説明

ブロック製造方法

【課題】 簡単な操作で効率よく複数の固体化ブロックを製造するブロック製造方法を提供する。
【解決手段】 平面11上に硬化材を含む混練物12を置き、混練物12の上方から、型枠13を押し付けて、脱型して複数の固化体ブロック28〜30を同時に製造する。これによって、道路用縁石、擬石、擬岩、又はレンガ等の製品、コンクリート又はアスファルト等の骨材、及び路盤材等にする前の塊状物等に使用できる固体化ブロック28〜30を簡単な操作で効率よく大量に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の固体化ブロックを簡単に製造できるブロック製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化材を含む混練物(例えば、コンクリート又はモルタル)を固化して製造される固体化ブロックは、例えば、(イ)道路用縁石、擬石、擬岩、又はレンガ等の製品、(ロ)コンクリート又はアスファルト等の骨材、又は(ハ)路盤材等にする前の塊状物等として使用されている。固体化ブロックは、まず、上方に開放している型枠内に混練物を流し込み、次にバイブレータ等の振動装置で型枠を振動して混練物を型枠の隅部まで充填し、更に型枠内の混練物を加圧して圧入した後、混練物が所定の強度となった後に型枠を上下逆さまにして固体化ブロックを型枠から脱型して製造されている。また、混練物にスランプ値の低いものを使用し、脱型までの時間を短くして即時に脱型する方法も知られている。
【0003】
しかしながら、固体化ブロックを大量生産する場合、多数の型枠及び広い作業場所が必要であるため、複数の固体化ブロックを隣接して配置するユニット製造が行われている。このように、同時に複数の固体化ブロックを製造する方法として、例えば、特許文献1には、岩に似せた形状の凹枠を複数個配列し、隣接する凹枠を連結する凹溝を有した型枠を使用するマトリックス状擬岩ブロックの製造方法が開示され、型枠の開口部側を上にして、凹溝を利用して連結部材を配置した後、混練物を充填してプレスし、ブロックを製造している。
【0004】
また、特許文献2には、区画壁で区分されている上面開放の複数の凹部が形成された面パレットと、面パレットの上部に配置され、面パレットの区画壁に対応する位置に配置される区画リブが設けられた主枠とを有する型枠を備えた即脱ブロック成型装置が開示されている。特許文献2の発明では、面パレットの凹部にコンクリート材を投入し連接部材を装填した後、面パレットの上部に主枠を組み合わせ、更に、主枠の上部からコンクリートを投入しプレス機構によってコンクリート材を加圧してブロックを製造している。
【0005】
【特許文献1】特開平10−180732号公報
【特許文献2】特開平8−1627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2のブロック製造方法では、未だ解決すべき以下のような問題があった。
(イ)混練物の型枠への投入から脱型までの操作が煩雑であり、操作に時間がかかると混練物が硬化して脱型できないことがあった。また、操作に時間がかかるので、短時間に大量のブロックを製造する場合、多くの型枠が必要となっていた。なお、混練物が硬化する前に脱型すると、成形した混練物(固体化ブロック)の形状が崩れ、隣り合う固体化ブロックが一体化することがあった。
(ロ)混練物を型枠の隅部まで充填するための型枠を振動する振動装置(たとえば、バイブレータ)、及び、混練物を加圧して型枠に圧入するための加圧装置(例えば、プレス機)が必要となり、製造装置が大型化していた。
【0007】
(ハ)閉塞された空間に混練物を投入してプレスするため、型枠内に投入する混練物の量を管理する必要があり、プレス前に型枠内に多めに混練物を投入した後プレスして型枠からはみ出した余剰の混練物を除去する操作や、プレス前に所定量の混練物を型枠内に投入し型枠の形状と実質的に等しく形成されたプレス用の板でプレスする操作が必要であった。また、型枠内に投入した混練物が自重によって沈降することを考慮して、混練物の投入量を決めなければならなかった。
(ニ)型枠が上方開放のため、型枠の開放部側に蓋をした後、型枠を上下反転させて脱型しなければならず、特に大型のブロックを製造する場合には装置が大掛かりとなっていた。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、簡単な操作で効率よく複数の固体化ブロックを製造するブロック製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的に沿う請求項1記載のブロック製造方法は、平面上に硬化材を含む混練物を置き、該混練物の上方から、型枠を押し付けて、脱型して複数の固化体ブロックを同時に製造する。
請求項1記載のブロック製造方法において、硬化材を含む混練物としては、例えば、モルタル、又はコンクリートが使用できる。また、硬化材を含む混練物としては、高炉スラグ、製鋼スラグ(例えば、転炉スラグ、電気炉スラグ、溶銑予備処理スラグ、二次精錬スラグ、スロッピングスラグ、鋳造スラグ、及び混銑炉スラグのいずれか1又は2以上を含む)、及びフライアッシュのいずれか1又は2以上の副産物も使用できる。
【0010】
また、使用する型枠は、重量が重く強度が強い鋼製であるのが好ましい。また、脱型は、混練物が硬化する前、例えば、完全に硬化した際の強度を100%とすると、混練物の強度が50%未満である際に行うことが好ましい。混練物の強度が50%以上となる、すなわち混練物の硬化が進むと脱型ができなくなることがある。
【0011】
請求項2記載のブロック製造方法は、請求項1記載のブロック製造方法において、前記固化体ブロックは、高さ、奥行き、及び幅がそれぞれ100mm以上で500mm以下である。
請求項3記載のブロック製造方法は、請求項1及び2記載のブロック製造方法において、前記型枠は、前記固化体ブロックの上面及び側面をそれぞれ形成する天板部材と複数の側板部材とを有し、前記側板部材の上端高さは均一で、一部の前記側板部材Aの下端高さは、他の前記側板部材Bの下端高さよりnだけ高く、しかも、前記側板部材Bの高さをLとし、前記混練物中の粒子の最大粒径をdとした場合、以下の式を満足する。
2×d≦n≦L/2
【0012】
請求項3記載のブロック製造方法において、側板部材Bは下端が平面に接して混練物を分断し、側板部材Aの下端と平面との間には高さnの隙間ができ、混練物の側方流動を促進し、連接部分を形成して、隣り合う固体化ブロックを下部で連接することができる。側板部材Aの下端と平面との距離、すなわちnが、2×d未満であると、混練物中の粒子が隙間に詰まる場合があり、隣り合う凹部への混練物の流動性が悪くなる。また、この場合には、例えば輸送時等における振動により連接部分で分割されることがあった。また、nがL/2を超えると、固体化ブロックに分割する際に連接部分で割れ難くなり、歪な形状の固体化ブロックが製造されたり、連接部分で分割できず固体化ブロックを製造できない場合がある。
【0013】
請求項4記載のブロック製造方法は、請求項3記載のブロック製造方法において、前記側板部材A及び前記側板部材Bは直交して井桁状に配置されている。
請求項5記載のブロック製造方法は、請求項3及び4記載のブロック製造方法において、前記側板部材A及び前記側板部材Bのいずれか一方又は双方の側面の傾斜角が平面に対して80度以下である。
請求項5記載のブロック製造方法において、傾斜角度が80度を超えると、脱型時に型枠内に混練物が残留することがある。なお、傾斜角度の下限は、製造する固体化ブロックによって異なるが、例えば60度が好ましい。
【0014】
請求項6記載のブロック製造方法は、請求項3及び4記載のブロック製造方法において、前記側板部材A及び前記側板部材Bのいずれか一方又は双方の側板部材の側面が平面に対して実質直角であって、該側板部材の厚みtと該側板部材に前記混練物が接する高さHが以下の式を満足し、前記混練物のスランプ値は0cm以上で5cm以下である。
t≧0.005×H
【0015】
請求項6記載のブロック製造方法において、側面が平面に対して実質直角である側板部材の厚みtが、0.005×H未満であると、混練物の形状が崩れた場合に隣り合う固体化ブロックが接触して一体化することがある。また、隙間幅が狭すぎて繋がった固体化ブロックを分割し難かった。厚みtの上限は、製造する固体化ブロックによって異なるが、例えば、0.010×Hが好ましい。また、スランプ値が、5cmを超えると、混練物の形状を維持できず、隣り合う固体化ブロックが接触するので、隙間の幅方向の長さを大きくしなければならず、また、固化に時間がかかる。なお、スランプ値は、日本工業規格JIS A1101のコンクリートのスランプ試験方法よって測定する。
【0016】
請求項7記載のブロック製造方法は、請求項3及び4記載のブロック製造方法において、前記側板部材A及び前記側板部材Bのいずれか一方の傾斜角が平面に対して80度以下で、前記側板部材A及び前記側板部材Bのいずれか他方の側板部材の側面が平面に対して実質直角であって、該側板部材の厚みtと該側板部材に前記混練物が接する高さHが以下の式を満足し、前記混練物のスランプ値は0cm以上で5cm以下である。
t≧0.005×H
【0017】
請求項8記載のブロック製造方法は、請求項3〜7記載のブロック製造方法において、前記型枠は、前記側板部材と前記天板部材とが分離可能に形成されている。
請求項8記載のブロック製造方法において、分離されている側板部材と天板部材とはチェーン等で連結してもよい。
請求項9記載のブロック製造方法は、請求項8記載のブロック製造方法において、前記固化体ブロックを脱型する場合、前記天板部材を取り除いた後、前記側板部材を取り除く。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜9記載のブロック製造方法は、平面に置いた混練物の上方から型枠を押し付けるので、簡単な操作で効率よく複数の固体化ブロックを製造できる。
特に、請求項2記載のブロック製造方法は、固化体ブロックの高さ、奥行き、及び幅がそれぞれ100mm以上で500mm以下であるので、道路用縁石、擬石、擬岩、又はレンガ等の製品、コンクリート又はアスファルト等の骨材、及び路盤材等にする前の塊状物等に使用し易い。
【0019】
請求項3記載のブロック製造方法は、型枠が天板部材と複数の側板部材からなるので、型枠を簡単に形成することができる。また、側板部材Aと側板部材Bの下端高さの差が所定の範囲にあるので、型枠内の混練物の流動性を促進できる。
請求項4記載のブロック製造方法は、側板部材A及び側板部材Bは直交して井桁状に配置されているので、形の整った固体化ブロックを製造できる。
【0020】
請求項5記載のブロック製造方法は、一部又は全部の側板部材の側面の傾斜角が平面に対して80度以下であるので、脱型し易くなる。
請求項6記載のブロック製造方法は、一部又は全部の側板部材の側面が平面に対して実質直角であって、側板部材の厚みtと側板部材に混練物が接する高さHが所定の式を満足し、混練物のスランプ値は0cm以上で5cm以下であるので、脱型後に混練物が歪んでも隣り合う固体化ブロックが一体化することがなくなる。
【0021】
請求項7記載のブロック製造方法は、側板部材A及び側板部材Bのいずれか一方の傾斜角が平面に対して80度以下で、側板部材A及び側板部材Bのいずれか他方の側板部材の側面が平面に対して実質直角であって、側板部材の厚みtと側板部材に混練物が接する高さHが所定の式を満足し、混練物のスランプ値は0cm以上で5cm以下であるので、ブロックを脱型し易く、しかも、隣り合う固体化ブロックのが一体化することがなくなる。
【0022】
請求項8記載のブロック製造方法は、型枠は、側板部材と天板部材とが分離可能に形成されているので、型枠内に混練物を挿入する際に側板部材と天板部材との隙間から空気が抜け、型枠内に空気を残存させずに混練物を充填することができる。
請求項9記載のブロック製造方法は、天板部材を取り除いた後、側板部材を取り除くので、型枠内に充填された混練物と型枠との間が真空となるのを防ぎ、脱型し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1(a)〜(e)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係るブロック製造方法における各工程の説明図、図2(a)は同ブロック製造方法により製造された連接ブロック体の説明図、(b)、(c)はそれぞれ固体化ブロックの説明図、図3は同ブロック製造方法に使用される型枠の説明図、図4(a)、(b)はそれぞれ同ブロック製造方法で製造した連接ブロック体の変形例の説明図である。
【0024】
図1〜図3に示すように、本発明の一実施の形態に係るブロック製造方法は、平面11上に置かれた硬化材を含む混練物の一例であるコンクリート12に、コンクリート12の上方から型枠13を押し付けて、型枠13内にコンクリート12を圧入して充填した後、型枠13を取り除いて複数の固体化ブロック28〜30を同時に製造する方法である。ここで、使用するコンクリート12は、セメント、砂、砂利、及び水を混練したもので、スランプ値が0cm以上で5cm以下である。以下、まず、本実施の形態に係るブロック製造方法で使用する型枠13及び連結された複数の固体化ブロック28〜30からなる連接ブロック体10について詳しく説明する。
【0025】
図3に示すように型枠13は、固体化ブロック28〜30の側面を形成する複数の側板部材(すなわち、側板部材Aの一例である縦板14〜17、及び側板部材Bの一例である横板18〜21)と、固体化ブロック28〜30の上面を形成する天板部材22とを有している。縦板14〜17と横板18〜21とは、上端高さは均一であるが、下端高さにおいては、縦板14〜17の下端高さが、横板18〜21の下端高さよりnだけ高くなっている。
【0026】
つまり、型枠13を平面11上に載置した際には、縦板14〜17と横板18〜21の上端高さはLとなり、縦板14〜17の下端は平面11との間にnの高さの隙間を有し、また、横板18〜21の下端は平面11と接触して配置される。また、縦板14〜17は、高さ方向の長さがL−nであって、nは(1)式を満たすものである。なお、dはコンクリート12中に含まれる粒子(例えば、砂利)の最大粒径である。
2×d≦n≦L/2 ・・・(1)
【0027】
縦板14〜17及び横板18〜21と天板部材22は鋼製であり、また、縦板14〜17及び横板18〜21は、井桁状に配置されて一体化され、また、枠組みされた縦板14〜17及び横板18〜21からなる側板体23と天板部材22とは分離可能に形成されている。従って、側板体23の上部に天板部材22を載置することができる。ここで、縦板14、17及び横板18〜21はそれぞれ板状であり、縦板14、17と横板18、21とは、平面視して矩形状(正方形を含む)に配置され、しかも、平面視して天板部材22の大きさと実質的に等しくなるように形成されている。
【0028】
縦板14及び縦板17の間には、縦板14及び縦板17と平行に配置されたくさび形状(すなわち、断面が逆三角形)の縦板15、16が設けられている。縦板15、16のそれぞれの傾斜角θは、平面11に対して80度以下に形成されている。また、隣り合う縦板14、縦板15、縦板16及び縦板17は、それぞれ所定の間隔、例えば、100mm以上500mm以下を有して配置されている。
【0029】
また、横板18及び横板21の間には、横板18及び横板21と平行に配置される横板19、20が設けられている。ここで、横板19、20には、直交する縦板15、16をはめ込む切欠きがそれぞれ設けられている。また、隣り合う横板18、横板19、横板20及び横板21は、それぞれ所定の間隔、例えば、100mm以上500mm以下を有して配置されている。また、横板19と横板20の厚みtは、横板19、20が型枠13内の混練物と接する高さH(この実施の形態では、LとHは等しくなる)と(2)式の関係を満たしている。
t≧0.005×H ・・・(2)
【0030】
更に、側板体23と天板部材22とは、それぞれの4隅がチェーン24を介して接続されている。また、天板部材22の4隅には型枠13を吊り上げるチェーン25が取付けられている。なお、型枠は、天板部材と側板部材とが一体化して分離不可能となるように形成してもよい。
【0031】
図2(a)に示すように、型枠13内にコンクリート12を充填して形成される連接ブロック体10は、実質的に型枠13の内側の形状と同じ形状となっている。なお、下端が平面11との間に隙間を有さない横板19、20によって分割されて実質的に同形状の連接ブロック体10が3つ製造されている。また、製造された各連接ブロック体10は、tの幅の隙間を有して隣接し、それぞれ対向する側面が平面11に対して90度の角度を有しており、コンクリート12のスランプ値が0cm以上で5cm以下であるので、隣り合う連接ブロック体10が一体化しないようになっている。
【0032】
また、各連接ブロック体10には、3つの固体化ブロック28〜30が繋がって形成され、固体化ブロック28〜30の間には、縦板15、16を除去した所にそれぞれ形成されるくさび形状(つまり、断面形状は逆三角形)の隙間26、27を有している。固体化ブロック28と固体化ブロック29、固体化ブロック29と固体化ブロック30の連結部は、それぞれ隙間26、27によって厚みがnとなっているので分割し易くなっている。また、固体化ブロック28〜30の隙間26、27を挟んで対向する側面の傾斜角は、80度以下となっている。
【0033】
図2(b)、(c)に示すように、連接ブロック体10は、3つに分割されて、実質的に高さ、奥行き、及び幅がそれぞれ100mm以上で500mm以下の固体化ブロック28〜30を製造できる。なお、固体化ブロック28と固体化ブロック30は実質的に同じ形状となっている。
【0034】
次に、図1を参照して、本発明の一実施の形態に係るブロック製造方法について説明する。
(a)平面11上にコンクリート12を、例えば高さがL以上になるように置き、その上方にチェーン25を介して、重機、例えば、油圧ショベル31のアーム32の先端に取付けた型枠13を配置する。
(b)油圧ショベル31のアーム32の先端を降下させ、コンクリート12に型枠13の側板体23を挿入する。
【0035】
(c)油圧ショベル31のアーム32の先端を更に降下させ、型枠13の側板体23の上部に天板部材22を配置する。
(d)油圧ショベル31のバケット33で天板部材22を押し付けて、型枠13を平面11に載置し、型枠13内にコンクリート12を圧入して充填する。この際に、型枠13には側板体23と天板部材22との間に隙間ができるので、型枠13内にコンクリート12を圧入しながら空気抜きができると共に、コンクリート12の側方流動を促進し、型枠13内の隅部までコンクリート12を充填できる。
【0036】
(e)油圧ショベル31のアーム32を上昇させ、天板部材22を除去した後、側板体23を除去して脱型し、型枠13外のコンクリートを除去して連接ブロック体10を得る。このように、まず天板部材22を除去するので、型枠13内に充填されたコンクリート12と型枠13とは真空状態とならず、型枠13を脱型し易くなる。また、縦板15、16の側面が平面11と80度以下の角度を有しているので、脱型し易くなっている。
製造された連接ブロック体10を隙間26、27の直下の連結部で分割して、固体化ブロック28〜30を得ることができる。隙間26、27の側面が傾斜しているので応力が集中して連接ブロック体10が分割し易くなっている。
【0037】
また、型枠として、側板部材と天板部材とを一体的に形成したものを使用することもできる。一体型の型枠を使用してブロックを製造する場合、脱型時に型枠とコンクリートとが密閉(真空)状態となるため、型枠内にコンクリートが残留することがある。なお、一体型の型枠に空気抜き用の孔を設けることもできるが、空気抜き用の孔にコンクリートを構成する粒子が詰まることがあり、詰まった粒子を除去する作業が必要となることがある。ここで、型枠に設ける空気抜き用の孔を大きくすると、型枠内に圧力がかからず、コンクリートを圧入できないので、製造したブロックの強度が低くなる。
【0038】
次に、図4(a)、(b)を参照して、本発明の一実施の形態に係るブロック製造方法に適用される変形例に係る型枠によって製造された連接ブロック体40、50について説明する。
図4(a)に示す連接ブロック体40は、連接ブロック体10を形成する型枠13の板状の横板19、20の高さ方向の長さを(L−n)に、断面逆三角形の縦板15、16の高さ方向の長さをLとした型枠によって形成した点が、連接ブロック体10と異なっている。なお、高さ方向の長さがLの断面逆三角形の縦板によって分断されるので、3つの連接ブロック体40が製造される。
【0039】
ここで、側板体の内側に配置される横板によってそれぞれ形成される隙間41、42の高さH′は(L−n)であり、この横板によって形成される隙間の幅、すなわち、横板の厚みt′はH′の0.005倍以上に形成している。また、断面逆三角形の縦板の側面と平面11とのなす角度を80度以下としているので、連接ブロック体40の断面逆三角形の縦板によって形成される隙間43、44は、連接ブロック体10の隙間26、27よりも大きく形成されている。
【0040】
また、図4(b)に示す連接ブロック体50は、連接ブロック体10を形成する型枠13の板状の横板19、20の代わりに、下端高さがn、すなわち、高さ方向の長さが(L−n)の断面逆三角形の横板を使用して形成した型枠によって製造している点が、連接ブロック体10と異なっている。これによって、連接ブロック体50は、9つの固体化ブロックが下部で連接されて一体となっている。
【実施例】
【0041】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
(実施例1〜60)
まず、含まれる粒子の最大粒径が25mmのコンクリートを、平面上に例えば高さが300mm以上になるように置いた後、このコンクリートの上方にチェーンを介して、油圧ショベルのアームの先端に取付けた型枠を配置する。なお、型枠の内側の高さは300mmとなっている。
【0042】
次に、型枠の下部が平面に接触するまで降下させ、コンクリートに型枠を押し付けて、型枠内にコンクリートを圧入する。コンクリートが硬化する前に、油圧ショベルのアームを上昇させて脱型し、連接ブロック体を得る。更に、連接ブロック体を分割して複数の固体化ブロックを得た。なお、コンクリートが硬化する前とは、完全に硬化したコンクリートの強度を100%とすると、強度が50%未満、例えば、強度が30%となったときである。
【0043】
ここで、型枠は、図3に示す型枠13と実質的に同形状に形成された側板部材(縦板14〜17及び横板18〜21)を使用している。ただし、実施例1〜30では、側板部材と天板部材とが分離可能に形成された型枠を使用し、実施例31〜60では、側板部材と天板部材とが一体的に形成された型枠を使用している。また、実施例1〜60では、縦板14〜17の下端高さn(40、50、75、150、又は170mm)、断面逆三角形の縦板15、16の傾斜角θ(80又は85度)、及び板状の横板19、20の厚みt(1.5又は1.0mm)が異なる型枠を使用する点と、コンクリートのスランプ値S(5又は7cm)が異なる点とがそれぞれ違っている。
【0044】
ここで、実施例1〜60で製造した連接ブロック体及び固体化ブロックについて、不良の発生頻度及び不良の内容を調べ、実施例1〜30の結果を表1に、実施例31〜60の結果を表2に示す。なお、不良の内容は、Aが脱型後にコンクリートが型枠内に残留した、Bが型枠内のコンクリートの充填が十分でなかった、Cがブロックを分割した固体化ブロックの形状が歪になった、Dがコンクリートが崩れて隣り合うブロックが一体化したことをそれぞれ示している。また、不良の発生頻度では、これらの不良の内容の発生頻度を示し、◎がなし(0%)、○がほぼなし(5%以下)、□があまり見られない(10%以下)、△が若干あり(15%以下)、×があり(15%を超える)を表している。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
表1及び表2に示すように、実施例1〜60は、若干の不良が発生するものがあったが、ブロックが製造された。ここで、側板部材と天板部材とが一体となった型枠を使用した実施例31〜60では、不良が発生した場合のすべてにおいて脱型後にコンクリートが型枠内に残留した。これは、型枠とコンクリートとが密着して真空状態となるためと解される。
【0048】
縦板14〜17の下端高さnが2×d未満、すなわち、下端高さnが50mm未満である実施例1〜6及び実施例31〜36では、型枠内にコンクリートが十分に充填されていない場合があった。これは、コンクリート中の粒子が縦板14〜17と平面11との間の隙間に詰まって、コンクリートの側方流動性が悪くなっていると解される。また、縦板14〜17の下端高さnが2×d、すなわち、50mmである実施例7〜12及び実施例37〜42では、頻度は減るが型枠内にコンクリートが十分に充填されていない場合があった。
【0049】
また、縦板14〜17の下端高さnがL/2を超える、すなわち、170mmである実施例25〜30及び実施例55〜60では、若干ではあるが固体化ブロックが歪になった。これは、ブロックの縦板14〜17によって形成される隙間の長さが短い、つまり、隣接する固体化ブロックの連接部の高さが長いので、ブロックを分割する際にきれいに割れなかったと解される。
【0050】
また、型枠の側板部材と天板部材とを分離した実施例1〜30において、断面逆三角形の縦板15、16の傾斜角θが85度である実施例4〜6、実施例10〜12、実施例16〜18、実施例22〜24、及び実施例28〜30では、頻度は低いが型枠内部にコンクリートが残留した。これは、型枠の内面及び型枠内のコンクリートの凹凸によって脱型し難くなったためと解される。
【0051】
板状の横板19、20の厚みtが0.005Hより小さい、すなわち、1.0mmである場合では、コンクリートの形状が崩れ、隣り合うブロックが一体化することがあった。更に、コンクリートのスランプ値がその所定範囲(0cm以上5cm以下)を超える7cmである場合には、その傾向が顕著に現れた。
【0052】
(比較例1)
比較例1では、従来のブロック製造方法と同様に、コンクリートを型枠に流し込んで硬化させた後、型枠を上下ひっくり返して連接ブロック体を得た。なお、使用する型枠は実施例43と同様のものを使用し、スランプ値が5cmのコンクリートを使用した。この場合、コンクリートを加圧せずに硬化させているので、コンクリートが型枠内に十分に充填することができなかった。また、型枠をひっくり返す手間がかかった。
【0053】
(比較例2)
比較例2は、コンクリートの強度が50%になるまで硬化させた後、脱型した点のみが実施例13と異なっている。この場合には、硬化したコンクリートが型枠と接着して、脱型することができなかった。
【0054】
本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記した実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明のブロック製造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
【0055】
例えば、前記実施の形態のブロック製造方法において、硬化材を含む混練物として、コンクリートを用いたが、モルタルでもよく、また、高炉スラグ、製鋼スラグ、及びフライアッシュのいずれか1又は2以上の副産物を使用してもよい。
また、型枠の側板部材を井桁状に形成し、平面視して矩形の固体化ブロックを製造したが、側板部材を平面視して矩形以外の多角形に配置して型枠を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)〜(e)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係るブロック製造方法における各工程の説明図である。
【図2】(a)は同ブロック製造方法により製造された連接ブロック体の説明図、(b)、(c)はそれぞれ固体化ブロックの説明図である。
【図3】同ブロック製造方法に使用される型枠の説明図である。
【図4】(a)、(b)はそれぞれ同ブロック製造方法で製造した連接ブロック体の変形例の説明図である。
【符号の説明】
【0057】
10:連接ブロック体、11:平面、12:コンクリート、13:型枠、14〜17:縦板、18〜21:横板、22:天板部材、23:側板体、24、25:チェーン、26、27:隙間、28〜30:固体化ブロック、31:油圧ショベル、32:アーム、33:バケット、40:連接ブロック体、41〜44:隙間、50:連接ブロック体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上に硬化材を含む混練物を置き、該混練物の上方から、型枠を押し付けて、脱型して複数の固化体ブロックを同時に製造することを特徴とするブロック製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のブロック製造方法において、前記固化体ブロックは、高さ、奥行き、及び幅がそれぞれ100mm以上で500mm以下であることを特徴とするブロック製造方法。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載のブロック製造方法において、前記型枠は、前記固化体ブロックの上面及び側面をそれぞれ形成する天板部材と複数の側板部材とを有し、前記側板部材の上端高さは均一で、一部の前記側板部材Aの下端高さは、他の前記側板部材Bの下端高さよりnだけ高く、しかも、前記側板部材Bの高さをLとし、前記混練物中の粒子の最大粒径をdとした場合、以下の式を満足することを特徴とするブロック製造方法。
2×d≦n≦L/2
【請求項4】
請求項3記載のブロック製造方法において、前記側板部材A及び前記側板部材Bは直交して井桁状に配置されていることを特徴とするブロック製造方法。
【請求項5】
請求項3及び4のいずれか1項に記載のブロック製造方法において、前記側板部材A及び前記側板部材Bのいずれか一方又は双方の側面の傾斜角が平面に対して80度以下であることを特徴とするブロック製造方法。
【請求項6】
請求項3及び4のいずれか1項に記載のブロック製造方法において、前記側板部材A及び前記側板部材Bのいずれか一方又は双方の側板部材の側面が平面に対して実質直角であって、該側板部材の厚みtと該側板部材に前記混練物が接する高さHが以下の式を満足し、前記混練物のスランプ値は0cm以上で5cm以下であることを特徴とするブロック製造方法。
t≧0.005×H
【請求項7】
請求項3及び4のいずれか1項に記載のブロック製造方法において、前記側板部材A及び前記側板部材Bのいずれか一方の傾斜角が平面に対して80度以下で、前記側板部材A及び前記側板部材Bのいずれか他方の側板部材の側面が平面に対して実質直角であって、該側板部材の厚みtと該側板部材に前記混練物が接する高さHが以下の式を満足し、前記混練物のスランプ値は0cm以上で5cm以下であることを特徴とするブロック製造方法。
t≧0.005×H
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか1項に記載のブロック製造方法において、前記型枠は、前記側板部材と前記天板部材とが分離可能に形成されていることを特徴とするブロック製造方法。
【請求項9】
請求項8記載のブロック製造方法において、前記固化体ブロックを脱型する場合、前記天板部材を取り除いた後、前記側板部材を取り除くことを特徴とするブロック製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−1191(P2006−1191A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181412(P2004−181412)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】