説明

プラスチックまたは金属の表面の塗装方法

プラスチックまたは金属の表面を塗装する方法であって、
一つの工程において、目的のプラスチックまたは金属の表面を
(A)分子量Mnが2000〜20000g/molの範囲であり、コモノマーとして共重合体の形態で
(a)15.5〜19.9質量%の少なくとも一種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸、及び
(b)80.1〜84.5質量%のエチレン、
を含むエチレンコポリマーから選択される少なくとも一種のエチレンコポリマーと、
(B)少なくとも一種の塩基と
を含む水分散液で処理する工程と、
次に、少なくとも一つの他の工程において、目的の金属またはプラスチックの表面に少なくとも一種の他の塗膜を形成する工程を有するを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックまたは金属の表面を塗装する方法であって、
一つの工程において、目的のプラスチックまたは金属の表面を、
(A)分子量Mnが2000〜20000g/molの範囲にあり、EN ISO1133に準じた160℃、325gの荷重下で求めたメルトフローレート(MFR)が、1〜150g/10分の範囲であり、且つ
少なくとも一種のエチレンコポリマーであって、
コモノマーとして共重合体の形態で
(a)15.5〜19.9質量%の少なくとも一種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸、及び
(b)80.1〜84.5質量%のエチレン、
を含むエチレンコポリマーから選択される少なくとも一種のエチレンコポリマーと、
(B)少なくとも一種の塩基と、
を含む水分散液で処理する工程、及び
次に、少なくとも一つの他の工程において、目的の金属またはプラスチックの表面に少なくとも一種の他の塗膜を形成する工程を有することを特徴とする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックまたは金属などの表面を塗装、例えば、見た目に魅力的な印象を与えるためにワニス塗装または塗料塗装する際には、多くの場合、目的の金属またはプラスチックの表面に、直接ワニスまたは塗料を塗りつけるのでなく、まず最初に下塗りまたはプライマーと呼ばれる第一の塗膜を形成する。このプライマーまたは下塗りは、いろいろな機能を達成するためのものである。例えば、ワニスまたは塗料の金属またはプラスチックへの接着を増強すること、塗装片の剥離を防止することを目的としている。また多くの場合、このプライマーまたは下塗りは、プラスチックまたは金属の表面の保護を強化または改善する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
過去にプライマーに使用された配合物には、多くの場合Cr(VI)化合物などの重金属化合物が含まれていた。しかし、健康の保護のためには、このような配合物の使用を避けることが望ましい。鉛丹系のプライマーは、多くの場合に、特に目的の塗装が食品に接触する場合に、毒性の理由で利用者から拒否される。
【0004】
本発明の目的は、表面の品質に優れ、高硬度であり、食品への接触が許されるプラスチックまたは金属の腐食防止表面を与える、プラスチックまたは金属の表面の塗装方法を提供することである。もう一つの目的は、プラスチックまたは金属の表面を効果的に塗装するのに利用できる配合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この結果、冒頭に定義した方法が見出された。また、本発明の方法に使用して特に良い効果が得られる水分散液や、これらの本発明の分散液の製造方法が見出された。また、本発明の方法に用いて特に良い効果が得られるエチレンコポリマーが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0006】
冒頭に定義した方法は、プラスチックまたは金属の表面から始まる。本発明の塗装用のプラスチックまたは金属の表面は、表面構造を持っていてもよい。つまり、本発明の目的において、これらは、規則的また不規則な凹凸を持っていてもよく、または好ましくは平滑であってもよい。なお、平滑とは肉眼で判別できる表面構造がないことを意味する。本発明の塗装用のプラスチックまたは金属の表面は、平面であっても曲面であってもよく、いかなる所望の表面形状を持っていてもよい。したがって、例えば金属箔も、特にアルミ箔も好適である。
【0007】
本発明の塗装用の金属の表面は、銅または銀などの貴金属であってもよく、卑金属であってもよい。なお、この「金属」には合金も含まれる。例えば、本発明の金属表面が、鉄、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、バナジウム、特に、ステンレス鋼やV2Aグレードのスチールなどのスチールや、あるいは、非鉄金属、貴金属または卑金属、例えば銀や真鍮、青銅、金または銅でできていてもよい。
【0008】
本発明の塗装用のプラスチック表面は、例えば熱可塑性樹脂であってもよい。好適なプラスチックとしては、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ASAなどのスチレンコポリマーがあげられ、特にフィルムの形状のものである。
【0009】
本発明の具体的な実施様態において、本発明の塗装用のプラスチックまたは金属の表面は、金属の硬質シート、特にアルミニウムのシート、またはプラスチックである。
【0010】
本発明の方法は、一つの工程において、目的のプラスチックまたは金属の表面を
(A)分子量Mnが2000〜20000g/molの範囲であり、共重合体の形態でコモノマーとして
(a)15.5〜19.9質量%の少なくとも一種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸、及び
(b)80.1〜84.5質量%のエチレン
を含むエチレンコポリマーから選択される少なくとも1種のエチレンコポリマー(本発明においてエチレンコポリマー(A)と称す)と、
(B)少なくとも一種の塩基と、
を含む水分散液で処理する工程、及び
次に、少なくとも一つの他の工程において、目的の金属またはプラスチックの表面を少なくとも一種の他の塗料で塗装する工程により実施される。
【0011】
用いる水分散液は、水性の乳濁液あっても懸濁液であってもよい。
【0012】
例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で求めた、エチレンコポリマー(A)の分子量Mnは、2000〜20000g/molの範囲、好ましくは3500〜15000g/molの範囲である。
【0013】
エチレンコポリマー(A)は、共重合体の形態でコモノマーとして
(a)質量換算で15.5〜19.9%、好ましくは16〜19%の少なくとも一種のエチレン性不飽和カルボン酸、及び
(b)質量換算で80.1〜84.5%、好ましくは81〜84%のエチレン(いずれの場合も、使用した全エチレンコポリマー(A)に対し)を含むエチレンコポリマーから選択される。
【0014】
共重合体の形態で含まれるコモノマーとは、エチレンコポリマー(A)内に分子的に導入されているコモノマー成分を意味する。
【0015】
エチレン性不飽和カルボン酸(a)としては、一般式I
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、用いられる変数は次のように定義される:
1とR2は、同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
1は、水素、及び非分岐状及び分岐状のC1〜C10アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルから選ばれ、より好ましくはC1〜C4アルキル基、例えばメチルや、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルから選ばれ、特に好ましくはメチルである;
2は、非分岐状および分岐状のC1〜C10アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルから選ばれ、より好ましくはC1〜C4アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルから選ばれ、特にメチルが好ましく、さらに特に好ましくは水素である)で示される少なくとも一種のカルボン酸を選択することが好ましい。
【0019】
本発明の一実施様態においては、R1は水素またはメチルである。極めて特に好ましくは、R1はメチルである。
【0020】
本発明の一実施様態においては、R1は水素またはメチルであり、R2は水素である。
【0021】
用いられる一般式Iのエチレン性不飽和カルボン酸がメタクリル酸であることが極めて特に好ましい。
【0022】
エチレンコポリマー(A)の製造に二種以上のエチレン性不飽和カルボン酸の使用が好ましい場合には、二種の異なる一般式Iのエチレン性不飽和カルボン酸を、例えばアクリル酸とメタクリル酸を使用することができる。
【0023】
本発明の一実施様態においては、エチレンコポリマー(A)は、一種以上の他のコモノマー(c)を共重合体の形態で含んでいてもよく、その例としては、イソブテン、スチレン、一種以上のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸のC1〜C10アルキルエステルまたはコ−ヒドロキシ−C2〜C10アルキレンエステル、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、またはn−メタクリル酸ブチルがあげられる。
【0024】
本発明の一実施様態においては、エチレンコポリマー(A)は、(a)と(b)の合計に対して、合計で最大10質量%の一種以上のコモノマー(c)を共重合体の形態で含んでいてもよい。
【0025】
本発明の他の好ましい実施様態においては、エチレンコポリマー(A)は、他のコモノマー(c)を共重合体の形態で含まない。
【0026】
本発明の一実施様態においては、エチレンコポリマー(A)の、EN−ISO1133に準じて160℃、325gの荷重で求めたメルトフローレート(MFR)が1〜150g/10分の範囲、好ましくは5〜15g/10分、より好ましくは8〜12g/10分にある。
【0027】
本発明の一実施様態においては、エチレンコポリマー(A)の、DIN−EN2114に準じて求めた酸価は、100〜150mgKOH/gワックスの範囲であり、好ましくは115〜130mgKOH/gワックスである。
【0028】
本発明の一実施様態においては、エチレンコポリマー(A)の溶融動粘度Vは、120℃で、少なくとも5000mm2/sであり、好ましくは少なくとも10000mm2/sである。
【0029】
本発明の一実施様態においては、エチレンコポリマー(A)の、DIN51007に準じてDSCにより求めた融解範囲は、60〜110℃の範囲であり、好ましくは65〜90℃の範囲である。
【0030】
本発明の一実施様態においては、エチレンコポリマー(A)の融解範囲が広いこともあり、少なくとも7℃以上で20℃以下の温度範囲、好ましくは10℃以上で15℃未満の温度範囲に関係しうる。
【0031】
もう一つの本発明の実施様態においては、エチレンコポリマー(A)の融点がシャープに確認され、DIN51007に準じて求めると、2℃未満の温度範囲で、1℃未満の温度範囲で確認される。
【0032】
本発明の一実施様態においては、エチレンコポリマー(A)の、DIN53479に準じて求めた密度が、0.89〜1.10g/cm3の範囲にあり、好ましくは0.92〜0.99g/cm3の範囲にある。
【0033】
エチレンコポリマー(A)は、交互コポリマーであっても、好ましくはラダムコポリマーであってもよい。
【0034】
エチレン(b)とエチレン性不飽和カルボン酸(a)と、適当なら他のコモノマー(c)からなる本発明で私用のエチレンコポリマー(A)は、高圧下でのフリーラジカル開始による共重合により、例えば、高圧攪拌オートクレーブまたは高圧チューブ反応器を用いて、高圧攪拌オートクレーブと高圧チューブ反応器とを組み合わせて製造することが好ましい。高圧攪拌オートクレーブは公知である。例えば、ウルマン工業化学辞典、第5版、見出し:ワックス類、Vol. A28、pp. 146 ff.、Verlag Chemie Weinheim、Basle、Cambridge、New York、Tokyo、1996に記載されている。このようなオートクレーブの長さ/直径比は、ほとんどの場合、5:1〜30:1の範囲に入り、好ましくは10:1〜20:1である。同様に使用可能な高圧チューブ反応器も、ウルマン工業化学辞典、第5版、見出し:ワックス類、Vol. A 28、pp. 146 ff.、Verlag Chemie Weinheim、Basle、Cambridge、New York、Tokyo、1996に記載されている。
【0035】
共重合に好適な圧力条件は、500〜4000barであり、好ましくは1500〜2500barである。このような条件を、以下高圧と呼ぶ。反応温度は、170〜300℃の範囲であり、好ましくは195〜280℃の範囲である。
【0036】
共重合を重合調整剤の存在下で行ってもよい。用いる重合調整剤としては、例えば、水素、または少なくとも一種の脂肪族アルデヒド、または一般式II
【0037】
【化2】

【0038】
(式中、R3とR4は、同一であっても異なっていてもよく、水素;
1〜C6アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、
より好ましくはC1〜C4アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル;
3〜C12シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシルから選ばれ、好ましくは、シクロペンチルやシクロヘキシル、シクロヘプチルから選ばれる)で示される少なくとも一種の脂肪族ケトン、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
特定の実施様態においては、R3とR4は、相互に共有的に結合して、4〜13員環を形成する。したがって、R3とR4は、一緒になって、例えば−(CH24−、−(CH25−、−(CH26、−(CH27−、−CH(CH3)−CH2−CH2−CH(CH3)−、または−CH(CH3)−CH2−CH2−CH2−CH(CH3)−となる。
【0040】
好適な重合調整剤の例として、さらに、アルキル芳香族化合物、具体的にはトルエン、エチルベンゼン、及びキシレンの一種以上の異性体があげられる。極めて好適な重合調整剤の例として、さらに例えば、イソドデカン(2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン)またはイソオクタンなどのパラフィンが挙げられる。
【0041】
フリーラジカル重合に使用できる開始剤は、典型的なフリーラジカル開始剤であり、例えば有機過酸化物、酸素またはアゾ化合物である。二種以上のフリーラジカル開始剤の混合物も好適である。
【0042】
市販品から選ばれる好適な過酸化物としては、例えば、ジデカノイルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、tert−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、ジベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシジエチルアセテート、tert−ブチルパーオキシジエチルイソブチレート、1,4−ジ−(tert−ブチルパーオキシカルボニル)シクロヘキサンの異性体混合物、tert−ブチルペルイソノナノエート、1,1−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリ−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、メチルイソブチルケトンパーオキシド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボナート、2,2−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ブタンまたはtert−ブチルパーオキシアセテート;
tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−tert−アミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、異性体のジ−(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルパーオキシヘキサン、tert−ブチルクミルパーオキシド、2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3,ジ−tert−ブチルパーオキシド,1,3−ジイソプロピルベンゼンモノヒドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシドまたはtert−ブチルハイドロパーオキシド;及び、
EP−A0813550により公知の二量体または三量体ケトン過酸化物があげられる。
【0043】
特に好適な過酸化物類は、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシピバレート、tertアミルパーオキシピバレード、tert−ブチルパーオキシイソノナノエート、またはジベンゾイルパーオキシド、またはこれらの混合物である。アゾ化合物としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)があげられる。通常重合に用いられる量で、フリーラジカル開始剤が投入される。
【0044】
多くの市販の有機過酸化物は、取り扱いを容易にするため、販売前にいわゆる希釈剤と混合されている。好適な希釈剤の例としては、特にホワイトオイルやイソドデカン等の炭化水素があげられる。高圧重合条件下においては、このような希釈剤が分子量調整作用を持つこともある。本発明の目的のためには、さらに他の分子量調整剤の使用を必要とするような分子量調整剤は、この希釈剤には適していない。
【0045】
エチレン性不飽和カルボン酸は、一般にエチレンより容易にエチレンコポリマー(A)に取り込まれるため、投入されるコモノマー(a)、(b)、及び適当なら(c)の比率が、必ずしも正確にエチレンコポリマー(A)中のこれらの単位の比率に相当するものではない。
【0046】
コモノマーの(a)、(b)、および適当なら(c)は、通常、一緒にあるいは個別に計量される。
【0047】
コモノマーの(a)、(b)、および適当なら(c)を、圧縮機中で重合圧力にまで圧縮できる。本発明の方法のもう一つの実施様態においては、これらのコモノマーを、最初に、例えば150〜400bar、好ましくは200〜300bar、特に好ましくは260barにポンプにより加圧し、次いで、圧縮機により実際の重合圧力に加圧する。
【0048】
この共重合は、溶媒の非存在下で行っても溶媒の存在下で行ってもよい。重合中に反応器に存在して一種以上のフリーラジカル開始剤の希釈のために用いられる鉱油や白油、その他の溶媒は、本発明の目的では溶媒とは考えない。好適な溶媒の例としては、トルエンやイソドデカン、キシレン異性体があげられる。
【0049】
本発明の方法の第一の工程で用いられる水分散液は、少なくとも一種の塩基(B)を含んでいる。塩基(B)は、例えば、塩基性のアルカリ金属塩である。塩基性のアルカリ金属塩の例としては、塩基性のカリウム塩また特にナトリウム塩があげられ、具体的には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムがあげられる。塩基(B)は、好ましくは揮発性の塩基を含み、より好ましくはエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、i−アミノ−2−プロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミンなどのアミンを含み、非常に好ましくはアンモニアを含む。
【0050】
本発明の一実施様態においては、塩基(B)は、少なくとも2種の塩基の混合物を含み、特に水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物と、アンモニアまたはエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、ジエチレントリアミン、エチレンジアミンまたはテトラエチレンペンタミンなどの有機アミンの混合物を含んでいる。
【0051】
本発明の一実施様態においては、本発明の方法の第一の工程で用いる水分散液は、分散液のpHが7〜10の範囲、好ましくは8〜9.5の範囲となるような十分な量の塩基(B)を含んでいる。
【0052】
本発明の一実施様態においては、第一の工程で用いる水分散液の固形分含量が5〜45%の範囲、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは15〜30%の範囲であってもよい。
【0053】
本発明の一実施様態においては、第一の工程で用いる水分散液が、一種以上の補助剤(C)を、例えばクエン酸塩や酒石酸、酢酸塩、シュウ酸塩などの一種以上のカルボン酸塩などを含んでいてもよく、また一種以上のフィルム成形助剤、一種以上の酸化防止剤または粒子状固体を含んでいてもよい。これらの例としては、次のものがあげられる:
珪藻や珪藻岩を焼成して得られる天然物。主成分は非晶質のSiO2変性物であり、これ以外に酸化アルミニウムや酸化鉄等の元素を含み、これらのシリカ系化合物をも含んでいる。
【0054】
火山性の広い意味での粘土(流紋岩)を焼成、摩砕、選択して得られるパーライト。これらの構造は薄葉状であり、化学的にはケイ酸ナトリウム、カリウム及び/又はアルミニウムで表される。
【0055】
ベントナイトとモンモリロナイト、膨潤性と吸収性に優れた粘土鉱物。
【0056】
高分子架橋粒子などの合成材料。
【0057】
減摩性能(摩擦係数)の調整と酸素透過性の調整のために、炭酸物粒子またはケイ酸塩粒子の使用が好ましく、特に炭酸カルシウムや、ベントナイトや、タルクやマイカなどのモンモリロナイトなどの層状ケイ酸塩の使用が好ましい。他の好適な補助剤は、Zn塩類などの耐食性顔料や有機腐食防止剤である。また、塗料中の酸素拡散経路を延ばすことのできる、高アスペクト比のタルクやマイカなどの添加物(表面変性されたものも含む)を添加することもできる。
【0058】
好適な酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸や、2,6−ジ−tert−ブチル−パラ−ヒドロキシトルエンなどの立体障害性のフェノール、ヒドロキノン、さらにヒドロキノンの誘導体、特にヒドロキノンモノメチルエーテルがあげられる。
【0059】
フィルム成形助剤は、例えば、アルコールやエーテル、脂肪酸エステルから選ばれ、ドイツ薬局方(DAB)にその例が記述されている。
【0060】
本発明の一実施様態においては、第一の工程で用いる分散液は乳化剤を含んでいない、つまり乳化剤非含有である。乳化剤とは、カチオン性、アニオン性、二イオン性、また特にノニオン性の界面活性化合物を意味し、その例としては、少なくとも一種のC10〜C40アルキル基のアミンのアンモニウム塩;C10〜C40アルキルスルホン酸、またはC10〜C40アルキルスルホン酸またはC8〜C30アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩またはカリウム塩;二重または多重にアルコキシル化されたC5〜C20アルカノールのナトリウムまたはカリウム塩;一置換または多置換であり飽和していてもよい天然または合成脂肪酸のナトリウムまたはカリウム塩;エステルクアット;一重乃至百重にアルコキシル化されたオキソ法アルコールまたは脂肪アルコールがあげられる。「乳化剤を含まない」または「乳化剤非含有」とは、本発明で用いる水性組成物中の上記の化合物の濃度が、0.1質量%以下、好ましく検出限界以下であることを意味する。
【0061】
本発明で用いられる分散液は、さらに水を、好ましくは脱イオン水、例えば蒸留水またはイオン交換体水を含んでいる。
【0062】
本発明の一実施様態において、プラスチックまたは金属表面は、エチレンコポリマー(A)と塩基(B)とを含む水分散液を用いて、浸漬、噴射、注入、塗布、ナイフ塗装、ロール塗装または電着塗装により処理される。
【0063】
本発明の塗装は、浸漬で行うことが望ましく、その際、塗装は、温度が15〜90℃の範囲の、好ましくは最高70℃、より好ましくは20〜50℃の範囲の浸漬浴を用いて行う。この目的のために、エチレンコポリマー(A)と塩基(B)とを含む組成物を入れる浸漬浴を加熱してもよい。プラスチックまたは金属表面を持つ部品を本発明により塗装することが望ましい場合、エチレンコポリマー(A)と塩基(B)とを含む組成物の入った浸漬浴中に、目的の熱い金属を浸漬して、自動的に温度上昇をもたらしてもよい。
【0064】
本発明の方法を、噴霧、注入、塗布、ナイフ塗装、ロール塗装または電着塗装により行うことが好ましい場合、15〜40℃の範囲、好ましくは20〜35℃の範囲の温度で行うことが好ましい。
【0065】
本発明の方法は、回分的に行ってもよいし、好ましくは連続的に行ってもよい。不連続な方法は、例えば一定の長さの部品の浸漬であり、その際、これらの部品はラックにつるしたものであってもよいし、有孔ドラム中に緩く収められたものであってもよい。連続的な方法は、特にコイル状の金属の処理に適している。この場合に、コイル状金属を、本発明のコポリマーを含む組成物の入ったタンクを通すか、同組成物の噴霧装置に通し、必要に応じて、前処理または後処理装置に通す。
【0066】
本発明の方法のある実施様態においては、この金属またはポリマーの表面が、連続コイル法により処理される。
【0067】
エチレンコポリマー(A)と塩基(B)とを含む水性組成物を実際に塗布した後に、乾燥が行われる。この乾燥は、揮発性成分の単純な蒸着により、大気下で室温で行なってもよい。
【0068】
適当な補助手段及び/又は予備手段を用いて、例えば乾燥される系を加熱したり及び/又はガス流(特に空気流)を通過させたりして、特に乾燥トンネル中で乾燥したりして、乾燥を促進させてもよい。乾燥をIRランプにより促進してもよい。40℃〜160℃、好ましくは50℃〜150℃、より好ましくは70℃〜130℃の温度で乾燥を行うことが適当である。上述の温度は、プラスチックまたは金属表面の温度である。乾燥機の温度はさらに大きくする必要がある。なお、プラスチック表面の処理の場合、この温度は目的のプラスチックの軟化温度より少なくとも5℃低く設定される。
【0069】
過剰の組成物を除くために、乾燥に先立って滴下乾燥させてもよい。塗装するプラスチックまたは金属の表面が、金属シートまたは金属箔またはプラスチックフィルムである場合は、過剰の組成物を、例えば絞りやブレード剥離により除いてもよい。
【0070】
本発明により処理されたプラスチックまたは金属表面から過剰の残留組成物を除くために、本発明の処理の後乾燥操作の前に、洗浄液、特に水でプラスチックまたは金属表面を洗うことができる。この後に乾燥が行われる。
【0071】
いわゆる「無洗浄」操作で乾燥を行うこともできる。エチレンコポリマー(A)と塩基(B)とを含む組成物は、塗布後直ちに、事前洗浄することなく乾燥オーブンで乾燥される。
【0072】
エチレンコポリマー(A)と塩基(B)とを含む水分散液でのプラスチック及び/又は金属表面の処理により、少なくともエチレンコポリマー(A)の成分と水性組成物のいずれか他の成分の一部が、プラスチックまたは金属の表面に物理吸着または化学吸着され、プラスチックまたは金属の表面とエチレンコポリマー(A)間に強固な結合が形成される。
【0073】
本発明の一実施様態においては、エチレンコポリマー(A)は、50nm〜50μm、好ましくは100nm〜10μm、より好ましくは300nm〜5μmの塗布厚で塗布される。これらの値は、乾燥後のエチレンコポリマー(A)の厚みである。
【0074】
本発明の方法を実施するに当たり、エチレンコポリマー(A)で処理したプラスチックまたは金属表面上に、少なくとも一種の他の塗膜が、少なくとも一つの他の工程において付与される。
【0075】
この目的のために、上述の第一の工程を繰り返してもよい。
【0076】
本発明の他の実施様態においては、この表面に、本発明の方法の第二の工程において、第一の工程とは異なる一種以上の異なる塗膜が付与される。第二の工程の一種以上の塗膜は、例えば、塗料またはワニス塗膜に通常用いられる成分を含む一種以上の公知の塗料塗膜を含んでいてもよい。これらの塗膜は、例えば着色塗膜であってもよいし効果塗料塗膜であってもよい。二種以上の塗料を形成する場合の典型的な塗料、その組成物、および典型的な塗膜の順序は、公知である。本発明により形成された塗膜は、市販の既存塗料を用いて非常に容易に重ね塗りが可能である。
【0077】
本発明の方法のある具体的な実施様態においては、上記のエチレンコポリマー(A)と塩基(B)とを含む水分散液での処理に先立ち、一つ以上の前処理ステップが実施される。
【0078】
エチレンコポリマー(A)と塩基(B)とを含む水分散液で本発明により処理が望ましいプラスチックまたは金属の表面、特に金属の表面の前処理のために、まず前処理し、洗浄、例えば脱脂及び/又は脱油してもよい。多くの実施様態において、脱脂または脱油はさらに一つ以上の予備洗浄工程を含んでいる。必要に応じて実施される予備洗浄工程の後、たとえば斑点状あるいは油膜状またはグリース膜状に付着した汚染グリースまたは油の除去が、実際の洗浄工程において、少なくとも一種の洗浄浴を用いて浸漬により、または少なくとも一種の洗浄剤を洗浄すべきプラスチックまたは金属表面に塗布して行われる。ただし、洗浄剤の塗布は、洗浄すべきプラスチックまたは金属の表面上に噴霧や流し込み、または例えばホース噴霧により行うことができる。洗浄浴または洗浄剤の残渣は、次いで例えば一箇所以上の連続する水洗浴で除かれ、プラスチックまたは金属の表面は最後に乾燥される。適当な期間ごとに、脱脂浴や脱油浴は処分すべきである。廃棄のためには、脱脂浴または脱油浴に蓄積するグリースまたは油を、別の操作により水相から分離する。脱脂浴または脱油浴には界面活性剤が含まれているため、廃棄処分には、他の化学物質(乳化破壊剤、ブレーカー)が予備に必要となる。金属の脱脂や脱油、またそのために有用な組成物や装置の詳細は、例えば、見出し:「金属と表面処理」で、ウルマン工業化学辞典、6版、2000、Wiley−VCH−Verlag GmbH、Weinheim、Germanyに記載されている。
【0079】
一実施様態においては、脱脂または脱油が、水性の洗浄浴または脱脂浴を用いて実施され、好ましくは、界面活性剤として一種以上の硫酸化ポリアルコキシル化脂肪族アルコール、または一種以上の硫酸化ポリアルコキシル化フェノール(いずれの場合も、例えば分子量Mnが800〜3000g/molの範囲で、濃度が0.01〜20質量%の範囲の、好ましくは0.02〜10質量%、より好ましくは少なくとも0.1質量%の範囲であるもの)を含むアルカリ脱脂浴またはアルカリ脱脂浴を用いて実施される。用いるアルカリ脱脂浴または脱脂浴のpHは、例えば8〜14の範囲でよく、好ましくは少なくとも9、より好ましくは11〜13である。
【0080】
洗浄浴や脱脂浴、特にアルカリ洗浄浴や脱脂浴は、10〜80℃の範囲の温度であってよい。
【0081】
洗浄、脱脂または脱油は、例えば0.1〜30秒間の範囲で実施される。
【0082】
本発明はまた、本発明の方法で得られるプラスチックまたは金属の塗装表面を提供する。本発明のプラスチックまたは金属の表面は、一般に、非常に表面品質にすぐれ、硬度が高く、第二の工程で一種以上の塗料塗膜が形成される場合塗料の接着性が優れる。
【0083】
本発明のある特別な実施様態においては、本発明のプラスチックまたは金属の表面がプラスチックまたは金属の塗装硬質シートである。本発明のプラスチックまたは金属の塗装硬質シートは、食品や薬品用の、例えば錠剤や座薬用のブリスターパックを製造するのに使用できる。
【0084】
本発明は、
(A)分子量Mnが2000〜20000g/molの範囲、好ましくは3500〜15000g/molの範囲にあり、且つ
コモノマーとして共重合体の形態で
(a)15.5〜19.9%の、好ましくは16〜19質量%のメタクリル酸、及び
(b)80.1〜84.5%、好ましくは81〜84質量%のエチレン、
を含むエチレンコポリマーから選択される少なくとも一種のエチレンコポリマーと、
(B)塩基性のアルカリ金属塩、好ましくはアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムと、より好ましくはアンモニアから選択される少なくとも一種の塩基とを含み、
pHが7〜11の範囲、好ましくは8〜9.5の範囲にある水分散液を提供する。
【0085】
本発明の一実施様態においては、本発明の水分散液は乳化剤を含まない。乳化剤は上記の定義どおりである。
【0086】
本発明の一実施様態においては、少なくとも一種のエチレンコポリマー(A)の、EN−ISO1133に準じて160℃で325gの荷重下で求めたメルトフローレート(MFR)は、1〜150g/10分の範囲であり、5〜15g/10分、より好ましくは8〜12g/10分の範囲にある。
【0087】
本発明で用いるエチレンコポリマー(A)の他の物理的性質は、上述の通りである。
【0088】
本発明の水分散液は、本発明の方法を実施するのに特に好適である。
【0089】
本発明はまた、本発明の水分散液を製造する方法、即ち本発明の分散方法を提供する。
【0090】
本発明の分散方法は、
(A)少なくとも一種の分子量Mnが2000〜20000g/mol、好ましくは3500〜15000g/molの範囲にあり、且つ
コモノマーを共重合体の形態で
(a)15.5〜19.9%、好ましくは16〜19質量%のメタクリル酸、及び
(b)80.1〜84.5%、好ましくは81〜84質量%のエチレン、
を含むエチレンコポリマーから選択される少なくとも1種のエチレンコポリマーと、
(B)塩基性のアルカリ金属塩、好ましくはアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、及びより好ましくはアンモニアから選ばれる少なくとも一種の塩基と、
をエチレンコポリマー(A)の融点より高い温度で、相互に水と混合して実施される。
【0091】
本発明の分散方法は、一種以上の上述のエチレンコポリマー(A)から出発して実施される。
【0092】
この一種以上のコポリマーを、例えば、容器、フラスコ、オートクレーブ、または反応器に入れ、このエチレンコポリマーまたはコポリマー(A)を加熱し、水と一種以上の塩基(B)と、適当なら他の補助剤(C)を加えるが、水や塩基(B)、他の助剤の点火順序は任意である。もし目的温度が100℃を超える場合は、加圧下で実施しその容器を適当に選択することが有利である。得られる乳化液または分散液は、機械的または空気的な攪拌または振盪により均一にさせる。エチレンコポリマーまたはコポリマー(A)の融点より高い温度に加熱することが有利である。エチレンコポリマーまたはコポリマー(A)の融点より少なくとも10℃、特に好ましくは30℃以上高い温度に加熱することが有利である。
【0093】
二種以上の異なるエチレンコポリマー(A)を使用する場合、最も高温で溶融するエチレンコポリマー(A)の融点より高い温度に加熱することが好ましい。二種以上の異なるエチレンコポリマー(A)を使用する場合、最も高温で溶融するエチレンコポリマー(A)の融点より少なくとも10℃高い温度に加熱することが好ましい。二種以上の異なるエチレンコポリマー(A)を使用する場合、最も高温で溶融するエチレンコポリマー(A)の融点より少なくとも30℃高い温度に加熱することが好ましい。
【0094】
次いで、このようにして得た本発明の水分散液を冷却することができる。
【0095】
本発明の分散方法により製造された水分散液は、高い貯蔵安定性に特徴があり、上記の本発明の処理方法で効果的に使用することができる。
【0096】
本発明はまた、分子量Mnが2000〜20000g/molの範囲にあり、EN−ISO1133に準じて160℃で325gの荷重下で求めたメルトフローレート(MFR)が5〜15g/10分の範囲にあり、且つ
コモノマーとして共重合体の形態で
(a)15.5〜19.9%、好ましくは16〜19質量%のメタクリル酸、及び
(b)80.1〜84.5%、好ましくは81〜84質量%のエチレン、
を遊離酸の形、又は部分的に若しくは完全に中和された形で含むことを特徴とするエチレンコポリマーを提供する。
【0097】
本発明のエチレンコポリマーを、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を使用して中和してもよいが、特に好ましくは、アンモニアで、特に水溶液の形で中和する。本発明のエチレンコポリマーは上述のように製造できる。
【実施例】
【0098】
本発明を以下、実施例により説明する。
【0099】
実施例
I.本発明のエチレンコポリマーの調整
エチレンとメタクリル酸の共重合に、文献(M.Buback et al.,Chem.Ing.Tech.1994、66、510)に記載の高圧オートクレーブを使用した。このために、1700barの反応圧力下で、エチレン(12.0kg/h)を連続的に高圧オートクレーブに供給した。別途、表1に示した量のメタクリル酸を、まず260barの中間圧力にまで圧縮し、次いで他の圧縮機を用いて、1700barの反応圧力下で、高圧オートクレーブに連続的に供給した。またそれとは別に、表1に示す量のtert−アミルパーオキシピバレート(イソドデカン中、濃度:表1参照)を含む開始剤溶液を、連続的に1700barの反応圧力下で高圧オートクレーブに供給した。また別途、プロピオンアルデヒドのイソドデカン溶液(濃度:表1参照)からなる表1に示す量の重合調整剤を、まず260barの中間圧力にまで圧縮し、他の圧縮機を用いて、連続的に1700barの反応圧力下で、高圧オートクレーブに供給した。反応温度は約210℃であった(表1参照)。この結果、本発明のエチレンコポリマーが得られた。その分析結果を表2に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
reactorは、高圧オートクレーブの最高内部温度である
略語:MAA:メタクリル酸、PA:プロピオンアルデヒド、ID:イソドデカン(2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン)、ID中PA:プロピオンアルデヒドのイソドデカン溶液、溶液全量
PO:パーオキシピバル酸tert−アミル、
c(PA):ID中のPAの濃度(体積%)
c(PO):ID中のPOの濃度(mol/l)
変換率は、エチレンに対するので、単位は質量%である。
【0102】
【表2】

【0103】
MFRは、常にEN−ISO1133に準じて160℃、325gの荷重下で測定した。
n.d.:測定せず
「含量」とは、それぞれ、特定のエチレンコポリマー中の共重合されるエチレンまたはMAAの分率をいう。
ν:動的溶融粘度、DIN51562に準じて120℃で測定。
【0104】
本発明のエチレンコポリマーのエチレン含量とメタクリル酸含量は、NMR分析及び滴定(酸価)により求めた。エチレンコポリマーの酸価は、DIN53402に準じて滴定により求めた。KOH消費量は、エチレンコポリマーのメタクリル酸含量に相当する。
【0105】
濃度は、DIN53479に準じて求めた。融解範囲は、DIN51007に準じて、DSC(示差走査熱量分析、差動熱分析)により求めた。
【0106】
II.本発明の金属表面の処理
II.1.金属表面の調製、概評
本発明例及び比較例は、Al99.9、Zn99.8、高温浸漬または電気メッキによる亜鉛メッキスチール(片面が0.01〜20μmの亜鉛表面)、または建築グレードのスチールSt1.0037の金属試験パネルを用いて実施した。
【0107】
いずれの場合も、各エチレンコポリマー(A)の15質量%水溶液を使用した。各エチレンコポリマー(A)の水溶液を均一に混合後、浸漬浴に供給した。前もって洗浄した金属試験パネルを上記の時間浸漬し、一定重量となるまで80℃で乾燥した。最後に、評価中のエッジ効果を除くため塗装パネルの縁を覆い隠した。
【0108】
本発明で用いる組成物に金属表面を暴露する前後に、その重量を測定し、その値より表面保護膜の厚みを求めた。ただし被膜の密度は1kg/lと仮定した。以下の「被膜の厚み」は、塗膜の実際の密度とは関係なく、すべてこのようにして求めた値である。
【0109】
腐食阻害効果は、DIN50021に準じて塩水噴霧雰囲気下における塩水噴霧試験で測定した。この腐食試験における耐食時間は、腐食による損傷の種類に応じて個別に定義した。
【0110】
直径が一般に1mmを超える白色の斑点(酸化亜鉛または酸化アルミニウム、白錆と称す)が生成する場合、耐食時間とは、みかけの損傷が、DIN−EN−ISO10289(April 2001、Annex B、p.19)の規格8に相当するまで進むまでの時間である。
【0111】
見掛けの腐食の程度は、R10(錆の現象なし)〜R0(完全に錆つき)の錆化係数で評価される。腐食安定性、また系の性能の評価に最も重要なのは、錆化係数がR8を超える、即ち錆量が5%を超える時間である。
【0112】
以下の実施例においては、まずアルカリ洗浄を実施した。
【0113】
二個の平坦な電極(ステンレス鋼またはグラファイト)を備えた、目的の金属試験パネルより表面積が大きなプラスチック皿に、次の組成のアルカリ浴の溶液を入れた。
20gのNaOH
22gのNa2CO3
1gのEDTA−Na4
20gの、9当量のエチレンオキシド[C13(EO)9]でエトキシ化された飽和C13のオキソ法アルコール
940mlの蒸留水
このアルカリ浴は、撹拌下で、NaOHとNa2CO3を続けて蒸留水に溶解して得た。これに平行して、[C13(EO)9]とEDTA−Na4を、50℃の温度で別途蒸留水に溶解し、EDTA−Na4溶液を得た。次いで、[C13(EO)9]とEDTA−Na4の水溶液を、メスシリンダ中でNaOH−Na2CO3溶液に添加し、室温に冷却し、蒸留水で1000mlとした。
【0114】
寸法が50mm×20mm×1mmの金属試験パネルを紙タオルでぬぐった後、アルカリ浴中で10ボルトの電極間に入れ、陰極として連結した。電流強度が1Aとなるように電圧を調整した。10秒後、金属試験パネルをアルカリ浴から取り出し、完全に脱塩した流水中で5秒間洗浄した。
【0115】
III.2.1.コポリマー(A.1)を使用した試験
St1.0037の(A.1)での塗装
上のように前処理した金属試験パネルを、(A.1)の15質量%水溶液(試験液)に一度10秒間浸漬し、室温で60分間次いで120℃で60分間乾燥させた。
塗布厚:3.5μm
塗装後の金属試験パネルには、未処理の試験パネルと比較して色や金属光沢に異常は認められなかった。5%塩水噴霧雰囲気、30℃での規格8までの耐食時間:10時間を超える。
【0116】
III.2.2.コポリマー(A.2)を用いる試験
St1.0037の(A.2)での塗装
上のように前処理した金属試験パネルを、(A.2)の15質量%水溶液(試験液)に一度10秒間浸漬し、室温で60分間次いで120℃で60分間乾燥させた。
塗布厚:4μm
塗装後の金属試験パネルには、未処理の試験パネルと比較して色や金属光沢に異常は認められなかった。5%塩水噴霧雰囲気、30℃での、規格8までの耐食時間:8時間.
【0117】
III.2.3.コポリマー(A.3)を用いた試験
ST1.0037の(A.3)での塗装
上のように前処理した金属試験パネルを、(A.3)の15質量%水溶液(試験液)に一度10秒間浸漬し、室温で60分間次いで120℃で60分間乾燥させた。
塗布厚:5.5μm
塗装後の金属試験パネルには、未処理の試験パネルと比較して、色や金属光沢に異常は認められなかった。5%塩水噴霧雰囲気、30℃での、規格8までの耐食時間:18時間を超える
【0118】
比較例
比較例C1
無塗装の「ブランク」金属パネル
5%塩水噴霧雰囲気、30℃での、規格8までの耐食時間は、1時間未満であった。
【0119】
比較例C2:
3PO4での保護膜形成(リン酸化)
金属試験パネルを一度、0.1%または0.5%または1質量%のリン酸水溶液に10秒間浸漬させた。
【0120】
5%塩水噴霧雰囲気、30℃での、規格8までの耐食時間:いずれの場合も、2時間未満

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックまたは金属の表面を塗装する方法であって、
一つの工程において、目的のプラスチックまたは金属の表面を、
(A)分子量Mnが2000〜20000g/molの範囲内であり、コモノマーとして共重合体の形態で
(a)15.5〜19.9質量%の少なくとも一種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸、及び
(b)80.1〜84.5質量%のエチレン、
を含むエチレンコポリマーから選択される少なくとも一種のエチレンコポリマーと、
(B)少なくとも一種の塩基と、
を含む水分散液で処理する工程、及び
次に、少なくとも一つの他の工程において、目的の前記プラスチック又は金属の表面に少なくとも一種の他の塗膜を形成する工程を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも一種のエチレンコポリマー(A)の、EN ISO1133に準じた160℃、325gの荷重下で求めたメルトフローレート(MFR)が、1〜150g/10分の範囲にある請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一種のエチレンコポリマー(A)の、EN ISO1133に準じた160℃、325gの荷重下で求めたメルトフローレート(MFR)が、5〜15g/10分の範囲にある請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一種のエチレン性不飽和C3〜C10カルボン酸(a)がメタクリル酸である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
水分散液のpHが7〜10の範囲にある請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
塩基(B)が、アルカリ金属水酸化物、アミン、及びアンモニアから選択される請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水分散液が乳化剤を含まない請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記水分散液処理の後に乾燥し、その後に他の塗膜を塗布する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記他の塗膜が一種以上の塗料塗膜である請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法により塗装されたプラスチックまたは金属の表面。
【請求項11】
(A)分子量Mnが2000〜20000g/molの範囲内であり、コモノマーとして共重合体の形態で
(a)15.5〜19.9質量%のメタクリル酸、及び
(b)80.1〜84.5質量%のエチレン、
を含むエチレンコポリマーから選択される少なくとも一種のエチレンコポリマーと、
(B)アルカリ金属水酸化物及びアンモニアから選択される少なくとも一種の塩基と、
を含み、pHが7〜10の範囲にある水分散液。
【請求項12】
乳化剤を含まない請求項11に記載の水分散液。
【請求項13】
少なくとも一種のエチレンコポリマー(A)の、EN ISO1133に準じた160℃、325gの荷重下で求めたメルトフローレート(MFR)が、1〜150g/10分の範囲内にある請求項11または12に記載の水分散液。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項に記載の水分散液の製造方法であって、
(A)分子量Mnが2000〜20000g/molの範囲内であり、コモノマーとして共重合体の形態で
(a)15.5〜19.9質量%のメタクリル酸、及び
(b)80.1〜84.5質量%のエチレン、
を含むエチレンコポリマーから選択される少なくとも一種のエチレンコポリマーと、
(B)アルカリ金属水酸化物及びアンモニアから選択される少なくとも一種の塩基と、
を、エチレンコポリマー(A)の融点を超える温度で、相互に水とに混合する工程を有することを特徴とする方法。
【請求項15】
分子量Mnが2000〜20000g/molの範囲内にあり、EN ISO1133に準じた160℃、325gの荷重下で求めたメルトフローレート(MFR)が、5〜15g/10分の範囲内にあり、且つ
コモノマーとして共重合体の形態で
(a)15.5〜19.9質量%のメタクリル酸、及び
(b)80.1%〜84.5質量%のエチレン、
を遊離酸の形、又は部分的に若しくは完全に中和された形で含むことを特徴とするエチレンコポリマー。

【公表番号】特表2009−538730(P2009−538730A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512546(P2009−512546)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054910
【国際公開番号】WO2007/137963
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】