説明

ブロック共重合体及びそれを含む熱収縮性フィルム

【課題】収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベルに好適な剛性、透明性、自然収縮性、低温収縮性及び低収縮応力等の物性バランスに優れた熱収縮性フィルムの提供。
【解決手段】特定のビニル芳香族炭化水素重合体ブロック、ビニル芳香族炭化水素/共役ジエン系炭化水素共重合体ブロック及び共役ジエン系炭化水素重合体ブロックからなる構造を有し、特定のビニル芳香族炭化水素含有量、ビニル芳香族炭化水素のブロック率及びビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの数平均分子量を有するブロック共重合体(a)から形成される熱収縮性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベルに好適な剛性、透明性、自然収縮性、低温収縮性及び低収縮応力等の物性バランスに優れた熱収縮性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族炭化水素含有量が比較的高い、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなるブロック共重合体は、透明性、耐衝撃性等の特性を利用して射出成形用途、シート、フィルム等の押出し成形用途等に使用されている。とりわけビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなるブロック共重合体樹脂を用いた熱収縮性フィルムは、従来使用されている塩化ビニル樹脂の残留モノマーや可塑剤の残留および焼却時における塩化水素の発生の問題もないため、食品包装やキャップシール、ラベル等に利用されている。熱収縮フィルムに必要な特性として剛性、透明性、自然収縮性、低温収縮性、低収縮応力、包装機械適性等の要求がある。これまで、これらの特性の向上と良好な物性バランスを得るため種々の検討がなされてきた。
【0003】
例えば下記文献1には室温での自然収縮性を改良するため、スチレン系炭化水素と共役ジエン炭化水素からなるブロック共重合体とスチレン系炭化水素を含有した特定Tgのランダム共重合体の組成物からなるポリスチレン系熱収縮フィルムが開示されている。
下記文献2にはフィルムの経時安定性と耐衝撃性に優れた透明性熱収縮性フィルムを得るため、ビカット軟化点が105℃を越えないビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体とビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロックからなる共重合体との組成物で、特定の熱収縮力を特徴とする熱収縮性硬質フィルムが開示されている。
【0004】
下記文献3には透明性、剛性及び低温面衝撃性をバランスさせた組成物を得るため、特定構造と分子量分布を有するビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロックからなる共重合体とビニル芳香族炭化水素−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂との組成物が開示されている。
下記文献4には透明性と耐衝撃性に優れた樹脂組成物を得るため、特定構造のビニル芳香族炭化水素ブロックビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合体ブロックを有するブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を含有する透明高強度樹脂組成物が開示されている。
【0005】
下記特許文献5には、低温収縮性、光学特性、耐クラック特性、寸法安定性等に優れる収縮フィルムを得るため、ビニル芳香族炭化水素含有量が95〜20重量%で、ビカット軟化点が90℃を越えないビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体とビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロックからなる共重合体との組成物を少なくとも1層有する多層低温収縮性フィルムが開示されている。
下記特許文献6には、自然収縮性、強度、表面特性、剛性、低温収縮性等に優れる収縮フィルムを得るため、両外層が特定ブタジエン単位含量のスチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体とスチレン−ブチルアクリレートの混合物、中間層が特定ブタジエン単位含量のスチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体とスチレン−ブチルアクリレートの混合物からなる少なくとも3層の多層ポリスチレン系熱収縮フィルムが開示されている。
【0006】
下記特許文献7には、自然収縮性、耐熱融着性、透明性、収縮仕上がり性のいずれかの特性に優れた熱収縮性フィルムを得るため、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなるブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステル
との共重合体を組み合わせた配合物を中間層とし、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなるブロック共重合体を主成分とした混合重合体を表裏層とする熱収縮性ポリスチレン系積層フィルムが開示されている。
下記特許文献8には、低温での熱収縮特性、収縮仕上がり性、自然収縮率、熱時、フィルム同士のブロッキングが発生しない熱収縮性フィルムを得るため、中間層が特定のビカット軟化点のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を主成分とし、内外層が特定のビカット軟化点のスチレン−共役ジエンブロック共重合体を主成分とする特定の熱収縮率を有する多層熱収縮性ポリスチレン系フィルムが開示されている。
【0007】
下記特許文献9には、加工特性、保存安定性、臭気が少なく、剛性や耐衝撃性に優れた樹脂組成物及びフィルム、多層フィルムを得るため、特定の分子量分布、残存単量体量を特徴とするスチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体からなる共重合体樹脂とスチレンと共役ジエンからなるブロック共重合体樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂組成物を主体とする層を有する(多層)熱収縮性フィルムが開示されている。
下記文献10には自然収縮率が低く、低温収縮性及びインキ密着性に優れたポリスチレン系熱収縮性フィルムを得るため、中間層がスチレン−ブタジエンブロック共重合体又はポリスチレンとスチレン−ブタジエンブロック共重合体で、両外層がスチレン−(メタ)アクリレート共重合体とスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる多層熱収縮性フィルムが開示されている。
【0008】
下記特許文献11には低温収縮性と剛性、自然収縮性に優れる熱収縮性フィルムを得るため、特定の粘弾性挙動示す中間層と表裏層に2種のスチレンーブタジエンブロック共重合体を使用した熱収縮性積層フィルムが開示されている。
下記特許文献12には柔軟性に富み、反発弾性と耐傷付き性が優れ、且つ取り扱い性が良好な水添共重合体を得るため、ビニル芳香族炭化水素の含有量、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの含有量、重量平均分子量、及び共役ジエンの二重結合の水添率が特定の範囲にある水添共重合体が開示されている。
【0009】
下記特許文献13には柔軟性、引張強度、耐摩耗性、耐打痕性に優れ、且つ架橋性が良好な水添共重合体を得るため、ビニル芳香族炭化水素の含有量、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの含有量、重量平均分子量、共役ジエンの二重結合の水添率及びtanδのピーク温度が特定の範囲にある水添共重合体が開示されている。
しかしながら、これらのビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体とその水添物は、剛性、透明性、自然収縮性、低温収縮性及び低収縮応力等の物性バランスが十分でなく、これらの文献にはそれらを改良する方法に関して開示されていない。
【0010】
【特許文献1】特開平4−52129号公報
【特許文献2】特開平5−104630号公報
【特許文献3】特開平6−220278号公報
【特許文献4】特開平7−216187号公報
【特許文献5】特開昭61−41544号公報
【特許文献6】特開2000−185373号公報
【特許文献7】特開2000−6329号公報
【特許文献8】特開2002−46231号公報
【特許文献9】特開2002−201324号公報
【特許文献10】特開2004−34503号公報
【特許文献11】特開2004−74687号公報
【特許文献12】WO03/035705号公報
【特許文献13】WO04/003027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベルに好適な剛性、透明性、自然収縮性、低温収縮性及び低収縮応力等の物性バランスに優れた熱収縮性フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のブロック共重合体(a)からなる熱収縮性フィルムにより上記の目的が達成されることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
[1]少なくとも2つのビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)と少なくとも2つのビニル芳香族炭化水素/共役ジエン系炭化水素共重合体ブロック(S/B)、少なくとも1つの共役ジエン系炭化水素重合体ブロック(B)を含むブロック共重合体(a)であって、該ブロック共重合体(a)の両末端重合体ブロックがビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)であり、両末端ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの内端には各々直接結合したビニル芳香族炭化水素/共役ジエン系炭化水素共重合体ブロック(S/B)を有し、ビニル芳香族炭化水素/共役ジエン系炭化水素共重合体ブロック(S/B)の内端には各々直接結合した共役ジエン系炭化水素重合体ブロック(B)が存在しており、該ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素の重量比が55%以上80%未満、ビニル芳香族炭化水素のブロック率が50重量%以上80重量%以下であり、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの数平均分子量が0.5万以上2.5万未満であるブロック共重合体から得られる熱収縮性フィルム、
【0013】
[2]ブロック共重合体(a)が水素添加されていることを特徴とする前記[1]に記載の熱収縮性フィルム、
[3]ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなり、ビニル芳香族炭化水素の重量比が80%以上95%未満、ビニル芳香族炭化水素のブロック率が80重量%以下であるブロック共重合体(b)と、前記[1]又は[2]に記載のブロック共重合体(a)を含有するブロック共重合体組成物から得られる熱収縮性フィルム、
[4]ブロック共重合体(a)とブロック共重合体(b)の重量比が100/0〜30/70である前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルム、
[5]延伸方向における引張弾性率が1.6GPa以上3.0GPa以上、延伸方向における収縮時の最大収縮応力が0MPa以上4.0MPa以下である事を特徴とする前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルム、
【0014】
[6]熱収縮率が70℃中10秒間で6%以上30%以下である前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルム、
[7]自然収縮率が40℃中3日間で0%以上4.0%以下である前記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルム、
[8]延伸方向に垂直方向の0℃の伸びが100%以上800%以下である前記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルム、
[9]前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルムを含む熱収縮性多層フィルム、
[10]前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルムまたは前記[9]に記載の熱収縮性多層フィルムから得られるラベル、
[11]前記[10]に記載のラベルで被覆された容器、
に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱収縮性フィルムまたは熱収縮性多層フィルムは、収縮包装、収縮結束包装や
収縮ラベルに好適な剛性、透明性、自然収縮性、低温収縮性及び低収縮応力等の物性バランスに優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、少なくとも2つのビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)と少なくとも2つのビニル芳香族炭化水素/共役ジエン系炭化水素共重合体ブロック(S/B)、少なくとも1つの共役ジエン系炭化水素重合体ブロック(B)を含むブロック共重合体(a)であって、該ブロック共重合体(a)の両末端重合体ブロックがビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)であり、両末端ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの内端には各々直接結合したビニル芳香族炭化水素/共役ジエン系炭化水素共重合体ブロック(S/B)を有し、ビニル芳香族炭化水素/共役ジエン系炭化水素共重合体ブロック(S/B)の内端には各々直接結合した共役ジエン系炭化水素重合体ブロック(B)が存在しており、該ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素の重量比が55%以上80%未満、ビニル芳香族炭化水素のブロック率が50重量%以上80重量%以下であり、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの数平均分子量が0.5万以上2.5万未満であるブロック共重合体から得られる熱収縮性フィルムに関するものである。
【0017】
本発明に使用するブロック共重合体(a)の一般式はS−(B/S−B)n−(B/S)−S、[S−(B/S−B)n−(B/S)−S]n(Sはビニル芳香族炭化水素重合体ブロック、Bは共役ジエン重合体ブロック、B/Sはビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合体ブロックであり、nは1〜5の整数を表す。)である。例えば下記の一般式のものが挙げられる。
1)S1−B1/S2−B2−B3/S3−S4
2)S1−B1/S2−B2−B3/S3―B4−B5/S4−S5
3)[S1−B1/S2−B2−B3/S3−S4]n
4)[S1−B1/S2−B2−B3/S3―B4−B5/S4−S5]n
このような線状ブロック共重合体及びラジアルブロック共重合体は炭化水素溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤としてビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンを重合することにより得ることができる。
【0018】
本発明に使用するブロック共重合体(a)のビニル芳香族炭化水素の重量比は55%以上80%未満、好ましくは57%以上77%未満、更に好ましくは60%以上75%未満である。ビニル芳香族炭化水素の重量比は55%以上80%未満の範囲にあっては熱収縮性フィルムの剛性と伸びに優れる。
本発明に使用するブロック共重合体(a)のビニル芳香族炭化水素のブロック率は50重量%以上80重量%以下、好ましくは53重量%以上80重量%以下、更に好ましくは58重量%以上80重量%以下である。ブロック共重合体(a)のビニル芳香族炭化水素のブロック率は50重量%以上80重量%以下にあっては熱収縮性フィルムの剛性と収縮応力に優れる。本発明のブロック共重合体(a)のビニル芳香族炭化水素のブロック率は、ブロック共重合体を四酸化オスミウムを触媒としてターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)で測定でき、該方法により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を用いて、次の式から求めた値を云う。
ブロック率(重量%)=(ブロック共重合体(a)中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの重量/ブロック共重合体(a)中の全ビニル芳香族炭化水素の重量)×100
【0019】
本発明に使用するブロック共重合体(a)のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの数平均分子量は0.5万以上2.5万未満、好ましくは0.5万以上2.3万未満、更に好
ましくは0.5万以上2.1万未満である。ブロック共重合体(a)のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの数平均分子量が0.5万以上2.5万未満の範囲にあっては熱収縮性フィルムの収縮応力と伸びに優れる。本発明において、ブロック共重合体(a)のビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの分子量は、前述の酸化分解方法で得たブロック率の定量に用いたものと同一のビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分のものをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で、分子量を特定するものである。分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)用の単分散ポリスチレンをGPCにより、そのピークカウント数と単分散ポリスチレンの数平均分子量との検量線を作成し、常法(例えば「ゲルクロマトグラフィー<基礎編>」講談社発行)に従って算出する。
【0020】
本発明に使用するブロック共重合体(b)のビニル芳香族炭化水素の重量比は好ましくは80%以上95%未満、より好ましくは83%以上93%未満、更に好ましくは87%以上93%未満である。ブロック共重合体(b)のビニル芳香族炭化水素の重量比が80%以上95%未満であっては熱収縮性フィルムの剛性と伸びに優れる。
本発明に使用するブロック共重合体(b)のビニル芳香族炭化水素のブロック率は好ましくは80重量%以下、より好ましくは10〜75重量%、更に好ましくは20〜70重量%である。ブロック共重合体(b)のビニル芳香族炭化水素のブロック率が80重量%以下にあっては熱収縮性フィルムの剛性と低温収縮性に優れる。
【0021】
本発明に使用するブロック共重合体(b)は、ビニル芳香族炭化水素単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体から構成されるセグメントを少なくとも1つと、共役ジエン単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体から構成されるセグメントを少なくとも1つ有する。該ブロック共重合体等のポリマー構造は特に制限は無いが、例えば一般式、
(A−B)n、A−(B−A)n 、B−(A−B)n+1
[(A−B)k]m+1−X 、[(A−B)k−A]m+1−X
[(B−A)k]m+1−X 、[(B−A)k−B]m+1−X
(上式において、セグメントAはビニル芳香族炭化水素単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体、セグメントBは共役ジエン単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体である。Xは例えば四塩化ケイ素、四塩化スズ、1,3ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ化大豆油等のカップリング剤の残基または多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。n、k及びmは1以上の整数、一般的には1〜5の整数である。また、Xに複数結合しているポリマー鎖の構造は同一でも、異なっていても良い。)で表される線状ブロック共重合体やラジアルブロック共重合体、或いはこれらのポリマー構造の任意の混合物が使用できる。また、上記一般式で表されるラジアルブロック共重合体において、更にA及び/又はBが少なくとも一つXに結合していても良い。
【0022】
本発明において、セグメントA、セグメントBにおけるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体中のビニル芳香族炭化水素は均一に分布していても、テーパー(漸減)状に分布していてもよい。また該共重合体中には、ビニル芳香族炭化水素が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がセグメント中にそれぞれ複数個共存してもよい。セグメントA中のビニル芳香族炭化水素含有量({セグメントA中のビニル芳香族炭化水素/(セグメントA中のビニル芳香族炭化水素+共役ジエン)}×100)とセグメントB中のビニル芳香族炭化水素含有量({セグメントB中のビニル芳香族炭化水素/(セグメントB中のビニル芳香族炭化水素+共役ジエン)}×100)との関係は、セグメントAにおけるビニル芳香族炭化水素含有量のほうが、セグメントBにおけるビニル芳香族炭化水素含有量より大である。セグメントAとセグメントBの好ましいビニル芳香族炭化水素含有量の差は5重量%以上であることが好ましい。
【0023】
本発明に使用するブロック共重合体の製造に用いる炭化水素溶媒としては、例えばn−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類、また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素等が使用できる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0024】
また重合開始剤としては、一般的に共役ジエン及びビニル芳香族化合物に対しアニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等を用いることができる。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、好適な有機アルカリ金属化合物としては、炭素数1から20の脂肪族及び芳香族炭化水素リチウム化合物であって、1分子中に1個のリチウムを含む化合物や1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が挙げられる。
【0025】
具体的にはn−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物等が挙げられる。更に、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0026】
ビニル芳香族炭化水素としてはスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレンなどがあるが、特に一般的なものはスチレンが挙げられる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
共役ジエン炭化水素としては、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどであるが、特に一般的なものとしては1,3−ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0027】
ブロック共重合体(a)の水添物を製造する際の水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。具体的な水添触媒としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物および/または還元性有機金属化合物との混合物があげられる。
【0028】
チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨
格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物があげられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等があげられる。
【0029】
水添反応は一般的に0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は0.1〜15MPa、好ましくは0.2〜10MPa、更に好ましくは0.3〜7MPaが推奨される。また、水添反応時間は通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。本発明において、水添前のブロック共重合体を製造する際の重合温度は一般的に−10℃〜150℃、好ましくは40℃〜120℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は10時間以内であり、特に好適には0.5〜5時間である。また、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガスなどをもって置換するのが望ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液層に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に制限されるものではない。更に重合系内には触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガス等が混入しないよう留意する必要がある。
【0030】
本発明に使用するブロック共重合体(a)とブロック共重合体(b)の重量比は好ましくは100/0〜30/70、より好ましくは90/10〜35/65、更に好ましくは80/20〜40/60の範囲である。ブロック共重合体(a)とブロック共重合体(b)の重量比が100/0〜30/70の範囲にあっては剛性、伸びに優れる。
本発明においてはブロック共重合体(a)と下記成分(i)〜(iii)をブロック共重合体(a)100重量部に対して、0.1〜100重量部添加することができる。
(i)ビニル芳香族炭化水素および脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体からなる共重合体
(ii)ビニル芳香族炭化水素重合体
(iii)ゴム変性スチレン系重合体
成分(i)の製造方法は、スチレン系樹脂を製造する公知の方法、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等を用いることができ、重量平均分子量は、一般に50000〜500000の重合体を使用できる。
【0031】
成分(i)として特に好ましいのは、スチレンとアクリル酸n−ブチルを主体とする共重合体であり、アクリル酸n−ブチルとスチレンの合計量が50重量%以上、更に好ましくはアクリル酸n−ブチルとスチレンの合計量が60重量%以上からなる脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体である。アクリル酸n−ブチルとスチレンを主体とする脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体を用いた熱収縮性フィルムは収縮性が良好である。
【0032】
(ii)ビニル芳香族炭化水素重合体はビニル芳香族炭化水素もしくはこれと共重合可能なモノマーを重合して得られるもの(但し、成分(i)を除く)である。ビニル芳香族系炭化水素とは主としてスチレン系の単量体のことをいい、具体的にはスチレン、α−アルキル置換スチレン例えばα−メチルスチレン類、核アルキル置換スチレン類、核ハロゲン置換スチレン類等から選ばれたもので、目的により適当なものを少なくとも1種選べば良い。ビニル芳香族炭化水素と共重合可能なモノマーとしては、アクリロニトリル、無水マレイン酸等があげられる。ビニル芳香族炭化水素重合体としては、ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられるが、特に好ましいビニル芳香族炭化水素重合体としてはポリスチレンをあげることができる。これらのビニル芳香族炭化水素重合体の重量平均分子量は、一般に50000〜500000の重合体を使用できる。また、これらのビニル芳香族炭化水素重合体は単独又は二種以上の混合物として使用でき、剛性改良剤と
して利用できる。
【0033】
(iii)ゴム変性スチレン系重合体はビニル芳香族炭化水素と共重合可能なモノマーとエラストマーとの混合物を重合することによって得られ、重合方法としては懸濁重合、乳化重合、塊状重合、塊状−懸濁重合等が一般的に行われている。ビニル芳香族炭化水素と共重合可能なモノマーとしてはα−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸等があげられる。又、共重合可能なエラストマーとしては天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ハイスチレンゴム等が使用される。
【0034】
これらのエラストマーはビニル芳香族炭化水素もしくはこれと共重合可能なモノマー100重量部に対して一般に3〜50重量部該モノマーに溶解して或いはラテックス状で乳化重合、塊状重合、塊状−懸濁重合等に供される。特に好ましいゴム変性スチレン系重合体としては、耐衝撃性ゴム変性スチレン系重合体(HIPS)があげられ。ゴム変性スチレン系重合体は剛性、耐衝撃性、滑り性の改良剤として利用できる。これらのゴム変性スチレン系重合体の重量平均分子量は、一般に50000〜500000の重合体を使用できる。ゴム変性スチレン系重合体の添加量は透明性維持を考慮すると0.1〜10重量部が好ましい。本発明で使用する成分(i)〜(iii)のMFR(G条件で温度200℃、荷重5Kg)は成形加工の点から好ましくは0.1〜100g/10min、より好ましくは0.5〜50g/10min、更に好ましくは1〜30g/10minであることが推奨される。
【0035】
本発明の熱収縮性フィルムには、目的に応じて種々の添加剤を添加することができる。好適な添加剤としては、クマロン−インデン樹脂、テルペン樹脂、オイル等の軟化剤、可塑剤が挙げられる。又各種の安定剤、顔料、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤等も添加できる。尚、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤としては、例えば脂肪酸アマイド、エチレンビス・ステアロアミド、ソルビタンモノステアレート、脂肪酸アルコールの飽和脂肪酸エステル、ペンタエリストール脂肪酸エステル等、又紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,5−ビス−[5’−t−ブチルベンゾオキサゾリル−(2)]チオフェン等、「プラスチックおよびゴム用添加剤実用便覧」(化学工業社)に記載された化合物が使用できる。これらは、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜3重量%の範囲で用いられる。
【0036】
本発明の熱収縮性フィルムは、熱収縮性1軸又は2軸延伸フィルムであり、材料を通常のTダイ又は環状ダイからフラット状又はチューブ状に150〜250℃、好ましくは170〜220℃で押出成形し、得られた未延伸物を実質的に1軸延伸又は2軸延伸する方法や、第1のインフレーション工程として延伸前の原反シートを作成し、第2のインフレーション工程として流体中で再度インフレーション法によって熱収縮性フィルムを得る方法等によって製造することができる。
【0037】
例えば1軸延伸の場合、フィルム、シート状の場合はカレンダーロール等で押出方向に、或いはテンター等で押出方向と直交する方向に延伸し、チューブ状の場合はチューブの押出方向又は円周方向に延伸する。2軸延伸の場合、フィルム、シート状の場合には押出フィルム又はシートを金属ロール等で縦方向に延伸した後、テンター等で横方向に延伸し、チューブ状の場合にはチューブの押出方向及びチューブの円周方向、即ちチューブ軸と直角をなす方向にそれぞれ同時に、或いは別々に延伸する。
【0038】
本発明においては、延伸温度60〜130℃、好ましくは70〜120℃、更に好まし
くは80〜110℃で、縦方向及び/又は横方向に延伸倍率1.5〜8倍、好ましくは2〜6倍に延伸するのが好ましい。延伸温度が60℃未満の場合には延伸時に破断を生じて所望の熱収縮性フィルムが得にくく、130℃を超える場合は収縮特性の良好な物が得難い。延伸倍率は用途によって必要とする収縮率に対応するように上記範囲内で選定されるが、延伸倍率が1.5倍未満の場合は熱収縮率が小さく熱収縮包装用として好ましくなく、又8倍を超える延伸倍率は延伸加工工程における安定生産上好ましくない。2軸延伸の場合、縦方向及び横方向における延伸倍率は同一であっても、異なっていてもよい。1軸延伸又は2軸延伸の熱収縮性フィルムは、次いで必要に応じて60〜160℃、好ましくは80〜155℃で短時間、例えば3〜60秒間、好ましくは10〜40秒間熱処理して室温下における自然収縮を防止する手段を実施することも可能である。
【0039】
このようにして得られた熱収縮性のフィルムを熱収縮性包装用素材や熱収縮性ラベル用素材として使用するには、延伸方向における70℃の熱収縮率が好ましくは6%以上30%以下、より好ましくは8%以上、更に好ましくは10%以上である。熱収縮率がかかる範囲の場合、熱収縮率と自然収縮率のバランスに優れた熱収縮性フィルムが得られる。尚、本発明において70℃の熱収縮率は低温収縮性の尺度であり、1軸延伸又は2軸延伸フィルムを70℃の熱水、シリコーンオイル、グリセリン等の成形品の特性を阻害しない熱媒体中に10秒間浸漬したときの成形品の各延伸方向における熱収縮率である。本発明においては、上記熱収縮率の範囲において、熱収縮性フィルム自体の自然収縮率が好ましくは0%以上4.0%以下、より好ましくは3.5%以下、更に好ましくは3.0%以下であることが推奨される。ここで熱収縮性フィルム自体の自然収縮率とは、上記熱収縮率の範囲の熱収縮性フィルムを40℃で3日間放置し、後述する式により算出した値である。
【0040】
更に、本発明の熱収縮性フィルムは、延伸方向における引張弾性率が好ましくは1.6GPa以上3.0GPa以下、より好ましくは1.65GPa以上、更に好ましくは1.70GPaであることが熱収縮包装材として必要である。延伸方向における引張弾性率が1.6GPa以上にあっては収縮包装工程においてヘタリを生じずに正常な包装ができる。
また、本発明の熱収縮性フィルムの延伸方向における収縮時の最大収縮応力は好ましくは0MPa以上4.0MPa以下、より好ましくは3.7MPa以下、更に好ましくは3.5MPa以下である。熱収縮性フィルムの延伸方向における収縮時の最大収縮応力が4.0MPa以下にあっては収縮包装工程のラベル被覆仕上がり性に優れる。最大収縮応力は延伸方向と垂直軸に10mm、延伸方向に85mmにフィルム切り出しチャック間を60mmとしてフィルムを挟んだ後、フィルム緩みを取り除くために0.2Nの力をフィルムにかけて80℃のオイル槽に浸漬させて収縮時の最大収縮応力を測定した値である。
【0041】
本発明の熱収縮性フィルムの延伸方向に垂直方向の0℃の伸びは好ましくは100%以上800%以下、より好ましくは150%以上、更に好ましくは200%以上である。0℃の伸びが100%以上にあっては印刷時の耐キレ性に優れる。
本発明の熱収縮性フィルムを熱収縮性包装材として使用する場合、目的の熱収縮率を達成するために130〜300℃、好ましくは150〜250℃の温度で数秒から数分、好ましくは1〜60秒加熱して熱収縮させることができる。
【0042】
本発明の熱収縮性フィルムは、少なくとも2層、好ましくは少なくとも3層構造を有する多層積層体であっても良い。多層積層体としての使用形態は、例えば特公平3−5306号公報に開示されている形態が具体例として挙げられる。本発明の熱収縮性フィルムは中間層に用いてもよく、両外層に用いても良い。本発明の熱収縮性フィルムを多層フィルムに使用する場合、本発明の熱収縮性フィルムを使用したフィルム層以外の層は特に制限はなく、構成成分や組成等が異なる本発明の熱収縮性フィルム、或いは本発明以外の熱収縮性フィルムを組み合わせた多層積層体であっても良い。本発明の熱収縮性フィルムを中
層とする場合の外層フィルムのビカット軟化温度は中層よりも3〜15℃、好ましくは5〜12℃高いものが良い。
本発明の熱収縮性フィルム及び熱収縮性多層フィルムの厚さは10〜300μm、好ましくは20〜200μm、更に好ましくは30〜100μmで、多層フィルムの両表層と内層の厚みの割合は5/95〜45/55、好ましくは10/90〜35/65であることが推奨される。
【0043】
本発明の熱収縮性フィルムは、その特性を生かして種々の用途、例えば生鮮食品、菓子類の包装、衣類、文具等の包装等に利用できる。特に好ましい用途としては、本発明で規定するブロック共重合体の1軸延伸フィルムに文字や図案を印刷した後、プラスチック成形品や金属製品、ガラス容器、磁器等の被包装体表面に熱収縮により密着させて使用する、いわゆる熱収縮性ラベル用素材としての利用が挙げられる。
取り分け、本発明の熱収縮性フィルムは剛性と低温伸びに優れるため、高温に加熱すると変形を生じる様なプラスチック成形品の熱収縮性ラベル素材の他、熱膨張率や吸水性等が本発明のブロック共重合体とは極めて異なる材質、例えば金属、磁器、ガラス、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種を構成素材として用いた容器の熱収縮性ラベル素材として好適に利用できる。尚、本発明の熱収縮性フィルムが利用できるプラスチック容器を構成する材質としては、上記の樹脂の他、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。これらのプラスチック容器は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
【実施例】
【0044】
以下に本発明の実施例を説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
表1にブロック共重合体(a)(A−1〜A−12)及びブロック共重合体(b)(B−1〜B−2)を示した。
(ブロック共重合体A−1〜A−12及びB−1〜B−2の調製)
ブロック共重合体はシクロヘキサン溶媒中n−ブチルリチウムを触媒とし、テトラメチルエチレンジアミンをランダム化剤として、表1及び表2に示したスチレン含有量(重量%)、ブロック率(重量%)及びブロックスチレンの分子量を有するブロック共重合体を製造した。スチレン含有量はスチレンとブタジエン(イソプレンが入る場合はイソプレンも含む)の添加量で、ブロック率はセグメントAとセグメントBのスチレン含有量で、ブロックスチレンの分子量はセグメントAとセグメントBのスチレン含有量、量比で調整した。なお、ブロック共重合体の調製において、モノマーはシクロヘキサンで濃度20重量%に希釈したものを使用した。
【0045】
1)ブロック共重合体A−1
攪拌機付きオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下において、n−ブチルリチウムを0.085重量部、テトラメチルエチレンジアミンを0.03重量部をシクロヘキサン中に添加し、70℃の前記溶液中にスチレン20重量部を含むシクロヘキサン溶液を18分間連続的に添加した後、更にスチレン20重量部とブタジエン30重量部を含むシクロヘキサン溶液を51分間連続的に添加した。その後、更にスチレン30重量部を含むシクロヘキサン溶液を20分間連続的に添加した。その後、10分間保持した後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して1.0倍モル添加して重合を停止し、安定剤として
2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体組成物100重量部に対して0.6重量部を加えた後、脱溶媒してブロック共重合体を得た。
2)ブロック共重合体A−2〜A−12
ブロック共重合体A−2〜A−12はA−1と同様な方法で調製した。
【0046】
3)ブロック共重合体B−1
攪拌機付きオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下において、n−ブチルリチウムを0.055重量部、テトラメチルエチレンジアミンを0.25重量部をシクロヘキサン中に添加し、65℃のこのシクロヘキサン溶液中にスチレン23.5重量部を含むシクロヘキサン溶液を20分間連続的に添加した後、更にスチレン29重量部とブタジエン6重量部を含むシクロヘキサン溶液を33分間連続的に添加した。その後、更にスチレン16重量部とブタジエン2.1重量部を含むシクロヘキサン溶液を15分間連続的に添加した。その後、スチレン23.4重量部を含むシクロヘキサン溶液を10分間連続的に添加した後、反応機に4官能カップリング剤〔1.3ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン〕をn−ブチルリチウムに対して0.4当量添加した。
その後、5分間保持した後、重合器にメタノールをn−ブチルリチウムに対して0.6倍モル添加して重合を停止し、安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートをブロック共重合体組成物100重量部に対して0.4重量部を加えた後、脱溶媒してブロック共重合体を得た。
4)ブロック共重合体B−2
ブロック共重合体B−2はB−1と同様な方法で調製した。
【0047】
(測定・評価方法)
実施例及び比較例に記載した測定、評価は以下の方法で行った。ここで、フィルムの主収縮方向をTD、その直角方向をMDとした。
1)スチレン含量
ブロック共重合体水添物のスチレン含量は、紫外分光光度計(装置名:UV−2450;島津製作所製)を用いて測定した。
2)ブロック率
ブロック共重合体を、四酸化オスミウムを触媒としてターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を用いて、次の式から求めた。
ブロック率(重量%)=(ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分の重量/ブロック共重合体中の全ビニル芳香族炭化水素の重量)×100
【0048】
3)熱収縮率
熱収縮率は、延伸フィルムを70℃のウォーターバス中に10秒間浸漬し、次式により算出した。
熱収縮率(%)=(L−L1)/L×100、
L:TD方向収縮前の長さ、L1:TD方向収縮後の長さ。
4)自然収縮率
延伸フィルムを40℃で3日間放置した時のTD方向収縮率である。計算式は、上記の熱収縮率と同様に行った。自然収縮率が小さいほど、自然収縮性は優れる。
【0049】
5)引張弾性率及び0℃伸び
引張り弾性率は、試験片幅を10mm、チャック間を100mm、引張速度10mm/
minで測定した。0℃伸びは、試験片幅を15mm、チャック間を40mm、引張速度100mm/minで測定した。測定温度は引張弾性率が23℃のTD方向、伸びは0℃のMD方向で行った。
6)収縮応力
延伸方向と垂直軸に10mm、延伸方向に85mmにフィルム切り出しチャック間を60mmとしてフィルムを挟む。フィルム緩みを取り除くために0.2Nの力をフィルムにかけて80℃のオイル槽に浸漬させTD方向収縮時の最大収縮応力を読み取る。テスター産業(株)製、収縮応力測定器を用いて測定した。
7)透明性
フィルム表面に流動パラフィンを塗布し、ASTM D1003に準拠して測定した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
<実施例1〜5及び比較例1〜7>
表2に示す配合処方に従い、40mm押出機を用いて200℃で厚さ0.25mmのシート状に成形し、その後延伸温度を85℃として、テンターを用いて横軸に延伸倍率を5倍に1軸延伸して厚さ約50μmの熱収縮性フィルムを得た。この熱収縮性フィルムのフィルム性能を表2に示した。本発明の熱収縮性フィルムの性能は引張弾性率で表される剛性、収縮率で表される70℃収縮性、自然収縮性、0℃の伸び、透明性及び収縮応力に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の熱収縮性フィルムは、剛性、透明性、自然収縮性、低温収縮性及び低収縮応力等の物性バランスに優れることから、薄肉化熱収縮性フィルム材料として、飲料容器包装やキャップシール及び各種ラベル等に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)と少なくとも2つのビニル芳香族炭化水素/共役ジエン系炭化水素共重合体ブロック(S/B)、少なくとも1つの共役ジエン系炭化水素重合体ブロック(B)を含むブロック共重合体(a)であって、該ブロック共重合体(a)の両末端重合体ブロックがビニル芳香族炭化水素重合体ブロック(S)であり、両末端ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの内端には各々直接結合したビニル芳香族炭化水素/共役ジエン系炭化水素共重合体ブロック(S/B)を有し、ビニル芳香族炭化水素/共役ジエン系炭化水素共重合体ブロック(S/B)の内端には各々直接結合した共役ジエン系炭化水素重合体ブロック(B)が存在しており、該ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素の重量比が55%以上80%未満、ビニル芳香族炭化水素のブロック率が50重量%以上80重量%以下であり、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロックの数平均分子量が0.5万以上2.5万未満であるブロック共重合体から得られる熱収縮性フィルム。
【請求項2】
ブロック共重合体(a)が水素添加されていることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項3】
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなり、ビニル芳香族炭化水素の重量比が80%以上95%未満、ビニル芳香族炭化水素のブロック率が80重量%以下であるブロック共重合体(b)と、請求項1又は2に記載のブロック共重合体(a)を含有するブロック共重合体組成物から得られる熱収縮性フィルム。
【請求項4】
ブロック共重合体(a)とブロック共重合体(b)の重量比が100/0〜30/70である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項5】
延伸方向における引張弾性率が1.6GPa以上3.0GPa以下、延伸方向における収縮時の最大収縮応力が0MPa以上4.0MPa以下である事を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項6】
熱収縮率が70℃中10秒間で6%以上30%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項7】
自然収縮率が40℃中3日間で0%以上4.0%以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項8】
延伸方向に垂直方向の0℃の伸びが100%以上800%以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルムを含む熱収縮性多層フィルム。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルムまたは請求項9に記載の熱収縮性多層フィルムから得られるラベル。
【請求項11】
請求項10に記載のラベルで被覆された容器。

【公開番号】特開2008−260797(P2008−260797A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102667(P2007−102667)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】