説明

プッシュスイッチ及びその製造方法

【課題】本発明は、自動車のストップランプの点消灯制御等に用いられるプッシュスイッチ及びその製造方法に関し、接点の安定した接触が得られ、組立てが容易で安価なものを提供することを目的とする。
【解決手段】操作軸26の保持部26Cに接触片27の固定部27Aをワンタッチで保持すると共に、カバー28下面に内側面が固定接点22の接触面と同一面のリブ28Cを設け、このリブ28C内側面に接触片27の接点部27Eを弾接させることによって、操作軸26に接触片27を保持固定する際や、操作軸26とケース21を組立てる際に接触片が変形しにくくなり、接点の安定した接触が得られ、組立てが容易で安価なものを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のブレーキペダル操作軸のストップランプの点消灯制御等に用いられる、車両用のプッシュスイッチ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のブレーキペダルを操作した際の主な制御としては、ブレーキペダルが踏まれたことを知らせるためのストップランプの点灯や、一定速度で自動走行を行うオートドライブ機能の解除等があるが、近年、これらの制御を別々のスイッチを用いて行うものの他、一つのスイッチによって複数の機能の制御を行うものが増えている。
【0003】
このような従来のプッシュスイッチについて、図8〜図11を用いて説明する。
【0004】
図8は従来のプッシュスイッチの断面図、図9は同分解斜視図であり、同図において、1は上面開口で内底面を有する略筒状の絶縁樹脂製のケースで、この内底面には、左内側壁に沿って上方に突出した導電金属板製の一対の固定接点2と、同じく上方に突出し上端がL字状に折曲した導電金属板製の一対の固定接点3が、溶着やカシメ等によって固定されて植設されている。
【0005】
そして、4は導電金属板製の可動接点で、この下面中央とケース1の内底面の間にやや撓んだ状態で装着されたコイル状の接圧バネ5によって、可動接点4の両端が固定接点3の折曲部下面に弾接し、可動接点4を介して一対の固定接点3が電気的に接続されている。
【0006】
また、6はケース1内に上下動可能に収納された操作軸、7は弾性金属薄板製の接触片で、接触片7一端の固定部7Aはリベット8によって操作軸6側面に保持固定され、他端の接点部7Bは中間のアーム部7Cがやや撓んだ状態でケース1の左内側壁に弾接している。
【0007】
そして、操作軸6下面とケース1の内底面の間には、やや撓んだ状態のコイル状の操作バネ9が装着されて操作軸6を上方へ付勢すると共に、ケース1の開口部をカバー10が覆い、カバー10には外周にネジ山が形成された軸受部10Aが設けられ、この中央の貫通孔10B内を操作軸6が挿通して、プッシュスイッチ11が構成されている。
【0008】
このような構成のプッシュスイッチは、先ず、ケース1の内底面に一対の固定接点2と固定接点3を溶着やカシメ等によって固定した後、可動接点4とやや撓めた接圧バネ5をケース1内底面と固定接点3の間に挿入し、可動接点4の両端を一対の固定接点3の折曲部下面に弾接させる。
【0009】
次に、リベット8によって側面に接触片7を保持固定した操作軸6を、ケース1内底面との間に装着した操作バネ9を撓めながらケース1内に収納し、貫通孔10B内に操作軸6を挿通させたカバー10によってケース1の開口部を覆って、プッシュスイッチ11が完成する。
【0010】
以上の構成において、カバー10の貫通孔10Bから突出した操作軸6上面を押圧操作すると、図10の断面図に示すように、操作軸6が操作バネ9を撓めながら下方へ移動し、この側面に保持された接触片7の接点部7Bがケース1の左内側壁を弾接摺動して、固定接点2に接触し、一対の固定接点2の接触片7を介した電気的接続が行われる。
【0011】
また、同時に、操作軸6の下面が可動接点4の上面中央を押圧して、接圧バネ5が撓められ、可動接点4の両端が一対の固定接点3の折曲部下面から離れて、一対の固定接点3が電気的に遮断されるように構成されている。
【0012】
そして、以上のような構成のプッシュスイッチ11は、図11の側面図に示すように、ブレーキペダル12と一体に形成され上端の支持部12Aが車体に回転可能に保持されたアングル12Bに、操作軸6が押圧された状態で、止め具13によってカバー10の軸受部10A外周が車体に装着される。
【0013】
また、プッシュスイッチ11にはコネクタ14が取付けられ、固定接点2は電源15を介して、走行速度を一定に保つオートドライブ機能等を制御する電子回路16に、固定接点3は同じく自動車のストップランプ回路17に各々接続される。
【0014】
このようにプッシュスイッチ11の操作軸6が押圧された状態、つまり自動車が走行状態の場合には、図10に示したように、固定接点2が接触片7を介して電気的に接続されているため、これに接続された電子回路16のオートドライブ機能は接続状態となり、遮断された固定接点3に接続されたストップランプ回路17は消灯状態となっている。
【0015】
そして、図11に破線で示したようにブレーキペダル12を踏むと、アングル12Bが支持部12Aを支点として回転し、プッシュスイッチ11の操作軸6から離れて、操作軸6が接圧バネ5や操作バネ9の付勢力によって図8に示した状態に戻るため、接触片7が固定接点2から離れ、電子回路16のオートドライブ機能が解除される。
【0016】
また、同時に、接圧バネ5の付勢力によって、可動接点4の両端が一対の固定接点3の折曲部下面に接触するため、ストップランプ回路17が点灯して、ブレーキペダル12が踏まれたことを知らせるように構成されているものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら上記従来のプッシュスイッチにおいては、リベット8によって操作軸6側面に接触片7を保持固定する際や、この接触片7を保持した操作軸6をケース1内に収納して組立てる際に、弾性金属薄板製の接触片7に変形が生じ易く接点の接触が不安定なものになりがちであると共に、スイッチの組立てにも時間を要するという課題があった。
【0018】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、接点の安定した接触が得られ、組立てが容易で安価なプッシュスイッチ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0020】
本発明の請求項1に記載の発明は、中央に操作軸が挿通する貫通孔を有しケースの開口部を覆うカバー下面に、下方に突出し内側面が固定接点の接触面と同一面の一対のリブを設け、このリブ内側面に、操作軸側面に一端の固定部が保持され、中間のアーム部がやや撓んだ状態の接触片の接点部を弾接させてプッシュスイッチを構成したものであり、接触片の接点部がカバー下面のリブ内側面に弾接し、カバーに操作軸を仮保持した状態でスイッチの組立てが行えるため、接触片を保持した操作軸とケースを組立てる際に接触片が変形しにくくなり、接点の安定した接触が得られ、容易に組立ての自動化が図れる、安価なプッシュスイッチが得られるという作用を有する。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、カバー下面の下方に突出したリブ下端を、固定接点の上端に当接させたものであり、固定接点の溶着やカシメ等によるケースへの保持に加え、固定接点上端にカバーのリブ下端が当接しているため、ケース外方に突出した固定接点下端に外力が加わった場合にも、より強固で確実に固定接点の保持を行うことができるという作用を有する。
【0022】
請求項3に記載の発明は、操作軸に接触片を保持した後、カバー下面の下方に突出したリブ内側面に接触片の接点部を弾接させて、カバーに操作軸を仮保持し、これと内底面に固定接点が植設されたケースを組合わせる請求項1記載のプッシュスイッチの製造方法としたものであり、カバーに操作軸を仮保持した状態でスイッチの組立てが行えるため、接点の安定した接触が得られ、容易に組立ての自動化が図れるプッシュスイッチを実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、接点の安定した接触が得られ、組立てが容易で安価なプッシュスイッチ及びその製造方法を得ることができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態について、図1〜図7を用いて説明する。
【0025】
なお、従来の技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0026】
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施の形態によるプッシュスイッチの断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、21は上面開口で内底面を有する略筒状の絶縁樹脂製のケースで、この内底面には、左内側壁に沿って上方に突出した導電金属板製の一対の固定接点22と、同じく上方に突出し上端がL字状に折曲した導電金属板製の一対の固定接点3が、溶着やカシメ等によって固定されて植設されている。
【0027】
そして、4は導電金属板製の可動接点で、この下面中央とケース21の内底面の間にやや撓んだ状態で装着されたコイル状の接圧バネ5によって、可動接点4の両端が一対の固定接点3の折曲部下面に弾接し、一対の固定接点3が可動接点4を介して電気的に接続されている。
【0028】
また、26はケース21内に上下動可能に収納された操作軸、27は弾性金属薄板製の接触片で、操作軸26側面には、両端に略コの字状の溝部26Aと、中央に上端開口の窪部26Bが形成された保持部26Cが設けられ、この保持部26Cの溝部26Aに、接触片27一端の固定部27Aが下方から挿入されている。
【0029】
そして、操作軸26の保持部26Cの溝部26A下面には、接触片27の固定部27A両端から外方に突出する舌部27B上面が当接すると共に、保持部26Cの窪部26B下端には、接触片27の固定部27A中央から操作軸26方向に突出する突部27Cが係止されて、操作軸26の保持部26Cに接触片27の固定部27Aが保持固定されている。
【0030】
また、操作軸26下面とケース21の内底面の間には、やや撓んだ状態のコイル状の操作バネ9が装着されて操作軸26を上方へ付勢すると共に、ケース21の開口部をカバー28が覆い、カバー28には外周にネジ山が形成された軸受部28Aが設けられ、この中央の貫通孔28B内を操作軸26が挿通している。
【0031】
さらに、カバー28下面には、下方に突出し内側面が固定接点22の接触面と同一面の一対のリブ28Cが設けられ、このリブ28C内側面には、中間のアーム部27Dをやや撓ませた状態で接触片27他端の接点部27Eが弾接すると共に、リブ28C下端が固定接点22の上端に当接して、プッシュスイッチ30が構成されている。
【0032】
このような構成のプッシュスイッチは、先ず、ケース21の内底面に一対の固定接点22と固定接点3を溶着やカシメ等によって固定した後、可動接点4とやや撓めた接圧バネ5をケース21内底面と固定接点3の間に挿入し、可動接点4の両端を一対の固定接点3の折曲部下面に弾接させる。
【0033】
次に、図3の部分分解斜視図に示すように、操作軸26の保持部26Cの溝部26Aに下方から接触片27の固定部27Aを挿入し、この溝部26A下面に接触片27の舌部27B上面を当接させると共に、保持部26Cの溝部26B下端に接触片27の突部27Cを係止して、操作軸26の保持部26Cに接触片27を保持固定する。
【0034】
そして、図4の部分断面図に示すように、接触片27を保持した操作軸26をカバー28中央の貫通孔28B内に挿通し、カバー28下面のリブ28Cに接触片27の接点部27Eを弾接させて、カバー28に操作軸26を仮保持する。
【0035】
最後に、この操作軸26を仮保持したカバー28と、固定接点22や固定接点3が植設され可動接点4や接圧バネ5、操作バネ9が組込まれたケース21を組合わせ、カバー28によってケース21の開口部を覆って、プッシュスイッチ30が完成する。
【0036】
以上の構成において、カバー28の貫通孔28Bから突出した操作軸26上面を押圧操作すると、図5の断面図に示すように、操作軸26が操作バネ9を撓めながら下方へ移動し、この側面の保持部26Cに保持された接触片27の接点部27Eが、カバー28のリブ28C内側面を弾接摺動して、接触面がリブ28C内側面と同一面の固定接点22に接触し、一対の固定接点22の接触片27を介した電気的接続が行われる。
【0037】
また、同時に、操作軸26の下面が可動接点4の上面中央を押圧して、接圧バネ5が撓められ、可動接点4の両端が固定接点3の折曲部下面から離れて、一対の固定接点3が電気的に遮断されるように構成されている。
【0038】
そして、以上のような構成のプッシュスイッチ30は、従来の技術の場合と同様に、図6の側面図に示すように、ブレーキペダル12と一体に形成されたアングル12Bに、操作軸26が押圧された状態で、止め具13によってカバー28の軸受部28A外周が車体に装着される。
【0039】
また、プッシュスイッチ30にはコネクタ14が取付けられ、電気的に接続された固定接点22は電源15を介して、走行速度を一定に保つオートドライブ機能等を制御する電子回路16に、電気的に遮断された固定接点3は同じく自動車のストップランプ回路17に各々接続される。
【0040】
そして、このようにプッシュスイッチ30の操作軸26が押圧された状態から、図6に破線で示したようにブレーキペダル12を踏むと、アングル12Bが支持部12Aを支点として回転して、操作軸26が接圧バネ5や操作バネ9の付勢力によって図1に示した状態に戻るため、接触片27が固定接点22から離れ、電子回路16のオートドライブ機能が解除される。
【0041】
また、同時に、接圧バネ5の付勢力によって、可動接点4の両端が一対の固定接点3の折曲部下面に接触するため、ストップランプ回路17が点灯して、ブレーキペダル12が踏まれたことを知らせるように構成されている。
【0042】
このように本実施の形態によれば、リベットや溶着、カシメ等を用いず、操作軸26の保持部26Cに接触片27の固定部27Aをワンタッチで保持できるため、操作軸26に接触片27を保持固定する際に接触片が変形しにくくなり、接点の安定した接触が得られ、組立てが容易で安価なプッシュスイッチを得ることができるものである。
【0043】
そして、カバー28下面に内側面が固定接点22の接触面と同一面のリブ28Cを設け、このリブ28C内側面に接触片27の接点部27Eを弾接させることによって、カバー28に操作軸26を仮保持した状態でスイッチの組立てが行えるため、接触片27を保持した操作軸26とケース21を組立てる際に接触片27が変形しにくくなり、接点の接触がさらに安定し安価なプッシュスイッチが得られると共に、組立ての自動化も容易に実現することができる。
【0044】
また、カバー28下面の下方に突出したリブ28C下端を、固定接点22の上端に当接させることによって、固定接点22の溶着やカシメ等によるケース21への保持に加え、固定接点22上端にカバー28のリブ28C下端が当接しているため、ケース21外方に突出した固定接点22下端に外力が加わった場合にも、より強固で確実に固定接点22の保持を行うことができる。
【0045】
さらに、図7の部分分解斜視図に示すように、弾性金属薄板製の接触片27の固定部27A中央の突部27Fを舌片状とし、この突部27Fをやや撓ませた状態で、下端を操作軸26の保持部26Cの窪部26B下端に弾接させることによって、接触片27のがたつきがなくなり、さらに接点の接触を安定したものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によるプッシュスイッチ及びその製造方法は、接点の安定した接触が得られ、組立てが容易で安価なものを得ることができ、主に自動車のブレーキペダル操作軸のストップランプの点消灯制御用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態によるプッシュスイッチの断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同部分分解斜視図
【図4】同部分断面図
【図5】同操作時の断面図
【図6】同自動車装着時の側面図
【図7】同部分分解斜視図
【図8】従来のプッシュスイッチの断面図
【図9】同分解斜視図
【図10】同操作時の断面図
【図11】同自動車装着時の側面図
【符号の説明】
【0048】
3 固定接点
4 可動接点
5 接圧バネ
9 操作バネ
12 ブレーキペダル
12A 支持部
12B アングル
13 止め具
14 コネクタ
15 電源
16 電子回路
17 ストップランプ回路
21 ケース
22 固定接点
26 操作軸
26A 溝部
26B 窪部
26C 保持部
27 接触片
27A 固定部
27B 舌部
27C、27F 突部
27D アーム部
27E 接点部
28 カバー
28A 軸受部
28B 貫通孔
28C リブ
30 プッシュスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口で内底面を有する筒状の絶縁樹脂製のケースと、このケースの内底面に植設され上方に突出した一対の固定接点と、上記ケース内に上下動可能に収納された操作軸と、この操作軸側面に一端の固定部が保持され、中間のアーム部がやや撓んだ状態で、他端の接点部が操作軸の上下動によって上記固定接点上を弾接摺動する弾性金属薄板製の接触片と、上記ケース内にやや撓んだ状態で装着され上記操作軸を上方へ付勢するコイル状の操作バネと、中央に上記操作軸が挿通する貫通孔を有し上記ケースの開口部を覆うカバーからなり、上記カバー下面に、下方に突出し内側面が固定接点の接触面と同一面の一対のリブを設け、このリブ内側面に上記接触片の接点部を弾接させたプッシュスイッチ。
【請求項2】
カバー下面の下方に突出したリブ下端を、固定接点の上端に当接させた請求項1記載のプッシュスイッチ。
【請求項3】
操作軸側面の保持部に接触片の固定部を保持した後、カバー中央の貫通孔に上記操作軸を挿通し、上記カバー下面の下方に突出したリブ内側面に接触片の接点部を弾接させて、上記カバーに上記操作軸を仮保持し、これと内底面に固定接点が植設されたケースを組合わせる請求項1記載のプッシュスイッチの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−157737(P2007−157737A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34818(P2007−34818)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【分割の表示】特願2000−111756(P2000−111756)の分割
【原出願日】平成12年4月13日(2000.4.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】