説明

プライマー組成物

【課題】めっき処理鋼板と未加硫ゴムとの加硫接着あるいはめっき処理鋼板と加硫ゴムとの後貼り接着に適用した場合においても、耐水性、耐酸性にすぐれたプライマー組成物を提供する。
【解決手段】フェノール樹脂100重量部当り5〜120重量部の有機金属化合物を含有せしめてなる、ゴム/接着剤/プライマー/金属積層体製造の際のプライマーとして用いられるプライマー組成物。このプライマー組成物は、これをゴム/接着剤/プライマー/金属積層体製造の際のプライマーとして用いたとき、活性の低いめっき処理鋼板と未加硫ゴムとの加硫接着あるいはめっき処理鋼板と加硫ゴムとの後貼り接着に用いた場合においても、耐水性、耐酸性にすぐれているので、ゴム・金属一体型ガスケット、特に燃料電池用ガスケットやHDDカバー用ガスケット(金属セパレータ一体型ガスケット)の製造などに有効に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物に関する。さらに詳しくは、ゴム/接着剤/プライマー/金属積層体製造の際のプライマーとして用いられるプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用ガスケットは、耐水性や耐酸性が必要とされるため、プレート表面を金等でめっきしている。このようなめっき鋼板と未加硫ゴムとを加硫接着する場合には、従来の加硫接着剤を用いてゴムを接着させても、安定した初期接着性が得られない。
【0003】
化学的に活性の低いめっき処理鋼板に対しては、加硫接着剤を塗布する前処理として、シランカップリング剤を主成分とするプライマーを塗布することにより、初期の接着性は大幅に改善されるが、耐水性が悪いという問題がある。また、電子記憶装置、特にハード・ディスク・ドライブ(HDD)に用いられるガスケットには、低アウトガス性であること、Si、S、Cl等を含有していないことが求められており、そのためシランカップリング剤を主成分とするプライマーの使用は好ましいことではない。
【0004】
耐水性に関しては、アミノ基含有アルコキシシランとビニル基含有アルコキシシランとの共重合オリゴマーおよび有機金属化合物を含有する加硫接着用プライマーを用いることにより改善されるが、酸に対する耐液耐久性の点ではなお改善されるべき余地が残されている。
【特許文献1】特開2004−26848号公報
【0005】
また、めっき鋼板と加硫ゴムとを後貼りで接着する場合には、接着剤として耐水性、耐酸性が必要とされる用途には、フェノール樹脂やエポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂が適用されるが、これらの接着剤も化学的に活性の低いめっき処理鋼板に対しては接着性が悪く、酸に対する耐液耐久性試験において、鋼板と接着剤層間での剥れが生ずる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、めっき処理鋼板と未加硫ゴムとの加硫接着あるいはめっき処理鋼板と加硫ゴムとの後貼り接着に適用した場合においても、耐水性、耐酸性にすぐれたプライマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる本発明の目的は、フェノール樹脂100重量部当り5〜120重量部の有機金属化合物を含有せしめてなる、ゴム/接着剤/プライマー/金属積層体製造の際のプライマーとして用いられるプライマー組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るプライマー組成物は、これをゴム/接着剤/プライマー/金属積層体製造の際のプライマーとして用いたとき、活性の低いめっき処理鋼板と未加硫ゴムとの加硫接着あるいはめっき処理鋼板と加硫ゴムとの後貼り接着に用いた場合においても、耐水性、耐酸性にすぐれているので、ゴム・金属一体型ガスケット、特に燃料電池用ガスケットやHDDカバー用ガスケット(金属セパレータ一体型ガスケット)の製造などに有効に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
プライマーの一成分として用いられるフェノール樹脂としては、レゾール型、ノボラック型のフェノール樹脂の他、ジヒドロベンゾオキサジン環を有するフェノール樹脂も用いられ、これらのフェノール樹脂と共にエポキシ樹脂等の他の熱硬化性樹脂を併用することもできるが、フェノール樹脂の反応活性基をできるだけ多くして、上塗り接着剤およびめっき鋼板との接着性を上げるために、レゾール型フェノール樹脂を単独で使用することが好ましい。
【0010】
レゾール型フェノール樹脂としては、フェノール、p-クレゾール、m-クレゾール、p-第3ブチルフェノール、p-フェニルフェノール、ビスフェノールA等のフェノール性水酸基に対してo-位および/またはp-位に2個または3個の置換可能な核水素原子を有するフェノール類またはこれらの混合物とホルムアルデヒドとを、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、アンモニア等のアルカリ触媒の存在下において縮合反応させることによって得られる軟化点が約80〜150℃の樹脂が使用され、好ましくはm-クレゾール、p-クレゾール混合物とホルムアルデヒドとから製造された軟化点100℃以上のものが用いられる。
【0011】
また、ノボラック型フェノール樹脂としては、上記縮合反応を塩酸、しゅう酸等の酸触媒の存在下で反応させたものが用いられる。
【0012】
さらに、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性フェノール樹脂としては、ジヒドロベンゾオキサジン環を有し、ジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応によって硬化する熱硬化性フェノール樹脂であれば任意のものを使用することができ、例えばフェノール性水酸基を有する化合物、1級アミンおよびホルムアルデヒドから、次式に示される如く、ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン誘導体が合成される。

【特許文献2】特開2004−83623号公報
【0013】
フェノール性水酸基を有する化合物としては、芳香環のフェノール性水酸基に対して少くとも一方のo−位に水素原子が結合していることが必要であり、好ましくは分子中にフェノール性水酸基が複数個存在する多官能性フェノール類が用いられる。具体的には、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等のフェノール類、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類、ノボラック型またはレゾール型フェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂等のフェノール樹脂類が例示される。
【0014】
また、1級アミンとしては、アニリン、トルイジン等の芳香族アミン類またはメチルアミン、エチルアミン等の脂肪族アミンが例示される。
【0015】
これらのフェノール性水酸基を有する化合物と1級アミンのそれぞれ1モルに対して、2モル以上のホルムアルデヒドが用いられ、しゅう酸触媒等の存在下に、反応温度約70〜130℃、好ましくは約90〜110℃で約1/3〜4時間程度反応させた後、減圧下120℃以下で未反応のフェノール性化合物、1級アミン類、ホルムアルデヒド等を除去することにより、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が得られる。
【0016】
これらのフェノール樹脂に添加される有機金属化合物としては、例えばトリイソプロポキシアルミニウム、モノ-sec-ブトキシジプロポキシアルミニウム、トリ-sec-ブトキシアルミニウム、トリ(2-エチルヘキシル)アルミニウム、ジイソプロポキシアルミニウムモノ(メチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムモノ(プロピルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムモノ(ブチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムモノ(ヘキシルアセトアセテート)、ジn-プロポキシアルミニウムモノ(メチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシアルミニウムモノ(プロピルアセトアセテート)、ジn-プロポキシアルミニウムモノ(ブチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシアルミニウムモノ(ヘキシルアセトアセテート)、ジブトキシアルミニウムモノ(メチルアセトアセテート)、ジブトキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)、ジブトキシアルミニウムモノ(プロピルアセトアセテート)、ジブトキシアルミニウムモノ(ブチルアセトアセテート)、ジブトキシアルミニウムモノ(ヘキシルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(プロピルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ブチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ヘキシルアセトアセテート)、アルミニウム-モノアセチルアセトネート-ビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、ジイソプロポキシアルミニウムモノ(アセチルアセトネート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどの有機アルミニウム化合物、テトラi-プロポキシチタン、テトラn-プロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、ジイソプロポキシチタンビス(メチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(プロピルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(ブチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(ヘキシルアセトアセテート)、ジn-プロポキシチタンビス(メチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシチタンビス(プロピルアセトアセテート)、ジn-プロポキシチタンビス(ブチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシチタンビス(ヘキシルアセトアセテート)、ジn-ブトキシチタンビス(メチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシチタンビス(プロピルアセトアセテート)、ジn-ブトキシチタンビス(ブチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシチタンビス(ヘキシルアセトアセテート)、1,3-プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトネート)、ジn-プロポキシチタンビス(アセチルアセトネート)、ジn-ブトキシチタンビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンテトラエチルアセトアセテート、チタンテトラプロピルアセトアセテート、チタンテトラブチルアセトアセテートなどの有機チタン化合物、テトラi-プロポキシジルコニウム、テトラn-プロポキシジルコニウム、テトラn-ブトキシジルコニウム、ジイソプロポキシジルコニウムビス(メチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(プロピルアセトアセテート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(ブチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(ヘキシルアセトアセテート)、ジn-プロポキシジルコニウムビス(メチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシジルコニウムビス(プロピルアセトアセテート)、ジn-プロポキシジルコニウムビス(ブチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシジルコニウムビス(ヘキシルアセトアセテート)、ジn-ブトキシジルコニウムビス(メチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシジルコニウムビス(プロピルアセトアセテート)、ジn-ブトキシジルコニウムビス(ブチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシジルコニウムビス(ヘキシルアセトアセテート)、1,3-プロパンジオキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)、ジn-プロポキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)、ジn-ブトキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラエチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラプロピルアセトアセテート、ジルコニウムテトラブチルアセトアセテートなどの有機ジルコニウム化合物、テトラi-プロポキシ錫、テトラn-プロポキシ錫、テトラn-ブトキシ錫、ジイソプロポキシ錫ビス(メチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシ錫ビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシ錫ビス(プロピルアセトアセテート)、ジイソプロポキシ錫ビス(ブチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシ錫ビス(ヘキシルアセトアセテート)、ジn-プロポキシ錫ビス(メチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシ錫ビス(エチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシ錫ビス(プロピルアセトアセテート)、ジn-プロポキシ錫ビス(ブチルアセトアセテート)、ジn-プロポキシ錫ビス(ヘキシルアセトアセテート)、ジn-ブトキシ錫ビス(メチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシ錫ビス(エチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシ錫ビス(プロピルアセトアセテート)、ジn-ブトキシ錫ビス(ブチルアセトアセテート)、ジn-ブトキシ錫ビス(ヘキシルアセトアセテート)、1,3-プロパンジオキシ錫ビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシ錫ビス(アセチルアセトネート)、ジn-プロポキシ錫ビス(アセチルアセトネート)、ジn-ブトキシ錫ビス(アセチルアセトネート)、錫テトラアセチルアセトネート、錫テトラエチルアセトアセテート、錫テトラプロピルアセトアセテート、錫テトラブチルアセトアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレートなどの有機錫化合物などがあげられ、好ましくは、下記2つの一般式


R:CH3、C2H5、n-C3H7 、i-C3H7、n-C4H9、i-C4H9、i-C8H17などの低
級アルキル基
R´:CH3基またはOR
M1:Ti、Zr、Sn
M2:Al
n:0〜3の整数
m:0〜2の整数
で表される少くとも1個のアルコキシル基または少くとも1個のキレート環およびアルコキシル基を有する有機金属化合物、あるいは少くとも1個のキレート環を有する化合物と金属アルコキシドとの混合物が用いられる。有機金属化合物の中では、好ましくは有機アルミニウム化合物が用いられ、有機金属化合物は1種または2種以上の混合物としても用いられる。ただし、有機金属化合物は、適用溶剤の範囲が限定されてしまうため、比較的溶剤選定に自由度のある少くとも1個のキレート環を有する化合物を用いることが好ましい。
【0017】
これらの有機金属化合物は、フェノール樹脂100重量部当り約5〜250重量部、好ましくは約50〜150重量部の割合で用いられる。有機金属化合物の添加割合がこれ以下では、特にめっき鋼板との接着性が低下し、一方これ以上の割合で用いられると、酸に対する耐液耐久性の低下が避けられない。
【0018】
以上の成分を必須成分とするプライマー組成物は、これらの各成分合計量濃度が約0.5〜15重量%程度になるように有機溶剤で希釈した溶液として用いられる。有機溶剤としては、一般にメタノール、エタノール、イソプロパノール、2-エトキシエタノール(エチレングリコールモノエチルエーテル)等のアルコール系有機溶剤またはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤が用いられる。
【0019】
プライマー溶液は、金属、一般にはステンレス鋼板、アルミニウム鋼板等の鋼板上に塗布膜が約1〜30μm程度となるように、スプレー法、浸漬法、ロールコータ法など任意の方法で塗布され、室温または温風下で乾燥した後、約100〜250℃で約0.5〜2時間程度焼付処理がなされる。ステンレス鋼板としては、例えばSUS301、SUS301H、SUS304、SUS430等が用いられる。これらのステンレス鋼板やアルミニウム鋼板等の表面は耐食性を付与するため金、ニッケル等でめっき処理されたものを用いることが好ましい。
【0020】
このようにして形成されたプライマー層上には、加硫接着されるゴムの種類に応じた加硫接着剤が塗布される。使用される加硫接着剤としては、次のような組成を有するものが例として示されるが、市販の各種ゴム用加硫接着剤を、そのまま用いることもできる。
(過酸化物架橋性ゴム用)
・γ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ-アミノプロピルトリアルコキシシラン、有機チタン化合物、水および有機溶媒
(フッ素ゴム用)
・ノボラック型エポキシ樹脂、p-置換フェノールから導かれたノボラック型フェノール樹脂、イミダゾール化合物硬化触媒およびフッ素ゴム配合物
・ビニルトリアルコキシシラン、γ-アミノプロピルトリアルコキシシラン、有機アルミニウム化合物および有機溶媒
・γ-アミノプロピルトリヒドロキシシラン、メタクリル酸および酢酸を含有するpH5〜7の水性液
・γ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、アミノ基含有トリヒドロキシシランおよび低級飽和カルボン酸または無機酸を含有する水性液
・γ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、γ-アミノプロピルトリアルコキシシラン、有機チタン化合物、アルコール系有機溶媒および水
(NBR、水素化NBR、アクリルゴム用)
・レゾール型フェノール樹脂、未加硫NBRおよび塩素化ポリエチレンの有機溶媒溶液または水性分散液
・γ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、有機アルミニウム化合物および有機溶媒
・レゾール型フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、(塩化ビニル樹脂ブレンド)未加硫NBR、塩素化ポリエチレンおよび有機溶媒
・γ-メルカプトプロピルトリアルコキシシランとγ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシランの少くとも一種、γ-アミノプロピルトリアルコキシシラン、有機チタン化合物および有機溶媒
・ノボラック型フェノール樹脂およびレゾール型フェノール樹脂硬化剤
・ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂混合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および有機溶媒
・ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂およびイミダゾール化合物または第3アミン化合物硬化促進剤
・ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、未加硫のNBRおよび塩素化ポリエチレン
・フェノールキシリレン樹脂またはフェノールビフェニル樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、未加硫のNBRおよび塩素化ポリエチレン
・アルキル基変性ノボラック型フェノール樹脂、特定のレゾール型フェノール樹脂およびヘキサメチレンテトラミン硬化剤
【特許文献3】特開2001−226642号公報
【特許文献4】特開平6−88062号公報
【特許文献5】特開平7−34054号公報
【特許文献6】特開平8−209102号公報
【特許文献7】特開平9−3432号公報
【特許文献8】特開平10−8021号公報
【特許文献9】特開平6−306340号公報
【特許文献10】特開平7−216309号公報
【特許文献11】特開平8−302323号公報
【特許文献12】特開平9−132758号公報
【特許文献13】特開平10−121020号公報
【特許文献14】特開2000−1658号公報
【特許文献15】特開2000−17247号公報
【特許文献16】特開2003−147314号公報
【特許文献17】特開2003−261850号公報
【特許文献18】特開2004−277435号公報
【0021】
これらの加硫接着剤は、プライマー処理鋼板上に噴霧、浸漬、刷毛塗り、ロールコータ等の方法で塗布され、それぞれに適した乾燥条件および焼付条件で乾燥および焼付け処理が行われる。
【0022】
このようにして形成された加硫接着剤層上には、フッ素ゴム、NBR、水素化NBR、アクリルゴム、EPDM、クロロプレンゴム等に加硫剤、補強剤、その他必要な各種配合剤を配合した未加硫のゴムコンパウンド、好ましくは耐水性、耐酸性の点からは未加硫のフッ素ゴムコンパウンドまたはEPDMコンパウンドを用いて、圧縮成形や射出成形等の加圧成形法によりガスケットが成形される。成形に際しては、例えばプレス圧縮成形では、約150〜220℃で約5〜20分間という成形条件がとられる。
【0023】
フッ素ゴムとしては、ポリオール加硫性およびパーオキサイド加硫性のいずれも使用することができ、未加硫のフッ素ゴムコンパウンドとしては、例えば後記のような配合例が示される。
【0024】
ポリオール加硫性フッ素ゴムとしては、一般にフッ化ビニリデンと他の含フッ素オレフィン、例えばヘキサフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、フッ化ビニル、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)等の少なくとも一種との共重合体または含フッ素オレフィンとプロピレンとの共重合体などが挙げられ、これらのフッ素ゴムは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン、ヒドロキノン等のポリヒドロキシ芳香族化合物によってポリオール加硫される。
【0025】
また、パーオキサイド加硫性フッ素ゴムとしては、例えば分子中にヨウ素および/または臭素を有するフッ素ゴムが挙げられ、これらのフッ素ゴムは一般にパーオキサイド加硫に用いられている有機過酸化物によって加硫(架橋)される。この場合には、有機過酸化物と共に、トリアリルイソシアヌレートによって代表される多官能性不飽和化合物を併用することが好ましい。
【0026】
(配合例I)
フッ素ゴム(デュポン社製品バイトンE45) 100重量部
MTカーボンブラック 20 〃
酸化マグネシウム(協和化学製品マグネシア#150) 6 〃
水酸化カルシウム 3 〃
加硫剤(デュポン社製品キュラティブ#30) 2 〃
加硫促進剤(同社製品キュラティブ#20) 1 〃
(配合例II)
フッ素ゴム(デュポン社製品バイトンE60C) 100重量部
加硫剤(デュポン社製品ダイアックNo.3) 3 〃
酸化マグネシウム(協和化学製品マグネシア#30) 10 〃
MTカーボンブラック 20 〃
(配合例III)
フッ素ゴム(ダイキン製品ダイエルG901) 100重量部
MTカーボンブラック 20 〃
酸化マグネシウム(マグネシア#150) 6 〃
水酸化カルシウム 3 〃
トリアリルイソシアヌレート 1.8 〃
有機過酸化物(日本油脂製品パーヘキサ25B) 0.8 〃
【0027】
プレス成形されたフッ素ゴム層は、ガスケットとしての用途上、硬度(デュロメーターA)が70以下で、圧縮永久歪(150℃、22時間)が20%以下であることが望ましく、特に配合内容によって制限されるものではない。
【0028】
プライマー塗布鋼板上へのゴム層の積層・複合化は、このように加硫接着剤を用いた加硫接着によって行われるが、プライマー塗布鋼板上に加硫ゴムシート等、例えばガスケット用途の場合には厚さ約0.2〜2mm程度のシート状物に任意形状および寸法のリップ部を有する加硫ゴムシートを接着剤を介して後貼り接着することもできる。この場合の接着剤としては、ゴムの種類に応じた任意の市販接着剤を用いることができ、ただし耐水性や耐酸性が必要な用途の場合には、エポキシ樹脂系、フェノール樹脂系等の熱硬化性樹脂系のものを用いることが好ましい。接着は、プライマー塗布鋼板上に接着剤を塗布した後そこに加硫ゴムを重ね、加硫ゴムの種類にもよるが、一般に約150〜220℃程度に加圧加熱することによって行われる。
【実施例】
【0029】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0030】
実施例1
脱脂した金めっきステンレス鋼板上に、次の組成を有するプライマーA
レゾール型フェノール樹脂(群栄化学製品レジトップPL-2208; 159重量部
固形分濃度63重量%)
エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート 10 〃
2-エトキシエタノール 2031 〃
を10μmの厚さで塗布し、室温で乾燥させた後、200℃で15分間の焼付け処理を行った。
【0031】
このプライマー上に、市販のフッ素ゴム用フェノール/エポキシ樹脂系加硫接着剤A
ロームアンドハース社製品シクソン300 100重量部
ロームアンドハース社製品シクソン311 100 〃
メチルエチルケトン 1360 〃
を10μmの厚さで塗布し、室温で乾燥させた後200℃、15分間の焼付け処理を行った。その上に、配合例Iの未加硫フッ素ゴムコンパウンドを載せ、180℃、6分間のプレス加硫を行った後、200℃、24時間の二次加硫を行い、接着試験片を作製した。
【0032】
この接着試験片について、JIS K6256 90°剥離試験法に準拠して、初期、80℃の温水中に140時間または280時間浸漬後および80℃の0.5重量%硫酸中に140時間または280時間浸漬後のゴム残留面積率の測定と剥れ界面の状態の目視による観察を行った。剥れ界面の状態については、ゴム破断をR、ゴムと上塗り接着剤界面での剥離をRC、上塗り接着剤とプライマーの界面での剥離をCP、金属とプライマーの界面での剥離をMとして表示した。
【0033】
実施例2
実施例1のプライマーAにおいて、有機アルミニウム化合物量が100重量部に、また2-エトキシエタノール量が3741重量部にそれぞれ変更されたプライマーBが用いられた。
【0034】
実施例3
実施例1のプライマーAにおいて、有機アルミニウム化合物量が200重量部に、また2-エトキシエタノール量が5641重量部にそれぞれ変更されたプライマーCが用いられた。
【0035】
比較例1
実施例1において、プライマーとしてシランカップリング剤系表面処理剤(ロードファーイースト社製品AP-133)が用いられた。
【0036】
比較例2
実施例1において、プライマーとして前記特許文献1の実施例1記載のアルコキシシラン共重合オリゴマー、チタンテトラ(アセチルアセトネート)、メタノールおよび水よりなる加硫接着用プライマーが用いられた。
【0037】
比較例3
実施例1において、プライマーAが用いられなかった。
【0038】
以上の実施例1〜3および比較例1〜3で得られた結果は、次の表1に示される。
表1
実施例 比較例
測定条件
初期
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 100 100 20
剥れ界面 R R R R R M
80℃温水140時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 40 100 −
剥れ界面 R R R M R −
80℃温水280時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 20 100 −
剥れ界面 R R R M R −
80℃硫酸140時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 0 20 −
剥れ界面 R R R M M −
80℃硫酸280時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 70 100 80 − 0 −
剥れ界面 M R CP − M −
【0039】
実施例4〜6、比較例4〜6
実施例1〜3、比較例1〜3において、加硫接着剤Aの代りに後貼り用接着剤Bが用いられた。
エポキシ樹脂(旭電化製品EP-4100) 100重量部
ジシアンジアミド(同社製品EH-3636AS) 8 〃
この接着剤を用いての後貼り接着は、プライマー処理金めっきステンレス鋼板上に後貼り接着剤Bを10μmの厚さの塗布した後、加硫ゴム(前記配合例Iの未加硫フッ素ゴムコンパウンドを180℃、6分間プレス加硫した後200℃、24時間の二次加硫を行った厚さ1mmのシート状物)を貼り、150℃、1時間の硬化を実施して行われた。
【0040】
以上の実施例4〜6および比較例4〜6で示された結果は、次の表2に示される。
表2
実施例 比較例
測定条件
初期
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 100 100 100
剥れ界面 R R R R R R
80℃温水140時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 80 100 0
剥れ界面 R R R M R M
80℃温水280時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 40 100 −
剥れ界面 R R R M R −
80℃硫酸140時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 0 40 0
剥れ界面 R R R M M M
80℃硫酸280時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 70 100 90 − 0 −
剥れ界面 M R RC − M −
【0041】
実施例7〜9、比較例7〜9
実施例1〜3、比較例1〜3において、プライマー処理金めっきステンレス鋼板上に半円形断面(半径0.5mm)リップ部を有する加硫ゴムシート(厚さ0.1mm、幅2mm)を加硫接着したものについて、同様にゴム残留面積率の測定および剥れ界面の目視による観察が行われた。なお、耐水試験は50%圧縮物についても行われ、また耐酸試験は0.3重量%ふっ酸についても行われた。
【0042】
以上の実施例7〜9および比較例7〜9で得られた結果は、次の表3に示される。
表3
実施例 比較例
測定条件
〔初期〕
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 100 100 20
剥れ界面 R R R R R M
〔耐水試験1〕
80℃温水140時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 40 100 −
剥れ界面 R R R M R −
80℃温水280時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 20 100 −
剥れ界面 R R R M R −
〔耐水試験2;50%圧縮〕
80℃温水140時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 20 100 −
剥れ界面 R R R M R −
80℃温水280時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 95 100 100 0 90 −
剥れ界面 M R R M M −
〔耐水試験1;0.5%硫酸〕
80℃硫酸140時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 0 20 −
剥れ界面 R R R M M −
80℃硫酸280時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 70 100 80 − 0 −
剥れ界面 M R CP − M −
〔耐水試験2;0.3%ふっ酸〕
80℃ふっ酸140時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 90 100 95 0 0 0
剥れ界面 M R CP M M M
80℃ふっ酸280時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 60 100 60 − − −
剥れ界面 M R CP − − −
【0043】
実施例10〜12、比較例10〜12
実施例4〜6、比較例4〜6において、プライマー処理金めっきステンレス鋼板上に半円形断面(半径0.5mm)リップ部を有する加硫シートを後貼り接着したものについて、同様にゴム残留面積率の測定および剥れ界面の目視による観察が行われた。なお、耐水試験は厚さ方向50%圧縮固定物についても行われ、また耐酸試験は0.3重量%ふっ酸についても行われた。
【0044】
以上の実施例10〜12および比較例10〜12で得られた結果は、次の表4に示される。
表4
実施例 比較例
測定条件 10 11 12 10 11 12
〔初期〕
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 100 100 100
剥れ界面 R R R R R R
〔耐水試験1〕
80℃温水140時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 80 100 0
剥れ界面 R R R M R M
80℃温水280時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 40 100 −
剥れ界面 R R R M R −
〔耐水試験2;50%圧縮〕
80℃温水140時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 50 100 0
剥れ界面 R R R M R M
80℃温水280時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 10 100 −
剥れ界面 M R R M R −
〔耐水試験1;0.5%硫酸〕
80℃硫酸140時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 100 100 100 0 40 0
剥れ界面 R R R M M M
80℃硫酸280時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 70 100 90 − 0 −
剥れ界面 M R RC − M −
〔耐水試験2;0.3%ふっ酸〕
80℃ふっ酸140時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 90 100 95 0 0 0
剥れ界面 M R M M M M
80℃ふっ酸280時間浸漬後
ゴム残留面積率 (%) 60 100 70 − − −
剥れ界面 M、RC R M、RC − − −


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂100重量部当り5〜250重量部の有機金属化合物を含有せしめてなる、ゴム/接着剤/プライマー/金属積層体製造の際のプライマーとして用いられるプライマー組成物。
【請求項2】
フェノール樹脂としてレゾール型フェノール樹脂が用いられた請求項1記載のプライマー組成物。
【請求項3】
有機金属化合物が少くとも1個のキレート環および/またはアルコキシル基を有する化合物である請求項1または2記載のプライマー組成物。
【請求項4】
鋼板と未加硫ゴムとの加硫接着の際のプライマーとして用いられる請求項1、2または3記載のプライマー組成物。
【請求項5】
鋼板と加硫ゴムとの接着の際のプライマーとして用いられる請求項1、2または3記載のプライマー組成物。
【請求項6】
鋼板がめっき鋼板である請求項4または5記載のプライマー組成物。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6記載のプライマー組成物をプライマーとして用いて製造されたゴム/接着剤/プライマー/金属積層体。
【請求項8】
ゴム・金属一体型ガスケットとして用いられる請求項7記載のゴム/接着剤/プライマー/金属積層体。
【請求項9】
燃料電池用ガスケットとして用いられる請求項8記載のゴム・金属一体型ガスケット。

【公開番号】特開2006−206616(P2006−206616A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16246(P2005−16246)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】