説明

プラスチックス偏光レンズ体の製造方法およびプラスチックス偏光レンズ体

【課題】本発明は、プラスチックス偏光レンズ体の製造方法、およびプラスチックス偏光レンズ体に関し、特に射出成形法による熱成形性樹脂を用いたプラスチックス偏光レンズ体の製造方法、および前記製造方法により製造されたプラスチックス偏光レンズ体を提供する。
【解決手段】射出成形法による熱成形樹脂とシート状偏光体を用いたプラスチックス偏光レンズ体の製造方法において、少なくとも片面を(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜したシート状偏光体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックス偏光レンズ体の製造方法、およびプラスチックス偏光レンズ体に関し、特に射出成形法による熱成形性樹脂を用いたプラスチックス偏光レンズ体の製造方法、および前記製造方法により製造されたプラスチックス偏光レンズ体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスッチックス偏光レンズの製造法の中で、矯正用レンズ、あるいは精度の高いプラノレンズを得るための実用的な方法としては、以下の方法があった。
(1)偏光フィルムをレンズ基材の上に貼りあわせた後に、さらに別のレンズ基材をその上から貼りあわせてレンズを得る。
(2)耐熱性の高い偏光フィルムの少なくとも片側の面に透明フィルムを貼りあわせ、特定の重合性組成物で該フィルム表面を処理した透明偏光シートを用い、重合性組成物と組み合わせ注型重合法にてレンズとする。(特許文献1)
(3)曲げ加工した偏光シートの裏側からレンズ基材となる樹脂を射出成形の手法で一体化してレンズを製造する方法。(特許文献2)
【0003】
(1)の方法には、生産性が低いという問題点があった。(2)の方法は、非常に広い範囲のレンズ用重合性組成物と組み合わせが可能であり、注型重合法でレンズを得る方法としては極めて優れたものである。また(3)の方法はポリカーボネート偏光レンズの製造方法として採用されており、製品の優れた特徴と生産性の高さから、ポリカーボネート偏光レンズを得るには優れた方法と言える。
【0004】
さらに、ポリカーボネート以外の熱成形性樹脂の一つである、ポリアミド樹脂を用いた、偏光レンズ体の製造方法としては以下のものがある。
(4)偏光フィルムの両側がセルローストリアセテートフィルムで挟まれた偏光シートの片側に接着剤を塗布し、その面にポリアミド樹脂を射出成形する。(特許文献3)
(5)2枚の保護シートで挟まれた偏光フィルムの片側に接着剤、あるいは粘着剤でポリウレタンシートまたはポリアミドシートを接合させ、その面にポリアミド樹脂を射出成形する。(特許文献4)
【0005】
【特許文献1】特開2005−211850
【特許文献2】特開平8−313701
【特許文献3】特開2004−237649
【特許文献4】特開2002−189199
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら(3)の方法は、ポリカーボネート以外の熱成形性樹脂に工業的に用いられた実績は無く、ポリカーボネート樹脂表面への、ポリカーボネート以外の熱成形性樹脂を熱融着させる条件を見出す事が実質的に不可能であったため、ポリカーボネート以外の熱成形性樹脂へはそのままでは実質的に応用不可能と考えられる。また、(4)の方法は射出成形の際に接着剤を用いるため、取り扱いが厄介であり生産性が高いとは言いがたい。一方(5)の方法にも、保護層の上にさらにシートを貼り合わせるために工程数が増し生産性が良いとは言えず、偏光積層体全体の厚みが厚くなり過ぎ後工程の操作や製品の性質上で問題となる等の欠点がある。さらに、(4)、(5)の両方法ともに、ポリアミド樹脂以外の熱成形性樹脂への応用が可能かどうかも不明である。
【0007】
すなわち、ポリカーボネート樹脂を除けば、ポリアミド樹脂以外の熱成形性樹脂を用いる射出成形法による偏光レンズは実用化もされていないし、具体的な製造法の提案もなされていなかった。従って、ポリカーボネート以外のレンズ用途に適した熱成形性樹脂を用いた偏光レンズ体を、高い生産性で得るための製造技術の確立が望まれるところである。さらに、前記熱成形性樹脂の中でも、殊にポリアミド樹脂は軽量性、耐薬品性、耐衝撃性の優れた特性があり、該樹脂より成形されたレンズは可塑剤への抵抗力が強く、ツーポイント眼鏡で要求される機械的強度に応えられるような点が非常に高く評価されている。従って、生産性の高いポリアミド偏光レンズ体の製造法を確立することは強く望まれている。さらに、ポリアミド樹脂偏光レンズ体を射出成形法により生産性良く製造するためには、偏光フィルム、偏光積層体は射出成形の際の厳しい条件に耐え得るとともに、成形品の偏光積層体とポリアミドの密着度が充分強いことが要求され、そのような偏光フィルム、偏光積層体の開発と、それらの実用的な製造プロセスを確立することも不可欠である。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ポリアミド樹脂偏光レンズ体の製造方法、ポリアミド偏光レンズ体の製造法に関し、さらにはポリアミド以外の熱成形性樹脂へも広く応用可能な製造方法でもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らはかかる状況に鑑み鋭意検討を進め、射出成形後レンズ基材と偏光シートの密着度が充分であり、また射出成形によるレンズ成形のための偏光シート加工やその前後の管理も容易な偏光フィルムおよび偏光集積体などの検討をさらに進めた結果、偏光フィルムの少なくとも片側の面に透明フィルムを貼りあわせ、その透明フィルムの上に特定の(メタ)アクリレート系重合性組成物で塗膜処理したものは、該表面へポリアミドを含む広い範囲の熱成形性樹脂の熱融着が可能であり、また曲げ加工やその前後の管理も容易であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1発明にかかるプラスチックス偏光レンズ体の製造方法は、少なくとも偏光シートを有するシート状偏光体を用いる射出成形法によるプラスチックス偏光レンズ体の製造方法であって、少なくとも片面を(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜したシート状偏光体を用いることを特徴とする。
【0011】
前記射出成形法において、ポリカーボネートを除く熱成形性樹脂を用いることができる。他の態様において、前記ポリカーボネートを除く熱成形性樹脂は、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、特にポリアミド樹脂であることが好ましい。
【0012】
前記(メタ)アクリレート系重合性組成物は紫外線硬化性を有することが好ましく、前記(メタ)アクリレート系重合性組成物としては、ウレタン(メタ)アクリレート系重合性組成物、ポリエステル(メタ)アクリレート系重合性組成物、およびエポキシ(メタ)アクリレート系重合性組成物から選ばれる少なくともいずれか1種であることが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレート系重合性組成物およびポリエステル(メタ)アクリレート系重合性組成物から選ばれる少なくともいずれか1種であることがさらに好ましい。また、前記(メタ)アクリレート系重合性組成物膜の厚さは、2μm以上13μm以下であることが好ましい。
【0013】
本発明のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法に用いる前記シート状偏光体は、偏光積層体であることが好ましい。この偏光積層体は、偏光シートと該偏光シートの少なくとも片面を被覆する透明シートとから構成することができる。前記偏光積層体において、前記透明シートは、ポリカーボネート樹脂、セルロース系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂から選ばれるいずれか1種で形成されてなることが好ましい。前記プラスチックス偏光レンズ体の有する偏光シートは、ポリビニルアルコール系樹脂から形成されてなることが好ましい。前記偏光積層体において、前記偏光シートは2色性色素を含有することが好ましく、さらに金属化合物およびホウ酸により処理されていることが好ましい。
【0014】
本発明の第2発明にかかるプラスチックス偏光レンズ体は、少なくとも偏光シートを有するシート状偏光体を含むプラスチックス偏光レンズ体であって、前記シート状偏光体の少なくとも片面に(メタ)アクリレート系樹脂層が形成され、さらに少なくとも該(メタ)アクリレート系樹脂層上に熱成形性樹脂層が射出成形法にて熱融着積層して形成されることを特徴とする。
【0015】
本発明の第2発明にかかるプラスチックス偏光レンズ体における「少なくとも片面に(メタ)アクリレート系樹脂層が形成」の意義は、本発明の第1発明にかかるプラスチックス偏光レンズ体の製造方法における「少なくとも片面に(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜」の意義と、以下の点を除き同様である。すなわち、第1発明においては重合前の(メタ)アクリレート系重合性組成物の膜を示すのに対し、第2発明においては重合後の(メタ)アクリレート系樹脂の層を示す。また、「(メタ)アクリレート系」および「シート状偏光体」も、第1発明におけるものと同様の意義を示す。
【0016】
前記射出成形法において、ポリカーボネートを除く熱成形性樹脂を用いることができる。他の態様において、前記ポリカーボネートを除く熱成形性樹脂は、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、特にポリアミド樹脂であることが好ましい。
【0017】
前記(メタ)アクリレート系樹脂層は、(メタ)アクリレート系重合性組成物膜の紫外線硬化により形成されることが好ましく、前記(メタ)アクリレート系樹脂層としては、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂層、ポリエステル(メタ)アクリレート系樹脂層、およびエポキシ(メタ)アクリレート系樹脂層から選ばれる少なくともいずれか1種であることが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂層およびポリエステル(メタ)アクリレート系樹脂層から選ばれる少なくともいずれか1種であることがさらに好ましい。また、前記(メタ)アクリレート系樹脂層の厚さは、2μm以上13μm以下であることが好ましい。
【0018】
本発明のプラスチックス偏光レンズ体に用いる前記シート状偏光体は、偏光積層体であることが好ましい。この偏光積層体は、偏光シートと該偏光シートの少なくとも片面を被覆する透明シートとから構成することができる。前記偏光積層体において、前記透明シートは、ポリカーボネート樹脂、セルロース系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂から選ばれるいずれか1種で形成されてなることが好ましい。前記プラスチックス偏光レンズ体の有する偏光シートは、ポリビニルアルコール系樹脂から形成されてなることが好ましい。前記偏光積層体において、前記偏光シートは2色性色素を含有することが好ましく、さらに金属化合物およびホウ酸により処理されていることが好ましい。
【0019】
本発明に用いることができる偏光積層体は、少なくとも偏光シートを有するシート状偏光体を含むプラスチックス偏光レンズ体の製造に好適な偏光積層体であって、前記シート状偏光体の少なくとも片面に(メタ)アクリレート系重合性組成物膜が形成されてなることを特徴とする。
【0020】
前記偏光積層体は、偏光シートと、該偏光シートの少なくとも片面を被覆する透明シートと、該透明シートを被覆する前記(メタ)アクリレート系重合性組成物膜とから構成することができる。この透明シートは、ポリカーボネート樹脂、セルロース系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂から選ばれるいずれか1種から形成されてなることが好ましい。前記偏光シートは、ポリビニルアルコール系樹脂から形成されてなることが好ましく、2色性色素を含有することが好ましく、さらに金属化合物およびホウ酸により処理されていることが好ましい。
【0021】
前記シート状偏光体の少なくとも片面に(メタ)アクリレート系重合性組成物膜が形成された偏光積層体は、透明シートの片面に(メタ)アクリレート系重合性組成物を塗膜してなることを特徴とする被覆シートを用いて製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかるプラスチックス偏光レンズ体の製造方法によれば、広い範囲のレンズ用途に適した熱成形性樹脂を用いることが可能であり、また曲げ加工やその前後の管理も容易であり、熱成形性樹脂を用いた偏光レンズ体を射出成形法により生産性良く提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
本発明の第1発明にかかるプラスチックス偏光レンズ体の製造方法は、少なくとも偏光シートを有するシート状偏光体を用いる射出成形法によるプラスチックス偏光レンズ体の製造方法であり、少なくとも片面を(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜したシート状偏光体を用いることを特徴とする。この製造方法においては、シート状偏光体の片面、または両面を(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜したシート状偏光体を用いることができる。シート状偏光体の少なくとも片面を(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜するのは、この塗膜層がポリアミド等広範囲の射出成形用透明樹脂(レンズ用樹脂と略)と射出成形により強く一体化し、外観も優れた成形品が得られるからである。したがって、シート状偏光体の少なくとも片面を(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜し、射出成形法によりレンズ用樹脂と一体化すれば、偏光体の偏光特性を維持することが可能であり、ポリアミド樹脂等の広範なレンズ用樹脂を用いたプラスチックス偏光レンズ体を提供することができる。また、少なくとも片面を(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜したシート状偏光体は、曲げ加工やその前後の管理も容易である。
【0025】
本発明のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法における、少なくとも片面を(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜したシート状偏光体は、広範囲のレンズに適した熱成形性樹脂と組み合わせて射出成形法でレンズに成形することが可能である。具体的にはポリカーボネート樹脂との組み合わせだけでなく、光学特性、耐久性に優れた(メタ)アクリル樹脂との組み合わせ、軽量性、耐薬品性、耐衝撃性に優れたポリアミド樹脂との組み合わせが可能であるため、非常に有用である。
【0026】
本発明の射出成形に用いることができるポリカーボネート樹脂は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンや、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジハロゲノフェニル)アルカンに代表されるビスフェノール化合物から周知の方法で製造された重合体であり、その重合体骨格に、脂肪酸ジオールに由来する構造単位が含まれるエステル結合を持つ構造単位を含んでいても良い。それらの中でも特に安価に製造できる、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂が好ましい。このようなポリカーボネート樹脂の例として、ユーピロン(三菱エンジニアリングプラスチックス製)、パンライト(帝人化成製)、マクロロン(バイエル製)、レキサン(GE製)があるが、これらに限定されない。
【0027】
本発明の射出成形に用いる熱成形性樹脂として特に好ましいのはポリアミド樹脂であるが、ポリアミド樹脂としては、芳香族ポリアミド樹脂、脂環族ポリアミド樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂を用いることが可能であり、単独重合体(ホモポリマー)であっても共重合体であってもかまわない。芳香族ポリアミドには、ジアミン成分、ジカルボン酸成分の一方の成分だけが芳香族成分のポリアミドも含まれる。脂環族ポリアミドには、ジアミン成分、ジカルボン酸成分の一方の成分だけが脂環族成分として構成されるポリアミドも含まれる。脂環族ポリアミドは入手が容易であり、透明性が高い特徴がある。脂肪族ポリアミドのホモポリマーとしては、脂肪族ジアミン成分と脂肪族ジカルボン酸との縮合物やアミノカルボン酸またはラクタムから得られるホモポリアミドが挙げられ、共重合体としてはこれらの構成成分である単量体が共重合したものが挙げられる。ここで、ラクタムとしては、ε―カプロラクタム、ω―ラウロラクタム、ω―カプリルラクタムなど、アミノカルボン酸としては、ω−アミノウンデカン酸など、ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミンなど、ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、ドデカン二酸などが挙げられる。ここで、機械的強度、耐薬品性、透明性等のバランスから脂環式ポリアミド樹脂は好ましいものであるが、2種以上のポリアミド樹脂を組み合わせてもよい。このようなポリアミド樹脂の例として、GLILAMID TR FE5577、XE 3805(EMS製)、NOVAMID X21(三菱エンジニアリングプラスチックス製)、東洋紡ナイロン T−714E(東洋紡製)があるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の射出成形に用いることができる(メタ)アクリル樹脂は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート(MMA)に代表される各種(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、またはPMMAやMMAと他の1種以上の単量体との共重合体であり、さらにそれらの樹脂の複数種が混合されたものでもよい。ここで、PMMAやMMAと共重合可能な他の単量体として、アルキル基の炭素数が2〜18のアルキル(メタ)アクリレート、アクリル酸やメタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸およびそれらのアルキルエステル、スチレン、α−メチルスチレン、核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド等が挙げられる。これらのなかでも、低複屈折性、低吸湿性、耐熱性に優れた環状アルキル構造を含む(メタ)アクリレートが好ましい。以上のような(メタ)アクリル樹脂の例として、アクリペット(三菱レイヨン製)、デルペット(旭化成ケミカルズ製)、パラペット(クラレ製)があるが、これらに限定されない。
【0029】
レンズ基材となる熱成形性樹脂と前記少なくとも片面を(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜したシート状偏光体の一体化はごく一般的な射出成形法で可能である。即ち、この(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜したシート状偏光体を射出成形機の金型に合わせて装着し、(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜した側に溶融した前記レンズ用熱成形性樹脂が射出されるようにすればよい。したがって、片面を(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜したシート状偏光体の場合、シート状偏光体の塗膜された面のみがレンズ用熱成形性樹脂と一体化されるようにするが、両面を(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜したシート状偏光体の場合は、その両面がレンズ用熱成形性樹脂と一体化されてもよいし、片面のみが一体化されてもよい。
【0030】
ここで、(メタ)アクリレート系重合性組成物とは、アクリレート系重合性化合物およびメタクリレート系重合性化合物の少なくともいずれか1種を含有する重合性組成物のことをいい、この組成物中には重合性化合物として、(メタ)アクリレート系の重合性単量体および/または重合性オリゴマーが含有されている。また、シート状偏光体とは、偏光性を有するシート状物のことをいい、例えば、偏光シートなどのように、その厚みに拘わらず、それ自身が偏光性を有するもの、および偏光シート積層体などのようにそれ自身が偏光性を有するものを含む偏光積層体などを挙げることができる。
【0031】
本発明のプラスチック偏光レンズ体の製造方法に用いる(メタ)アクリレート系樹脂を形成するために用いられる(メタ)アクリレート系重合性組成物としては、特に限定はなく様々な(メタ)アクリレート系重合性組成物を用いることが出来る。このような(メタ)アクリレート系重合性組成物は、活性エネルギー線の照射による硬化性を有することが硬化時間、安全性の面から好ましく、活性エネルギー線としては紫外線が好ましい。(メタ)アクリレート系重合性組成物は(メタ)アクリレート系重合性オリゴマーと(メタ)アクリレート系重合性単量体の混合系が好ましい。この重合性オリゴマーとしては多官能の(メタ)アクリレート系オリゴマーが好ましく、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーおよびエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーが好ましく、この中でもウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーがさらに好ましい。
【0032】
前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、特に限定はなく様々なウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを用いることができる。このようなウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、構造中にウレタン結合と(メタ)アクリル基を有するオリゴマーでポリイソシアネートとポリオールおよびヒドロキシ(メタ)アクリレート等の組み合わせからなるものである。ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系や、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が一般的であるがこれらに限定されるものではない。ポリオールとしては、多価アルコールにプロピレンオキサイドやエチレンオキサイドを付加したポリエーテル系ポリオールや、アジペート、ポリカプロラクトン、オリゴカーボネート等のポリエステル系ポリオールが例示される。ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
前記ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーとしては、多くのものが市販され、容易に入手することができる。これらのウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーとしては、例えば、ビームセット575、ビームセット551B、ビームセット550B、ビームセット505A−6、ビームセット504H、ビームセット510、ビームセット502H、ビームセット575CB、ビームセット102(以上、荒川化学工業株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、フォトマー6008、フォトマー6210(以上、サンノプコ株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、NKオリゴU−4HA、NKオリゴU−108A、NKオリゴU−1084A、NKオリゴU−200AX、NKオリゴU−122A、NKオリゴU−340A、NKオリゴU―324A、NKオリゴUA−100、NKオリゴMA−6(以上、新中村化学工業株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、アロニックスM−1100、アロニックスM−1200、アロニックスM−1210、アロニックスM−1310、アロニックスM−1600、アロニックスM−1960(以上、東亞合成株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、AH−600、AT−606、UA−306H(以上、共栄社化学株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、カヤラッドUX−2201、カヤラッドUX−2301、カヤラッドUX−3204、カヤラッドUX−3301、カヤラッドUX−4101、カヤラッドUX−6101、カヤラッドUX−7101、カヤラッドUX−4101(以上、日本化薬株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、紫光UV−1700B、紫光UV−3000B、紫光UV−3300B、紫光UV−3520TL、紫光UV−3510TL紫光UV−6100B、紫光UV−6300B、紫光UV−7000B、紫光UV−7210B、紫光UV−7550B、紫光UV−2000B、紫光UV−2250TL、紫光UV−2010B、紫光UV−2580B、紫光UV−2700B(以上、日本合成化学工業株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、アートレジンUN−9000PEP、アートレジンUN−9200A、アートレジンUN−9000H、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−5200、アートレジンUN−2111A、アートレジンUN−330、アートレジンUN−3320HA、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−3320HC、アートレジンUN−3320HSアートレジンUN−6060P(以上、根上工業株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、Laromer UA19T、Laromer LR8949、Laromer LR8987、Laromer LR8983(以上、BASF社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、ダイヤビーム UK6053、ダイヤビーム UK6055、ダイヤビーム UK6039、ダイヤビームUK6038、ダイヤビーム UK6501、ダイヤビーム UK6074、ダイヤビーム UK6097(以上、三菱レイヨン株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、Ebecryl254、Ebecryl264、Ebecryl265、Ebecryl1259、Ebecryl4866、Ebecryl1290K、Ebecryl5129、Ebecryl4833、Ebecryl2220(以上、ダイセル・ユー・シー・ビー株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)などをあげることができる。これらのウレタン(メタ)アクリレート系重合性オリゴマーは耐溶剤性や透明シートとの密着性、重合性組成物との密着性の点から多官能のウレタン(メタ)アクリレート系重合性オリゴマーであることが好ましい。これらの多官能のウレタン(メタ)アクリレート系重合性オリゴマーの中でも、NKオリゴU−4HAおよびEbecryl264が好ましい。
【0034】
前記ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、特に限定はなく様々なポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーを用いることができる。このようなポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、多塩基酸と、多価アルコールと、(メタ)アクリル酸との脱水縮合反応によって合成されるものであり、例えば、アロニックスM−6100、アロニックスM−7100、アロニックスM−8030、アロニックスM−8060、アロニックスM−8530、アロニックスM−8050(以上、東亞合成株式会社製ポリエステル(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、Laromer PE44F、Laromer LR8907、Laromer PE55F、Laromer PE46T、Laromer LR8800(以上、BASF社製ポリエステル(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、Ebecryl80、Ebecryl 657、Ebecryl 800、Ebecryl 450、Ebecryl 1830、Ebecryl 584(以上、ダイセル・ユー・シー・ビー株式会社製ポリエステル(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、フォトマーRCC13−429、フォトマー 5018(以上、サンノプコ株式会社製ポリエステル(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)等があげられる。これらのポリエステル(メタ)アクリレート系重合性オリゴマーの中でも、Ebecryl80が好ましい。
【0035】
前記エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、特に限定はなく様々なエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを用いることができる。このようなエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、エポキシ系オリゴマーに(メタ)アクリル酸を付加させた構造のもので、ビスフェノールA−エピクロルヒドリン型、変性ビスフェノールA型、アミン変性型、フェノールノボラック−エピクロルヒドリン型、脂肪族型、脂環型等がある。例えば、Laromer LR8986、Laromer LR8713、Laromer EA81(以上、BASF社製エポキシ(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、NKオリゴEA−6310、NKオリゴEA−1020、NKオリゴEMA−1020、NKオリゴEA−6320、NKオリゴEA−7440、NKオリゴEA−6340(以上、新中村化学工業株式会社製エポキシ(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、Ebecryl3700、Ebecryl3200、Ebecryl600(以上、ダイセル・ユー・シー・ビー株式会社製エポキシ(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)等があげられる。これらのエポキシ(メタ)アクリレート系重合性オリゴマーの中でも、NKオリゴEA−1020が好ましい。
【0036】
前記(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、特に限定はなく様々な(メタ)アクリレート系重合性単量体を用いることができる。このような(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、炭素数2から20の脂肪族アルコール、ジオールおよび多価アルコールのモノ、ジおよびポリ(メタ)アクリレート化合物や、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールで分岐された脂肪族エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合を含む炭素数30以下である末端ヒドロキシ化合物のポリ(メタ)アクリレート体や、それらの骨格中に脂環式化合物や芳香族化合物を有する化合物等が挙げることができる。具体的には、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロペンタニル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソボニルジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのアクリレート系重合性単量体の中でも、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0037】
前記(メタ)アクリレート系重合性組成物に含まれる(メタ)アクリレート系重合性化合物としては、単一の(メタ)アクリレート系重合性化合物を用いることもでき、また、2種以上の(メタ)アクリレート系重合性化合物を組み合わせて用いることもできる。
【0038】
以上のような様々な(メタ)アクリレート系重合性組成物は、(メタ)アクリレート系の重合性オリゴマーと重合性単量体との混合物として用いることができる。この場合、オリゴマーと単量体の混合比は特に限定されないが、操作性の面から、(メタ)アクリレート系重合性単量体の配合比率が、単量体とオリゴマー全体の20から80重量%の範囲が好ましい。
【0039】
また、前記(メタ)アクリレート系重合性組成物の膜厚は、2μm以上13μm以下であることが好ましい。膜厚が2μm未満であると前述の重合性組成物に対する耐性や接着性が低下し、膜厚が13μmを超えると曲げ加工時のクラック発生等の問題を生じやすい。
【0040】
本発明のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法に用いるシート状偏光体としては、例えば、偏光シートのように、その厚みに拘わらず、それ自身が偏光性を有するもの、および偏光シートなどのように偏光性を有するものを含む偏光積層体などを挙げることができる。
【0041】
前記偏光シートは、その厚みや機能の点から、従来から、偏光シート、偏光フィルム、偏光フィルム基板などと呼称されている様々な偏光シートを用いることができる。また、前記偏光シートとしては、ポリカーボネート系樹脂から形成されてなることが好ましい。具体的には、射出成形に用いられている所謂ポリカーボネート(以下、「PC」ともいう)偏光シートを前記偏光シートとして用い、表面を(メタ)アクリレート系重合性組成物で膜処理するだけで本発明のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法に用いることができる。PC偏光シートの場合には、射出成形用途に開発されているため、耐熱性が高く、より好ましい。
【0042】
前記偏光積層体としては、偏光シートと該偏光シートの少なくとも片面を被覆する透明シートとから構成されているものを用いることができる。この偏光積層体としては、透明シートが偏光シートの片面または両面を被覆したものを用いることができる。偏光シートの少なくとも片面をある程度の耐熱性を有する透明シートで被覆した偏光積層体を用いることにより、偏光シートの射出成形時の変性を防ぐことができる。また、前記偏光シートとして、この偏光積層体を用いると、ごく一般的な偏光積層体の表面を(メタ)アクリレート系重合性組成物で膜処理をするか、あらかじめ表面を(メタ)アクリレート系重合性組成物で膜処理された透明フィルムからなる被覆シートを偏光積層体製造に用いることが可能になるため、製造上、非常に効率的である。
【0043】
前記偏光積層体における前記透明シートは、基本的にはある程度の耐熱性さえ有すれば、特に限定されず様々な透明シートを用いることができる。この透明シートとしては、ポリカーボネート樹脂、セルロース系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂から選ばれるいずれか1種で形成されてなることが好ましい。透明シートの具体的な例としては、例えば、TACに代表される酢酸セルロース、プロピルセルロース、酢酸・酪酸セルロース等のセルロース系樹脂フィルム、各種(メタ)アクリル系樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート(以下、「PEN」という)やポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という)、あるいは優れた光学特性を有するフルオレン系ポリエステル(以下、「OKP」という)樹脂フィルム、「ARTON」、「ZEONOR」、「APEL」等に代表される脂環式オレフィン系ポリマー(以下「APO」という)、各種ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0044】
前記プラスチックス偏光レンズ体の有する偏光シートは、基本的にはある程度の耐熱性さえ有すれば、特に限定されず様々な偏光シートを用いることができる。この偏光シートとしては、ポリビニルアルコール系樹脂から形成されてなることが好ましい。このポリビニルアルコール系樹脂としては、特に限定なく一般的なポリビニルアルコール系フィルムを用いているものであれば使用可能である。このようなポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)共重合体樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂などを挙げることができる。これらのポリビニルアルコール系樹脂の中でも、ポリビニルアルコール樹脂が好ましい。
【0045】
前記偏光シートとしては、2色性色素を用いているものは耐熱性に優れるために好ましい。例えば、前記ポリビニルアルコール樹脂の場合には、2色性色素溶液中に該樹脂を室温〜50℃の加温下で浸漬することにより染色することができる。
【0046】
偏光シートの製造に用いる前記色素としては、例えばクリソフェニン(C.I.24895)、クロランチンファストレッド(C.I.28160)、シリウスイエロー(C.I.29000)、ベンゾパープリン(C.I.23500)、ダイレクトファーストレッド(C.I.23630)、ブリリアントブルーB(C.I.24410)、クロラゾールブラックBH(C.I.22590)、ダイレクトブルー2B(C.I.22610)、ダイレクトスカイブルー(C.I.24400)、ジアミングリーン(C.I.30295)、ソロフェニルブルー4GL(C.I.34200)、ダイレクトコッパーブルー2B(C.I.24185)、ニッポンブリリアントヴァイオレットBKconc(C.I.27885)、コンゴーレッド(C.I.22120)、アシドブラック(C.I.20470)等が挙げられ、これらの色素の中から目的に応じて2色以上の色素を選択して用いることができる。なお、括弧内には、有機合成協会編「新版 染料便覧」(丸善株式会社、1970年)に記載のColour Index No.を示した。
【0047】
前記偏光シートは、さらに金属化合物およびホウ酸により処理されていると、優れた耐熱性および耐溶剤性を有し、好ましい。具体的には、2色性色素溶液中で染色された前記偏光シートを金属化合物およびホウ酸の混合溶液に浸漬中あるいは浸漬後に延伸する方法、または2色性色素溶液中で染色および延伸された前記偏光シートを金属化合物およびホウ酸の混合溶液に浸漬する方法を用いて処理することができる。
【0048】
前記金属化合物としては、第4周期、第5周期、第6周期のいずれの周期に属する遷移金属であっても、その金属化合物に前記耐熱性および耐溶剤性効果の確認されるものが存在するが、価格面からクロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの第4周期遷移金属の酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩などの金属塩が好ましい。これらの中でも、ニッケル、マンガン、コバルト、亜鉛および銅の化合物が、安価で前記効果に優れるため、さらに好ましい。
【0049】
前記金属化合物としては、例えば、酢酸マンガン(II)四水和物、酢酸マンガン(III)二水和物、硝酸マンガン(II)六水和物、硫酸マンガン(II)五水和物、酢酸コバルト(II)四水和物、硝酸コバルト(II)六水和物、硫酸コバルト(II)七水和物、酢酸ニッケル(II)四水和物、硝酸ニッケル(II)六水和物、硫酸ニッケル(II)六水和物、酢酸亜鉛(II)、硫酸亜鉛(II)、硝酸クロム(III)九水和物、酢酸銅(II)一水和物、硝酸銅(II)三水和物、硫酸銅(II)五水和物などが挙げられる。これらの金属化合物のうち、いずれか1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いることもできる。
【0050】
前記金属化合物およびホウ酸の前記偏光シート中の含有率は、前記偏光シートに耐熱性および耐溶剤性を与える点から、偏光シート1g当たり、金属化合物では金属として0.2〜20mg含有されることが好ましく、1〜5mgがさらに好ましい。ホウ酸の含有率は、ホウ素として0.3〜30mgが好ましく、0.5〜15mgがさらに好ましい。処理に用いる処理液の組成は以上の含有率を満たすように設定され、一般的には、金属化合物の濃度は0.5〜30g/L、ホウ酸濃度は2〜20g/Lであることが好ましい。
偏光シートに含有される金属およびホウ素の含有率の分析は、原子吸光分析法により行うことができる。
【0051】
前記金属化合物およびホウ酸による浸漬工程における浸漬条件は、通常、室温〜50℃で5〜15分である。浸漬後の加熱工程の条件は、70℃以上、好ましくは90〜120℃の温度で、1〜120分間、好ましくは5〜40分間加熱する。
【0052】
前記偏光積層体における透明シートと偏光シートとは接着剤で接着し積層することができる。この接着剤としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂などの熱硬化型接着剤やUV硬化型接着剤などが例示される。
【0053】
前記偏光シートへの透明シートの積層は、一般的には偏光シートの両側にサンドイッチ状に行う。用途によっては片面だけに積層し、片面は偏光シートがむき出しの形態とすることもできる。
【0054】
前記透明性シートへの(メタ)アクリレート重合性組成物の塗膜による被覆は、偏光積層体の形成後に行なうこともできるし、あらかじめ(メタ)アクリレート重合性組成物が塗膜処理された透明シートを用いてシート状偏光体に貼り合わせ、偏光積層体を形成することもできる。いずれの場合も、スピンコート法、ディップ法、流し塗り法、ロールコーター法、カーテンコート法などのごく一般的な塗布法により(メタ)アクリレート重合性組成物の透明シートへの塗膜が可能である。
【0055】
本発明の第2発明にかかるプラスチックス偏光レンズ体は、少なくとも偏光シートを有するシート状偏光体を含むプラスチックス偏光レンズ体であり、前記シート状偏光体の少なくとも片面に(メタ)アクリレート系樹脂層が形成され、さらに少なくとも該(メタ)アクリレート系樹脂層上に熱成形性樹脂層が射出成形法にて熱融着積層して形成されることを特徴とする。このプラスチックス偏光レンズ体においては、シート状偏光体の片面、または両面(メタ)アクリレート系樹脂層が積層して形成されており、さらに、該(メタ)アクリレート系樹脂層上にのみレンズ用の熱成形性樹脂層が積層して形成されている。このプラスチックス偏光レンズ体はシート状偏光体の少なくとも片面を(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜して製造されるため、プラスチックス偏光レンズ体の前記シート状偏光体は、製造時の厳しい条件下においても変性を受けていない。したがって、本発明のプラスチックス偏光レンズ体には、高耐衝撃性特性を有するものをはじめ、広範な種類のレンズ用熱成形性樹脂から製造されるプラスチックス偏光レンズ体が含まれる。
【0056】
本発明のプラスチックス偏光レンズ体の具体例としては、例えば、プラスチックス偏光レンズ、自動車や住宅用のプラスチックス偏光レンズ窓、偏光レンズ窓、サンバイザー、スキーゴーグル、飛行機やオートバイの風防などを挙げることができる。この中でもプラスチックス偏光レンズとして用いることが好ましい。
【0057】
本発明のプラスチックス偏光レンズ体におけるシート状偏光体が偏光積層体の場合のプラスチックス偏光レンズ体の1例を模式的に図1に示した。図1においては、偏光シート1の両面に透明シート2が接着し偏光積層体であるシート状偏光体を形成している。このシート状偏光体の両面を(メタ)アクリレート系樹脂層3が被覆している。さらに、これらの(メタ)アクリレート系樹脂層上にレンズ用の熱成形性樹脂層4が積層してプラスチックス偏光レンズ体が形成されている。
【0058】
本発明に用いることができる偏光積層体は、少なくとも偏光シートを有するシート状偏光体を含むプラスチックス偏光レンズ体の製造に好適な偏光積層体であり、このシート状偏光体の少なくとも片面に(メタ)アクリレート系重合性組成物膜が形成されてなる。本発明に用いることができる偏光積層体は、ごく一般的な偏光積層体の表面を塗膜処理するか、あらかじめ表面を塗膜処理された透明フィルムを偏光積層体製造に用いるだけで可能であるので非常に簡単に製造できる。前記偏光積層体をこのまま用いて射出成形を行うことにより、本発明のプラスチックス偏光レンズ体を得ることができるため、本発明のプラスチックス偏光レンズ体の中間品として有用である。本発明に用いることができる偏光積層体は、偏光シートと、該偏光シートの少なくとも片面を被覆する透明シートと、該透明シートを被覆する前記(メタ)アクリレート系重合性組成物膜とから構成することができる。
【0059】
本発明に用いることができる偏光積層体における「少なくとも偏光シートを有するシート状偏光体」の意義は、本発明の第1発明にかかるプラスチックス偏光レンズ体の製造方法における「少なくとも偏光シートを有するシート状偏光体」の意義と同様である。また、「少なくとも片面に(メタ)アクリレート系重合性組成物膜が形成」の意義は、本発明の第1発明にかかるプラスチックス偏光レンズ体の製造方法における「少なくとも片面に(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜」の意義と同様である。また、「(メタ)アクリレート系」および「シート状偏光体」も、第1発明におけるものと同様の意義を示す。
【0060】
本発明に用いることができる偏光積層体の具体的な例としては、例えば、一般的な偏光積層体としてトリアセチルセルロースで両側をはさまれた偏光フィルムを挙げることができる。また前述のように、通常の方法で偏光シートを作製後に、両側をARTON,ZEONOR,APEL等の脂環式ポリオレフィン系樹脂フィルムで代表される光学用透明樹脂でサンドイッチ状に積層して製造することができる。なかでも、前記偏光積層体は、ポリカーボネートシートで前記偏光シートをサンドイッチ状に積層して製造することが好ましい。
【0061】
本発明に用いることができる偏光積層体の1例を模式的に図に示すと、図1におけるレンズ体用の重合性樹脂層4および(メタ)アクリレート系樹脂層3を除いた、偏光シート1、透明シート2からなる積層体が挙げられる。
【0062】
前記シート状偏光体の少なくとも片面に(メタ)アクリレート系重合性組成物膜を形成し(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜された偏光積層体は、透明シートの片面に(メタ)アクリレート系重合性組成物を塗膜してなることを特徴とする被覆シートを用いて製造することができる。この被覆シートを既存の偏光シートなどのシート状偏光体に接着するだけで、前記の偏光積層体を得ることができるため、本発明の被覆シートは非常に有用である。具体的には、前述のように、射出成形に用いられている所謂PC偏光シートを偏光シートとして用い、表面を(メタ)アクリレート系重合性組成物で塗膜処理した被覆シートを挙げることができる。PC偏光シートの場合には、射出成形用途に開発されているため、耐熱性が高く、より好ましい。
【実施例】
【0063】
以下、実施例および比較例により、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何らの制限を受けるものではない。
<測定方法>
以下の実施例および比較例で製造したプラスチックス偏光レンズの透過率、偏光度、および塗膜の厚み測定および算出は以下の方法を用いて行った。
(A)透過率
透過率は分光光度計(日本分光株式会社製)を用いて測定した。
(B)偏光度
偏光度(P)は次式より求めた。
P(%)=√((H0−H90)/(H0+H90))×100
平行位透過率(H0):偏光板2枚をその分子配向軸が平行になるように重ね合わせたときの光透過率、直交位透過率(H90):偏光板2枚をその分子配向軸が垂直になるように重ね合わせたときの光透過率)は可視部400nm〜700nmにおける視感度補正を行なった平均値である。
(C)塗膜の厚み
塗膜の厚み測定は、多層膜厚測定装置 DC−8200(グンゼ株式会社製)を用いて行った。
【0064】
<実施例1〜実施例4>
(a)偏光フィルム基板(1)(本発明における偏光シート)の製造
ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製、商品名:クラレビニロン#750)をクロランチンファストレッド(C.I.28160)0.25g/L,クリソフェニン(C.I.24895)0.18g/L,ソロフェニルブルー4GL(C.I.34200)1.0g/Lおよび硫酸ナトリウム10g/Lを含む水溶液中で35℃で3分間染色した後、溶液中で4倍に延伸した。ついでこの染色フィルムを酢酸ニッケル2.5g/Lおよびホウ酸6.6g/Lを含む水溶液中35℃で3分浸漬した。ついでそのフィルムを緊張状態が保持された状態で、室温で3分乾燥を行った後、70℃で3分間加熱処理し、偏光フィルム基板(1)を得たなお、得られた偏光フィルム基板の光学特性は、可視部全域での視感度補正透過率T(vis.)=19.3%,偏光度P=99.8%であった。また、該フィルム基板中のニッケル含有量は1.2mg/gであり、ホウ素含有量は1.3mg/gであった。
【0065】
(b)透明フィルム(2)(本発明における透明シート)
厚さ300μmのポリカーボネートシート(三菱瓦斯化学株式会社製、リターデーション値4,800)を透明フィルム(2)として用いた。
【0066】
(c)接着剤組成物(3)
ポリプロピレングリコール(M=900)を100重量部に対しジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート25重量部、溶媒として酢酸エチル600重量部を使用して接着剤組成物(3)を調製した。
(d)(メタ)アクリレート系重合性組成物(4)
1,9−ノナンジオールアクリレート(大阪有機化学株式会社製、商品名:ビスコート#215)60重量部、多官能ウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学工業株式会社製、商品名:U−4HA)37重量部、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製重合開始剤、商品名:ダロキュア1173)3重量部を用いて(メタ)アクリレート系重合性組成物(4)を調製した。
【0067】
(e)塗膜された偏光積層体の製造
(a)で得た偏光フィルム基板(1)の片面に、接着組成物(3)をバーコーター #24を用いて塗布し、室温で5分間乾燥させた後、ポリカーボネートシート(2)をラミネーター(三芝商事株式会社製)で、ニップ圧4.0kg/cm2Gの条件で貼りあわせた。
ついで、他面も同様にしてポリカーボネートシートを貼りあわせた。この積層体の片側の最外層に(メタ)アクリレート系重合性組成物(4)をバーコーター #24を用いて塗布し、その上からポリエチレンフィルム(東レ合成フィルム株式会社製,50μm)をかぶせ、そのポリエチレンフィルムの上から紫外線を2200mJ/cm2の条件で照射した。別の面も同様の処理を行ない、(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜された偏光積層体を得た。硬化後の両塗膜面の厚みは、5―7μmになっていることが確認された。
【0068】
(f)射出成形によるプラスチックス偏光レンズの製造
(f−1)塗膜された偏光積層体の曲げ加工
(e)で得られた塗膜された偏光積層体を直径74mmの円形に打ち抜き、140℃,3mmHgの雰囲気下で5分かけて真空成形し、曲率半径R=87mmのレンズ状曲げ加工品を得た。

(f−2)射出成形
(f−2−1)GRILAMID XE3805(EMS製)を用いた成形<実施例1>
この曲げ加工品を曲率半径R=65mmの曲面を有する金型曲面に合わせて樹脂が塗膜の側に射出されるよう装着、次いで該金型内にポリアミド樹脂「GLILAMID XE3805」(EMS製)を射出成形によって注入、該曲げ加工品と射出成形によって形成される樹脂層が一体化したレンズを得た。
成形条件を以下に示す。
可塑化温度 260℃
スクリュー回転数 30rpm
背圧 30kg/cm
金型設定温度 125℃
サイクルタイム 100sec
型締め 850kN
得られた成形体の曲げ加工品とポリアミド樹脂の密着度は充分に強く、無理に剥がそうとすると他の積層部分が剥がれるほどであった。またその外観性は極めて良好であり、色調も成形前の偏光積層体と比較して、目視においても著しい変化は観察されないとともに、分光光度計での特性評価でもT(vis.)=19.2%,P=99.9%であり、重合前後に大きな偏光特性における変化の無いことが確認された。
【0069】
(f−2−2)NOVAMID X21(三菱エンジニアリングプラスチックス製)を用いた成形<実施例2>
ポリアミド樹脂として「NOVAMID X21」(三菱エンジニアリングプラスチックス製)を用い、射出成形時の金型設定温度を85℃とする以外は、(f−2−1)とまったく同じ操作を行なった。この場合も良好なプラスチックス偏光レンズが得られ、偏光特性はT(vis.)=19.6%,P=99.9%で、重合前後でほとんど変化の無いことが確認された。
【0070】
(f−2−3)PMMA樹脂を用いた成形<実施例3>
メタクリル樹脂として三菱レイヨン製PMMA(商品名:アクリペット)を用いて、可塑化温度を240℃とする以外は(f−2−2)と同様の操作を行った。偏光特性T=19.8%、P=99.8%の良好な偏光レンズが得られた。
【0071】
(f−2−4)ポリカーボネート樹脂を用いた成形<実施例4>
ポリカーボネート樹脂として、三菱エンジニアリングプラスチックス製S3000を用い、以下の条件で(f−2−1)と同様なことを行った。
条件を以下に示す。
可塑化温度 280℃
スクリュー回転数 50rpm
背圧 50kg/cm
金型設定温度 85℃
サイクルタイム 100sec
型締め 850kN
T=19.6% P=99.9%のレンズが得られた。
実施例1−4のレンズの特性を表―1にまとめる。
【0072】
【表1】

【0073】
<実施例5〜実施例6>
ウレタンアクリレート系塗料UT−001(日本ビーケミカル株式会社製)をアクリレート系重合性組成物として用いる以外は実施例1から2とまったく同様の操作を行った。得られた偏光積層体の最外層の塗膜の厚みは6〜8μmであった。いずれのポリアミド樹脂との組み合わせにおいても良好なプラスチックス偏光レンズが得られ、各々のレンズの光学特性も下記表2のようであり、良好なものであった。
【0074】
【表2】

【0075】
<実施例7〜実施例8>
PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート(サンノプコ社製,商品名:フォトマー4127−SN)45重量部、4官能ポリエステルアクリレートオリゴマー(ダイセルUCB社製,商品名:Ebecryl80)30重量部、3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(ダイセルUCB製,商品名:Ebecryl264)20重量部、ベンゾフェノン(重合開始剤、和光純薬工業株式会社製)5重量部を混合し、(メタ)アクリレート系重合性組成物を調製した。その他は実施例1から2とまったく同様の操作を行った。得られた偏光積層体の最外層の塗膜の厚みは7〜9μmであった。いずれのポリアミド樹脂との組み合わせにおいても良好なプラスチックス偏光レンズが得られ、各々のレンズの光学特性も下記のようであり、良好なものであった。
【0076】
【表3】

【0077】
<実施例9および実施例10>
1,9−ノナンジオールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステル NOD−N)70重量部、ビスフェノールA型エポキシアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:NKオリゴマー EA−1020)30重量部、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製重合開始剤、商品名:ダロキュア1173)3重量部を混合し、(メタ)アクリレート系重合性組成物を調製した。その他は実施例1および2とまったく同様の操作を行った。得られた偏光積層体の最外層の塗膜面厚みは6〜9μmであった。いずれのポリアミド樹脂との組み合わせにおいても良好なプラスチックス偏光レンズが得られ、各々のレンズの光学特性も下記表4のようであり、良好なものであった。
【0078】
【表4】

【0079】
<実施例11>
透明シートとしてTACフィルム(コニカミノルタオプト株式会社製、厚さ:80μm)を用いて、曲げ加工の温度を95℃とする以外は実施例2と同様な条件でポリアミド樹脂レンズを作製した。得られたレンズは、T(vis.)=19.4%、P=99.9%で射出成形前後に大きな偏光特性の変化がないことが確認された。
【0080】
<実施例12>
透明シートとしてAPEL(三井化学株式会社製、商品名:APL6509T、厚さ:200μm)を用いて、実施例18と同様な操作を行った。曲げ加工温度を80℃とする以外は実施例1と同様な条件でポリアミド樹脂レンズを作製した。得られたプラスチックス偏光レンズは、T(vis.)=19.6%、P=99.9%で重合前後に大きな偏光特性の変化がないことが確認された。
【0081】
<比較例1>
実施例1と同様にして偏光積層体を作製した。この積層体の表面を処理することなく、実施例1の(f−1)と同様にして曲げ加工し、実施例1の(f−2−2)と同様に系樹脂のレンズ成形を試みた。積層体とポリアミド樹脂は一体化しなかった。
【0082】
<比較例2>
実施例11と同様の操作を、TACの表面を何も処理することなく実施例1の(f−2−2)と同様にポリアミド樹脂のレンズ成形を試みた。積層体とポリアミド樹脂は一体化しなかった。
【0083】
<比較例3>
実施例12と同じ操作を、APELの表面を何も処理することなく行なった。実施例1の(f−2−1)と同様にポリアミド樹脂のレンズ成形を試みた。積層体とポリアミド樹脂は一体化しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明にかかるプラスチックス偏光レンズ体の製造方法は、広い範囲のレンズ用熱成形性樹脂を用いたプラスチックス偏光レンズ体の製造に有用であり、簡便なものである。この製造方法で得られるプラスチックス偏光レンズ体では用いる偏光シートの光学特性が損なわれていないため、高光学特性の維持された、軽量性、耐衝撃性等に優れたプラスチックス偏光レンズ体を高い生産性で提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明のプラスチックス偏光レンズ体におけるシート状偏光体が偏光積層体の場合のプラスチックス偏光レンズ体の1例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0086】
1 偏光シート1
2 透明シート2
3 (メタ)アクリレート系樹脂層3
4 熱成形性樹脂層4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも偏光シートを有するシート状偏光体を用いる射出成形法によるプラスチックス偏光レンズ体の製造方法であって、
少なくとも片面を(メタ)アクリレート系重合性組成物により塗膜したシート状偏光体を用いることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記射出成形法に、ポリカーボネートを除く熱成形性樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法。
【請求項3】
前記ポリカーボネートを除く熱成形性樹脂が、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法。
【請求項4】
前記ポリカーボネートを除く熱成形性樹脂がポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレート系重合性組成物が紫外線硬化性を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレート系重合性組成物が、ウレタン(メタ)アクリレート系重合性組成物、ポリエステル(メタ)アクリレート系重合性組成物、およびエポキシ(メタ)アクリレート系重合性組成物から選ばれる少なくともいずれか1種である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法。
【請求項7】
前記(メタ)アクリレート系重合性組成物が、ウレタン(メタ)アクリレート系重合性組成物およびポリエステル(メタ)アクリレート系重合性組成物から選ばれる少なくともいずれか1種である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法。
【請求項8】
前記(メタ)アクリレート系重合性組成物の膜厚が、2μm以上13μm以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法。
【請求項9】
前記シート状偏光体が、偏光積層体である請求項1から8のいずれか1項に記載のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法。
【請求項10】
前記偏光積層体が、偏光シートと該偏光シートの少なくとも片面を被覆する透明シートとから構成されていることを特徴とする請求項9に記載のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法。
【請求項11】
前記透明シートが、ポリカーボネート樹脂、セルロース系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂から選ばれるいずれか1種から形成されてなることを特徴とする請求項10に記載のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法。
【請求項12】
前記偏光シートが、ポリビニルアルコール系樹脂から形成されてなることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法。
【請求項13】
前記偏光シートが2色性色素を含有することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法。
【請求項14】
前記偏光シートが、さらに金属化合物およびホウ酸により処理されていることを特徴とする請求項13に記載のプラスチックス偏光レンズ体の製造方法。
【請求項15】
少なくとも偏光シートを有するシート状偏光体を含むプラスチックス偏光レンズ体であって、
前記シート状偏光体の少なくとも片面に(メタ)アクリレート系樹脂層が形成され、さらに少なくとも該(メタ)アクリレート系樹脂層上に熱成形性樹脂が射出成形法にて熱融着積層して形成されることを特徴とするプラスチックス偏光レンズ体。
【請求項16】
前記射出成形法にポリカーボネートを除く熱成形性樹脂を用いることを特徴とする請求項15に記載のプラスチックス偏光レンズ体。
【請求項17】
前記ポリカーボネートを除く熱成形性樹脂が、ポリアミド、(メタ)アクリル樹脂、*からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項15または16に記載のプラスチックス偏光レンズ体。
【請求項18】
前記ポリカーボネートを除く熱成形性樹脂がポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項15または16に記載のプラスチックス偏光レンズ体。
【請求項19】
前記(メタ)アクリレート系樹脂層が、(メタ)アクリレート系重合性組成物膜の紫外線硬化により形成されることを特徴とする請求項15から18のいずれか1項に記載のプラスチックス偏光レンズ体。
【請求項20】
前記(メタ)アクリレート系樹脂層が、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂層、ポリエステル(メタ)アクリレート系樹脂層、およびエポキシ(メタ)アクリレート系樹脂層から選ばれる少なくともいずれか1種である請求項15から19のいずれか1項に記載のプラスチックス偏光レンズ体。
【請求項21】
前記(メタ)アクリレート系樹脂層が、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂層およびポリエステル(メタ)アクリレート系樹脂層から選ばれる少なくともいずれか1種である請求項15から19のいずれか1項に記載のプラスチックス偏光レンズ体。
【請求項22】
前記(メタ)アクリレート系樹脂層の厚さが、2μm以上13μm以下であることを特徴とする請求項15から21のいずれか1項に記載のプラスチックス偏光レンズ体。
【請求項23】
前記シート状偏光体が、偏光積層体である請求項15から22のいずれか1項に記載のプラスチックス偏光レンズ体。
【請求項24】
前記偏光積層体が、偏光シートと該偏光シートの少なくとも片面を被覆する透明シートとから構成されていることを特徴とする請求項23に記載のプラスチックス偏光レンズ体。
【請求項25】
前記透明シートが、ポリカーボネート樹脂、セルロース系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂から選ばれるいずれか1種から形成されてなることを特徴とする請求項24に記載のプラスチックス偏光レンズ体。
【請求項26】
前記偏光シートが、ポリビニルアルコール系樹脂から形成されてなることを特徴とする請求項15から25のいずれか1項に記載のプラスチックス偏光レンズ体。
【請求項27】
前記偏光シートが2色性色素を含有することを特徴とする請求項15から26のいずれか1項に記載のプラスチックス偏光レンズ体。
【請求項28】
前記偏光シートが、さらに金属化合物およびホウ酸により処理されていることを特徴とする請求項27に記載のプラスチックス偏光レンズ体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−213436(P2008−213436A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58145(P2007−58145)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(597003516)MGCフィルシート株式会社 (33)
【Fターム(参考)】