリマーの共重合比を50対50程度とすると、自己組織化パターンはラメラ構造となる。この比率からいずれか一方のモノマーユニットの比率が下がるにつれて、シリンダー構造、さらにはドット構造となる。
【0029】
本発明に係る第1のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法は、基板の上に、親水性又は疎水性を有し且つ開口部を有するガイドパターンを形成する工程と、基板の上におけるガイドパターンの開口部に、ブロックコポリマーからなる第1の膜を形成する工程と、第1の膜を不活性ガス雰囲気でアニーリングすることにより、第1の膜を自己組織化する工程と、自己組織化された第1の膜から自己組織化パターンを形成する工程とを備えていることを特徴とする。
【0030】
第1のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法によると、親水性又は疎水性を有し且つ開口部を有するガイドパターンの開口部に、ブロックコポリマーからなる第1の膜を形成し、その後、第1の膜を不活性ガス雰囲気でアニーリングするため、上述したように、第1の膜の自己組織化が促進される。このため、ブロックコポリマーからなる自己組織化パターンのスループットを向上することができる。
【0031】
第1のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法において、不活性ガスには、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン又はキセノンを用いることができる。
【0032】
本発明に係る第2のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法は、基板の上に、親水性又は疎水性を有し且つ開口部を有するガイドパターンを形成する工程と、基板の上におけるガイドパターンの開口部に、ブロックコポリマーからなる第1の膜を形成する工程と、第1の膜を加湿下でアニーリングすることにより、第1の膜を自己組織化する工程と、自己組織化された第1の膜から自己組織化パターンを形成する工程とを備えていることを特徴とする。
【0033】
第2のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法によると、親水性又は疎水性を有し且つ開口部を有するガイドパターンの開口部に、ブロックコポリマーからなる第1の膜を形成し、その後、第1の膜を加湿下でアニーリングするため、上述したように、第1の膜の自己組織化が促進される。このため、ブロックコポリマーからなる自己組織化パターンのスループットを向上することができる。
【0034】
第2のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法において、加湿下のアニーリングは、湿度が30%以上の加湿雰囲気で行うことが好ましい。
【0035】
本発明に係る第3のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法は、基板の上に、親水性又は疎水性を有し且つ開口部を有するガイドパターンを形成する工程と、基板の上におけるガイドパターンの開口部に、ブロックコポリマーからなる第1の膜を形成する工程と、第1の膜の上に、水溶性ポリマーからなる第2の膜を形成する工程と、第1の膜と第2の膜とをアニーリングすることにより、第1の膜を自己組織化する工程と、第2の膜を除去した後、自己組織化された第1の膜から自己組織化パターンを形成する工程とを備えていることを特徴とする。
【0036】
第3のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法によると、親水性又は疎水性を有し且つ開口部を有するガイドパターンの開口部に、ブロックコポリマーからなる第1の膜を形成し、続いて、第1の膜の上に水溶性ポリマーからなる第2の膜を形成した状態でアニーリングするため、水溶性ポリマーからなる第2の膜により、上述したように第1の膜の自己組織化が促進される。このため、ブロックコポリマーからなる自己組織化パターンのスループットを向上することができる。
【0037】
第3のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法において、水溶性ポリマーには、ポリビニールアルコール、ポリビニールピロリドン、ポリアクリル酸又はポリスチレンスルフォン酸を用いることができる。
【0038】
第1〜第3のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法において、ブロックコポリマーは、親水性ユニットと疎水性ユニットから構成されていることが好ましい。
【0039】
この場合に、親水性ユニットには、メタクリレート、ブタジエン、ビニールアセテート、アクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸、ビニールアルコール、エチレングリコール又はプロピレングリコールを用いることができる。
【0040】
また、この場合に、疎水性ユニットには、スチレン、キシリエン又はエチレンを用いることができる。
【0041】
また、この場合に、自己組織化パターンを形成する工程において、自己組織化パターンは、親水性ユニットを含む第1のパターン又は疎水性ユニットを含む第2のパターンをエッチングすることにより形成することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係るブロックコポリマーの自己組織化促進方法及びそれを用いたブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法によると、ブロックコポリマーの自己組織化によるパターン形成におけるスループットを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るブロックコポリマーを用いたパターン形成方法について図1(a)〜図1(d)及び図2を参照しながら説明する。
【0044】
まず、図1(a)に示すように、基板101の上に、親水性を有する水素化シルセスキオキサンをメチルイソブチルケトンに溶かした溶液をスピンコートし、続いて、ホットプレートにより温度が110℃で60秒間のベークを行って、厚さが40nmの水素化シルセスキオキサン膜を成膜する。その後、成膜された水素化シルセスキオキサン膜に対して、電圧が100kVの電子線露光を選択的に照射し、続いて、濃度が2.3wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液で現像することにより、水素化シルセスキオキサン膜から幅が30nmの開口部102aを有するガイドパターン102を形成する。
【0045】
次に、図1(b)に示すように、ガイドパターン102の開口部102aに以下の組成を有し、厚さが30nmのブロックコポリマー膜103を形成する
ポリ(スチレン(60mol%)−メチルメタクリレート(40mol%))(ブロックコポリマー)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)・・・・・・・・10g
次に、図1(c)に示すように、ブロックコポリマー膜103に対して、不活性ガスであるネオン(Ne)雰囲気下で、温度を180℃とし約3時間のオーブンによるアニーリングを行う。これにより、図1(d)に示すように、基板101に垂直に自己組織化した、ライン幅が16nmのラメラ構造を持つ第1のパターン103a及び第2のパターン103bが得られる。ここで、ガイドパターン102は、親水性を有する水素化シルセスキオキサンからなるため、ガイドパターン102の側面と接する第1のパターン103aは親水性を有するポリメチルメタクリレートを主成分とし、第1のパターン103aの内側の第2のパターン103bは疎水性を有するポリスチレンを主成分とする。
【0046】
次に、酸素系ガスに対して、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートとではエッチングレートに大きな差があるため、すなわち、ポリメチルメタクリレートのエッチングレートがポリスチレンよりも大きいため、酸素系ガスで第1のパターン103aをエッチングすると、図2に示すように、ポリスチレンからなる第2のパターン103bを3時間程度のアニーリングによって形成することができる。従って、ブロックコポリマーを用いたパターン形成を半導体装置の製造プロセスに適用できるようになる。
【0047】
なお、本実施形態においては、不活性ガスにネオン(Ne)を用いたが、ネオンに代えて、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)若しくはキセノン(Xe)又はこれらのうちの2つ以上の混合ガスを用いることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係るブロックコポリマーを用いたパターン形成方法について図3(a)〜図3(d)及び図4を参照しながら説明する。
【0049】
まず、図3(a)に示すように、基板201の上に、親水性を有する水素化シルセスキオキサンをメチルイソブチルケトンに溶かした溶液をスピンコートし、続いて、ホットプレートにより温度が110℃で60秒間のベークを行って、厚さが40nmの水素化シルセスキオキサン膜を成膜する。その後、成膜された水素化シルセスキオキサン膜に対して、電圧が100kVの電子線露光を選択的に照射し、続いて、濃度が2.3wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液で現像することにより、水素化シルセスキオキサン膜から幅が30nmの開口部202aを有するガイドパターン202を形成する。
【0050】
次に、図3(b)に示すように、ガイドパターン202の開口部202aに以下の組成を有し、厚さが30nmのブロックコポリマー膜203を形成する
ポリ(スチレン(40mol%)−メチルメタクリレート(60mol%))(ブロックコポリマー)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)・・・・・・・・10g
次に、図3(c)に示すように、ブロックコポリマー膜203の周囲に水蒸気を導入し、ブロックコポリマー膜203に対して、湿度が約40%の加湿下で、温度を190℃とし約2時間のオーブンによるアニーリングを行う。これにより、図3(d)に示すように、基板201に垂直に自己組織化した、ライン幅が16nmのラメラ構造を持つ第1のパターン203a及び第2のパターン203bが得られる。ここで、ガイドパターン202は、親水性を有する水素化シルセスキオキサンからなるため、ガイドパターン202の側面と接する第1のパターン203aは親水性を有するポリメチルメタクリレートを主成分とし、第1のパターン203aの内側の第2のパターン203bは疎水性を有するポリスチレンを主成分とする。
【0051】
次に、第1のパターン203a及び第2のパターン203bに対して、酸素系ガスでエッチングを行うと、図4に示すように、エッチングレートが大きい第1のパターン203aがエッチングされて、ポリスチレンからなる第2のパターン203bを2時間程度のアニーリングによって形成することができる。従って、ブロックコポリマーを用いたパターン形成を半導体装置の製造プロセスに適用できるようになる。
【0052】
なお、本実施形態においては、アニーリング時の湿度を40%程度に設定しているが、30%以上の湿度であればよい。
【0053】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係るブロックコポリマーを用いたパターン形成方法について図5(a)〜図5(d)、図6(a)及び図6(b)を参照しながら説明する。
【0054】
まず、図5(a)に示すように、基板301の上に、親水性を有する水素化シルセスキオキサンをメチルイソブチルケトンに溶かした溶液をスピンコートし、続いて、ホットプレートにより温度が110℃で60秒間のベークを行って、厚さが40nmの水素化シルセスキオキサン膜を成膜する。その後、成膜された水素化シルセスキオキサン膜に対して、電圧が100kVの電子線露光を選択的に照射し、続いて、濃度が2.3wt%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液で現像することにより、水素化シルセスキオキサン膜から幅が30nmの開口部302aを有するガイドパターン302を形成する。
【0055】
次に、図5(b)に示すように、ガイドパターン302の開口部302aに以下の組成を有し、厚さが30nmのブロックコポリマー膜303を形成する
ポリ(スチレン(50mol%)−メチルメタクリレート(50mol%))(ブロックコポリマー)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)・・・・・・・・10g
次に、図5(c)に示すように、ブロックコポリマー膜303の上に、厚さが20nmのポリビニールアルコールからなる水溶性ポリマー膜304を形成する。
【0056】
次に、図5(d)に示すように、水溶性ポリマー膜304とブロックコポリマー膜303とに対して、温度が180℃で約3時間のオーブンによるアニーリングを行う。
【0057】
次に、水溶性ポリマー膜304を水等により除去するか、酸素系ガスによりアッシングして、図6(a)に示すように、基板301に垂直に自己組織化した、ライン幅が16nmのラメラ構造を持つ第1のパターン303a及び第2のパターン303bを得る。ここで、ガイドパターン302は、親水性を有する水素化シルセスキオキサンからなるため、ガイドパターン302の側面と接する第1のパターン303aは親水性を有するポリメチルメタクリレートを主成分とし、第1のパターン303aの内側の第2のパターン303bは疎水性を有するポリスチレンを主成分とする。
【0058】
次に、第1のパターン303a及び第2のパターン303bに対して、酸素系ガスでエッチングを行うと、図6(b)に示すように、エッチングレートが大きい第1のパターン303aがエッチングされて、ポリスチレンからなる第2のパターン303bを3時間程度のアニーリングによって形成することができる。従って、ブロックコポリマーを用いたパターン形成を半導体装置の製造プロセスに適用できるようになる。
【0059】
なお、本実施形態においては、水溶性ポリマー膜304に、ポリビニールアルコールを用いたが、これに代えて、ポリビニールピロリドン、ポリアクリル酸又はポリスチレンスルフォン酸を用いることができる。
【0060】
また、本実施形態において、水溶性ポリマー膜304は、ガイドパターン302の上にも形成されているが、ガイドパターン302、ブロックコポリマー膜303及び水溶性ポリマー膜304の各膜厚によっては、ガイドパターン302の上を覆うことなく、ブロックコポリマー膜303の上にのみ形成してもよい。
【0061】
また、第1〜第3の各実施形態において、ブロックコポリマー膜を構成する親水性ユニットにメタクリレートを用い、疎水性ユニットにスチレンを用いたが、これに限られない。例えば、親水性ユニットには、メタクリレートに代えて、ブタジエン、ビニールアセテート、アクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸、ビニールアルコール、エチレングリコール又はプロピレングリコールを用いることができ、また、疎水性ユニットには、スチレンに代えて、キシリエン又はエチレンを用いることができる。さらに、モノマーユニットの性質を維持できれば、モノマーユニットを構成するモノマーは単一である必要はなく、複数のモノマーを混合したポリマー鎖をモノマーユニットとしてもよい。
【0062】
また、ガイドパターンを構成する材料として、水素化シルセスキオキサンを用いたが、これに代えて、テトラアルコキシシラン等を用いることができる。
【0063】
なお、第1〜第3の実施形態においては、親水性のガイドパターンにより、基板に垂直な方向のラメラ構造を形成する。従って、第1の実施形態におけるアニーリング時の不活性ガス雰囲気、第2の実施形態におけるアニーリング時の加湿雰囲気、及び第3の実施形態における水溶性ポリマー膜の使用は、基板に垂直なラメラ構造を促進する程度に限られ、該ラメラ構造を損なわない程度とする。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係るブロックコポリマーの自己組織化促進方法及びそれを用いたブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法は、ブロックコポリマーの自己組織化によるパターン形成におけるスループットを向上することができ、半導体装置の製造プロセスにおける微細パターンの形成等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】(a)〜(d)は本発明の第1の実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るパターン形成方法の一工程を示す断面図である。
【図3】(a)〜(d)は本発明の第2の実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るパターン形成方法の一工程を示す断面図である。
【図5】(a)〜(d)は本発明の第3の実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図6】(a)及び(b)は本発明の第3の実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【図7】(a)〜(c)は従来のブロックコポリマーを用いたパターン形成方法の各工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
101 基板
102 ガイドパターン
102a 開口部
103 ブロックコポリマー膜
103a 第1のパターン
103b 第2のパターン
201 基板
202 ガイドパターン
202a 開口部
203 ブロックコポリマー膜
203a 第1のパターン
203b 第2のパターン
301 基板
302 ガイドパターン
302a 開口部
303 ブロックコポリマー膜
303a 第1のパターン
303b 第2のパターン
304 水溶性ポリマー膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に、ブロックコポリマーからなる第1の膜を形成する工程と、
前記第1の膜を不活性ガス雰囲気でアニーリングする工程とを備えていることを特徴とするブロックコポリマーの自己組織化促進方法。
【請求項2】
前記不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン又はキセノンであることを特徴とする請求項1に記載のブロックコポリマーの自己組織化促進方法。
【請求項3】
基板の上に、ブロックコポリマーからなる第1の膜を形成する工程と、
前記第1の膜を加湿下でアニーリングする工程とを備えていることを特徴とするブロックコポリマーの自己組織化促進方法。
【請求項4】
前記加湿下のアニーリングは、湿度が30%以上の加湿雰囲気で行うことを特徴とする請求項3に記載のブロックコポリマーの自己組織化促進方法。
【請求項5】
基板の上に、ブロックコポリマーからなる第1の膜を形成する工程と、
前記第1の膜の上に、水溶性ポリマーからなる第2の膜を形成する工程と、
前記第1の膜と前記第2の膜とをアニーリングする工程とを備えていることを特徴とするブロックコポリマーの自己組織化促進方法。
【請求項6】
前記水溶性ポリマーは、ポリビニールアルコール、ポリビニールピロリドン、ポリアクリル酸又はポリスチレンスルフォン酸であることを特徴とする請求項5に記載のブロックコポリマーの自己組織化促進方法。
【請求項7】
前記ブロックコポリマーは、親水性ユニットと疎水性ユニットから構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のブロックコポリマーの自己組織化促進方法。
【請求項8】
前記親水性ユニットは、メタクリレート、ブタジエン、ビニールアセテート、アクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸、ビニールアルコール、エチレングリコール又はプロピレングリコールであることを特徴とする請求項7に記載のブロックコポリマーの自己組織化促進方法。
【請求項9】
前記疎水性ユニットは、スチレン、キシリエン又はエチレンであることを特徴とする請求項7又は8に記載のブロックコポリマーの自己組織化促進方法。
【請求項10】
基板の上に、親水性又は疎水性を有し且つ開口部を有するガイドパターンを形成する工程と、
前記基板の上における前記ガイドパターンの前記開口部に、ブロックコポリマーからなる第1の膜を形成する工程と、
前記第1の膜を不活性ガス雰囲気でアニーリングすることにより、前記第1の膜を自己組織化する工程と、
自己組織化された前記第1の膜から自己組織化パターンを形成する工程とを備えていることを特徴とするブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法。
【請求項11】
前記不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン又はキセノンであることを特徴とする請求項10に記載のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法。
【請求項12】
基板の上に、親水性又は疎水性を有し且つ開口部を有するガイドパターンを形成する工程と、
前記基板の上における前記ガイドパターンの前記開口部に、ブロックコポリマーからなる第1の膜を形成する工程と、
前記第1の膜を加湿下でアニーリングすることにより、前記第1の膜を自己組織化する工程と、
自己組織化された前記第1の膜から自己組織化パターンを形成する工程とを備えていることを特徴とするブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法。
【請求項13】
前記加湿下のアニーリングは、湿度が30%以上の加湿雰囲気で行うことを特徴とする請求項12に記載のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法。
【請求項14】
基板の上に、親水性又は疎水性を有し且つ開口部を有するガイドパターンを形成する工程と、
前記基板の上における前記ガイドパターンの前記開口部に、ブロックコポリマーからなる第1の膜を形成する工程と、
前記第1の膜の上に、水溶性ポリマーからなる第2の膜を形成する工程と、
前記第1の膜と前記第2の膜とをアニーリングすることにより、前記第1の膜を自己組織化する工程と、
前記第2の膜を除去した後、自己組織化された前記第1の膜から自己組織化パターンを形成する工程とを備えていることを特徴とするブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法。
【請求項15】
前記水溶性ポリマーは、ポリビニールアルコール、ポリビニールピロリドン、ポリアクリル酸又はポリスチレンスルフォン酸であることを特徴とする請求項14に記載のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法。
【請求項16】
前記ブロックコポリマーは、親水性ユニットと疎水性ユニットから構成されていることを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法。
【請求項17】
前記親水性ユニットは、メタクリレート、ブタジエン、ビニールアセテート、アクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸、ビニールアルコール、エチレングリコール又はプロピレングリコールであることを特徴とする請求項16に記載のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法。
【請求項18】
前記疎水性ユニットは、スチレン、キシリエン又はエチレンであることを特徴とする請求項16又は17に記載のブロックコポリマーの自己組織化パターン形成方法。
【請求項19】
前記自己組織化パターンを形成する工程において、前記自己組織化パターンは、前記親水性ユニットを含む第1のパターン又は前記疎水性ユニットを含む第2のパターンをエッチングすることにより形成することを特徴とする請求項16〜18のいずれか1項に記載の自己組織化パターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−115832(P2010−115832A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289806(P2008−289806)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】